CONTENTSコンテンツ

インフレ常態化懸念でインフレ資産上昇
  • MRA商品市場レポート

2021年10月14日 第2054号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「インフレ常態化懸念でインフレ資産上昇」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はエネルギーや、非鉄金属、貴金属など幅広い商品が上昇した。逆に下落したのはその他農産品などの余り景気に連動しない商品だった。

目立った手がかり材料があったわけではないが、IEAがエネルギー見通しを発表し世界的に資源インフレ(主に鉱物)になるとの見方が強まったことや、インフレ抑制のための米短期金利引き上げが長期金利を押し下げた(成長見通しの鈍化)ことから実質金利が低下、主にインフレ系の商品が物色される流れとなった。

特に顕著に上昇したのが欧州天然ガスと亜鉛。欧州の電力・ガス危機を背景にエネルギー不足となった亜鉛大手生産者が生産を半分に減らす戸の見通しを示したことに象徴されるように、電力危機が広く製品供給への懸念となっている。

FOMC議事録では想定を上回る高い水準のインフレが続く見通しが一部のメンバーから指摘されており、市場が慣れていない「高インフレ時代」の到来を予感させる内容。

また、本日のMRA's Eyeでは昨日発表されたIEA見通しについて、ポイントとそこから見えてくるリスクについて整理した。

要点は、これまでの主張と同じであるが、脱炭素を求めることによりその他の資源価格が上昇し、高インフレになる可能性がある点。今後、熱源交換を起点とする資源インフレリスクは大きなテーマになる可能性が出てきた。

改めて、業種別のコストに占めるエネルギー比率、金属比率について紹介しておく。

【本日の見通し】

本日もエネルギー供給不安から多くの関連商品価格が上昇すると考える。整理するとエネルギーコストの上昇はほとんど全ての商品(モノ)の生産コストの上昇に繋がるため、商品価格は上昇しやすい。

なお、エネルギー価格の上昇は製造業のみならず、電力を多用するサービス業(データセンターなど)ヘの負担を増やすことになるため「他人事」ではない。

本日発表の統計で注目は、米週間新規失業保険申請件数と、中国CPIとPPI。

米週間新規失業保険申請件数は32万件(前週32.6万件)と低下予想であるが、足下の雇用ミスマッチがどの程度解消されているか、あるいは残存しているかを判断する上での材料となる。

中国CPIは前年比+0.8%(前月+0.8%)、PPIは+10.5%(+9.5%)が見込まれており、資源価格の上昇分を最終価格に転嫁できていないことを示唆する内容になることが予想される。

これは企業業績の悪化を通じて中国経済の減速要因となるが、これは中国に限ったことではない。

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油

原油価格は高値でもみあった。昨日はDOE、IEA、OPECの主要3機関が見通しその他を発表したが、足下の需給バランスを緩和するような内容(中期・長期の見通しであるため)ではないことから積極的に材料視されなかった。

結局、足下の需給はタイトであるものの、足下で比較的即時の増産能力を持つOPECが来年以降の需要見通しに慎重な姿勢を示したことで、「追加増産はない」とみられていることが価格を高値に維持している。

なお、昨日中国の貿易統計で原油輸入の減少が確認されている。しかし驚くほど中国の原油関連統計は、発表されても原油価格に影響を及ぼさず、今回も同様だった。

本日は米週間新規失業保険申請件数や中国CPI・PPI、米連銀総裁の講演が多数予定されているが、足下の原油市場のテーマは「増産があるかないか」であり、誰も増産の意向を示していないため、高値での推移を継続するとみる。

◆石炭・LNG・天然ガス

豪州石炭スワップ先物価格は上昇した。中国の石炭不足は継続しており、それを解消するための増産と同時に豪州炭の輸入も非公式ながら解禁したとみられ、海上輸送アジア石炭需給がタイト化したため。

中国の石炭輸入動向への説明力が高いバルチック海運指数は小幅に続落しているが、過去5年の最高水準の3倍近い水準であり、決して下がったとは言えない状況。

昨日発表された中国の9月の石炭輸入は、前年比+76.1%の3,288万トン(前月+35.8%の2,805万2,000トン)と前月から急増し、過去5年レンジを上抜けた。国内の深刻な石炭不足を背景に輸入が増加している。

国別の内訳はまた後日となるが、恐らく豪州からも調達を再開したとみられる。そうであれば以前よりも石炭調達が容易になるため、国別の輸入動向には注目したい。

JKM先物市場は上昇して33ドル台を回復。アジアの石炭価格上昇と欧州天然ガス価格の上昇が材料となった。

昨日発表された中国の貿易統計で天然ガス輸入は前年比+22.6%の1,062万トン(前月+11.5%の1,044万トン)と高い水準を維持し、伸びが加速した。構造的なガス需要の増加に加え、冬場に向けた燃料確保が継続していることを示唆。

欧州天然ガスは上昇。ロシアが供給を増加させる、とプーチン大統領は発言しているものの実際に供給されるかどうかはまだよく分らず、ガス確保の動きが引き続き強いことが背景。

米天然ガスも上昇。LPG不足や価格面で大きな差がある欧州向けの輸出が増加するとの見方が強まる中で、域内需給のタイト化観測が強まったことが背景。

一方、スポットLNGタンカーレートはスエズ以東が上昇、以西は横這いだった。欧州の調達が一巡したとは思えないが、中国の引き合いは旺盛と見られる。

2021年10月4日~10日のLNG取引は前週比+16%の770万トン、スポット調達のシェアは28%(31%)と低下した。

輸入量の増加は主に日本、韓国、欧州の輸入によるもの。スポットLNG比率の低下は長期契約に伴う輸入の増加によるものと考えるのが妥当だろう。

石炭は中国の増産指示はあるものの、依然、在庫水準は低く、中国主要生産地での災害の影響もあって海外輸送炭物色は継続、高値維持の公算。

天然ガスはロシアの供給能力に疑問符がまだついた状態であり、在庫水準が低いという事実を勘案すると在庫積み圧力の高まりは継続し、高値維持を予想。

下落に転じるとすれば10月18日に予定されているウクライナのパイプラインのオークションに、ガスプロムが参加した場合だろう。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は総じて堅調な推移となった。亜鉛に関し、大手生産者のNyrstarが電力供給不足を背景に欧州の3精錬所で▲50%の減産となる見通しを示したことで、供給懸念が強く意識されたことが背景。

足下、中国不動産市場の減速と供給懸念の綱引きとなっている。

昨日発表された9月の中国の貿易統計は、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲43.8%の40万6,000トン(前月▲41.1%の39万4,017トン)と過去5年平均を下回り続けており、減速感が鮮明となっている。

一方、9月の銅精鉱の輸入は前年比▲1.3%の211万1,000トン(前月+18.6%の188万6,000トン)と高い水準を維持している。銅価格の上昇もあって精鉱輸入が増加しているようだ。

しかし、エネルギー供給制限もあり10月・11月の鉱石輸入は減少し、精錬銅輸入が増加するとみる。

本日は中国の消費者物価指数や生産者物価指数が発表されるが、供給懸念がテーマになっている以上余り影響はなく、高値を維持する公算。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、豪州原料炭スワップ先物は横這い、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は大幅に下落した。

中国政府の熱源生産・豪州からの輸入解禁(非公式)により稼働が回復するとみられ、鉄鋼製品価格が大幅に下落したことが鉄鉱石価格を押し下げた。ただし原料炭在庫水準は低く、こちらは高止まりしている。

昨日発表された9月の中国の鉄鉱石輸入は前年比▲11.9%の9,560万トン(前月▲2.9%の9,749万トン)と減速した。

一方、鉄鋼製品の輸入は前年比▲56.5%の125万6,000トン(前月▲52.5%の106万3,000トン)と低迷、輸出は前年比+28.5%の492万トン(前月+37.3%の505万3,000トン)と過去5年平均を下回った上、前年比での伸びを縮小。やはり国内供給を優先させていることが窺える。

本日は、鉄鋼製品価格が水準を切下げたことで、鉄鉱石価格はやや水準を切下げる展開。基本的に在庫が不十分な原料炭価格は高値を維持の公算。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは上昇した。FOMC議事録でインフレが一過性のものではない、との見通しが示されたことで金融早期引き締め観測が強まり2年金利が上昇、それに伴い金融引き締めによる景気の過熱ペース鈍化観測から長期債利回りが低下、実質金利が低下したことが材料となった。

また、同時にドル安も進行したため、リスク・プレミアムは上昇している(注:リスク・プレミアムの中にドル安要素も含む)。

銀、PGMもほぼ金に連れる形で上昇。特に株価が上昇したため金の価格上昇を上回っている。

本日は景気の過熱感への警戒から短期金利が上昇、長期金利が低下、ハイテク株上昇で株価が上昇するため、パラジウム>プラチナ>銀>金の順で堅調な推移になると予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。一昨日発表された米需給報告が重石となり、水準を切下げる展開。

本日は昨日の下落やドル安進行もあって一旦買い戻されると考える(特段昨日の下落に大きな理由はない)。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日発表された中国の貿易統計は、輸出が記録的な伸びとなる一方、輸入は低迷した。

輸出総額は前年比+28.1%の3,057億ドルと月間輸出額としては過去最高水準。10月以降の電力供給制限強化や国慶節による連休前の駆け込み需要が重なったためと考えられる。

しかし輸入は前年比+17.6%(前月+33.1%)と急減速している。国内の電力供給懸念、不動産セクターの減速懸念など、中国政府による景気の過熱沈静化の動きが輸入減少に反映された形。

Q421の輸入は昨年の水準が高いこともあり伸びが減速する公算。また、電力供給制限が工場稼働を低下させていることから輸出入共に伸びが抑制されるものと予想される。

昨日は中国のファイナンス関連統計も発表されたが、製造業の景況感への説明力が高いM1は前年比+3.7%(前月+4.2%)と伸びが鈍化している。これで今年1月以降、9ヵ月連続で前年比の伸びが減速していることになる。

現在、不動産セクターの加熱沈静化に中国政府は舵を切っているが、マネーサプライの伸び鈍化はそうしたことも影響しているとみられる。やはり中国の景気には足下、下向きの圧力が掛りつつあると考えられる。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・中国恒大集団の債務問題が不動産セクター全体に波及し、世界的に株安となり経済活動が逆回転する場合(工業金属などの景気循環系商品を筆頭に、リスク資産価格の下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・コロナウイルスの感染再拡大によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

逆に想定以上に新型ワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・米テーパリング実施が、コロナの感染に苦慮する中南米、欧州・アフリカの新興国経済に悪影響を及ぼす場合(景気減速要因)。

・独総選挙結果を受けた連立政権樹立に難航し、域内最大経済国のドイツ経済が減速する場合、また、EUの指導力が低下し域内経済が停滞する場合(景気減速要因)。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格はこれまで脱炭素の流れで増産が見送られてきたことから直ちに供給増加ができないこと、OPECプラスの「追加」増産見送り、欧米投資銀行が100ドル原油予想を相次いで発表、投資熱が高まっていることなどから高値を維持すると考える。

特にこの冬は天然ガス・石炭の供給不足が解消する感じではないため、冬場の気温次第では一段の上昇も有り得る状況。

10月4日のOPECプラスは追加増産への期待があったがこれを見送り、当初予定通りの40万バレルの増産にとどめた。

サウジアラムコは「ガス価格の高騰で原油需要が50万バレル増加している」としており、9月のDOE予想を元にすれば10月は80万バレル程度の供給過剰であるため、メキシコ湾の生産回復に遅れが出ていることを考えると、ほぼ需給はバランスしていることになる。

しかし、供給が綱渡り状態であることは事実であり、冬場の気温次第で供給が不足する可能性は低くない。

中期的にはOPECの増産、米テーパリング開始、発電燃料供給不足が企業活動を鈍化させること、冬場の上昇による暖房需要の減少を背景に軟調な推移になると予想する。

テーパリングに関しては、前回実施時は中盤に原油価格は下落に転じており、今回テーパリング開始も価格の下押し要因となるが、利上げの先送り観測でドル安が進行するならしばらくは価格の下支え要因となる。

弊社年末に向けてBrentは60ドル台半ば、WTIは60ドル台前半への調整をメインシナリオとしていたが、足下の厳しい供給環境、代替品としての原油需要の高まりを考慮し各々10ドル程度引き上げた。

米DOEの2021年供給は96.10MBD、需要は97.37MBD、需給バランスは▲1.27MBDの供給不足。

価格を下押ししてきたコロナであるが、徐々に「ウィズコロナ」に舵が切られつつあり感染拡大が価格下落に影響するステージは早晩終了するとみられる。

しかし、それはこの冬到来が懸念される第6波までに解消する、とは考え難いため引き続き景気循環系商品価格の下落要因である。

中国の輸入規模はその水準は世界最大であるものの、原油価格に余り影響を与えない中国の原油輸入は、9月は前年比▲15.3%の4,105万トン(前月▲6.2%の4,453万トン)と前年比で前月から減速感が強まった。同国の経済活動が鈍化している可能性を示唆するもの。

【見通しの固有リスク】

・気温低下による暖房向け燃料需要が増加、ないしは不稼働の液体系燃料発電(ディーゼルや重油)を有する国や地域が再稼働を決定した場合(価格の上昇要因)。

・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。

・コロナの変異株が猛威を振るいワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でテーパリングなどの金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。

・OPECプラスの増産ペースの遅れないしは上流部門投資不足による供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。

価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合(価格下落要因)。

・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

かなり過剰なペースで脱炭素が進められており、オイルメジャーも株主・政府の圧力を受けて脱炭素に舵を切り、タイムリーな原油増産が困難になっている。

この場合、「脱炭素移行期間の景気回復時」には十分な燃料供給が出来ないリスクが高まり、来年以降の価格上昇局面で原油価格が100ドルを超えるリスク(リスクシナリオの位置づけ)。

なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は堅調な推移になると考える。中国・インドなどの石炭火力中心の地域の石炭在庫水準は低く、冬場の電力需要向けの調達は旺盛で、供給不足に伴い稼働を停止する工場が増加していることから考えても分るように、今後も石炭調達は継続するとみられ高値維持の公算。

中国政府は石炭供給不足を解消するため、環境規制強化の方針を解除し増産に舵を切った。しかし今年の生産はそもそも過去5年の最高水準を維持しており決して減産していた訳ではないこと、冬場の増産が難しいことから、影響は限定されて高値で推移する可能性は高い。

石炭は「座礁資産」と呼ばれ、上流部門投資ができなくされていることから、増産をしているのはGlencoreや中国企業ぐらいであり、供給が不十分であること、需要側の構造はそう簡単には変わらないことを考えると、この冬場は極めて高い水準を維持することになろう。

9月の石炭輸入は前年比+76.1%の3,288万トン(前月+35.8%の2,805万2,000トン)と前月から急増し、過去5年レンジを上抜けた。国内の深刻な石炭不足を背景に輸入が増加している。

国別の内訳はまた後日となるが、恐らく豪州からも調達を再開したとみられる。そうであれば以前よりも石炭調達が容易になるため、国別の輸入動向には注目したい。

【見通しの固有リスク】

・今冬はラニーニャ発生が予想され、厳冬のリスクも意識されているが懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。

・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。

・Nord Stream2の稼働が早期に行われ、天然ガス価格が急落する場合(下落要因)。

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念(価格の上昇要因。これは既に顕在化)。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発である一方、自然エネルギー供給(英国の風力、ブラジル・中国の水力など)が減少、火力発電向けの燃料需要が旺盛なこと、石炭価格も高値を維持していることから、価格は高値を維持すると考える。

ロシアプーチン大統領が欧州向けのガス供給に前向きな発言をしているが、だからといって実際に輸出が始まった訳ではなく、また、在庫不足の状態に変わりはないこと、ノルドストリーム2の稼働も来年の可能性が出てきたことから価格は高値維持。

引き続き、ラニーニャ現象発生が懸念される中で冬場に突入し、厳冬の中、計画停電が行われる可能性がある。この場合、人命のリスクが無視できない。

9月の中国の天然ガス輸入は前年比+22.6%の1,062万トン(前月+11.5%の1,044万トン)と高い水準を維持している。季節的に見ると過去5年レンジを大きく上回った状態が続いている。

8月の中国のLNG輸入は前年比+11.7%の665万トン(前月+12.6%の567万トン)と過去5年レンジを上回り構造的な需要増加は続いているが、やや伸びは鈍化した。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・今冬はラニーニャ発生が予想され、厳冬のリスクも意識されているが懸念に反して暖冬となる場合(価格下落要因)。

・電力・ガスをはじめとするエネルギー供給制限が経済活動を強制的に停止させ、需要が減少する場合(価格の下落要因)。

・8月18日にNord Stream2が稼働しているとの誤ったデータが発表された直後、ガス価格が大幅に下落している。

政治的な要因でNord Stream2の稼働は遅れると考えられるが、同パイプラインが稼働して欧州のガス需給が緩和した場合(価格下落要因)。

・石炭と同様、「化石燃料であること」を理由に上流部門投資が制限される、あるいは原油生産減少による随伴ガス供給が減少する場合(構造的な価格上昇要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが548,561枚(前週比 +21,038枚)ショートが150,254枚(▲3,455枚)ネットロングは398,307枚(+24,493枚)

Brentはロングが395,059枚(前週比+3,964枚)ショートが62,382枚(+241枚)ネットロングは332,677枚(+3,723枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は短期的には上昇余地を探る展開を予想する(見通しを変更)。中国の電力供給問題は解消しておらず、石炭などの増産指示はあるもののまだ供給が間に合っているとは言えず、工場の稼働停止による現物自体の供給不足に加え、電力価格上昇によるコスト面が意識されるため。

なお、エネルギー供給制限の非鉄金属価格への影響は、短期的には供給面で価格を押し上げ、中期的にはコストアップを通じた業績悪化に繋がり、価格の下押し要因となる。

エネルギー供給問題の他、現在進行中の中国の不動産バブル抑制が不動産市場全体に波及する可能性が高いこと、直近の直近の工業生産、固定資産投資、不動産投資、工業セクター利益も減速が顕著であり、当面、加熱した景気の沈静化に中国政府が舵を切る可能性が高いことから中期的には調整すると予想。

しかし来年、米政権による大規模なインフラ投資が行われるため再び非鉄金属価格は上昇に転じると予想される。しかし、バイデン政権支持率低下で当初予定通り実行されるかが微妙に。超党派で合意しているため実行されるとみるが、期待通りの規模にならない可能性も考える必要がある。

なお、長期的にはインドの人口ボーナス期入り、まだ脱炭素の流れ、省エネの流れに変わりがないため、供給面・需要面の制限から価格が上昇するという見通しを変更する必要はないと考えている。

【LME金属需給見通し】

(2021年)

銅 生産 24,947千トン 需要 26,790千トン 需給 ▲842千トン

亜鉛 生産 14,045千トン 需要 14,069千トン 需給 ▲24千トン

鉛 生産 12,381千トン 需要 12,168千トン 需給 +213千トン

アルミ 生産 67,716千トン 需要 66,444千トン 需給 +1,272千トン

ニッケル 生産 2,573千トン 需要 2,612千トン 需給 ▲40千トン

錫 生産 429千トン 需要 431千トン 需給 +28千トン

【中国重要統計の評価】

9月の中国製造業PMIは49.6(前月50.1)と市場予想の50.0を下回り、閾値である50を下回り、製造業の減速感が鮮明となった。しかし同時に発表された財新製造業PMIは50.0(市場予想49.5、前月49.2)と回復しており、ややまちまちの内容となっている。

製造業PMIの規模別の景況感を見ると中堅・中小企業の減速が鮮明だが、財新製造業PMIは中堅企業並びに輸出企業が主体であるため、直近の貿易統計で輸出がやや回復したことが影響した可能性はある。

しかし総じて減速していることは間違いがなさそうで、工業金属需要減速、並びに価格の下落要因となり得る。

内訳を見ると生産鈍化(50.9→49.5)、新規受注(49.6→49.3)、輸出新規受注(46.7→46.2)、受注残(45.9→45.6)と需要の鈍化が顕著である。

在庫水準は低いが増加しており、完成品在庫は47.7→47.2、原材料在庫は47.7→48.2、サプライヤー納期はほぼ変わらない(48.0→48.1)。

さらに細かく見ると、購買量は減少(50.3→49.7)、購入価格は上昇(61.3→63.5)、販売価格も上昇(53.4→56.4)している。

工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.045(前月1.040)と上昇、原材料が1.023(1.040)となった。

生産指数が低下していることと合わせて考えると、1.発電燃料・電気の不足で稼働が低下、2.原材料は積み上がるが製品は出荷される、3.価格転嫁も進んでいるが輸入価格の高騰は続き、レーショニングが起きている、4.総じて原材料需給は緩和し、完成品需給はタイトな状態、と整理できる。

これまで工業金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは57.5(前月60.5)と減速した。中国政府による不動産セクター沈静化の動きが影響しているとみられる。

中国恒大集団の債務問題はその氷山の一角だろう。問題の顕在化はこれからではないだろうか。

8月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲41.1%の39万4,017トン(前月▲44.3%の42万4,280トン)と過去5年平均を下回り続けており、減速感が鮮明となっている。

8月の銅精鉱の輸入は前年比+18.6%の188万6,000トン(前月+5.5%の189万トン)と高い水準を維持している。TCの上昇もあって製錬需要が増加したと考えられる。

8月の銅スクラップの輸入は+60.2%の12万9,802トン(前月+98.9%の14万9,369トン)。

ただし全体としては輸入に下押し圧力が掛っている印象は否めず、しばらくは調整圧力が強まる展開が予想される。

工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-8月期累計で前年比+13.1%(1-7月期+14.4%)と伸びが鈍化、単月でも 前年比+5.3%(前月+6.4%)と鈍化が鮮明になっている。

ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+8.9%(+10.3%)と明確に減速。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+11.5%(+13.4%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。

中国政府が最も懸念している不動産開発投資はまだ前年比+10.9%(1-7月期+12.7%の8兆4,895億元)と高い伸びを維持しているがそれでも減速基調にあり、新築住宅販売の前年比上昇も+0.16%(前月+0.30%)と伸びが鈍化している。

いずれも「伸び」が鈍化しているのみであり、中国の経済活動が回復していることは間違いがない。しかし、需要の伸びが想定を下回る場合、多くの場合供給過剰を誘発して価格の下押し要因となる。

【政策動向・脱炭素】

政策動向・脱炭素の流れは中長期的な材料。米バイデン政権は8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画実施計画。

道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。

さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。

この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高い。

軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要する見込み。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・中国不動産大手恒大集団の破綻懸念が中国の住宅セクターに広がり、中国の不動産バブルがはじける場合(価格下落要因)。

・ロジスティクスに障害が残る中、非鉄金属の偏在が現物プレミアムを押し上げるリスク(北米で顕在化)。

・猛暑や渇水による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

チリで議論されている銅のロイヤルティ増税案の詳細は以下の通り。

年内実施予定の選挙結果では課税強化で生産コスト上昇、または減産となる可能性も。

3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。

2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%

年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。

2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。

・インドネシアが再び低品位ニッケル鉱石の輸出を制限する場合(ニッケル価格の上昇要因)。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比+3.6%の282億ドル(前週 272億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+3.2%の6,207.1千トン(前週 6,017.1千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は中国政府の発電燃料供給不足と環境改善目的の鉄鋼製品生産減少、中国不動産セクターの先行き不安が鉄鋼向け需要を減じることから、水準を切下げる展開を予想。

直近の工業生産、固定資産投資、不動産投資、工業セクター利益とも前年比ベースの減速が顕著であり、中国政府の想定通り中国経済は過熱が沈静化の方向に向かっている。

ただし、同時に中国政府は金融緩和を行っていること、米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に下落したとしても下値余地は限定されるのではないか。米国では鉄鋼製品価格上昇が継続している。

なお、鉄鉱石先物の期先の価格が限界生産コストの目安として意識されるが、100ドル程度で安定しており、やはり中長期的にはこの水準に価格が回帰すると考えている。

【中国の政策動向】

中国共産党は2021年から始まった新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。今のところ昨年の生産量を超えないようにする、というのが中国政府の目標。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられている。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。

別の話だが、半年後、北京オリンピック中に粗鋼生産が停止させられる可能性は高い。

粗鋼生産が減少すれば、鉄鉱石の在庫水準の指標である在庫日数も、分母が小さくなるため上昇が予想され、鉄鉱石価格の下落要因となる。これは原料炭も同様。

【中国重要統計の評価】

9月の中国鉄鋼業PMIは総合指数は45.0(前月41.8)と回復した。これは新規受注(31.6→39.0)、輸出向け新規受注(31.8→39.5)と回復したことによるものだが10月の大型連休や8月の洪水の影響もあってその反動の増加と考える方が適切だろう。

新規受注の回復を受けて新規受注・完成品レシオが1.12(0.94)となり、新規受注原材料レシオも1.00(0.89)の上昇となった。しかし完成品の方がレシオの上昇が顕著である。

このことは、生産抑制に伴い鉄鋼製品需給はタイトな状態が続く一方、鉄鋼原料需給は完成品ほどではないがやはりタイトであり、鉄鋼原料輸入が継続する可能性が高いことを示唆している。

特に、環境保護や生産制限によって国内供給が厳しく、海外からの輸入(豪州)ができなくなり、モンゴルからの供給もコロナの影響で制限されている原料炭価格はさらに高値を維持することになろう。

これまで工業金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは57.5(前月60.5)と減速した。中国政府による不動産セクター沈静化の動きが影響しているとみられる。

中国恒大集団の債務問題はその氷山の一角だろう。問題の顕在化はこれからではないだろうか。

工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-8月期累計で前年比+13.1%(1-7月期+14.4%)と伸びが鈍化、単月でも 前年比+5.3%(前月+6.4%)と鈍化が鮮明になっている。

ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+8.9%(+10.3%)と明確に減速。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+11.5%(+13.4%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。

中国政府が最も懸念している不動産開発投資はまだ前年比+10.9%(1-7月期+12.7%の8兆4,895億元)と高い伸びを維持しているがそれでも減速基調にあり、新築住宅販売の前年比上昇も+0.16%(前月+0.30%)と伸びが鈍化している。

いずれも「伸び」が鈍化しているのみであり、中国の経済活動が回復していることは間違いがない。しかし、需要の伸びが想定を下回る場合、多くの場合供給過剰を誘発して価格の下押し要因となる。

【中国鉄鋼製品輸出入・在庫動向】

8月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲52.5%の106万3,000トン(前月▲59.8%の105万トン)と低迷し、過去5年平均を下回った状態が続いている。

8月の中国粗鋼生産は前年比▲12.2%の8,324万トン(前月▲7.0%の8,679万トン、前々月+2.5%の9,388万トン、前々々月+7.8%の9,945万トン)と減速が鮮明になった。前年比での伸びが鈍化。生産調整の影響が出ている。

一方、8月の鉄鋼製品の輸出は前年比+37.3%の505万3,000トン(前月+35.6%の567万トン)と前月から前年比の伸びを拡大した。ただし、過去5年平均を下回る水準に減少しており、やはり国内供給を優先させていることが窺える。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比+16万6,000トンの1,460万8,000トン(過去5年平均 1,164万トン)と例年を上回り水準は高い。

【中国鉄鉱石輸出入・在庫動向】

原料である鉄鉱石の7月の輸入は前年比▲21.4%の8,851万トン(前月▲12.1%の8,942万トン)と減速した。中国政府の鉄鋼ミル稼働制限の動きが輸入を鈍化させたとみられる。

また中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性がある。

なお、中国の最大の輸入相手である豪州では鉱山の人繰りが付かず生産が停滞しているとの指摘もあるが、直近5月の輸出統計では明確な減速は確認されていない。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+350万トンの1億3,350万トン(過去5年平均1億2,646万トン)、在庫日数は29.6日(過去5年平均 28.6日)と数量ベース・日数ベースでも過去5年平均を上回り急速に需給が緩和していることが確認されている。

在庫日数は粗鋼生産の水準の高さに依拠するため、中国政府の鉄鋼生産抑制方針を受けて在庫日数の上昇傾向は続き、価格を下押しすると予想される。

【中国原料炭輸出入・在庫動向】

原料炭は中国の生産活動回復が継続しているが、前年比の伸び鈍化が明確になってきたため(中国政府の方針通り)、価格は下落余地を探る動きになると考える。

また、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることも、海上輸送原料炭価格を下押ししよう。

とは言え、環境規制強化の流れで世界的に原料炭供給を増加させられる地域が限定されることから、下落余地も同様に限定される都見るのが妥当だ。

8月の中国の原料炭輸入は前年比▲34.7%の468万2,831トン(前月▲48.8%の377万1,291トン)と回復しているが、過去5年レンジを下回った状態が続いている。豪州からの輸入停止と、モンゴルからの輸入停滞(コロナの影響)、国内の鉄鋼生産削減政策が影響しているとみられる。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲13万トンの100万トンと過去5年平均の124万1,000トンを下回っている。

在庫日数は4.1日と、過去5年の平均である5.2日を下回り、タイトな状態。中国政府の方針を受けた粗鋼生産の減少の可能性は高いものの、在庫水準の異常な低さが価格を押し上げよう。

【見通しの固有リスク】

・中国の不動産セクター減速が、建材需要を減少させる可能性(鉄鋼製品価格の下落を通じて鉄鋼原料価格の下落要因)。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合(価格上昇要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク(価格上昇要因)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

【金】

金はしばらく上昇圧力が強まる展開が予想される。米テーパリングは早期に行われるものの、ぺースが緩慢で利上げはまだ先と強調されたことで、一旦調整的に長期金利の下押し圧力が強まるため。

また、足下のエネルギー価格の上昇が期待インフレ率を高止まりさせ、実質金利に下押し圧力を掛けることも価格を下支えしよう。

ただしテーパリングが進捗する中では(というよりは、テーパリング宣言からテーパリング実施まで、その影響を織り込む中では)長期金利に上昇圧力が掛り、中期的に下落に転じる見通しに変化はない。

なお、過去5年平均を基準にすると名目金利1bpに対する金価格の感応度は±3.0ドル弱であり、米10年金利が現在の水準から30bp上昇すれば▲90ドルの下落圧力となる(60bpで▲180ドル)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,650ドル(前日比+21ドル)、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は142ドル(+11ドル)。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で120ドル、6ヵ月で170ドル、1年で185ドル、5年で180ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

【銀】

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、77.6倍。過去1年を基準にすると72倍、5年では80倍、2000年以降では66倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、工業需要の増加が必須。今後、IT化の進捗でエレクトロニクス向けの需要が増加することが必要。太陽光パネルの増設は脱炭素の行きすぎヘの反発や、米国が太陽光パネルの主要生産国である中国からの調達を手控えると考えられ、影響は限定と考える。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

【PGM】

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

パラジウムは半導体供給低迷が自動車生産に影響を与える状況が来春ぐらいまでは続く可能性があるため、当面低水準での推移。しかし自動車販売が回復すれば再び高値圏へ。

8月の米自動車販売は年率1,218万台(市場予想1,300万台、前月1,306万台)と減速。目先はパラジウム価格の下落要因となりやすい。

中国の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で以下の通りであり、明らかに伸びが減速している。半導体供給不足に加え国内景気の伸び減速が影響。

8月 前年比▲17.4%の179万8,841台7月 ▲11.8%の186万3,550台。6月 ▲12.4%の201万5,309台5月 ▲3.0%の212万7,000台4月 +8.8%の225万台3月 +76.5%の252万5,000台2月 +371%の146万台1月 +30%の250万台

調査会社のオートフォーキャスト・ソリューションズによれば半導体不足による供給減少の累積は7月16日時点で167万8,000台となっており、2019年1-7月期の966万9,484台から▲17.4%減少している。

この回復がある、ないしは供給側の混乱(南アフリカ)による生産減少がなければ、PGM価格は低水準で推移しよう。

【見通しの固有リスク】

・アフガニスタン情勢がかなり混迷の度合いを深めており、周辺地域への影響(南欧など)が拡大し、軍事的な行動に発展、足下のリスク・プレミアムが低いことからリスク回避の見直し買いが入る場合(貴金属セクター全体の上昇要因)。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが295,939枚(前週比 +2,125枚)、ショートが113,357枚(▲12,058枚)、ネットロングは182,582枚(+14,183枚)、銀が63,957枚(▲533枚)、ショートが47,578枚(▲207枚)、ネットロングは16,379枚(▲326枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが32,414枚(前週比 +506枚)ショートが26,899枚(+644枚)、ネットロングは5,515枚(▲138枚)

パラジウムが2,829枚(+271枚)、ショートが6,059枚(+251枚)ネットロングは▲3,230枚(+20枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は堅調な推移になると考える。冬場のラニーニャ現象の発生(北半球の天候相場は終了も、南半球の天候相場入り)が懸念されていることや、その他の商品価格が上昇する中で割安感がまだある穀物セクターが物色される可能性が高まっているため。

8月の中国の大豆輸入は前年比▲1.2%の948万8,000トン(前月▲14.0%の867万トン)と回復し、過去5年水準を上回った。依然として中国の大豆在庫の水準は低いため、相応の輸入需要があると見られる。

Locust Watchではソマリア・イエメンでのサバクトビバッタの被害が深刻になっていることが指摘されている。

9月中旬以降、エチオピア北東部の繁殖地で群れの形成が確認された。今後、最終的な繁殖のために紅海とアデン海に沿った地域への移動(サウジアラビア南西部など)が懸念される。
https://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/211001update.jpg

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象発生観測による投機筋の買い圧力の強まり(価格の上昇要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)

・10月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 176.5Bu/エーカー(175.6、176.3)大豆 51.5Bu/エーカー(51.0、50.6)小麦 44.3Bu/エーカー(NA、44.5)

・10月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億1,900万Bu(149億5,300万Bu、149億9,600万Bu)大豆 44億4,800万Bu(44億963万Bu、43億7,400万Bu)小麦 16億4,600万Bu(NA、16億9,700万Bu)

・10月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億Bu(24億7,500Bu)大豆 20億9,000万Bu(20億9,000万Bu)小麦 8億7,500Bu(8億7,500万Bu)

・10月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億Bu(14億4,080万Bu、14億4,000万Bu)大豆 3億2,000万Bu(2億9,830万Bu、1億8,500万Bu)小麦 5億8,000万Bu(5億1,020万Bu、6億1,500万Bu)

・9月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 12億3,600万Bu(41億1,100万Bu)大豆 2億5,600万Bu(7億6,900万Bu)小麦 17億8,000万Bu(8億4,500万Bu)

・10月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 2,087万ha(2,087万ha、1,987万ha)大豆 3,992万ha(4,031万ha、3,853万ha)

・10月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億1,631万トン(1億1,932万トン、8,575万トン) 単収 5,5756kg/ha(5,716kg/ha、4,316kg/ha)大豆 1億4,075万トン(1億4,408万トン、1億3,591万トン) 単収 3,526kg/ha(3,578kg/ha、3,527kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが410,799枚(前週比 +24,622枚)、ショートが113,794枚(+6,163枚)ネットロングは297,005枚(+18,459枚)

大豆はロングが137,547枚(▲3,558枚)、ショートが86,146枚(+9,761枚)ネットロングは51,401枚(▲13,319枚)

小麦はロングが96,203枚(+11,343枚)、ショートが88,891枚(+386枚)ネットロングは7,312枚(+10,957枚)

◆本日のMRA's Eye


「脱炭素によるインフレ・戦略物資変化・地政学リスク~IMF見通しより」

昨日、IEA(国際エネルギー機関)が2021年の見通しを発表した。COP26に先だって温室効果ガス削減によってエネルギー市場がどのように変化するかを示すものである。

しかしやはり欧州ベースの機関であるため、かなり強力に脱炭素を進める(欧州の戦略に沿った形)の内容であったことは否めない。資料全体は300ページを超えるものであるため、全てをここで解説するゆとりはないが、ポイントと、そこに潜むリスクについて少し考えてみたい。

まず、今回の見通しでは政策の遂行に関して、1.現状の政策が宣言通り遂行された場合(Stated Policies Scenario:STEPS)、2.さらに追加措置が執られた場合(Announced Pledges Scenario :APS)、3.2050年までにネットゼロを完遂する場合(Net Zero Scenario:NEZ)、の3つにシナリオを分けて想定している。

1.の場合、2030年に原油需要はピークに達し、その後2050年までに需要が減少して7,500万バレルに達すると想定している。比較的受け入れ可能な見通しと言えるが、この場合だと気温上昇は1.5度、2100年に2.6度になる見込み。

この場合、クリーンエネルギー(主に太陽光・風力を想定)に対する投資は500GW/年が必要であるとしている。

しかし、完全にネットゼロを目指すならばこの投資でも不十分であり、この2倍の太陽光・風力への投資が必要としている。これは以前に発表されたものと同じである。

これらの目標を達成するために、2030年までに年間4兆ドルのクリーンエネルギーとインフラストラクチャーへの投資が必要としている。

なお、現在のギガソーラーや風力発電の設置コストを元にどれぐらいの建設コストが掛るかを試算すると、年間1.5兆ドル程度となる。仮に世界最大の柏崎刈羽原発と同じ規模の原発を建設するとした場合、8GW相当でおよそ2.6兆円であるため(新潟県HPより単純に出力と建設工事費を合算して求めた)、1.4兆ドルとなり、概ね上記の試算と符合する。

実際には土地取得やその他の送電線の整備などの費用がかさむため、4兆ドルの負担はまず妥当な水準と言える。ただし想定以外のコスト(権利取得や保障、土地取得コスト)などを考慮すると実際はこれよりも投資規模が大きくなる可能性の方が高い。

仮にネットゼロを目指すならばこれの2倍ということなので年間8兆ドルの投資が必要となる。なお、2020年の世界GDPが約85兆ドルであるため、APSだと世界GDPの4.7%、NEZだと9.4%の追加投資が必要ということになる。

同時に、今回の欧州電力・ガス危機に象徴されるように自然エネルギーが供給停止となった場合に備えてバックアップの電源も必要になってくる。ネットゼロシナリオでは現在の石油市場がバッテリー市場にほとんど取って変わられるという見通しとなっている。市場規模的には1兆ドル/年の市場になると予想されている。

しかし、ここで重要なのはこれらを達成するためには「原油・石炭・ガス以外の別の資源」が必要になることを意味していることだ。これまでの技術の延長線上で議論するならば、電化を進めるために、銅、アルミ、レア・アース、バッテリーのためにリチウム、ニッケル、コバルト、の需要が増加することになる。

そして上記の規模に市場が拡大すればこれらの金属は争奪戦となることは必至である。現実的には無理なのではないか。

理論上はほぼ無尽蔵に地球には資源があるが、これまで掘ることのできなかった場所まで掘削に行かねばならないことを意味する。すなわちコストアップとなるため鉱物資源価格は大幅に上昇することになる。

また、バックアップに石油を用いたり、化学品向けの石油需要は継続すると考えられることから原油市場のOPECプレゼンスは一層増すことになる。結果、今回の価格上昇でも見られるように、原油の価格も高騰することになる。

消費が減少した原油を販売するにあたり、産油国が今と同じ価格で原油を売るとは思えない。最終的に他のビジネスに産油国が乗り出していれば話は別だが、現在の1億バレルから2,500万バレルに需要が減るならば、単純計算で4倍の価格にしないと、産油国の歳入はまかなえない。

それが無理であり、実際に原油以外のビジネスを開発することができなかった場合、産油国財政が悪化、高い確率で暴動が起きることになるだろうし、石油の力で権力を維持してきた王族が追い落とされる可能性も有り得る。

そして、今回欧州で見られたように異常気象で自然エネルギーが途絶することがある。今回のIEAの主張でも、異常気象の発生を止めるために温暖化に歯止めを掛けるべきだ、としている。

しかし、気温上昇を止めたとしても、自然災害の発生が止まる保障はない。異常気象の頻発を押さえるための必要条件かもしれないが、十分条件とは言えないからだ。

この場合、ほとんどの見通しが万一の不足分を蓄電で補う、としているが「溜めていた電気を使い切ってしまえばそれで終り」であることから、やはり代替の熱源は保有しておくが必要が出てくる。

具体的には脱炭素を目指すなら原子力であり、それがやはり難しければ化石燃料ということになるだろう。

問題は異常気象が発生した時に世界同時に供給不足に陥ることがある、ということが今回の欧州ガス・電力危機で明らかになった。異常気象がどれだけの期間で終るか想定できないことを考えると、単純計算では「自然に頼る発電能力と同等の、人間の判断で増産できる発電能力」を保有する必要があるのではないか。

この場合、同規模の熱源供給能力を保有する必要が出てくるため、二重投資となりさらにインフレが加速することになる。

脱炭素には時間とコストが掛ることを覚悟する必要があるが、それに伴うインフレ、エネルギー途絶のリスクが高まること、そして今までは石油を巡る資源獲得競争、戦争が起きていたが今後は鉱物資源を巡る獲得競争や戦争が起きる可能性があることを忘れてはならない。

◆主要ニュース


・9月日本マネーストックM2 前年比+4.2%(前月+4.7%)M3 前年比+3.8%(+4.2%)

・8月日本機械受注総額前月比▲7.8%の2,650億円(前月+11.7%の2,876億円)前年比+25.2%(+49.3%)
 船舶電力を除く民需▲2.4%の839億円(+0.9%の860億円)+17.0%(+11.1%)

・9月中国貿易収支 667億6,000万ドルの黒字(前月583億4,000万ドルの黒字)
 輸出総額 前年比 +28.1%(+25.6%)
 輸入総額 +17.6%の(+33.1%)
 輸出年初来ベース
  対米国 +32.9%(1-8月期+33.3%)
  対欧州 +32.0%(+32.4%)
  対日本 +17.7%(+18.1%)
  対アセアン諸国 +29.9%(+31.7%)
 輸入
  対米国 前年比 +43.5%(+48.0%)
  対欧州 +27.9%(+32.3%)
  対日本 +22.2%(+24.6%)
  対アセアン諸国 +32.7%(+35.3%)

・9月独消費者物価指数 前月比+0.3%(前月+0.1%) 前年比+4.1%(+3.4%)

・8月ユーロ鉱工業生産 前月比▲1.6%(前月 +1.4%) 前年比+5.1%(+8.0%)

・9月中国マネーサプライ M2 前年比+8.3%の234兆2,800億元(前月+8.2%の231兆2,300億元)
 M1 +3.7%の62兆4,600億元(+4.2%の62兆6,700億元)
 ファイナンス規模 2兆9,000億元(2兆9,558億元)
 国内企業全体の総財務残高 308兆1,000億元(305兆3,000億元)

・9月中国人民元建て新規融資 前年比▲35.6%の12,200億元(前月+9.1%の10,832億元)

・米MBA住宅ローン
 申請指数 前週比 +0.2%(前週▲6.9%)
 購入指数 +1.5%(▲1.7%)
 借換指数 ▲0.5%(▲9.6%)
 固定金利30年 3.18%(3.14%) 15年 2.48%(2.45%)

・9月米消費者物価指数 前月比+0.4%(前月+0.3%)、前年比 +5.4%(+5.3%)
 コア 前月比+0.2%(+0.1%)、前年比+4.0%(+4.0%)

・9月米実質平均賃金 前年比▲0.8%(前月▲1.1%)
 実質平均時給▲0.8%(▲1.4%)

・FOMC議事要旨、「テーパリングは11月半ばかあるいは12月半ばの開始で概ね当局者の意見が一致。月ごとの減額は米国債が100億ドル、MBSは50億ドルを想定。インフレリスクは上向き。供給障害は想定以上に長びく恐れ。数名が来年の末までに政策金利の引き上げ開始の可能性を指摘。」

・トルコ大統領 トルコ中銀MPCメンバー3人を更迭

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・9月中国石炭輸入 3,288万3,000トン(前月2,805万2,000トン)

・9月中国原油輸入 4,105万トン、1,013万バレル/日(前月4,453万トン、1,063万バレル/日)
 精製石油製品輸入 222万トン(293万トン)
 輸出 414万トン(373万トン)

※原油1トン=7.4バレルとして算出。石油製品は種類の内訳が不明のためバレル換算していない。

・9月中国天然ガス輸入 1,062万トン(前月1,044万トン)

・IEA世界エネルギー見通し2021、「壊滅的な気候変動の影響を逃れるために必要な規模の投資が世界的に行われていない。より、太陽光と風力に投資をするべきだ。2050年までに実質ゼロを達成できた場合に限り、気温上昇をセ氏1.5度に抑制できる。このシナリオは化石燃料需要の劇的な減少と新たな油田開発中止が前提となる。」

・OPEC月報
 世界石油需要 Q121:92.8、Q221:95.4、Q321:98.3、Q421:99.8、2021:96.6
 非OPEC供給(含むNGLs) Q121:62.5、Q221:63.3、Q321:63.5、Q421:65.2、2021:63.6
 Call on OPEC Q121:30.3、Q221:32.1、Q321:34.8、Q421:34.6、2021:33.0

※2021年・2022年の需要見通しを下方修正、価格上昇も需要の回復に慎重な見方。Call on OPECは増加。

・DOE月報
 世界石油需要 Q121:92.7、Q221:94.8、Q321:96.6、Q421:99.1、2021:95.8
非OPEC供給(含むNGLs) Q121:62.4、Q221:64.0、Q321:64.4、Q421:65.8、2021:64.1
OPEC生産 Q121:30.4、Q221:30.8、Q321:32.2、Q421:33.4、2021:31.7

※2021年のOPEC供給、2021年・2022年の非OPEC供給見通し(主に米国)を下方修正、2022年の需要見通しも下方修正。ただしは需要見通しの下方修正が小さいためCall on OPECは増加。

・10月 DOE月報 2021年、2022年エネルギー価格見通し(前月)
 WTI 68.48(65.69)、68.24(62.37)
 Brent 71.38(68.61)、71.91(66.04)
 ガソリン 2.97(2.91)、2.90(2.75)
 ディーゼル 3.24(3.17)、3.23(3.08)
 灯油 3.00(2.96)、3.12(3.08)
 天然ガス 12.10(11.73)、12.95(11.85)
 電気 13.64(13.63)、14.10(13.88)

・プーチン大統領、「ロシアは欧州に追加でガスを供給する準備ができている。」

・米ブリンケン国務長官「イランが方針を変更しなければ、外交以外のオプションに取り組む用意がある。」

【メタル】

・9月中国銅輸入 41万トン(前月39万トン)
 銅鉱石・精鉱 211万トン(189万トン)
 アルミ(未加工品含む) 輸出 49万トン(49万トン)

・9月中国鉄鉱石輸入 9,561万トン(前月9,749万トン)
 鉄鋼製品輸入 126万トン(106万トン)
 鉄鋼製品輸出 492万トン(505万トン)

・住友金属鉱山、チリシエラゴルダ銅鉱山の権益を売却。豪South32に。

・Nyrstar、電力供給不足で欧州の3つのプラントの亜鉛生産を最大で▲50%削減。価格上昇と供給不足で。

・ドイツ銀行、一度撤退した商品市場業務に関し非鉄金属ビジネスへの復帰を検討。

・ILZSG 2022年鉛市場見通し
 鉛需要 2021年 前年比+5.5%の1,239万トン、2022年 +1.7%の1,261万トン
 ブラジル、インド、日本、韓国、メキシコの需要増加で

 鉛鉱山生産 2021年 +4.1%の468万トン、2022年 +2.8%の481万トン
 豪州、ボリビア、インド、メキシコ、ペルー、カザフスタンの増加で

 精錬品供給 2021年+4.4%の1,242万トン、2022年 +1.7%の1,263万トン
 中国、インド、韓国、ベルギー、フランス、日本、メキシコ、ポーランドの増加で

 需給バランス 2021年 +2万7,000トンの供給過剰、 2022年 +2万4,000トンの供給過剰

・ILZSG 2022年亜鉛市場見通し
 亜鉛需要 2021年 前年比+6.2%の1,409万トン、2022年 +2.3%の1,441万トン
 中国、フランス、イタリア、ノルウェー、ロシアの需要増加で

 亜鉛鉱山生産 2021年 +4.7%の1,285万トン、2022年 +4.2%の1,339万トン
 ボリビア、インド、メキシコ、ペルー、南アフリカ、カザフスタンの増加で

 亜鉛精錬品生産 2021年+2.5%の1,413万トン、2022年 +2.3%の1,445万トン
 中国、イタリア、インド、日本、ペルーの増加で

 需給バランス 2021年 +21万7,000トンの供給過剰、 2022年 +4万4,000トンの供給過剰

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +8.58%/ +318.00%
2.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ +5.31%/ +24.45%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.79%/ ▲13.15%
4.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +3.20%/ +35.16%
5.パラジウム ( 貴金属 )/ +3.03%/ ▲13.78%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲3.31%/ ▲21.34%
65.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ ▲2.91%/ +0.12%
64.ICEココア ( その他農産品 )/ ▲2.73%/ ▲0.04%
63.NYB綿花 ( その他農産品 )/ ▲2.37%/ +32.95%
62.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲2.11%/ +62.69%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,377.81(▲0.53)
S&P500 :4,363.80(+13.15)
日経平均株価 :28,140.28(▲90.33)
ドル円 :113.25(▲0.36)
ユーロ円 :131.30(+0.31)
米10年債 :1.54(▲0.04)
中国10年債利回り :2.95(▲0.01)
日本10年債利回り :0.09(±0.0)
独10年債利回り :▲0.13(▲0.04)
ビットコイン :56,982.86(+1620.35)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :31.58(▲0.31)
エネルギー :49.49(▲0.61)
ベースメタル :25.94(+0.78)
貴金属 :31.92(+1.01)
穀物 :19.14(▲2.88)
その他農畜産品 :30.28(+0.1)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :20.68(▲1.58)
Brent :19.67(▲1)
米天然ガス :88.69(▲0.1)
米ガソリン :22.28(▲0.29)
ICEガスオイル :24.78(▲0.77)
LME銅 :22.35(▲0.03)
LMEアルミニウム :22.07(+0.01)
金 :15.76(▲1.25)
プラチナ :34.37(+0.13)
トウモロコシ :18.24(▲8.99)
大豆 :15.76(▲1.25)

【エネルギー】
WTI :80.44(▲0.20)
Brent :83.18(▲0.24)
Oman :81.50(▲0.08)
米ガソリン :240.55(+2.26)
米灯油 :252.11(+1.11)
ICEガスオイル :723.25(▲4.25)

【電力】
日本ベースロード:15.54(▲0.87)
日本ピークロード:20.40(▲3.70)
TTF in USD:28.65(+0.11)
JKM in USD:33.11(+0.21)
NBP in USD:4.80(+18.63)
Henry Hub:5.59(+0.09)
NEWCS :243.35(+1.00)

【貴金属】
金 :1792.97(+32.79)
銀 :23.09(+0.53)
プラチナ :1023.13(+12.39)
パラジウム :2111.45(+62.12)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,560(+63:101B)
亜鉛 :3,370(+124:40.5B)
鉛 :2,245(+6:85B)
アルミニウム :3,089(+16:13C)
ニッケル :19,195(▲155:40B)
錫 :36,550(±0.0:1250B)
コバルト :52,959(▲4)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9718.00(+264.00)
亜鉛 :3421.00(+172.50)
鉛 :2234.00(+39.00)
アルミニウム :3055.00(▲11.00)
ニッケル :18970.00(+20.00)
錫 :36310.00(+45.00)
バルチック海運指数 :5,378.00(▲110.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :123.74(▲1.57)
SGX鉄鉱石 :122.58(▲4.20)
NYMEX鉄鉱石 :122.29(▲4.13)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :396.67(±0.0)
大連原料炭先物 :600.46(+13.55)
上海鉄筋直近限月 :5,702(▲165)
上海鉄筋中心限月 :5,474(▲214)
米鉄スクラップ :615(±0.0)

【農産物】
大豆 :1195.25(▲3.00)
シカゴ大豆ミール :313.40(+0.50)
シカゴ大豆油 :59.36(+0.74)
マレーシア パーム油 :5259.00(+163.00)
シカゴ とうもろこし :512.25(▲10.25)
シカゴ小麦 :718.75(▲15.25)
シンガポールゴム :187.60(▲0.20)
上海ゴム :13445.00(▲195.00)
砂糖 :19.86(▲0.21)
アラビカ :208.65(▲4.50)
ロブスタ :2133.00(▲11.00)
綿花 :103.86(▲2.52)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :88.65(▲0.43)
シカゴ生牛 :124.78(▲0.25)
シカゴ飼育牛 :157.65(▲0.93)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。