堅調な米統計を背景にリスク選好で上昇
- MRA商品市場レポート
2022年1月5日 第2105号(詳細版)商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「堅調な米統計を背景にリスク選好で上昇」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格はほとんどのドル建て商品価格が上昇した。米国のISM製造業指数が減速したものの内訳を見ると米経済はまだ良好な状態を維持していることが確認されたため、市場参加者のリスク先行が回復、ドル安が進行したことが材料となった。
昨日最も上昇したのがエネルギーセクター。米統計の改善やインドネシアからの石炭供給停止、ロシアからのガス供給が回復していないことに伴う在庫不足などからのガス価格上昇などが材料となっている。
米国を除けば北半球は基本的に厳冬となっており、自然エネルギー供給の回復がなく、原発の稼働も低迷していることから化石燃料を巡る需給バランスがタイトな状態が解消していない。冬場は高い水準を維持、というのが徐々に市場のコンセンサスとなりつつある。
ロシアとウクライナの問題も解消していない。来週にかけてロシアと欧米の協議が予定されているがどのような結論になるか全く予想が付かない。
ただし、一部のメディアで指摘されている「ウクライナ占領」は、ウクライナの西部の住民は親ロシアでないことから、仮にロシアがキエフを電撃的に陥落させたとしても、国内の治安安定に相当の財政負担、軍事負担が掛ることになるため、恐らく「ウクライナ東部の自発的なロシア圏入り」を画策していると考えるのが妥当だろう。
【本日の見通し】
本日は、昨日のリスク資産価格上昇の反動で一旦下落する商品が目立つと考えられるが、米経済統計が良好な内容であったことから再度、上昇に転じると予想する。
本日発表が予定されている材料で注目は、ADP雇用統計と米FOMC議事要旨(12月開催分)。
ADP雇用統計は前月比+41万人(前月+53.4万人)の雇用者数の増加が見込まれている。ただ、現状、雇用者数の増減自体よりも失業率低下による賃金上昇とインフレに市場の関心は移っている。
その意味ではテーパリングのペースを2倍速にすることを決定した12月FOMCの議事要旨の方が重要になると考えられる。想定以上にタカ派な内容か、そうではないかに注目が集まる。
【昨日のトピックス】
年末に発表された中国製造業PMIは50.3(前月50.1)と改善した。生産が51.4(52.0)とやや減速下が、原材料在庫(47.7→49.2)、完成品在庫(47.9→48.5)の増加などが水準を押し上げた。
景気は基本的には減速基調にあるため、在庫の積み上がりは必ずしも良い在庫の積み上がりとは言えない。また、投入価格(52.9→48.1)、卸価格(48.9→45.5)と低下しており、徐々に需給環境は緩和しているようだ。
実際、需給状況の指標である新規受注在庫レシオは、完成品が1.02(前月1.03)、原材料が1.01(1.04)と低下しており、中国の製品・原材料需給は緩和していると考えられる。
また、PMIは改善しているものの主に大企業(50.2→51.3)の改善によるもので、中小企業の景況感は悪化(48.5→46.5)している。中国製造業の景況感は決して良いとは言えない。
12月の中国鉄鋼業PMIは総合指数は38.7(前月36.6)と改善したが、50の閾値を割り込む状態が2020年6月から続いている。引き続き、中国政府による住宅セクターの抑制が続いていると考えられる。新年早々、恒大集団の株が香港で取引停止になるなど、同国の不動産市場の混乱は続いている。
サブインデックスの新規受注は低迷(39.0→28.2→25.9→28.1)、輸出向け新規受注も(39.5→38.7→34.8→36.3)と、内外需とも低迷が続いており、在庫水準も完成品在庫が31.8(前月28.6)、原材料在庫が35.2(32.8)と低いものの前月からは増加している。
価格に対する説明力が高い新規受注・完成品レシオは0.88(前月0.91)と低下しており製品需給は緩和している。原材料レシオは0.80(前月0.79)と小幅に上昇しているが水準は低い。
中国の鉄鋼需要を牽引してきたのは建設セクターだが、12月の建設業PMIは56.3(前月59.1)と閾値の50は上回っているが、減速感が強まっている。
まとめると、全体として需要は不動産セクター、自動車など低迷しており、輸出税還付の廃止も輸出需要の減速に大きな影響を及ぼした。中国政府は国内の炭素排出抑制を目的として粗鋼生産を2021年度程度に抑えると予想される。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。注目の米ISM製造業指数は減速したが、価格指数の低下などによるものであり統計の内容自体は悪いものでは無かったこと、OPECプラスの増産が予め予定されていた40万バレルに止まる上、この計画通りの増産に市場から疑問符が付いていることが価格を押し上げることとなった。
IEAの12月月報では、OPECプラスの11月の生産は生産目標から▲65万バレル低かったとしている。
基本的には景気の循環的な減速で価格には下押し圧力が掛りやすいはずだが、厳冬の影響やロシアに対する制裁への懸念などが価格を押し上げているとみる。
週明け月曜日はADP雇用統計などの発表があるが、昨日の上昇で一目均衡表の雲を上抜けしたため、テクニカルに上値を試す展開になると予想される。目処は「オミクロンショック」で下落する直前の高値83ドル(Brent)、下値は一目均衡表の雲の上限である78.50ドル程度。
◆石炭・LNG・天然ガス
豪州石炭スワップ先物価格は大幅に上昇して170ドル台を回復した。世界最大の石炭輸出国であるインドネシアが、自国内の石炭供給不足を理由に1月一杯、禁輸措置を決定したことが材料となった。
2020年基準ではインドネシアは2位の輸出国だが、輸出量はほぼ豪州に比肩するレベルであり、この規模の輸出停止は輸出市場への影響が大きい。
中国の石炭輸入の指標の1つであるバルチック海運指数は小幅に下落。
欧州天然ガス価格は上昇。米国からのLNGカーゴ到着を材料に下落していたが、ロシアからの供給が回復しない(欧州が価格が高いために購入を見送っている可能性)一方、欧州のガス在庫の水準は例年を遙かに下回る低い水準であることから、在庫積み増し需要が旺盛とみられる。
なお、ヤマルパイプライン経由でのガス供給は昨年12月31日からゼロの状態が続いており、昨日も回復していない。恐らく価格が高いため、欧州勢がアジアや米国からLNGを購入していることが影響しているのだろう。
ロシアからのガス購入はスポットや原油連動のものが多いが、現状、スポットで購入するよりも割安なLNGを海外に求めた方が良いとの合理性が独側に働いたためと考えられる。
しかし、欧州のガス在庫の水準は回復しておらず例年を大きく下回っている。ロシアからの供給が無ければ冬だけでなく、今年の夏までに十分なガス在庫を確保できない可能性も高くなってきた。
実際、こうした需給のタイト化を織り込んでか、2022年のガス価格は高いままである。
また、EUは「原発をクリーンエネルギー」に分類することに舵を切ったようだ(ドイツは反対。ただしガスは容認)。結局、再生可能エネルギーでは危機に対応できないため、現実路線に舵を切らざるを得なくなったということだろう。
この流れが続けば、「化石燃料絶対反対」から天然ガスなどの低炭素エネルギーの利用を認める流れが出るのではないかと考えられる。
なお、フランスの原発稼働率は非常に低い状態。
JKMは欧州天然ガスの上昇もあって再び上昇。ただし、以前ほどの過剰な供給懸念が後退し2022年のJKM価格も25ドル程度まで水準を切下げた。しかし逆に言えばまだ25ドル台であるともいえる。
供給懸念が無ければ期先の価格、13~15ドル程度が妥当なラインだろうが、この供給がタイトな状態が解消するにはまだ時間が掛りそうだ。
一方、スエズ以東・以西ともタンカーレートが大幅に低下し、過去5年の最低水準まで水準を切下げている。このタンカーレートの水準を見るに、東西とも目先のLNG調達に目処が立ったことを示唆している。
しかしこれは足下の価格水準とは整合が取れておらず、引き続きタンカーレート動向は注視が必要だ。
2021年12月6日~12月12日のLNG取引は前週比▲9%の770万トン(前週+17%の840万トン)となった。スポット調達のシェアは29%(29%)と横這い。
日本、韓国、中国、台湾のターム契約による調達が減少した、スポットの比率は高く冬場に向けた輸入需要は旺盛。
米天然ガス価格は欧州天然ガス価格の上昇を受けた輸出増加観測で上昇したが、域内気温が落着いていることもあって200日移動平均線のレジスタンスを上抜けできなかった。
本日の石炭価格は、インドネシアからの供給が報道通りであれば明確に減少するため、上昇余地を探る展開になると予想する。
天然ガス価格は、欧州の在庫水準が低い状態に変わりは無く、上昇余地を探る展開を予想。価格が下落するには気温の上昇、ロシアからの輸入再開と在庫の積み上がりが必要だが、まだ時間が掛る見込み。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は軟調に推移していたが、上昇に転じた。LME指定倉庫在庫の減少が確認されたほか、米統計が同国の製造業活動が落ち着きを取り戻しつつ有ることを示す内容だったこと、インドネシアの石炭供給停止を受けた、中国の電力不足による供給懸念、といった供給面の要因も価格を押し上げることとなった。
循環的に景気が減速する局面にあり、中国の新規受注・在庫レシオも低下しているためファンダメンタルズはそれほど強くないはずだが、それ以上に中国内外の非鉄金属供給制限が意識されているようである。
本日の非鉄金属価格は、中国の製造業PMIの内訳を見るにそれほど非鉄金属市場を巡る先行きの需給環境がタイトとは言えないこと、昨日の反動で一旦売られると考えるが、需給バランスの指標である期間構造はアルミを除いてバックの状態であることから、高値を維持すると予想する。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は上昇した。
中国政府はオリンピック・パラリンピック期間中の鉄鋼所の稼働停止が見込まれる中、鉄鋼製品の供給が制限されるとの見方から鉄鋼製品価格が上昇したことが材料となった。
また、インドネシアが石炭輸出を1月一杯停止する方針を示したことで、(量は少ないものの)中国向けの原料炭供給が減少する見通しとなっていることも、原料炭価格の上昇要因となっている。
本日も鉄鋼製品価格の高止まりを受けて、鉄鋼原料価格は高値を維持すると考える。ただし、オリンピック・パラリンピックを意識した製鉄所の稼働率低下から、上値も重く、徐々に水準を切下げる展開になると予想。
◆貴金属
昨日の貴金属セクターは上昇した。長期金利が上昇し、期待インフレ率も低下したが、リスクテイクのドル安進行の過程でリスク・プレミアムを上昇させながら水準を切り上げる展開となった。
昨日の金の基準価格は1,641ドル、リスク・プレミアムは174ドルと、過去1年平均である161ドル、過去5年平均である183ドルに近接している。明確ではないが、ロシア・ウクライナ情勢不安も、多少はリスク・プレミアム押し上げに寄与していると考えられる。
銀価格は金価格の上昇を受けて水準を切り上げた。PGMに関しては株価の上昇もあって大幅な上昇となった。
本日は実質金利の上昇が価格上昇を抑制するが、足下、リスク・プレミアムが過去5年平均に収れんする動きを見せているため高値を維持すると考える。
銀・PGMについては株価がリスク選好で上昇しているため、上昇余地を探る動きに。
◆穀物
シカゴ穀物市場は上昇した。リスクテイクのドル安が進行する中、テクニカルな買いが入ったほか、ラニーニャ現象の影響とみられるブラジルとアルゼンチンでの乾燥気候を受けた供給不安、大豆圧搾高が高い水準を維持していることが材料となった。
また、小麦に関しては米農務省がカンザスとオクラホマの冬小麦作柄見通しを引き下げたことが材料とされた。
本日は、いずれの穀物もチャート上のレジスタンスを上抜けしていること、リスクテイクでドル安が進みやすいこと、ロシア・ウクライナの対立で小麦供給に地政学的なリスクも意識されていること、エネルギー価格の上昇を背景に高値維持の公算。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・実施が期待されていた1.75兆ドルの米税制・支出法案がマンチン上院議員の造反で成立しない、ないしは規模が縮小される場合(景気減速でリスク資産価格の下落要因に)。
・ロシアと西側諸国の軍事衝突のリスク(世界経済の減速要因)
・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
・資源価格上昇によるインフレや、米テーパリング・利上げ観測を背景とした新興国通貨安で新興国が想定以上のペースで利上げを行わねばならず、世界的に金融引き締めモードに転じた場合(リスク資産価格の下落要因)。
・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。
・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。
・ロシア・ウクライナ・ベラルーシ・欧州を巡る対立が激化し、軍事的な衝突が発生する場合(景気の減速を通じて景気循環系商品価格の下落要因)。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。
◆個別商品市場中期見通し
---≪エネルギー≫---
【原油価格見通し】
原油価格は米国が金融引き締めのスタンスに舵を切りつつある中で、米上院で税制・支出法案に造反が発生、来年の米経済見通しが下方修正される可能性が出てきたこと、オミクロン株の致死率は低いものの感染力が強いため、入院者数が増加していることからロックダウンの懸念も続くことから、中期(1~3ヵ月)的には水準を切り下げる展開になるとみる。
しかし、厳冬が続いている他、OPECプラスの増産が想定通りにならないとの市場の見方、ウクライナを巡るロシアと欧米の対立で仮にロシアのエネルギー企業が制裁された場合、ガス供給のみならず原油供給も制限される可能性があることもあり、価格は高値を維持しており、仮に下落があったとしても余地は限定される可能性が高まっている。
原油価格上昇に伴い米国のシェールオイル生産は回復、最大生産地域であり、生産コスト低いるPermianの生産はコロナ前の水準をほぼ回復した。
しかしその他の地域は回復が見られておらず、シェールオイル全体の12月の生産は2020年3月の8.56MBDよりも▲0.66MBD万少ない7.93MBDとなる見込み。
また、リグの稼働も脱炭素などの影響低調で、増産はこれまで掘削したが稼働させていなかった井戸の稼働によるものに止まっており、完成非稼働井戸数はピーク時の半分まで減少している。
期間の長い中期的(来年の春以降)には、経口薬の開発やコロナとの付き合い方が分る(もうウィズ・コロナで走るしかない)などで恐らくコロナによる移動制限が解除され、輸送燃料需要が回復することからやはり上昇に転じるとみている。
米DOEの2021年供給は95.59MBD(前月95.93MBD)、需要は96.90MBD(97.52MBD)、需給バランスは▲1.31MBDの供給不足(▲1.59MBDの供給不足)。
2022年は供給が101.41MBD(101.41MBD)、需要が100.89MBD(100.89MBD)、需給バランスは+0.47MBDの供給過剰(+0.52MBDの供給過剰)。
【見通しの固有リスク】
・ロシアのウクライナ侵攻に対して、欧米がロシアのエネルギー企業に制裁、供給が逼迫下場合(価格の上昇要因)。
・気温低下による暖房向け燃料需要が増加、ないしは不稼働の液体系燃料発電(ディーゼルや重油)を有する国や地域が再稼働を決定した場合(価格の上昇要因)。
・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。
・米国経済が正常化する中で金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。
・OPECプラスの増産ペースの遅れないしは上流部門投資不足による供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。
あるいは上流部門投資をしてこなかった結果、思った増産ができない場合(価格上昇要因)。
価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。
・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合(価格下落要因)。
・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。
1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合
2.中東以外の産油国の生産者の破綻
3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合
4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)
なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。
【石炭価格見通し】
海上輸送石炭価格は高値を維持すると考える。中国政府主導の増産・価格引き下げ策の影響で水準は低下したものの、主要輸出国であるインドネシアが1月一杯の石炭輸出禁輸を決定したこと、中国・インドの石炭在庫の水準は低く、冬場の電力需要向けの調達は旺盛で、供給不足に伴い稼働を停止する工場が増加していることから。
中国政府主導による石炭増産は、冬が本格化するなかで、主要生産地が中国北部であることを考えると思った通りの増産ができるとは考え難い。
ただ、11月の生産は3億7,084万トンと過去最高水準となった。しかし問題は寒さが厳しくなる12月~3月も増産が可能かどうかである。
11月の中国の石炭輸入は前年比+198.1%の3,505万2,000トン(前月+96.2%の2,694万トン)と過去5年レンジを上回っている。豪州からの輸入もオフィシャルに再開しており、国内需給は緩和期待が高まる。
【見通しの固有リスク】
・ロシアのウクライナ侵攻に対して、欧米がロシアのエネルギー企業に制裁、供給が逼迫下場合(価格の上昇要因)。
・今冬はラニーニャ発生が厳冬リスクを高めているが、懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。
・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。
・Nord Stream2の稼働が早期に行われ、天然ガス価格が急落する場合(下落要因)。ただしこの可能性は後退。
・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念(価格の上昇要因。これは既に顕在化)。
【天然ガス・LNG】
天然ガス価格は中国の経済活動が活発である一方、ロシアからのガス供給が回復せず、欧州域内最大の原発を保有するフランスの原発稼働率がメンテナンスの影響などで大幅に低下していることから火力発電向けの燃料需要が旺盛なこと、石炭価格も高値を維持していること、独新政権のカーボンクレジットに下限(60ユーロ、罰金が100ユーロなので恐らくそれ以上には上昇しない)を付ける方針などを受けたカーボンクレジット価格の上昇で、価格は高値を維持すると考える。
ただし、米国からのLNG輸出の増加が価格の上昇を抑制するため、価格の急騰リスクは抑制されている状況。
ノルドストリーム2はドイツ当局が承認プロセスに入っていると伝えられているが、通常のスケジュールだと2022年3月頃まで掛る見込みである。
しかし、ウクライナを巡る混乱でノルドストリーム2自体が延期される可能性も否定はできず、急に供給不安が高まっている状況。
仮にウクライナと戦闘状態に入れば、常識的に考えてもウクライナ経由でガスが欧州に供給されるとは考え難い。その場合、戦闘の期間にもよるが長びけば春先以降の欧州のガス需給にも大きな影響が出ることが予想される。
武力による現状変更を認めると、今後、中国の武力による現状変更も認めることになるため欧米の反発は非常に強いと考えられ、ロシアが実際に軍事侵攻した場合、かなり大規模な戦闘になるリスクがある。
仮に、ガスプロムが欧州のガスタンクを充填しても欧州在庫は過去5年の最低水準を回復できない見込みであり、やはりこの冬(ないしは冬場の調達に目処が立つ2~3月頃まで)の間は高値が続くと予想される。
JKMの期間構造変化による期先のJKM価格の上昇は懸念だが、まだ2023年ゾーンが上昇するには至っておらず、早晩この需給がタイトな状態は解消する、と市場は見ていると考えられる。しかし仮に2023年まで上昇してきた場合、構造変化の可能性があるため、十分な注意が必要だ。
石炭忌避の動きから先進国ではCoal to Gasが加速するとみられること、この冬場の調達不足が来年も影響すること、が意識されこの水準が定常化するかもしれない。
現在はラニーニャ現象が発生しているが多くの場合、その後にエルニーニョ現象が発生することが多い。気象庁の分析では、3~5月、アジア地域は高温になることが予想されるため、天然ガス価格が春先も高い可能性は有り得る(なお、過去の傾向通りであれば、夏場は冷夏に)。
そう考えると2023年春以降の15ドル割れの水準は「割安」といえるが、構造の変化が継続するならば早晩、このゾーンの価格も上昇することが懸念される。
そんな中、主要電力会社がJEPX向けの販売価格をJKM連動に変更しつつある。この場合、JEPXの価格の上限はJKMに連動し、下限はJLCが目安となる。
11月の中国の天然ガス生産は前年比+5.2%の177億3,000万立方メートル(前月+15.8%の164億5,000万立方メートル)と増加、過去5年レンジを上回っている。
11月の中国の天然ガス輸入は前年比+16.9%の1,073万トン(前月+8.3%の938万トン)と過去5年レンジを上回っており、輸入ペースが加速している。
11月の中国のLNG輸入は前年比+4.4%の690万1,275トン(前月+22.9%の616万9,091トン)と過去5年レンジを上回っているが、前月ほどの水準ではなくなっている。価格上昇に伴うカーゴの手当の見送りなどもあったのではないか。
中国はパイプライン経由での天然ガスは主にトルクメニスタンから行っているが、「シベリアの力」パイプラインが開通して以降、ロシアからの調達も増加している。
ロシアの中国向け輸出は増加していた。そもそもシベリアの力経由での輸出は2021年で85億立方メートルに増加させる見込みであり、輸出の増加は契約通りとするロシアの主張に沿っている。
11月までの輸出が81.0億立方メートルであり(天然ガス1トン=1,220立方メートルと換算)、単純計算だと2021年の輸出見通しは88.4億立方メートルと計画を上回る。11月のLNG輸入の鈍化は、そのためとみるのが妥当か。
長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。
【見通しの固有リスク】
・今冬はラニーニャ発生が厳冬リスクを高めているが、懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。
・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。
・Nord Stream2が稼働して欧州のガス需給が緩和した場合(価格下落要因)。
・石炭と同様、「化石燃料であること」を理由に上流部門投資が制限される、あるいは原油生産減少による随伴ガス供給が減少する場合(構造的な価格上昇要因)。
・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念(価格上昇要因)。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが469,946枚(前週比 ▲8,330枚)ショートが131,517枚(▲6,504枚)ネットロングは338,429枚(▲1,826枚)
Brentはロングが263,790枚(前週比+21,288枚)ショートが76,136枚(▲11,810枚)ネットロングは187,654枚(+33,098枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は短期的には電力問題に起因する供給制限が価格を押し上げるが、中期的には調整圧力が強まる展開を予想する。
欧米の利上げ観測や、米国の税制・歳出法案が廃案や修正を余儀なくされる可能性が出てきたことで、インフラ投資向けの需要が減速する可能性が強まっているため。
ただし、ロシアとウクライナの対立を受けた、ロシアに対する制裁強化懸念が強まっており、RusalやNornickelに対する制裁が行われ、供給が減少する可能性が意識されることも供給面からニッケルやアルミ、銅の価格を下支えしよう。
実際、LME指定倉庫在庫の水準はリーマンショック前の価格高騰時の水準まで低下しており、供給面のリスクが浮き彫りになっている。
既にLMEインデックスはこのときの水準を上回っており地合は強い。しかし景気の循環的な減速と春先に向けての生産回復から数ヵ月のスパンでは一旦下落すると考えるのが妥当だろう。
また、中国の不動産市場の調整で減速しており製造業PMIを見るに世界景気も一旦ピークアウトしていると考えられることも中期的に価格を押し下げると考える。
なお、長期的にはインドの人口ボーナス期入り、まだ脱炭素の流れが続いていること、省エネや脱炭素の流れに変わりがないため、供給面・需要面の制限から価格が上昇するという見通しを変更する必要はないと考えている。
また、米政権による1兆ドルのインフラ投資は実施される見通しであることも、鉱物資源需要の増加を通じて非鉄金属価格を押し上げよう。
しかし、バイデン政権支持率低下で、増税を伴う経済対策は受け入れられない可能性は高く、当初予定通りの規模で実行されるかは微妙に。1兆ドルインフラ投資は成立したが、1.75兆ドルの歳入・歳出法案の行方は不透明であり、当初想定していたほどの需要増加にはならない可能性。
【2022年LME金属需給見通し】
銅 生産 26,351千トン(前年25,043千トン) 需要 26,782千トン(25,613千トン) 需給 ▲432千トン(▲571千トン)
亜鉛 生産 14,293千トン(13,975千トン) 需要 14,423千トン(14,092千トン) 需給 ▲130千トン(▲117千トン)
鉛 生産 12,437千トン(12,437千トン) 需要 12,463千トン(12,243千トン) 需給 ▲26千トン(+194千トン)
アルミ 生産 69,003千トン(68,782千トン) 需要 70,441千トン(70,116千トン) 需給 ▲1,438千トン(▲1,334千トン)
ニッケル 生産 2,927千トン(2,886千トン) 需要 2,960千トン(2,758千トン) 需給 ▲33千トン(▲75千トン)
錫 生産 423千トン(413千トン) 需要 428千トン(425千トン) 需給 ▲5千トン(▲13千トン)
※カッコ内は修正前予想。
【金属固有の材料】
・インドネシアニッケル銑鉄(NPI)生産、2022年はこれまでの能力増強で増産の見込み。
2020年の新規追加キャパシティは36万7,000トン、2021年は10万1,000トン。
これらの新規キャパシティからの2021年の生産見通しは38万5,000トン(前年比+19万5,000トン)、2022年は45万6,000トン(7万1,000トン)の見込み(BBG調べ)
中国の発電量を見ると、11月は前年比+1.9%の6,540億kwhと前月の+4.9%、6,390kwh唐は増加しているが前年比較での伸び率は鈍化している。一方で電力消費は前年比+3.9%の6,718kwh(前月+7.0%の6,603kwh)と伸びは鈍化しているが水準は発電量を上回っている。
同時同量の原則があるため両者は同じ数値であるべきだが、統計の集計方法によるものと考えられる。しかし、需給は寄りタイトであることは間違いがなくまだ本格的に電力依存の高い精錬品の生産が回復している感じはない。
同時に発表された中国の非鉄金属生産は概ね回復しているが、アルミの生産はまだ過去5年の最高水準を上回るには至っておらず(ニッケルは直近の生産統計の発表なし)、アルミ、ニッケルは金曜日は上昇している。
これは中国の問題、需要の問題というよりはウクライナ問題を受けた米国のロシアに対する制裁への懸念が影響したと考える方が妥当だろう。
早ければ2022年早々に軍事侵攻が行われる、との見方も広がっており、その場合はアルミ・ニッケルの価格はさらに上昇することになるだろう(ただしリスク要因との位置づけ)。
【中国重要統計の評価】
製造業PMIは50.3(前月50.1)と改善した。生産が51.4(52.0)とやや減速下が、原材料在庫(47.7→49.2)、完成品在庫(47.9→48.5)の増加などが水準を押し上げた。
景気は基本的には減速基調にあるため、在庫の積み上がりは必ずしも良い在庫の積み上がりとは言えない。また、投入価格(52.9→48.1)、卸価格(48.9→45.5)と低下しており、徐々に需給環境は緩和しているようだ。
実際、需給状況の指標である新規受注在庫レシオは、完成品が1.02(前月1.03)、原材料が1.01(1.04)と低下しており、中国の製品・原材料需給は緩和していると考えられる。
また、PMIは改善しているものの主に大企業(50.2→51.3)の改善によるもので、中小企業の景況感は悪化(48.5→46.5)している。中国製造業の景況感は決して良いとは言えない。
12月の中国鉄鋼業PMIは総合指数は38.7(前月36.6)と改善したが、50の閾値を割り込む状態が2020年6月から続いている。引き続き、中国政府による住宅セクターの抑制が続いていると考えられる。新年早々、恒大集団の株が香港で取引停止になるなど、同国の不動産市場の混乱は続いている。
サブインデックスの新規受注は低迷(39.0→28.2→25.9→28.1)、輸出向け新規受注も(39.5→38.7→34.8→36.3)と、内外需とも低迷が続いており、在庫水準も完成品在庫が31.8(前月28.6)、原材料在庫が35.2(32.8)と低いものの前月からは増加している。
価格に対する説明力が高い新規受注・完成品レシオは0.88(前月0.91)と低下しており製品需給は緩和している。原材料レシオは0.80(前月0.79)と小幅に上昇しているが水準は低い。
中国の鉄鋼需要を牽引してきたのは建設セクターだが、12月の建設業PMIは56.3(前月59.1)と閾値の50は上回っているが、減速感が強まっている。
まとめると、全体として需要は不動産セクター、自動車など低迷しており、輸出税還付の廃止も輸出需要の減速に大きな影響を及ぼした。中国政府は国内の炭素排出抑制を目的として粗鋼生産を2021年度程度に抑えると予想される。
11月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲9.1%の51万402トン(前月▲33.5%の41万1,000トン)と過去5年平均を上回り輸入が増加した。
10月は9月の下落で9,000ドルまで水準が低下していたため、輸入が加速したとみられる。
一方、銅精鉱の輸入は前年比+19.6%の218万8,000トン(前月+6.3%の179万7,000トン)と高い水準を維持している。国内在庫水準の低さと、通常年末にかけて増加する電線向けの投資需要の回復が影響しているとみられる。
エネルギー不足の影響で輸入の伸びが減速していたが、中国政府の対策推進によりやや国内生産が回復した可能性はある。ただ、銅製錬事業者の10月の稼働率は86.1%と前月、過去5年の最低水準より低く、まだ回復は確認されていない。
11月の銅スクラップの輸入は前年比+76.6%の16万4,652トン(前月+98.1%の13万3,011トン)。
統計からはまだ中国の工場の生産・稼働の混乱は続いており、正常化はまだ先になると予想される。
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、単月ベースでは+3.8%(前月+3.5%)とやや回復したが、1-11月累計で前年比+10.1%(1-10月期+10.9%)と伸びが鈍化しており、電力供給不足によって工業活動が減速したと見られる。
一方、不動産開発投資は1-11月期累計で前年比+6.0%の13兆7,314億元(1-10月期+7.2%の12兆4,934億元)とこちらも減速している。習近平国家主席が直々に不動産規制緩和の指示を出したことも頷ける。
ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+5.2%(+6.1%)とこちらも減速が鮮明に。公的セクターの伸び鈍化は所与(+4.1%→+3.0%)としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+7.7%(+8.5%)と伸びが減速しており、全体として中国政府によるバブル抑制行動が影響したと考えられる
ただし、中国政府は不動産規制緩和と、預金準備率の引き下げといった景気刺激策の影響で減速は数ヵ月後に底入れするだろう。電力供給の制限やオリ・パラの開催を考えると、回復は3月以降になるのではないか。
【政策動向・脱炭素】
政策動向・脱炭素の流れは中長期的な材料。米バイデン政権は8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画実施計画。
道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。
さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。
しかし、民主党内でも1.75兆ドルの税制・支出法案に造反する議員が出てきており想定通りの規模や内容で景気刺激が行われるかどうかは微妙になってきた。
これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。
この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。
米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高い。
軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど。
なお、EV戦略に慎重なスタンスだったトヨタ自動車が2030年までにEV車を350万台/年販売する方針。
そもそもトヨタは世界で一番モーターやバッテリーを組み込んだ自動車を販売してきた企業であり、その企業が本気になったということは、現在、EV車販売首位のテスラの販売能力を遙かに上回ると予想される。
この場合、バッテリー向け資源需要が構造的な増加局面に入る可能性が高まることになる。
ただし、バッテリーの必須資源を、政治的な対立が予想され、安定的なサプライヤーとしての信用が高くない中国以外からの調達をどれだけ引き上げることができるかも非常に重要な論点となる。
脱炭素の一環でEV戦略を国として進めるならば、資源外交はより重要になる。戦略物資が新しく1つ加わったと考えるべきである(アンモニアや水素の製造で引き続き原油は必須資源)。
【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】
・ウクライナ問題を巡り、ロシアが欧米から制裁を受けてニッケルやアルミなど、同国への供給依存が高い商品の供給が逼迫する場合(価格の上昇要因)。
・中国不動産大手恒大集団の破綻懸念が中国の住宅セクターに広がり、中国の不動産バブルがはじける場合(価格下落要因)。
・ロジスティクスに障害が残る中、非鉄金属の偏在が現物プレミアムを押し上げるリスク(北米で顕在化)。
・猛暑や渇水による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。
・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。
ペルーは新大統領のペドロ・カスティジョが指名したミーシャ・バスケス新首相は、鉱山課税を変更するために必要とされる憲法改正は優先事項ではないとし、今のところ課税強化は棚上げとなっていると見られる。
一方、チリでは上院が(修正の可能性を含み)以下の法案を可決。12月19日の大統領選決選投票の結果で、左派のガブリエル・ボリック氏が勝利したため、法制化される可能性が高い。
3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。
2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%
年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。
2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。
・メキシコは鉱業改革法の中で、エネルギー転換に必要なリチウムとその他の戦略的鉱物の採掘権をこれ以上容認しないとしており、これに銅やネオジム、プラセオジムなどのレア・アースも含まれる可能性。
・インドネシアが再び低品位ニッケル鉱石の輸出を制限する場合(ニッケル価格の上昇要因)。
・LMEベースメタルではないが、中国ではレア・アースの生産を国有企業に集約して管理する動きが強まっており、今後の自動車セクターの中核となる電気自動車生産のサプライチェーンに大きな影響を与える可能性。
レア・アース大手五鉱稀土は、親会社の中国五鉱集団がアルミ大手のチャイナルコやレア・アースの大産地である江西省政府との間でレア・アース関連資産の戦略的な再編交渉を進めていると発表。
中国政府が2020年および2021年に許可したレア・アースの採掘割当量を見ると、CMRE、チャイナルコ、江西省地方政府傘下企業の3社だけで、中国全土で採掘を許可された(ジスプロシウムなど)重希土類の割当量の67.9%、(ネオジムやセリウムなど)軽希土類の割当量の39.1%を占める。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。
中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている。
【投機筋のポジション動向】
・LME投機筋買い越し金額 前週比+7.8%の266億ドル(前週 247億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+5.3%の5,494.8千トン(前週 5,220.7千トン)
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は短期的にはオリンピック・パラリンピック前の駆け込み需要で堅調な推移が予想されるが、年明け以降は北部の生産が減少するため、「在庫積み増しの時期ではあるが、価格は低迷」すると予想される。
既に鉄鉱石在庫は絶対水準・在庫日数水準でも過去5年の最高水準を上回っており、現状、製鉄所の稼働停止が続くのであれば「もう要らない状態」である。
ただ、より高品質の海外鉱石・海外炭を求める動きも同時に強まるとみられ、海上輸送市場は底堅い推移となるのではないか。
一方、来年は米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加が期待されることも、鉄鉱石価格は底堅い推移になるだろう。
なお、鉄鉱石先物の期先の価格が限界生産コストの目安として意識されるが、80ドル程度に低下していた期先の水準は90ドル台まで上昇しており、中期的な価格の目線はやや切り上がっている。
原料炭については中国の国内生産の回復と、豪州からの輸入再開で徐々に中国の国内需給が緩和すると見られるため、長期的には下落に転じると考える。
しかし足下は豪州の中国向け輸出再開を受けて海上輸送市場が逼迫すると見られ、海上輸送炭価格は一旦上昇余地を探る動きに。
【中国の政策動向】
中国共産党は2021年から始まった5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。今のところ昨年の生産量を超えないようにする、というのが中国政府の目標。
最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられている。
これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。
中国3番目の鉄鋼ハブである山東省は、2021-2025年の5ヵ年計画で、素行の環境上限(一般炭消費量535キログラム、2020年は547キログラム)、硫化物排出を0.3キログラム(2020年 0.85キログラム)、窒素化合物排出を0.6キログラム(1.6キログラム)、水の使用量を2.85立法メートル(3立方メートル)に低減させる計画。
なお、今年開幕のオリ・パラの期間、北京市、天津市、河北省、山西省、山東省、河南省では粗鋼生産を▲30%以上削減、河北省唐山市は大気汚染物質の排出を▲40%以上削減、山西省は鉄鋼やアルミ、鋳造、セメントなどの建材生産を制限、河北省はセメント生産を制限する方針を打ち出している。
概ね、新年以降3月15日までが規制対象期間になるが、これに備えた「駆け込み生産」があと2週間ほど続くことになるだろう。
粗鋼生産が減少すれば、鉄鉱石の在庫水準の指標である在庫日数も、分母が小さくなるため上昇が予想され、鉄鉱石価格の下落要因となる。これは原料炭も同様。
【中国重要統計の評価】
12月の中国鉄鋼業PMIは総合指数は38.7(前月36.6)と改善したが、50の閾値を割り込む状態が2020年6月から続いている。引き続き、中国政府による住宅セクターの抑制が続いていると考えられる。新年早々、恒大集団の株が香港で取引停止になるなど、同国の不動産市場の混乱は続いている。
サブインデックスの新規受注は低迷(39.0→28.2→25.9→28.1)、輸出向け新規受注も(39.5→38.7→34.8→36.3)と、内外需とも低迷が続いており、在庫水準も完成品在庫が31.8(前月28.6)、原材料在庫が35.2(32.8)と低いものの前月からは増加している。
価格に対する説明力が高い新規受注・完成品レシオは0.88(前月0.91)と低下しており製品需給は緩和している。原材料レシオは0.80(前月0.79)と小幅に上昇しているが水準は低い。
中国の鉄鋼需要を牽引してきたのは建設セクターだが、12月の建設業PMIは56.3(前月59.1)と閾値の50は上回っているが、減速感が強まっている。
まとめると、全体として需要は不動産セクター、自動車など低迷しており、輸出税還付の廃止も輸出需要の減速に大きな影響を及ぼした。中国政府は国内の炭素排出抑制を目的として粗鋼生産を2021年度程度に抑えると予想される。
製造業PMIは50.3(前月50.1)と改善した。生産が51.4(52.0)とやや減速下が、原材料在庫(47.7→49.2)、完成品在庫(47.9→48.5)の増加などが水準を押し上げた。
景気は基本的には減速基調にあるため、在庫の積み上がりは必ずしも良い在庫の積み上がりとは言えない。また、投入価格(52.9→48.1)、卸価格(48.9→45.5)と低下しており、徐々に需給環境は緩和しているようだ。
実際、需給状況の指標である新規受注在庫レシオは、完成品が1.02(前月1.03)、原材料が1.01(1.04)と低下しており、中国の製品・原材料需給は緩和していると考えられる。
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、単月ベースでは+3.8%(前月+3.5%)とやや回復したが、1-11月累計で前年比+10.1%(1-10月期+10.9%)と伸びが鈍化しており、電力供給不足によって工業活動が減速したと見られる。
一方、不動産開発投資は1-11月期累計で前年比+6.0%の13兆7,314億元(1-10月期+7.2%の12兆4,934億元)とこちらも減速している。習近平国家主席が直々に不動産規制緩和の指示を出したことも頷ける。
ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+5.2%(+6.1%)とこちらも減速が鮮明に。公的セクターの伸び鈍化は所与(+4.1%→+3.0%)としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+7.7%(+8.5%)と伸びが減速しており、全体として中国政府によるバブル抑制行動が影響したと考えられる
ただし、中国政府は不動産規制緩和と、預金準備率の引き下げといった景気刺激策の影響で減速は数ヵ月後に底入れするだろう。電力供給の制限やオリ・パラの開催を考えると、回復は3月以降になるのではないか。
【中国鉄鋼製品輸出入・在庫動向】
11月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲23.0%の142万4,000トン(前月▲41.6%の112万7,000トン)と回復した。国内製鉄所の稼働が低迷(主要生産地である唐山市の高炉稼働率は過去5年平均である72.8%を下回る72.2%)を受けて、輸入品需要が高まったと考えられる。
11月の中国粗鋼生産は前年比▲25.1%の6,931万トン(10月▲24.5%の7,158万トン、9月▲21.2%の7,375万トン、8月▲13.2%の8,324万トン、7月▲8.4%の8,679万トン、6月+1.5%の9,388万トン、5月+6.6%の9,945万トン)と大気汚染防止の観点と、燃料供給の問題から生産減少が続いている。
一方、11月の鉄鋼製品の輸出は前年比▲0.9%の436万1,000トン(前月+11.4%の450万トン)と前月から前年比の伸びを縮小させ過去5年の最低水準に。やはり国内供給を優先させていることが窺える。
なお、中国の鉄鋼製品需要は鈍化しているとみられるが、在庫水準は前週比▲4万4,000トンの1,024万6,000トン(過去5年平均 832万9,000トン)と例年を上回るが季節的な減少が続いている。
【中国鉄鉱石輸出入・在庫動向】
11月の鉄鉱石の輸入は前年比+7.0%の1億496万トン(前月▲14.2%の9,160万トン)と急増した。鉄鉱石在庫の水準が低かったこと、価格が急落したことによる割安感からの輸入増加だったと考えられる。
ただし、鉄鉱石在庫の水準は既に高いため、鉄鉱石価格が割安ではあるものの12月以降の輸入は減速するのではないか。
鉄鉱石港湾在庫は前週比+40万トンの1億5,620万トン(過去5年平均1億3,175万トン)、在庫日数は41.6日(過去5年平均 32.2日)と数量ベース・日数ベースでも過去5年の最高水準を上回っており、需給が緩和していることは明確で価格の下押し要因となる。
【中国原料炭輸出入・在庫動向】
原料炭は中国の生産活動回復が継続しているが、前年比の伸び鈍化が明確になってきたため(中国政府の方針通り)、価格は下落余地を探る動きになると考える。
また、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることも、海上輸送原料炭価格を下押ししよう。
とは言え、環境規制強化の流れで世界的に原料炭供給を増加させられる地域が限定されることから、下落余地も同様に限定される都見るのが妥当だ。
11月の中国の原料炭輸入は前年比+108.0%の774万1,656トン(前月▲25.7%の438万4,018トン)と急回復。豪州からの輸入が前月の77万7,915トンから、267万793トンに増加したことが寄与した。国内の稼働が落ちる中では「高品位」な海外炭を求める動きが強まる。
中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲4万トンの176万トンとなり、過去5年の最高水準である192万トンを下回った。駆け込み増産の影響だろう。
在庫日数は8.7日と、過去5年の最高水準である9.4日を下り、以前からはやや需給がタイト化したことが窺える。
【見通しの固有リスク】
・中国の不動産セクター減速が、建材需要を減少させる可能性(鉄鋼製品価格の下落を通じて鉄鋼原料価格の下落要因)。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合(価格上昇要因)。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク(価格上昇要因)。
---≪貴金属≫---
【貴金属価格見通し】
【金】
金価格は米FRBはテーパリングを加速、早ければ来年3月にも利上げが行われる可能性が否定出来なくなって来たため、総じて軟調な推移になりやすい。
ただし、市場の反応はこれと異なり「利上げによって成長鈍化、ないしは他国の国債利回りとの比較感で10年債利回りが低下」となっており、テーパリングペース加速と全く整合していない。
また、インフレ懸念がまだ払拭仕切れていないこと、ロシアとウクライナの情勢不安もあって、しばらくは高値での推移が続くのではないか。
以上を勘案すると、結局の所、金価格は1,700ドル~1,800ドルのレンジで推移する可能性が高く、FRBが懸念しているように5%や6%のインフレが続くのならば、このレンジが上振れする可能性がある(逆の場合は下振れる)と言うことだろう。
なお、過去5年平均を基準にすると名目金利1bpに対する金価格の感応度は±3ドル弱であり、米10年金利が現在の水準から30bp上昇すれば▲90ドルの下落圧力となる(60bpで▲180ドル)。
現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,641ドル、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は174ドル。
リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で132ドル、6ヵ月で154ドル、1年で161ドル、5年で183ドルとなっている。
なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。
【銀】
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、78.7倍。過去1年を基準にすると72倍、5年では80倍、2000年以降では66倍程度が妥当。
今後、さらに金銀レシオが低下するには、工業需要の増加が必須。今後、IT化の進捗でエレクトロニクス向けの需要が増加することが必要だが、半導体供給が回復すれば自動車向けの需要が回復するため、春先頃から金銀レシオには下押し圧力が掛るのではないか。
太陽光パネルの増設は、バイデン政権が再びウイグル人自治区向けの制裁を強化しているため十分な需要の伸びが期待できず、しばらく、太陽光向けの需要は低迷すると見る。
なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。
(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%
金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%
【PGM】
プラチナ価格は自動車の半導体供給不足の影響で急落していたが、半導体供給が回復しつつあるため、来春以降は需要増加で価格は上昇圧力を強める展開が予想される(中期的な見通し)。
需給バランスは投機を除けば供給過剰であり、投機筋の「思惑」が価格を左右しやすい。その意味ではトヨタ自動車がEVに舵を切ったことは、PGM需要と価格にとってはかなりマイナスな材料となる。
ただ、車での移動が大半である米国が充電ステーションを整備してまでEVに舵を100%切るとは考え難く、来年の中間選挙で民主党が苦戦することはほぼ必定であることを考えると、一定のガソリン車需要は残る(あるいは減少ペースが脱炭素派が期待するほどのものではない)可能性を排除しない。
また、仮に脱炭素が加速するならば、EVではなくて燃料電池車、という選択も残されている。この場合、パラジウムではなくプラチナが使用されるため、いずれのシナリオでも、長期的にはパラジウムの価格は下押し圧力が掛りやすい。
とはいえ、当面は自動車販売動向を注視する必要。
12月の米自動車販売は年率1,244万台(市場予想1,310万台、前月1,286万台)と減速、目先はパラジウム価格の下落要因に。
中国の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で以下の通り自動車販売の低迷は続いている。半導体供給の回復で反転すると考えるが、Q122以降になろう。
11月 前年比 ▲9.0%の252万2,000台10月 ▲9.0%の233万3,000台9月 ▲19.5%の206万6,000台8月 ▲17.4%の179万8,841台7月 ▲11.8%の186万3,550台。6月 ▲12.4%の201万5,309台5月 ▲3.0%の212万7,000台4月 +8.8%の225万台3月 +76.5%の252万5,000台2月 +371%の146万台1月 +30%の250万台
調査会社のオートフォーキャスト・ソリューションズによれば半導体不足による供給減少による減産が9月26日時点で▲893万4,000台に上るとし、2021年の減産規模は▲1,030万台に達するとみている。これは昨年の販売台数(7,700万台)の13.4%に相当する。
この回復がある、ないしは供給側の混乱(南アフリカ)による生産減少がなければ、PGM価格は低水準で推移しよう。
【見通しの固有リスク】
・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。
南アフリカ政はEskomの一部石炭火力に対する温室効果ガス排出規制を免除する申し出を棄却したことで、同国の3分1の電力供給16,000MWの供給が困難になる可能性。
・米国をはじめとする先進諸国が金融引き締め方向に舵を切っており、アフリカや中南米、東南アジア、東欧など新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。
・世界的なEVシフト加速による、PGM需要の激減。
ただし、環境重視型社会へのシフトが加速、「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが303,879枚(前週比 +7,251枚)、ショートが90,723枚(▲94枚)、ネットロングは213,156枚(+7,345枚)、銀が63,873枚(+1,803枚)、ショートが37,415枚(▲3,729枚)、ネットロングは26,458枚(+5,532枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが27,133枚(前週比 ▲1,169枚)ショートが22,664枚(▲4,370枚)、ネットロングは4,469枚(+3,201枚)
パラジウムが2,670枚(+195枚)、ショートが5,779枚(▲335枚)ネットロングは▲3,109枚(+530枚)
---≪農産品≫---
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格は堅調な推移になると考える。冬場のラニーニャ現象の発生(北半球の天候相場は終了も、南半球の天候相場入り)による供給懸念が強まっていることや、脱炭素進捗に伴う代替エネルギー需要が高まること、ロシアとウクライナの対立を背景にした供給制限懸念などが材料。
11月の中国の大豆輸入は前年比▲10.6%の857万トン(前月▲41.2%の611万トン)と急速に回復し、過去5年平均を回復した。
中国の大豆港湾在庫は過去5年レンジの最高水準は下回っているが、高い水準を維持している。)
Locust Watchではソマリアとエチオピアに影響が限定されているが、ソマリアで発生した群生相の一部がエチオピア南部、ケニア北部に飛来している。
今のところ北アフリカ全域に大きな被害をもたらすような状態ではない。
https://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/DL519map_DecE.jpg
【見通しの固有リスク】
・ラニーニャ現象発生による投機筋の買い圧力の強まり(価格の上昇要因)。
・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。
・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
【米農務省需給報告データ】
・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)
・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)
・12月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 177.0Bu/エーカー(NA、177.0)大豆 51.2Bu/エーカー(NA、51.2)小麦 44.3Bu/エーカー(NA、44.3)
・12月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億6,200万Bu(NA、150億6,200万Bu)大豆 44億2,500万Bu(NA、44億2,500万Bu)小麦 16億4,600万Bu(NA、16億4,600万Bu)
・12月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億Bu(NA、25億Bu)大豆 20億5,000万Bu(NA、20億5,000万Bu)小麦 8億4,000Bu(NA、8億6,000万Bu)
・12月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 14億9,300万Bu(14億7,479万Bu、14億4,000万Bu)大豆 3億4,000万Bu(3億5,471万Bu、3億4,000万Bu)小麦 5億9,800万Bu(5億8,921万Bu、5億8,300万Bu)
・9月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 12億3,600万Bu(41億1,100万Bu)大豆 2億5,600万Bu(7億6,900万Bu)小麦 17億8,000万Bu(8億4,500万Bu)
・11月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 2,089万ha(2,086万ha、2,087万ha)大豆 4,027万ha(4,042万ha、3,992万ha)
・11月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億1,671万トン(1億1,929万トン、1億1,631万トン) 単収 5,587kg/ha(5,717kg/ha、5,575kg/ha)大豆 1億4,201万トン(1億4,415万トン、1億4,075万トン) 単収 3,526kg/ha(3,569kg/ha、3,526kg/ha)
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが536,934枚(前週比 +19,216枚)、ショートが78,758枚(+6,360枚)ネットロングは458,176枚(+12,856枚)
大豆はロングが168,011枚(+16,003枚)、ショートが42,726枚(▲6,405枚)ネットロングは125,285枚(+22,408枚)
小麦はロングが100,581枚(▲3,115枚)、ショートが94,646枚(+82枚)ネットロングは5,935枚(▲3,197枚)
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