米金利低下・株高で軒並み上昇
- MRA商品市場レポート
2022年2月10日 第2131号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「米金利低下・株高で軒並み上昇」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は総じて堅調な推移となった。米10年債の入札が好調で長期金利が低下、株価上昇とドル安が進行したことがリスク選好とドル減価によるドル建て資産の名目価格上昇に寄与したため。
年初から投機の買いで上昇してきた景気循環系商品はこの2週間ほど売られてきたが、ポジションが軽くなっている投機筋が再び買いを入れてきたと考えられる。
なお、「投機資金が流入して価格が上昇」というコメントをよくみるが、必ずしもそうはならないので注意が必要ではある。
昨日最も上昇したのがシカゴ材木。供給が洪水などの異常気象の影響で制限される中、米長期債入札が好調で金利が低下、住宅向けの需要増加期待が高まったことが材料だろう。
次に上昇したのがアラビカ豆。カメルーンの国内情勢の悪化で買いだめが起きたことなどが材料となったようだ。パーム油も上昇しているが、これはインドネシア政府が1月27日から導入している輸出規制(20%を国内供給に充てる)の影響がじわりと影響してきている。
なお、パーム油はインドネシアの石炭供給が減少する中で有力なエネルギー源と位置づけられているが、価格高騰で輸出に回される量が増えたため恐らく石炭の輸出規制と同様の観点で規制があったと考えられる。
【本日の見通し】
本日も企業決算やウクライナ情勢を睨みながら神経質な推移になると予想されるが、多くの商品で供給懸念が解消しておらず、一方で金融引き締めの影響をこなしながら株価が上昇していることを考えると、高値圏を維持するのではないか。
本日予定されている材料で注目は(なにもないと思うが)ロシアとベラルーシの合同軍事演習、新興各国の政策金利動向、OPEC月報、米CPIなどだろう。
米金融引き締めの方向性に変わりは無いが既に3月に実施される利上げが50bpなのか、25bpなのかが焦点となっている。
本日発表のCPIはその試金石となるが、市場予想は前年比での伸びは高い水準が維持される見通しであり、これを上回るようであれば利上げペースの加速が意識されるため、再び商品価格には下押し圧力が掛ることになるだろう(もちろん下回れば逆の展開に)。
米CPI 市場予想 前月比+0.4%(前月 +0.6%) 前年比 +7.2%(+7.0%)コアCPI +0.5%(+0.6%)、前年比+5.9%(+5.5%)
15日までに発表が予定されている中国のファイナンス関連統計の予想は以下の通り。
中国は景気の軟着陸を目指して金融緩和に動いているためファイナンス規模は増加が予想され、鉱物資源価格を下支えするだろう。
資金調達総額 5兆4,000億元(前月2兆3,682億元)人民元建て新規融資 3兆7,000億元(1兆1,318億元)マネーサプライ(M1) 3.2%(3.5%)
【昨日のトピックス】
昨日、日本がLNGを欧州に融通することに決定し、恐らく20~30万トンが欧州向けとなる見込み。
直近の経済産業省のレポートでは1月16日時点で201万トンのLNG在庫を日本の電力会社は有しているため、在庫の10%程度であり、技術的には融通が可能だ。
LNGは通常輸入先を変更してはいけない「仕向地規制」が掛っているが、スポット市場の発達の中でこの仕向地規制が付与されていない玉(LNGカーゴ)も多い。恐らく、米国産のLNGなどが欧州に回ることになるだろう。
ただ、今晩から関東地方は大雪が見込まれるなどまだ冬は本番である。この状態で世界中のカーゴが欧州に集中するならば、何かあった時の供給への懸念が出ることになる。
LNGが足りないときにはまず、長期契約の中でボリュームを増やし、その後それでも足りなければスポット市場で調達を行う。日本が輸入している長期契約はJCCベースのものが多いため、過去の原油価格ベースでの輸入が可能であり、スポットのLNGよりも遙かに安い。
しかし、この枠を超えてしまったものはスポットで調達せざるを得なくなり、電力・ガス会社の調達コストは上昇することになる。つまり、在庫の放出は数量リスクを抱え、それに付加的に価格リスクも抱えることになるということだ。
そして、最近連動性を強めている電力市場(JEPX)の価格は上昇することが予想される。となると、JEPXから調達して電力会社大手の価格で販売をしている新電力などの経営に影響が出ることが想定される。
このタイミングでの融通決定は、春先に需給が緩んでからでは外交カードとしては弱いからだろう。欧州向け、というよりは米バイデン大統領の顔を立てた、ということだと思われる。ただ、そこまで米国が感謝してくれるのかどうかはよく分からない。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇して引けた。イラン核合意復帰・禁輸解除への期待は高まったがまだ確定ではない上、ウクライナ情勢に大きな変化がないことやドル安進行が買い材料となった。
また、昨日発表された米石油統計が市場予想に反して非常に強気な内容だったことも買いを誘った。
昨日の石油統計では、原油生産が増加、輸入が大幅に減少、稼働率が上昇したため原油在庫は▲4.8MBの大幅減少で過去5年レンジを下抜けしている。また在庫日数も▲0.7日の25.7日と過去5年の最低水準に近い。
ガソリンは生産が大幅に回復して同じ時期の過去5年平均を回復。出荷が過去5年平均を下回って低迷しているが在庫は▲1.6MBと減少、在庫水準は過去5年の最低水準近辺。ただし需要の低迷で在庫日数(輸出含)は27.7日と過去5年平均を上回っている。
ディスティレートも生産が増加、輸入も増加したが需要が過去5年の最高水準を上回ったため、在庫は▲1.0MBの減少で、絶対水準も過去5年平均を大きく下回った状態。在庫日数も過去5年レンジを下回っている。
製品の国内出荷は過去5年レンジを超えて大幅に増加。内訳を見るとガソリン、ディスティレートとプロパンの出荷が急増している。ガソリンは輸送需要だが、ディスティレート・プロパンは恐らく暖房需要も含むと考えられる。
ただし、輸出を含む出荷は過去5年レンジの最高水準は上回っておらず、米国以外の需要が低迷していることをうかがわせる内容。
総じて原油生産が回復せず、需要は回復しているため需給はタイトな状況。3月頃からシェールオイルの生産が戻ると期待されるが、これが戻ってこない場合は春先の原油価格下落の可能性が低下するため、週間石油統計の原油生産の状況は注視する必要がある。
本日もウクライナ情勢不安を背景に高値圏での推移が続くと考える。イランの核合意復帰・原油供給再開への期待が高まるが、イランからすれば「米国から譲歩を引き出せる最大のチャンス」であり、合意にはまだ時間が掛るだろう。
なお、OPECプラスの原油供給が予定通りにしか行われない以上、イランの禁輸解除は原油需給を確実に緩和させる数少ないカードの1つである。
ファイナンシャルな要因としては米CPIがあるが、市場予想を上回る物価上昇となれば利上げ加速緩速が強まるため下押し要因に。
◆石炭・LNG・天然ガス
豪州石炭スワップ先物価格は変わらずで240ドルを伺う展開。欧州のガス不足で欧州向けにも石炭が物色されていることが材料となっている。中国の石炭輸入の指標の1つであるバルチック海運指数は上昇し、小幅であるが5年レンジを上回っている。
欧州天然ガス価格は小幅に下落。欧州の気温が温暖になるとの見通しと、欧州排出権価格の下落で裁定が働いたためと考えられる。なお、欧州の仕組みでは規定の排出量を満たさなかった場合、1トンあたり100ユーロの罰金が科されるため、排出権価格がこの水準を超えた場合「罰金を払った方が安い」ので、構造的に100ユーロが上限として強く意識される。
仏独の原発の稼働率は低下しており、引き続き冬場の電力供給状況は不安定。
米国天然ガスは続落。暴風の影響が緩和していることが材料。
JKMは欧州ガスの下落と、日本のLNG放出報道などが材料になり小幅に下落した。しかし構造的な需給バランスの緩和は難しく、高値を維持している状態。
1月16日現在、エネルギー庁の調べでは電力会社のLNG在庫は201万トンとされ、仮に今回3隻程度を融通するとなると在庫の10%程度に該当することになるが、これだけでは供給不足にはならないだろう。
ただ、恒常的に欧州にガスを融通するならば、逆に日本のスポット調達圧力が恒常的に高まることになるため、厳冬・猛所の現物ショートのリスクは無視できない。
なお、弊社ではデータが取得できないが、ニュースでは大西洋航路のLNG船の船賃がマイナスとなっていると報じられた。LNGカーゴが供給過多になっているとみられる。
それを反映してかスエズ東西のフレートも低水準での推移が続いている。つまり、フレートレートのみでは足元の現物需給環境を判断するのが難しい状況。
本日の石炭価格も新規手がかり材料に乏しいが、欧州勢の買いも継続するとみられ高値維持の公算。
天然ガス価格はロシア情勢に大きな進捗がなく、高値でのもみ合い継続。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は軒並み大幅な上昇となった。年初から買いが入り、その後株価の調整や中国の経済統計悪化を受けて売られてきた非鉄金属だが、米株式市場が利上げの影響はあるものの落ち着きを取り戻しつつあり、昨日の米国債入札も好調で米金利が低下したことでドル安が進行したことが買い材料となった。
また、LME指定倉庫在庫の減少が続いていること、発電燃料価格が欧州・中国で高く、供給への懸念が生じていることも材料となった。
また、固有の材料としては中国南西部西チワン族自治区のBaikuang Tianyangアルミ精錬所でコロナが発生、封鎖されたことで供給懸念が強く意識された。同社は中国のアルミ供給の6%を占める。
本日も高値圏での推移が予想される。供給面が価格にプラス、需要面はマイナス、ファイナンス要素は価格にプラス(ドル安や株高など)に作用しやすいが、足下はファイナンス要素の影響が大きいと考えられる。
企業決算は非鉄金属価格にプラスに作用するものが多そうだが、予定されている米CPIで物価上昇が市場予想を上回る上昇となった場合、3月の利上げ幅の拡大が意識されるため、売り材料となる可能性がある点は注意したい。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭価格は小幅に上昇、上海鉄鋼製品先物は中心限月価格が小幅に下落した。
中国東京が鉄鉱石市場での監視を強めると発表したことが鉄鉱石価格を下押しし、鉄鋼製品市場も多少の影響を受けた。
ただし、原料炭の構造的な供給不足は変わらず、原料炭価格はほとんど影響を受けていない。なおAnglo Americanが豪セントラル・クイーンズランドにあるAquila鉱山プロジェクトで長壁採掘を達成したと発表している。
長壁採掘は石炭採掘手法の一種。これにより、既存のCapcoal鉱山の採掘寿命を7年延長することになる。
本日も鉄鉱石・原料炭とも供給制限の影響もあって高値水準を維持の公算。
◆貴金属
昨日の貴金属セクターは上昇した。注目の10年債入札が好調だったことで貴金属価格に対する説明力が高い10年金利が低下、実質金利が低下したことが材料となった。
これにより金の基準価格は1,496ドルに+14ドル程度上昇、リスク・プレミアムは小幅に低下したが336ドルと高い水準を維持した。
銀価格は金銀レシオを引き下げながら水準を切り上げ、プラチナも金価格の上昇に連れる形となった。パラジウムは株価上昇もあって大幅な上昇。
本日も株価上昇とそれに伴う長期金利の上昇などに左右され、高値で神経質な推移になると考える。
注目は米CPI。仮に市場予想を上回る上昇となった場合、利上げ幅の拡大観測を強めるため価格の下落要因に。
その一方、ロシア・ベラルーシ合同軍事演習の状況。仮に軍事懸念を強めるような内容になればリスク・プレミアムの上昇を通じて貴金属価格の上昇要因となる。
また、余りニュースになっていないが、新興諸国の政策金利発表が多数予定されており、この結果もCDSの上昇を通じてリスク・プレミアムの上昇要因となるため注目したい。
◆穀物
シカゴ穀物市場は上昇した。米需給報告はさほど予想とか割らなかったが、現在材料視されている南米の生産見通し下方修正が材料視された。またドル安が進行したことも価格を押し上げている
昨日発表された米需給報告のヘッドラインは以下の通り。
・2月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 177.0Bu/エーカー(NA、177.0)大豆 51.4Bu/エーカー(NA、51.2)小麦 44.3Bu/エーカー(NA、44.3)
・2月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 151億1,500万Bu(NA、151億1,500万Bu)大豆 44億3,500万Bu(NA、44億3,500万Bu)小麦 16億4,600万Bu(NA、16億4,600万Bu)
・2月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億2,500万Bu(NA、24億2,500万Bu)大豆 20億5,000万Bu(NA、20億5,000万Bu)小麦 8億1,000Bu(NA、8億2,500万Bu)
・2月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億4,000万Bu(14億9,819万Bu、15億4,000万Bu)大豆 3億2,500万Bu(3億1,567万Bu、3億5,000万Bu)小麦 6億4,800万Bu(6億3,381万Bu、6億2,800万Bu)
本日も南米の生産下振れ観測やドル安進行を背景に高値維持の公算。ただし、米利上げ幅の拡大に繋がる可能性がある米CPIには注目。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
・ロシアと西側諸国の軍事衝突のリスク、それに乗じて中国が台湾に侵攻するリスク(世界経済の減速要因)
・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。
・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。
・ロシア・ウクライナ・ベラルーシ・欧州を巡る対立が激化し、軍事的な衝突が発生する場合(景気の減速を通じて景気循環系商品価格の下落要因)。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。
◆本日のMRA's Eye
「他人事ではないウクライナ問題」
北京オリンピックの開幕式に合わせてロシアプーチン大統領が訪中、同時に習近平国家主席と首脳会談を実施し、共同声明を発表した(内容は下記の通り)。
明らかにこれまで欧米が中国に対して不服を申し入れている項目を「全てロシアは反対し、中国に味方する」という内容。ウクライナ侵攻を想定し、中国の支援も得ておこうとするロシア側の思惑と、欧米諸国に対抗しようとする中国の思惑が一致したことは想像に難くない。
(共同声明要旨)
・民主主義や人権を口実にした内政干渉に反対
・核心的利益、国家主権、領土の一体性について中露は相互支援
・ロシアは1つの中国の原則を確認、台湾の独立に反対
・NATOの拡大に反対。中国は欧州安保に関するロシアの提案を支持
・米英豪の安保の枠組み(AUKUS)に懸念表明
・福島第一原発の処理水海洋処理に懸念
・米国はアジア太平洋・欧州へのミサイル配備計画を放棄すべき
・中国に対して年間100億立方メートルの追加ガス供給を提案
ウクライナ軍事侵攻は現状においてまだリスクシナリオではあるものの、中露両国は明確に「周辺地域の軍事力を用いた現状変更の試み」を強化している状況。
米サリバン報道官は、ロシアがウクライナに再侵攻する可能性が明確にあり、早ければ明日かもしれないし、数週間後かもしれないと発言している。現在、本日から始るベラルーシとの合同軍事演習期間(20日までとされる)が、「ドサクサ」で攻撃を仕掛ける切っ掛けになるかもしれない。
このような状況に対応せざるを得ないため、米国は欧州に部隊派遣をしているが、「準備していなければ攻撃される」ため、ロシアを牽制する目的であり戦闘目的ではない、というのは事実だろう。
やや遠い欧州の話で日本には関係なさそうに感じるが、日本にとってウクライナ問題は他人事ではなく、昨年から中露による「共同挑発行為」は続いており、今回のウクライナ問題と同調して、中露が日本近海の地政学的リスクを高める可能性がある。
実際、2021年10月には中露の軍艦が津軽海峡を通過した。津軽海峡の中心は「公海」とされているため軍艦ですら通過は認められている。またこれだけではなく、大隅海峡も両国の軍艦は通過した。
この海峡を通過するということは、「日本の非核三原則」への挑戦ともいえる。1977年に成立した領海法で領海の幅は12海里と定められているが、日本は宗谷海峡、津軽海峡、対馬東水道、西水道、および大隅海峡は3海里に制限されている。
これは米国の戦略原潜が航行できなくなることを回避するためのものとされる。そこを理解した上で両国軍艦はこの海峡を通過したと考えるのが妥当だろう(仮に日本国内でその議論が高まれば、米原潜の通過に支障が出る可能性があるため)。
一方、プーチン大統領就任後、カムチャッカ半島のルィバチへの原子力潜水艦の配備が加速しており、それに呼応する形で北方領土での演習も増加している。
日本政府はロシアに対して多額な経済協力を行ってきたが(8項目の協力プランなど)、ロシアは着々と極東地域の軍事力を伸張しており、オホーツク海近海の地政学的リスクは高まっている状況だ。
恐らく、日本の領土にあからさまに進出してくる可能性は低いと考えるが、船舶の航行に支障が出たり、それによって物資の輸送に影響が出たり、といったリスクは有り得るため今後極東での中露の動きは注視しておくべきだろう。
主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について