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欧州発リスク回避は広がるか
  • MRA外国為替レポート

2021年11月22日号

◆先週の市場総括


先週は、週前半、強い米国の経済指標を受けて米長期金利が上昇しドルを押し上げた。ドル円相場は113円90銭で始まり114円台に乗せると水曜日には一時115円ちょうど近辺にドル高円安が進んだ。

一方、欧州では週初から感染拡大が懸念材料となり景気回復停滞への懸念からユーロが軟調。ドル全面高もありユーロドル相場は1.14台半ばから1.13近辺に下落した。

そうしたなか週末にはオーストリアが22日から全土ロックダウン規制を行うことを決定。ドイツの感染状況も悪化しておりロックダウンの可能性が取り沙汰されて欧州景気不安が一段と広がった。

ユーロは急落。ユーロドル相場は一時1.1250に下落して引けは1.1280。リスク回避ムードのなか円買い戻しが強まり、ユーロ円相場は週初に130円台半ばだったが週末は130円近辺から128円ちょうどへ急落。引けは128円60銭。

ドル円相場は円買い戻しの勢いが勝り一時113円60銭に下落。ただ持ち直して週末の引けは114円ちょうど。

米10年債利回りは1.64%に上昇していたが週末はリスク回避による米債買いで1.55%近辺に低下。ただ当局者が量的緩和縮小の加速や早期利上げへの備えに言及したことで2年債利回りは0.5%台を維持した。

米国株はまちまち。NYダウは下落。ナスダックは長期金利上昇一服を好感して上昇。日経平均は経済対策への期待が支えとなりながらも3万円の大台を前に利益確定売りが優勢で上値も重くもみ合い。引けは29,750円近辺。

月曜日の東京市場では日経平均が3営業日続伸。企業決算発表が一巡し好決算銘柄に買いが入った。

発表されたGDPは弱い数字だったが、足元で感染拡大が鎮静化していることで経済正常化・景気回復期待が支え。ただ3万円の大台を前に利益確定売りが上値を抑えた。

前週末比の上昇幅は一時+250円に達したが、引けは+166円高の29,766円。

7-9月期GDPは前期比年率▲3.0%。個人消費は▲1.1%、設備投資は▲3.8%。

中国では10月の主要経済指標が発表された。鉱工業生産は前年同月比+3.5%、小売売上高は+4.9%、と上昇率はいずれも前月からやや加速。都市部固定資産投資は+6.1%で減速した。

ドル円相場は113円90銭で始まり一時114円台に乗せたが概ね113円80銭~114円ちょうどで底固く推移。欧州市場では113円80銭~90銭。

ユーロ円相場は130円40銭中心にもみ合い、夕刻には一時60銭に上昇したが押し戻されて130円30銭~40銭で推移した。ユーロドル相場は1.1450で始まり1.1460でもみ合い、欧州市場に入って1.1450近辺。その後米国市場では大きくユーロ安ドル高が進んだ。

欧州では感染再拡大が深刻化。ドイツでは医療崩壊が懸念される状況となり景気回復が停滞するとの懸念が広がっている。

ECBラガルド総裁は、中期的なインフレリスクは低く、2022年に利上げの条件は満たさない、と述べた。

一方、米国ではNY連銀製造業景気指数(11月)が30.9と前月19.8から大きく上昇し予想20.2を上回った。

ユーロは全面安。ユーロドル相場は日本時間0時から急落し1.1360近辺へ。ユーロ円相場も130円の大台を割り129円70銭に下落した。ドル円相場は逆に上昇して114円20銭をつけた。米10年債利回りが1.62%に大きく上昇してドルを支えた。

米国株は横ばい。朝方上昇したものの長期金利上昇が嫌気された。NYダウは前週末比▲12ドル安の36,087ドル。ナスダックは▲7ドル安の15,853ドル。

火曜日の東京市場では日経平均が小幅上昇。米国株が金利上昇にもかかわらず底固く推移したことで安心感。景気敏感株の上昇が目立ち、ハイテク株にも買い。

米中首脳会談が無難に終了。なお3万円の大台を前に利益確定売りが上昇を抑制。引けは前日比+31円高の29,808円。

ドル円相場は114円10銭~20銭で始まり一時30銭に上昇したが、概ね114円20銭を中心に上下した。ユーロ円相場は129円70銭で始まり130円10銭に上昇するも反落。129円90銭~130円ちょうどで推移。ユーロドル相場は1.1370~80で推移した。

米国市場に入るとドルが全面高。ユーロが軟調。円も弱かった。

発表された米国の経済指標が軒並み強くドルを押し上げた。小売売上高(10月)は前月比+1.7%と前月+0.7%に続き3ヵ月連続でプラス。予想+1.4%を上回った。

鉱工業生産(10月)は前月比+1.6%と前月▲1.3%からプラスに転じ、予想+0.7%を大きく上回った。3月以来の高い伸び。設備稼働率も前月75.2%から76.4%に大きく上昇した。

米10年債利回りは1.637%に上昇。2年債利回りは0.517%。

ドル円相場は114円30銭から60銭に上昇。その後やや反落する場面もあったが114円80銭近辺で高値引け。ユーロドル相場は1.1370近辺から1.1320へ下落した。

ドルインデックスは96ポイント目前に上昇。ユーロ円相場は方向感なくやや振れ幅大きく129円70銭~130円10銭で上下し引けは129円90銭。

米国株は堅調。小売売上高の数字が強かったことで来週以降の年末商戦への期待が高まった。NYダウは一時+200ドル上昇したが引けは上げ幅を縮めて前日比+54ドル高の36,142ドル。ハイテク株も強く+120ドル高の15,973ドル。

水曜日の東京市場では日経平均が5営業日ぶりに反落。幅広い銘柄に利益確定売りが広がった。ドル高円安が進み輸出企業には好材料とされたが、原材料価格・コスト上昇が企業業績を下押すとの懸念も強まり、素材や空運などが売られた。

設備投資の先行指標である機械受注(9月)が前月比±0.0%と、前月▲2.4%から+1.7%へプラスに転じるとの予想に反する弱い数字だったことも嫌気された。

朝方発表された日本の貿易収支は▲670億円の赤字と▲3,000億円程度の赤字予想を下回ったが3ヵ月連続の赤字。輸出額は前年同月比+9.4%と伸び悩んだ。輸入額は+26.7%と前月からは鈍化したが引き続き高水準。

ドル円相場は114円80銭で始まり朝方115円目前まで上昇。その後は反落して80銭近辺でもみ合いとなった。

ユーロ円相場は129円90銭で始まり130円10銭をつけたが昼過ぎに129円50銭に急落。ユーロドル相場が1.1320で始まり1.13を割ったことでストップロスのユーロ売りが強まった。ユーロドル相場は1.1270に急落。その後ユーロ売りは一巡し、ユーロドル相場は1.1310近辺、ユーロ円相場は129円90銭~130円ちょうどに戻した。

欧州市場、米国市場では円買い戻しが強まった。ドル円相場が115円でのオプションや実需のドル売り円買いに阻まれ、投機筋の利益確定、円買い戻しを誘発した。

米国時間朝方にはドル円相場は114円70銭、ユーロ円相場は129円70銭に下落。さらに米国時間に入ると114円ちょうど、129円10銭へ下落した。その後円買いは一服してドル円相場は114円10銭台、ユーロ円相場は129円20銭近辺で引け。

ユーロドル相場は方向感なく1.1330に上昇した後は1.1300~30で上下し引けは1.1320。

米10年債利回りはやや低下して1.594%。2年債利回りは0.499%。原油価格WTIが78.36ドルに下落。

IEA国際エネルギー機関が、米国で原油価格高騰から生産が増加しており11月から12月にかけて供給が増加するとの予測を発表したことに反応した。

米国株は主要3指数がそろって反落。素材、金属、エネルギー関連株が安かった。全般に利益確定売りが優勢で、長期金利低下も支えとならず。NYダウは前日比▲211ドル安の35,931ドル、ナスダックは▲52ドル安の15,921ドル。VIX指数は+0.74ポイント上昇して17.11。

木曜日の東京市場では日経平均は小幅安。前日に米国株が下落したことで売り先行。寄付きは29,550円近辺で安寄りした。その後もこのところの上昇、3万円の大台前で利益確定売りが出やすい環境で軟調。29,400円近辺に下落した。

ただ午後に政府の経済対策が55.7兆円規模と40兆円の予想を上回ると報じられたことで反発。29,700円に上昇した。ただ買いは続かず引けにかけて下落し、結局前日比▲89円安の29,598円。

為替相場は全般に方向感なく上下。ドル円相場は114円10銭で始まり早々に20銭台に上昇したが昼前には113円90銭に下落。ただ114円割れでは底固く、114円20銭台に反発した後、欧州市場にかけては114円ちょうど~20銭で上下した。

ユーロ円相場は129円20銭~30銭近辺で終始もみ合い。ユーロドル相場は1.1320で始まり一時1.1340に上昇する場面もあったが1.1320割れ。その後欧州時間に入るとユーロが対円、対ドルで上昇。米国市場にかけて一貫してユーロ高となった。

ユーロ円相場は129円90銭に、ユーロドル相場は1.1370に上昇してNYの取引を終えた。ドル円相場は114円20銭近辺でのもみ合いから20銭~40銭で上下。引けは114円20銭台。

その他通貨では、前日に強い消費者物価指数で利上げ観測が強まったポンドは堅調。この日はNZ準備銀行がインフレ見通しを公表し高い数字を見込んでいたことから来週の会合での利上げを織り込みNZドルが上昇。豪ドルも堅調となった。

一方、新興国通貨は軟調。トルコ中銀はこの日3ヵ月連続の利下げを実施。インフレ高進にもかかわらず景気重視の大統領の利上げ要請に応じた。一方ブラジル中銀は利上げを実施した。

米国株はまちまち。個別決算に応じて上下。NYダウは前日比▲60ドル安の35,870ドル。ナスダックは+72ドル高の15,993ドル。VIX指数は+0.48ポイント上昇して17.59。

原油価格WTIはやや上昇して79.01ドル。発表されたフィラデルフィア連銀製造業景気指数(11月)は39.0と前月23.8から大きく上昇し予想24.0を上回った。週次の失業保険新規申請件数は268千件と前週と概ね変わらず。一方、継続受給者数は2,080千件と2百万件の大台を切る目前まで減少した。

金曜日の東京市場では日経平均が反発。米国でハイテク株が堅調となったことで半導体関連株が買われた。但し物色は広がらず。欧州での感染拡大への警戒感も重石となった。

寄付き後に29,750円近辺に上昇し、後場はもみ合い。引けは前日比+147円高の29,745円。ドル円相場は114円20銭台で始まり堅調。40銭に上昇し夕刻までは114円30銭~40銭で上下した。ユーロ円相場は129円80銭~90銭でもみ合い。

ユーロドル相場は1.1370で始まりやや押されて1.1350~60で推移した。ただ欧州市場に入って日本時間18時過ぎからユーロが急落した。

オーストリアが22日から全土でロックダウンを実施すると発表。隣国ドイツのロックダウン警戒感が広がった。

ドイツはワクチン未接種者への行動規制強化へ。ドイツ保健相は、感染状況は極めて深刻であり、ワクチン接種した人も含めてロックダウンを排除せず、と述べた。

欧州景気回復への懸念がさらに強まり欧州株は下落。投資家にリスク回避が広がり、欧州債券利回りは低下。米国時間朝方にかけてユーロは急落し、ユーロ円相場は128円ちょうど近辺へ2円近く下落、ユーロドル相場は1.1250近辺へ下落。

ドル円相場はユーロ円相場での急速な円高、全般的なリスク回避による円買い戻しで113円60銭近辺に下落した。ただNY時間にドイツ外相が全土ロックダウンの可能性を否定したと報道されるとユーロは下げ止まり。リスク回避も一服。ユーロ円相場は129円ちょうどへ反発、ユーロドル相場も1.1320へ。

ただ上値も重く引けにかけてはじり安となり、ユーロ円相場は128円60銭で、ユーロドル相場は1.1280で引けた。

ドル円相場は上下しながら持ち直し114円ちょうど近辺で引け。FRBウォーラー理事は、持続的な高インフレや堅調な雇用の伸びを踏まえ、量的緩和縮小のペースを加速させ早期に利上げを実施する用意を整える必要がある、と述べた。

クラリダ副議長も12月のFOMCで量的緩和縮小の加速について議論することが適切となる可能性を指摘した。

米国株は景気敏感株が下落。欧州景気不安や感染再拡大懸念が重石。空運株が大幅安。NYダウは寄付きから下落、その後もみ合い安値引け。前日比▲268ドル安の35,601ドル。

ナスダックは長期金利低下が支えとなり+63ドル高の16,057ドル。VIX指数は+0.32ポイント上昇して17.91。

米長期金利はリスク回避で長期債が買われ、10年債利回りは1.548%。一方2年債利回りは一時0.45%に低下したが、利上げ前倒しの可能性を示唆する当局者発言を受けて上昇し0.513%。

◆今週の3つの注目ポイント


米国市場は木曜日が感謝祭で休場、金曜日がブラックフライデー、市場は短縮取引で取引閑散の見込み。実質的に月曜日~水曜日でロングウィークエンドとなる。

1.欧州の経済指標

欧州で感染拡大が深刻化し欧州景気への懸念が広がるなか、市場は弱い経済指標に反応しやすいとみられ、さらなるユーロ安、リスク回避の広がりに留意を要する。

月曜日 ユーロ圏消費者信頼感指数(11月、予想▲5.5、前月▲4.8)

火曜日 PMI景況感指数(11月、ユーロ圏、製造業、予想57.3、前月58.3、サービス業、予想53.5、前月54.6、ドイツ、製造業、予想56.7、前月57.8、サービス業、予想51.5、前月52.4)

水曜日 ドイツIFO景況感指数(11月、予想96.7、前月97.7)

木曜日 ドイツGDP(7-9月期、改定値)

2.米国の経済指標

欧州で感染拡大による景気先行き懸念が広がるなか、米国では強い経済指標が散見され景気堅調なもとで高インフレが懸念。今週の指標もそれを後押しするか。あるいは逆に弱い数字で欧州発の懸念を後押しするか。

月曜日 中古住宅販売(10月、季節調整済み年率換算、予想620万戸、前月629万戸) シカゴ連銀製造業活動指数(10月)

火曜日 PMI景況感指数(11月、製造業、予想59.0、前月58.4、サービス業、予想59.0、前月58.7)

水曜日 GDP(7-9月期、改定値)、耐久財受注(10月、前月比、予想+0.2%、前月▲0.4%) 個人所得・消費支出(10月、前月比、予想+0.2%・+1.0%、前月▲1.0%・+0.6%) 消費支出価格指数(コア指数、前年同月比、予想+4.1%、前月+3.6%、前月比、予想+0.4%、前月+0.2%) 新築住宅販売(10月、季節調整済み年率換算、予想800千戸、前月800千戸) ミシガン大学消費者信頼感指数(11月確報、速報66.8)

3.FOMC議事要旨

週末には量的緩和縮小(テーパリング)の加速を検討する発言が散見された。早期利上げの可能性を広げる意図もみられる。足元の高インフレが一時的とはいえなくなってきたとの見方が強まっているようだ。

水曜日に11月2日・3日に開催されたFOMCの議事要旨が公表される(日本時間・木曜日未明4時)。今回の会合ではテーパリングの開始を正式に決定。市場の関心はすでに利上げに移行しているが、何らかの示唆がみられるか。インフレ警戒スタンスがどれほど強まっているか議論から確認できるか。

◆今週のMRA's Eye


欧州発リスク回避は広がるか

先週、ドルインデックスはさらに上昇し96ポイントに達した。振り返れば6月初には90ポイント近辺で底ばい状況、9月初は92ポイント近辺。その後ドル高基調が強まり11月に94ポイントに乗せた後で上昇が加速した。

ドルインデックスに大きな比重を占めるユーロドル相場でユーロ安ドル高が急速に進んだことが主要因。

ユーロドル相場は9月初に1.19近辺だったが11月初は1.16、先週は1.12台に下落した。ドル円相場も9月初の110円近辺から114円へとドル高円安が進んだが、変化幅だけをみてもユーロドル相場の方が大きい。ユーロは対円でも下落しており130円台から先週末に128円をつけた。

日米欧の景況格差、インフレ格差、それにともなう金融政策格差は、通貨の強弱として、ドル、ユーロ、円の序列を示唆していた。FRBは量的緩和縮小を決定し来年の利上げも視野に入る。

FRBの次に量的緩和縮小に動くのはECBとみられ、そのタイミングが焦点になっていた。

傍らで日銀が政策変更に動く可能性は全く想定せず。それがドル>ユーロ≧円の通貨序列をもたらしていた。しかしここにきてユーロが最弱となった。

ユーロ急落の背景は欧州での感染急拡大とそれに伴う景気悪化懸念。ドイツでは感染が過去最多となり医療崩壊が懸念される状況。週末にはドイツの隣国オーストリアがワクチン接種者も含めた全土ロックダウンの実施を決定。

ドイツはワクチン未接種者に対する行動規制導入の段階だが、市場はオーストリア同様に全土ロックダウンを懸念。一気に不安感が広がった。

ECBはインフレ圧力について楽観姿勢を維持し、来年には鎮静化し目標である2%を下回ってくるとしている。そこにインフレ懸念ではなく感染拡大による景気回復頓挫のリスクが浮上してきた。

コロナ禍は過去のもの、という市場参加者のイメージが崩れたことはショックだろう。

市場の関心は景気回復、インフレ高進、金融緩和縮小、利上げ、に移行していたが、急遽、コロナ禍に引き戻された。

日本では感染がほぼ鎮静化しているだけに、感染拡大が市場のテーマとなることはピンと来ない。しかし以前は感染者数の動向で通貨強弱が左右されていた。

市場のリスク選好が後退。加えて日本の感染がほぼ鎮静化していることは欧州とは明確な差異がある。

為替市場ではユーロ円相場が急落。これまでは金融政策・金利動向から円が最弱との見方が主流。円売りポジションも嵩んでいた。ショックによる短期リスクは円買い戻しによる一時的な円高だったが、まさにそれが顕在化した。

欧州の状況に反して米国の足元の景気動向は堅調だ。雇用拡大が続き賃金上昇も伴った基調的なインフレ圧力が高まってきた。

当局者の発言からは、テーパリングのペースを加速させ、来年半ばに終了としている現在の予定を繰り上げようとの意見もみられる。早期に利上げ実施できる体制を整える意図だ。

ここにきて米欧の景況感格差、金融政策の先行き見通しに関する差異は拡大した。

金融政策に関しては、ECBがFRB寄りから日銀寄りへ、シフトするようなイメージだろう。ドルは独歩高となりやすい。

先週末はドル円相場も円買い戻しの勢いが勝りやや円高に振れた。しかし日米間の景況格差、金融政策格差は引き続き米優位にあり、今後もむしろ格差は拡大しそうだ。

リスク選好の後退は全般的な円安圧力を緩和する程度。ドル高が主因となりドル円相場を押し上げよう。緩やかなドル高円安見通しを変更する理由はない。

当面のリスクは感染拡大が欧州でとどまるかどうか。

米国でも北東部ほか一部で感染拡大の兆しがみえる。さらに深刻化する懸念が強まればFRB内でもハト派が力も持ち直す可能性もある。

すでに表明されている利上げ前倒しに備える議論がどうなるか。米国の経済指標に陰りがみえれば市場は過剰反応するリスクがある。

原油価格は景気回復への懸念から投機的な先高見通しが剥落して調整したが、実体経済、足元の需給に変化が生じたわけではない。投機的な要素が剥落しても高止まりとなる可能性は強い。

また米国の雇用改善基調に変化がみえるほど感染拡大が深刻化するか。足元の賃金上昇圧力が緩和するほどの事態となるかがポイントだ。

そうなれば現在の市場の見方、シナリオが根底から揺るがされる。株価は大幅に下落する可能性もあろう。

早期利上げへの準備が沙汰止みとなればドル円相場の調整は深まる可能性もある。現時点では確度の低いリスクシナリオに留まるが、ドル円相場が110円割れを試す展開もありうる。現時点で見込むのは時期尚早だが、仮に米欧ともに景気悪化となれば円が独歩高となるのが自然だ。

一方、そうした本質的な問題とは別に、米国での感染拡大や弱い経済指標がみられた場合のリスクもある。

実体経済への影響はともかく、感謝祭からクリスマスにかけて年末の休暇シーズン入りというタイミングとあいまって、市場のリスクポジションが手仕舞われ荒れ相場となる点には留意を要する。

あくまでも利益確定やリスクポジションの圧縮による短期的な調整だが、株安、リスク資産全般の価格下落、円買い戻しによるさらなる円高、などが生じるだろう。

なおドル円相場に関しては、米国経済が堅調を維持する限りドルも堅調となることからさほどドル安円高には振れずせいぜい112円台止まりか。このケースは本質的なリスクに比べて軽微なリスクだが、一方で発生確度はやや高いだろう。

逆に、米国での感染拡大が抑制され、景気はさらに堅調を維持。クリスマス商戦も活況となり、資源価格もさほど調整せず高止まり。そうなればFRBがインフレ警戒感をさらに強めて12月のFOMC会合でテーパリングのペースアップなど利上げ前倒し実施に備える可能性がある。

その場合、リスク選好は維持され、米長期金利は上昇基調を明確化。ドル円相場は115円での攻防、さらなるドル高を試す可能性もある。こちらのリスクは中長期的ドル安円高リスク、短期的ドル安円高リスク、より、なお確度がやや高いのではないか。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :113.99(▲0.27)
ユーロ :128.71(▲1.22)
英ポンド :153.336(▲0.86)
豪ドル :82.486(▲0.66)
カナダドル :90.189(▲0.47)
スイスフラン :122.84(▲0.58)
ブラジルレアル :20.3155(▲0.24)
中国人民元 :17.822(▲0.07)
韓国ウォン(日本円=100) :9.615(▲0.07)

【対ドルレート】
ユーロ :1.129(▲0.008)
英ポンド :1.3451(▲0.004)
豪ドル :0.7235(▲0.004)
カナダドル :1.264(+0.004)
スイスフラン :0.9278(+0.002)
ブラジルレアル :5.6102(+0.044)
中国人民元 :6.3871(+0.001)
韓国ウォン :1185.12(+4.92)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.55(▲0.04)
米2年債 :0.51(+0.00)
日本10年債利回り :0.08(+0.00)
日本2年債利回り :0.08(+0.00)
独10年債利回り :▲0.34(▲0.07)
独2年債利回り :▲0.78(▲0.03)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :35,601.98(▲268.97)
NASDAQ :16,057.44(+63.73)
S&P500 :4,697.96(▲6.58)
日経平均株価 :29,745.87(+147.21)
ドイツ DAX :16,159.97(▲61.76)
インド センセックス :休場( - )
中国上海総合 :3,560.37(+39.66)
ブラジル ボベスパ :103,035.00(+609.00)
英国FT250 :23,492.49(▲82.13)
ビットコイン :57869.62(+274.23)

【主要商品価格】
WTI :76.10(▲2.91)
Brent :78.89(▲2.35)
米ガソリン :221.19(▲8.24)
米灯油 :229.34(▲9.06)

金 :1845.73(▲13.21)
銀 :24.62(▲0.19)
プラチナ :1034.16(▲17.19)
パラジウム :2061.25(▲76.07)
銅 :9545.00(+135:75.5B)
アルミニウム :2644.00(+48:17B)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :1263.25(▲2.00)
シカゴ とうもろこし :570.75(▲2.25)
シカゴ小麦 :823.00(+3.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。