リスク選好の株高・ドル安で総じて堅調
- MRA商品市場レポート
2022年4月14日 第2173号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「リスク選好の株高・ドル安で総じて堅調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は総じて堅調な推移になった商品が目立った。注目の米生産者物価指数は市場予想を上回る伸びとなったが、これまでFRBのタカ派なスタンスを織り込み続けて来た市場が昨日は一服、このPPIの上昇にもかかわらず、長期金利が低下し、ドルが売られ、株が上昇したことが影響したとみられる。
下落した商品はドル安の反動で、自国通貨建ての商品。これを整理すると昨日の値動きは、為替主導によるテクニカルなものだったといえるだろうか。
昨日特に上昇したのはエネルギーセクター。その中でも灯油やガスオイルなどの中間留分価格。自然エネルギー不足によるディーゼルオイル需要の増加やジェット燃料需要の減少から十分な増産がなされていないことによる、在庫減少が影響しているとみられる(詳しくはMRA's Eyeを参照ください)。
【本日の見通し】
本日は、市場参加者のリスクテイク再開を受けて、上昇余地を探りやすい地合にあるものの、特にエネルギーは昨日の上げが大きかったこともあり調整売りが入りやすく、原油価格の下落は実質金利を押しあげるため、結局上値は重いと考える。
本日は市場参加者も「ややお腹いっぱい」のところはあるが、米FOMCメンバーの講演には注目が集まる(フィラデルフィア連銀、クリーブランド連銀、ニューヨーク連銀)。
また、ECBの政策会合も予定されており、今回は利上げの時期に関する言及について注目が集まる。ただFRBほどタカ派ではないと考えられるため、仮にユーロ高・ドル安となったとしても影響は限定されるだろう。
【昨日のトピックス】
昨日発表された中国の貿易統計は輸出が前年比+14.7%と市場予想の+12.8%、前月の+6.2%を大きく上回ったが、輸入は▲0.1%(市場予想+8.4%、前月+10.4%)と市場予想、前月とも下回った。
オミクロン株の影響によるロックダウンや、パラリンピック期間中の工場稼働停止、ロシアのウクライナ侵略戦争による物流の混乱などで需要が減速した影響が大きかったと考えられる。
ロシア・ウクライナを巡る物流の混乱解消には恐らく相当な時間が掛ると予想されるうえ、ロックダウンの影響緩和にも時間が掛ると想定される。
後者に関しては意図的に生産・消費活動を止めていることによるものであるため、時間経過と共に解消する可能性は高いが、中国の消費回復には想定よりも時間が掛ると考えて置いた方が良さそうだ。
これにより、鉱物資源の需要はややその回復ペースが鈍化するため、米国の金融引き締め方針を勘案するとこの数ヵ月の中では比較的低い水準での推移になると予想される。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。固有の材料は売り材料が多かったものの、米国債利回りが低下し、株価が上昇したこと、ドル安が進行したことで買い戻しが優勢になったと考えられる。
基本的に「脱ロシア」を進める方針であることに変わりはなく、どういった形で脱ロシアが完成するか(どのようなエネルギーミックスに落着くか)不透明であるが、少なくとも脱ロシアの最中は原油価格が上昇する可能性は高いと市場は判断していると考えられる。
なお、昨日発表された米石油統計はそれほど強気な内容ではなかった。
また、昨日発表されたIEA月報は、中国のロックダウンの影響を受けて非OECD諸国の需要見通しが下方修正された。これによりH122のCall on OPECは大幅に下方修正されこれだけだと価格の下落要因となる。
しかし、かねてからなぜか中国の統計(特に需要関連の統計)に市場は反応し難く、昨日もむしろ北米の供給減少やFSUの下期の生産見通しが下方修正された方に反応したように見える。
なお、3月の中国の原油輸入は前年比▲13.9%の4,271万トン(前月▲19.2%の3,634万トン)と前月からは回復して過去5年平均も上回った。2月はオリンピックの影響で経済活動が停滞していたため、3月に急速に回復したと見られるが、前年比ベースでは水準は低い。
目先、需給が直ちに緩和する材料は以下の通りだが、一長一短である。
1.戦略備蓄放出の大盤振る舞い
2.西側諸国(除く日本)の急速な金融引き締めによる景気減速観測
3.中国のオミクロン株感染拡大によるロックダウン・需要減少
4.停戦
1.は恐らく年後半には「再び在庫を積む動き」で逆に価格上昇要因となり2.は年後半には価格下落要因に3.はこの20年の経験則上、中国の影響はファンダメンタルズ的に大きいはずなのに、なぜかさほど価格に影響を与えず4.は早期の停戦が否定された。また停戦になっても脱ロシアは継続するため影響は限定される。
ロシア以外の供給先としては、米シェールオイル企業の増産(これは米政府も要請済み)、イラン・ベネズエラの供給再開だが、後者はOPEC諸国の反米機運の高まりから容易ではない。
現在のロシア・ウクライナ情勢シナリオ別原油価格見通しでは、OECD諸国が「OPECの代わりに」増産したため、4.の状態にあると考えられる。
下記シナリオは数ヵ月の短期的なものであるが、長期的にはレーショニング・金融引き締めの影響・景気循環による需要減少による「基準価格(供給懸念が後退したときの着地点となる価格)は徐々に切り下がっていると考えている。
なお、年後半に掛けて米金融引き締めが進むことによる景気過熱感の沈静化で、年後半にかけての価格見通しは下向きである。
<シナリオ別原油価格見通し>
1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない(ないしはその可能性が強く意識される) Brent 125-140ドル
2.1.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 110-130ドル
3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 100-125ドル
4.3.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 80-115ドル
↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ
↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在は徐々にこちらに移りつつある)
5.ロシアがウクライナから撤退Brent 90-100ドル
6.5.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 70-90ドル
※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。米国の戦略備蓄100万バレル放出は半年の次元付。
本日は昨日の買い戻し圧力が強かったことから一旦売りが強まると予想する。米金融政策動向やロシアに対する制裁の影響などの材料は取りあえず一巡しているため、値幅は大きいがレンジワークになろう。
◆石炭・LNG・天然ガス
豪州石炭スワップ先物価格は期近が上昇して310ドル台に突入した。南アフリカの洪水の影響で供給のタイトさが懸念されたことが背景。
なお、南アフリカの主要石炭輸出港であるRichards Bayは通常の稼働に戻ったと報じられている。ただしDurbanからも輸出はあるため、影響は継続している。
豪州、南アフリカ、インドネシアなどの主要石炭輸出国5ヵ国の週間石炭輸出は回復しているが、今年に入ってから安定的に過去5年平均の水準を回復するに至っていない。異常気象に伴う港湾の稼働率低下が影響しているとみられる。
この中で欧州は脱ロシアのために石炭消費を一時的に増やす見通しだが、一時的で有るが故にドイツなどが自国生産を増やす可能性は低く、海上輸送炭市場需給は当面タイト化することになろう。
3月の石炭は原料炭・燃料炭合計で前年比▲39.9%の1,642万3,000トン(前月▲45.9%の1,123万トン)と低水準となった。昨年、中国は国内炭の生産を大幅に増加させた。
その後、中国国家発展改革委員会は石炭生産の強化方針を示しており、恐らく国内炭の生産増加によって海外炭の需要が減少したと考えられる。
国営メディアによると石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日に設定しているとされ、このペースであれば31日の月は3,906万トンの石炭が生産されることになる。
生産能力は約3億トン積み増す見通しだが、この3億トンは一般的な年の石炭輸入量に相当する。海上輸送炭市場の需給緩和に寄与することになる。
この一連の統計や報道をみるに、中国は本気で脱炭素を実施するつもりはないといっても言い過ぎではない。中国は昔ながらのエネルギーの安定供給に舵を切ったと言うべきだろう。
欧州天然ガス価格は上昇した。ロシアからの供給減少や、高水準だった風力発電の発電量の低下などが材料となった。
しかし昨日も石炭価格が上昇したことから、石炭+排出権価格が上昇したことで天然ガスに割安感が出たことも価格を押し上げたとみる。
欧州がロシアのガスなしで10月までに十分な在庫を詰めるとは考え難い。ガスは電力向け、というイメージが強いが化学製品の原料でもある。
そのように考えると産業への影響は甚大であり、EUが足並みを揃えて、今のタイミングでロシアに対するガス制裁の決定は難しいと考えられる。欧州はただでさえ足並みが揃いにくく決定に非常に時間が掛る仕組みの地域である。
仏大統領選挙でルペン候補が追い上げていることも、結局現状のインフレへの不満が影響しているとみられるが、彼女が勝利した場合EUの結束が大きく揺らぐリスクは小さく無い。
それが好ましいことかどうか分からないが、「ガスや石油の安定供給」を彼女は口にしており、ロシアに対する制裁が骨抜きになる可能性はあろう。そもそもルペンはプーチン擁護派である。
とは言え、今のところ中長期的に脱ロシア戦略をEUは進める方針であるが、脱ロシアが完了後はガス・LNG市場は需給が緩和して下落に転じる可能性が高いと見ている。ガスに関しては「上流部門投資を制限」という枷は外されたと考えて良いだろう。
欧州最大の発電需要を有するドイツの風力発電は再び低下している。しかし水準は高い。
米国天然ガス価格は東部の気温低下予報と欧州向けの輸出増加観測、米国内天然ガス在庫水準の低さから高値での推移が続いている。
JKMは総じて期先の価格が上昇した。欧州の脱ロシアが進む中ではスポットガスの調達圧力が強まることになるため。特に昨日は期先(2023年以降)の上げが大きく、構造変化を意識した買いが入っている可能性が無視できなくなってきた。
また、日本政府がロシア炭の購入を段階的に減少させる方針を示したことで、代替燃料としてガスの比重がさらに高まるとみられていることも価格上昇に寄与しているとみられる。
なお、中期的には脱ロシア完了後にJKM価格も下がると予想されるが、それが達成されるまでの移行期間中はガス価格は高い状態が続くというのがメインシナリオ。
岸田総理大臣は今夏・今冬の電力市場需給の逼迫を懸念して原子力も含めた発電ミックスの見直しに言及した。今年は猛暑が見込まれるため、万一電力供給不足になった場合人命に関わる。
また、人命を優先するため猛暑・厳冬時には工場の稼働は低下を余儀なくされる可能性が高く、ただでさえ円安による物価上昇、調達コストの上昇にあえぐ製造業からすれば夏冬の工場の稼働停止リスクは業績に大きな悪影響を及ぼすと考えられる。
4月3日時点の日本の発電用LNG在庫は166万トン(前年同月末201万トン、過去4年平均190万トン)と先週から小幅に増加した。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。
4月4日~10日のLNGトレードだが、取引量は前週比▲5%の760万トンとなった。スポット取引のシェアは23%と前週の25%から低下。
スポット契約はインドとバングラディシュ向けが33万トン増加、長期契約は韓国や東南アジア向けが減少したが、欧州向けが増加した。
全体で日本中国韓国台湾の輸入は▲44万トン(韓国▲58万トン、中国▲35万トン、台湾+10万トン、日本+39万トン)となった。
3月の中国の天然ガス輸入は前年比▲8.6%の798万トン(前月▲5.9%の858万トン)と伸びが減速したが、過去5年平均は上回る水準となっている。
中国の天然ガス国内生産量は昨年12月を最後にまだ更新されていないが、国家発展改革委員会は、2025年までに2,300億立方メートルまでの生産を増加させる計画である。2021年の生産量は1,950億立方メートルだった。
オリンピック・パラリンピックの影響で需要が減少している可能性もあるが、2月の電力消費量が前年比+16.9%であることを考えると、やはり国内の供給能力が改善していると考えるのが適当だろうか。
本日の石炭価格は南アフリカのRichards Bayの稼働が通常に戻ったとの報道を受けて価格には下押し圧力が掛ろうが、主要国からの輸出が回復していない状況下、価格は高値を維持しよう。
LNG・天然ガスは石炭価格の上昇や、ロシアの戦闘継続、夏場・冬場に向けた調達圧力の強まりでやはり高値維持の公算。
※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は上昇した。中国のロックダウン解除方針や、景気刺激のために中国人民銀行が追加緩和のタイミングを測っているとの報道を受けて、景気刺激への期待が高まったことや、LME非鉄金属価格に対する説明力が高いドル指数がリスクテイク再開で下落したことが材料となった。
昨日発表された3月の中国の貿易統計では、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲8.7%の50万4,009トン(2月+12.1%の45万9,461トン)と減速した。過去5年の水準との比較では過去5年平均を上回っているため「少ない」という訳ではないが、少なくとも前月からは減速していることは否めない。
一方、銅精鉱の輸入は前年比+0.7%の218万4,257トン(前月+15.6%の208万トン)と高い水準を維持している。しかし、足下、中国のTCは高止まりしており輸入鉱石の水準は例年を上回っているものの、世界の鉱石需給は緩和しているとみられる。
実際、中国の大規模銅製錬事業者の3月の稼働率は90.3%と前月の90.9%から低下しており、過去5年平均の91.5%も下回っている。3月はパラリンピックやロシアの侵略戦争による資源価格高騰で、多くの商品の供給に支障が出た。
また3月後半にはオミクロン株の影響によるロックダウンが発生し、その影響が小さくなかったようだ。しかし、この状況は時間経過と共に解消に向かうと予想される。
2月の銅スクラップの輸入は前年比+36.6%の10万9,806トン(前月+46.2%の16万2,861トン)。
本日は中国の経済活動再開観測を受けて上昇余地を探る動きになると考える。しかし、一旦落着いたとはいっても米国の金融引き締め方針に大きな変化はないため、ドル指数の上昇が上値を抑えることになるだろう。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄鋼製品先物は上昇した。
発表された中国の貿易統計で鉄鋼製品輸入の減少と輸出の増加が確認され、域内の製品需給タイト化観測が強まったことが鉄鋼製品価格を押し上げたが、鉄鋼原料に関しては輸入の減少を受けて低下した。
3月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲23.4%の101万1,330トン(前月▲9.1%の95万トン)と前月からは回復した。しかし、パラリンピックやロシアの侵略戦争の影響で物流などに混乱があったことから昨年の水準を大きく下回っている。
2月の中国粗鋼生産は前年比▲9.7%の7,496万トン(前月▲9.5%の8,169万トン、12月+2.3%の8,619万トン、11月▲25.1%の6,931万トン、10月▲24.5%の7,158万トン、9月▲21.2%の7,375万トン、8月▲13.2%の8,324万トン、7月▲8.4%の8,679万トン、6月+1.5%の9,388万トン、5月+6.6%の9,945万トン)と減少傾向を持続している。
中国政府による住宅市場規制強化とそれに伴う鉄鋼需要の減少がボディ・ブローのように効き始めているといえる。
3月の鉄鋼製品の輸出は前年比+34.4%の494万4,880トン(前月▲26.1%の362万トン)と減速している。やはり、オリンピック・パラリンピックの影響やロシアの侵略戦争による物流への影響が無視できなかったとみられる。
3月の鉄鉱石の輸入は前年比▲14.5%の8,728万トン(前月▲10.2%の8,130万トン)と減速している。鉄鉱石の港湾在庫が積み上がっていることによる輸入減少や、ロシアの侵略戦争でウクライナからの鉄鉱石供給が制限されていることも多少影響したと考えられる。
3月の石炭は原料炭・燃料炭合計で前年比▲39.9%の1,642万3,000トン(前月▲45.9%の1,123万トン)と低水準となった。昨年、中国は国内炭の生産を大幅に増加させた。
その後、中国国家発展改革委員会は石炭生産の強化方針を示しており、恐らく国内炭の生産増加によって海外炭の需要が減少したと考えられる。
国営メディアによると石炭生産目標は昨年12月の過去最高水準を上回る1,260万トン/日に設定しているとされ、このペースであれば31日の月は3,906万トンの石炭が生産されることになる。
生産能力は約3億トン積み増す見通しだが、この3億トンは一般的な年の石炭輸入量に相当する。海上輸送炭市場の需給緩和に寄与することになろう。
2月の中国の原料炭輸入は前年比+298万6,580トン(前月+76.5%の551万1,153トン)と急減速した。洪水の影響と見られる、豪州炭輸入の減少(▲132万トンの影響が大きかった。
本日は、中国のロックダウンが徐々に解除となる方針が示されていることから鉄鋼製品価格には上昇圧力が掛り、それを受けて鉄鋼原料価格も上昇余地を試す動きになると考える。
◆貴金属
昨日の貴金属価格は金銀プラチナが上昇、PGMが小幅に下落した。金価格は実質金利が上昇したため基準価格は1,372ドル(前日比▲8ドル)と低下したが、リスク・プレミアムが606ドル(+19ドル)と上昇したため、仕上がりで比較的大きな上昇となった。
銀は金価格がこの状況でも大きく上昇していることから「貧者の金」としての需要が高まり金銀レシオを引き下げながら上昇、基本、供給過剰で投機的な動きに連れやすくなっているプラチナも、金銀に対する割安感から物色された。
パラジウムは小幅に下落。50日移動平均線のレジスタンスラインを上抜け出来なかったこともあって、テクニカルな売りに押されたと考えられる。
本日も地政学的リスクの高まり、クレジットリスクの高まりヘの懸念から安全資産としての金の需要が増加していること、それによって貴金属の絶対価格水準が上昇していること、欧州の「脱ロシア」が進んでいることによる供給不足から貴金属セクターは高止まりを予想。
◆穀物
シカゴ穀物市場は小幅に上昇した。ドル指数が下落したこともあり、需給ファンダメンタルズのタイトさを材料に買いが入った形。
昨日発表された中国貿易統計では大豆の輸入が増加し、過去5年水準を上回った。これは直近、在庫統計が開示されていないが、中国の大豆ミール在庫水準は過去5年レンジを下回っており、恐らく国内の飼料向けの大豆ミールが不足しているため、大豆輸入を増加させているとみられる。
本日も基本的に需給バランスがタイト化するとの見方が根強いことから、上昇余地を探る動きに。
※穀物セクターのデイリーコメントは4月一杯で終了となります(不定期ですがMRA's Eyeでの農産品セクターの解説は継続の予定です)。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
むしろこの可能性は高待っており、もはやメインシナリオか。
・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。
また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。
ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。
・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
◆本日のMRA's Eye
「米石油統計レビュー 米国の増産は進まず」
昨日発表された米石油統計は、原油が予想比弱気、製品が強気な内容だった。
原油は生産は横這いだったが、製油所の稼働率が前週比▲2.5%の90.0%と低下したことで処理量が減少、在庫は+9.4MBDの大幅な増加となった。
これにより在庫日数も前週比+1.2日の26.1日と上昇したが、過去5年平均(25.3日)を下回っており、在庫水準はまだ十分ではない。
またWTIの価格に大きな影響を与えるクッシング在庫は前週比+0.5MB(前週+1.7MB)と増加幅を縮小はしたが増加している。PADD2の輸入は前週比▲0.4MBDと減少したが、稼働率が▲5.0%と大幅な低下となったことが影響したようだ。
原油に関しては、ここまで価格が上昇しているにもかかわらず、シェールオイル企業の増産意欲が高まっていない点が気になるところ。1.コロナの影響による働き方の変化、2.脱炭素の影響、が背景にあると考えられる。
今回米国は積極的にSPR(戦略備蓄)を放出することを決定したが、OPEC諸国の増産が期待できない中で「読める」供給は自国内生産しか無いのだが、思った増産になっていない状況。
ガソリンは製油所の稼働率が低下したが、得率が改善したため生産は+0.4MBDの9.5MBDに増加。出荷も▲0.1MBDと減少したが在庫は先週に続き▲3.6MBの減少となった。
しかし、在庫の絶対水準は過去5年平均を回復しておらず、製品出荷が急速に減少して過去5年平均を下回っているが、日数ベースも輸出分も含めて24.6日(前週比▲0.3日)と過去5年平均を回復していない。
このため、ガソリンのクラック・スプレッドは過去5年の最高水準を大きく上回る34.40ドルで推移している。需要が減速しているが、生産者の増産バイアスが掛りやすい状況。
ディスティレートは得率の低下(▲0.4MBD)と輸出の増加を受けた総出荷の増加を受けて、在庫は▲2.9MBと減少、在庫の絶対水準は過去5年の最低水準を下回っている。
製品出荷は過去5年平均を下回っているが、在庫の絶対水準の低さから在庫日数は21.5日(▲0.7日)と低下し、過去5年の最低水準(23.5日)を大きく下回っている。
灯油のクラックは53.32ドルと大幅に上昇しており、こちらも水準的には増産バイアスが掛りやすい状況。特に現在、世界的なディスティレート在庫の不足が指摘されており、価格上昇が顕著になっている。
こうした製品価格の上昇にも関わらず増産意欲が回復していない。製品価格上昇によるレーショニングが意識され始めていることが要因として挙げられる。実際、全製品出荷は過去5年の最高水準を上回っていたが、直近では2019年比で▲0.9%の19.90MBDと減少している。
しかし、輸出を含む総出荷はまだ2019前年比で+2.7%の25.91MBDと高い水準を維持している。これは海外の景況感が改善している、というよりも脱ロシアで米国からの調達を増加させている可能性が考えられる。といっても特殊な需要であり、やはり価格上昇によるレーショニングをそろそろ意識する必要があるのではないか。
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