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金融緩和継続への傾斜、あらたなリスクの火種
  • MRA外国為替レポート

2019年2月4日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は109円台半ばで始まり、週央まで109円前半を中心として小動きもみ合いとなった。

FOMCや米中通商協議、雇用統計、など重要イベントが目白押しで、これらを前に方向感のない展開。

注目のFOMCは、声明文およびパウエル議長の会見が市場の想定以上にハト派となったためドル金利先高感が後退。米長期金利が低下。一方、株価はFRBの柔軟姿勢を好感して上昇。

米中通商協議が進展している兆しもあり、市場全体で週末にかけてリスク選好が強まった。円はリスク選好回復のもとで軟調となったものの、ドル金利先高感の後退、米長期金利の低下、リスク選好によるドル売りの勢いが強く、ドル円相場は108円台後半に下落した。

そうしたなか週末に発表された米雇用統計は非農業部門雇用者数が前月比+304千人と予想の倍近い強い数字、1月のISM製造業景気指数も12月を上回る水準に反発、など良好。

これを受けてドル円相場は大きく上昇した。円はリスク選好で全般的に軟調。週末のドル円相場の引けは109円50銭台。米10年債利回りは週初の2.7%台前半からFOMCをうけて2.6%台前半に低下したが、強い雇用統計、ISM製造業景気指数をうけて2.69%に反発して引け。

米国株は決算をこなしてリスク選好の回復を背景に堅調持続。日経平均は20,500円近辺で底固く、米国株の上昇に支えられ、週末は20,800円近辺で引けた。

月曜日の東京市場の為替相場は動きが鈍いなか前週末のリスク選好・円安の反動もありやや円高に振れる展開となった。

ドル円相場は109円50銭台で始まり30銭割れ。その後は109円30銭~40銭で上下した。ユーロ円相場は125円近辺で始まり、124円70銭~125円で上下。ユーロドル相場は1.14ちょうど~1.1420で小動き。

日経平均は20,750円で寄り付きその後は軟調。20,700円割れでもみ合いとなり引けは20,650円近辺。

海外市場の為替相場も総じて小動き。ドル円相場は109円50銭から20銭割れに下落。ユーロ円相場もアジア時間のレンジ内での取引。

米国株は一転して企業業績への失望から大きく反落して始まり、その後持ち直したものの前週末比下落で引け。

この日の一部企業決算の内容で、中国経済の減速や関税の悪影響などが想起されたことが悪材料となった。米長期金利は小幅低下。10年債利回りは2.74%。

この日発表されたシカゴ連銀景気指数(12月)、ダラス連銀製造業指数(1月)は、ともに前月から持ち直し。なお中国の劉鶴副首相らは予定より1日早くワシントンに到着。トランプ大統領が31日に劉鶴副首相と会談することが明らかになった。

火曜日の東京市場の午前中はやや円高・株安の動きとなったが総じて小動き。ドル円相場は109円30銭で、ユーロ円相場は125円ちょうど近辺で始まり円高に振れたが夕方には朝方の水準に戻した。

日経平均は20,600円割れに小幅安。中国株の軟調などが嫌気されたが後場には持ち直し、前日比変わらずの20,650円近辺で引け。

海外市場に入るとやや円安気味となりドル円相場は109円50銭に、ユーロ円相場は125円20銭に上昇。

米国株はまちまちでダウは上昇、ナスダックは下落。この日は良好な決算発表で前日の懸念は緩和しリスク選好は維持された。ただともに小幅な値動き。重要イベントを前に動きが鈍く、ドル円相場は109円30銭台で小動き、ユーロ円相場も124円90銭台を中心にもみ合いとなった。

日本時間水曜日未明から早朝に行われた、イギリス議会のEU離脱修正案の審議、採決では、離脱延期は否決、再交渉を求める案は可決、となった。

一方、EUサイドは逆に延期は認める方針だが、再交渉は受け付けないとしており、両者の間はねじれたまま。メイ首相はなお困難に直面したまま。イギリス議会では合意なき離脱は回避したいとの意見が大勢なものの、その可能性は残存。

水曜日の東京市場のドル円相場は小動き。109円40銭で始まりその後は30銭を中心に上下。ユーロ円相場も125円ちょうど~10銭近辺でもみ合いとなった。

日経平均は下落。米国株がまずまずだったが新興市場株の下落に心理が悪化して軟調となり20,550円近辺で引け。総じて米FOMCの結果待ち。

海外市場に入るとドル円相場は109円70銭近辺に上昇。発表されたADP雇用報告(1月)が前月比雇用者数+213千人と予想+175千人を上回る強めの数字だったことがきっかけ。

ドルはユーロに対してもやや上昇。ユーロ円相場は125円10銭~20銭を中心に上下動。米国株は好決算を受けて堅調に推移した。

注目のFOMCの結果は日本時間31日未明4時に判明。声明文は想定以上に明確にハト派スタンスを示し、続くパウエル議長の会見でも利上げ・金融正常化に慎重な姿勢が示された。

声明文からは、前回会合まで記されていた文言、「いくらかの段階的な利上げが正当化される」、「見通しに対するリスクはおおむね均衡している」、の2文が削除された。

議長は、米経済は良好としつつも、政策調整は様子見、国内外の不確実性があり利上げする理由は弱まっている、と述べた。またFRBは声明文とは別に、バランスシートの正常化については完了に向けて詳細を調整する用意がある、と柔軟な姿勢を示した。

これを受けてドル金利先高感が後退し米長期金利は低下。2年債利回りは2.51%に、10年債利回りは2.69%に。市場のリスク選好は強まり株価は一段と上昇。ドルは全面安となった。

ドル円相場は一時108円80銭に下落。ユーロドル相場は1.15へと大幅にユーロ高ドル安が進んだ。ドル円相場の引けは109円ちょうど近辺。

木曜日の東京市場のドル円相場は109円ちょうど近辺で始まりじり安。昼には108円80銭を割った。ドルは対ユーロでも軟調。ユーロドル相場は1.15へとユーロ高ドル安。

日経平均は米国株高を受けて20,800円台後半で寄り付いたがその後はドル安円高への警戒感からじり安となり20,750円に下落。しかし後場には持ち直し800円中心に上下、引けは20,770円近辺。

中国で発表された製造業PMI(1月)は49.5と前月49.4からわずかながら上昇し予想をやや上回った。中国株・上海総合指数が反発したことも日本株の支えに。

海外市場に入るとやや円高へ揺り戻し。ドル円相場は108円50銭~60銭、ユーロ円相場は124円60銭近辺へ。米国株はまちまち。

米長期金利はFOMCからの流れを受けてさらに低下。米10年債利回りは2.63%。

そうしたなか、米中通商交渉の内容が不明ながら、トランプ大統領が最終合意を目指して中国・習主席と会談を行うこと、2月末の交渉期限の延長も検討している、としたことから期待感が高まった。

ドル円相場は109円80銭~90銭に反発してもみ合い引け。ユーロ円相場も124円90銭に上昇したが、欧州景気への不透明感からユーロ安となり124円50銭~60銭でのもみ合いに。ユーロドル相場も1.1440~50に反落した。

金曜日の東京市場は総じて米雇用統計の発表待ちで様子見。ドル円相場は108円90銭で始まりそのまま小動きもみ合い横ばい。ユーロ円相場も124円50銭~70銭で横ばい、狭いレンジで上下動。ユーロドル相場も1.1440~1.1450中心のもみ合い。

日経平均は20,880円と高寄りした後は700円台に押された。後場には一時900円台に上昇する場面もあったが800円近辺でもみ合いとなり20,790円近辺で引けた。

注目の米雇用統計(1月)は、非農業部門雇用者数・前月比が+304千人(予想+165千人、前月+222千人)と非常に強い数字だった。

平均賃金上昇率は前年同月比+3.2%と前月から▲0.1%低下。またISM製造業景気指数(1月)は56.6と予想54.1、前月54.3を大きく上回り反発した。

これらを受けて米長期金利は反発し10年債利回りは2.69%に上昇。ドル円相場は109円40銭近辺まで上昇し、その後は109円50銭~60銭でもみ合い。円が全般的に軟調となりユーロ円相場も124円90銭から125円70銭に上昇した。ユーロドル相場は1.1460~1.1480で方向感なく上下動。米国株は小幅高。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

政府機関の一部閉鎖が解けて徐々に滞っていた指標の発表が進むとみられる。FRBは一段と様子見、経済指標次第とのスタンスを強めており指標の重みは増す。

雇用統計やISM製造業景気指数が良好だった流れから期待感は高まるが、市場の安心感、リスク選好を後押しできるか。

月曜日に製造業新規受注、資本財出荷、火曜日にISM非製造業景気指数(1月)、水曜日に住宅着工、小売売上高、耐久財受注、貿易収支、などが発表予定となっている。

2.欧州の経済指標

先週は欧州景気に対する懸念が欧州通貨の足を引っ張った。引き続き弱めの数字となればECBの緩和スタンス維持への期待が高まり、ユーロ軟調が間接的にドルを支えるか。

ユーロドル相場の動向は、全般的なドルの強弱を左右するだけに注目される。火曜日にユーロ圏小売売上高、木曜日にドイツ鉱工業生産、貿易収支。

3.日本の国際収支

金曜日に国際収支(12月)が発表される。貿易収支は2018年トータルで赤字となった。

海外投資・資産からの収益である所得収支の黒字で経常収支は数字としては黒字を維持しているが、円転されないことも多く、円高になりやすい状況となっている。

また対外直接投資は引き続き活発な動きとなっているか。2018年の動向を総括し、大きな流れとして円高圧力・円安圧力、どちらが強まっているかみることは、目先の相場ではなく、中期的な相場動向のベースを考える上で重要だ。

◆今週のMRA's Eye


金融緩和継続への傾斜、あらたなリスクの火種

先週のFOMCはパウエル議長の会見も含め想定以上にハト派な結果となった。

足元の米国経済の動向についてはなお強いとしつつ、海外経済の不透明感や政治的なリスク、米中通商交渉やイギリスのEU離脱問題、さらには不安定な金融市場の動向などを考慮し、インフレ率上昇のリスクが小さいなか、利上げを急ぐ理由がないとの判断。3月の利上げは見送りが確実となった。

またバランスシートの正常化、すなわち市場からの資金吸収についても、現状の毎月500億ドルのペースを、状況次第で柔軟に変化させ、あるいは予定よりも早期に休止する余地も示した。

ECBが先だって慎重な姿勢を示し、長期資金供給の再開も検討。中国も人民銀行が潤沢な資金供給で金融緩和を実施。そうしたなかFRBも利上げ休止と資金吸収の柔軟姿勢を示した。リスク選好はすでに年初から回復基調にあったが、こうした主要経済圏の金融緩和継続スタンスの表明が、それをさらに後押しした。

政策動向や目先の動きに敏感な投機筋はリスクをとる方向に動いている。

株価はグローバルに堅調。新興国市場は株価、通貨、ともに上昇した。金融政策は市場に優しい方向へ、リスク選好を促す方向へと動いている。

そのこと自体は市場心理を相乗的に良い方向へ導くが、将来に市場がリスク回避方向へ調整する火種となる可能性もある。

不透明要因全般を見渡しても、期待感が高まっているだけに、同時にリスクも高まっている。

米中通商交渉はハイレベルの協議は詳細不明ながら進展があるようだ。これが市場に安心感をもたらしている。

先週、トランプ大統領と習近平主席との会談が行われるとの発表があったが、「両者が手ぶらで帰るとは思えない」という見方が市場の大勢だろう。

イギリスのEU離脱についても、合意なき離脱だけは回避する、というのがイギリス国内・議会のコンセンサスで、それも安心材料と受け止められている。

実際にはEUとイギリスの間での意見は対立しており、果たしてどうなるのかはわからないが、少なくとも現時点においては最悪の事態が回避されるだろうとの見方が大勢だ。

中国景気の動向については、金融緩和や景気対策によって、従来と同様、共産党主導の国家体制ならではの政府主導の強力な経済政策によって何とかするのだろう、という達観が広がっている。あとは経済指標が景気悪化の歯止めを示すのを待つ状況だ。

ただなかなか悪化が止まらない場合に市場はどのような反応を示すか。

米国の政府機関の一時閉鎖は期限付きながら解除されたが期限付きだ。市場心理は当面悪化しないが、現実がその期待に応えられるかどうか。それが新たなリスクとなる。

今後の焦点は、FRBの次の一手がいつ、どのようなものとなるか。弱気派は、米国経済の減速がさらに明確となり、景気後退懸念が広がり、利下げが現実的になってくるとみる。

この場合はドル金利先安感から長期金利が長い期間ほど低下し、いわゆる逆イールドとなって、ドルはトレンドとしてドル安基調となる。

強気派は、米国経済は足元の不透明感などから一時的に勢いを削がれているが、基調はしっかりしており、政治的な不透明要因が解消し、あるいは海外経済の減速に歯止めがかかれば、FRBは現在の小休止の後に再び利上げを実施するとみる。

その答えが出るにはかなりの時間がかかりそうだ。次の一手はなお利下げよりも利上げとみるが、パウエル議長が「忍耐強くいられる」としている通り、当局はかなりの時間をかけて判断することになる。

いつ頃、利上げが確実視される状況に、市場が利上げを織り込む状況となるか。それには強い経済指標が連続しなければならず、ここから数か月はかかりそうだ。

利上げ実施の前提としては、市場が利上げに過剰反応せず、金融市場が落ち着いて受け止める必要もある。それにはなお数か月かかるのではないか。

利上げは早くて5月初か6月下旬となりそうだ。一方、このまま利上げが打ち止めとなる可能性もゼロではない。その結果が明らかになるのは、何らアクションがないことを事後的に確認するしかないため、さらに時間がかかる。

ただ利下げについては、現時点での米国景気の力強さ、雇用情勢の堅調さをみる限り、当局者の視野にはまだ入っていないだろう。FOMCメンバーによる政策金利予想も次はなお利上げを示している。政策を逆方向に転換するとなれば一段と時間がかかるだろう。

その間に、市場参加者の期待と失望の間で、リスク選好とリスク回避の間で振れながら、ひと波乱、ふた波乱、もありそうだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.5(+0.61)
ユーロ :125.46(+0.81)
英ポンド :143.217(+0.49)
豪ドル :79.384(+0.19)
カナダドル :83.579(+0.61)
スイスフラン :109.983(+0.47)
ブラジルレアル :29.9268(+0.07)
中国人民元 :16.224(▲0.00)
韓国ウォン(日本円=100) :9.782(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1456(+0.001)
英ポンド :1.3079(▲0.003)
豪ドル :0.725(▲0.002)
カナダドル :1.3102(▲0.002)
スイスフラン :0.9956(+0.001)
ブラジルレアル :3.6572(+0.010)
中国人民元 :6.7422(+0.046)
韓国ウォン :1119.01(+6.29)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.68(+0.06)
米2年債 :2.50(+0.04)
日本10年債利回り :▲0.01(▲0.02)
日本2年債利回り :▲0.01(+0.01)
独10年債利回り :0.17(+0.02)
独2年債利回り :▲0.58(▲0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :25,063.89(+64.22)
NASDAQ  :7,263.87(▲17.87)
S&P500 :2,706.53(+2.43)
日経平均株価 :20,788.39(+14.90)
ドイツ DAX :11,180.66(+7.56)
インド センセックス :36,469.43(+212.74)
中国上海総合 :2,618.23(+33.66)
ブラジル ボベスパ :97,861.27(+467.53)
英国FT250 :18,811.37(+99.62)
ビットコイン :3448.51(+31.48)

【主要商品価格】
WTI :55.26(+1.47)
Brent :62.75(+0.86)
米ガソリン :143.69(+7.42)
米灯油 :191.27(+3.39)
金 :1317.98(▲3.27)
銀 :15.91(▲0.15)
プラチナ :824.17(+2.17)
パラジウム :1354.65(+11.51)
銅 :6125.00(▲43:27.5C)
アルミニウム :1893.00(▲11:20.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :917.75(+2.50)
シカゴ とうもろこし :378.25(+1.75)
シカゴ小麦 :524.25(+7.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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