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リスクバイアスは円安ドル高~日本企業への逆風
  • MRA外国為替レポート

2021年10月4日号

◆先週の市場総括


先週はFOMCでの量的緩和縮小早期開始の明確化、利上げ予想の前倒し、を受け、週初から米国の長期金利の上昇が続いた。米10年債利回りは1.5%台半ばに上昇。

ドル円相場は110円70銭で始まり週央には112円ちょうどをつけた。

一方、米国では債務上限問題が株価の重石に。12月までのつなぎ予算は承認され政府機関閉鎖は回避されたが、債務上限引き上げないし撤廃の合意はされずデフォルトリスクが残った。

バイデン政権の目玉である3.5兆ドルの経済対策の承認は困難になったとの見方、米国債を巡る不透明感、長期金利上昇、インフレ高止まりによる企業収益圧迫、などが米国株を押し下げた。

日本株も連れて大幅に下落して日経平均は29,000円割れ。新政権への政策期待一巡も。

ただ週末に発表された米国の経済指標は景気堅調を示し安心感に。コロナウィルスの経口治療薬承認申請の報に週末の米国株は反発して取引を終えた。

ドル円相場は幾度となく上値の壁となってきた112円を抜けきれず、米長期金利上昇一服とともに反落して111円ちょうど近辺で週末の取引を終えた。

ユーロドル相場は1.17台から一時1.16割れのユーロ安ドル高となり引けは1.1590。ユーロ円相場は週初から堅調で一時130円台に乗せたが引けは129円割れ。

月曜日の東京市場朝方は日経平均が寄付き早々に一時30,400円に上昇したが伸び悩み、午後から引けにかけて失速。前週末比▲8円安の30,240円で引けた。

中国で新たな不動産大手の懸念が報じられ警戒感が強まり、利益確定売りが優勢となった。一方、緊急事態宣言の全面解除や新政権の政策への期待は依然として下支え。

ドイツで実施された総選挙は、社会民主党(SPD)が第1党となり16年振りに中道左派中心の連立政権が成立する可能性が強まった。保守でメルケル首相率いるCDUCSUは第2党。ただいずれも20%台にとどまり、緑の党、自由民主党との連立模索で政権樹立、政権運営への不透明感が漂う。

アジア時間の為替市場は小動き。ドル円相場は110円70銭~80銭で始まり昼頃には60銭割れでもみ合い。ただその後夕刻にかけて70銭近辺に戻した。

ユーロ円相場も129円80銭中心の値動きから60銭に下落した後に持ち直し。ユーロドル相場は1.1720近辺で方向感なくもみ合い小動き。欧州市場に入るとドル高・円安に振れた。

ドル円相場は109円90銭~111円ちょうどでもみ合い。ユーロ円相場は129円90銭に上昇。ユーロドル相場は1.1690へユーロ安ドル高に振れた。

米国株はまちまち。朝方発表された耐久財受注がしっかり。感染減少もあり景気敏感株は堅調。原油、天然ガス、その他農産品市況も上昇。朝方は米10年債利回りが6月後半以来の1.5%台に乗せた。

金融、エネルギー、資本財関連株が上昇。一方で高PER銘柄、グロース株、ハイテク株が金利上昇を嫌気して下落。グロース株から景気敏感株への資金シフトがみられた。

NYダウは+71ドル高の34,869ドル。ナスダックは▲77ドル安の14,969ドル。VIX指数は+1.01ポイント上昇して18.76。

原油価格WTIは75.45ドルに上昇した。米10年債利回りは1.49%台で引け。2年債利回りは2年債入札が低調で0.28%に上昇した。

ドル円相場は109円80銭に下落する場面もあったが、111円ちょうど近辺で推移。ユーロドル相場は1.17ちょうど~1.1710でもみ合い。ユーロ円相場は129円70銭~90銭で上下したあと80銭近辺で引け。

米国の耐久財受注(8月)は前月比+1.8%と予想+0.6%を大きく上回り、7-9月期のGDPの上振れを示唆。一方、ダラス連銀製造業活動指数(9月)は前月9.0から4.6に低下した。

火曜日の東京市場では前日の欧米半導体関連銘柄下落を受けて値がさ半導体関連株が下落を主導。日経平均は30,200円割れで始まり、早々に下げ幅は一時▲200円を超え3万円ちょうどに迫った。朝方から米長期金利が上昇したことで高PER銘柄の重石となった。

ただ売り一巡後は下げ渋り。期末権利付き売買最終日で配当取りの買いが支えとなった。

朝方に、この日議会証言予定のパウエル議長の発言要旨が伝えられ、高インフレが続く可能性があり、その場合は適切に対応する、と金融正常化に前向きな発言内容が伝えられた。

米2年債利回りは0.3%台に上昇。米10年債利回りも追って1.54%に上昇した。

ドル円相場は111円ちょうど近辺で始まり、昼前からドル高円安に振れて夕刻には111円40銭に。その後欧州時間は111円30近辺で推移。ユーロ円相場は129円80銭で始まり130円10銭に上昇した。

ユーロドル相場は1.17ちょうどで始まり上値重く1.1680台~1.1700で上下。欧州時間に入ると1.1680中心に上下した。

欧州株、米国株は全面安。米国株は長期金利上昇が続いたことで割高なハイテク株など高PER銘柄が売られた。政府債務上限問題への懸念も重石。

上院共和党は、今年12月までのつなぎ予算と来年12月まで連邦債務上限適用を凍結する措置を一体化した法案の上院本会議採決を阻止。政府機関閉鎖やデフォルトリスクが意識された。

イエレン財務長官は議会で、10月18日に債務上限に達する、デフォルトなら経済に壊滅的な影響が生じる、と述べた。

NYダウは下げ幅が一時▲600ドルを超え、引けは前日比▲569ドル安の34,300ドル。ナスダックは▲423ドル安の14,546ドル。今年3番目の大幅下落となった。VIX指数は+4.49ポイントの大幅上昇で23.25。

原油価格は北海ブレントが一時80ドル台に上昇した。WTIは小幅下落して74.6ドル。米10年債利回りは一時1.56%に上昇し引けはやや低下して1.548%。

為替市場では米国時間朝方にかけて円安が進んだ。ドル円相場は111円60銭台に、ユーロ円相場は130円30銭に上昇。ただその後は株安・リスク回避で円安は一服。

ドル円相場は111円30銭を割った後、再び円安に振れて111円50銭近辺で引け。ユーロ円相場も同様の値動きで130円ちょうどに下落した後、反発して130円30銭。ユーロドル相場は1.1670~90で上下して1.1680で引け。

水曜日の東京市場では日経平均が大幅下落。期末権利落ち、米国株の大幅下落を受けて売り先行。29,600円近辺で大幅安寄りの後も続落し29,400円近辺でもみ合い。下げ幅は一時▲850円に達した。

後場には日銀が6月21日以来のETF購入に動いたことで下げ止まり、29,400円~500円を中心に上下して引けは▲639円安の29,544円。

自民党総裁選挙では岸田氏が選出されたが想定通りで影響はなかった。

ドル円相場は111円50銭で始まり60銭台に上昇したが反落して40銭~50銭で推移。ユーロ円相場は130円30銭で始まり40銭に上昇した後、20銭~30銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.1680~90でもみ合い。

欧州市場が始まるとユーロが下落。クロス円相場中心に円高に振れた。ユーロドル相場は1.1660~70でもみ合い、ユーロ円相場は129円80銭中心に上下。ドル円相場は111円20銭に下落した。

その後はドルが対円、対ユーロともに大幅高。ドル円相場は111円90銭~112円ちょうどに上昇し引けは112円近辺。

ユーロドル相場は1.1590~1.16ちょうどに下落した。ユーロ円相場は129円80銭~130円ちょうどで方向感なく上下し引けは129円90銭。ドルインデックスは94.40へ大幅高となった。

パウエル議長は、供給網の混乱は来年も続く可能性があり苛立ちを感じている、インフレが予想以上に高止まりする可能性がある、と述べた。

米10年債利回りはアジア時間に1.50%に低下したが欧米市場では1.54%に反発し、引けは1.52%台。米2年債利回りは0.295%~0.30%。

米国株はインフレ長期化、金利上昇懸念からハイテク株が軟調。政府債務上限問題、政府機関閉鎖懸念も重石。VIX指数は22.56に高止まり。ディフェンシブ銘柄が買われた。

NYダウは+250ドル高となる場面もあったが上下動して上昇幅を縮め+90ドル高の34,390ドル。ナスダックは4営業日続落となり▲34ドル安の14,512ドル。

木曜日の東京市場の日経平均は前場に一時前日比▲200円超下落して29,300円近辺をつけた。

発表された中国のPMI景況感指数が弱かったことを嫌気。ただ緊急事態宣言解除・経済正常化や新政権への期待もあり後場には持ち直し前日比プラスに転じて29,600円に上昇。引けにかけては押し戻され、結局、前日比▲91円安の29,452円で引けた。

中国のPMI(9月)は製造業が前月の50.1から49.6へ低下して好不況の分かれ目である50を割り込んだ。非製造業は47.5から51.7に改善。

なお民間調査の財新PMI製造業は49.2から50.0に改善。ドル円相場は112円ちょうど近辺で始まり、株価下落とともに午前中に111円80銭までじり安。その後夕刻、欧州市場にかけては111円80銭~112円ちょうど近辺を上下した。

ユーロ円相場は129円80銭を中心に、70銭~90銭台を上下した。ユーロドル相場は1.16ちょうど~1.1610でやや底固くも緩やかな値動き。

ただ米国市場に入ると株が全面安となるなかリスク回避で円が全面高となった。

米国では連邦債務上限問題を巡り議会が紛糾。上下両院は12月初旬までのつなぎ予算を可決し政府機関閉鎖はギリギリで回避された。

ただ債務上限の変更・撤廃の合意には至らずデフォルトリスクは残ったまま。1兆ドルのインフラ投資法案の成立が難しいとの見方、またバイデン政権の目玉である3.5兆ドルの経済対策の成立はさらに困難との見方が広がった。

パウエル議長はサプライチェーンの混乱が長期化するリスクを指摘。市場ではインフレ加速や高止まり長期化懸念も広がった。7-9月期の業績懸念が台頭するなか9月末の手仕舞い売りも入った。

NYダウは一時前日比▲800ドル以上下げ、引けは▲546ドル安の33,843ドル。ナスダックは▲63ドル安の14,448ドル。VIX指数は0.58ポイント上昇して23.14。

米10年債利回りはリスク回避で債券買いが入りやや低下したものの1.49%と高止まり。

ドル円相場は大きく下落して111円20銭台で引け。ユーロ円相場も128円80銭に下落。ユーロドル相場は1.1570にユーロ安ドル高となった後は下げ止まり。1.16ちょうど~1.1560を上下して1.1580で引け。

発表された米国の週次の失業保険新規申請件数は362千件と前週351千件からやや増加。継続受給者数は前週2,845千件からやや減少して2,802千件。シカゴ購買部協会景気指数(9月)は前月66.8から低下して64.7。

金曜日の東京市場では日経平均が大幅安。前日に米国株が全面安となったことを受け幅広い銘柄が売られた。

日銀短観で業況判断DIが改善したものの先行き判断は慎重。日経平均は29,200円近辺で安寄りした後も続落。前場で下げ幅は▲600円を超えた。新政権の人事に改革スタンスがみられず政策期待を削いだとの見方もあった。

後場は底ばい。日銀がETF購入に動いたことも下値を支えた。引けは前日比▲681円安の28,771円。ドル円相場は111円20銭台で始まり日銀短観発表後に50銭に上昇する場面もあったが押し戻され、111円10銭~30銭、20銭中心の値動き。

ユーロ円相場は128円80銭で始まり129円ちょうどに上昇したが、その後は128円70銭~80銭で推移した。ユーロドル相場は1.1580で始まり、その後はややユーロ安ドル高に振れて1.1560台で推移。夕刻以降は1.1580近辺。

米国株は反発。米製薬会社メルクが新型コロナウィルスの経口治療薬の有効性を確認、早急に使用許可を申請するとの報道で、経済正常化期待が高まり景気敏感株を中心に買われた。

また発表されたISM製造業景気指数が予想外に改善したことで、感染拡大でも米国景気が底固く推移しているとの見方が強まった。

NYダウは前日比+482ドル高の34,326ドル。ナスダックは+118ドル高の14,566ドル。VIX指数は▲1.99ポイント低下して21.15。米10年債利回りが1.465%にやや低下した。

発表された個人所得・消費支出(8月)は前月比+0.2%・+0.8%と概ね予想通り。消費支出価格指数はコア指数が前年同月比+3.6%と前月と同水準で上昇一服。

ドル円相場は米国時間朝方に111円割れ。その後は下げ止まり111円ちょうど~10銭で推移して引けは111円ちょうど近辺。

ユーロ円相場は128円台後半で方向感なく上下し、128円80銭近辺でもみ合い引け。ユーロドル相場は1.1590~1.16ちょうどでもみ合い。

米国のISM製造業景気指数(9月)は前月59.9から小幅悪化予想に反して61.1に改善。雇用指数は49.0から50.2へ。新規受注指数は66.7で変わらず。価格指数は79.4から81.2に上昇した。

◆今週の3つの注目ポイント


中国市場は10月1日の建国記念日から10月7日まで1週間休場。

1.米国の経済指標、雇用統計

米国経済は感染拡大にもかかわらず堅調に推移していた証左が散見される。今週もFOMCの金融正常化への動きを後押しする指標が確認されるか。

月曜日 製造業新規受注(8月、前月比、予想+1.0%、前月+0.4%)

火曜日 貿易収支(8月) ISM非製造業景気指数(9月、予想59.8、前月61.7)

水曜日 ADP雇用報告(9月、雇用者数前月比、予想+440千人、前月+374千人)

木曜日 週間新規失業保険申請件数

金曜日 雇用統計(9月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+500千人、前月+235千人、失業率、予想5.1%、前月5.2%、平均時給、前年同月比、予想+4.6%、前月+4.3%)

2.豪準備銀行・NZ準備銀行政策決定会合、ECB理事会議事要旨

FOMCでは金融正常化に向けたスタンスが一段と明確となり、メンバーの利上げ予想も前倒しとなった。他国の金融正常化に向けた動きはどうか。FRBの先行性が際立つか。全体として金融正常化の流れが確認されるか。

火曜日にオーストラリア準備銀行が政策金利を発表。予想は0.10%で据え置き。水曜日はNZ準備銀行が政策金利の引き上げ(0.25%から0.50%へ)が予想されている。

木曜日にはECB理事会議事要旨が公表され、ハト派スタンス維持か金融正常化へのニュアンスがみられるか。

3.臨時国会召集、首班指名、岸田内閣組閣

国内では4日月曜日に臨時国会が召集され、首班指名選挙が行われる。正式に岸田首相が誕生し直ちに組閣が行われる予定。

自民党の新体制がすでに固まり、組閣によって岸田政権・政府が動き始めるが、市場の期待はどうか。株価はひとまず米国株の下落により29,000円割れに調整したが、海外投資家が再び買いに回るか。

日本株買い・円買いで円安にブレーキがかかるか。あるいは日銀の金融緩和スタンス、日米金融政策格差から日本株買いでも為替には影響が生じないか。

◆今週のMRA's Eye


リスクバイアスは円安ドル高~日本企業への逆風

日本にもグローバルなインフレ圧力の波が押し寄せている。

10月に入り小売店・スーパーマーケットで食品・加工食品の値上げが始まった。様々な要因が複合的に影響している。商品市況全般、農産物価格・原油価格や天然ガスなどエネルギー価格の上昇、感染拡大による生産能力への支障、供給網の混乱、海運市況など物流コストの上昇、そして日本固有の問題として円安ドル高も一因だろう。

米国、欧州、日本、でインフレ率の上昇度合いには大きな格差がある。

変動の激しい食料品やエネルギー価格を含む消費者物価総合指数でのインフレ率は、米国で前年同月比5%台、ユーロ圏で3%ほど、日本ではなお0%近傍だ。

こうした違いが生じるのは、景気の強弱という循環的な要素もあるが、物価や賃金の景気感応度が構造的に異なることも要因だろう。

米国では雇用情勢逼迫で賃金も大きく上昇している。企業にはコスト増加要因だが、所得消費への好影響を考えればマクロではプラス要因でもある。

欧州ではエネルギー価格に対する物価・賃金感応度が日本よりも高い。それに比べて日本の物価は硬直的で、とくに価格競争が激しく価格上昇方向には動きが鈍い。賃金上昇もここまで極めて鈍い。

足元で日本が直面するインフレリスクは、国内景気良好・需給タイト化による値上げ・物価上昇ではなく、外生的要因、国際商品市況や物流、為替相場の影響による物価上昇という点。

国内景気が冴えず内外景況格差があるなか、海外景気・グローバルな需給の影響で、国内で値上げ・物価上昇を余儀なくされるのは日本経済にとって好ましくない。

海外への所得移転や交易条件の悪化はマクロでみてマイナス。ミクロの企業業績でみても原材料コストや輸送コストを転嫁できなければ収益圧迫要因。

うまく価格転嫁すれば企業収益への悪影響は軽減できるが売上に悪影響を及ぼす可能性がある。難しい判断が必要だ。

日本企業が直面するコスト上昇圧力、収益圧迫要因は、今後も継続し、あるいはさらに強まる可能性がある。

グローバル景気の動向、供給制約、堅調な商品市況、米国のインフレ高止まり、FRBの金融正常化、米長期金利の上昇、強まるドル高円安リスク、これらが総合的に、相乗的に、日本企業のコスト面でのリスクを一段と高めている。

先般の米国FOMCでは、景気動向、雇用情勢に楽観的な見方が示された。

中国・恒大のデフォルトリスクの米国への影響は軽微、過剰債務を抱える中国固有の問題と判断。一方でインフレ率が想定以上に高止まりするリスクを懸念し始めている。

ハト派のパウエル議長はインフレ率高騰は一時的との見方を崩していないが、なお高止まりする可能性が増していることに苛立ちを隠さない。FRB当局者のなかではタカ派の見方が力を得た状況が続きそうだ。

FRBは11月にもテーパリングを開始し来年半ばにも量的緩和を終了するとみられる。2023年とみられた利上げ開始は2022年に前倒しすべきとの意見も見られる。

バイデン政権も景気・雇用より、家計の懐に影響の大きい、食料品・エネルギー・住宅価格の上昇、インフレを懸念しているようだ。金融正常化に政治的支障はない。

商品市況の上昇は日本の輸入金額の増加、貿易黒字の縮小、対外収支の悪化につながり、為替需給面で円高圧力の縮小・円安圧力の増加となる。

米国のインフレ率高止まりをもたらせば利上げ前倒し観測、米長期金利の上昇につながる。FRBは金融正常化を淡々と、あるいは想定よりも早いスピードで実施するリスクも生じる。これは為替市場でドルを押し上げる要因だ。

商品市況の上昇の背景が堅調なグローバル経済ならリスク選好は崩れず円は軟調。

一方、米長期金利上昇はリスク資産価格にとって逆風。金利との相対的な資産価格評価が悪化。リスク資産から資金が流出すればドルキャッシュに資金が流入する。

足元では米国で債務上限問題が燻り、長期国債ではなく短期国債に資金が流れやすいだろう。これが米10年債利回りの上昇につながれば、相関関係からドル高圧力となり、問題が解決に向かえば長期債への海外からの資金流入がドル高圧力となる可能性がある。

日本の貿易収支悪化・資本収支悪化、双方で為替需給面から円安が進んでも、その為替変動・円安のフィードバックによる収支改善機能、円安抑制機能は働きそうにない。

円安が進めば、通常なら輸出増で収支が改善し円安に歯止めがかかるが、今や日本企業は輸出ではなく海外生産・海外展開を進めているため、容易には輸出増加に結び付かない。

円建て決算上では、海外収益が円換算で増加するが本質的には何も変わらない。海外収益を海外投資に回すとすれば、実質的には影響は中立だ。新規に投資するなら円安はコスト増となる。

海外直接投資は、為替水準よりもビジネス戦略が重要であり、円安でも歯止めはかからない。

原材料・食料・エネルギーは為替水準にかかわらず海外から輸入せざるを得ず、円安でさらに円ベースの輸入金額は増加する。こうした結果、スパイラル的円安が進むリスクもある。

ドル高円安の企業業績メリットは一部企業に限定される。多くの企業にとって、むしろコスト増加が収益を圧迫するリスクがある。

ドル円相場はここ数年幾度となく最高値となり押し戻されてきた112円に到達した。

ひとまずの上値目途を達成し利益確定、ポジション調整のドル売り円買いも入りやすい。しかし積極的なドル売り円買いの理由に乏しい。想定よりドル高円安リスクが強まっていることには一段と留意が必要だ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :111.05(▲0.24)
ユーロ :128.79(▲0.09)
英ポンド :150.467(+0.52)
豪ドル :80.674(+0.25)
カナダドル :87.804(+0.04)
スイスフラン :119.324(▲0.13)
ブラジルレアル :20.7031(+0.26)
中国人民元 :17.232(▲0.08)
韓国ウォン(日本円=100) :9.35(▲0.05)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1596(+0.002)
英ポンド :1.3546(+0.007)
豪ドル :0.7258(+0.003)
カナダドル :1.2648(▲0.003)
スイスフラン :0.9311(▲0.001)
ブラジルレアル :5.3645(▲0.079)
中国人民元 :休場( - )
韓国ウォン :1188.03(+3.95)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.46(▲0.03)
米2年債 :0.26(▲0.01)
日本10年債利回り :0.06(▲0.01)
日本2年債利回り :0.06(+0.01)
独10年債利回り :▲0.22(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.70(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :34,326.46(+482.54)
NASDAQ :14,566.70(+118.12)
S&P500 :4,357.04(+49.50)
日経平均株価 :28,771.07(▲681.59)
ドイツ DAX :15,156.44(▲104.25)
インド センセックス :58,765.58(▲360.78)
中国上海総合 :休場( - )
ブラジル ボベスパ :112,899.60(+1,920.50)
英国FT250 :22,975.77(▲55.52)
ビットコイン :48132.9(+4696.55)

【主要商品価格】
WTI :75.88(+0.85)
Brent :79.28(+0.76)
米ガソリン :225.00(▲0.36)
米灯油 :238.27(+4.10)

金 :1760.98(+4.03)
銀 :22.54(+0.37)
プラチナ :977.11(+9.68)
パラジウム :1921.82(+8.81)
銅 :9101.00(+80:12B)
アルミニウム :2881.00(+14:16C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :1246.50(▲9.50)
シカゴ とうもろこし :541.50(+4.75)
シカゴ小麦 :755.25(+29.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。