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週末を控えたポジション調整でまちまち~ウ露交渉への過度な期待は後退か
  • MRA商品市場レポート

2022年3月14日 第2153号(簡易版)商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「週末を控えたポジション調整でまちまち~ウ露交渉への過度な期待は後退か」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はこれまでの市場動向とやや異なり、まちまちな展開となった。欧州~米国時間で取引されているエネルギーは上昇し、アジア時間が主体のニューキャッスル炭やJKMは水準を切下げている。

ロシア・ウクライナの停戦に向けた動きに関する解釈の違いともいえるが、結局の所なんら進展はしておらず、週末に向けてポジション調整的な取引が主体となる中、「ロシア・ウクライナ情勢にさほど進展はない」として必需品、ロシア依存度の高い商品は一昨日の調整もあって買われ、そうでないものは売られたという感じだろうか。

その意味ではパラジウムが大きく下落しているのは意外感がある。恐らく実需が買い上げる中で投機の買いも嵩み、ロシア・ウクライナの情勢が不透明であり、週末に何らかの進展があるかもしれないということで、金価格が調整する中で投機筋が手仕舞ったのだろう。

原油については、「ロシアから欧米向けに供給が止まる可能性」を意識して買い戻しが入り、その後、ロシアに対するエネルギー面での制裁が米国だけに止まり限定的かつ、計画的に行われる、との期待から急落していたが、OPECプラス(というよりはUAEか)が追加増産を否定、さらにはイランの核合意が中断される、といったニュースが価格を押し上げた。

結局、ウクライナ問題が解消するまではエネルギー価格は高いうえ、脱ロシアを進めることから特にガス価格・LNG価格は下支えされるだろう。

ガスと違ってロジが存在する原油は中国などの専制国家向けに輸出されると予想されること、かねてからの金融引き締めや景気の減速観測、価格上昇によるレーショニングから、時間経過と共に水準を切り下げる展開になるだろう。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

なお、今回の戦争の後、ロシアがソ連復活を目指してジョージアやモルドバに侵攻するリスクや、今回の対応如何では中国が台湾を武力で早期に併合する可能性を高めることになる。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

むしろこの可能性は高待っており、リスクシナリオではなくなりつつある。

・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。

・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。


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