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ロシア制裁強化観測で上昇
  • MRA商品市場レポート

2022年4月11日 第2170号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ロシア制裁強化観測で上昇」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は軒並み水準を切り上げた。米国の金利上昇に伴うドル高進行が金融面でドル建て資産価格を下押しするものの、ロシアに対する制裁強化の動きが石炭から貴金属に及ぶに至り、供給面が強く意識されていることが価格を押し上げることとなった。

結局の所、ロシアの軍事侵攻が終了し、何らかの理由で供給が回復するか、あるいは金融引き締めや価格高騰で需要が減少するか、いずれかが起きない限り多くの資源価格は高止まりしそうである。

週末はLPPM(London Platinum & Palladium Market)がPGMに関して、ロシア2社の登録停止を決定した。ブランドの受渡を禁じる措置を決定した。これとは全く別だがEUはロシア炭の禁輸を進める方針である。

着実に欧州は「脱ロシア」に舵を切っており、これが広がる可能性が高いことがさらに供給リスク顕在化への懸念を強めているようだ。

先物市場は潜在的な供給停止(政治の決断による)によって「意図的にショートポジションを長期にわたって取り難くなっている」といえ、価格を押し上げると共にマージンコールを引き上げ、それに伴う市場退場が進む中では流動性が低下し、さらに価格変動率が上がり...という悪循環に陥っている。

しかし当面は物量が増加するような材料は見当たらず、価格の変動性は高まることが予想される。

【本日の見通し】

週明け月曜日はロシア・ウクライナ情勢の影響が大きいことに変わりは無い。EU外相理事会が予定されているが、追加制裁に関しては先日議論があったため追加で月曜日に何かある、という感じではなさそうだ。

それよりは日増しにタカ派ヘのシフトが鮮明になりつつある米FOMCメンバーの発言と、米3年債入札動向を受けたドル指数動向に注目したい。

またオミクロン株の感染拡大を受けたロックダウンの影響により、経済活動が鈍化している中国のCPI・PPIにも注目。

企業の調達コストの上昇は続く一方で最終消費は弱く、足下の中国経済をテコ入れするには公的需要を増加させることが必要であることを確認する内容になるのではないか。

3月中国PPI 市場予想 前年比+8.1%(前月+8.8%)CPI +1.3%(+0.9%)

【昨日のトピックス】

昨日発表された日本の「倒産件数」は587件と10ヵ月連続の減少となった。倒産業種は主要7業種中3業種は前年同月から倒産数が増加、最も件数が多かったのはサービス業(140件→148件)で、パチンコなどの娯楽産業の倒産も増加している。

コロナの影響による不況倒産が増えていたが、コロナ対策の資金繰り支援策が功を奏したといえる。

この倒産の中で目を引いたのが、ホープエナジーの300億円。3月の倒産の中では最も負債規模が大きい。これはLNG価格の上昇や厳冬の影響で調達コストが上昇し、販売価格を上回って逆ざやとなってしまったことが影響している。

自社で発電設備を保有しない企業は電力市場から電気を調達する必要があるが、このとき、調達している価格と販売している価格の指標が同じであれば一定のマージンを確保して販売が可能であるため、市場価格が上昇してもそのリスクは限定される(最終消費者がそのリスクを負うことに)。

しかし、JEPX価格で調達した物を他の大手電力会社の価格-αで販売しているケースも多く、JPEX価格の上昇が大手電力会社の価格を上回れば逆ざやになってしまう。

そうならないようにリスクマネジメントを事前にしておく必要があるのだが、恐らく、同じような調達・販売構造になっている新電力は他にもあると考えられ、市場リスクへの対応整備が出来ていなければ猛暑といわれる今年の夏に、再び同じようなリスクが顕在化する可能性は否定出来ない。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。OECD諸国の原油備蓄協調放出や、米国の金融引き締め加速観測を受けたドル高進行が価格を下押ししてきたが、今後、ロシアに対する制裁が原油などにも及ぶ可能性が高まる中で需給環境の改善(需給緩和)期待が後退する中、テクニカルポイントまで原油価格が下落したことから週末を控えて安値拾いの買いが入った形。

目先、需給緩和要因は、1.戦略備蓄放出の大盤振る舞い、2.西側諸国(除く日本)の金融引き締めによる景気減速観測だが、1.は恐らく年後半には「再び在庫を積む動き」で逆に価格上昇要因となり、2.は年後半には価格下落要因となろう。

この時間稼ぎの間に代替供給先を確保出来なければ、「脱ロシア」が完了するまでは原油価格が高止まりする可能性は高い。

ロシア以外の供給先としては、米シェールオイル企業の増産(これは米政府も要請済み)、イラン・ベネズエラの供給再開だが、後者はOPEC諸国の反米機運の高まりから容易ではない。

現在のシナリオ別原油価格見通しでは、OECD諸国が「OPECの代わりに」増産したため、4.の状態にあると考えられる。

下記シナリオは数ヵ月の短期的なものであるが、長期的にはレーショニング・金融引き締めの影響・景気循環による需要減少による「基準価格(供給懸念が後退したときの着地点となる価格)は徐々に切り下がっていると考えている。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない(ないしはその可能性が強く意識される) Brent 125-140ドル

2.1.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 110-130ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 100-125ドル

4.3.の状態で産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 80-115ドル

↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ

↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在は徐々にこちらに移りつつある)

5.ロシアがウクライナから撤退Brent 90-100ドル

6.5.に加えて産油国のいずれかが増産する(規模による)Brent 70-90ドル

※産油国の増産は、鍵となるイランで130万バレル、ベネズエラで50万バレル程度を想定している。米国の戦略備蓄100万バレル放出は半年の次元付。

週明け月曜日も基本的にはロシア・ウクライナ情勢と、米国の金融引き締め見通しを受け、強弱材料が混在する中で高値での推移が予想される。

◆石炭・LNG・天然ガス

豪州石炭スワップ先物価格は上昇した。EUがロシア炭の禁輸方針を打ち出したことや日本もロシア炭の輸入量削減方針を示したことで、スポット調達の増加観測が強まったことが背景。

欧州最大の経済規模であるドイツの発電量(7日移動平均ベース)は増加している。この1~2週間、風力発電の発電量が急増していることによる。

今後、産炭国であるドイツが脱ロシアの中で自国産の石炭生産を回復させるのかどうか。もししなければ恐らく海外炭を求めることになるためアジア太平洋周りの石炭価格も上昇圧力が掛ることが予想される。

直近2月の生産統計では褐炭・瀝青炭・無煙炭とも生産指数が急減している。これは1.風力発電の回復、2.国内炭ではなく海外輸送炭を物色していること、が背景にあろう。であれば、海上輸送炭価格は高止まりする可能性が高い。

欧州天然ガス価格は期近が下落した。欧州は当面、ロシア産ガスの輸入を継続する方針であること、気温の上昇による季節要因が背景にあると考えられる。しかし、LNG在庫の水準はまだ過去5年平均に達しておらず、天然ガス在庫の水準も低い。

ロシアのガスなしで10月までに十分な在庫を詰めるとは考え難い。仮にガスが無かった場合、ドイツの製造業、特に化学セクターは大きな影響を受けることは確実であり、EUが足並みを揃えて、今のタイミングでロシアに対するガス制裁の決定は難しいのでは無いか。欧州はただでさえ足並みが揃いにくく決定に非常に時間が掛る仕組みの地域である。

なお、Gazpromが欧州に保有するタンク(総キャパシティの1割程度)に在庫を積んだとしてもそれは安全保障上のリスクのある在庫であるため、実質的には現在の貯蔵能力の90%が在庫積増しの上限、といえる。

中長期的に脱ロシア戦略をEUは進める方針であるが、脱ロシアが完了してからはガス・LNG市場は需給が緩和して下落に転じる可能性が高いと見ている。ガスに関しては「上流部門投資を制限」という枷は外されたと考えて良いだろう。

仏独の原発の稼働率はフランス・ドイツとも低水準を維持している。

米国天然ガス価格は西部の気温低下予報と、欧州向けのガス輸出増加観測が価格を押し上げていたが、週末は欧州ガス価格の下落もあって小動きだった。JKMは小幅に上昇している。

今のメインシナリオでは脱ロシア完了後にJKM価格も下がると予想されるが、それが達成されるまでの移行期間中はガス価格は高い状態が続くというのがメインシナリオである。

4月3日時点の日本の発電用LNG在庫は165万トン(前年同月末201万トン、過去4年平均190万トン)と再び減少している。今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。

3月21日~27日のLNGトレードだが、取引量は先週と変わらず770万トン(前週▲5%の770万トン)となった。スポット取引のシェアは28%と前週の34%から低下。長期契約ベースの調達が、スポットベースの調達減少を相殺した形。

スポット契約は英国とフランスの調達が減少、長期契約は逆に英国とフランスの調達が増加した。

週明け月曜日の石炭価格は、EUの脱ロシア炭の動きを背景に上昇余地を探る展開を予想。

LNG・天然ガスはロシアとの供給契約は当面継続する見通しであり価格の下押し要因となるが、在庫水準はまだまだ低いこと、脱ロシアが進む中ではスポットのLNG市場需給はタイトになるため、石炭と同様、高値維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は総じて上昇した。ドル高が進行する中で下落するものの、これまでの下落で割安感が出ていたことから安値拾いの買いが入るため下値余地は限定されると見ていたが、買い戻し圧力がドル高進行の影響を上回った。

しかし、LMEが取引の需給バランスを見る上で重要な期間構造を見てみると、銅・鉛・アルミは「コンタンゴ」の状態となっており、一時の需給タイト感は解消している。

それに対してロシアに対する制裁強化によるエネルギー価格上昇が影響している亜鉛、青山控股集団の売りポジション解消観測が背景にあるニッケル、半導体向け需要と供給減少観測が根強いスズはバックワーデーションの状態である。

なお、2003年以降、中国が国際商流に組み込まれて以降、LME指定倉庫在庫の合計ははリーマン・ショック前に大きく減少したが、現在の水準は96万1,000トンと、過去最低となっている。

LMEでの不祥事も多いこと、マージンコールの引き上げによる流動性の低下からLME指定倉庫を「最後の需給調節の場」として使う動きが減少しているのかもしれないが、それにしても在庫水準が低い。

在庫の水準が低いことが示唆するものは、1.需給がタイトであること、2.何かあった時のバッファが少ないため価格の変動性が高まること、が代表的なところであり、足下の米金融引き締め・ドル高進行にもかかわらず高値を維持しているのは、1.2.の両方の要因によるものだろう。

価格の変動性が高いが故に、ポジションを閉じざるを得ず、同時にLMEから離れていく市場参加者が増えるという悪循環に陥っているといえる。

週明け月曜日も割安感や上述の通り現物が不足する中での需給タイト感から高値を維持すると考える。

しかし、期間構造をみるに徐々に需給が緩和し始めている金属も多く、ドル高進行などのファイナンシャルな要因と相まって、結局高値でのもみ合いになると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は下落、上海鉄鋼製品先物は中心限月が下落した。

鉄鉱石は港湾在庫が減少したことが材料となった。週間の鉄鉱石港湾在庫統計は前週比▲70万トンの1億5,490万トン(過去5年平均1億3,755万6,000トン)と水準は高く、在庫日数も36.9日(▲0.2日)と過去5年平均である31.3日を上回っている。

原料炭在庫は155万トンと過去5年平均である166万6,000トンを下回っている。

中国のコロナ感染拡大の影響で需要と共に生産が減少しているが、中国の鉄鋼業PMIの内数である新規受注÷在庫レシオは上昇しているため足下の製品・鉄鋼原料の需給は統計よりもタイトであり、高値を維持している。なお、中国唐山市の鉄鋼所稼働率は74.8%と過去5年平均である78.7%を下回っている。

鉄鋼製品価格からの回帰分析による鉄鉱石価格は158ドル程度、原料炭価格は251ドル程度が目処であり、それ以上は流動性プレミアムと考えられる。

週明け月曜日も在庫レシオの低さから一定の在庫積増し需要が見込まれるため、高値維持の公算。

◆貴金属

昨日の貴金属価格は上昇した。実質金利は横這いだったため金の基準価格は1,391ドル(前日比+1ドル)だったが、リスク・プレミアムが555ドル(+14ドル)と上昇したことが影響した。

この上昇により、2016年のデータを基準に弊社基準で算出しているリスク・プレミアムは、過去最大となった「米国債格下げショック」の574ドルが目前となっている。

仮に米国の金融引き締め加速や足下のインフレを背景に、新興諸国でのデフォルトが発生した場合、さらにこのリスク・プレミアムは上昇し「新たな世界」に突入する可能性が出てくる。

新たな世界、とはリスク・プレミアムの水準自体が切り上がることを意味する。これは1989年以降の冷戦が終了した比較的平和な時代から、再び非常に大きなリスクを抱えた時代になるということだ。

なお、第一次オイルショック・第二次オイルショックの時の「リスク・プレミアムの金価格に対する割合」は最大で67.1%だった。2002年以降の分析では62.6%が最大である。6割程度がリスク・プレミアムとなる。

もし仮に、この水準が基準となった場合、現在の金基準価格が1,390ドルであるためこの価格を基準とすると3,475ドル程度までの上昇余地が出てくることになる(さすがにここまでの上昇が起きるときは、市場が壊滅的に混乱している時だと思われるが)。

銀は金価格の上昇を受けてほぼ同じ上昇率で上昇、PGMはプラチナが比較的大きな上昇となった。

パラジウムは9%近い上昇となった。これは、LPPM(London Platinum & Palladium Market)は、ロシアの2業者の登録を停止したことが影響した。平たく言えば、この2社(JSC KrastsvetmetとPrioksky Plant of Non-Ferrous Metals)のブランドは受渡適格ではなくなるということである。

3月7日にはLMBA(ロンドン貴金属市場協会)がロシアの精錬業者6社の登録停止を発表している。

本日は地政学的リスクの高まりから安全資産としての金の需要が増加していること、それによって貴金属の基準価格が上昇していること、欧州の「脱ロシア」が進んでいることによる供給不足から貴金属セクターは高止まりを予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇。ロシア・ウクライナからの供給が絶望的な状況になる中、ラニーニャ現象発生による生産下振れリスクが非常に強く意識されていることがドル高にも関わらず価格を押し上げた。

週明け月曜日は、週末の価格上昇が大きかったことやドル高進行から一旦下落するとみているが、需給ファンダメンタルズがタイトであることから高値維持の公算。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米中対立激化にロシア問題も加わり、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

むしろこの可能性は高待っており、もはやメインシナリオか。

・自由主義国vs専制主義国の対立加速、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

ウクライナへの侵略戦争は長期化がほぼ確実であり、景気下押し要因となるという展開はメインシナリオとなる可能性。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。


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