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強まるグローバルな金利先高感
  • MRA外国為替レポート

2022年2月7日号

◆先週の市場総括


先週も株式市場は荒れ模様となった。前週にFOMCを巡り早期金融正常化観測が台頭し金利上昇から株価が調整。株式市場では高PER銘柄を中心に上値重く、また決算・業績見通しの良し悪しで銘柄選別が強まった。

経済指標はまだら模様で予想を下回る数字もみられ早期金融正常化とあいまって景気先行き懸念も台頭。ただ先週は前週の大幅下落の反動で週前半は株価持ち直しもみられた。

米国では重要な経済指標が続いたが、注目は欧州の金融政策と週末の米国雇用統計に。木曜日のBOE金融政策決定会合では、0.25%の追加利上げが決定されたが、インフレ加速懸念から0.50%にすべきとの反対意見も半数近かった。

またバランスシートの縮小も決定されるなど、早期金融正常化へ一段と傾斜した。

さらにECB理事会では緩やかな量的緩和の縮小が維持されたが、ラガルド総裁がこれまでのハト派発言から一転してインフレ警戒感を滲ませ、経済目標達成との認識から金融正常化に前向きな姿勢を示した。年内利上げを否定しなかったことで市場にショックを与えた。

ユーロが大きく上昇。欧州長期金利は上昇し米国長期金利も押し上げた。

そうして迎えた週末の米国雇用統計は週央のADP雇用報告の大幅悪化に反して極めて強い数字に。FRBが利上げを加速するとの見方が台頭し、米長期金利は大きく上昇した。

株価は上値の重い展開に。ドルは上昇。ドル円相場は115円前後の値動きから、ユーロ安ドル高の勢いで一時114円台前半に下落したが、週末は115円台前半で引け。

ユーロドル相場は1.11台半ばから1.14台半ばに大きく反発。ユーロ円相場は128円台半ばから週末は131円ちょうどに上昇した。原油価格WTI先物はウクライナ情勢の緊迫もあり前週末87ドル台から92ドル台に上昇した。

月曜日の東京市場では日経平均が上昇。週末に米国株が大幅高となったことで続伸。寄付きは26,600円割れにやや下げてスタートしたが、その後はじり高。後場には一時+400円超上昇し27,100円台をつける場面もあった。

業績・決算の良好な銘柄を中心に買われ、ハイテク・半導体関連株、海運株が上昇。ただ上昇も続かず、+284円高の27,001円と大台を辛うじて維持して引けた。

ドル円相場は115円30銭で始まり、昼には株高に連れて60銭に上昇。しかし午後から欧州時間、米国時間にかけては上値重く、115円40銭~50銭でもみ合い。

ユーロ円相場は128円40銭で始まり同様に129円ちょうどに上昇。その後は129円前後で底固く推移した。

ユーロドル相場は。1.1140で始まり1.1460近辺に上昇しもみ合い、夕刻には1.1180に一段高となった。ただ米国時間にかけてはユーロはやや押され、ユーロドル相場は1.1150、ユーロ円相場は128円70銭割れに下落した。

米国株は主要3指数とも大幅続伸。ハイテク株の上昇が際立った。月末のポジション調整、リバランスによる買いが入ったとみられ、年金基金の買いが入ったとの見方もあった。ヘッジファンドも買い戻しを強いられたとみられる。

NYダウは+406ドル高の35,131ドル、ナスダックは+469ドル高の14,239ドル。VIX指数は▲2.83ポイント低下して24.83。

米長期金利は上昇一服し、10年債利回りは1.782%、2年債利回りは1.18%と高止まり。

米国時間にはユーロ高ドル安が進んだ。このところ続いたドル高の反動、リスク選好回復によるドル売りも生じたとみられる。

ユーロドル相場は1.1240台に大幅高となり引けは1.1230。ユーロ円相場は株高にも支えられ堅調。129円10銭~20銭でもみ合いの後、引けは129円30銭。

ドル円相場は114円90銭に下落した後、反発して115円10銭近辺で引けた。

発表されたシカゴ購買部協会景気指数(1月)は前月64.3から65.2に改善して予想を上回った。一方、ダラス連銀製造業活動指数(1月)は前月7.8から2.0に低下した。

火曜日の東京市場では日経平均が小幅高。前日の米国株がハイテク株に見直し買いが入り大きく上昇。東京市場でも半導体関連・ハイテク株が買われた。寄付きは27,200円台で高寄り、その後一時27,400円近辺に上昇した。

ただ買い一巡後は短期筋の売り、戻り待ちの売りに押されてじり安。上値を抑えられ27,000円~100円でもみ合い引けた。終値は前日比+76円高の27,078円。

26,000円近辺への下落から1,000円以上反発したことで、ひとまず売りが入った。

ドル円相場は115円10銭台で始まり午後に114円90銭に下落。夕刻には115円ちょうどに持ち直したが欧州市場では114円60銭近辺に下落した。

ユーロ円相場は129円30銭で始まり20銭近辺でもみ合い。夕刻にかけて129円50銭に上昇したが、欧州市場では129円10銭に押し戻された。

ユーロドル相場は1.1230で始まり夕刻から欧州市場にかけて堅調。1.1260近辺~1.1270で上下した。その後、米国市場にかけてはユーロ安ドル高。米国の雇用関連指標が強めでドルが上昇した。

ユーロドル相場は1.1240へ反落。ドルは対円でも上昇しドル円相場は114円90銭に反発した。ユーロ円相場はユーロ安の勢いに押されて128円90銭に下落。

米国株は個別企業の決算を好感して景気敏感株の一角に買い。FRB当局者の発言で過度な利上げ織り込みがやや緩和したが、ハイテク株の上昇は鈍かった。

NYダウは前日比+273ドル高の35,405ドル、ナスダックは+106ドル高の14,346ドル。VIX指数は▲2.87ポイント低下して21.96。

発表されたISM製造業景気指数(1月)は前月58.7から57.6に悪化したが概ね予想通り。JOLT求職者数(12月)は、10,925千人と前月10,775千人から増加し企業の強い雇用意欲を示した。

米10年債利回りは1.805%に上昇。2年債利回りは1.777%と前日からやや低下。

セントルイス連銀総裁は、1回で0.5%利上げすることが助けになるとは思わない、と大幅利上げに慎重な発言。アトランタ連銀総裁も、3月会合で0.5%の利上げを実施するのは好ましい措置ではない、と述べた。

これら発言がドル利食い売りを促し、ドル円相場は下落して114円70銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は反発して1.1270。ユーロ円相場は株価堅調にも支えられ129円20銭~30銭で取引を終えた。

水曜日の東京市場では日経平均が4日続伸。前日に米国株が上昇し引き続き買い安心感が支え。また個別企業の決算も手掛かりとなった。寄付きは27,300円近辺で高寄り、その後もじり高となり、前日比+455円高の27,533円高値引け。

東京時間の為替市場は動意薄。ドル円相場は114円70銭~80銭でもみ合い横ばい。ユーロドル相場は1.1270~80、ユーロ円相場は129円20銭台からやや上昇して129円40銭近辺で小動き。欧州時間に入るとユーロ高ドル安が進んだ。

発表されたユーロ圏の消費者物価指数(1月)は前年同月比+5.1%と前月+5.0%から上昇率が加速した。木曜日のECB理事会を前に、金融正常化をペースアップするのではないか、との思惑から引き続きユーロ堅調。

ユーロドル相場は米国時間朝方にかけて1.1330へ上昇。ドル円相場はドル安に押されて114円20銭近辺。

米国株は続伸。ADP雇用報告で雇用者数が予想外に大きく減少したことから、過度な金融正常化への警戒感が緩和、長期金利がやや低下し、株価の支えとなり、引けにかけて上昇した。

個別決算による銘柄選別の動きが続き、アルファベット社など好決算銘柄が買われた。NYダウは前日比+224ドル高の35,629ドル。ナスダックは+71ドル高の14,417ドル。VIX指数は+0.13ポイント上昇して22.09。

米10年債利回りは1.77%、2年債利回りは1.152%に小幅低下した。

ドル円相場は114円台前半で上下し引けにかけてじり高。114円40銭近辺で引け。ユーロドル相場はユーロ高一服。1.13割れに反落した後、引けは1.1310。

ユーロ円相場は129円10銭~40銭で上下して引けは129円40銭。

発表されたADP雇用報告(1月)は雇用者数が前月比▲301千人の大幅減少。2020年12月以来の減少となった。サービス業中心にオミクロン株感染拡大が影響した。

木曜日の東京市場では日経平均が反落。前日まで4日続伸で急反発し27,500円を回復していただけに戻り売り、目先の利食い売りが強まった。

米国でハイテク株が下落したことでグロース株が売られ、半導体株が下落した。雇用統計を前に様子見も強まり終始上値が重かった。

27,200円台で安寄りした後は、終日27,200円台でもみ合い、引けは前日比▲292円安の27,241円。

ドル円相場は114円40銭近辺でもみ合い、午後に入るとドルが堅調。欧州市場から米国市場にかけては欧米長期金利上昇に支えられ右肩上がり。114円90銭台へ上昇した。

ユーロドル相場は1.13ちょうど~1.1310でもみ合いの後、夕方から欧州時間には1.1270台にユーロ安ドル高。

しかしその後、BOE政策決定会合、ECB理事会を受けて大きく欧州通貨高・ドル安が進んだ。

BOE(イギリス中銀)は、この日の会合で12月に続き0.25%の利上げを決定し政策金利を0.50%とした。決定は9人のうち5人が賛成、4人が反対。反対の理由はインフレ加速の恐れから利上げ幅を0.50%とさらに利上げ幅を大きくすべきとの意見。

会合では同時にバランスシートの縮小を3月から開始することも決定した。

ECBは政策を据え置き。量的緩和・資産買い入れは徐々に縮小する方針を維持。しかしその後のラガルド総裁の会見を受けてユーロが急騰した。

総裁は、インフレは予想より長く高止まりが続く見通し、リスクは上向き、経済は中期目標に近づいた、と述べた。また、ECBは全ての政策手段を適宜調整する用意がある、とし、年内利上げの可能性を否定しなかった。

ユーロドル相場は1.1450へ急上昇し引けは1.1440。ユーロ円相場も131円台半ばへ上昇し131円50銭近辺で引けた。米長期金利が上昇したことでドル円相場は支えられ114円80銭~90銭で推移し引けは90銭台。

米国株は大幅安。欧米金利の上昇が重石となるなか、個別決算で見通しが予想を下回る銘柄に売りが嵩んだ。NYダウは▲518ドル安の35,111ドル、ナスダックは▲538ドル安の13,878ドル。VIX指数は+3.43ポイント上昇して25.52。

米10年債利回りは1.837%へ、2年債利回りは一時1.21%をつけ1.203%。

発表された週次の失業保険新規申請件数は238千人と前週261千人から減少。継続受給者数も1,672千人から1,628千人にやや減少。ISM非製造業景気指数(1月)は前月62.0から59.9へやや悪化したが予想を若干上回った。

ウクライナ情勢の緊迫化、地政学的リスクの高まりでWTI先物は90ドル台に乗せた。

金曜日の東京市場では日経平均が反発。前日に米国株が大きく下げたことから、日経平均も27,100円近辺に下落して始まった。しかしその後は個別決算での物色や、値がさ株の一角に買いが入り切り返して引けにかけてじり高。前日比+198円高の27,439円で引け。

ドル円相場は米雇用統計の発表を控え動きにくく、115円目前、114円90銭台で小動き。昼あるいは夕刻に一時115円に乗せる場面もあったが欧州時間は80銭~90銭中心の推移となった。

ユーロドル相場は1.1440で始まり、1.1470に上昇する場面もあったが上値重く、1.1440~70台で上下。

ユーロ円相場は131円50銭で始まり底固く70銭~80銭でもみ合い、夕刻には一時132円をつけた。雇用統計発表前は131円70銭~90銭。

注目の米国雇用統計(1月)は予想より大幅に強い内容だった。ADP雇用報告が前月比▲301千人減少と想定外の数字だったことで、予想中心が+150千人増加だったが、大幅減少から増加まで予想が散らばった。

結果は+467千人増と強く、前月も+199千人から+510千人に大きく上方修正された。失業率は前月3.9%から4.0%に小幅上昇したが、労働参加率が61.9%から62.2%へ上昇したことで悪化とはとられず。

平均時給・前年同月比は前月の+5.0%(+4.7%から上方修正)から+5.7%へ上昇率が加速した。

これを受けて金利先高感が強まり、2年債利回りは1.3%台へ上昇し引けは1.316%、10年債利回りは1.916%に上昇。

ドルは金利上昇に支えられ上昇。ドル円相場は115円40銭へ上昇し、20銭~40銭でもみ合い、引けは115円20銭近辺。ユーロドル相場は1.1410へユーロ安ドル高が進み、その後は反発して1.1450~60で上下して引けは1.1450。

ユーロ円相場は131円70銭~90銭で方向感なく上下した後、131円90銭~132円ちょうど。

米国株は値動きの荒い展開。早期金融正常化観測が強まったことで景気敏感株の一角に売りが入りNYダウは一時▲300ドル超下落。しかしアマゾンなど決算が良好だったことでハイテク株に買い戻しの動きが広がった。

NYダウは午後には切り返し一時+200ドルの上昇。金利上昇で金融株は買われた。引けはNYダウが▲21ドル安の35,089ドル。ナスダックは+219ドル高の14,098ドル。VIX指数は▲1.13ポイント低下して23.22。原油価格WTI先物はさらに上昇して92.03。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

先週末の雇用統計は強い数字となり利上げが加速するとの見方が強まった。今週の指標が金利先高感を刺激するか。

木曜日の消費者物価指数(1月、前年同月比、予想+7.3%、前月+7.0%、コア、予想+5.9%、前月+5.5%)が注目される。

ほか、火曜日に貿易収支(12月)、木曜日には週次の失業保険新規申請件数、金曜日にミシガン大学消費者信頼感指数(2月速報、予想67.5、前月67.2)、同期待インフレ率、が発表される。

2.原油価格動向

ウクライナ情勢の緊迫化によりエネルギー価格が上昇基調を強めている。原油価格WTI先物主限月は90ドル台に乗せてなお上昇している。今週もさらに一段高となるか。

インフレ懸念や業績懸念、個人消費への悪影響懸念などが強まるか。株価動向への影響、下落圧力も気になるところ。

リスク回避につながるが、為替相場への影響は、円高となるか、逆に収支悪化懸念から円安となるか。

3.日本の経済指標

日本では感染拡大が加速しなおピークアウトの兆しがみえない。また原油価格高騰も続き様々な商品の値上げが続く。景気への影響はどうか。

月曜日に景気先行指数(12月)、火曜日に景気ウォッチャー調査(1月)が発表される。景況感の悪化がみられるか。欧米に連れて思惑が台頭する日銀の金融正常化観測に水を差すか。

また火曜日には国際収支(12月)が発表となるが、貿易収支に続き原油価格上昇による収支悪化が再確認されるか。対外直接投資の動向はどうか。

◆今週のMRA's Eye


強まるグローバルな金利先高感

先週は欧州発のサプライズで市場が揺れた。

BOEが追加利上げに踏み切ったが、0.25%の利上げは織り込まれていたものの、利上げ幅で0.50%を主張する意見が9人中4人と過半数ぎりぎりに達していたのは想定外。加えてバラスシート縮小の実施も決定された。

景気はさほど過熱しているとはいえず、なお感染拡大の影響も残るが、インフレ警戒を強め金融正常化を急ぐ姿勢が明らかとなった。

ECBは量的緩和を徐々に縮小する現状の政策を維持した。しかしラガルド総裁が最近のハト派発言から一転してタカ派に転じたようなニュアンスの発言をしたことは市場にショックを与えた。

総裁は、ユーロ圏の景気は先行き不透明感が漂い、インフレ率も米国ほど上昇していないので、FRBの金融正常化スタンスとは一線を画すと述べていた。

それが一転して、高インフレが長期化するリスクがあり、リスクバイアスは上向き、と警戒感を表明。経済はECBの目標に達しつつある、とも述べた。

さらに年内の利上げ実施を否定しなかったことで利上げ観測が台頭した。従来はFRBに1年は遅れるとの見方だったが、それが半年程度早まったかたちだ。

FRBは先般のFOMCで金融正常化を急ぐ姿勢を示していた。

3月に量的緩和縮小を終えて、間髪を入れずに利上げを実施。さらに6月にはバランスシート縮小を決定ないし開始する可能性が示された。それを受けて米長期金利は上昇していたが、そこに先週の欧州での金融正常化への動きが加わり、週末の雇用統計が強かったこともあって、米長期金利は一段高となった。

2年債利回りは利上げ加速を織り込んで1.3%台に上昇。10年債利回りは1.9%台に上昇し、2%が迫ってきた。

金融正常化、急速な利上げやバランスシート縮小の前倒しで、米国景気が悪化するとの懸念が取り沙汰されている。

米国の経済指標はこのところ強弱まちまちで、予想を下回る数字も散見される。景況感指数はピークから徐々に低下。これを景気がピークアウトしたとみる見方もある。

確かに急回復局面からみれば景気拡大は減速している。

しかし景気拡大基調は続いており、そのペースはなお潜在成長率を上回っており、景気悪化からは程遠い。

景気減速、ではあるが、水準はなお高い。また景況感悪化や景気鈍化、数字の弱さは、オミクロン株感染拡大によるソフトパッチ(一時的悪化)との見方もある。

FRB当局の目標は最大雇用と物価の安定。企業は人手不足状態にあり、雇用はなお逼迫している。企業の求職者数は増加。失業保険申請件数は減少。雇用者数は増加。賃金上昇率はなお加速している。

パウエル議長は、雇用情勢は強く、雇用を損なうことなく金融正常化することが可能、と述べている。コンテナ船の運賃は高止まりしたまま。消費の堅調か、物流の停滞か、双方ともが影響しているのか、いずれにしても金融当局が正常化を急ぐ状況を示している。

欧米の中央銀行が景気よりもインフレ警戒に軸足を移していることはさらに明らかになった。

過剰な金融緩和の縮小を進める意思に変化はない。株式市場が調整したとしても、過剰な金融緩和の修正、歴史的低水準に低下した長期金利の上昇に応じた動きであれば気にしないだろう。

注目すべきは、FRBがひとり正常化で先行するとみえたが、欧州その他先進国も間髪入れずに追随し始めたこと。

これが間接的に米長期金利を大きく押し上げ始めたが、これは想定通り。株価は企業業績、個別決算、PERの水準=バリュエーションで明暗は分かれるが、基本的になお長期金利上昇が逆風となるだろう。

リスク資産への逆風は円高につながりやすいが、円買い戻しが主要因となるため円高は一時的かつ値幅に限界がある。むしろ欧米ともに金融正常化が加速する傍らで、日銀が静観を保つなら、ドルやユーロに対して円が全面安となる。ドル独歩高、というより、円独歩安、だ。

リスクイベントはウクライナ情勢。緊張が高まるに連れて原油価格は上昇の一途をたどっている。

原油価格の上昇を景気悪化要因とみて金融正常化のペースが緩むか、インフレ高止まり要因とみて金融正常化の前倒しが続くか。株価が急落して金融市場の混乱が生じ、金融当局が一時的に様子見となるか。

ロシアに経済制裁の一環として金融制裁が加えられるようだと国際金融市場が混乱する可能性があるため留意を要する。

ロシア金融システムの混乱は西側諸国の金融機関にも影響しかねない。その場合はドルよりもスイス・フランに資金が逃避する、あるいは円に逃避する可能性も否定できない。

ただこのリスクが生じる確率は今のところ低いのではないか。

軍事衝突の発生確率、さらに発生した場合にこうした制裁が発動される確率、の掛け算となる。


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