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インフレを巡る日米の違いとドル円相場
  • MRA外国為替レポート

2021年10月25日号

◆先週の市場総括


先週は、米国で企業決算発表が佳境となり、内容に好悪あり銘柄により株価強弱まちまちながら概ね良好と受け止められた。

前週の小売売上高が良好だったこともあり週前半の米国株は堅調。バイデン政権がロサンゼルス港のフル稼働など供給網の混乱解消に対策を打ち始めたことも安心感。

一方、FRB当局者からはインフレ高止まり懸念、利上げ前倒しの可能性も指摘され、2年債利回りが週末にかけ上昇し0.5%に接近。ハイテク株の重石となった。

逆に10年債利回りは上昇一服、1.7%近くから1.6%台半ばへやや低下した。日経平均は週初堅調で一時29,500円をつけたが週末にかけて下落。総裁選で自民党が過半数割れとの見方が台頭し政局不透明感が嫌気された。

為替市場では週後半に円が全面高。円先安感で投機的な円売りが積み上がり、急速に円安が進んでいたことから、週末にかけ利益確定の円買い戻しが強まった。

ドル円相場は週初の114円30銭から113円40銭に下落。ユーロ円相場は132円台半ばから133円台半ばに上昇した後、週末は132円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.16ちょうど近辺から1.16台半ばへややユーロ高ドル安に振れた。

月曜日の東京市場では日経平均は上値重く推移。週末の米国株が堅調だったことで上昇が期待されたが利益確定売りが上値を抑えた。中国の経済指標が弱かったことも重石。

29,000円~100円でもみ合いの後、後場は29,000円ちょうど近辺で推移。引けは前週末比▲43円安の29,025円。

中国の経済指標は、7-9月期GDPが前年同期比+4.9%と前期+7.9%から大きく減速。前期比も+1.3%から+0.2%に減速。

小売売上高(9月)は前年同月比+4.4%と前月+2.5%から持ち直し予想+3.3%を上回った。一方、鉱工業生産(同)は前月+5.3%から+3.1%に減速し予想+4.5%を下回った。都市部固定資産投資も+8.9%から+7.3%へ減速。

ドル円相場は114円20銭近辺から朝方40銭に上昇したが仲値10時頃には押されて114円ちょうど~10銭でもみ合い。夕刻から欧州市場、米国市場では114円30銭を中心に概ね20銭~40銭で上下した。

ユーロ円相場は132円50銭から70銭に上昇した後、下落して20銭~50銭で上下。ユーロドル相場は1.16ちょうど近辺から1.1570近辺に小幅下落した。

ユーロは欧州市場から米国市場にかけては反発、対円、対ドルで堅調。徐々に水準を切り上げた。ユーロ円相場は132円50銭~70銭でのもみ合いから132円70銭~80銭に上昇して引けは132円70銭。

ユーロドル相場は1.1580から1.1620へ上昇し、引けは1.1610。

米国株は中国景気減速懸念が重石となったが決算期待が下支え。NYダウは前週末比▲36ドル安の35,258ドル。ナスダックは+124ドル高の15,021ドル。

米長期金利が上昇。10年債利回りは一時1.62%台をつけたが引けにかけて1.59%に低下、2年債利回りも0.44%をつけた後0.42%に低下。ハイテク株や高PER銘柄を支えた。

発表された米国の鉱工業生産(9月)は前月比▲1.3%と大幅減。前月も+0.4%から▲0.1%に下方修正された。製造業生産も▲0.7%。設備稼働率は前月76.4%から75.2%に大幅に低下した。半導体など部品供給や物流の停滞で生産調整を余儀なくされた。

火曜日の東京市場では日経平均は堅調。前日の米国株が米長期金利上昇一服でグロース株中心に堅調、好決算銘柄が買われた流れで、日本株も半導体関連やグロース株中心に上昇した。

一方、ドル高円安一服で輸出関連株は伸び悩み。寄付きは29,200円で高寄りしたがその後は29,100円に押されたが後場は持ち直し前日比+190円高の29,215円で引けた。

為替市場ではドルが全般的に軟調となった。

ドル円相場は114円30銭近辺で始まり10銭~20銭でもみ合い。さらに夕刻には113円90銭に下落して114円中心にもみ合いとなった。

ユーロ円相場は132円70銭で始まり133円ちょうどに上昇、ただドル円相場の下落につれて132円70銭に反落した。ユーロドル相場は1.1610で始まり1.1650に上昇してもみ合い。

米国株は堅調。決算発表で好業績銘柄に買いが入った。前週に発表された小売売上高が良好だったこと、バイデン政権がロサンゼルス港の早期24時間フル稼働を目指す方針を示したことで供給網の混乱がピークアウトするとの期待も支えに。

NYダウは前日比+198ドル高の35,457ドル、ナスダックは+107ドル高の15,129ドル。VIX指数は▲0.61ポイント低下して15.70。米10年債利回りは1.645%に、2年債利回りは0.401%に上昇。

ドルは反発。ドル円相場は持ち直して114円20銭~30銭で推移し40銭に一段高となって引け。ユーロドル相場は1.1670に上昇していたが反落して1.1630~40。

ユーロ円相場は132円80銭に下落した後、133円ちょうど近辺で推移した。

発表された米国の住宅着工件数(9月)は季節調整済み年率換算で1,555千戸と前月1,615千戸から減少。2ヵ月ぶりに減少したが資材や労働力不足が原因と報じられた。

FRBのウォーラー理事は、年末まで高インフレ状態が続けば2022年の利上げもありうる、と発言した。

水曜日の東京市場では日経平均がおよそ3週間ぶりの高値に上昇した。米国株が堅調だったことで朝方から買いが先行。一時前日比+200円高となった。経済正常化が一段と進むとの見方が支えとなり空運や鉄道に買い。ただ利益確定売りに上値も限定的で上げ幅を縮めた。

29,400円近辺で高寄りして29,500円に上昇するも、反落して29,200円~300円のもみ合い。前日比+40円の小幅高、29,255円で引けた。

発表された日本の9月の貿易統計では、貿易収支が▲6,230億円の赤字。輸入は前年同月比+38.6%の大幅増加で7兆4,640億円に達し年初来最大となった。

ドル円相場は114円40銭で始まり朝方に114円70銭に上昇。FRBウォーラー理事が2022年の利上げの可能性に言及したことが支え。

ただ早々に反落してその後は軟調。114円50銭~60銭で推移した後、40銭中心に上下。ユーロ円相場も133円ちょうどから40銭に上昇した後は底固く40銭~50銭でもみ合い。

しかし東証引け後に急反落して欧州時間に入る頃には132円90銭へユーロ安円高。ユーロドル相場は1.1630で始まり1.1650に上昇した後、1.1620~30に押し戻された。

米国株はまちまち。好決算銘柄に買いが入り、とくにヘルスケア関連銘柄が堅調。一方、20年債入札が不調で米長期金利が上昇。ハイテク株の重石となった。

NYダウは一時2か月ぶりに最高値を更新した後、前日比+152ドル高の35,609ドル。ナスダックは▲7ドル安の15,121ドル。VIX指数は▲0.21ポイント低下して15.49。

原油価格WTI先物(11月限)は週間在庫統計で在庫減少となったことから上昇。一時84ドル台をつけ83.87ドル。米10年債利回りは1.658%。

ドル円相場は利食い売りに押されて114円10銭に下落したが、リスク選好の回復でクロス円相場、ユーロ円相場の上昇に支えられ114円30銭に反発して引け。

ユーロ円相場は一時132円70銭台に下落したが持ち直し133円20銭で引け。ユーロドル相場は底固く1.1650~60。

公表された地区連銀経済報告(ベージュブック)では、経済や緩やかなペースで拡大し大部分の地区が著しく高水準の物価を報告したとされた。いくつかの地域で人手不足、供給混乱で成長が鈍化したと指摘された。

木曜日の東京市場では日経平均が大幅下落。29,100円近辺で高寄りし29,200円に小幅上昇したものの上値重く反落。後場に入ると大幅に値を崩し前日比▲546円安の28,708円で引けた。

米長期金利上昇を受けてハイテク株が軟調。総選挙で自民党が単独過半数割れとの予測で政局不透明感が嫌気された。

香港市場で取引再開となった恒大集団の株が大きく下落したことも重石。ドル円相場は114円30銭~40銭で始まり午後はリスクオフで円高に振れた。114円ちょうど~10銭近辺でもみ合い。

ユーロ円相場も133円20銭で始まり30銭台でもみ合ったが下落して132円70銭。ユーロドル相場は1.1650で始まり60台に強含んだがその後はリスクオフで軟調。

欧州株は恒大集団のデフォルト懸念で軟調。米国株はS&P500指数が9月初以来の史上最高値をつけたがダウは決算が予想を下回ったIBMが押し下げ要因となった。好業績銘柄には買いが入りまちまち。

ハイテク株は全般に堅調。景気回復基調や雇用堅調は底流で支え。NYダウは前日比▲6ドル安の35,603ドル。ナスダックは+94ドル高の15,215ドル。VIX指数は▲0.48ポイント低下して15.01。

米10年債利回りは1.7%台をつけて1.695%。2年債利回りは0.45%台に乗せた。

ドル円相場は113円70銭~114円で上下し引けは114円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.1640中心に上下した後やや下落し1.1620で引け。ユーロ円相場は132円台前半で上下し引けは132円50銭。

米国の週次の失業保険新規申請件数は290千件で前週293千件から小幅減少。継続受給者数も2,481千件と2,593千件から減少。いずれもコロナ禍以降で最少を更新した。

フィラデルフィア連銀製造業景気指数(10月)は前月30.7から23.8に低下。価格上昇圧力や人手不足が示された。

中古住宅販売(9月)は季節調整済み年率換算で629万戸と前月588万戸から大きく増加。価格は前年比+13%を上回った。

金曜日の東京市場では日経平均は小幅高。28,600円近辺で小幅安寄りした後、28,900円台に上昇してもみ合い。朝方に恒大集団がドル建て債券の利払いを実施すると報じられたことでで、ひとまずデフォルトが回避されることが明らかになり投資家心理が改善した。

ただ次週に主要企業の決算発表を控え様子見姿勢が強く、自民党過半数割れの懸念も重石となった。引けにかけて軟調となり上げ幅を縮めて前日比+96円高の28,804円。

ドル円相場は114円ちょうどで始まり朝方113円80銭に下落。株価が堅調に始まると114円20銭に持ち直したものの上値重く、夕刻にかけて113円90銭に下落。さらに欧州市場から米国市場にかけても円高が進み113円60銭に下落。

米国市場ではパウエル議長がインフレ長期化を懸念する発言をしたことで113円80銭に反発する場面もあったが利上げは時期尚早としたことで反落。引けにかけては113円50銭近辺でもみ合いとなった。

ユーロ円相場も同様の値動き。132円50銭で始まり30銭に下落した後80銭に反発。ただその後はドル円相場の下げに連れて132円50銭に下落。夕刻に80銭に持ち直したが、ユーロ圏のPMIが弱めだったことから欧州から米国市場にかけては一貫して下落し132円ちょうどをつけた。

大きく円安・円売りが進んでいたことで、週末にかけては手仕舞い・利益確定の円買い戻しが入った。

米国市場引けは132円10銭近辺。ユーロドル相場は1.1620~30でもみ合い夕刻から欧州市場は1.1640中心に上下。その後も方向感なく1.1630~50で上下し引けは1.1640。

米国株は決算に応じてまちまちの動き。NYダウは前日比+73ドル高の35,677ドル。ナスダックは▲125ドル安の15,090ドル。インテル1社が大きく下落に寄与。VIX指数は+0.42ポイント上昇して15.43。原油価格WTIは上昇して83.98ドル。

米長期金利は10年債利回りがアジア時間の1.69%から低下して1.64%。2年債利回りはパウエル発言で一時0.49%に上昇したが反落して前日と同水準の0.46%で引けた。

PMI景況感指数(10月)は、ユーロ圏が製造業が前月58.6から58.5へほぼ横ばい、サービス業が56.4から54.7へ悪化。米国は製造業が60.7から59.2へ悪化したが高水準、サービス業は54.9から58.2へ大きく改善した。

◆今週の3つの注目ポイント


今週も企業決算に注目が集まる。日本でも主要企業の9月期決算発表が佳境となる。

1.米国の経済指標

米国ではインフレ圧力が高まっているものの、足元の景気動向は雇用、個人消費を中心に堅調とみられ、スタグフレーションリスクからは程遠い。

今週の指標も景気堅調を示し、あるいは供給網の混乱の悪影響やインフレ圧力が垣間見えるか。

火曜日 ケースシラー住宅価格指数(8月、前年同月比、予想+20.0%、前月+20.0%)新築住宅販売(9月、季節調整済み年率換算、予想756千戸、前月740千戸)消費者信頼感指数(10月、予想108.5、前月109.3)リッチモンド連銀製造業指数(10月、予想5、前月▲3)

水曜日 耐久財受注(9月、前月比、予想▲1.0%、前月+1.8%、除く輸送機器、予想+0.4%、前月+0.2%)

木曜日 米週間新規失業保険申請件数(予想292千件、前週294千件)GDP(7-9月期速報、前期比年率、予想+2.7%、前期+6.7%)個人消費(同、予想+0.7%、前期+12.0%)

金曜日 雇用コスト指数(7-9月期、前期比、予想+0.9%、前期+0.7%)個人所得・消費支出(9月、前月比、予想▲0.2%・+0.6%、前月+0.2%・+0.8%)、消費支出価格指数(同、前年同月比、予想+4.4%、前月+4.3%)

2.ECB理事会、欧州の経済指標

木曜日にECB理事会が開催されラガルド総裁が定例の記者会見を行う。

欧州でもインフレ圧力が高まっているがECBは金融正常化に向けてさらに明確に舵を切るか、慎重姿勢を保つか。景気とインフレに対する見方のバランス、バイアスはどうか。

月曜日 ドイツIFO景況感指数(10月、予想98.0、前月98.8)

木曜日 ドイツ失業率(10月、予想5.4%、前月5.5%)同・消費者物価指数(同、前年同月比、予想+4.4%、前月+4.1%)

金曜日 ドイツGDP(7-9月期、前期比、予想+2.1%、前期+1.6%)ユーロ圏GDP(同、予想+2.1%、前期+2.2%)ユーロ圏消費者物価指数(9月、前年同月比、予想+3.7%、前月+3.4%)

3.日銀金融政策決定会合、展望レポート、黒田総裁会見

米欧でインフレ圧力が強まるなか、日本でも輸入インフレの影響が出始めている。資源価格、農産品価格、供給網の混乱、物流コストの上昇、に加えて円安が企業業績や消費に悪影響を及ぼすのではないかとの懸念が広がっている。

日銀の現状判断はどうか。

こうした状況で金融正常化は選択肢としてとれないとみられるが、従来の超金融緩和の継続スタンスを再確認することで内外景況格差や金利差をあらためて浮き彫りにし、市場の円先安感をあらためて刺激する可能性はないか。

◆今週のMRA's Eye


インフレを巡る日米の違いとドル円相場

先週は円安が一服。円先安感が急速に高まって円安が加速し、一時は115円に迫る勢いを見えていたが小休止した。週末にかけて利益確定の円買い戻しが優勢となりドル円相場は113円台半ばで引け。

シカゴ通貨先物の最新のポジションでは10月19日火曜日時点で円はネットで▲102,734枚の売り越し。10万枚を超える売り越しとなったのは2018年12月以来で2年10ヵ月ぶりとなる。

過去の例では、10万枚を超えると投機的な円売りもピークに近く、さらなる円売りが積み上がりにくくなる。円安のスピードが速かったことから利益確定の円買い戻しで一時的に円高に振れる局面も生じやすい。

投機主導の急速な円安は長続きしない。しかし緩やかな円安傾向、緩やかなドル高円安基調は不変だろう。

市場のテーマは当面大きく変化しそうにない。資源価格上昇、供給制約、による高インフレ圧力の継続が中心にある。日本では資源高と円安が景気に悪影響を及ぼすとの懸念が蔓延し始めた。

最新の9月の貿易統計によれば輸入金額は7兆4千億円に達した。前年比で+38.6%の大幅増。輸入は+13.0%増にとどまり、ネットでは▲6,230億円の貿易赤字となった。

前年比の輸入金額増加率に寄与したトップ3は、原油、医薬品、石炭、だ。医薬品はコロナワクチンの輸入によるものだろう。

国内景気が良好で需要が旺盛なことで輸入数量が増加して輸入金額が増加するなら悪い話ではない。

ただ今回は資源価格の増加で価格高騰による輸入金額の増加がメイン。この場合はマクロでみれば海外への所得移転となり国内景気にはマイナスだ。同じ輸入金額増加でも原因と結果が逆になる。

このマイナスを国内でどう負担するか。

企業が価格転嫁すれば物価が上昇し、家計の実質所得が減少することで個人消費にはマイナスとなる。一方、価格転嫁が進まなければ一部企業には業績圧迫要因となる。負担割合がどのあたりに落ち着くかという問題にしかならない。

日本の企業物価指数(9月)は前年同月比+6.3%の上昇と前月+5.8%から加速。輸入物価指数(円ベース)は+31.3%と極めて高水準の上昇となり1981年1月以来の高さとなっている。

消費者物価指数(9月)は前年比+0.2%とプラスに転じたが、まだその程度。これから価格転嫁が本格化し、さらに物価上昇率は高まる可能性がある。政府はOPECに増産要請をするとしているが、今後脱炭素で需要を落とすといわれているなか簡単に応じるかは疑問だ。

足元のグローバルな需給逼迫が簡単に解消するとは思えない。日本の港湾には問題はないが、ともかく海外から国内に輸入する際の船が足りない。これはグローバルな問題緩和を待つしかないだろう。

日本経済は受け身となるなか、むしろ景気悪化が警戒され、日銀は現状の超金融緩和政策を維持するしかなさそうだ。

消費者物価指数は上昇して日銀の目標に近づく動きとはなるが、国内景気が良好で需給が改善した結果ではない。米欧と比べればなおインフレ率ははるかに低水準で、内外金融政策格差、長期金利差の拡大で、金利面からの円先安感は続きそうだ。

景況格差や金利差で資本は海外に流れそうだ。また、このまま対外収支の悪化が続けばそれもベースラインで円安圧力となる。貿易収支、投資家行動による中期の資本収支、さらに円先安を囃した投機筋による短期の資本収支、いずれも円にはマイナス要因だ。

米国でも高インフレは懸念材料。一時は業績懸念が広がり株価の重石となった。しかし小売売上高などでみると個人消費は好調。企業業績も足元の決算をみる限り概ね良好だ。高インフレによる景気悪化はさほど懸念されていない。

むしろ景気堅調、雇用情勢改善、賃金上昇・所得増加が米国経済のメインエンジンである個人消費を支えるとみられている。この点が日本との大きな違いだ。

問題はむしろ供給制約や人手不足にある。バイデン政権はロサンゼルス港の24時間稼働など供給混乱の収束に手を打ち始めた。

供給制約による物価上昇はいずれ鎮静化するだろう。とはいえ1年近く時間がかかるかもしれない。

景気好転による需給逼迫でインフレ率が上昇していれば、そこはFRBのコントロール対象だ。しかし供給制約に起因する部分は差し引いて考えるだろう。

確かに見かけのインフレ率よりもFRBがみているインフレ圧力、インフレ懸念は「割り引かれている」とみられる。

それでも経済が正常化し景気堅調が続くとみられるなか、金融緩和状態を続ける必要はなく、量的緩和は縮小し、中立水準に向けた利上げの準備は着々と進めるだろう。

ドル円相場のテーマは円先安感が維持されながらも米長期金利の動向にシフトするのではないか。先週、10年債利回りは1.7%を目前に低下。

一方2年債利回りは0.5%近くに上昇し高止まり、総じて上昇基調を続けている。当面は2年債利回りとドル円相場の相関が注目される。0.5%台に着実に乗せてくるか。それに10年債利回りの上昇、1.7%台への上昇が加わるか。

円先安感による投機的な円売りはひとまず頭打ち。新たな円売り材料がなければ、しばらくは利食いの円買い戻しと円売り直しが交錯しながらじりじりと円安圧力がかかる程度となりそうだ。

ここからは再びドル要因でもう一段、ドル高円安が進むかどうか。115円試しはドル次第、米長期金利の動向次第だろう。

2年債利回りは着々と年初来高水準を更新している。10年債利回りが年初来の高い水準を超えて上昇するか。米長期金利がさらに低下することは見込みにくく、リスクバイアスは引き続きドル高円安サイドだ。

円高に振れる可能性があるとすれば、何らかのリスクイベント、株価急落やリスク回避による投機ポジションの解消、円買い戻しだ。これはあらかじめ想定することが難しい。

その場合は円売りが嵩んでいる現状から3円~4円程度の円高はありうるが、110円割れでは着実に旺盛な実需のドル買い、あるいは円売りに支えられそうだ。

OPECが突然に増産に転じて原油価格が急落すれば、円先安感の緩和から同様に投機の円買い戻しが生じる可能性がある。ただ金利動向や実需の動向は容易に変化せず、円高はやはり一時的となろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :休場( - )
ユーロ :休場( - )
英ポンド :休場( - )
豪ドル :休場( - )
カナダドル :休場( - )
スイスフラン :休場( - )
ブラジルレアル :休場( - )
中国人民元 :休場( - )
韓国ウォン(日本円=100) :休場( - )

【対ドルレート】
ユーロ :休場( - )
英ポンド :休場( - )
豪ドル :休場( - )
カナダドル :休場( - )
スイスフラン :休場( - )
ブラジルレアル :休場( - )
中国人民元 :休場( - )
韓国ウォン :休場( - )

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.63(▲0.07)
米2年債 :0.45(▲0.00)
日本10年債利回り :0.10(+0.01)
日本2年債利回り :0.10(+0.00)
独10年債利回り :▲0.11(▲0.00)
独2年債利回り :▲0.64(+0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :35,677.02(+73.94)
NASDAQ :15,090.20(▲125.50)
S&P500 :4,544.90(▲4.88)
日経平均株価 :28,804.85(+96.27)
ドイツ DAX :15,542.98(+70.42)
インド センセックス :60,821.62(▲101.88)
中国上海総合 :3,582.60(▲12.18)
ブラジル ボベスパ :106,296.20(▲1,438.80)
英国FT250 :22,931.66(+14.61)
ビットコイン :60726.01(▲1954.42)

【主要商品価格】
WTI :83.76(+1.26)
Brent :85.53(+0.92)
米ガソリン :248.21(+0.20)
米灯油 :253.89(▲1.02)

金 :1792.65(+9.75)
銀 :24.32(+0.17)
プラチナ :1043.99(▲8.90)
パラジウム :2021.50(+3.75)
銅 :9870.00(▲65:122B)
アルミニウム :2957.00(▲67:11C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :1220.50(▲3.50)
シカゴ とうもろこし :538.00(+5.75)
シカゴ小麦 :756.00(+14.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。