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米緩和解除加速懸念後退で上昇
  • MRA商品市場レポート

2021年12月13日 第2095号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米緩和解除加速懸念後退で上昇」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、エネルギーを始め幅広い銘柄が物色され堅調な推移となった。唯一下げが顕著だったセクターが非鉄金属で、減少が続いていたLME指定倉庫在庫の減少が一服し、在庫増加に転じたことが売り材料となったようだ。

市場は米国を始め世界の国々のインフレへの対応に注目しているが、その点で注目されていた米消費者物価指数の伸びが想定の範囲内だったことで急速に金利が低下、ドル安も進行したことがドル建て資産価格を支えたようだ。

しかし、中期的に景気が調整局面(正常化)にあること、オミクロン株の感染が欧州で拡大、致死率は高くないものの感染力の強さに伴う入院患者の増加、それに伴う医療崩壊への懸念が強まっていることから、ロックダウンの動きが強まる可能性が意識されていることは、リスク資産価格の上昇を阻害している。

なお、昨日、8日から開催されていた中国の2022年の経済政策を決定する中央経済工作会議が終了した。

・積極財政・緩和的な金融政策を続けて景気刺激・不動産の投資抑制(バブル潰し)、居住向け住宅は支援・共同富裕で分配のパイ拡大

といった内容(詳しくは昨日のトピックスを参照)。

【本日の見通し】

週明け月曜日は材料が少なく、金曜日の消費者物価指数やそれを受けたテーパリングペース加速観測の後退を受けて、買い戻しが優勢となる商品が多いと考えられる。

しかし、今は中期的(1~3ヵ月程度)に経済が「下りのエスカレーターに乗っている」状態であるためそれほど大きな上昇にはならないのではないか。

予定されている材料で、商品価格に影響が出そうなものがそれほどないが、国内では日銀短観の12月調査に注目している。

市場予想は以下の通り。改善が見込まれているが弊社はそれ以上に大企業・中堅企業の「仕入価格指数」に注目している。過去40年程度のデータを振り返ると、仕入価格が急騰した後は急落しているケースが多いためだ。

ただ、今回の景気減速・回復がコロナの影響によるもので有るため、これまでの常識が通用しない可能性はある。

大企業製造業業況判断DI 市場予想 19、前回 18、先行き予測 19大企業非製造業 5、前回 2、先行き予測 9中小企業製造業 ▲3、前回▲3、先行き予測 ▲1中小企業非製造業 ▲6、前回▲10、先行き予測 ▲4

【昨日のトピックス】

昨日発表された11月の日本国内企業物価指数は、前年比+9.0%の上昇となり、オイルショックでインフレとなった1980年12月以来、41年ぶりの水準となった。

コロナからの回復とコロナの影響による供給制限、サプライチェーンの寸断が継続する中で国際商品価格と輸送費が上昇したことが影響しており、さらには足下はやや円高では有るが基本的に円安バイアスが強まったことが、輸入物価を押し上げたことも影響したと考えられる。

恐らく、コロナ問題が沈静化するなかで供給制限が解消していくため企業物価の伸びは減速していくと考えられるが、それには時間が掛かる上、コロナ以外にも脱炭素や米中対立の影響もあるため高い水準が継続する可能性はある。

こうなると、数量削減や仕入れ先・販売先共にコスト上昇分を応分に分担しあうといった手法による価格リスク制御では十分な価格制御が困難になる。

もちろん数量削減は効果が大きいのだがそれだけでは不十分ということだ。

電力自由化が始まった時に基本料金の値下げ合戦が行われたが、それも一巡。エネルギーの使用量をゼロにすることはできないため、結局化石燃料価格の上昇分が転嫁されたため、基本料金下げの効果を帳消しにしてしまった。

今後、こうした価格リスク制御は企業の重要な経営課題になると共に、価格転嫁が最終消費者にも進むため金融商品や先物市場を用いた価格リスクコントロールが必要になるかもしれない。

その場合、実際に購入している価格でヘッジが可能な市場の整備も必要で、取引所の商品拡充も重要な課題になるだろう(例えば、ガソリンの店頭価格をインデックスとするガソリン先物など)。

なお、昨日、8日から開催されていた中国の2022年の経済政策を決定する中央経済工作会議が終了した。

・積極財政・緩和的な金融政策を続けて景気刺激・不動産の投資抑制(バブル潰し)、居住向け住宅は支援・共同富裕で分配のパイ拡大

といった内容(詳しくは昨日のトピックスを参照)。平たく言えばバブルは潰すが、住民の不満になりそうな住宅を購入可能な価格に落着かせる方針と取れる。ただ、中国が進める共同富裕はむしろ国有企業との競争を回避し、成長力が低下することに繋がると予想される。

習近平政権も人口動態の変化には抗えず、一歩引いて見ると追い込まれている感がするのは否めない。

なお、中国メディアの「中国報道網」は、「3人子政策の実現は全ての共産党員の責任、共産党員は何らかの理由で結婚をしなかったり、子供を作らなかったりしてはならない。」「たとえ年齢や健康上の理由で子供を作れなくても、周囲に3人の子作りをするよう指導することができる」と報じており、国内でも批判が高まった(この記事は既に削除されていて閲覧できない)。

中国が3人子政策を共産党員中心に進めるのは、仮に出産制限を解除した場合、漢人以外の少数民族が増加してしまい、中国共産党が進める「漢人を中心とする国家」の仕組みが揺らぐからだ。

他国の政治を批判する訳ではないが、現状、中国共産党も厳しい状況に置かれており、思想・言論統制を含めて支配を強化せざるを得ないのだろう。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は上昇した。米CPIの伸びがほぼ市場予想通りであり、「想定の範囲内」と捉えられたことで米長期金利が低下、ドル安が進行したことが買い戻しの材料となた。ほぼ、昨日予想したとおりドルの戻り売りの中、200日~100日移動平均線のレンジ内での値動きとなった。

オミクロン株の感染は拡大しているが、今のところ経済活動の重石になるとは判断されておらず、むしろPMIなどの景況感指数の減速に市場は反応している形であり、トレンドは中期(1~3ヵ月)的には調整色が強い。

週明け月曜日はOPEC月報などの発表があるが、今のところ原油価格を動かしているののは米金融政策動向であり、週末の統計を見るに緩和解除加速の可能性が低下したことから上昇余地を探る展開。

ただ、それほど重篤な被害をもたらしていない(致死率が高くない)オミクロン株だが、欧州でロックダウンが広がる可能性があり、この点は上昇余地を限定しよう。

◆石炭・LNG・天然ガス

豪州石炭スワップ先物価格は上昇。欧州排出権価格が再び上昇したこと、欧州のガス在庫の積み上げが全く進んでいないことから欧州ガス価格が上昇、それに連れる形で石炭・極東のスポットガス価格にも影響が出たと考えられる。

中国の石炭輸送の指標の1つであるバルチック海運指数は昨日は小幅に下落した。

JKM先物市場は上昇して高値を維持している。手前のみコンタンゴになっているが、期間構造は冬場一杯、30ドルを超える水準が見込まれている。

より懸念しているのが来年の夏場のガス価格が25ドルに迫っていることと、来年の冬の水準が既に25ドルを超えている点である。中国の構造的な需要の増加や、石炭廃止圧力に伴うCoal to Gasの加速観測が強まっているのかもしれない。

そんな中、主要電力会社がJEPX向けの販売価格をJKM連動に変更しつつある。このことはこうしたスポットLNG市場の動向が国内の電力価格に大きな影響を及ぼす可能性が出てくる点は、意識する必要がある。

一方、気温上昇見通しとなっている米天然ガス価格はさすがに割安感からの買いが入った。目先、200日移動平均線がレジスタンスとして強く意識されている状況。

スポットLNGタンカーレートはスエズ以東・以西とも下落した。季節的にそろそろLNGのタンカー需要が減速を始める時期であることが影響している。

ただ、例年よりも遙かに水準は高く、欧州・アジアともガス調達意欲は旺盛とみられる。

2021年11月29日~12月5日のLNG取引は前週比+17%の840万トンとなった。スポット調達のシェアは29%(29%)と横這い。

日本、韓国、中国、台湾のターム契約による調達が増加した、スポットの比率も高く冬場に向けた輸入需要は旺盛。

本日も石炭価格は北アジアの気温低下と冬場に向けた供給懸念から高値維持。

天然ガス価格は欧州の供給問題に大きな進展がない中で、高値を維持すると予想。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。ドル安進行や株高、中国の景気テコ入れ方針など、やや強気な材料が増えていたが、減少を続けてきたLME指定倉庫在庫が金曜日は軒並み増加したため、需給緩和への期待が価格を押し下げることとなった。

非鉄金属の期間構造は全ての金属でバックとなっており、足下の需給バランスがまだタイトであることを示唆しているが、もう1つの需要の指標として重要な「オフワラント率」は、ニッケルを除いてテーパリングが意識され始めた10月以降、急低下しており、需給の過剰なタイト感はやや後退している。

中期的には欧米製造業PMIの減速もあって、調整があってもおかしくない局面。

昨日、中国で8日から開催されていた中央経済工作会議が終了した。非鉄金属・工業金属需要に影響を与える面では不動産セクターの投資抑制を継続、住むための住宅への規制は緩和、という方針。

総じて下押し圧力が掛りつつも軟着陸を目指す方針であり、金属セクターにとっては下支え要因になるとの整理。実際に価格に影響が出るのは恐らく数ヵ月の時間差があるとみる。

固有の材料では、19日に行われるチリの大統領選の結果。12月1日にチリ上院がロイヤルティフィの引き上げ法案を可決しており、19日の決選投票で左派のガブリエル・ボリック氏が勝利すれば法案が立法化される可能性が高くなる。

この場合、銅をはじめとするチリ産の鉱石供給が制限されることとなり、非鉄金属価格の上昇要因となる。

週明け月曜日は目立った手がかり材料に乏しい中、中国が景気テコ入れにそろりと踏み出したこと、米テーパリングのペースは加速しないとの期待感から一旦買い戻しが入ると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅に下落、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物はまちまちだった。

目立った手がかり材料に乏しい中、年末を控えた在庫の取り崩しの動きが強まって鉄鋼製品先物価格は下落したが、鉄鋼原料価格はしっかりの印象。

非鉄金属のところでもコメントしているが、中国の2022年の経済政策を決める中央経済工作会議は、住宅セクターのバブル潰しは継続しつつ、投機を抑制して実際に居住するための住宅向けの規制は緩和するという軟着陸を目指すもの。

ただこれによって住宅向けの鉄鋼需要が激増するかと言えば、それは中国政府の意図とは異なるため今のところの情報だけでは、下支え~若干需要押し上げ程度に止まるのではないか。

週明け月曜日は中国の景気テコ入れの動きもあり、鉄鋼原料価格は現状水準でしっかりの推移になるのではないか。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは上昇した。注目の米消費者物価指数はほぼ市場予想通りの内容となり、長期金利が低下、実質金利が低下したことが買い材料となった。

銀、プラチナも同様に上昇、株価の上昇もあったため金価格の上昇を上回った。パラジウムは貴金属セクターの買い材料が多かったもののほとんどこれらに反応せず、水準を切下げている。

週明け月曜日の金属価格は上昇すると考える。米テーパリング加速ヘの懸念が若干後退する中で、金価格が堅調な推移になること、株価の戻りが期待できることが銀やPGMを押し上げるため。

◆穀物

シカゴ穀物価格は軒並み上昇した。米消費者物価指数が市場予想通りとなったことで、テーパリング加速への懸念がやや後退、週末を控えたドルポジション調整売りを受けて穀物には買い戻しが入った。

週明け月曜日もリスクテイク再開やドル安進行を受けて上昇余地を探ると考える。特に、200日移動平均線のレジスタンス上抜けが目前であるトウモロコシがテクニカルに上昇、大豆も連れ高となる可能性がある点は注意か。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・コロナウイルスの感染再拡大(オミクロン株の影響)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

・資源価格上昇によるインフレや、米テーパリング・利上げ観測を背景とした新興国通貨安で新興国が想定以上のペースで利上げを行わねばならず、世界的に金融引き締めモードに転じた場合(リスク資産価格の下落要因)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

・米中対立が、自国内の混乱などを理由に急に「手打ち」となった場合(景気のポジティブリスク・中国がさらに力を付け、将来米中が武力衝突するリスク)。

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国不動産問題の沈静化に時間が掛り、信用収縮に繋がる場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。議席確保のためのなりふり構わない政策がインフレをもたらすリスク(景気加熱後に急減速する要因)。

・独政権交代後の国内求心力が低下、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。

・ロシア・ウクライナ・ベラルーシ・欧州を巡る対立が激化し、軍事的な衝突が発生する場合(景気の減速を通じて景気循環系商品価格の下落要因)。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。

◆個別商品市場中期見通し


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格はオミクロン株の影響への懸念が薄れ、厳冬見通しで買い戻しが優勢になると見込まれるが、米国のテーパリングは継続する見通しで有ることから、中期(1~3ヵ月)的には水準を切り下げる展開になると予想される。

また、循環的な景気減速が見込まれることも春先にかけて水準を切り下げる要因となるだろう。

原油価格上昇に伴い米国のシェールオイル生産は回復、最大生産地域であり、生産コスト低いるPermianの生産はコロナ前の水準をほぼ回復した。

しかしその他の地域は回復が見られておらず、シェールオイル全体の12月の生産は2020年3月の8.56MBDよりも▲0.66MBD万少ない7.93MBDとなる見込み。

また、リグの稼働も脱炭素などの影響低調で、増産はこれまで掘削したが稼働させていなかった井戸の稼働によるものに止まっており、完成非稼働井戸数はピーク時の半分まで減少している。

まだ、需要を満たすだけの供給が起きていないことは事実である。

期間の長い中期的(来年の春以降)には、経口薬の開発やコロナとの付き合い方が分る(もうウィズ・コロナで走るしかない)などで恐らくコロナによる移動制限が解除され、輸送燃料需要が回復することからやはり上昇に転じるとみている。

ワクチン・経口薬の開発は進捗しており、時間経過と共にコロナの感染拡大によるエネルギー価格への影響は小さくなっていくことだろう。

米DOEの2021年供給は95.59MBD(前月95.93MBD)、需要は96.90MBD(97.52MBD)、需給バランスは▲1.31MBDの供給不足(▲1.59MBDの供給不足)。

2022年は供給が101.41MBD(101.41MBD)、需要が100.89MBD(100.89MBD)、需給バランスは+0.47MBDの供給過剰(+0.52MBDの供給過剰)。

【見通しの固有リスク】

・気温低下による暖房向け燃料需要が増加、ないしは不稼働の液体系燃料発電(ディーゼルや重油)を有する国や地域が再稼働を決定した場合(価格の上昇要因)。

・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。

・米国経済が正常化する中で金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。

・OPECプラスの増産ペースの遅れないしは上流部門投資不足による供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。

あるいは上流部門投資をしてこなかった結果、思った増産ができない場合(価格上昇要因)。

価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合(価格下落要因)。

・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値を維持すると考える。中国政府主導の増産・価格引き下げ策の影響で水準は低下したものの、中国・インドなどの石炭火力中心の地域の石炭在庫水準はまだ低く、冬場の電力需要向けの調達は旺盛で、供給不足に伴い稼働を停止する工場が増加していることから。

中国政府主導による石炭増産は、これから冬が本格化するなかで、主要生産地が中国北部であることを考えると思った通りの増産ができるとは考え難い。

ただ、10月の生産は3億5,709万トンと過去最高水準となった。しかし問題は寒さが厳しくなる11月以降も増産が可能かどうかである。

11月の中国の石炭輸入は前年比+198.1%の3,505万2,000トン(前月+96.2%の2,694万トン)と過去5年レンジを上回っている。豪州からの輸入もオフィシャルに再開しており、国内需給は緩和期待が高まる。

【見通しの固有リスク】

・今冬はラニーニャ発生が厳冬リスクを高めているが、懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。

・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。

・Nord Stream2の稼働が早期に行われ、天然ガス価格が急落する場合(下落要因)。

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念(価格の上昇要因。これは既に顕在化)。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発である一方、自然エネルギー供給が減少、欧州域内最大の原発を保有するフランスの原発稼働率がメンテナンスの影響などで低下していることから火力発電向けの燃料需要が旺盛なこと、石炭価格も高値を維持していること、独新政権のカーボンクレジットに下限(60ユーロ)を付ける方針などを受けたカーボンクレジット価格の急騰で、価格は高値を維持すると考える。

ノルドストリーム2はGazpromがノルドストリーム2AGが100%保有する子会社を設立する方針を示しており、ドイツ当局も審議を再開する方針。

ただしこの審議が1~2週間で完了するとは考え難く、恐らく2022年の春頃まで時間が掛ると予想されることから、今冬の供給不足解消には寄与しないと考えられる。

現在、在庫が十分ではなく、在庫積み増しを継続しなければならない状況に変わりはなく、仮にガスプロムが欧州のガスタンクを充填しても欧州在庫は過去5年の最低水準を回復できない見込みであり、やはりこの冬(ないしは冬場の調達に目処が立つ2~3月頃まで)の間は高値が続くと予想される。

足下懸念されるのはJKMの期間構造が変化し、期先のJKM価格も上昇、来年1年間は25ドルが意識される状態になっていることだ。

石炭忌避の動きから先進国ではCoal to Gasが加速するとみられること、この冬場の調達不足が来年も影響すること、が意識されこの水準が定常化するかもしれない。

そんな中、主要電力会社がJEPX向けの販売価格をJKM連動に変更しつつある。このことはこうしたスポットLNG市場の動向が国内の電力価格に大きな影響を及ぼす可能性が出てくる点は、意識する必要がある。

10月の中国の天然ガス生産は前年比+15.8%の164億5,000万立方メートル(前月+10.1%の156億8,000万立方メートル)と増加、過去5年レンジを上回っている。

11月の中国の天然ガス輸入は前年比+16.9%の1,073万トン(前月+8.3%の938万トン)と過去5年レンジを上回っており、輸入ペースが加速している。

10月の中国のLNG輸入は前年比+22.9%の617万トン(前月+17.8%の675万トン)と過去5年レンジを大きく上回り、構造的な需要増加は続いている。

中国はパイプライン経由での天然ガスは主にトルクメニスタンから行っているが、「シベリアの力」パイプラインが開通して以降、ロシアからの調達も増加している。

ロシアの中国向け輸出は増加していた。そもそもシベリアの力経由での輸出は2021年で85億立方メートルに増加させる見込みであり、輸出の増加は契約通りとするロシアの主張に沿っている。

しかし10月までの輸出が62.9億立方メートルであり(天然ガス1トン=1,220立方メートルと換算)、単純計算だと2021年の輸出見通しは75.5億立方メートルと、計画に届かない。中国向けの輸出が急減したことが影響している。

この数字を見るに、ロシアが意図的に欧州の邪魔をしている訳ではなく、実際に国内供給を優先させている可能性は否定できない。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・今冬はラニーニャ発生が厳冬リスクを高めているが、懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。

・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。

・Nord Stream2が稼働して欧州のガス需給が緩和した場合(価格下落要因)。

・石炭と同様、「化石燃料であること」を理由に上流部門投資が制限される、あるいは原油生産減少による随伴ガス供給が減少する場合(構造的な価格上昇要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念(価格上昇要因)。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが492,585枚(前週比 ▲19,277枚)ショートが125,353枚(+725枚)ネットロングは367,232枚(▲20,002枚)

Brentはロングが244,705枚(前週比▲14,363枚)ショートが90,648枚(▲1,254枚)ネットロングは154,057枚(▲13,109枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は短期的には上昇圧力が強まるが、中期的には調整圧力が強まる展開が予想される。冬場の発電燃料供給は欧州・中国共に十分な状態ではなく供給懸念が強まっていることが背景。

また、ロシアとウクライナの対立を受けた、ロシアに対する制裁強化懸念が強まっており、RusalやNornickelに対する制裁が行われ、供給が減少する可能性も供給面からニッケルやアルミ、銅の価格を下支えしよう。

実際、LME指定倉庫在庫の水準はリーマンショック前の価格高騰時の水準まで低下しており、供給面のリスクが浮き彫りになっている。

既にLMEインデックスはこのときの水準を上回っており地合は強い。しかし景気の循環的な減速と春先に向けての生産回復から数ヵ月のスパンでは一旦下落すると考えるのが妥当だろう。

また、中国の不動産市場の調整で減速しており製造業PMIを見るに世界景気も一旦ピークアウトしていると考えられることも中期的に価格を押し下げると考える。

なお、長期的にはインドの人口ボーナス期入り、まだ脱炭素の流れが続いていること、省エネや脱炭素の流れに変わりがないため、供給面・需要面の制限から価格が上昇するという見通しを変更する必要はないと考えている。

また、米政権による大規模なインフラ投資が行われる見通しであることも、鉱物資源需要の増加を通じて非鉄金属価格を押し上げよう。

しかし、バイデン政権支持率低下で、増税を伴う経済対策は受け入れられない可能性は高く、当初予定通りの規模で実行されるかは微妙に。1兆ドルインフラ投資は成立したが、1.75兆ドルの歳入・歳出法案の行方は不透明であり、実行されない可能性も考える必要がある。

【2022年LME金属需給見通し】

銅 生産 26,351千トン(前年25,043千トン) 需要 26,782千トン(25,613千トン) 需給 ▲432千トン(▲571千トン)

亜鉛 生産 14,293千トン(13,975千トン) 需要 14,423千トン(14,092千トン) 需給 ▲130千トン(▲117千トン)

鉛 生産 12,437千トン(12,437千トン) 需要 12,463千トン(12,243千トン) 需給 ▲26千トン(+194千トン)

アルミ 生産 68,782千トン(67,005千トン) 需要 70,116千トン(67,503千トン) 需給 ▲1,334千トン(▲498千トン)

ニッケル 生産 2,886千トン(2,602千トン) 需要 2,960千トン(2,758千トン) 需給 ▲75千トン(▲156千トン)

錫 生産 423千トン(413千トン) 需要 428千トン(425千トン) 需給 ▲5千トン(▲13千トン)

※カッコ内は修正前予想。

【金属固有の材料】

・インドネシアニッケル銑鉄(NPI)生産、2022年はこれまでの能力増強で増産の見込み。

2020年の新規追加キャパシティは36万7,000トン、2021年は10万1,000トン。

これらの新規キャパシティからの2021年の生産見通しは38万5,000トン(前年比+19万5,000トン)、2022年は45万6,000トン(7万1,000トン)の見込み(BBG調べ)

【中国重要統計の評価】

11月の中国の製造業PMIは50.1(前月49.2)と改善した。生産が52.0(48.4)と回復したことが影響した。しかし、新規受注(48.8→49.4)、輸出新規受注(46.6→48.5)と回復しているものの依然として50の閾値を大半のサブインデックスが下回っている。

50の閾値を上回っているのは生産と購買量、かなり低下したが投入価格指数、業界動向指数のみであり、統計としてはそこまで強い統計だったとは言い難い。

価格に対する説明力が高い新規受注・在庫レシオは、原材料在庫レシオが1.036(前月1.038)と低下、完成品在庫レシオは1.031(1.054)と低下しており、再び原材料・完成品を巡る需給は緩和している。非鉄金属価格をはじめとする工業金属価格の下押し要因となる。

一方で、これまで工業金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、鉄鋼業PMIは59.1(前月56.9)と改善している。

昨年からの不動産セクターの規制強化で減速傾向が強まっていた。しかし、エバーグランデ問題を皮切りに住宅市場が混乱する可能性が高まったため、中国政府は「三道紅線」を設定、レバレッジ規制の遵守状況によっって開発業者の借り入れ能力が決まる。

しかし、この規制導入で健全な企業、国有企業ですら物件の買い取りを渋り始めたため、この規制を緩和し物件取得目的の債務に関しては、借入比率の算出に含めないとした。恐らくこの規制の若干の緩和が建設業セクターのマインドを改善した物と考えられる。

ただしレバレッジ規制は継続する見込みであり、不動産セクター全体に下押し圧力が掛かっている状況に大きな変化はない。

11月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲9.1%の51万402トン(前月▲33.5%の41万1,000トン)と過去5年平均を上回り輸入が増加した。

10月は9月の下落で9,000ドルまで水準が低下していたため、輸入が加速したとみられる。

一方、銅精鉱の輸入は前年比+19.6%の218万8,000トン(前月+6.3%の179万7,000トン)と高い水準を維持している。国内在庫水準の低さと、通常年末にかけて増加する電線向けの投資需要の回復が影響しているとみられる。

エネルギー不足の影響で輸入の伸びが減速していたが、中国政府の対策推進によりやや国内生産が回復した可能性はある。ただ、銅製錬事業者の10月の稼働率は86.1%と前月、過去5年の最低水準より低く、まだ回復は確認されていない。

10月の銅スクラップの輸入は前年比+98.1%の13万3,011トン(前月+68.3%の13万4,454トン)。

統計からはまだ中国の工場の生産・稼働の混乱は続いており、正常化はまだ先になると予想される。

工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-10月累計で前年比+10.9%(1-9月期+11.8%)と伸びが鈍化した。ただし単月ベースでは+3.5%(+3.1%)とやや伸びが回復している。

電力不足や不動産セクターの減速が影響しているとみられる。

実際、1-10月期の中国不動産開発投資は前年比+7.2%の12兆4,934億元(1-9月期+8.8%の11兆2,568億元)と減速が続いている。

この結果、ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+6.1%(+7.3%)と減速が明確に。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+8.5%(+9.8%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。

ただし、いずれも伸びの減速でありマイナスにはなっていないことから、中国の成長は継続しており需要面は価格を押し上げる可能性がある。価格上昇はこれを満たすだけの十分な供給ができていないことによる。

しかし、需要の伸びが想定を上回っている以上、電力供給などの問題が解決すれば供給が増加し価格の下押し要因となる。

【政策動向・脱炭素】

政策動向・脱炭素の流れは中長期的な材料。米バイデン政権は8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画実施計画。

道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。

さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。

この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高い。

軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要する見込み。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・中国不動産大手恒大集団の破綻懸念が中国の住宅セクターに広がり、中国の不動産バブルがはじける場合(価格下落要因)。

・ロジスティクスに障害が残る中、非鉄金属の偏在が現物プレミアムを押し上げるリスク(北米で顕在化)。

・猛暑や渇水による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

チリでは上院が(修正の可能性を含み)以下の法案を可決。12月19日の大統領選決選投票の結果で、左派のガブリエル・ボリック氏が勝利した場合、法制化される可能性が高い。

3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。

2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%

年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。

2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。

・メキシコは鉱業改革法の中で、エネルギー転換に必要なリチウムとその他の戦略的鉱物の採掘権をこれ以上容認しないとしており、これに銅やネオジム、プラセオジムなどのレア・アースも含まれる可能性。

・インドネシアが再び低品位ニッケル鉱石の輸出を制限する場合(ニッケル価格の上昇要因)。

・LMEベースメタルではないが、中国ではレア・アースの生産を国有企業に集約して管理する動きが強まっており、今後の自動車セクターの中核となる電気自動車生産のサプライチェーンに大きな影響を与える可能性。

レア・アース大手五鉱稀土は、親会社の中国五鉱集団がアルミ大手のチャイナルコやレア・アースの大産地である江西省政府との間でレア・アース関連資産の戦略的な再編交渉を進めていると発表。

中国政府が2020年および2021年に許可したレア・アースの採掘割当量を見ると、CMRE、チャイナルコ、江西省地方政府傘下企業の3社だけで、中国全土で採掘を許可された(ジスプロシウムなど)重希土類の割当量の67.9%、(ネオジムやセリウムなど)軽希土類の割当量の39.1%を占める。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲5.4%の259億ドル(前週 274億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲4.0%の5,431.2千トン(前週 5,659.9千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は中国政府の発電燃料供給不足と環境改善目的の鉄鋼製品生産減少、中国不動産セクターの調整は継続する可能性が高く、鉄鋼向け需要が減少する見通しであることから水準を切下げる展開を予想。

ただ、現在の鉄鋼製品価格は「対鉄鉱石で割高、対原料炭対比で割安」であり、この状況が安定化した場合、「鉄鋼製品価格下落、鉄鉱石価格上昇、原料炭価格下落」となるシナリオの蓋然性が高い。

一方、既に鉄鉱石在庫は絶対水準・在庫日数水準でも過去5年の最高水準を上回っており、現状、製鉄所の稼働停止が続くのであれば「もう要らない状態」である。

となると、当面は鉄鉱石価格は低迷を余儀なくされ、製鉄所の稼働がエネルギー問題などが解消して再稼働するまでは低迷し、その後、割安になりすぎた水準が訂正される中で上昇に転じる、と考えるのが妥当ではないか。

また、来年は米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加が期待されることも、鉄鉱石価格のさらなる下落を抑制すると考える。

なお、鉄鉱石先物の期先の価格が限界生産コストの目安として意識されるが、100ドル程度だった期先の水準は80ドル台で推移しており、中期的な価格の目線はやや切り上がった。

原料炭については中国の国内生産の回復と、豪州からの輸入再開で徐々に中国の国内需給が緩和すると見られるため、長期的には下落に転じると考える。

しかし足下は豪州の中国向け輸出再開を受けて海上輸送市場が逼迫すると見られ、海上輸送炭価格は一旦上昇余地を探る動きに。

【中国の政策動向】

中国共産党は2021年から始まった5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。今のところ昨年の生産量を超えないようにする、というのが中国政府の目標。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられている。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。

中国3番目の鉄鋼ハブである山東省は、2021-2025年の5ヵ年計画で、素行の環境上限(一般炭消費量535キログラム、2020年は547キログラム)、硫化物排出を0.3キログラム(2020年 0.85キログラム)、窒素化合物排出を0.6キログラム(1.6キログラム)、水の使用量を2.85立法メートル(3立方メートル)に低減させる計画。

粗鋼生産が減少すれば、鉄鉱石の在庫水準の指標である在庫日数も、分母が小さくなるため上昇が予想され、鉄鉱石価格の下落要因となる。これは原料炭も同様。

【中国重要統計の評価】

11月の中国鉄鋼業PMIは総合指数は36.6(前月38.30)と減速が続いた。冬場で市場全体の活動が鈍化していること、環境保全や電力供給不足を背景とする生産制限が生産活動を鈍化させていることが影響した。

実際、サブインデックスの新規受注は減速(39.0→28.2→25.9)、輸出向け新規受注(39.5→38.7→34.8)と内外需とも減速している。価格は低下したものの需要を喚起するには至っていない。

価格に対する説明力が高い新規受注・完成品レシオは0.91(前月0.92)と低下しており製品需給は緩和している。生産調整(36.8→33.5)があっても在庫積み上がりやすい地合になっており、足下の需要が旺盛ではないことを示唆している。

これまで工業金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、鉄鋼業PMIは59.1(前月56.9)と改善している。

昨年からの不動産セクターの規制強化で減速傾向が強まっていた。しかし、エバーグランデ問題を皮切りに住宅市場が混乱する可能性が高まったため、中国政府は「三道紅線」を設定、レバレッジ規制の遵守状況によっって開発業者の借り入れ能力が決まる。

しかし、この規制導入で健全な企業、国有企業ですら物件の買い取りを渋り始めたため、この規制を緩和し物件取得目的の債務に関しては、借入比率の算出に含めないとした。恐らくこの規制の若干の緩和が建設業セクターのマインドを改善した物と考えられる。

ただしレバレッジ規制は継続する見込みであり、不動産セクター全体に下押し圧力が掛かっている状況に大きな変化はない。

一方、製造業PMIは50.1(前月49.2)と改善した。生産が52.0(48.4)と回復したことが影響した。しかし、新規受注(48.8→49.4)、輸出新規受注(46.6→48.5)と回復しているものの依然として50の閾値を大半のサブインデックスが下回っている。

50の閾値を上回っているのは生産と購買量、かなり低下したが投入価格指数、業界動向指数のみであり、統計としてはそこまで強い統計だったとは言い難い。

工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-10月累計で前年比+10.9%(1-9月期+11.8%)と伸びが鈍化した。ただし単月ベースでは+3.5%(+3.1%)とやや伸びが回復している。

電力不足や不動産セクターの減速が影響しているとみられる。

実際、1-10月期の中国不動産開発投資は前年比+7.2%の12兆4,934億元(1-9月期+8.8%の11兆2,568億元)と減速が続いている。

この結果、ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+6.1%(+7.3%)と減速が明確に。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+8.5%(+9.8%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。

ただし、いずれも伸びの減速でありマイナスにはなっていないことから、中国の成長は継続しており需要面は価格を押し上げる可能性がある。価格上昇はこれを満たすだけの十分な供給ができていないことによる。

しかし、需要の伸びが想定を上回っている以上、電力供給などの問題が解決すれば供給が増加し価格の下押し要因となる。

【中国鉄鋼製品輸出入・在庫動向】

11月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲23.0%の142万4,000トン(前月▲41.6%の112万7,000トン)と回復した。国内製鉄所の稼働が低迷(主要生産地である唐山市の高炉稼働率は過去5年平均である72.8%を下回る72.2%)を受けて、輸入品需要が高まったと考えられる。

10月の中国粗鋼生産は前年比▲24.5%の7,158万トン(前月▲21.2%の7,375万トン、8月▲13.2%の8,324万トン、7月▲8.4%の8,679万トン、6月+1.5%の9,388万トン、5月+6.6%の9,945万トン)と減速が鮮明になっている。

一方、10月の鉄鋼製品の輸出は前年比+11.3%の449万7,000トン(前月+28.5%の492万トン)と前月から前年比の伸びを縮小させ過去5年平均を下回る水準。やはり国内供給を優先させていることが窺える。

なお、中国の鉄鋼製品需要は鈍化しているとみられるが、在庫水準は前週比▲38万2,000トンの111万トン(過去5年平均 819万3,000トン)と例年を上回るが季節的な減少が続いている。

【中国鉄鉱石輸出入・在庫動向】

11月の鉄鉱石の輸入は前年比+7.0%の1億496万トン(前月▲14.2%の9,160万トン)と急増した。鉄鉱石在庫の水準が低かったこと、価格が急落したことによる割安感からの輸入増加だったと考えられる。

ただし、鉄鉱石在庫の水準は既に高いため、鉄鉱石価格が割安ではあるものの12月以降の輸入は減速するのではないか。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+60万トンの1億5,600万トン(過去5年平均1億2,907万4,000トン)、在庫日数は40.2日(過去5年平均 31.6日)と数量ベース・日数ベースでも過去5年の最高水準を上回っており、需給が緩和していることは明確で価格の下押し要因となる。

【中国原料炭輸出入・在庫動向】

原料炭は中国の生産活動回復が継続しているが、前年比の伸び鈍化が明確になってきたため(中国政府の方針通り)、価格は下落余地を探る動きになると考える。

また、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることも、海上輸送原料炭価格を下押ししよう。

とは言え、環境規制強化の流れで世界的に原料炭供給を増加させられる地域が限定されることから、下落余地も同様に限定される都見るのが妥当だ。

10月の中国の原料炭輸入は前年比▲25.7%の438万4,018トン(前月▲35.3%の434万6,477トン)と回復しているが、過去5年レンジを下回った状態が続いている。ただし注目すべきは豪州からの輸入が回復している点である。「背に腹はかえられない」状態に中国はおかれていると言えるだろう。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲11万トンの214万トンとなったが、過去5年の最高水準である212万トンを上回っている。

在庫日数は10.3日と、過去5年の最高水準である9.0日を上回っており、鉄鋼製品生産がこの水準で続けば十分な在庫が確保されていることになる。

【見通しの固有リスク】

・中国の不動産セクター減速が、建材需要を減少させる可能性(鉄鋼製品価格の下落を通じて鉄鋼原料価格の下落要因)。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合(価格上昇要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク(価格上昇要因)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

【金】

金価格は米FRBはテーパリングを開始、早ければ来年6月に終了の予定だったが、テーパリングのペースを早めて3月に終了、早期に利上げも、となる可能性も出てきた。この場合、金価格には下押し圧力が掛りやすくなる。

しかし、テーパリングの加速や場合によって利上げも検討される中では株価の調整圧力が強まり、長期金利の下押し要因となる。これは金価格にとってはプラスだ。しかし、インフレ懸念が後退すれば期待インフレ率は低下し、実質金利の上げ要因となるため金価格にはマイナスとなる。

以上を勘案すると、結局の所、金価格は1,700ドル~1,800ドルのレンジで推移する可能性が高く、FRBが懸念しているように5%や6%のインフレが続くのならば、このレンジが上振れする可能性がある(逆の場合は下振れる)と言うことだろう。

結局の所、現在のインフレが単なる供給制限によるものなのか(恐らくその可能性が高い)、そうではないのか?を見極める必要性があるため、現状、材料不足の感は否めない。

なお、過去5年平均を基準にすると名目金利1bpに対する金価格の感応度は±3ドル弱であり、米10年金利が現在の水準から30bp上昇すれば▲90ドルの下落圧力となる(60bpで▲180ドル)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,689ドル、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は94ドル。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で130ドル、6ヵ月で160ドル、1年で165ドル、5年で180ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

【銀】

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、80.3倍。過去1年を基準にすると71倍、5年では80倍、2000年以降では66倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、工業需要の増加が必須。今後、IT化の進捗でエレクトロニクス向けの需要が増加することが必要。

太陽光パネルの増設は米中対立の激化で進まないと見られたが、支持率低下にあえぐ米バイデン政権が「協調できるところでは協調する」という方針にトーンダウンしたため、今後、太陽光向けの需要は増加するのではないか。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

【PGM】

プラチナ価格は自動車の半導体供給不足の影響で急落していたが、半導体供給が回復しつつあるため、来春以降は需要増加で価格は上昇圧力を強める展開が予想される。

需給バランスは投機を除けば供給過剰であり、投機筋の「思惑」が価格を左右しやすい。足下、パラジウムからプラチナへの「触媒再シフト」が見られているため、底堅い推移となろう。

パラジウムは半導体供給低迷が自動車生産に影響を与える状況が来春ぐらいまでは続く可能性があるため、当面低水準での推移。しかし自動車販売が回復すれば再び高値圏へ。

11月の米自動車販売は年率1,286万台(市場予想1,342万台、前月1,299万台)と減速、目先はパラジウム価格の下落要因に。

中国の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で以下の通りであり、明らかに伸びが減速している。半導体供給不足に加え国内景気の伸び減速が影響。

10月 前年比 ▲9.0%の233万3,000台9月 ▲19.5%の206万6,000台8月 ▲17.4%の179万8,841台7月 ▲11.8%の186万3,550台。6月 ▲12.4%の201万5,309台5月 ▲3.0%の212万7,000台4月 +8.8%の225万台3月 +76.5%の252万5,000台2月 +371%の146万台1月 +30%の250万台

調査会社のオートフォーキャスト・ソリューションズによれば半導体不足による供給減少による減産が9月26日時点で▲893万4,000台に上るとし、2021年の減産規模は▲1,030万台に達するとみている。これは昨年の販売台数(7,700万台)の13.4%に相当する。

この回復がある、ないしは供給側の混乱(南アフリカ)による生産減少がなければ、PGM価格は低水準で推移しよう。

【見通しの固有リスク】

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・米国をはじめとする先進諸国が金融引き締め方向に舵を切っており、アフリカや中南米、東南アジア、東欧など新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトが加速、「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが300,518枚(前週比 ▲9,735枚)、ショートが83,333枚(▲1,060枚)、ネットロングは217,185枚(▲8,675枚)、銀が62,930枚(+252枚)、ショートが33,097枚(+8,853枚)、ネットロングは29,833枚(▲8,601枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが27,056枚(前週比 ▲1,352枚)ショートが20,994枚(+1,534枚)、ネットロングは6,062枚(▲2,886枚)

パラジウムが2,862枚(▲106枚)、ショートが5,593枚(▲348枚)ネットロングは▲2,731枚(+242枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は堅調な推移になると考える。冬場のラニーニャ現象の発生(北半球の天候相場は終了も、南半球の天候相場入り)が懸念されていることや、エネルギー価格が戻りを試し、代替エネルギー需要が高まることが材料。

10月の中国の大豆輸入は前年比▲10.6%の857万トン(前月▲41.2%の611万トン)と急速に回復し、過去5年平均を回復した。

中国の大豆港湾在庫は過去5年レンジの最高水準は下回っているが、高い水準を維持している。)

Locust Watchでは中東・北アフリカが小雨であるため、群れの繁殖煮適していないことから被害への懸念は後退している。

しかし、ソマリアの一部とエチオピア南部に群れが移動しており、現在、食糧危機で治安が悪化しているエチオピアでの蝗害発生による、さらなる治安の悪化は無視できないリスクになっていると考えるべきだろう。https://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/DL518map_pg1e.jpg

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象発生による投機筋の買い圧力の強まり(価格の上昇要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)

・12月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 177.0Bu/エーカー(NA、177.0)大豆 51.2Bu/エーカー(NA、51.2)小麦 44.3Bu/エーカー(NA、44.3)

・12月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億6,200万Bu(NA、150億6,200万Bu)大豆 44億2,500万Bu(NA、44億2,500万Bu)小麦 16億4,600万Bu(NA、16億4,600万Bu)

・12月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億Bu(NA、25億Bu)大豆 20億5,000万Bu(NA、20億5,000万Bu)小麦 8億4,000Bu(NA、8億6,000万Bu)

・12月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 14億9,300万Bu(14億7,479万Bu、14億4,000万Bu)大豆 3億4,000万Bu(3億5,471万Bu、3億4,000万Bu)小麦 5億9,800万Bu(5億8,921万Bu、5億8,300万Bu)

・9月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 12億3,600万Bu(41億1,100万Bu)大豆 2億5,600万Bu(7億6,900万Bu)小麦 17億8,000万Bu(8億4,500万Bu)

・11月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 2,089万ha(2,086万ha、2,087万ha)大豆 4,027万ha(4,042万ha、3,992万ha)

・11月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億1,671万トン(1億1,929万トン、1億1,631万トン) 単収 5,587kg/ha(5,717kg/ha、5,575kg/ha)大豆 1億4,201万トン(1億4,415万トン、1億4,075万トン) 単収 3,526kg/ha(3,569kg/ha、3,526kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが482,428枚(前週比 +8,074枚)、ショートが71,614枚(▲7,828枚)ネットロングは410,814枚(+15,902枚)

大豆はロングが125,257枚(▲4,396枚)、ショートが65,603枚(▲8,733枚)ネットロングは59,654枚(+4,337枚)

小麦はロングが111,973枚(▲3,884枚)、ショートが96,306枚(▲1,257枚)ネットロングは15,667枚(▲2,627枚)

◆本日のMRA's Eye


「原油価格は景気そのものに左右される」

乱高下を続けている原油価格であるが、今回のMRA's Eyeでは今後の見通しについて、短期と長期に分けて整理したい。

原油価格動向を占う上で、短期的にはコロナからの脱却や気温の変動、景気の循環、長期的には構造変化がテーマとなる。

短期的な動きを見ると4年程度で訪れている景気循環、主に在庫投資循環サイクルに起因する景気循環の終盤にさしかかっており、このタイミングで金融政策がタカ派に転じて価格が下落しても実はおかしくなかった。

オミクロン株は不明なところが多いものの、デルタ株が発生した時ほどの毒性があるわけでは無く、ウイスルの生存戦略を考えると感染力が強く、毒性の強いウイルスの発生は考え難い。

そこで、コロナの変異種が見つかって以降の原油価格推移を見てみると、ワクチン開発に成功して以降、変異株が発生したからといって価格が下落するようなことは起きていない。

この点を考慮すると、オミクロン株がゲームチェンジャーになったと考えるのはやや不自然である。それよりは景気に先行性があるとされる製造業PMIとの連動性が高いことが分る。

つまり、コロナは確かに相場の変動要因にはなり得るが、それは一番はじめのパンデミックのみといっても言い過ぎではなく、結局の所そこから景気にどの程度影響が及んでいるか?で価格が決まっているといえる。

オミクロン株発生で下落したのは、既にPMIが調整を始め、かつ、米金融政策がタカ派に転じた中での需要減少に繋がる可能性があるイベントだったからだ。

となると、当面はFRBの金融政策動向が価格動向を左右すると考えられる。グラフの通り、FOMCやパウエル議長の発言前後で価格動向が変化していることが分る。

今後は、冬場であること、それでも減産カードをOPECプラスが保有していることから価格は下支えされるが、最も価格に影響を及ぼしやすい景気がテーパリングや、場合によると利上げの影響で減速するためやはり下押し圧力が強まると予想される。

しかしながら、オミクロン株のワクチンも3月頃にできる見通しであることや、世界各地で選挙が来年は予定されており、その意味で景気刺激をしなければならないため価格は再び上昇するのではないか。

この場合でも、原油価格絶対水準が上昇しているため、インフレに影響する「前年比の上昇率」は鈍化すると見ている。

ただ、超長期で考えた場合、上流部門投資が手控えられ、OPECプラスのシェアが上昇する中では、原油の供給制限が価格の上昇と変動性を高めることが予想されるため、脱炭素の進捗とOPECシェアの上昇が原油価格を持続的に押し上げていくリスクは小さくなく、むしろ価格のリスクは上向きと考えるべきだろう。

◆主要ニュース


・11月日本国内企業物価指数 前月比+0.6%(前月+1.4%) 前年比+9.0%(+8.3%)

・11月独消費者物価指数 前月比+0.3%(前月+0.5%) 前年比+6.0%(+4.6%)

・10月インド鉱工業生産 前年比+3.2%(前月+3.3%)

・11月米消費者物価指数 前月比+0.8%(前月+0.9%)、 前年比 +6.8%(+6.2%)
 コア 前月比+0.5%(+0.6%)、前年比+4.9%(+4.6%)

・11月米実質平均賃金 前年比▲1.9%(前月▲1.3%)
 実質平均時給▲1.9%(▲1.6%)

・12月米ミシガン大学消費者マインド指数速報
 70.4(前月67.4)
 現況指数 74.6(73.6)
 先行指数 67.8(63.5)
 1年期待インフレ率 4.9%(4.9%)
 5年期待インフレ率 3.0%(3.0%)

・11米財政収支 ▲1,913億ドルの赤字(前月▲1,453億ドルの赤字)

・独新政権、環境投資で600億ユーロの補正予算を編成、13日にも閣議決定の見通し。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数471(前週比+4)
 ガスリグ 105(前週比+3)。

・バイデン政権、海外の石炭火力発電やその他の炭素集約型のプロジェクトに対する連邦支援の即時打ち切りを決定、命令。

【メタル】

・Q122アルミ日本向けプレミアム引き下げ。195ドル程度で着地の公算。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +4.95%/ +376.60%
2.欧州排出権 ( その他 )/ +4.40%/ +156.92%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +4.39%/ +22.47%
4.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +2.91%/ +54.59%
5.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ +2.47%/ ▲13.01%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲3.18%/ +81.44%
65.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲2.91%/ ▲27.95%
64.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲2.47%/ +59.85%
63.LIFFEココア ( その他農産品 )/ ▲2.33%/ ▲13.01%
62.CBT大豆油 ( 穀物 )/ ▲2.19%/ +23.68%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :35,970.99(+216.30)
S&P500 :4,712.02(+44.57)
日経平均株価 :28,437.77(▲287.70)
ドル円 :113.44(▲0.05)
ユーロ円 :128.33(+0.17)
米10年債 :1.48(▲0.02)
中国10年債利回り :2.87(▲0.01)
日本10年債利回り :0.06(+0.01)
独10年債利回り :▲0.35(+0.01)
ビットコイン :47,952.18(▲45.58)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :32.91(▲0.26)
エネルギー :60.17(▲0.27)
ベースメタル :24.04(+0.01)
貴金属 :24.46(+0.15)
穀物 :23.56(+0.09)
その他農畜産品 :29.49(▲0.64)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :63.04(+0.2)
Brent :55.77(+0.24)
米天然ガス :62.97(+0.05)
米ガソリン :61.16(▲0.11)
ICEガスオイル :59.34(▲2.39)
LME銅 :19.60(+0)
LMEアルミニウム :23.40(▲0.4)
金 :18.41(▲0.09)
プラチナ :28.76(+0.42)
トウモロコシ :15.35(+0.01)
大豆 :18.41(▲0.09)

【エネルギー】
WTI :71.67(+0.73)
Brent :75.15(+0.73)
Oman :73.69(+0.59)
米ガソリン :213.72(+0.88)
米灯油 :225.16(+0.13)
ICEガスオイル :653.25(±0.0)
米天然ガス :3.93(+0.11)
英天然ガス :268.80(+12.69)

【貴金属】
金 :1782.84(+7.51)
銀 :22.20(+0.23)
プラチナ :945.65(+6.69)
パラジウム :1764.32(▲52.95)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,531(▲26:12B)
亜鉛 :3,299(▲23:33B)
鉛 :2,265(▲18:15B)
アルミニウム :2,619(▲15:6B)
ニッケル :19,820(▲10:140B)
錫 :39,450(▲100:700B)
コバルト :69,529(▲3)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9454.00(▲96.50)
亜鉛 :3300.00(▲19.50)
鉛 :2294.00(+14.00)
アルミニウム :2611.00(▲16.00)
ニッケル :19835.00(▲70.00)
錫 :39220.00(▲230.00)
バルチック海運指数 :3,272.00(▲71.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :103.31(+0.20)
SGX鉄鉱石 :105.17(▲0.28)
NYMEX鉄鉱石 :105(▲1.49)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :346.67(+1.67)
大連原料炭先物 :392.46(+0.47)
上海鉄筋直近限月 :4,303(+3)
上海鉄筋中心限月 :4,307(▲26)
米鉄スクラップ :608(±0.0)

【農産物】
大豆 :1267.75(+3.25)
シカゴ大豆ミール :377.90(+9.10)
シカゴ大豆油 :53.59(▲1.20)
マレーシア パーム油 :5242.00(+32.00)
シカゴ とうもろこし :588.50(±0.0)
シカゴ小麦 :782.00(+8.50)
シンガポールゴム :190.70(▲1.00)
上海ゴム :14255.00(+80.00)
砂糖 :19.71(+0.02)
アラビカ :232.70(▲7.65)
ロブスタ :2376.00(▲25.00)
綿花 :106.23(▲0.36)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :73.05(+0.63)
シカゴ生牛 :136.85(+0.13)
シカゴ飼育牛 :164.88(+0.80)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。