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停戦期待で巻き戻し続く
  • MRA商品市場レポート

2022年3月17日 第2156号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「停戦期待で巻き戻し続く」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は引き続き水準を切下げる商品が目立った。ロシア・ウクライナの停戦合意期待が供給懸念を後退させている他、FRBは利上げを行うものの景気の先行きを楽観する動きが強まったため、ウクライナ危機の間の動き(株安・金利安・商品高)の巻き戻しが起きている形。

しかし、ロシアが本当に軍事侵攻を止める保証はなく、一時的な休戦で軍をウクライナに維持し、その間、体勢を立て直して再度攻撃という可能性はある。

どのような停戦となるかによるが「非ナチ化」という荒唐無稽な旗印を掲げて仕掛けた戦争であるため、ウクライナの悪を滅した、とか、ウクライナのこの部分解放し、ロシアに編入したといった何かしらの果実を得られなければ軍事侵攻を肯定しているロシア国民の支持が得られないからだ。

しかし当然こんな要求をウクライナ側がのむはずがなく、やはり停戦が本格的に合意に至るまでは市場の攪乱要因となり続ける。

FOMCはややタカ派的であったがほぼ予想通りであり、上記の「巻き戻し」の動きには影響しないだろう。

ただ、懸念はかなりのペースで景気減速局面での利上げ・金融引き締めが起きるため、恐らく5月と思われるQT実施後にリスク資産価格が大きく下落するリスクは無視できず、商品価格への影響も小さくないのではないか。

【本日の見通し】

本日は、昨日のFOMCがタカ派だったものの予想の範疇であり上述の「巻き戻し」が起きて株高・商品安になると考える。

そしてその巻き戻しが終ったところで再び景気と金融政策に焦点が当たることになるが、いまはまだその時期ではないと考える。

本日予定されている材料で注目は、英中銀の政策金利決定と、ラガルド総裁の講演。

英中銀は75bp程度の利上げを見込んでいるが、これがECBの今後の政策にも影響を与えるためそれを受けたECBラガルド総裁の講演内容は注目である。

仮にユーロ高・ドル安が進めばファイナンシャルな面で商品価格の下支え要因となるが、景気減速局面での欧米金融引き締めは恐らく数ヵ月(4~6ヵ月程度)の時間差を以て実需に影響を及ぼすため、下期以降の商品価格にはマイナスに作用する可能性がある。

【昨日のトピックス】

昨日注目のFOMCは想定通り25bpの利上げを決定、FOMCメンバーによる経済・政策金利予想では、今年あと6回の利上げ、来年3~4回の利上げが織り込まれた。

同時に米経済成長ペースは来年から再来年に減速する見通しが示されており、景気減速下での利上げを示唆した形。またパウエル議長は5月からのQTを示唆しておりインフレ抑制に主眼がおかれていることは明らかである。

これによりCPIの上昇が抑制される可能性はある、というよりも利上げやQTはインフレ抑制の必要条件の1つと考えられるが、十分条件かどうかは分からないからだ。

ただ、仮に景気が減速局面に有るのならば放置すればインフレは自然に沈静化すると考えられる。

しかしそれでも利上げや金融引き締めを急ぐのはリーマン・ショック以降、失業率が低下しているにもかかわらず物価が安定しており、金融緩和解除を緩やかにしたり、追加緩和したり、といったことがある意味野放図に行われていたが、これによる「ツケの悪影響」が大きいと判断したためと考えられる。

そのため、年後半にかけて景気が想定以上に減速し、商品を含むリスク資産価格が下押しされる可能性が出てきたと考えられる。

昨日は日本の貿易統計が発表され、貿易収支赤字が市場予想を上回った。輸入が大幅に増加したことが背景で、輸入増加は原油(寄与度+6.7%)、LNG(+4.6%)、コロナワクチンの調達による医薬品(+4.4%)の増加によるものであり、医薬品を除けば厳冬やロシア・ウクライナ情勢不安を背景とした資源価格の上昇が影響したもの。

地域別の輸出品目で注目すべきは半導体製造装置であり、米国、欧州、中国とも好調。自動車向けの半導体のみならず、メタバースなど新しい分野向けの半導体需要が旺盛であること、また、自由主義国vs専制国家の対立の中で自国内での半導体供給ライン確保の動きが強まっているためと考えられる。

先行き、輸出はコロナのリバウンドによる感染再拡大の影響で足踏みが予想される。なお、ウクライナ問題の影響は輸出には大きく影響は出ないだろう。というのも欧州向けのボリュームがそれほどないため。

しかし、ロシア上空や北極海廻りの輸送が困難になる可能性はあり、物流に多少混乱が出る可能性はある。一方でウクライナ問題を背景に輸入に影響が出る可能性は高い(ロシアの供給比率が高い商品など)。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は続落した。ウクライとロシアの停戦協議について、「ウクライナ側が」近日中に何らかの合意に至る旨の発言をしたことで、停戦への期待が高まった形。

パニック的に買い戻しが入っていた市場は落ち着きを取り戻しつつ有るが、軍事侵攻前の原油市場需給バランスに戻ることはもはやなさそうだ。

昨日発表されたIEA月報では、価格上昇に伴いOECD・非OECD諸国とも需要が下方修正された。しかし、ロシアの生産が大幅に減少することで、結果的にCall on OPECが増加する形に。非常に価格面で強気な見通しだったといえる。

昨日発表された米石油統計は、このコラムでも指摘したが想定外に原油在庫が増加した。一方、製品在庫はガソリンが大幅に減少、ディスティレートは増加した。

注目していた原油生産は増加せず、輸入が増加(+0.1MBD)、処理量・稼働率も高水準となったが在庫は増加した。ただし日数ベースでは過去5年レンジを下回っており充分な在庫はない。

製品はガソリンが得率の低下で生産減少、輸入も減少したため在庫は大幅な減少(▲3.6MBD)、ただし出荷が過去5年平均を切るなど減速しており、在庫減少は供給面によるものとみられる。

ディスティレートは高水準の出荷となっていたが価格上昇や季節性(量は減ったが暖房需要の減少)もあって減速、出荷・輸出とも好調だったが生産増加の影響で在庫は小幅な増加に。

製品全体で見た場合、米国の出荷は過去5年レンジを上回って非常に好調だったが、価格上昇の影響かこの1週間で急速に減速している。ガソリンがガロン4.77ドル(レギュラーガソリン平均)と4ドルを超えているとさすがに消費には影響が出るようだ。

輸出を含めた出荷もやや低迷しており、やはり価格上昇が需要を減じる「レーショニング」リスクが顕在化し始めたと考える。

シナリオ別の価格見通しは以下の通り。現在恐らく、3と5の間といった感じだろう。

1のシナリオ以外では、仮にロシアに対する制裁が段階的なものであり実際に制裁が行われない(エネルギー分野への制裁が行われない)、あるいは時間を掛けて脱ロシアが進み、即時のロシア産原油締め出しが起きない、となればより上値は抑えられることになる。

また、1~4の場合、景気に悪影響になるため、先行きの需要は減少して価格が下落する展開が想定される。価格水準が持続可能、という意味では5~6のシナリオの場合だろう(侵攻前の状態に戻るシナリオ)。

ロシア・ウクライナは停戦に向けて話し合いが進捗しているようだ。しかし、プーチンがこれでウクライナを諦めるとも思えず、制圧した地域には軍を駐留させ「隙あらば攻撃」する可能性はある。

仮に停戦があっても現時点では、仮初めの停戦(ロシア側が体制を立て直すための停戦)となる可能性は低くない。

<シナリオ別原油価格見通し>

1.ロシア・ウクライナ情勢沈静化せず、ロシアの原油が半分程度市場に出てこない(ないしはその可能性が強く意識される) Brent 125-140ドル

2.1.の状態でOPECプラスのどこかが増産する(規模による)Brent 110-130ドル

3.戦闘状態が継続するがロシアからの原油・石油製品供給が減少しないBrent 90-125ドル

4.3.の状態でOPECプラスのどこかが増産するBrent 80-105ドル

↑ 上記は停戦が行われない場合のシナリオ

↓ 下記は停戦が行われた場合のシナリオ(現在はこちらに移行しつつある)

5.ロシアがウクライナから撤退Brent 70-100ドル

6.5.に加えてOPECプラスのどこかが増産Brent 60-80ドル

本日も過度な供給懸念が後退していることや、そもそもの景気に焦点が当たり下値余地を探る展開を予想。なお、FOMCはややタカ派な内容になるとの見方が強いが、仮にハト派的な内容になった場合、この数日の調整幅が大きいため、短期的な割安感からの買いで上昇することはあり得ると見ている。

また、本日は米石油統計発表が予定されているが、市場予想は▲1.3MBの減少予想だがAPI統計は+3.8MBの増加となっており、予想外の在庫増加となって下落する可能性も。

◆石炭・LNG・天然ガス

豪州石炭スワップ先物価格は続落して340ドルに。ロシア・ウクライナの軍事的な緊張が「やや」緩和するとの期待が価格を押し下げている状況。

ただし、豪州、インドネシア、南アフリカなどの主要生産国での天候要因悪化による供給の遅れが価格を高止まりさせている状況。

しかし、競合燃料である天然ガスのスポット価格はロシア・ウクライナの停戦合意期待もあって低下しており、ガスとの比較感ではJKM、TTF対比でも230~250ドル程度が現在説明可能な水準(回帰分析の誤差を考慮しない)であり、まだ下げ余地がある。

また、ウクラナ・ロシア戦争の影響で石炭輸入に支障が出る可能性があるとして中国の国内炭生産に増産バイアスが掛る可能性はある。

中国においては引き続き石炭火力は重要な熱源であり、総発電容量は前年比+9.8%の8,377TWh(2021年実績)となったが、そのうち9割が石炭火力である火力発電は+9.1%の5,646TWhと非常に高いシェアを占めている。

容量の伸びも伸び率では再生可能エネルギーが大きいが、実数ベースの容量拡大では圧倒的に火力発電の比率が高い。まだ石炭が燃料として用いられ価格を高止まりさせよう。

また、悪天候や欧州危機の影響で充分に在庫を詰めていないインドの調達圧力が、モンスーン時期に増加する可能性はあり、このことも価格を高止まりさせるとみる。

欧州天然ガス価格は下落した。ウクライナ・ロシアの停戦合意への期待が供給面の懸念を後退させたことや、春に向けて暖房需要が減速していることが材料となった。

ただ、やや気になるのが昨日のパイプラインフロー、ヤマル、ノルドストリームとも大幅に低下、ウェレケ・カプシャンイ通過のガス流量も減少している点。

その他のウクライナ経由のパイプラインは稼働しているようだが、欧州打診があればロシア側は販売を続けているため、欧州側が価格面が合わない、需要の減速といったことを材料に購入を手控えている可能性はある。

今後、欧州は段階的にロシア産ガスを他国産にシフトしていく予定だが、それをロシア側が唯々諾々と許容するかどうかはまた不透明であり、何らかの圧力が掛って価格が急騰する展開のリスクはまだ残る。

欧州は脱ロシアを5年程度で達成する計画としている。手元で取得できるBPデータは2020年が最新なのでこれを元にすると、2020年の欧州のロシア産ガス・LNGの輸入量は1,849億立方メートル、これを5年かけて減らす訳だが、これを賄おうとした場合、現時点で計画されている液化プロジェクトは大半が米国のもので、それが稼働するのは計画通りにいって2027年頃である。

となると、それまでの間はLNGスポット市場から調達をする必要が出てくるため、TTFやJKM価格の上昇要因となる。

その後、ロシアの扱いがどうなるかはよく分からないが、恐らくガス・LNG市場は需給が緩和して下落に転じるのではないか。ただしこれは「脱炭素の枷」が外れた状態になったうえで成立するものであり、今後、EUが脱炭素に向けてどの化石燃料をどの程度、何をどこまで許容するかに依拠することになる。

今までのように、デモまで起こして上流部門開発を停止せよ、という動きが強まったままの状態が続くようであれば恐らく上記の上流部門投資が稼働せず、価格は上昇したままとなる可能性がある。

なお、欧州に供給できない分を中国にという報道もあるが、ロシアのパイプラインシステムは東西で分断されているためこれを開通させるためには相当規模の融資が必要になる。シベリアの力2の稼働も必須だろう。

この場合、現在、ロシアに対して欧米諸国が資金を提供することはないため、力を貸すならば中国であるがその負担を中国のみで引き受けるとは考え難い。「割安」という意味では現在日本が死守しているサハリン1・2を取得することを中国は考えているのではないか。

仏独の原発の稼働率はフランス・ドイツとも低下している。

米国天然ガス価格は上昇。気温低下観測が材料とされていたが、どちらかと言えばチャートのテクニカルなポイントまで低下(100日移動平均線)したため割安感からの買いが入ったという程度ではないだろうか。

JKMは欧州ガス価格の下落もあって水準を切下げる展開となった。それでも30ドルは超えており、需給はタイトな状態が続く。

3月6日時点の発電用LNG在庫は147万トン(前年同月末241万トン、過去4年平均219万トン)と水準は低く、今年の夏は猛暑が見込まれているため、夏場の供給不足のリスクは小さくない。

3月7日~13日のLNGトレードだが、取引量は+11%の810万トンとなった。スポット取引のシェアは23%と先週の29%から低下。韓国のスポット調達が増加したが西欧向けは減少した。長期契約分の増加は、日本、韓国、中国、台湾が増加。

なお、欧州は米国からのLNG調達が前月比▲14%減少したが、その代わり、ロシアのYamal LNGの輸入が増加したことでロシア産が+27%と増加している。やはり両地域はまだエネルギー供給面で切り離せるような状況にないことを示唆している。

本日の石炭価格はロシア・ウクライナの情勢不安解消への期待はあるものの、豪州からの石炭供給不安は継続しており高値維持の公算。

天然ガス価格はロシア・ウクライナの停戦合意期待と、春が目前に迫っていることから軟調推移を予想。しかし状況が劇的に改善している訳でもないため高値維持の見通しには変わらず。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格はまちまち。中国の景気減速への懸念が強い中総じて軟調な推移になる金属が多かったが、その他の金融商品との連動性が高い銅は、株価の上昇を受けて水準を切り上げる展開となった。

なお、昨日取引が再開されたニッケルは想定通りだが水準を切下げた。しかし、45,590ドルと、弊社が推定する水準からはかなり高い水準での売買となっている。恐らく、LMEの決定(青山鉄鋼の損失を極小化させる。現状、LMEは中華系の香港取引所の子会社)を受けて市場参加者が疑心暗鬼になっていると考えられる。

市場安定化のための対策であるが、逆に市場参加者を市場から遠ざける可能性が出てくる。ネットなどでは「中国共産党の陰謀」という声も聞かれるが、過去にLMEはスズで、日本はパラジウムで、COMEXは銀で取引所の裁量で取引が停止、溶け合いなどが行われているため、陰謀論と片付けるのは適当ではない。

東京のパラジウムは2000年に起きた。非鉄金属のコラムであるが流れ上、こちらで説明するが、1992年に東工取に上場されたパラジウムは取引が増加していたが、流動性の増加を受けてファンドが市場に参入、米投資銀行や米自動車のビッグ3が背後にあった。

パラジウムはロシアから長期契約で取得し、現物を東工取で引き取ることを志向していたが、自動車会社などがロングを積み上げる一方、売り手は個人。

この後、損切りでパラジウム相場は急騰するが今回のニッケルと同様、個人の買い戻しによる損失が青天井となったため、経済産業省主導で取引の「強制溶け合い」を行い、取引を解消した。

これにより、東工取は信用を失い、パラジウム取引も低迷、ファンドや自動車会社などの実需も東工取を使うことがなくなった。これと同じことがLMEにも起きるかもしれない、ということである。

ただ、確かに専制国家の配下にある取引所が、一方的に都合の良いルールを押しつけてくる可能性は低くはない。そのように考えると、現在LMEの対抗馬として市場を整備しようとしているCMEなどを活用の場に広げる(現物購入の指標にする)こともリスク回避の手段としては必要だろう。

本日はロシアからの供給減少不安が徐々に薄らいでいることや、中国の主要統計減速を受けた最大消費国の需要減少観測、タカ派なFOMCの結果を時間的に織り込めていないことから、今日は調整圧力が強まる展開を予想。

しかし、安値拾いの買いも入るとみられることから高値維持の公算。

なお、昨日も掲載したが、在庫との関係から単純に算出されるニッケル価格の推計値は23,500ドル程度に低下しているが、供給不安を材料に統計的には上ブレしており、2標準偏差の誤差を考慮すると28,000ドル程度が在庫で説明可能な上限となる。

同様に、ロシアからの供給不安後退を材料にアルミも下落するとすれば、単純な回帰分析による推計値は2,999ドル(2標準偏差を統計で説明可能なギリギリの水準とすれば3,418ドル)

ただ、NEWCを基準に石炭価格との比較をすれば3,520ドルと、コスト面が意識された場合の水準はまだ高く結局高値を維持しよう。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は上昇、上海鉄鋼製品先物は直近限月が下落、期先が上昇した。

鉄鋼製品価格は3月上旬の中国の粗鋼生産が前週比▲5.72%の196万トン/日となったことなどで需給への懸念からやや上昇、それを受けて鉄鉱石価格も上昇した。

しかしそれ以上に中国国内のロックダウンの影響による生産減速が鉄鋼製品・鉄鋼原料需要を減じるため、やや下押し圧力が掛りやすい地合。

鉄鋼製品価格を元にした回帰分析の結果、鉄鉱石価格は149ドル、原料炭価格は228.6ドル程度が推測値。鉄鉱石は概ねこの水準だが、原料炭は供給リスクが顕在化しているため、この水準を400ドル程度高いのは流動性リスクによるもの。

本日も中国の鉄鋼製品需要減速観測を背景に、鉄鉱石は軟調推移、原料炭は供給制限が解消していないことから高値を維持すると考える

◆貴金属

昨日の貴金属価格はパラジウムを除いて上昇した。FOMCがタカ派であったことを受けて実質金利が上昇して金価格は水準を切下げたが、リスクテイク再開でドル安が進行したこともあって、ドル安が金価格を支えた形。

なお、金のリスク・プレミアム中には為替の要素も含んでいるため、ドル安が進行するとリスク・プレミアム部分に反映される。

本来的にはこの為替要素を分離する必要があるが、ドルの価値下落分≒ドル建て商品名目価格の上昇分、となりやすい。昨日のドル指数の下落が▲0.5%であり、昨日の金価格上昇が0.49%であることを考えるとほぼ数字は符合する。

金の基準価格は1,532ドルと前営業日から▲11ドル低下、リスク・プレミアムは395ドルと前日から+41ドル上昇した。

銀・プラチナは金の価格上昇に連れた。

パラジウムはウクライナ・ロシアの停戦合意期待から供給懸念が後退しており、価格水準を小幅に切下げた。

本日はロシア・ウクライナの停戦合意への期待とリスク選好回復を受けて、金銀プラチナ、パラジウムとも調整圧力が強まる展開を予想。

ただし、株式市場が回復する中でドル安が進行していることが一定の支えに。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。ウクライナ・ロシアの停戦合意への期待から供給懸念が後退していることが背景。

ただし、ロシア軍はウクライナの農機具を奪い取って要塞建設に利用したりするなど、食のサプライチェーンを破壊して兵糧攻めにせんとする動きを強めており、5月以降の播種・生産・供給への懸念は小さくなく、高値を維持する可能性が高い。

本日もロシア・ウクライナ情勢次第の状況が続くが、停戦合意期待が価格を押し下げる一方、ラニーニャ現象の影響による供給不安は続くため、高値維持の公算。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

なお、今回の戦争の後、ロシアがソ連復活を目指してジョージアやモルドバに侵攻するリスクや、今回の対応如何では中国が台湾を武力で早期に併合する可能性を高めることになる。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

むしろこの可能性は高待っており、リスクシナリオではなくなりつつある。

・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。

・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。

◆本日のMRA's Eye


「第3次オイルショック(後編)」

前回のMRA's Eyeではロシア危機を背景に、他のエネルギー源や再生可能エネルギーにシフトする、という方向に西側諸国は舵を切っており、そのために必要な資源(主に鉱物資源)価格が上昇、「ロシア以外の地域からエネルギーを求める」動きが強まる可能性を示唆した。

恐らく、この流れの中では代替手段が確保できるまでエネルギー需給は逼迫し、価格が上昇する可能性がある。これは原油・天然ガス・石炭とも同じだ。今回のロシア危機はこうした「エネルギー供給に関わる構造変化」が起きる可能性があり点で「第3次オイルショック」に位置づけるべきだと弊社は考えている(湾岸戦争を第3次とするなら、第4次)。

もしそうであれば前回オイルショック時に、エネルギー市場に起きたことは参考になる。

まず、原油需給は緩和して価格は下落した。これは戦争の当事者だったOPECが高価格政策を続ける一方、非OPEC諸国が増産を始め需給が緩和したためだ。

1979年6月の東京サミットでは、1.省エネ、2.石油輸入目標の設定、3.その他のエネルギーの開発促進が決議され、翌年のベネチアサミットでは、一次エネルギー全体に占める精油の比率を40%程度に引き下げることが決議された。

また、1981年に米国の大統領となったドナルド・レーガンは今回の戦争による国外へのエネルギー依存の高さがリスクになると判断し、エネルギー政策を変更して国内生産を増加させる方向に舵を切っている。

現在のエネルギー市場における米国の地位の高さは、シェールオイル開発の影響もあるが、この頃からその素地ができていたともいえるだろうか。

こうした流れを受けて第一次オイルショック時、1973年のエネルギー消費に占める石油シェアは49.4%(熱量換算ベース)であったが、湾岸戦争前の1989年には39.7%まで低下している。

原油市場におけるOPECシェアも1973年は50.6%だったが、1989年には34.4%まで低下した。これにより原油価格は引き下げを余儀なくされる。

指標のアラビアンライトの公式販売価格は1981年10月に34ドルまで上昇したが、供給過剰の中では価格維持は困難であり価格低下が続いた。

そして1985年7月、サウジアラビアが「スウィングプロデューサー」の役割を終了、消費地の価格を参考に価格を決定する方針に移行し、原油価格は概ね需給で決定されるようになる。

この間、湾岸戦争なども発生したが概ね供給過剰の状態に変わりは無く、アジア危機などによる景気の減速もあって1998年12月にはWTIは10ドルまで下落した。この状況を受けて1998年6月の第105回総会で▲260万バレルの減産を決定、その後、長期にわたる投資不足と中国の台頭を受けて原油価格が急騰、リーマン・ショックやOPECショック、コロナ危機、ロシア危機を経て現在に至っている。

これを現在に当てはめるとどうか。今回のロシア危機は中東ではなくロシアを含む「専制国家」への依存を減らすとの同義であるが現状、EUは2027年までにロシア産のエネルギー(ガス、原油、石炭)依存脱却を目指す、としている。

これらの資源はこれまで「脱炭素」の流れや2014年にOPECがスウィングプロデューサーの立場を放棄した「OPECショック」の影響で価格が低迷したため、十分な上流部門投資が行われていない。

そのため、ロシアの依存を減らし、代替供給源を求めるという動きが強まる中では、ロシア依存脱却完了する、ないしは目処が立つまでは原油・ガス・石炭の価格は高値で推移することが予想される。

代表的なものがガスだが、恐らく欧州は米国からガスをLNGの形で購入する必要があるが、米国の投資が完了して十分なキャパシティを確保できるのは早くても恐らく5年後だ。

しかし、LNGの供給能力を増加させると同時に、恐らく原油も増産に舵を切ると予想されるため、その後の需給がどうなるかが次の視点となる。

前回のオイルショックの時を参考にすると、石炭と原子力の活用が増加して原油のシェアが低下したように、再生可能エネルギーや原子力の活用が進むと予想されるため、化石燃料需要は減少することが予想される。

そしてロシアも重要な外貨獲得手段である原油やガスの生産は継続し、中国などの同盟国には販売するだろう。

結果的に、玉突き的に原油の国際市場需給は緩和することになる。場合よると、ロシアが西側諸国に対しても「大幅なディスカウント」で販売する可能性は十分ありえるし、日本を含む西側諸国もそれを望むかもしれない。

上記を勘案すると、長期的には原油・ガス市場の需給バランスの緩和が予想され、価格下落の可能性が出てくる。非常にかいつまめば、これまでは脱炭素で上流部門投資が行われなかったため、脱炭素の進捗が原油価格の高騰に繋がると整理していたが、化石燃料の開発を再開させる必要性が出てきたため、需給が長期的には緩和する可能性が出てきたということだ。

しかし、上流部門投資を始めてから実際に生産が開始されるまで、原油においては最も早いシェールオイルでも現在は1年程度は掛るとされ、在来型の油田であれば10年掛かりである。

上記のシナリオを考えると、将来的に需要が減少する可能性がある原油・化石燃料の開発投資をためらう生産者は特に資本主義の国では少なくないと考えられる。これはこれまでの動きと同じだろう。

上流部門の開発を促すためには、脱炭素のロードマップの見直し(脱炭素の期限を決めること)は必要になるのではないだろうか。脱炭素を本格化させるのは、エネルギーの代替が完了してから段階的に、というのがより現実的といえる。

結局、このタイムラインの中では十分な上流部門投資を行う余力と、歳入確保の必要性から一定の増産を継続すると考えられるのはやはりOPEC諸国であり、これらの地域の重要性は増すことになる。

ただ、このときにOPECプラスの中でロシアがどのような位置づけになるのかは、今後のOPEC会合を注視する必要がある。OPEC諸国も現時点ではロシア問題をどのようにすべきか、脱炭素だ、いや石油が必要だとある意味自国の都合を押しつけてくる(産油国側の視点)消費国の言い分をどれだけ聞く必要性があるのか、といったことも整理仕切れていないと考えられるため、OPEC諸国の方向性は流動的である。

また、化石燃料の代替として期待される再生可能エネルギーについても、そのインフラを整備するために必要な資源や材料を供給している国が中国をはじめとする専制国家に偏っており(※)どの再生可能エネルギーを選択することが持続可能であるか、安全保障上のリスクにならないのか、今回のロシア危機の様な事態が発生した時にそのリスクに備えられるのかを十分吟味する必要がある。

それを考慮した時に、特定の国への依存が回避できない、という結論になれば安全保障の観点から脱炭素自体を諦めるという選択もありえるだろう。


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