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弱まる円の「安全性」
  • MRA外国為替レポート

2022年2月21日号

◆先週の市場総括


先週はウクライナ情勢を巡る情報に左右された。週初はロシア軍が一部撤退との報道、ブリンケン米国務長官とラブロフ露外務大臣が対話継続を確認、プーチン大統領が交渉を続ける用意があると述べたこと、などからリスク回避が緩和。株価は持ち直し、円高も一服した。

米10年債利回りは2%台に上昇。週初に115円ちょうど近辺に下落していたが、115円台後半に持ち直し。ユーロ円相場も130円台前半から132円近くに反発した。

しかしその後、米欧がロシア軍の撤退は確認できずなお国境付近で軍隊を増強との認識を示し、ウクライナ東部の親ロシア派地域で砲撃が散発、親ロシア派が同地域の住民をロシア側に避難させるなどの動きに出たことから懸念が急速に強まった。

24日に米ロ外相会談を開催する予定となったが軍事侵攻がないことが前提であり市場心理の改善には至らず。株価は大きく下落。米国株は週間で安値引け。

ユーロ円相場は130円20銭へ、ドル円相場も115円ちょうど近辺へ大きく下落した。ユーロドル相場は1.1320へ下落。日経平均は27,000円割れから27,500円近くを回復する場面もあったが、週末にかけて上値重く27,000円をかろうじて維持して引けた。

月曜日の東京市場では日経平均が大幅安。ウクライナ情勢の緊迫化、米ロ首脳対談が平行線のまま進展なく侵攻懸念が重石。FRBの金融正常化加速への警戒感も引き続き燻った。

寄付きから大幅安となり27,100円近辺へ、さらに27,000円の大台を割り込み、下げ幅は一時▲700円を超えた。ただ大台割れでは押し目買いも入り、日銀によるETF買いへの期待もあって下げ止まり、やや持ち直し。引けは▲616円安の27,079円とかろうじて大台を維持した。

ドル円相場は115円30銭で始まり早々に60銭に上昇。その後は30銭~60銭で上下して115円50銭近辺でもみ合い。

ユーロ円相場は荒れ模様。130円50銭に下落して始まり、131円40銭に反発、その後は反落して131円ちょうど近辺でもみ合い。

ユーロドル相場も同様にユーロが強弱。1.1340で始まり1.1370に上昇したが反落、1.1340~50で推移した。

欧州市場では欧州株が続落。ウクライナ情勢への警戒感が拭えず。ユーロ円相場は急落して130円10銭~40銭で値動き荒く上下。その後持ち直し60銭~80銭で上下した。

ユーロドル相場は1.13ちょうどに下落した後、1.13ちょうど~1.1340で上下。

ドル円相場もユーロ円相場の下落につれて115円ちょうど近辺に下落し、その後は115円10銭~20銭で推移。米国株はウクライナ懸念で上値が重かった。

米ブリンケン国務長官はキエフの米大使館閉鎖を発表。地政学的リスクへの警戒感で売りが先行しNYダウは一時▲400ドル下落した。ただ先週末にかけての大幅下落の後で押し目買いも入り下げ幅は縮小。▲171ドル安の34,566ドルで引けた。

ナスダックは前週末とほぼ変わらずの13,790ドル。VIX指数は+1.75ポイント上昇して29.11。

原油価格WTI先物は95.46ドルで引け。95ドル台をつけるのは2014年9月以来。

FRB当局者からはタカ派発言が続いた。セントルイス連銀総裁は、7月までに合計1%の利上げを実施すべき、と再び発言し、バランスシート縮小は4-6月期に開始すべきと述べた。カンザスシティ連銀総裁もバランスシート縮小の必要性を指摘した。

米10年債利回りは一時2%をつけ1.998%。2年債利回りは1.587%。

為替市場ではドル高ユーロ安が進み、ユーロドル相場は1.1280に下落し引けは1.13ちょうど近辺。ドル円相場は115円70銭に上昇した後、40銭~60銭で上下し引けは115円60銭。ユーロ円相場は130円20銭に下落した後、反発して130円60銭近辺で引け。

火曜日の東京市場では日経平均が続落。1月28日以来の安値、27,000円割れで引けた。ウクライナ情勢の緊迫が嫌気され寄付きから軟調。FRBのタカ派スタンスへの警戒感も重石となり後場にかけてじり安。

下げ幅は一時▲300円を超え26,700円台に。引けにかけやや持ち直し▲214円安の26,865円で取引を終えた。

ドル円相場は115円60銭で始まり上値重く、9時過ぎには輸出企業の円買いが優勢との見方で30銭に下落。その後夕刻にかけては115円30銭~40銭で上下し夕刻は115円30銭。ユーロ円相場は130円50銭~60銭で上下し夕刻は130円50銭。

ユーロドル相場は1.13ちょうどで始まりじり高。夕刻は1.1320。そうしたなか、17時頃、ロシアのインターファクス通信社がロシア軍は演習を終えた後に拠点に帰還へ、と報じた。

これによりリスク回避が後退し円は全面安。ユーロは上昇。ユーロ円相場は急騰して131円30銭へ。ユーロドル相場は1.1340~50で上下。ドル円相場は115円60銭に上昇した。

米国株は幅広く買われた。ロシア軍が一部ウクライナ国境から撤退。ブリンケン米国務長官とラブロフ露外務大臣との会談では対話継続が合意された。プーチン大統領は軍事衝突を望まず交渉を続ける用意があると述べた。

地政学的リスクの後退をさらに確認し株は好感した。NYダウは+422ドル高の34,988ドル、ナスダックは+348ドル高の14,139ドルで引け。VIX指数は▲2.77ポイント低下して25.56。

原油価格WTI先物は緊張緩和で▲3.4ドル下落して92.07ドル。

リスク回避の緩和で米長期金利10年債利回りは上昇し2%台に乗せ2.048%。2年債利回りはほぼ変わらず1.575%。

ドル円相場はさらに上昇して一時115円80銭台をつけたが、その後は反落して115円60銭台でもみ合い引け。

ユーロドル相場は1.1320に下落した後、反発して1.1360中心に上下。ユーロ円相場は131円50銭に上昇した後、じり安となり引けは131円30銭近辺。

発表された米国の生産者物価指数(1月)は前年同月比+9.7%と予想+8.9%を上回る高い上昇率。前月も+9.7%から+9.8%に上方修正された。

コア指数も前月+8.5%からやや上昇率が減速して+8.3%となったが予想+7.8%を大きく上回った。

NY連銀製造業景気指数(2月)は前月▲0.7から3.1へ改善したが予想12.0を下回った。価格上昇が大きな重石となった。なおドイツZEW景況感指数(2月)は期待指数が前月51.7から54.3に改善したが予想55.0は下回った。

水曜日の東京市場では日経平均が3営業日ぶりに反発。前日にロシア軍が一部撤退との報道から警戒感が緩和。米国株が堅調に推移したことを受けて、27,400円近辺で大幅高寄りして始まった。短期筋主導で、値がさ株、半導体関連株が上昇。午後には上げ幅は一時+600円を超えた。

ただ地政学リスクの全面的な払拭はならず、FRBの金融正常化への警戒感も残り上昇は続かず。引けは前日比+595円高の27,460円。

為替市場は小動き。ドル円相場は115円60銭~70銭の狭いレンジで終始もみ合い。

ユーロ円相場は131円30銭~40銭で上下した後、夕刻にかけては131円90銭へ上昇。ユーロドル相場は1.1360から1.1340台に小幅軟化した後反発して欧州時間には1.1390。

欧州時間から米国時間にかけては、ウクライナ情勢への警戒感が再燃。ロシア軍が一部撤退との報道もあったが、未だに大軍が国境付近に残留。ブリンケン米国務長官とNATO事務総長は、ロシア軍撤収は確認できずむしろ増強している、と述べた。

市場ではリスク回避が強まり米国株は寄付きから大きく下落して昼過ぎには下げ幅は一時▲350ドルを超えた。米10年債利回りは2.00%近辺に低下。

為替市場では円が全面高。ユーロ円相場は131円10銭台に、ユーロドル相場は1.1350台へ下落。ドル円相場も115円40銭~50銭に下落。

ただその後米国株は持ち直し。公表されたFOMC議事要旨は、事前にタカ派的な内容が警戒されていたが、市場の織り込み以上の内容はなく、ひとまず警戒感が後退した。また米国の経済指標が強めだったことも株価の下支え。NYダウは下げ幅を縮めて前日比▲54ドル安の34,934ドルで引け。

ナスダックは▲15ドル安の14,124ドル。VIX指数は▲1.41ポイント低下の24.29。

円高はその後一服してユーロ円相場は131円50銭に反発した後30銭台で引け。ユーロドル相場は1.1390に反発した後1.1370台で引け。ドル円相場はそのまま115円40銭台で引けた。

米国の小売売上高(1月)は前月比+3.8%と前月▲2.5%から大きく持ち直し予想+1.8%を上回った。鉱工業生産は前月の▲0.1%から+1.4%とプラスに転じ予想+0.4%を上回った。設備稼働率は前月76.5%から77.6%に上昇した。

木曜日の東京市場では日経平均が反落。ブリンケン米国務長官がロシアは引き続き国境に軍を終結している、と述べたことから、ウクライナ情勢をあらためて懸念。利益確定売り、戻り売りに押された。

前場は27,300円~400円で推移。午後には一段安となった。

昼過ぎに、ウクライナ軍が東部で親ロシア派を砲撃、と報じられ緊迫感が高まり27,100円近辺に下落。ただその後は大台接近で押し目買いに支えられ、引けにかけ下げ幅を縮めて▲227円安の27,232円で取引を終えた。

ドル円相場は115円40銭台で始まり一時30銭台に下落した後昼過ぎまで50銭近辺でもみ合い。

ユーロ円相場は131円30銭で始まり、一時20銭に下落したがその後は40銭~50銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.1370台で始まりもみ合い昼過ぎは1.1380。

その後、上記のウクライナで軍事衝突発生との報道に一気にリスク回避が強まり円高・ユーロ安に振れた。ユーロ円相場は130円40銭へ、ユーロドル相場は1.1330割れへ急落。ドル円相場も115円10銭台に下落した。

ただ情報の真偽も不明で夕刻にかけては持ち直し。ユーロ円相場は131円30銭へ、ユーロドル相場は1.1380へ反発した。

ドル円相場は115円30銭~40銭で上下。欧州市場に入ると再びユーロ安・円高。ユーロ円相場は再び130円40銭に急反落。

ユーロドル相場は1.1340へ下落。ドル円相場は115円ちょうど近辺に反落した。その後は円高一服でドル円相場は115円ちょうど~10銭でもみ合い、ユーロは持ち直してユーロドル相場は1.1380、ユーロ円相場は130円90銭に戻した。

ただその後も全体としてリスク回避が続きユーロ安・円高基調は続き、ユーロ円相場は130円50銭台、ユーロドル相場は1.1360近辺でもみ合い。

ドル円相場は弱い米国の経済指標による長期金利低下で一時114円80銭台に下落。その後持ち直して115円中心に上下し引けは114円90銭。

米国株は今年最大の下げ。バイデン大統領が、ロシアがウクライナに侵攻する可能性が非常に高い、と述べたことで、ロシアと欧米の対立激化懸念が強まった。弱めの経済指標も下押し材料に。

NYダウは▲622ドル安の34,312ドル、ナスダックは▲407ドル安の13,716ドル、VIX指数は+3.82ポイント上昇し28.11。

米10年債利回りは1.965%に、2年債利回りは1.47%に低下した。

発表された米国の週次の失業保険新規申請件数は248千件と前週225千件から増加。住宅着工(1月、季節調整済み年率換算)は1,638千件と前月1,708千件から減少。

フィラデルフィア連銀製造業景気指数(2月)は前月23.2から16.0へ悪化した。原油価格WTI先物はウクライナ情勢緊迫もイラン核合意が進展し市場への供給が増えるとの見方からここ数日上値が重く91.76ドル。

金曜日の東京市場では日経平均が続落。前日にウクライナ情勢への懸念が強まり米国株が大幅下落。日経平均も26,800円近辺に大幅安でのスタート。一時26,800円を割り、下げ幅は▲400円を超えた。

しかし午前中に、侵攻がないことを条件に来週後半に米ロ外相会談を開催する、と報じられ、過度な警戒感が緩和して株価は急反発。下げ幅を縮めて引けは▲110円安の27,122円。

ドル円相場は114円90銭~80銭で始まり、ウクライナ情勢への警戒感緩和で午前中に上昇。その後は夕刻、欧州時間にかけて115円20銭近辺でもみ合いとなった。

ユーロ円相場も同様に130円50銭~60銭で始まり午前中に上昇。130円90銭~131円ちょうどでもみ合い横ばい。ユーロドル相場は1.1360~70で推移した。

欧州市場に入るとユーロは軟調。ウクライナ情勢の緊迫は東部中心に継続。親ロシア指導者が衝突激化を警戒し女性・子供をロシア側に避難させると報じられた。

東部での砲撃は続き、ウクライナ政府、親ロシア勢力、双方が攻撃を非難し実態が不透明に。ロシア側が軍事衝突の端緒を探る動きともみられ警戒感が高まった。

ユーロ円相場は米国時間にかけて130円20銭へ下落。その後も20銭~40銭で上下し引けは安値130円20銭近辺。ユーロドル相場は1.1320に下落した。

ドル円相場もリスク回避で円高に振れたがドルも堅調で、115円ちょうど~10銭でもみ合い引けは115円ちょうど近辺。

米国株は不安定な値動きのなか続落。月曜日が祝日となる3連休の前でリスクをとりにくく、ウクライナ情勢への警戒感やテクニカルな買い戻しで上下。NYダウは34,000ドル~34,300ドルで上下して引けは▲232ドル安の34,079ドル。

ナスダックは▲168ドル安の13,548ドル。一時13,500ドルを割った。VIX指数はわずかに▲0.36ポイント低下して27.75となお高水準。

原油価格、金相場は前日と概ね変わらず。米10年債利回りはリスク回避が強まるなかやや低下して1.927%。2年債利回りはほぼ横ばいの1.47%。

バイデン大統領は、プーチン大統領はウクライナ侵攻を決定したと確信している、と述べた

◆今週の3つの注目ポイント


月曜日は米国市場が祝日で休場

1.ウクライナ情勢

引き続き軍事衝突への警戒感が高まった状況が続く。ロシア軍は20日にベラルーシで大規模な軍事演習を実施。その後迅速に撤収するかがまず焦点だ。

20日に北京五輪が閉幕するタイミングであることも懸念を強めている。

週初からロシア軍によるウクライナ侵攻への警戒感が一段と高まるか、緩和に向かうか。ブリンケン米国務長官が、ロシア軍の侵攻がないことを前提に、週後半に米ロ外相会談を予定している。これが当面何らかの歯止めとなるか。

一方、現場、ウクライナ東部の親ロシア地域においては、ウクライナ軍・新ロシア派いずれの動きか特定できないまま砲撃が続いている。

親ロシア派は砲撃を軍事行動の端緒とし、ロシア軍が侵攻する口実を模索する動きともみられ予断を許せない状況。市場のリスク回避心理は続き、あるいは偶発的な衝突などイベントリスクが生じるか。

2.米国の経済指標

米国の経済指標は、雇用情勢や小売り関連の数字は強めだが、予想より弱い数字も散見される。足元で感染がピークアウトし減少傾向にあるなか、今週の指標が引き続き米国経済の堅調さを示しFRBの金融正常化を後押しするか。

火曜日 ケースシラー住宅価格指数(12月、前年同月比、予想+18.0%、前月+18.3%)

 PMI景況感指数(2月、製造業、予想56.0、前月55.5、サービス業、予想53.0、前月51.2) 消費者信頼感指数(2月、予想109.8、前月113.8) リッチモンド連銀製造業指数(2月、予想9、前月8)

木曜日 米週間新規失業保険申請件数GDP(10-12月期、改定値) 新築住宅販売(1月、季節調整済み年率換算、予想813千戸、前月811千戸)

金曜日 個人所得・消費支出(1月、前月比、予想▲0.3%・+0.8%、前月+0.3%・▲0.6%) 消費支出物価指数(同、コア指数、前年同月比、予想+5.2%、前月+4.9%) 耐久財受注(1月、前月比、予想+0.5%、前月▲0.9%)

3.欧州の経済指標

ウクライナ情勢の緊迫化、軍事侵攻が生じた場合、欧州経済が最も悪影響を受けるとみられる。足元の景況感はどうか。ECBの金融政策スタンスに影響を与えるか。

月曜日 PMI景況感指数(2月、ユーロ圏、製造業、予想58.6、前月58.7、サービス業、予想51.7、前月51.1)

火曜日 ドイツIFO景況感指数(2月、予想96.4、前月95.7)

水曜日 ユーロ圏消費者物価指数(1月、改定値)

金曜日 ドイツGDP(10-12月期、改定値)ユーロ圏経済信頼感指数(2月、予想113.0、前月112.7)

24日木曜日にECBが非公式会合を開催。

◆今週のMRA's Eye


弱まる円の「安全性」

ウクライナ情勢の緊迫化により、リスク回避の円買い・円高の動きが観察される。リスク回避局面で円高となるのは、これまで幾多のリスクイベントにおいて確認できた値動き。

幾度となく繰り返されてきたことで、市場参加者の思考パターンが構築され、反射的に円買いという行動パターンが定着した面があろう。

もっとも、リスク回避イベントの内容や、実際の為替フローの状況をみれば、円高となることが論理的に不自然な場合もある。リスク回避の円高、が、単に従来の相関による投機的な円買いにとどまれば、円高は持続力を欠き、あるいは脆弱な値動きとなる。

リスク回避=円高となる最も単純なケースは、リスク選好のもとで積み上がっていた投機的な円売りポジションが、リスク回避イベントによって手仕舞われる場合だ。

ここ数十年、円は先進国通貨のなかで超低金利を維持しており、投機的に売りやすい通貨として定着してきた。相対的に超低金利の円を売り、相対的に高金利の通貨買いが、通常時あるいはリスク選好が強まる局面で積み上がりやすい。

その反動として、リスク回避局面で円買い・円高が生じる。

この場合は、リスクイベントの直前にどれだけ円売りが活発化していたか、円売りポジションが積み上がっていたか、が円買い・円高の勢いを左右する。

足元の状況をみると、シカゴ通貨先物のポジションはネットで円売りに傾いているが、そのボリュームは過去のピークの半分ほどだ。そのため円買い戻しの勢いは鈍いと推察される。

地政学的リスクによるリスク回避イベントの場合、リスクを避けるという観点から紛争当事国通貨が売られるのは論理的だ。

当事国は経済的にダメージを受けやすい。ウクライナ情勢においては、ユーロとロシアルーブルが売られるのが筋。

この点、日本はロシアと国境を接しているとはいえウクライナとは逆サイドにあることから、円が避難通貨となることは頷ける。ただその観点からはオーストラリアなどが候補となろう。

スイスフランも永世中立国であることから地政学的リスク発生時には買われやすい。ただ欧州のなかにあることで経済的には影響は不可避であり、今回はやや分が悪い。

さらに肝心なことは、リスク回避局面では、そもそも、投機ポジションを圧縮する傾向にあることから、新たにリスクをとってこれらの通貨を買う動きが生じにくいことだ。

リスクをとれる程度のイベントであれば論理的に相対的な安全通貨は買われるが、リスクそのものがとれない場合は既存のポジションの手仕舞いにとどまる。

米国は軍を派遣するなどウクライナ問題の準当事者だ。しかし、地理的には遠く、経済的なダメージを受ける度合いは小さい。

ドルは基軸通貨としてグローバルなキャッシュであること、様々な投資の原点であること、などから、投資資金が還流しやすい。

投機的に買われるというより、投資資金の動向がドル高をもたらす。これは投機による通貨高に比べて足腰のしっかりした上昇となる。

足元のリスク回避局面で円とドルの強弱を比べた場合、円高が投機筋の買い戻しにより、ドル高が投資家のキャッシュ化によるなら、ドル高により持続力があり足腰が強いということになりそうだ。

実需や投資資金の動向を基本に、リスク回避局面において強い通貨、安全通貨となる条件とされるのは、経常黒字国通貨であり、対外債権国通貨であるという点。

ドルは基軸通貨として特別な地位にあることからこれに当てはまらない。

円はこの2つの条件を満たすことから安全通貨とされてきた。極端なリスク回避イベントにより、国境を超えた投資家の資金フローが停滞すれば、為替相場の需給の大半を占めるのは経常収支となる。

投資は止まっても経済活動が持続する限り貿易は止まらない。

そのため貿易収支が為替需給、為替相場の変動要因として力を増す。この点からみれば、円の安全性は足元で揺らいでいる。

資源価格の上昇で輸入金額は急増して過去最多となった。1月の貿易収支は2兆円を超える赤字となった。ウクライナ情勢の緊迫化が資源価格のさらなる上昇をもたらすなら、むしろ円の安全性の一面がさらに脅かされる。

この観点からは、資源国通貨の安全性は増すことになる。たとえばオーストラリアは、紛争地域からもっとも遠いこと、資源国であること、の2点から安全性は増す。

新興国通貨はリスク回避局面では海外からの投資資金の流入が止まり、あるいは海外へ流出することから下落しやすい。経常赤字国が多いことも通貨安となるベースにある。ただ新興国のなかでも資源国であれば、そうした通貨安圧力は緩和しうる。

もうひとつの側面、日本が対外債権国通貨であることが円の安全性を支えているという点はなお揺るがない。

ただ、これが為替相場に円高として顕在化するのは、国際金融システムの混乱や欧米経済が極端に悪化し、日本の投資家が対外債権の回収に走る場合だ。

すなわち日本の投資家が海外資産の売却、日本への資金還流に動いた場合。リーマンショック後には、実際にそうした動きが観察された。ただ足元ではそこまでの混乱は今のところ生じていない。

留意を要するとすれば、ロシア軍によるウクライナ侵攻が実際に生じ、経済制裁や金融制裁が行われた場合。ロシア経済・金融システムの混乱が西側の金融システム不安に波及する可能性もあり留意を要する。


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