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停戦期待で商品大幅下落・株急騰
  • MRA商品市場レポート

2022年3月10日 第2151号(簡易版)商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「停戦期待で商品大幅下落・株急騰」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格は上昇したのはココアや大豆油などの一部の商品であり、ほとんどの商品が暴落している。

戦闘が続くウクライナ情勢だが、ゼレンスキー大統領がロシアとの停戦合意に向けてNATO加盟を取り下げることも検討する、と発言したことで急速に停戦ヘの期待が高まり、ロシア・ウクライナからの供給停止観測が後退したことが影響した。

また、市場の最大関心事の1つであるエネルギー価格に関しては、UAEが増産を呼びかけるという報道にもより反応したようだが、同時に発表されたDOE月報でこの状況でもロシアの供給は▲100万バレル程度しか減少せず、在庫は増加する見通しが示されたことも価格を下押しした。

当然、ガス価格は東西で下落し、非鉄金属は取引停止となっているニッケルを除いて全て大幅に下落している。

なお、LMECOTレポートを見るに、この価格急上昇局面で投機筋はアルミ・ニッケル・銅を売っている。即ち、ロシアからの供給減少リスクを背景に、実需のショート買い戻しが価格を押し上げていた(投機の価格押し上げではない)、ということだ。

リスク回避需要で安全資産として物色されていた金は、長期金利の上昇で基準価格が低下、リスク・プレミアムも小幅に低下、PGMは暴落している。

鉄鉱石や原料炭も下落した。ただ石炭のみさほど下落していない。恐らく停戦に向けた期待が価格に反映されるのは本日からだろう。

問題は

・恒久的な停戦となるのか? -大阪冬の陣・夏の陣的な展開が今後有り得るのか?

・停戦後にロシアに対する制裁を西側諸国が即時解除するのか? -国力を回復すれば大阪冬の陣・夏の陣状態に

・そもそも停戦で合意できるのか

といった点である。これらのシナリオによって商品市場動向は決まる。

ただ、確実なのは

・欧州や日本も脱炭素を進める必要があること

・その導入する脱炭素のシステムが同盟国ではない国によって提供されたものであり、今回の様なエネルギークライシスを引き起こす様なものであってはならないこと(たとえば敵対する可能性がある国が、保守点検の権利を有するシステムなど)

・欧州は脱炭素と同時にガスのロシア依存を低下させるため、LNG市場に参入すること

・脱炭素と脱エネルギー諸国が同時に達成可能な原子力発電所の見直し(安全性を高める)が進むこと

だろう。

ただ、まだ停戦で合意したわけではない。予断を許さない状況が続いていることもまた間違いが無い。余り考えたくないが、停戦合意しなければ、また急騰する可能性があるということである。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

なお、今回の戦争の後、ロシアがソ連復活を目指してジョージアやモルドバに侵攻するリスクや、今回の対応如何では中国が台湾を武力で早期に併合する可能性を高めることになる。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな影響を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

むしろこの可能性は高待っており、リスクシナリオではなくなりつつある。

・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。

・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。


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