新型コロナ変異種ヘの懸念後退で買い戻し
- MRA商品市場レポート
2021年11月30日 第2086号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「新型コロナ変異種ヘの懸念後退で買い戻し」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は再びリスクテイク意欲が回復したことで、景気循環系商品・リスク資産が物色される流れとなった。
オミクロン株の影響がどの程度のものか分らないが、ファイザー社やモデルナ社は年明けにも変異種に対応したワクチンの提供が可能との見通しを示し、サンクスギビングの流動性が低い中での暴落だったこともあって、取りあえず主に実需家の安値拾いの買いが価格を押し上げたと見られる。
ただし、もう1つの市場の懸念材料だった「冬場の発電燃料供給不足問題」は解消していない。特に欧州では先行きの動向が不透明である。気温低下予報に加えてロシア・ウクライナ問題を背景とする欧米の制裁強化が、さらにガスの供給に影響を与えるのではとの見方も排除しきれていない。
この中でOPECプラスは想定通りの増産を行うといった趣旨の発言をしている。背景にはやはり増産はしたいが、現状、想定しているほどの増産ができていないことも背景にある。
OPECプラスが事前計画通りの増産を行えば「アナウンスメント効果」で価格は下落するものの、結局、欧州の発電燃料の不足がエネルギー価格を高値に維持する状況は冬場の調達に目処が立つまで続くと考えられる。
一方、その状況であることから米FRBがテーパリングのペース加速や、利上げの早期実施を行う可能性も同時に排除できず、やはり中期的には経済活動が鈍化の方向に向かうと考えておくのが妥当だろう。
【本日の見通し】
本日は引き続きオミクロン株の現状を見極めながら買い戻しで多くの景気循環系商品価格が上昇余地を探る展開になると予想する。
なお、先ほど発表された中国の製造業PMIと非製造業PMIは市場予想を上回る改善となっていることも景気へのポジティブサプライズで、特に非鉄金属価格の上昇要因となろう。
同時並行的に米国が直面している金融政策動向にも注意が必要で、本日はFRB議長の上院での証言や、ニューヨーク連銀総裁、FRBクラリダ副議長の発言には注目したいところ。
また、NATO外相会合が開催の予定であり、緊迫化するロシアとウクライナの情勢に何らかの示唆があるかにも注目したい。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は続伸した。オミクロン株の影響への反応が行き過ぎ(というよりは流動性が低い中での暴落となったため、安値拾いの買いが入りやすい環境)だったとして買い戻しが優勢となった。
しかし米エネルギー省の顧問が「SPRの追加放出も有り得る」としたことや、増産を見送るとみられていたOPECプラス、サウジアラビアとロシアが「今のところ追加増産は予定通り」といった趣旨の発言をしたことが価格の上値を抑えた。
背景に40万バレルといっても実質的にその水準まで増産できていないこと、原油についてのOPECプラスのスタンスはやはり価格水準が大きな影響を及ぼすが、基本的には産油国側も「できる限り増産したい」と考えている可能性が高いこと、があると見られる。
40万バレルであれば事前の計画通りなので影響は限定される、と考えている可能性も高い。ただし下落すれば「追加的な対応をする」ともコメントしており取りあえずは予定通りとなりそうだ。やはり足下は価格水準自体が判断材料となっている可能性が高い。
本日も買い戻しが優勢になると考えるが、オミクロン株の影響がどの程度かまだ不透明であるため上値も重いと考えられる。結果、現状水準でのもみ合いとなるのではないか。
◆石炭・LNG・天然ガス
豪州石炭スワップ先物価格は小幅に下落した。中国の10月の国内生産が増加し、これまで輸入を禁止していた豪州からの輸入も再開したもののやはり国内向けの供給が十分ではないとみられ、海上輸送石炭市場はタイトな状態が続いている。
JKM先物市場は欧州天然ガス価格がカーボン価格の上昇を受けて欧州天然ガス価格が再度上昇していることを受けて水準を切り上げている。
欧州天然ガスは気温低下予想を受けて需要増加観測が強まり、価格は上昇した。ロシアとウクライナの対立を背景とするロシアに対する追加制裁観測が、ノルドストリーム2の稼働のみならずガス供給に影響を与えるとの見方も価格を押し上げている。
とはいえ、ロシアはよほどのことがない限り供給契約は守る(外貨を取得したいため)ことから、ウクライナ情勢は今のところ顕著な供給停止材料にはなっていないと整理するべきだろう。
ただし、域内最大の原発国であるフランスの原子力発電量は減少しており、欧州の発電燃料ショートの状態は続く。
一方、米国天然ガスは米国が広く気温上昇の見通しであることを受けて大幅な下落となった。今のところ米国の天然ガス在庫水準は過去5年平均に達していないが、他国比では水準は高い。
スポットLNGタンカーレートはスエズ以東・以西とも上昇、特にスエズ以東の上昇が顕著。航路は太平洋航路のタンカーレートが上昇しており、足下のLNG不足を背景に米国からの調達を増加させていることが窺える。
2021年11月15日~21日のLNG取引は前週比+3%の770万トン(前週▲2%の750万トン、スポット調達のシェアは20%(29%)と低下。
ターム契約による調達が増加し、スポットの比率は低下した。中国の週次の調達は▲40万トン減少したものの、北欧、イタリア向けの供給が+50万トンの増加となった。
石炭価格は中国の気温低下と冬場に向けた供給懸念から高値維持。
天然ガス価格は欧州のガス供給不安やカーボンプライス価格の上昇、域内最大の原子力発電を保有するフランスの原発稼働率がメンテナンスの影響などで低下していること、欧州の気温低下予報などを受けて堅調な推移を予想。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は上昇した。オミクロン株ヘの過度な懸念が一旦落着いていることや、欧州地域の発電燃料不足の状況に大きな変化がないことから、電力供給の影響を受けやすい金属の供給ヘの懸念が台頭していることが材料。
本日は中国の製造業PMIが発表されたが、製造業・非製造業とも予想外の改善となり、非鉄金属価格の押し上げ要因となろう。また、欧州の電力供給状況は改善しておらず、供給懸念が意識されていることも価格を押し上げると予想する。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は小幅に下落、大連原料炭先物は小幅に上昇、上海鉄鋼製品先物は下落した。
オミクロン株の影響で鉄鋼向け需要が減少すると昨日は材料視された模様。ただし今回のオミクロン株を受けて明確に中国の生産活動が減速するかどうかは不透明。
鉄鉱石価格の下落はここしばらくの「割安感からの買い」が顕著だったため、オミクロン株を材料に先物に売りが入ったことによるものと考えられる。
本日は鉄鉱石価格はこの数日の上昇が大きいことから、一旦売られて水準を切り下げると考える。原料炭価格は豪州からの輸入再開が海上輸送市場をタイト化させるため高値維持の公算。
◆貴金属
昨日の貴金属セクターは金銀が下落、PGMが上昇した。コロナの変異種の影響への懸念から金銀はむしろ買われ、PGMは売られていたが懸念が過剰との見方が広がり金銀に売戻しが入り、PGMには買い戻しが入った形。
プラチナはWPICやNornickelなどがプラチナ需給見通しを下方修正したことで上げ幅を削る展開。パラジウムは需給見通しが上方修正されたため株の買い戻しもあって上げ幅を拡大した。
本日も株価の戻りが予想されるため、金銀価格には下押し圧力が掛り、PGMは買いが続くと予想する。その意味ではFRB議長の上院証言やFRB副議長、ニューヨーク連銀総裁のコメントが予定されているため注目。
◆穀物
シカゴ穀物価格は軒並み水準を切下げる動きとなった。市場全体がオミクロン株の影響を過度に懸念しすぎていたとして景気循環系商品が物色される流れを受け、非景気循環系商品である穀物が売られた形。どちらかと言えばテクニカルな売りと考えるのが妥当だろう。
小麦に関しては豪州政府は公式に生産見通しを3,440万トンと従来見通しの3,260万トンから引き上げている。また、キャノーラの生産推定値も+14%の570万トンとしたことで油脂価格の下げ期待を高め、大豆価格などの下落に寄与したとみられる。
ただし、シカゴ穀物在庫はトウモロコシを除けば過去5年平均を下回っており、需給バランスが緩和したわけではない。ただし、豪州は市場は休場だった。
本日はテクニカルなサポートラインが意識されるため、トウモロコシ・大豆は上昇、小麦も下げ幅が大きかったことから一旦買い戻しが入るものと予想する。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【昨日のトピックス】
少し前の統計ではあるが、中国の貿易統計の国別内訳で10月は興味深い内容が確認された。中国が豪州からの石炭輸入を「公式に」再開したためである。
燃料炭に関しては279万トンを輸入している輸入全体が1,839万2,798トンだったためシェアは15.2%と「プレ・コロナ」の時の水準である41.1%(2019年実績)には遠く及ばない。
現在、最も中国が石炭を輸入しているのは近隣でかつ、フレートコストの影響を受けにくいインドネシアとロシア、モンゴルである。「メンツ」を非常に気にする中国がこのように輸入に踏み切っている段階で、中国が発電燃料調達にかなり苦慮していることが伺われる。
また、船賃はかなり低下したが、船賃の上昇を受けて余り遠いところから運んでくると採算性の問題があるためやはり地の利がある豪州からの輸入を増やしたかったのだろう。
同様に、鉄鋼製品の原料である原料炭は78万トンと、全体の438万4,000トンの17.7%に及ぶ。現在の最大輸入相手国はモンゴルだがシェアは27.3%とそれほど高くなく、次いで米国が19.1%となっている。脱炭素、といいつつも米国は原料炭の一大供給国であるため、こういった所では米中は対立を回避している状況だ。
恐らく今後、豪州炭の中国向けの輸出が増加すると期待されるため、当面海上輸送石炭市場は需給がタイト化することになるだろう。ただし冬場が終わり、中国の国内生産が元に戻れば、石炭価格は燃料炭・原料炭とも下落に転じると考えるのが妥当だろう。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
・資源価格上昇によるインフレや、米テーパリング・利上げ観測を背景とした新興国通貨安で新興国が想定以上のペースで利上げを行わねばならず、世界的に金融引き締めモードに転じた場合(リスク資産価格の下落要因)。
・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。
・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。
・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。
・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。
・ロシア・ウクライナ・ベラルーシ・欧州を巡る対立が激化し、軍事的な衝突が発生する場合(景気の減速を通じて景気循環系商品価格の下落要因)。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。
◆個別商品市場中期見通し
---≪エネルギー≫---
【原油価格見通し】
原油価格は、オミクロン株の影響が不透明であり不透明であるが故に移動制限が広く適用される可能性があること、これもまた影響は限定的だが戦略備蓄が協調放出されること、OPECプラスはこの状況でも増産は予定通り、といったニュアンスの発言をしていることが価格を下押しする一方、欧州・アジアの厳冬の可能性が高いこと、それに伴う発電燃料の不足が石油の代替需要を増加させることが価格を下支えすると考える。
中期的には景気が循環的に一時調整の可能性が高いため、やはり冬場の終了に向けて価格水準を切り下げていくという見通しを変更する必要は恐らくない。
原油価格上昇に伴い米国のシェールオイル生産は回復、最大生産地域であり、生産コスト低いるPermianの生産はコロナ前の水準をほぼ回復した。
しかしその他の地域は回復が見られておらず、シェールオイル全体の11月の生産は2020年3月の8.56MBDよりも▲0.79MBD万少ない7.85MBDとなる見込み。
また、リグの稼働も脱炭素などの影響低調で、増産はこれまで掘削したが稼働させていなかった井戸の稼働によるものに止まっており、完成非稼働井戸数はピーク時の半分まで減少している。
まだ、需要を満たすだけの供給が起きていないことは事実である。
期間の長い中期的(来年の春以降)には、経口薬の開発などで恐らくコロナによる移動制限が解除され、輸送燃料需要が回復することからやはり上昇に転じるとみている。
米DOEの2021年供給は95.93MBD(前月95.82MBD)、需要は97.52MBD(97.46MBD)、需給バランスは▲1.59MBDの供給不足((▲1.78MBDの供給不足)。
2022年は供給が101.41MBD(101.31MBD)、需要が100.89MBD(100.96MBD)、需給バランスは+0.52MBDの供給過剰(+0.35MBDの供給過剰)。
価格を下押ししてきたコロナであるが、徐々に「ウィズコロナ」に舵が切られつつあり感染拡大が価格下落に影響するステージは早晩終了するとみられる。
しかし、それはこの冬到来が懸念される第6波までに解消する、とは考え難いため引き続き景気循環系商品価格の下落要因である。
【見通しの固有リスク】
・気温低下による暖房向け燃料需要が増加、ないしは不稼働の液体系燃料発電(ディーゼルや重油)を有する国や地域が再稼働を決定した場合(価格の上昇要因)。
・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。
・米国経済が正常化する中で金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。
・OPECプラスの増産ペースの遅れないしは上流部門投資不足による供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。
価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。
・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合(価格下落要因)。
・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。
1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合
2.中東以外の産油国の生産者の破綻
3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合
4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)
なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。
【石炭価格見通し】
海上輸送石炭価格は高値を維持すると考える。中国政府主導の増産・価格引き下げ策の影響で水準は低下したものの、中国・インドなどの石炭火力中心の地域の石炭在庫水準はまだ低く、冬場の電力需要向けの調達は旺盛で、供給不足に伴い稼働を停止する工場が増加していることから。
中国政府主導による石炭増産は、これから冬が本格化するなかで、主要生産地が中国北部であることを考えると思った通りの増産ができるとは考え難い。
ただ、10月の生産は3億5,709万トンと過去最高水準となった。しかし問題は寒さが厳しくなる11月以降も増産が可能かどうかである。
10月の中国の石炭輸入は前年比+96.2%の2,694万トン(前月+76.1%の3,288万トン)と過去5年レンジを上回っているが国内生産の増加で減速した。国内生産の増加や工場の稼働減速で、国内需給が緩和している可能性がある。
また、注目すべきは10月から豪州からの石炭輸入も「オフィシャルに」11ヵ月ぶりに回復している点である。ここは結局「中国が外交的に豪州に屈した」形。
【見通しの固有リスク】
・今冬はラニーニャ発生が厳冬リスクを高めているが、懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。
・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。
・Nord Stream2の稼働が早期に行われ、天然ガス価格が急落する場合(下落要因)。
・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念(価格の上昇要因。これは既に顕在化)。
・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。
【天然ガス・LNG】
天然ガス価格は中国の経済活動が活発である一方、自然エネルギー供給(英国・スペインの風力、ブラジル・中国の水力など)が減少、火力発電向けの燃料需要が旺盛なこと、石炭価格も高値を維持していること、独新政権のカーボンクレジットに下限(60ユーロ)を付ける方針などを受けて、価格は高値を維持すると考える。
ノルドストリーム2はGazpromがノルドストリーム2AGが100%保有する子会社を設立する方針を示しており、ドイツ当局も審議を再開する方針。ただしこの審議が1~2週間で完了するとは考え難く、恐らく2022年の春頃まで時間が掛ると予想されることから、今冬の供給不足解消には寄与しないと考えられる。
現在、在庫が十分ではなく、在庫積み増しを継続しなければならない状況に変わりはなく、仮にガスプロムが欧州のガスタンクを充填しても欧州在庫は過去5年の最低水準を回復できない見込みであり、やはりこの冬(ないしは冬場の調達に目処が立つ2~3月頃まで)の間は高値が続くと予想される。
引き続き、ラニーニャ現象の影響で厳冬となる可能性がある中、計画停電が行われる可能性がある。この場合、人命のリスクが無視できない。
10月の中国の天然ガス輸入は前年比+8.3%の938万トン(前月+22.6%の1,062万トン)と過去5年レンジを上回っているが、輸入の増加ペースは減速している。工場の稼働減速で国内供給が間に合い始めている可能性はある。
10月の中国のLNG輸入は前年比+22.9%の617万トン(前月+17.8%の675万トン)と過去5年レンジを大きく上回り、構造的な需要増加は続いている。
中国はパイプライン経由での天然ガスは主にトルクメニスタンから行っているが、「シベリアの力」パイプラインが開通して以降、ロシアからの調達も増加している。
足下、ロシアの中国向け輸出は増加しているが、そもそもシベリアの力経由での輸出は2021年で85億立方メートルに増加させる見込みであり、輸出の増加は契約通りとするロシアの主張に沿っている。
しかし9月までの輸出が66.3億立方メートルであり(天然ガス1トン=1,220立方メートルと換算)、単純計算だと2021年の輸出見通しは88億立方メートルと、計画をやや上回る見通し。
ロシアの輸出は圧倒的に欧州向けであるが「多少」半同盟国である中国には配慮していることが窺える。
長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。
【見通しの固有リスク】
・今冬はラニーニャ発生が厳冬リスクを高めているが、懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。
・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。
・Nord Stream2が稼働して欧州のガス需給が緩和した場合(価格下落要因)。
・石炭と同様、「化石燃料であること」を理由に上流部門投資が制限される、あるいは原油生産減少による随伴ガス供給が減少する場合(構造的な価格上昇要因)。
・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念(価格上昇要因)。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが510,586枚(前週比 +417枚)ショートが102,929枚(+8,545枚)ネットロングは407,657枚(▲8,128枚)
Brentはロングが308,522枚(前週比▲6,766枚)ショートが96,702枚(+2,966枚)ネットロングは211,820枚(▲9,732枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は短期的には上昇圧力が強まるが、中期的には調整圧力が強まる展開が予想される。冬場の発電燃料供給は欧州・中国共に十分な状態ではなく供給懸念が強まっていることが背景。
また、ロシアとウクライナの対立を受けた、ロシアに対する制裁強化懸念が強まっており、RusalやNornickelに対する制裁が行われ、供給が減少する可能性も供給面からニッケルやアルミ、銅の価格を下支えしよう。
ただし、中国の不動産市場の調整で減速しており製造業PMIを見るに世界景気も一旦ピークアウトしていると考えられることが中期的に価格を押し下げると考える。
なお、長期的にはインドの人口ボーナス期入り、まだ脱炭素の流れが続いていること、省エネや脱炭素の流れに変わりがないため、供給面・需要面の制限から価格が上昇するという見通しを変更する必要はないと考えている。
また、米政権による大規模なインフラ投資が行われる見通しであることも、鉱物資源需要の増加を通じて非鉄金属価格を押し上げよう。
しかし、バイデン政権支持率低下で、増税を伴う経済対策は受け入れられない可能性は高く、当初予定通りの規模で実行されるかは微妙に。1兆ドルインフラ投資は成立したが、1.75兆ドルの歳入・歳出法案の行方は不透明であり、実行されない可能性も考える必要がある。
【2021年LME金属需給見通し】
銅 生産 24,842千トン(24,947千トン) 需要 25,514千トン(26,790千トン) 需給 ▲672千トン(▲842千トン)
亜鉛 生産 14,103千トン(14,045千トン) 需要 14,172千トン(14,069千トン) 需給 ▲106千トン(▲24千トン)
鉛 生産 12,437千トン(12,381千トン) 需要 12,242千トン(12,168千トン) 需給 +194千トン(+213千トン)
アルミ 生産 67,005千トン(67,716千トン) 需要 67,503千トン(66,444千トン) 需給 ▲498千トン(+1,272千トン)
ニッケル 生産 2,620千トン(2,578千トン) 需要 2,735千トン(2,613千トン) 需給 ▲115千トン(▲34千トン)
錫 生産 413千トン(429千トン) 需要 425千トン(431千トン) 需給 ▲13千トン(+28千トン)
※カッコ内は修正前予想。
【中国重要統計の評価】
10月の中国製造業PMIは49.2(前月49.6)と市場予想の49.7を下回り、閾値である50を下回り、製造業の減速感が鮮明となった。電力供給に伴う生産の減少(49.5→48.4)に加え、新規受注が48.8(前月49.3)と急減速した。価格上昇も消費を冷やしたとみられる。
工業金属に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、供給不足に伴う在庫減少の影響が大きく、新規受注の減少はあったものの水準を切り上げ、足下の原材料・製品需給がタイト化していることを示唆する内容であり、循環的な景気調整に伴う価格下落時の下落余地を限定へ。
価格上昇の背景には投機の買いポジションが高水準にあることも影響。そもそもタイトな需給ファンダメンタルズを背景に投機買いが価格を押し上げている可能性は否定できない。
これまで工業金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは56.9(前月57.5)と2ヵ月連続で減速した。
エネルギー供給不足による経済活動の停滞や、中国政府による不動産セクター加熱沈静化の動きが継続している影響とみられる。
中国恒大集団の債務問題はその氷山の一角で、問題の顕在化はこれからではないだろうか。
10月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲33.5%の41万1,000トン(前月▲43.8%の40万6,000トン)と過去5年平均を下回り続けているが、前月からは季節的な需要が増加している。
一方、銅精鉱の輸入は前年比+6.3%の179万7,000トン(前月▲1.3%の211万1,000トン)と高い水準を維持している。銅価格の上昇もあって精鉱輸入が増加しているようだ。
エネルギー不足の影響で輸入の伸びが減速していたが、中国政府の対策推進によりやや国内生産が回復した可能性はある。ただ、銅製錬事業者の10月の稼働率は86.1%と前月、過去5年の最低水準より低く、まだ回復は確認されていない。
10月の銅スクラップの輸入は前年比+98.1%の13万3,011トン(前月+68.3%の13万4,454トン)。
統計からはまだ中国の工場の生産・稼働の混乱は続いており、正常化はまだ先になると予想される。
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-10月累計で前年比+10.9%(1-9月期+11.8%)と伸びが鈍化した。ただし単月ベースでは+3.5%(+3.1%)とやや伸びが回復している。
電力不足や不動産セクターの減速が影響しているとみられる。
実際、1-10月期の中国不動産開発投資は前年比+7.2%の12兆4,934億元(1-9月期+8.8%の11兆2,568億元)と減速が続いている。
この結果、ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+6.1%(+7.3%)と減速が明確に。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+8.5%(+9.8%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。
ただし、いずれも伸びの減速でありマイナスにはなっていないことから、中国の成長は継続しており需要面は価格を押し上げる可能性がある。価格上昇はこれを満たすだけの十分な供給ができていないことによる。
しかし、需要の伸びが想定を上回っている以上、電力供給などの問題が解決すれば供給が増加し価格の下押し要因となる。
【政策動向・脱炭素】
政策動向・脱炭素の流れは中長期的な材料。米バイデン政権は8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画実施計画。
道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。
さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。
これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。
これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。
この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。
米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高い。
軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど。
2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要する見込み。
【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】
・中国不動産大手恒大集団の破綻懸念が中国の住宅セクターに広がり、中国の不動産バブルがはじける場合(価格下落要因)。
・ロジスティクスに障害が残る中、非鉄金属の偏在が現物プレミアムを押し上げるリスク(北米で顕在化)。
・猛暑や渇水による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。
・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。
チリで議論されている銅のロイヤルティ増税案の詳細は以下の通り。
年内実施予定の選挙結果では課税強化で生産コスト上昇、または減産となる可能性も。
3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。
2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%
年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。
2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。
・メキシコは鉱業改革法の中で、エネルギー転換に必要なリチウムとその他の戦略的鉱物の採掘権をこれ以上容認しないとしており、これに銅やネオジム、プラセオジムなどのレア・アースも含まれる可能性。
・インドネシアが再び低品位ニッケル鉱石の輸出を制限する場合(ニッケル価格の上昇要因)。
・LMEベースメタルではないが、中国ではレア・アースの生産を国有企業に集約して管理する動きが強まっており、今後の自動車セクターの中核となる電気自動車生産のサプライチェーンに大きな影響を与える可能性。
レア・アース大手五鉱稀土は、親会社の中国五鉱集団がアルミ大手のチャイナルコやレア・アースの大産地である江西省政府との間でレア・アース関連資産の戦略的な再編交渉を進めていると発表。
中国政府が2020年および2021年に許可したレア・アースの採掘割当量を見ると、CMRE、チャイナルコ、江西省地方政府傘下企業の3社だけで、中国全土で採掘を許可された(ジスプロシウムなど)重希土類の割当量の67.9%、(ネオジムやセリウムなど)軽希土類の割当量の39.1%を占める。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。
中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている。
【投機筋のポジション動向】
・LME投機筋買い越し金額 前週比▲1.3%の276億ドル(前週 280億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+0.3%の5,703.4千トン(前週 5,685.7千トン)
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は中国政府の発電燃料供給不足と環境改善目的の鉄鋼製品生産減少、中国不動産セクターの調整は継続する可能性が高く、鉄鋼向け需要が減少する見通しであることから水準を切下げる展開を予想。
ただ、現在の鉄鋼製品価格は「対鉄鉱石で割高、対原料炭対比で割安」であり、この状況が安定化した場合、「鉄鋼製品価格下落、鉄鉱石価格上昇、原料炭価格下落」となるシナリオの蓋然性が高い。
しかし、既に鉄鉱石在庫は絶対水準・在庫日数水準でも過去5年の最高水準を上回っており、現状、製鉄所の稼働停止が続くのであれば「もう要らない状態」である。
となると、当面は鉄鉱石価格は低迷を余儀なくされ、製鉄所の稼働がエネルギー問題などが解消して再稼働するまでは低迷し、その後、割安になりすぎた水準が訂正される中で上昇に転じる、と考えるのが妥当ではないか。
また、来年は米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加が期待されることも、鉄鉱石価格のさらなる下落を抑制すると考える。
なお、鉄鉱石先物の期先の価格が限界生産コストの目安として意識されるが、100ドル程度だった期先の水準は70ドル台まで低下しており、中期的な価格の目線はかなり低下した状態にある。
原料炭については中国の国内生産の回復と、豪州からの輸入再開で徐々に中国の国内需給が緩和すると見られるため、長期的には下落に転じると考える。
しかし足下は豪州の中国向け輸出再開を受けて海上輸送市場が逼迫すると見られ、海上輸送炭価格は一旦上昇余地を探る動きに。
【中国の政策動向】
中国共産党は2021年から始まった5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。今のところ昨年の生産量を超えないようにする、というのが中国政府の目標。
最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられている。
これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。
中国3番目の鉄鋼ハブである山東省は、2021-2025年の5ヵ年計画で、素行の環境上限(一般炭消費量535キログラム、2020年は547キログラム)、硫化物排出を0.3キログラム(2020年 0.85キログラム)、窒素化合物排出を0.6キログラム(1.6キログラム)、水の使用量を2.85立法メートル(3立方メートル)に低減させる計画。
粗鋼生産が減少すれば、鉄鉱石の在庫水準の指標である在庫日数も、分母が小さくなるため上昇が予想され、鉄鉱石価格の下落要因となる。これは原料炭も同様。
【中国重要統計の評価】
10月の中国鉄鋼業PMIは総合指数は38.30(前月45.0)と大幅に悪化した。これはエネルギー供給不足による中国政府による不動産市場の規制強化や、エネルギー供給不足の影響が消費にも及び新規受注が減速(39.0→28.2)、輸出向け新規受注(39.5→38.7)と減速した影響によるもの。
価格に対する説明力が高い新規受注・完成品レシオは0.92(前月1.12)と急減速して需給は緩和、新規受注原材料レシオも0.76(1.00)の大幅な減速となった。当面、鉄鋼製品・鉄鋼原料価格には需給ファンダメンタルズ面で下押し圧力が掛りやすい展開が続くと予想される。
ただし、電力供給が回復すれば鉄鋼業の稼働も回復、稼働停止中に失われたペントアップ需要が需要と価格を押し上げると考えられ、米経済対策が実施されることも考えると、下落余地も限定か。
これまで工業金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは56.9(前月57.5)と2ヵ月連続で減速した。
エネルギー供給不足による経済活動の停滞や、中国政府による不動産セクター加熱沈静化の動きが継続している影響とみられる。
中国恒大集団の債務問題はその氷山の一角で、問題の顕在化はこれからではないだろうか。
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-10月累計で前年比+10.9%(1-9月期+11.8%)と伸びが鈍化した。ただし単月ベースでは+3.5%(+3.1%)とやや伸びが回復している。
電力不足や不動産セクターの減速が影響しているとみられる。
実際、1-10月期の中国不動産開発投資は前年比+7.2%の12兆4,934億元(1-9月期+8.8%の11兆2,568億元)と減速が続いている。
この結果、ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+6.1%(+7.3%)と減速が明確に。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+8.5%(+9.8%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。
ただし、いずれも伸びの減速でありマイナスにはなっていないことから、中国の成長は継続しており需要面は価格を押し上げる可能性がある。価格上昇はこれを満たすだけの十分な供給ができていないことによる。
しかし、需要の伸びが想定を上回っている以上、電力供給などの問題が解決すれば供給が増加し価格の下押し要因となる。
【中国鉄鋼製品輸出入・在庫動向】
10月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲41.6%の112万7,000トン(前月▲56.5%の125万6,000トン)と低迷し、過去5年平均を下回った状態が続いている。
10月の中国粗鋼生産は前年比▲24.5%の7,158万トン(前月▲21.2%の7,375万トン、8月▲13.2%の8,324万トン、7月▲8.4%の8,679万トン、6月+1.5%の9,388万トン、5月+6.6%の9,945万トン)と減速が鮮明になっている。
一方、10月の鉄鋼製品の輸出は前年比+11.3%の449万7,000トン(前月+28.5%の492万トン)と前月から前年比の伸びを縮小させ過去5年平均を下回る水準。やはり国内供給を優先させていることが窺える。
なお、中国の鉄鋼製品需要は鈍化しているとみられるが、在庫水準は前週比▲43万6,000トンの1,177万トン(過去5年平均 858万トン)と例年を上回るが季節的な減少が続いている。
なお、週間ベースの在庫減少は例年(過去5年平均)を下回りつつある。電力供給や石炭供給の回復、景気の減速全ての複合要因と考えられる。
【中国鉄鉱石輸出入・在庫動向】
10月の鉄鉱石の輸入は前年比▲14.2%の9,160万トン(前月11.9▲11.9%の9,560万トン)と減速した。中国政府の製鋼所稼働制限の動きと在庫の積み上がりで輸入が減速している。
鉄鉱石港湾在庫は前週比+70万トンの1億5,090万トン(過去5年平均1億2,988万4,000トン)、在庫日数は37.6日(過去5年平均 30.3日)と数量ベース・日数ベースでも過去5年の最高水準を上回っており、需給が緩和していることは明確で価格の下押し要因となる。
【中国原料炭輸出入・在庫動向】
原料炭は中国の生産活動回復が継続しているが、前年比の伸び鈍化が明確になってきたため(中国政府の方針通り)、価格は下落余地を探る動きになると考える。
また、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることも、海上輸送原料炭価格を下押ししよう。
とは言え、環境規制強化の流れで世界的に原料炭供給を増加させられる地域が限定されることから、下落余地も同様に限定される都見るのが妥当だ。
10月の中国の原料炭輸入は前年比▲25.7%の438万4,018トン(前月▲35.3%の434万6,477トン)と回復しているが、過去5年レンジを下回った状態が続いている。ただし注目すべきは豪州からの輸入が回復している点である。「背に腹はかえられない」状態に中国はおかれていると言えるだろう。
中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比+11万トンの206万トンと過去5年の最高水準である223万トンに迫っている。
在庫日数は9.6日と、過去5年の最高水準である9.2日を上回っており、鉄鋼製品生産がこの水準で続けば十分な在庫が確保されていることになる。
【見通しの固有リスク】
・中国の不動産セクター減速が、建材需要を減少させる可能性(鉄鋼製品価格の下落を通じて鉄鋼原料価格の下落要因)。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合(価格上昇要因)。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク(価格上昇要因)。
---≪貴金属≫---
【貴金属価格見通し】
【金】
金はパウエル議長再任に伴う「インフレ対策」強化継続観測を受けて水準を切り下げる展開を予想。ただし、足下の物流の目詰まりやエネルギー価格高止まりによるインフレに歯止めが掛っておらず、実質金利に下押し圧力が掛っているため、調整余地も限定されると考える。
米FRBはテーパリング開始を宣言、来年6月には終了するが、テーパリングのペースを早めて利上げも早期に、となる可能性も出てきた。結果、金価格には下押し圧力が掛りやすい展開は継続すると考える。
5年期待インフレ率、5年後5年期待インフレ率共に上昇しており、市場は想定以上にインフレ恒常化を懸念していると考えられる。
また、もう少し長い視点でこの15年を見たときに、10年期待インフレ率が名目金利を上回るのはQE1が行われていた2010年以降2回目であり、さらに2000年以降でも期待インフレ率が名目金利を上回っていたことはない。
この状況を勘案すると、11月のFOMCでは「今は利上げはない」との議長説明だったが、今後利上げ早期に行われる可能性は低くないと考える。このことは貴金属価格の下押し要因となろう。
一方で供給不安を背景に上昇している原油価格も冬場が終れば下落に転じる可能性が高いことから、どちらかと言えば実質金利は上昇する可能性が高い。
なお、過去5年平均を基準にすると名目金利1bpに対する金価格の感応度は±3ドル弱であり、米10年金利が現在の水準から30bp上昇すれば▲90ドルの下落圧力となる(60bpで▲180ドル)。
現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,692ドル、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は154ドル。
リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で130ドル、6ヵ月で160ドル、1年で170ドル、5年で180ドルとなっている。
なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。
【銀】
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、77.9倍。過去1年を基準にすると71倍、5年では80倍、2000年以降では66倍程度が妥当。
今後、さらに金銀レシオが低下するには、工業需要の増加が必須。今後、IT化の進捗でエレクトロニクス向けの需要が増加することが必要。
太陽光パネルの増設は米中対立の激化で進まないと見られたが、支持率低下にあえぐ米バイデン政権が「協調できるところでは協調する」という方針にトーンダウンしたため、今後、太陽光向けの需要は増加するのではないか。
なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。
(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%
金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%
【PGM】
プラチナ価格は自動車の半導体供給不足の影響で急落していたが、半導体供給が回復しつつあるため、来春以降は需要増加で価格は上昇圧力を強める展開が予想される。
ただしそれでも需給バランスは投機を除けば供給過剰であり、投機筋の「思惑」が価格を左右しやすい。足下、パラジウムからプラチナへの「触媒再シフト」が見られているため、底堅い推移となろう。
パラジウムは半導体供給低迷が自動車生産に影響を与える状況が来春ぐらいまでは続く可能性があるため、当面低水準での推移。しかし自動車販売が回復すれば再び高値圏へ。
10月の米自動車販売は年率1,299万台(市場予想1,218万台、前月1,250万台)と回復。目先はパラジウム価格の上昇要因となりやすい。
中国の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で以下の通りであり、明らかに伸びが減速している。半導体供給不足に加え国内景気の伸び減速が影響。
10月 前年比 ▲9.0%の233万3,000台9月 ▲19.5%の206万6,000台8月 ▲17.4%の179万8,841台7月 ▲11.8%の186万3,550台。6月 ▲12.4%の201万5,309台5月 ▲3.0%の212万7,000台4月 +8.8%の225万台3月 +76.5%の252万5,000台2月 +371%の146万台1月 +30%の250万台
調査会社のオートフォーキャスト・ソリューションズによれば半導体不足による供給減少による減産が9月26日時点で▲893万4,000台に上るとし、2021年の減産規模は▲1,030万台に達するとみている。これは昨年の販売台数(7,700万台)の13.4%に相当する。
この回復がある、ないしは供給側の混乱(南アフリカ)による生産減少がなければ、PGM価格は低水準で推移しよう。
【見通しの固有リスク】
・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。
・米国をはじめとする先進諸国が金融引き締め方向に舵を切っており、アフリカや中南米、東南アジア、東欧など新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
環境重視型社会へのシフトが加速、「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが326,409枚(前週比 ▲34,120枚)、ショートが91,998枚(▲8,751枚)、ネットロングは234,411枚(▲25,369枚)、銀が68,478枚(▲5,466枚)、ショートが28,373枚(+54枚)、ネットロングは40,105枚(▲5,520枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが30,454枚(前週比 ▲2,812枚)ショートが17,319枚(+5,066枚)、ネットロングは13,135枚(▲7,878枚)
パラジウムが2,992枚(▲116枚)、ショートが4,758枚(▲388枚)ネットロングは▲1,766枚(+272枚)
---≪農産品≫---
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格は堅調な推移になると考える。冬場のラニーニャ現象の発生(北半球の天候相場は終了も、南半球の天候相場入り)が懸念されていることや、エネルギー価格の急騰により代替エネルギー需要が高まることが材料。
足下、特に黒海周辺の生産減少、政治的な対立による供給懸念が意識されている。
10月の中国の大豆輸入は前年比▲41.2%の611万トン(前月▲29.7%の688万トン)と大幅に減少し、過去5年レンジを下回った。
中国の大豆港湾在庫は過去5年レンジの最高水準は下回っているが、高い水準を維持している。)
Locust Watchでは中東・北アフリカが小雨であるため、群れの繁殖煮適していないことから被害への懸念は後退している。
https://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/211111update.jpg
【見通しの固有リスク】
・ラニーニャ現象発生による投機筋の買い圧力の強まり(価格の上昇要因)。
・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。
・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
【米農務省需給報告データ】
・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)
・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)
・11月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 177.0Bu/エーカー(176.9、176.5)大豆 51.2Bu/エーカー(51.9、51.5)小麦 44.3Bu/エーカー(NA、44.3)
・11月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億6,200万Bu(150億4,996万Bu、150億1,900万Bu)大豆 44億2,500万Bu(44億8,257万Bu、44億4,800万Bu)小麦 16億4,600万Bu(NA、16億4,600万Bu)
・11月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億Bu(25億Bu)大豆 20億5,000万Bu(20億9,000万Bu)小麦 8億6,000Bu(8億7,500万Bu)
・11月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 14億9,300万Bu(14億8,361万Bu、15億Bu)大豆 3億4,000万Bu(3億6,611万Bu、3億2,000万Bu)小麦 5億8,300万Bu(5億8,188万Bu、5億1,500万Bu)
・9月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 12億3,600万Bu(41億1,100万Bu)大豆 2億5,600万Bu(7億6,900万Bu)小麦 17億8,000万Bu(8億4,500万Bu)
・11月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 2,089万ha(2,086万ha、2,087万ha)大豆 4,027万ha(4,042万ha、3,992万ha)
・11月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億1,671万トン(1億1,929万トン、1億1,631万トン) 単収 5,587kg/ha(5,717kg/ha、5,575kg/ha)大豆 1億4,201万トン(1億4,415万トン、1億4,075万トン) 単収 3,526kg/ha(3,569kg/ha、3,526kg/ha)
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが526,890枚(前週比 +22,039枚)、ショートが109,801枚(+4,136枚)ネットロングは417,089枚(+17,903枚)
大豆はロングが143,021枚(+10,657枚)、ショートが76,807枚(▲8,640枚)ネットロングは66,214枚(+19,297枚)
小麦はロングが139,196枚(+7,029枚)、ショートが97,707枚(+2,301枚)ネットロングは41,489枚(+4,728枚)
◆本日のMRA's Eye
「オミクロン株のインフレ資産価格への影響」
波乱要因「オミクロン株」の出現
南アフリカでコロナウイルスの変異型ウイルス、オミクロン株(ο株)が発見され、周辺諸国や欧州、北米にも感染が拡大しており同国からの人流を制限する措置を行う国が増加、再びロックダウンへの懸念が強まっている。
今回の変異種は感染とワクチンの効果に大きな影響を及ぼすスパイクタンパク質が大幅に変異しており、感染を防御する抗体をすり抜け、抗体カクテルの治療薬が効き難くなる可能性や感染性を高める可能性がある新型種である可能性が指摘されている。
過去、コロナの発生関連で最も市場が大きく変動したのはWHOがパンデミック宣言を行った時であるが、変異種に関する反応で最も大きかったのがデルタ株の発生によるもの(感染性の高さ、入院のリスクが高い)で、それ以外はワクチンが開発されて以降は比較的影響が限定されてきた。
今回も同様に2週間程度で解析が終わり、新しいワクチンの提供は年明け頃にはファイザー、モデルナとも大量に供給が可能であるとの見通しを示しているため、今回の変異種の影響は限定されると見られる。しかし、変異が大きく、未知の部分も多いため仮に致死性が高いウイルスだった場合、景気循環系商品価格への影響は小さなものにならない可能性があり、景気の下振れリスクは無視できない。
原油価格上昇とインフレと
一方、一向にインフレの加熱が沈静化しない米国は、11月のFOMCでテーパリング開始を宣言、中旬から開始された。このスケジュール通りであれば来年の6月頃にテーパリングは終了し、利上げが視野に入る。ところが原油価格が高止まりしているため、市場は既に3回程度の利上げを意識し始めている。
米国のインフレを地区ごとに見ると沿岸部は相対的にインフレ率が低く、内陸部ほどインフレ率が高いことが分る。これは沿岸部から内陸部への「輸送コスト」が影響している。
米国内の輸送のシェアは圧倒的にトラック輸送が主体であり、トラック輸送のコストは明確にディーゼルオイルの価格に連動しているため、この数ヵ月の原油価格上昇がインフレを助長していることは明らかだ。そのため、米政権は原油価格・石油製品価格の引き下げに躍起になっている。
原油価格は恐らく冬が終れば下落するとみられるが、年末商戦を控えて物流やインフレの懸念を払拭する必要が米政権はあるが、打てる手は限られているため、場合によるとリスクを取っても早期の利上げをFRBに促す可能性もありえる。
しかし話を難しくしているのが、オミクロン株の発生である。これによって人の移動が制限されて景気減速が加速、「意図せざるテーパリングペースの鈍化」が発生した場合、想定外のリスク資産価格上昇・インフレ再燃の可能性も想定する必要があるためだ。
金価格への影響は
このような環境下、金価格は米国の金融政策変更観測を織り込み、「短期金利が上昇し、長期金利が低下する」展開となったため、再び上昇余地を探っている。
この時、実質金利を構成する期待インフレ率は、1.想定外の厳冬、2.それに伴う石油燃料への回帰、3.その状況においても「脱炭素」圧力で米国内の原油・ガス増産が遅れていること、から上昇しており、消費者物価指数をコア指数ベースでも押し上げている状況。
結果、金価格の構成比率としては価格に対する説明力が高い米10年実質金利要因は、過去1年平均で90.5%程度であるが、足下は91.5%とやや上昇している。
足下のインフレを受けて米政府は戦略備蓄の放出や、場合によってはテーパリングのペース加速や早期利上げを行う可能性が意識されているため、徐々に金基準金利価格には下押し圧力が掛り、春先にかけて価格は下落する可能性が高い。
ところが上述の通り、今のところ情報収集のステージにあるがオミクロン株の経済への影響が不透明であり、仮にオミクロン株が経済活動の停滞に繋がれば、緩和解除ペースを緩やかにせざるを得ず、金価格を高止まりさせるだろう。
◆主要ニュース
・10月日本小売売上高 前月比+1.1%(前月+2.8%)前年比+0.9%(▲0.5%)
・10月日本百貨店スーパー販売額 前年比+0.9%(前月▲1.3%)
・11月ユーロ圏景況感指数 117.5(118.6)
鉱工業景況感 14.1(14.2)
サービス景況感 18.4(18.0)
・11月ユーロ圏消費者信頼感改定 ▲6.8(速報比変わらず、前月改定 ▲4.8)
・11月独消費者物価指数速報 前月比+0.3%(前月+0.5%)
前年比+6.0%(+4.6%)
・10月米中古住宅販売仮契約 前月比+7.5%(前月▲2.4%)
前年比▲4.7%(▲7.3%)
・11月ダラス連銀製造業活動 11.8(前月14.6)
生産 274(18.3)
新規受注 19.6(14.9)
受注残 17.4(20.9)
入荷遅延 21.7(25.9)
完成品在庫 3.2(▲11.1)
雇用者数 28.5(28.3)
・中国、アフリカに対して10億回分のワクチンを供与へ。対アフリカ外交を強める。
・日本政府、外国人の入国を1ヵ月停止、オミクロン株の影響を受けて先行措置。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・ロシア ノバク副首相、「OPECプラス、オミクロン株の影響について今週協議。」
・JPモルガン(株式アナリスト)、「Brentは2022年に125ドル、23年には150ドルに達する。来年の「真」の余剰生産能力は200万バレルであり、コンセンサス予想の480万バレルを下回る。」
・Citi、「Brentが70ドル台半ばを維持する場合、40万バレルの増産をすると予想。直近の集計では40万バレルの増産計画に対して26万2,000バレルしか増産しておらず、40万という数字に実質的な意味はない。2022年の前半は在庫の取り崩しから大幅な積み増しヘの転換が見られる。」
・米国とイラン、5年振りに核協議。
・ロシア、サウジアラビア、「オミクロン株の影響について産油量の調整を急いで決定する必要はない」
・米エネルギー省担当顧問、「市場の影響が大きな措置を打ち出すことを我々は望んでいた。米経済に必要ならそれを再び行える能力と柔軟性があると考えている。」
【メタル】
・日本製鉄、「自動車メーカーなどの鉄鋼製品ユーザーとの交渉で決まる「紐付き価格」について、2021年10月~2022年3月の価格は値上げとなることで概ね合意が得られた。」
・Nornickel、「2021年のニッケル需給は▲14万9,000トンの供給不足(前回見通し+5万2,000トンの供給過剰)。バッテリー部門とステンレス鋼需要の想定を上回る回復、インドネシアのNPIキャパシティの拡大が想定よりも送れていることが背景。2022年は+5万9,000トンの供給過剰に転じる見込み。パラジウム需給は2021年下半期の自動車市場の回復を受けて2022年には▲0.3百万オンスの供給不足を予想。2021年は▲0.2百万オンスの供給不足。プラチナは2022年は1百万オンスの供給過剰、2021年は0.9百万オンスの供給過剰。2021年~2030年の長期CAPEXプログラムは350億ドル(従来計画290億ドル)に引き上げ、2030年以降の金属生産目標をニッケルは+25%~+35%、PGMは+50%~+60%、銅を+25%~+35%、各々引き上げた。」
・コンゴの鉱山に武装勢力が侵入、中国人2名を殺害し10名以上が拉致される。
・Vale、2022年の銅生産見通しを330千トン~355千トン、2023-2026年の生産見通しを390千トン~420千トン、2027年以降は450千トンの計画。2021年は295千トン~300千トンで変わらず。
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +7.95%/ +101.12%
2.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +6.29%/ +318.51%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.69%/ ▲9.00%
4.NYM灯油 ( エネルギー )/ +2.75%/ +45.78%
5.NYM WTI ( エネルギー )/ +2.64%/ +44.17%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲10.89%/ +91.18%
65.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲5.60%/ +47.13%
64.TCM灯油 ( エネルギー )/ ▲5.15%/ +42.41%
63.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲4.10%/ +82.34%
62.SHF亜鉛 ( ベースメタル )/ ▲2.95%/ +9.61%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :35,135.94(+236.60)
S&P500 :4,655.27(+60.65)
日経平均株価 :28,283.92(▲467.70)
ドル円 :113.53(+0.15)
ユーロ円 :128.19(▲0.13)
米10年債 :1.50(+0.03)
中国10年債利回り :2.86(+0.01)
日本10年債利回り :0.08(+0.00)
独10年債利回り :▲0.32(+0.02)
ビットコイン :58,316.89(+1975.00)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :33.16(▲6.27)
エネルギー :59.83(▲33.6)
ベースメタル :24.67(+0.46)
貴金属 :26.38(▲1.23)
穀物 :22.04(+0.64)
その他農畜産品 :30.17(+0.11)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :59.53(+1.02)
Brent :51.76(+0.22)
米天然ガス :66.85(▲1.95)
米ガソリン :58.95(+0.72)
ICEガスオイル :57.62(+1.74)
LME銅 :20.98(+0.44)
LMEアルミニウム :36.30(+0.21)
金 :18.91(+0.32)
プラチナ :29.54(▲4.5)
トウモロコシ :17.65(+0.25)
大豆 :18.91(+0.32)
【エネルギー】
WTI :69.95(+1.80)
Brent :73.45(+0.73)
Oman :71.00(▲0.39)
米ガソリン :207.71(+4.77)
米灯油 :215.21(+5.76)
ICEガスオイル :616.75(+12.50)
米天然ガス :4.85(▲0.59)
英天然ガス :236.04(+13.96)
【貴金属】
金 :1784.60(▲17.99)
銀 :22.90(▲0.25)
プラチナ :966.36(+8.08)
パラジウム :1796.06(+30.78)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,610(+90:141B)
亜鉛 :3,200(▲17:125B)
鉛 :2,315(+56:42B)
アルミニウム :2,643(+24:7.5B)
ニッケル :20,150(+75:200B)
錫 :39,450(+250:1000B)
コバルト :62,885(▲16)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9600.00(+155.00)
亜鉛 :3202.00(+19.00)
鉛 :2284.00(+8.00)
アルミニウム :2650.00(+58.00)
ニッケル :20190.00(+225.00)
錫 :39275.00(+525.00)
バルチック海運指数 :2,767.00(+89.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :99.57(▲1.67)
SGX鉄鉱石 :95.17(+0.48)
NYMEX鉄鉱石 :94.71(+0.27)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :368.5(▲0.08)
大連原料炭先物 :400.12(+0.33)
上海鉄筋直近限月 :4,217(▲83)
上海鉄筋中心限月 :4,128(▲56)
米鉄スクラップ :620(±0.0)
【農産物】
大豆 :1241.50(▲11.25)
シカゴ大豆ミール :347.70(▲8.50)
シカゴ大豆油 :58.26(▲0.76)
マレーシア パーム油 :5282.00(+13.00)
シカゴ とうもろこし :581.00(▲5.75)
シカゴ小麦 :807.50(▲18.00)
シンガポールゴム :211.10(+3.10)
上海ゴム :15045.00(▲105.00)
砂糖 :19.19(▲0.16)
アラビカ :233.85(▲10.00)
ロブスタ :2258.00(▲50.00)
綿花 :116.65(+0.05)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :72.40(▲0.80)
シカゴ生牛 :136.93(▲1.18)
シカゴ飼育牛 :165.73(▲1.43)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。