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さらなるドル高円安見通しへ修正
  • MRA外国為替レポート

2022年3月21日号

◆先週の市場総括


先週は米国株が大きく上昇した。NYダウは1週間で1,800ドルの大幅上昇。停戦協議の継続、具体化が好感された。

これに伴い原油価格の高騰が一服し、WTI先物は週末には100ドル台に戻したものの一時95ドルに下落。過度なインフレ懸念が緩和したことも支えとなった。

注目のFOMCでは想定以上にタカ派姿勢が示された。0.25%の利上げは想定通りだったが、メンバーの予測では今年末に1.75%~2.00%と今年の合計利上げは0.25%×7回、今後各会合での利上げ、ないし0.50%の利上げも排除しない姿勢が示された。

また来年も利上げを継続し2.8%近辺で終了するとして、中立水準である2.4%を上回って引き締める姿勢を示した。バランスシートの縮小も次回5月会合で決定する見込み。

米2年債利回りは2%を試し、10年債は2.1%台に定着。一方、日銀金融政策決定会合では従来の超金融緩和政策を維持。黒田総裁は金融政策変更の必要性を完全否定。円安は総じて日本経済にプラスとの従来の見方を表明した。

ドル円相場は週初に117円台前半で始まり、日米金融政策格差が意識されると週末に119円台に上昇。ユーロ円相場は128円台前半で始まり大きく上昇して週末には132円に迫った。

ユーロは対ドルでも反発。1.09近辺で始まり一時1.11台前半に上昇し引けは1.10台半ば。日経平均は米国株の大幅上昇に支えられ前週末の25,100円台から26,800円台に上昇して引けた。

月曜日の東京市場では日経平均が小幅反発。ドル安円高の進行で輸出関連株に買いが入った。バリュー株、高配当銘柄もしっかり。25,400円近辺で高寄りし25,600円近辺に上昇。ただその後じり安となり、引けにかけては25,300円~400円で上下した。

停戦に向けた4回目協議を前に前向きなコメントもあり進展期待も支えになった。引けは前週末比+145円高の25,307円。

為替市場では円安・ドル高。ドル円相場は朝方から上昇。117円30銭台で始まり50銭~60銭でもみ合い、昼には117円80銭台に上昇した。その後夕刻にかけては上昇一服となり、70銭~80銭を中心に上下。

ユーロ円相場は128円20銭で始まり40銭~60銭でもみ合い、夕刻にかけて129円60銭に急騰した。ユーロ安は一服。

ユーロドル相場は1.092で始まり1.093中心にもみ合い1.09ちょうど近辺に下落していたが、1.099に急反発。4回目の停戦協議への期待感が支えとなった。

上海株は大幅安。深?が感染拡大で封鎖されたこと、中国がロシアに武器支援との報道も制裁懸念を連想され嫌気された。

欧州株は堅調。米国株もNYダウは堅調に始まり33,400ドルに+450ドル高。原油価格が下落したことも好感された。ただその後は反落。ハイテク株が大きく下落。深セン封鎖で供給懸念。また米中対立激化の懸念から中国企業のADRが大幅安。長期金利上昇で高PER銘柄が下落した。

ナスダックは▲262ドル安の12,581ドル。NYダウは上昇幅を縮めほぼ前週末と変わらずの32,945ドルで引けた。VIX指数は+1.02ポイント上昇して31.77。

米10年債利回りは2.143%に、2年債利回りは1.865%に上昇。年初来最高水準。原油価格WTIは103.01ドル。

火曜日の東京市場では日経平均が小幅上昇。原油価格が下落したことが好感された。WTI先物は昼前に97ドル台に。またドル高円安の進行で輸出関連株がしっかり。

ただ中国がロシアを支援との報に中国株が下落、中国関連株の重石となった。

またFOMCを前に成長株の一部が売られた。25,200円台で小幅高寄りし400円台に上昇したが引けにかけてはじり安。前日比+38円高の25,346円。

ドル円相場は118円20銭で始まり30銭を中心に上下。ユーロは堅調。ユーロ円相場は129円30銭~40銭で始まり130円ちょうど近辺に上昇した。ユーロドル相場は1.094近辺で始まり1.098へ上昇。

夕刻、欧州市場が始まるとユーロが急騰、ドルが急落、ドル円相場は下落し、ユーロ円相場は乱高下。ウクライナとロシアの協議が続き、原油価格の下落とともに、FOMCを前にひとまずポジション手仕舞いが入った可能性がある。ユーロドル相場は1.1020へ急騰、ドル円相場は117円70銭へ急落。

ユーロ円相場は129円30銭台に急落した後、90銭に急反発、その後40銭~80銭近辺で値動き荒く上下した。ドル円相場は持ち直し118円10銭に反発し、117円80銭~118円ちょうど。ユーロ高はその後一服。

発表されたドイツZEW景況感指数(3月)はウクライナ情勢を受け▲39.3と前月54.3から大幅に悪化した。ユーロドル相場は1.098~1.100近辺で推移した。

米国株は大幅高。原油価格WTI先物が一時95ドルを割り込み、インフレ高進による景気悪化懸念が緩和した。景気敏感株、ハイテク株、ともに上昇。NYダウは一貫して上昇し+599ドル高の33,544ドル、ナスダックは+367ドル高の12,948ドル。VIX指数は▲1.94ポイント低下して29.83。

原油価格WTIは96.44。金相場は3営業日続落して1929.7ドル。米長期金利は高止まり。10年債利回りは2.149%、2年債利回りは1.853%。

ドルは上昇、ユーロは反落。ドル円相場はじり高となり118円30銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.093に下落して引けは1.095。ユーロ円相場は129円30銭台に下落して引けは129円60銭。

発表されたNY連銀製造業景気指数(3月)は▲11.8と前月3.1から大きく悪化した。生産者物価指数(2月)は前年同月比+10.0%と前月+9.7%から加速した。

水曜日の東京市場では日経平均が大きく上昇した。原油価格が下落し過度なインフレ懸念が後退。前日の米国株が大幅高。25,500円近辺で高寄りし続伸。25,800円近辺に上昇した。ただその後は600円台から800円手前で上下した。引けは+415円高の25,762円。

為替市場はFOMCの結果を控えて動意薄。ドル円相場は118円30銭で始まり20銭近辺でもみ合い、夕刻は118円30銭~40銭。ユーロ円相場は129円60銭で始まり70銭~80銭で上下。ユーロドル相場は1.095で始まり1.097中心にもみ合った。

欧州市場ではユーロが上昇。停戦協議が続き進展期待が支えとなった。ユーロドル相場は1.10台に上昇。1.099~1.102近辺で上下した。ユーロ円相場は130円台を回復。130円ちょうど~30銭で上下した。

ドル円相場はFOMCでの利上げ決定を先取りするかたちで上昇し結果発表直前に118円60銭。

注目の結果は想定以上にタカ派な内容だった。0.25%の利上げは予想通り。ただメンバーの予想で年末のFF金利水準は1.75~2.00%と示された。各会合での利上げ幅を0.25%とすると、年内すべての会合で利上げ実施するとの見通し。

年内の利上げ回数は12月時点の3回から7回へ。23年は3回~4回の利上げで2.8%近辺に引き上げて打ち止めとの見通しが示された。

利上げは大きくペースアップ。さらに長期的な中立水準が2.4%とされたことから、それを上回って引き締め水準へ引き上げるとのスタンス。今年のインフレ見通しは前回の2.6%から4.3%へ大幅に上方修正。成長率は4.0%から2.8%へ下方修正された。

バランスシート縮小は来る会合での開始を期待する、として、5月会合での決定を示唆した。こちらも従来の年央以降から前倒し。これを受けて米10年債利回りは2.24%へ、2年債は1.99%へ上昇。

株価は下落。ドル円相場は119円10銭に急上昇した。ユーロドル相場は1.095に下落。ユーロ円相場は130円50銭に上昇していたが130円ちょうどに反落した後、20銭~50銭でもみ合い。

その後、パウエル議長は会見で、ウクライナ情勢は短期的にはさらなる物価上昇をもたらし経済活動の重荷になる、継続的な利上げが適切、と述べた。

会見後にひとまず材料を消化したこと、やや柔軟な姿勢もみえたことから長期金利がやや低下。10年債は2.192%、2年債は1.948%で引け。停戦交渉の継続や投機資金の手仕舞いで原油価格WTIは続落し95.04ドル。金相場は1,909ドルに4日続落。

米国株は売り一巡後に反転上昇。中国の景気刺激策も好感。NYダウは前日比+518ドル高の34,063ドル、ナスダックは+487ドル高の13,436ドル。VIX指数は▲3.16ポイント低下して26.67。ドルは反落。

ドル円相場は118円60銭に下落して70銭台で引け。ユーロドル相場は1.105に急反発して1.103近辺。ユーロ円相場は停戦期待が支えとなり131円ちょうど近辺に上昇して引けた。

木曜日の東京市場では日経平均が大幅続伸。上げ幅は一時900円を超えた。停戦協議の進展観測、米金融政策の不透明感が目先解消したこと、景気強気見通し、米国株の大幅高から日経平均は朝方26,400円台で大幅高寄り、すぐに26,700円に上昇した。

その後は26,400円台に反落したが、断続的に買いが入り、26,500円近辺でもみ合いの後、引けにかけて上昇。前日比+890円高の26,652円で取引を終えた。

ドル円相場は118円70銭台で始まり119円に上昇。その後は118円80銭~119円ちょうどで上下。昼には一時60銭近辺に下落したが夕刻にかけては概ね118円80銭近辺で推移した。

ユーロ円相場は131円ちょうどで始まり、午前中に一時50銭に上昇したが午後にかけても131円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.1030で始まり、1.1010~1.1050で上下したものの午後は1.1030近辺でもみ合いとなった。

欧州市場から米国市場にかけてはユーロが大幅高。ユーロドル相場は1.1040~1.1060でもみ合いの後1.1130に上昇した。

オランダ中銀総裁が、今後のインフレデータ次第で今年2回の利上げも排除せず、と発言。停戦期待、ロシアがドル建て国債の利払い実施、米国株の堅調、リスク選好の回復で、ユーロ円相場は130円80銭近辺から131円90銭に上昇。ドル円相場は118円50銭~80銭での上下の後、ユーロ高ドル安の勢いに押されて118円40銭に下落。その後はドルが反発し118円60銭で引け。

ユーロドル相場は反落して1.1090。ユーロ円相場は131円60銭。米国株は続伸。朝方は安く始まったが、停戦交渉が具体化したことで進展期待が広がり、ロシアがデフォルトをひとまず回避。

また中国株ADRに大量の買い戻しが入ったことで、ハイテク株にも買い。持ち高調整の売りから一転して買い直しとなった。

NYダウは前日比+417ドル高の34,480ドル。ナスダックは+178ドル高の13,614ドル。VIX指数は▲1.0ポイント低下して25.67。

米10年債利回りは欧州時間に一時2.12%に低下したが持ち直して2.174%。2年債はやや低下して1.918%。

この日、イギリス中銀は予想通り政策金利を0.50%から0.75%に引き上げコロナ前の水準に。たださらなる利上げの可能性については景気も配慮して表現を緩めた。

発表された米国の経済指標は、住宅着工件数(2月)が季節調整済み年率換算で1,769千件と前月1,638千件から増加し予想を上回った。週次失業保険新規申請件数は214千件と227千件から減少。継続受給者数も1,494千件から1,419千件に減少。

フィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月)は前月16.0から27.4に改善。鉱工業生産(2月)は前月比+0.5%と予想通り、設備稼働率(2月)は77.3%から77.6%に改善した。

金曜日の東京市場では日経平均が5日続伸。ロシアがひとまずデフォルトを回避、停戦協議の進展期待、米国株上昇をうけて小高く始まり26,700円近辺でもみ合い。引けにかけじり高となり前日比+174円高の26,827円で引け。ここまでの上昇幅が大きかったことや、3連休前で上昇は鈍化した。

ドル円相場は底固く推移。118円60銭で始まり50銭に押した後、反発して70銭~80銭で上下した。日銀金融政策決定会合では予想通り金融政策は現状維持。ただその後黒田総裁が会見で、円安が経済・物価とも押し上げることで経済にプラスという構造に変化はない、金融引き締めの必要はないし適切でもない、インフレの要因は円安の影響より資源高、などと述べ、円安を容認する姿勢を示した。

これを受けてドル円相場は一時119円をつけた。ユーロドル相場は1.1090で始まり1.1120に上昇した後反落して1.1080~90で推移。

ユーロ円相場は131円60銭で始まり40銭台に下落したあと90銭に反発。ただ132円には届かず、その後60銭~70銭でもみ合いの後90銭に上昇する場面もあったが欧州時間昼には131円20銭に下落した。

ドル円相場は118円80銭に下落したものの底固く119円ちょうど~10銭で推移。その後FRBウォラー理事のタカ派発言でドル高円安に振れ119円40銭に上昇した。

理事は、金融正常化を進めても景気後退を引き起こすことはない、地政学的リスクがなければ今回は0.50%の利上げを実施していた、今後数回の会合で0.50%の利上げ検討が必要、と述べた。

ただその後ドル円相場は反落し119円10銭近辺で引け。ユーロドル相場は1.1000近辺へユーロ安ドル高、その後は1.1070へ反発して引けは1.1050。ユーロ円相場は再び131円90銭に上昇したが反落して引けは131円70銭。

米国株は続伸。FRBの景気強気見通しが株価を支えた。NYダウは一時▲200ドル下落したが反発して+274ドル高の34,754ドル。1ヵ月ぶりの高値。週間の上げ幅は1,800ドルに達した。

ナスダックは+279ドル高の13,893ドル。VIX指数は▲1.80ポイント低下して23.87。米10年債利回りは2.153%。2年債は1.942%。原油価格WTI先物は続伸して104.99ドル。金相場は続落。

◆今週の3つの注目ポイント


1.ウクライナ情勢、国際会議等

ウクライナとロシアは停戦協議を続けているが進展はあるか。ゼレンスキー大統領は23日水曜日に日本の国会で演説。米バイデン大統領は24日木曜日にNATOサミットに参加。

またこの日はG7首脳会合も行われる。こうした会合にもかかわらずロシアの攻勢が激化する可能性があり、原油価格動向や先週反発したユーロの動向には上下両サイドに留意を要する。大きく反発した株価動向が安定するか。リスク選好・回避の変化に留意。

2.米国の経済指標

FOMCやパウエル議長の発言から米国経済への信認が強まった。金融正常化、今後の利上げ実施でも景気後退に至ることはないとした。足元の経済指標で引き続き米国経済の盤石さが確認できるか。

月曜日 シカゴ連銀全米活動指数(2月)

火曜日 リッチモンド連銀製造業指数(3月、予想0、前月1)

水曜日 新築住宅販売(2月、季節調整済み年率換算、予想815千戸、前月801千戸)

木曜日 PMI景況感指数(3月、製造業、予想55.8、前月57.3、サービス業、予想56.0、前月56.5) 耐久財受注(2月、コア、前月比、予想+0.5%、前月+0.7%) 米週間新規失業保険申請件数

金曜日 ミシガン大学消費者信頼感指数(3月・確報)

3.欧州の経済指標

ウクライナ情勢悪化の影響が出始めるなか、経済指標でも確認されるか。

水曜日 ユーロ圏消費者信頼感指数(3月)

木曜日 PMI景況感指数(3月、ユーロ圏、製造業、予想56.0、前月58.2、サービス業、予想55.0、前月55.5、ドイツ、製造業、予想54.0、前月58.4、サービス業、予想53.3、前月55.8)

金曜日 ドイツIFO景況感指数(3月、予想93.9、前月98.9)

ほか、月曜日にFRBパウエル議長、火曜日にECBラガルド総裁の発言機会がある。

◆今週のMRA's Eye


さらなるドル高円安見通しへ修正

先週、ドル円相場の上昇が加速し117円台前半から119円台に乗せた。ドル安円高への反転を見込む材料が見出だしにくく、今後、120円台へ上昇し定着していくと想定せざるをえない。

これまでメインシナリオは緩やかなドル高円安基調とみていたが、これを修正、ドル高円安が従来の想定よりも加速する要因が増え、ドル高円安サイドのリスクが強まった。

昨年末時点のメインシナリオでは、景気状況については、米国経済の堅調推移、米国経済が牽引するかたちで世界経済もしっかり、コロナ禍からの急速なリバウンドから成長率は次第に巡航速度へ鈍化するものの潜在成長率を上回る状況が続くとの前提だった。

一方、インフレ率はピークアウトするものの比較的高水準で推移する状況が継続。景気は堅調、インフレは高水準、米国経済に優位性が顕著、というなか、FRBが先行して金融正常化、利上げを開始、バランスシートの縮小も実施。

ECBがこれをゆっくりと追随との想定。米国の利上げは年内0.75%~1%程度との前提。10年債利回りは年末に向けて2%台に定着するとの見方。株価は金利上昇から上昇一服、高値波乱。リスク選好が弱まることで円安の勢いは鈍り、緩やかなドル高円安で年末に120円をつける程度のペースを想定した。

しかし、各国は感染対策・規制を相次いで緩和し、コロナ禍による景気への悪影響は次第に緩和。とくに米国では雇用情勢の強さが際立つ。一方で、資源価格の急騰が続きインフレが一段と加速。需要の強さに供給の混乱が重なり一向にインフレが鎮静化する兆しがみえない。

FRBはすでに1月下旬のFOMC会合時点で想定よりもややタカ派なスタンスを示し始め、3月の利上げを示唆。

ただこの時点ではなお利上げは年内1%程度とみられた。ECBは想定通りFRBに追随する姿勢を示したが、そのスタンスは利上げに関していえば概ね1年の「周回遅れ」と想定された。

一方で日銀は年内の現状維持が想定された。景況格差や金利差からドルが独歩高、ないし円独歩安の可能性が示唆されるなか、資源価格や農産品価格の上昇で日本の輸入金額が急増。

貿易赤字の拡大が円安圧力を増しつつあった。この時点でリスクバイアスは、メインシナリオである緩やかなドル高円安に対して、ドル高円安方向に傾いた。

そこにウクライナ紛争が勃発。リスク回避の円高が生じないか、あるいは、欧米の景気悪化、インフレ動向、金融政策スタンスの変化、金融正常化の様子見とならないか、など予測の前提条件の再考をする状況に。

しかし、結果的に、予測修正の方向、リスクバイアスはさらなるドル高円安となった。

ウクライナ紛争を受けた経済制裁による景気への影響は懸念されるものの、とくに米国に関してはエネルギーや農産品の自給率が高く、経済への悪影響が相対的に軽微とみられる。

一方で国際商品価格上昇がさらに進んだことで日本の対外収支はさらに悪化すると見込まれる。貿易赤字のさらなる拡大が円安圧力を強めるとみられる。

FRBは今回のFOMCで経済への自信を強めるとともに、インフレ警戒も強めた。利上げペースを速め、来年には長期的な中立水準を超えてFF金利を引き上げ、金融正常化ではなく引き締めへ踏み込む姿勢を示した。

それでも景気後退に陥らないとの見方だ。米2年債利回りはすでに2%に迫り、10年債利回りは2.2%をつけている。

こうした変化を受けて、従来の緩やかなドル高円安見通しは修正せざるをえない。

年末にかけて120円台との見通しは、前倒しで達成されそうだ。6月には120円台に定着し、年後半には120円~125円のゾーンでの推移となる可能性がある。

ユーロは対ドルで下げ止まっているものの、欧州経済は米国ほど盤石ではなく、インフレ懸念は強まっていることからECB内のタカ派は年内2回の利上げを支持しているもののそれでも0.50%だ。

米欧金利差の拡大は続くとみられ、ドル高円安ほどではないにしても、ユーロ安ドル高基調には大きな変化はない。

株価の調整が一服するなか、リスク選好の大幅な悪化は回避され、通貨の強弱は、ドル>ユーロ>円、の状況が続きそうだ。

欧米の金融システム、金融市場の混乱が、ロシアのデフォルトを踏まえても回避されるとなれば、リスク回避の円高が生じる可能性は少ない。

リスクシナリオは、円高サイドには、欧州経済の想定以上の悪化、米国経済への悪影響、米中対立が再び先鋭化することによる世界経済全体への悪影響、などで市場が織り込んだ欧米の金融正常化の頓挫。

緩やかなドル高円安見通しへの回帰。ないし一時的なドル安円高への修正。あるいは状況次第でドル高円安の打ち止めから110円近辺への反落。

万一金融市場の混乱が生じた場合には110円割れに反落する可能性もある。ただこれは確度の低いリスクシナリオにとどまる。

一方、ドル高円安サイドには、ウクライナ情勢の好転、停戦によるリスク選好の急回復と欧米の金融正常化が景気回復をともなって前進するケース。

停戦にもかかわらずロシア経済制裁が続けば状況は大きく変わらない。

ただ市場心理が強気に傾く分だけ、円安バイアスが強まる可能性がある。すでにドル高円安見通しのメインシナリオをドル高サイドに修正したところからは、さらなるドル高円安加速リスクは、ドル安円高リスクよりやや確度は高いが、確度としては低めだろう。


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