ロシア全面攻撃懸念によるインフレリスクで商品軒並み高い
- MRA商品市場レポート
2022年2月24日 第2141号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「ロシア全面攻撃懸念によるインフレリスクで商品軒並み高い」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品価格は引き続き、多くの商品が上昇した。ロシアがウクライナに侵攻、欧米諸国がロシアに対する制裁を発動したがプーチン大統領は意に介しておらず、軍を撤退させるためには、ドネツク・ルガンスクの独立をロシア側が一方的に承認してしまった以上、キエフ侵攻の可能性があるのではないかと見られたことが、広く供給不安を高めたため。
また、ロシアと思しきサイバー攻撃がウクライナの主要政府機関に行われており、このことも全面戦争へのリスクが高いと判断されたようだ。
昨日最も上昇したのは欧州天然ガス、次いで排出権、パラジウム、小麦、大豆ミール、といったロシア・ウクライナが主要産地である商品の価格上昇が顕著だった。
今後、資源価格の上昇や調達不足に伴う各国景気の悪化、それによるその後の価格下落、という非常に難しいリスクに日本も晒されることになる。
やはり現物調達と価格を切り離し、別々にリスクマネジメントする体制構築や概念は今後、非常に重要になるだろう。
(ロシア問題に関して詳しくは以下のMRA's Eyeをご参照ください)
・2022年1月20日「ロシア・ウクライナ軍事衝突懸念」
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/20512.html
・2022年2月15日「ロシア不安の資源供給への影響」
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/20462.html
・2022年2月22日「ロシア軍事侵攻の金価格への影響」
https://marketrisk.jp/news-contents/contents/20540.html
※2月15日、22の解説は、有料の商品市場レポートの読者の方向けにメールで配信しています(上記リンクから全文は参照できません)
【本日の見通し】
本日もロシア・ウクライナ情勢次第で非常に不安定な推移になると考えるが、ロシア・ウクライナの供給シェアが高い商品は高値での推移が続くことになると予想される。
なお、米インテリジェンスの分析では48時間以内のキエフ侵攻の懸念があるとしているが、今のところ「同盟国」である中国の大使館員は退去をしていない。恐らく中国とロシアは本件に関して情報交換をしていると考えられる為、中国大使館員の退去動向が重要になるだろう。
なお、日本はウクライナ問題は対岸の火事と思いがちだが、制裁を共同で行っている以上、同国から調達している資源リスクの他、ウクライナに行われたようなサイバー攻撃へのリスクも充分に有り得る。
本日予定されている材料としてはG7首脳会議が注目だが、有効な打開策は出てこないだろう。
また、米連銀総裁が複数パネル討論、講演会に参加予定であり、ロシア問題を背景とする資源インフレへの対応をどのように考えているかに注目が集まる。
【昨日のトピックス】
ロシアがウクライナ東部に進軍し、戦闘状態に入った。ロシアはウクライナのみがこうした対象であるが、その他の地域の主権は守る、としている。
しかしこれは湾岸戦争時に米ブッシュ政権時代に、ネオコンを中心に複数の国を悪の枢軸国と設定、大量破壊兵器がある、などの情報をねつ造して攻撃を行ったが国際社会から制裁はされなかった。今回の軍事行動はこれの「意趣返し」ともいえる。
だからこれが許容される、ということではないがプーチン大統領側の主張はほぼ当時の米国のロジックと同じだ。
しかし、この状況を西側諸国が許容できるはずもなく、現状を武力で変更することが認められれば、あらゆる国々で同様の危機が発生することになる。
今後の動向は1.欧米の制裁動向、2.ロシアの報復、の2つに絞られるが、1.は禁輸措置や金融システムからの排除が該当し、2.は主要な戦略物資をロシアが意図的に輸出しない、といったものになる。
影響が大きいのはエネルギ-やガスはもちろん、小麦、半導体や自動車触媒に用いるパラジウムやプラチナ、バッテリーに用いるニッケルなどが該当する。
1.に対して直近の制裁動向は以下の通りだが、世界経済がインフレで厳しい中西側諸国も「切れるカード」が少なく、取りあえず大きな制裁にはなっていない。キエフ侵攻リスクを考慮し、軍撤退を促すためにSWIFTからの排除といった影響の大きなカードを温存した、という感じだろう。
これらの制裁は西側諸国も影響を受けることが必至で、世界同時不況に陥る引き金となりかねないため、実際に実施できるかどうかは不透明である。恐らくロシアはそれはできない、と踏んでいるとみられるが、それではどこを落としどころにしているのかも不透明である。
英国・バンク・ロシヤ、プロムスビャジバンクなど、ロシア5銀行の英国内資産凍結・3人の富裕層の資産凍結
EU・ウクライナ東部の独立に承認投票をしたロシア下院銀351人と提案をしたロシア人11人の資産凍結・ウクライナ東部に資金を提供しているロシア開発対外経済銀行(VEB)、バンク・ロシヤ、プロムスビャジバンクの資産凍結・ロシア政府によるEUの資本・金融市場・サービスへのアクセス制限・ウクライナ東部の親ロシア派2地域とEUの通商禁止
米国・親ロシア派2地域の米国の個人や企業の新規投資禁止・同地域の金融・不動産取引禁止(これの対象になる企業や個人はほとんどない)・(制裁ではないが)バルト3国、周辺国への米軍の派遣強化
日本・ウクライナ東部地区の渡航制限・資産凍結・ロシア国債の発行・流通禁止
ドイツ・ノルドストリーム2の認可手続き停止(恒久停止ではない)
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇後下落し、高安まちまちとなった。ウクライナ政府のサイトに複数のサイバー攻撃があったとの報道を受けてロシアがキエフ侵攻を想定している、との見方が急速に広まり水準を切り上げた。
しかし、戦略備蓄の協調放出の可能性が高まっていることや景気の減速懸念、ドル高侵攻を背景に引けに掛けて水準を切下げる動きとなった。
本日もロシアの軍事侵攻に対する欧米の制裁ヘの懸念から高値での推移が予想される。懸念されるのは米政府が今後48時間以内にロシアがウクライナに大規模軍事侵攻を行う、との見方を示した点。
この場合、大規模制裁は不可避であり経済に混乱を来してもSWIFTかの排除、ロスネフチなどへの制裁、といったことが想定されるため原油価格はさらに上昇することが予想される。
仮にロシアからの供給が減少した場合、単純な需給バランス変化のみを前提に価格を推定すると125ドル~140ドル程度までの上昇が有り得ることになるが、現物不足に伴うスクイーズが発生した場合、天井は「値段が付いた価格」になるため、余り価格上限を推定することに意味は無い。
ただ、この原油価格水準であれば景気が減速する可能性は高く、やはり長期化はしないという見通しとなる。
◆石炭・LNG・天然ガス
豪州石炭スワップ先物価格はロシア情勢不安を背景に、ロシアからの石炭供給減少観測が強まったため再び上昇、240ドルを目指す展開となっている。
中国の石炭輸入の指標の1つであるバルチック海運指数は高水準を維持し、5年レンジを大きく上回っている。中国の経済活動がオリンピック終了で回復したためと考えられる。
欧州天然ガス価格は上昇した。ドイツがノルドストリーム2の認可を停止し、ロシア(と想定される)がウクライナに対してサイバー攻撃を仕掛けた、との報道を受けてガス供給が相当厳しくなる、との見方が広がったことが価格を押し上げた。
ただ、ユーロ圏の最大生産国であるノルウェーの増産や風力発電の回復でドイツの天然ガス在庫の減少ペースは鈍化しており、長期化しなければ「どうにか冬を乗り切れる」ようだ。
ただ、工場の稼働停止などの代償を払いながらの在庫維持であるため、独景気に悪影響が及ぶことは不可避だろう。
なお、TTFの期間構造は期近の上昇が顕著だが、期先も2023年までは上昇している。
仏独の原発の稼働率は低下しており、引き続き冬場の電力供給状況は不安定。
米国天然ガス市場は上昇。欧州の供給不安を背景に、欧州向けの輸出が増加するとの見方と。ただし朝方から天然ガス価格は急騰している。
JKMは欧州ガスの上昇を受けて上昇。期間構造も2023年まで大幅に上昇し、ついに2023-2024年の天然ガス価格は20ドルを上回った。
ただ、2月20日時点の発電用LNG在庫は182万トン(前年同月末230万トン、過去5年平均218万トン)と過去5年の最低である166万トンは上回っているが水準は低い。LNGの欧州への融通を決めたが気温低下があった場合充分な在庫ではなくなった。
また、恒常的に欧州にガスを融通するならば、日本のスポット調達圧力が恒常的に高まることになるため、厳冬・猛暑の現物ショートのリスクは無視できない。
2月14日~21日のLNGトレードだが、取引量は▲13%の710万トンとなった。スポット取引のシェアは22%と先週の24%から低下。欧州の域内生産増加の影響もあり、北欧のスポットカーゴ物色圧力が低下した。
ターム契約ベースの取引は▲11%の減少。日本韓国向けの輸出が減った他、欧州向けの供給は変わらずだった。
今後、ロシアからの供給減少の可能性が高いため、米国から欧州へのカーゴ融通が加速すると見られる。ただ、あと1ヵ月程度で冬場が終了するため、状況はやや厳しさが緩和する可能性はある。
本日の石炭価格はロシアの軍事侵攻、キエフへの進軍の可能性が出てきたことから、上昇余地を探る展開。
天然ガス価格はロシアが48時間以内にロシアが大規模侵攻を行う、との米政府の見通しを受けて上昇余地を探る展開を予想。
JKMも同様の理由で調達圧力が強まる(期待供給減少観測が背景)ことから、水準を切り上げる展開に。なお、2022年~2023年の価格が20ドルを超え、さらに上昇するリスクが出てきた。期間構造が変化する可能性は、現状を考えると高いと言わざるを得ない。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は下落した。最大消費国である中国の経済統計はさえないものが目立つ中、昨日はリスク回避と長期金利上昇によるドル高が進行したため、ファイナンシャルな要因で水準が切り下がった。
欧州へのガス供給懸念、あるいはウクライナが戦闘状態になった場合の難民流入、それに伴う経済混乱が欧州域内の景気を悪化させるとの見方も非鉄金属価格を押し下げた。
本日もロシア情勢不安を背景に神経質な推移になると予想される。ロシアが48時間以内に大規模攻撃を開始する可能性があり、その場合ロシアのSWIFT除外(欧米も悪影響が出るため、むしろ個別企業への制裁が現実的か)が意識されるため、アルミやニッケルなどの供給減少を通じて価格上昇要因となる。
ただし、ウクライナ情勢の悪化は欧州域内の景気を悪化させ、実需の減少に繋がることも事実であるため、需給環境については取りあえず現時点では中立~ややタイト、と見るべきだろう。
一方でファイナンシャルな面ではドル高が進行していることから、売りが入りやすく結局これらを総合すると非鉄金属価格は高値維持、ということになるのではないか。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップはほぼ変わらず、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄鋼製品先物は下落した。
鉄鋼製品価格は在庫の積み上がりの調整の影響でやや下落、それを受けて鉄鉱石価格も小幅安。一方で供給不安が多い原料炭だが、逆に中国向けの価格は安くなる可能性があり(西側諸国に原料炭を売れない。西側諸国の調達価格は上昇)、中国向けの価格が下落する可能性がある。
本日も中国国内の経済活動再開に伴う鉄鋼製品・鉄鋼原料需要の増加で上昇余地を探る展開が予想される。
◆貴金属
昨日の貴金属セクターは総じて堅調な推移となった。ロシアの軍事侵攻に伴う原油価格の上昇が実質金利を押し下げたこと、リスク・プレミアムが高値を維持したことが背景。
ただし新しい材料が出てくる(ロシアの全面的な軍事侵攻、原油の高騰)までは現在の1,900ドル程度での推移が続くことが予想される。銀は金に対する割安感から上昇、PGMはロシア制裁が意識される中で大幅な上昇。
本日もロシア情勢次第であるが、ロシアがキエフに侵攻する可能性が高まっているため、貴金属セクターは堅調な推移が予想される。
◆穀物
シカゴ穀物市場は大幅に上昇した。ロシア・ウクライナ情勢が悪化、現在はドネツク・ルガンスクを対象とする制裁に止まっているが、今後キエフの侵攻も米国が予想しており、小麦やトウモロコシの輸出に影響が出る、との見方が強まってることが価格を押し上げている。
また、大豆はラニーニャ現象の影響を受けた干ばつが、南米の生産を減じるとの見方が価格を押し上げた。
本日もウクライナ・ロシア情勢を背景に小麦・トウモロコシの供給懸念が強まり高値を維持する見込み。注目材料は2022年の作付面積予測。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・米国経済が正常化する中で金融引き締めが加速、経済をオーバーキルしてしまった場合(価格下落要因)。
・ロシアと西側諸国の軍事衝突のリスク、それに乗じて中国が台湾に侵攻するリスク(世界経済の減速要因)
・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。
・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。
・ロシア・ウクライナ・ベラルーシ・欧州を巡る対立が激化し、軍事的な衝突が発生する場合(景気の減速を通じて景気循環系商品価格の下落要因)。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。
◆本日のMRA's Eye
「変わる戦略物資~問われる日本外交(前編)」
欧州から始まった脱炭素の流れは米国でバイデン政権が誕生したことで加速、日本もこうした欧米の動きに追随する形で脱炭素の動きを加速させようとしている。
しかしこのエネルギー源の強制的な変更は今回欧州のガス危機で明らかになったように脆弱性がある。また、インドネシアでパーム油の生産を増やすために森林を大規模に伐採されたように、これまで想定していなかった環境面での問題が顕在化し始めている。
欧州では持続可能な経済活動を分類する制度であるEUグリーンタクソノミーに、再生可能エネルギーを中心とした世界への移行を促進するための手段として原子力や天然ガスも一定の役割があるとの見解を示した(ドイツやオーストリアは反対)。
今回のエネルギー危機を背景に、実態に合わせた形で方針は変更されていくと考えられ、脱炭素がこれまで想定していた形にならない可能性や、そもそも達成できないかもしれず、達成したとしてもその達成後の世界がどのようになるかは誰も分らない。
しかし、現時点で脱炭素の流れに変化はないため、数年単位で脱炭素に必要な資源の需要が増加するというのが恐らくメインシナリオだろう。
これまでのニュースや各種レポートを見るに、脱炭素社会のためのカギとなる産業はバッテリー部門だ。IEAの見通しでは原油需要のほとんどがバッテリー関連のビジネスに置き換わることを想定している。そのためバッテリーに用いる資源需要は既に増加を始めている。
その一方で原油や天然ガスなどの価格は需要が減少するので下落すると思われがちであるが、化石燃料・原料の販売数量が減ることでOPECプラスのシェアが上昇することから価格コントロールが容易になるため、弊社は原油やガスの価格も脱炭素が進んだとしても長期的には構造的に上昇圧力が掛る展開になると考えている。
では、脱炭素を進めた場合、どの資源の需要が増加するのだろうか。今日のコラムでは特に鉱物資源に焦点を当てた。
カギを握るセクターと資源の種類
欧州は脱炭素を進めるに当たり、鍵となる技術は電気自動車(バッテリー)、太陽光発電、風力発電、水素、バイオ燃料、原子力などがキーワードとなるが、発電設備形態別に重要となる鉱物資源を一覧にした。まず、インフラ投資を伴うことから全ての発電設備において鉄が必須元素であることが分る。
また、送電や設備にモーターを用いることが多いため銅の重要性は高く、鉄の防食剤として用いられる亜鉛も鉄を用いたインフラ投資が行われる場合の重要度は高い。
電気自動車は製造のための必須資源が多岐にわたる。バッテリーに必要な資源の種類が多いためだ。次いで必須元素の種類が多いのがやや意外感があるが太陽光発電、次いで風力、水素の順となった。
同じ自然エネルギーでも水力は鉄や銅などのいわゆるインフラ投資に用いられる伝統的な資源が主体であることを考えると、自然エネルギーに分類される発電設備はある意味、新素材の集合体と言っても良い。
次の問題は、これらの資源をどうやって確保するかである。表にあるとおり、ほとんどの資源において中国の供給能力は重要な位置を占めている。つまり、安定的にこれらの資源を確保しようとした場合、中国との良好な関係を維持することが必要になるということだ。しかし、中国と良好な関係が築けなかった場合や、米中対立の中で日本も米国に歩調を合わせなければならなくなった場合、代替調達先を探さなければならないこともまた事実である。
主要生産国を見てみても一見して分るのだが、米中対立が継続する中で米国陣営が必須資源を調達しようとした場合、どうしても中国陣営から調達をしなければならないことを意味する。反対に中国陣営は現在の脱炭素を進めたとしても、資源調達にそれほど苦慮しない。言葉を換えると、中国の応諾が無ければ脱炭素を進めようとした場合、資源調達が中国の交渉材料になり得るということである。尖閣諸島を巡って中国と日本の対立が深まった際に中国がレア・アースの輸出を停止したことがあるが、脱炭素を進捗する中ではそういった問題の解決が不可避とも言える。これは石油からその他の資源に戦略物資が変わった(拡大した)ことを意味する。
(後編に続きます)
主要ニュース/エネルギー・メタル関連ニュース/主要商品騰落率/主要指数/市場の詳細データPDFは、有料版「MRA商品市場レポート」にてご確認いただけます。
【MRA商品市場レポート】について