内外金利差拡大・円安は次第に鈍化か
- MRA外国為替レポート
2022年4月25日号
◆先週の市場総括
先週は円安が一段と進んだ後一服。日本政府・財務省サイドからは急激な円安に対する警戒感、好ましくないとの発言が相次いだ。G20の場で日米通貨当局が為替相場について議論するとの発言もあり、ひとまず円を買い戻す動きが散見された。
ただ、パウエル議長をはじめFRB当局者からは積極的な利上げを実施する発言が続き米長期金利は一段と上昇。米10年債利回りは一時2.95%をつけ週末は2.90%近辺。2年債は2.67%。ドルを支えた。
ドル円相場は週初126円台半ばで始まり週央には一時129円台半ばへ上昇したが、127円台へ反落。ただ週末にかけて米金利上昇に支えられ底固く再び129円台をつけ、週末の引けは128円台半ば。
ユーロも対円で堅調。ECB当局者から利上げに前向きな発言が続き、日銀のスタンスとのコントラストが明確に。一時140円をつけ週末は138円台後半。
米国株は好決算を受けて週前半は堅調に推移したが、週末には急速な利上げによる景気鈍化懸念から急落した。日経平均は米株高や円安に支えられ27,000円の大台を維持して引け。
月曜日の東京市場では日経平均が下落。前週末の米長期金利上昇、米国株がハイテク中心に下落したことを嫌気して成長株中心に下落。中国の経済指標は弱く景気減速懸念、ウクライナ情勢への懸念も下押し要因となった。
前場には▲500円近く下落。しかし後場は下げ一服となり買い戻しで上昇。下げ幅を縮めて▲293円安の26,799円で引けた。
発表された中国のGDP(1-3月期)は前年同月比+4.8%と前期+4.0%から加速し予想を上回ったが、政府の今年の成長目標5.5%には遠い水準。
3月の小売売上高は感染拡大・ロックダウンの影響を受けて前年同月比▲3.5%の減少と前月+1.7%からマイナスに転じ予想よりも悪化した。鉱工業生産は+5.0%と前月+4.3%から加速。ドル円相場は126円40銭で始まり朝方乱高下。70銭、50銭、80銭と上下に振れた後、126円20銭台に下落した。
黒田日銀総裁が為替相場の短期的な過度の変動は好ましくない、と述べたことで円が買い戻された。
ただその後は円高も一服、欧米市場にかけては126円60銭近辺でもみ合いとなった。
米10年債利回りはアジア時間に一時2.88%に上昇しドルを支えた。ユーロ円相場は136円60銭で始まり137円に上昇した後、黒田総裁発言を受けて136円50銭に下落。その後は136円70銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.0800近辺で始まり1.0790へじり安。
米国株は前週引値を挟んで方向感なく上下。長期金利上昇や原油高が全般に重石となるなか、金融株やエネルギー株はしっかり。
NYダウは前週末比▲39ドル安の34,411ドル、ナスダックは▲18ドル安の13,332ドル。VIX指数は▲0.53ポイント低下して22.17。
原油価格WTI先物は、リビアの石油施設を反政府デモが占拠したことを受けて108.21ドルに上昇。
米10年債利回りは2.855%、2年債は2.448%で引け。朝方一時ドル安に振れ、ドル円相場は126円50銭割れに下落した後、上昇して127円ちょうどで引け。ユーロドル相場は1.0810へ上昇した後、反落して1.0770~1.0780。ユーロ円相場は136円90銭に小幅上昇して引けた。
火曜日の東京市場では日経平均が上昇。米国株はやや軟調だったが下値は固く、円安進行で輸出関連株が買われ、上昇幅は一時+300円。ただ米長期金利上昇やウクライナ情勢への警戒感は根強く伸び悩み。引けは+185円高の26,985円。
為替市場では急速に円安が進んだ。ドル円相場は127円ちょうどで始まり大幅高。午後には128円30銭に達した。ユーロ円相場も136円90銭から138円40銭に急騰。その後、財務相の円安警戒発言で一時的に円高に振れたものの、欧米市場に入るとさらに円安が進んだ。
ドル円相場は128円40銭に上昇し、10銭に下落し、128円60銭に上昇したあと、じり高となりNY市場の引けは128円90銭。ユーロ円相場は138円80銭に上昇し30銭に反落したあと再び騰勢を強めてNY引けは139円10銭。
ユーロドル相場は東京市場では1.0780で始まり1.0770中心に推移。欧州市場では1.0810に上昇したあと、米国市場は1.0790~1.0800を中心に上下して引けは1.0790近辺。
ドルインデックスは100.97と101ポイントに接近。米長期金利は大きく上昇。
10年債利回りは2.942%と3%の大台目前に迫り、2年債は2.602%。ドル金利上昇がドルを押し上げた。
また金利上昇にもかかわらず米国株が堅調。堅調な景気動向を背景に、消費関連や景気敏感株が買われた。好決算銘柄中心に堅調。また長期金利が上昇するなかでもハイテク株がしっかり。リスク選好も円安を促した。
NYダウは+499ドルの大幅高で34,911ドル。ナスダックは+287ドル高の13,619ドル。VIX指数は▲0.80ポイント低下して21.37。
発表された米国の住宅着工件数(3月)は季節調整済み年率換算で1,793千戸と前月1,769千戸から増加し15年9か月ぶりの高水準。ただ人手不足、建材価格上昇、住宅価格上昇、長期金利上昇が今後ブレーキになるとの見方が根強い。
水曜日の東京市場では日経平均が上昇。前日の米国株が大幅高となったことから買い優勢となり、また円安が大きく進んだことで輸出関連株が買われた。上げ幅は一時+400円。
ただ昼前から円安が一服し、また3月決算発表前の持ち高調整が入り後場は伸び悩み。引けは+232円高の27,217円。
為替市場では早朝に大きく円安が進んだ。ドル円相場は128円90銭で始まり129円40銭へ、ユーロ円相場は139円10銭から70銭へ。ただその後は円安一服。ドル円相場は上下しながら昼前には129円ちょうど。その後128円10銭近辺へ急落した。ユーロ円相場も138円60銭へ下落。
磯崎官房副長官や鈴木財務相らの円安けん制発言、G20会合を前に、ひとまず利益確定の円買い戻しが入った。午後は円買い戻しは一服して円安に振れ、128円70銭近辺、139円ちょうど~20銭でもみ合い。
欧州市場に入ると再び円買い戻しにより円高に振れた。ドル円相場は127円70銭へ、ユーロ円相場は138円40銭へ。その後ドル円相場は128円台に反発したものの米長期金利低下で上値重く127円50銭に下落、その後70銭~80銭でもみ合い引けた。
ユーロ円相場は138円80銭で引け。ユーロドル相場は東京市場では1.0790近辺でもみ合いの後、午後は1.0810~20。応手市場では1.0860~70に反発した後1.0820~1.0870で上下し、NY引けは1.0850。
米国株はまちまち。企業決算で明暗が分かれた。ネットフリックスは初の減収で大幅安。P&Gはコロナ禍による需要増と値上げ浸透による好決算で大幅高。全般には通信・ハイテク株が弱く、ヘルスケア・ディフェンシブ銘柄が堅調。
NYダウは+249ドル高の35,160ドル。ナスダックは▲166ドル安の13,453ドル。VIX指数は▲1.05ポイント低下して20.32。
米長期金利は近々インフレがピークアウトするとの見方から投資家の買いが入り低下。10年債利回りは2.822%、2年債は2.562%。ドルインデックスは反落して100.30。
発表された米国の中古住宅販売(3月)は季節調整済み年率換算で577万戸と前月602万戸から2か月連続で減少。住宅価格は前年同月比+15.0%と大幅上昇し、金利上昇とともに需要を抑制した。
公表されたベージュブック(米地区連銀経済報告)では、米国経済は緩やかに拡大しているとされた。ただ高インフレと強い賃金上昇、ウクライナ情勢の不透明感に加わり見通しは悪化した。
インフレ圧力は依然として強いままで、企業は仕入価格の上昇を顧客に即座に転嫁。雇用は緩やかに増加しているが、労働力不足で賃金の伸びは強いまま。ただ一部では上昇鈍化も報告された。
木曜日の東京市場では日経平均が3営業日続伸。前日の米国株が堅調。米長期金利上昇が一服し警戒感が後退した。値がさハイテク株を中心に買われ、引けは+335円高の27,553円。
ドル円相場は127円80銭台で始まり30銭ほどの振れ幅を伴いながら上昇し昼には128円60銭。ただ欧州市場が始まる夕刻には127円90銭に反落した。ユーロ高ドル安の動きに押された。
ユーロが午後から夕刻にかけて大きく上昇。ECBのデギンドス副総裁が、早ければ7月にも利上げを実施、と述べたことでユーロ買いが強まった。
ユーロドル相場は1.0850で始まり1.0820近辺に下落していたが1.0930へ急騰。ユーロ円相場は138円80銭で始まり上下しながら139円20銭に上昇。その後急騰して140円ちょうど。
米国市場に入るとドルが反発した。パウエル議長の発言を警戒して早々にドル高が進んだ。議長はパネルディスカッションで、若干さらに速やかな利上げの必要性に言及。5月会合で0.50%の利上げは選択肢にある、と述べた。
一方、ECBのラガルド総裁は、欧州の成長リスクが下方に傾斜している、と警戒感を示した。米10年債利回りは一時2.95%、2年債は2.73%に上昇。引けはそれぞれ2.91%、2.675%。
ユーロドル相場は急反落して1.0840へ。ドル円相場は128円70銭を付けた後、128円10銭に反落して引けは128円30銭台。ユーロ円相場は139円40銭~70銭で上下し引けは持ち直し139円ちょうど~10銭。
米国株は下落した。決算を一部好感して朝方NYダウは+300ドル超上昇したが、朝高後は売り優勢となった。長期金利上昇を受けて反落。高PER銘柄を中心に下落した。前日までに+750ドル上昇していたことで利益確定売りも出やすかった。
NYダウは前日比▲368ドル安の34,792ドル、ナスダックは▲278ドル安の13,174ドル。VIX指数は+2.36ポイント上昇して22.68。
金曜日の東京市場では日経平均が4営業日ぶり反落。前日の米国株が大きく下げたことを受けて売り優勢。下げ幅は一時▲600円を超え26,900円に下落した。ただ27,000円の大台割れでは買いも入り後場は持ち直し。引けは▲447円安の27,105円。
ドル円相場は128円40銭近辺でもみ合いの後、上昇して60銭近辺で推移。米10年債利回りがアジア時間に2.97%に上昇しドルを押し上げた。しかしその後金利は低下し、ドルは昼過ぎに下落して15時頃には127円80銭を割った。
ユーロ円相場は139円10銭~20銭で始まり小高く40銭~50銭でもみ合い。しかし昼過ぎに反落して大きく下落し夕刻は138円30銭。円買い戻しが入った。
ユーロドル相場は1.0840近辺でもみ合い夕刻には1.0790へ下落。欧州市場に入ると円は下落。
ECBラガルド総裁が利上げに前向きな発言をしたことでユーロは上昇。ユーロドル相場は139円20銭へ。ドル円相場は128円50銭へ。ユーロドル相場は1.0840へ対ドルでも上昇した。
ただユーロ高は続かず、ユーロ円相場は138円30銭に大幅反落。ユーロドル相場は1.0770へ反落、ドル円相場は138円20銭近辺。
その後、黒田総裁の発言で再び円は急落した。総裁は、今の金融緩和を継続する必要がある、と従来の発言を繰り返し、日本経済は貯蓄の積み上がりで原油高や円安に耐性がある、と述べた。
ドル円相場は129円10銭へ、ユーロ円相場は139円10銭へ、円が急落。その後は一服しドル円相場は128円50銭~60銭、ユーロ円相場は138円60銭~80銭。ユーロドル相場は1.0770に下落したあと、反発、じり高となり1.0800近辺で引け。ドルインデックスは101.12。
米国株は大幅急落。NYダウは一時▲1,000ドル超下落した。前日にパウエル議長は5月会合で0.50%の利上げを示唆し、その後も速いペースで動くのが適切、と述べた。米長期金利は高止まり。米国株は全面安。積極的な金融引き締めが景気を冷やすとの警戒感が広がった。
NYダウは▲981ドル安の33,811ドルで引け。ナスダックは▲335ドル安の12,839ドル。VIX指数は+5.53ポイント上昇して28.21。10年債利回りは2.905%、2年債は2.678%。
◆今週の3つの注目ポイント
1.米国の経済指標
米国景気は堅調ながら、限界的な鈍化やインフレ一服の兆しなどで長期金利上昇の一服感が生じるか。逆に強い数字で長期金利をなお押し上げるか。
月曜日 シカゴ連銀全米決同指数(3月)、ダラス連銀製造業活動指数(4月)
火曜日 耐久財受注(3月、前月比、予想+1.0%、前月▲2.2%) ケースシラー住宅価格指数(2月、前年同月比、予想+19.2%、前月+19.1%) 消費者信頼感指数(4月、予想108.4、前月107.2) リッチモンド連銀製造業指数(4月、予想8、前月13) 新築住宅販売(3月、季節調整済み年率換算、予想774千戸、前月772千戸)、
木曜日 米週間新規失業保険申請件数 GDP(1-3月期、前期比年率、予想+1.0%、前月+6.9%)
金曜日 個人所得・消費支出(3月、前月比、予想+0.4%・+0.6%、前月+0.5%・+0.2%) デフレーター(コア、前年同月比、予想+5.3%、前月+5.4%) シカゴ購買部協会景気指数(4月、予想61.0、前月62.9)
2.日銀金融政策決定会合、黒田総裁会見
水曜日・木曜日の2日間にわたり、日銀金融政策決定会合が開催される。今回は展望レポートが公表される。終了後、黒田総裁が定例会見を実施。政策変更は予想されていないが、景気物価動向の判断、超金融緩和政策の継続について、何らかの変化の兆しがみられるか。
ただ黒田総裁は日本の景気は弱く、またインフレも一時的、との認識。今回号でも現状維持姿勢を再確認し、引き続き円先安感の支えとなる可能性が高い。
3.欧州の経済指標
ウクライナ情勢の悪化による景況感への悪影響や景気動向の弱さが示されユーロ安ドル高を刺激するか。
月曜日 ドイツIFO景況感指数(4月、予想88.1、前月90.8) IMF世銀総会でECBラガルド総裁が講演
木曜日 ドイツCPI(4月、前年同月比、予想+7.2%、前月+7.3%) ユーロ圏経済信頼感(4月、予想108.0、前月108.5) 消費者信頼感(4月確報)
金曜日 ユーロ圏CPI(4月、前年同月比、予想+7.5%、前月+7.4%) ドイツGDP(1-3月期、前年同月比、予想+3.7%、前期+1.8%) ユーロ圏GDP(同、予想+5.1%、前期+4.6%)
◆今週のMRA's Eye
内外金利差拡大・円安は次第に鈍化か
先週は内外金融政策格差、とくに日米格差が一段と鮮明になりドル円相場は129円台に乗せた。パウエル議長はあらためて5月会合での0.50%が俎上にある、とし、その後も速やかな利上げを継続するのが適切と表明している。
米10年債利回りは2.95%まで上昇し、2年債も一時2.7%台に上昇。日米長期金利差の拡大に連動してドル円相場は上昇している。
ニュージーランド準備銀行やカナダ中銀が米国に先立ってすでに0.50%の利上げを実施するなど、米国以外の国々でも金融政策はインフレ抑止に傾いている。その結果、日米間のみならず全般的に内外金利差が長期金利を中心に拡大。さらなる金利差拡大観測が円先安感を強め、投機的な円売りを促している。
今後注目されるのはECB欧州中央銀行の動きだろう。
米国FRBの利上げは3%台まで織り込まれている。一方、ECBのスタンスは、ウクライナ情勢を受けて景気配慮に傾くとの見方に反しインフレ重視に傾斜。EU域内の各国中銀総裁から利上げに前向きな発言が続き、ハト派とされるラガルド総裁でも利上げを示唆している。
ここからユーロの金利先高感がどこまで強まるか。ここまでの円売りの原動力がドル金利先高感だったが、ユーロ金利先高感が強まり、ユーロ円相場が主導で円安があらたに進むかが注目だ。
ただ内外長期金利差の拡大ペースはこの先鈍化が予想される。とくに米国の長期金利は3%台への利上げを織り込んだことで上昇余地が少ない。
2年債は年内数次の0.50%利上げ、年末に2.50%~2.75%への利上げ、さらに3%台への利上げを織り込み反映して2.7%台まで急ピッチで上昇。今後の上昇は、時間の経過とともに足元金利の上昇を反映してじりじりとゆっくり上昇するかたちになりそうだ。
急上昇が続いた10年債利回りは3%に接近。物価連動債で示される期待インフレ率に追いついた。短期的なインフレ期待と政策金利はなおも大きくギャップがあり、政策金利が下回るマイナス金利が続いている。
しかし10年債利回りが期待インフレ率を下回る実質長期金利のマイナスは解消された。この点も、今後の10年債利回りの上昇が鈍化するとみる根拠となる。
利上げは始まったばかりで、金利打ち止め感が生じるには時期尚早だが、織り込んだ利上げ幅、3%台への利上げは、今回の利上げ局面におけるピークに近いとみられる。
ここから年末にかけては、実際の利上げ実施による短期金利の上昇が継続するなか、一方でさらなる追加的な利上げ織り込みが続かなくなる。加えてインフレがピークアウトすれば長期金利上昇に一服感が生じる、複雑な時間帯になりそうだ。
今後鍵となるECBの利上げも足元で織り込まれ始めたが、どこまで利上げが実施されるか、ペースや水準については、景気先行き不安とともに抑制された状況が続く可能性がある。
足元で進む急速なドル高円安に対し、物価上昇対策に追われる岸田政権、財務相や幹部からは牽制発言が相次いだ。
これに対し、市場では、日米金利差が拡大するなか、あるいは日本の超金融緩和が継続し、FRBが利上げを急ぐなか、ドル高円安にブレーキをかけようとしても無理がある、との見方が根強い。
いわゆる口先介入は、実弾の為替介入の可能性を伴ってこそ効果がある。さらに金融政策と整合的でなければ効果が薄い、ともされる。
ただその考え方によれば、現状水準からさらにどこまでもドル高円安が進むということになる。金利差を得るためのドル買い円売りも、為替リスクをともなうなら、手放しで進めることはできない。
投機的なドル買い円売りは、短期金利差を得ることになるが、現状ではなおドル短期金利は1%未満で金利差は為替リスクに見合わない。
2年債では2.5%~3%の金利差があるとして、ドル安円高に振れた場合の為替リスクで耐えられるのは6円~7円となる。
足元から120円に下落しただけでも金利差のメリットは失われる。10年債では100円程度にドル安円高となれば収支はトントンとなる。口先介入は為替リスクを認識させるという点では相応の効果はある。そうしてみれば、130円の壁は近くても意外と高い。
今後は、投機的にトレンドを追う動き、日本の輸入企業によるやむを得ない円売りドル買い、がドル高円安の主要因となる。
このうち投機勢の動きはドル買い円売り一辺倒とはなりにくく、一進一退と想定される。一方、収支面に関しては、国際的な資源・食料品価格の上昇が日本の収支悪化をもたらしているため、円安による収支改善効果がなかなか見込めない。
この点が従来のドル高円安ピークアウト局面と異なる。これをもたらすのは、世界的な景気鈍化、それによる商品市況の上昇一服、インフレピークアウト感、金利先高感の後退、などだ。まだしばらく時間がかかるとみられるが、年内にはそうした状況が意識されると想定される。
現在のドル円相場のリスクバイアスは、なおドル高円安サイドが強いが、早晩中立へ、さらに年末にかけてはドル安円高サイドに傾く可能性は想定しておきたい。
主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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