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ショート・スクイーズの上昇続く
  • MRA商品市場レポート

2022年3月7日 第2148号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ショート・スクイーズの上昇続く」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はロシア関連銘柄である発電関連価格が再び大幅な上昇となった。ロシアに対する制裁強化への懸念が日増しに強まっていることが背景。

また、昨日は米政府がロシア原油の禁輸の可能性を示唆しており、それがWTIの価格上昇につながりBrent価格などにも波及した(詳しくはエネルギーのコラム(有料)をご参照ください)。

なお、グローバルな視点ではロシア原油の禁輸は他の地域の需給が緩和するためBrentは下落してもおかしく無いが、米国がロシア産原油を禁輸にする、ということはその他の地域もそれに追随する必要性が出てくることを意味し、結局買い材料となる。

当面、ほとんどの商品が供給不安を背景に上昇することが予想される。また、これまでと違う動きとすると、「株高・金利高、株安・金利安」の関係性が回復している点である。

はっきり言ってロシア情勢が景気にプラス・マイナスといえばマイナスであるが、ロシア情勢が緊迫すると景気悪化で株安・金利安、緩和すると株高・金利高というある意味普通の値動きに戻ったともいえる。

ロシアとウクライナの和平交渉は進んでいないが、ロシア側が停戦合意の条件に親ロシア派地域の武装勢力が占領する地域に、特別な自治を認める要求を追加してきた。事態がロシアにとって有利に進展しているとの判断だろうか。

ただ、大坂冬の陣・夏の陣ではないが、もしこれでウクライナ側が武装解除を認めようものなら、恐らく早晩、再度軍事侵攻してくることが予想される。

【本日の見通し】

週明け月曜日もウクライナ・ロシア情勢を背景に、多くの商品がショート・スクイーズで上昇する展開が予想される。

少しというか、本日の見通しからは離れるが、ロシア・ウクライナ情勢の今後について少しまとめる。

ロシアとウクライナの和平合意は想定通りだが平行線で合意には至らないと見る。ただ、前述の通り武装解除をウクライナがのめば、それこそロシア側からすればなんの損失も被らずに後日、ウクライナの占領が可能になる。

それをウクライナ側がのめないことも充分承知で、戦闘行為を続けている訳だ。非常に悪質である。

これに対して西側諸国はプーチン大統領の失脚や、上手くすれば財政崩壊でクーが発生して西側諸国に与する国が誕生すれば、という思惑もあって経済制裁を行っている。

しかし、経済制裁が武力を伴わない最終兵器であることは自明であり、もしこの制裁の効果が無かった場合、ロシアと同盟を組み、台湾を自国の物にしようとしている中国が「なんだこの程度か」ということで軍事侵攻してくる可能性は高まる。

場合によれば、尖閣諸島や竹島などもこの対象になってしまうだろう。つまり、今回の返り血を浴びて行っている制裁は、それが何らかの具体的な成果がなければ武力以外の最終兵器を失ったことになる。

今、非常に重要な局面に我々日本を含む西側諸国は立たされている、といえるだろう。

【昨日のトピックス】

昨日発表された雇用統計は、週央に発表されたADP雇用統計と平仄を合わせて市場予想を上回る改善となった。コロナの影響はあるものの米国の雇用環境の改善が続いていることを示す内容。

非農業部門雇用者数は+67.8万人の増加(前月+48.1万人)、民間部門雇用者数は+65.4万人(+44.8万人)製造業雇用者数が+3.6万人(+1.6万人)と全体的な回復傾向は続いている。

雇用参加率も62.3%(62.2%)に上昇、失業率は3.8%(4.0%)に低下している。しかし、不完全雇用率は7.2%(7.1%)と上昇している。不完全失業率とは、希望業種に着けないなどの雇用形態のミスマッチ、例えばフルタイムの労働を希望しながらパートでしか雇用されない人を含む失業率だが、コロナの環境下、対人接客業を中心に雇用のミスマッチが起きていることを示唆している。

時間あたり賃金は伸びが鈍化したが、週平均労働時間は増えており、米金融引き締めなどによる景気の減速などが無ければしばらく賃金上昇は続きそうだ。

ただ、引き締めペースを加速させられるような地政学的な情勢でもないことから、予め言われていた25bp程度の利上げペースは維持されるとみられる。

昨日の統計で弊社が注目したのは、石油ガス採掘業の就労者数が3ヵ月連続で増加し、12万8,200人となった点。さすがに原油価格がここまで上昇すると就労者数は増加することになる。

まだ、過去最高となった2014年10月の20万800人には及ばないが、この回復はエネルギー不足にあえぐ西側諸国にとっては朗報といえる。

脱炭素の流れは継続するものの、移行期間中のエネルギーの安全保障がより重要に成るため、特に生産までのリードタイムが短いシェールオイル業種は今後、回復していくと考えられる。シェールオイル増産はガス供給増加に繋がる。

なお、北米のLNG液化キャパシティは2022年で919億立方メートル/年だが、2024年に1,121億立方メートル/年に増加するまではさほど大きな輸出キャパシティの拡大にはならない見込み。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は急上昇した。ロシアに対する制裁が継続、さらに強化される見通しがほぼ確実視される中でホワイトハウスがロシア産の原油輸入停止に関してコメントしたことで、輸出市場における需給タイト化観測が強まったため。

それに先立って報じられていたイランの核協議合意間近、といった報道は完全にかき消された形。

昨日、ホワイトハウスはロシア産原油の輸入を禁止する可能性が示唆された。2021年の米国のロシアからの原油輸入は、全輸入量が日量611万バレル/日に対して19万9,000バレル/日と全体の3.3%、一方石油製品は全量235万9,000バレル/日に対して47万3,000バレル/日と20.0%に及ぶ。

ただ、石油製品の輸入も止めた場合、全米の製油所の稼働率を2.6%(米原油処理能力を1,813万2,000バレルした場合)程度であり、米国にとっては耐えられるレベルではある。しかし、原油供給が▲20万バレル減少するインパクトは小さくない。

週明け月曜日は中国宇貿易統計などの発表があるが過去の統計であり、引き続きロシア・ウクライナ情勢を踏まえた各国の対応動向に左右される。基本的にロシアに対する制裁強化で需給タイト化の可能性が高いため、高値を維持しよう。

このタイミングで米ヒューストンでエネルギー国際会議が開催される。今年のテーマはエネルギー・天候・イノベーションのペースの変化。基本的に2050年のネット排出ゼロを目指し、そのための技術革新、最新技術に関して議論がなされる見込み。

今回のロシア問題を受けて脱炭素というよりは脱ロシア、もっと言えば脱専制国家の機運が高まる中、脱炭素に必要な資源の大部分を握る専制国家との付き合い方やこれまで描いてきた理想の脱炭素社会の達成を、どのように方向修正していくのか、あるいはこの状況においても同じスタンスで突き進むのかに注目が集まる。

◆石炭・LNG・天然ガス

豪州石炭スワップ先物価格は再び上昇して400ドルを上回った。材料はコメントするまでもないが、ロシアに対する制裁にともなう供給減少が強く意識されているほか、ドイツが一時的にも石炭廃止を見直す方針を明らかにしていることが価格を押し上げている。

足下の価格上昇はパニック買いの側面も否めない。ただ、原油価格とパリティまで価格が下落するとすれば、簡単な回帰分析の結果は、380ドル(前日比+40ドル)、競合燃料であるJKM対比だと224ドル(241ドル)、TTFだと318ドル(+36ドル)という数字が出てくる。

欧州天然ガス価格は上昇して過去最高値を更新した。ヤマルパイプラインの稼働で売られていたが、ウェレケ・カプシャンイ通過のガス流量の減少や、ロシアに対する制裁強化の方針が調達リスクを高めているため。

TTFの期間構造は期近の上昇がショート・スクイーズで顕著であるが、期先も上昇している。徐々に市場は構造変化を織り込みつつある。

なお、欧州に供給できない分を中国にという報道もあるが、リンク先の記事の通りガス田の位置、パイプラインの配置を考えると欧州分を中国に回す、ということは現時点ではほぼ不可能で、ロシア側も制裁を科されなければ供給は継続すると見られる。
https://oilgas-info.jogmec.go.jp/info_reports/1007679/1007948.html

なお、ドイツの天然ガス在庫減少ペースはやや鈍化の兆しが見られ、このままだと冬を乗り切れそうな感じである。しかし例年はここから在庫の積増しが行われるが、ロシアに対する制裁やロシアからの供給停止があればその限りではない。

となると、景気が悪化する形で価格が下落する、という選択肢が最も現実的といえ好まれない形での価格下落リスクは同時に高まっているといえる。

引き続き、同じコメントを掲載させてもらうが、ロシアからのガスを全て置き換えようとした場合、スポットカーゴ全てを欧州に回したとしても「足りない」。

ここでコメントしている通り、欧州の再ガス化キャパシティは2,292億立方メートル程度あり(BBGデータなどを元にした概算)、LNGが供給されれば受け入れは可能だ。

しかし今後3年で最もLNGの液化キャパシティを拡大させる計画なのが米国で、液化容量は今の1.5倍程度に増加する。しかしそれでも3年後である。

また、全てのスポットカーゴを欧州に回すことは不可能であり、日本や韓国、中国もスポットでLNGを購入している事実を考えると数字の上でつじつまが合っても実際にロシアからの供給減少をLNGで代替することは、現時点では不可能といって良い。

これは非常に強い交渉カードを欧米ではなくロシアが持っていることを示している。

仏独の原発の稼働率はフランスが上昇したが、ドイツは再び低下している。

米国天然ガス価格は欧州向けの輸出増加観測で上昇している。米国もガス・LNGのフローが変化(詳しくは上述のとおり)する可能性が高いが、TTFほど期先の価格は上昇していない。

極東のガス価格であるJKMは時間差の影響もあってか昨日は下落、期先の価格も下落している。価格上昇に伴う需要減少観測が価格を押し下げたと考えられるが、非常事態で流動性も低く「たまたま値が付いた価格」が先物価格に反映されていることも否めない。

今後は欧州とカーゴの取り合いが発生することは必定であり、まずはターム契約で増加可能な分を増加させることになるが、スポットカーゴの調達は今後、ロシア・ウクライナ情勢次第でさらに厳しくなることが想定される。

2月27日時点の発電用LNG在庫は180万トン(前年同月末230万トン、過去5年平均万トン)と過去5年の最低である166万トンは上回っているが水準は低く、今後、欧州向けのLNG融通が増えるとみられることから、気温低下(ないしは夏場の上昇)があった場合充分な在庫ではなくなった。

2月21日~27日のLNGトレードだが、取引量は+20%の850万トンとなった。スポット取引のシェアは30%と先週の22%から上昇。東南アジア、北欧(英国、オランダ)向けのフローが増加した。

長期契約は韓国、中国の調達が増加。ロシアのヤマルLNGプロジェクトとサハリンプロジェクトからの輸出は増加。ヤマルの稼働率は113%に達した。

今後、ロシアからの供給減少の可能性が高いため、米国から欧州へのカーゴ融通が加速すると見られる。ただ、あと1ヵ月程度で冬場が終了するため、状況はやや厳しさが緩和する期待はあるが、やはり状況は厳しいと言わざるを得ない。

週明け月曜日もロシアからの石炭供給懸念などを材料に、海上輸送石炭価格は高値維持の公算。

天然ガス価格はロシアに対する制裁強化がガス供給に影響することは不可避であり、スポットカーゴ需要の増加で天然ガス・LNG価格は高値維持の公算。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP提示の 1トン=1,360立方メートルを用いている。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は急騰した。ロシアに対する制裁で多くの資源供給が滞る中、エネルギー価格の上昇と相まって非鉄金属が物色される流れは変わっていない。

最も顕著に上昇したのがニッケル。供給停止懸念を背景とするショート・スクイーズが発生しているため足下の価格上昇が需給バランス変化を前提とする上昇である、とするのはややムリがある。

その意味で、現在の在庫水準のみを判断材料にした場合、過去1年データを元に2標準偏差程度の誤差を考慮した場合の上下な25,300ドル程度であることを考えると、現在の価格は4,500ドル程度の流動性プレミアムが発生しているといえる。

同じことがアルミなどにもいえるが、同様の計算を行うとプレミアムは450ドル、銅や亜鉛は2標準偏差までのブレを考慮したときに「ギリギリ説明可能な」水準、鉛は1標準偏差で説明可能な水準、錫は在庫との明確な相関性は確認されていない。

ただしこれらの分析も供給途絶のリスクが高い中ではほとんど意味が無く、今後のロシアに対する制裁動向に左右されることになる。

週明け月曜日は重要な中国の貿易統計が発表される。過去の統計であるため政治関連ニュースに比べると重要度が低下しているが、中国の工業金属関連の「輸入動向」はまさに中国の政策を反映したものであり、その意味で注目している。

なお、本日開幕した全人代では、2022年の経済成長を5.5%程度とし、2021年の6%から下方修正している。一方、積極財政を進める方針で、通年で2兆5,000億元の税負担を軽減、地方のインフラ投資を促すための専項債の発行額を3兆6,500億元に据え置くとした。

一方、財政赤字は前年の2.8%(前年3.2%)と財政悪化に目配せし、プレ・コロナの水準に戻る計画。

成長目標の下方修正や財政健全化は人口動態を見れば賢明であり、期待需要の減速で価格の調整要因となる。結局、財政出動のスタンスがコロナの影響緩和によってやや厳しめになる、ということだ。

しかし一方で、防衛費を1兆4,504億5,000万元と前年から7.1%の増加と、伸び率を加速、軍事力の強化を鮮明にしており、この状況においても防衛、というよりは恐らく攻撃能力を拡充せんとしている。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは高値を維持、豪州原料炭スワップ先物は前営業日の暴騰の反動で下落、大連原料炭価格は小幅に上昇、上海鉄鋼製品先物は小動きだった。

中国の製造業活動の回復とそれに伴う鉄鋼製品需要増加、鉄鋼原料増加、ロシアの制裁による供給不安(原料炭)といった強弱材料が混在する中、総じて供給不足である、ということが材料となり高値を維持している。

毎週発表される鉄鉱石港湾在庫は▲110万トンの減少で、在庫日数は35.9日と過去5年平均の36.5日を下回った。

鉄鋼製品は+49万6,000トン増加の1,926万8,000トンとなったが、これは例年の水準(1,996万8,000トン)は下回る。

原料炭在庫は11万トンとほぼ過去最低の水準であり充分ではない。ロシア問題や、洪水のシーズンに有る豪州北部の洪水の影響が深刻で、閉山になる可能性も出始めている状況。

ここでロシアの供給が止まるようなことがあれば、中国には供給されようが、西側諸国への供給が途絶することになる。

週明け月曜日も海上輸送市場需給が緩和するとは思えず、高い水準での推移が続くと予想。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは大幅に上昇した。ロシアの原子力発電所攻撃や、マクロン大統領に対して「戦闘を決して止めない」と発言したことなどを受けて戦争長期化への懸念が強まり株価が下落、長期金利が低下した。

一方、原油価格が上昇したこともあって実質金利が低下し、金基準価格は1,647ドルと+39ドル上昇、リスク・プレミアムは324ドル(▲4ドル)と高値を維持した。

銀は金銀レシオがこの数週間でも低水準である76.6倍(前日比+0.4倍)と低下しているため、金価格の上昇の中で水準を大きく切り上げた。割安感からの安全資産需要の高まりとみられる。

PGMは需要が低迷しているはずのプラチナも上昇、パラジウムは急騰した。パラジウムは自動車の排ガス職場向けの需要が大半だが、特殊な半導体にも用いられること、ロシアの供給シェアが大きいことから影響は大きい。

週明け月曜日もロシア・ウクライナ情勢を受けた株・金利・原油動向に左右される形となるが、リスク回避姿勢が鮮明になっていることから高値維持の公算、PGMも同様だろう。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇後、上げ幅を削る展開となった。ロシア・ウクライナ情勢不安を背景にまずショートの買い戻しがほぼスクイーズ気味に入っていたが、それが一巡し、安全資産需要でドル高が進行する中、一旦生産者や投機筋の利益確定の動きが入ったためと考えられる。

ファンドのポジション動向を見ると、トウモロコシ・大豆のポジション解消が顕著で、トウモロコシに関してはショートの買い戻しが大きく、大豆はロングの解消売りが大きかった。主要生産地の違いによるものと考えられる。

一方、ロシア・ウクライナが主要生産地であり既に輸出にも障害が出ていると考えられる小麦は、ロングが増加、ショートが減少しパニック的な買いとなっている。

今後、南米の天候状況の改善や安全資産需要の増加によるドル高進行が上値を抑えると考えられるが、このまま戦争が長引けば、戦地であるウクライナの播種が困難になる可能性は高く、供給面が価格を押し上げる状態は続くと見る。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・ロシア・ウクライナの衝突の影響が長期化し、欧州を中心に景気が減速する場合。

また、ロシアに対する制裁がロシアが主要生産地である商品の供給を制限し、価格を押し上げ、景気を悪化させるリスク(価格下落要因)。

なお、今回の対応如何では中国が台湾を武力で早期に併合する可能性を高めることになる。

・ロシア国債のデフォルトや、ロシアからのビジネス撤退が企業や信用市場に大きな永享を与え、クレジットクランチ(信用収縮)が発生する場合。

・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

むしろこの可能性は高待っており、リスクシナリオではなくなりつつある。

・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。

・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。

◆本日のMRA's Eye


「ニッケル価格はオーバーシュート」

ロシアはウクライナ全土に軍事侵攻し、ウクライナの主要都市への攻撃を継続している。西側諸国の制裁は軍事行動を牽制することを目的とするものだったが、不退転の決意で進軍するロシア軍がこのタイミングで撤兵するとは考え難く、フランス、マクロン大統領に対してはわざわざ電話して撤退しないことを伝えている。

仮にゼレンスキー大統領と停戦で合意したとしても、破壊したウクライナで治安維持目的で軍を駐留させると見られる。この状況を考えると西側諸国はロシアに対する経済制裁を継続すると考えられる。

ある意味大人の判断で、仮にウクライナが降伏してしまい「もうこれ以上制裁をしている必要がないのでは」となるのかもしれないが常識的に考えてプーチン大統領にはやったことに見合った対価を支払わせる必要がある。

現在、西側諸国はSWIFT排除を部分的に行っており、エネルギーなどは本格的な制裁の対象としていない。代替調達先が確保できないためである。

そのため、制裁対象は「必需品ではないもの」が該当することになり、アルミやニッケル、パラジウムといった工業には必須の金属だが人間の生命に関わらないものは制裁対象となる可能性が高い。

ロシアに対する制裁の影響を見る上での指標であるNornickel株とニッケル価格動向を見ると今年1月以降両者の間には高い相関性がみられ、市場参加者がどの程度ロシアに対する制裁を織り込んでいるかの指標となるが、足下、同社株価の下落は続いている。

今後、同国からのニッケル輸出が減少し、同社の経営状態が悪化すると見ている市場参加者が多いためだ。

直近1年間のニッケル価格とLME指定倉庫在庫の間には高い相関関係があるが、現状、在庫減少が価格上昇に繋がっていることが窺える。しかし、今回のロシアに対する制裁実施により、価格レンジが2,000ドル程度上振れした。

この場合「現在の在庫水準」を元にするとニッケル価格は24,000ドル~27,000ドルでの推移になる。

仮に在庫がゼロになれば、26,000ドル~29,000ドルまでの上昇がありえる状況だが、足下30,000ドルを超えた。即ち、これまで説明力が高かった在庫との関係が壊れ、オーバーシュート気味に上昇している、と考えるのが妥当だろう。

このオーバーシュートは市場参加者が先行きの供給不安を背景に「長期にわたってショートポジションを保有できないこと」によって発生する。つまり、ロシア問題が解消するまではこの状態が続く、ということである。

また、西側諸国の制裁への本気度を考えると中期的に価格上昇を許容できない30,000ドル超えの水準が数ヵ月単位で続く可能性があることは否定できない。

しかし、金融引き締めの継続や、価格上昇自体が需要を減じる「レーショニング」の可能性が高いことを勘案すると、やはり現在の水準はやや行き過ぎとみている。


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