NY連銀指数改善を受けて軒並み上昇~中国統計は減速鮮明
- MRA商品市場レポート
2021年9月16日 第2034号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「NY連銀指数改善を受けて軒並み上昇~中国統計は減速鮮明」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は景気循環系商品が物色され、その他農産品の一角や自国通貨建て商品が売られたが総じて堅調だった。
米国時間に発表されたニューヨーク連銀景況感指数が予想外の大幅改善となり市場参加者のリスクテイク意欲が回復、株高・ドル安を材料に広く商品が物色される流れとなった。
テーパリングが開始される可能性は高いものの、当局の姿勢は依然として慎重で前回のようなテーパータントラム(2013年5月にFRBバーナンキ議長が突如金融緩和の縮小(テーパリング)の方針を示したことで、市場が大混乱した事象のこと)の発生の可能性が低く、まだ安定的に市場に流動性が供給された状態である、ということを材料にリスク資産の再物色が起きていると考えられる。
テーパリング自体は資金供給ペースの鈍化を意味し、経済活動の過度な加熱が沈静化されるためリスク資産価格には下落要因となるが、今のところその影響は限定されている。
しかしその動きが資源高を誘発しており、コストの上昇が企業活動の鈍化に繋がる可能性があることは意識しておく必要がある。日本は時間差でこの影響が顕在化するため、下期以降はコスト上昇リスクとそれに対する備えが必要になる。
【本日の見通し】
昨日は米統計改善を受けたリスクテイクで上昇した商品が多いが、デルタ株の感染拡大は変わらず、中国の経済活動も鈍化しているため、一旦、利益確定の売りに押される流れを予想する。
さらに価格が上昇するかどうかは、1.供給の障害がどの程度解消するか、2.株価がさらに上昇するか(Q321の決算発表)、3.FRBのテーパリングが想定通り穏健なものとして市場に受け止められるか、次第であるが1.3.は恐らくリスク資産の価格面でプラスに作用するだろう。
本日発表予定の経済統計で注目は以下の通り。
・米週間新規失業保険申請件数 32.3万件(前週31万件)・フィラデルフィア連銀製造業指数 19.0(前月19.4)・米小売売上高 前月比▲0.7%(▲1.1%) 除く自動車 ±0.0%(▲0.4%) 除く自動車・ガソリン ±0.0%(▲0.7%) 除く自動車・建材 ±0.0%(▲1.0%)
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆原油
原油価格は上昇した。メキシコ湾の生産回復が遅れていること、LNGや天然ガスなどの発電燃料価格の上昇、米ニューヨーク連銀景況感指数が予想外の大幅な改善となったことを受けた米株の上昇によるリスクテイクの再開が価格を押し上げた。
引き続き、テクニカルなポイントが意識されるが、50日移動平均線が100日移動平均線を上から下に抜ける「デッドクロス」が近づいている。
チャートポイントは高い所から、50日移動平均線(Brent:72.19ドル、WTI:69.69ドル)、100日移動平均線(Brent:71.72ドル、WTI:68.87ドル)、200日移動平均線(Brent:65.91ドル、WTI:62.46ドル)。※上記数字はレポート作成時のもの。時間経過と共に変動するため注意。っ
昨日発表の米石油統計は原油が予想比強気、製品が弱気な内容だった。ただしいずれも在庫の減少が顕著であり、予想と比較せずとも絶対水準的に米国のエネルギー需給がタイトであることを示している。
原油は生産が増加(+0.1MBD)、輸入は小幅に減少、稼働率は上昇(+0.2%)、在庫は▲6.4MBの減少と過去5年平均を大きく下回っている。在庫日数も▲0.5日の28日と過去5年平均を再び下回った。
原油価格に影響が大きいクッシング在庫は▲1,103KBD(+1,918KB)と減少。PADD2の輸入は減少(▲0.1MBD)したものの、稼働が大幅に低下(▲5.4%)したことが影響した。
アイダの後、ニコラスがメキシコ湾の製油所地帯に影響を及ぼしており、米石油統計の評価は不安定な状態が続く。
石油製品生産はガソリンが減少(▲0.9MBD)、ディスティレートも小幅に減少しており、ハリケーンからの生産回復に遅れが見られる。いずれも過去5年平均水準を大きく下回っている。
生産活動が減速したため、ガソリン在庫は▲1.9MBと減少、ディスティレートも▲1.7MBの減少となり、在庫の絶対水準は過去5年の最低水準を下回った。
在庫日数も過去5年の最低水準であり、製品クラックは過去5年平均を上回った状態が続いている。
弊社はコロナショック後以降、石油製品の出荷動向に注目しているが、米ガソリン出荷は前年比+7.7%の9.41MBD(前週+7.4%の9.52MBD)と前年比では回復しているが出荷は前週から減少。コロナの影響がなかった2019年と比較しても▲3.0%(▲2.1%)と減速幅が拡大している。
ディスティレートは前年比+7.6%の3.99MBD(+10.1%の4.13MBD、2019年比+1.5%(+4.5%))とやはり伸びが先週から減速した。
製品全体では前年比+16.9%の21.13MBD(+18.8%の21.51MBD、2019年比▲1.2%(▲0.3%))と再減速。輸出は+11.3%の5.08MBD(+6.8%の5.20MBD、▲2.4%(+1.3%))とやはり減速した。
出荷+輸出は+15.8%の26.20MBD(+16.3%の26.72MBD、▲1.5%(±0.0%))と減速している。
いずれもハリケーンの影響によるものであり、生産・出荷とも各ステージで低迷している。全体としてエネルギーの供給不足を誘発しているため原油・石油製品価格にはしばらく上昇圧力が掛ることになるだろう。
原油価格は現状、メキシコ湾の生産回復常用が強く意識されているため高値圏を維持の公算。
ただし本日発表の米週間新規失業保険申請件数が増加の見込みであり、ここまでの上昇が投機の買いよって助長されている面も否めず、一旦利益確定の売りに押される展開を予想。
◆石炭・LNG・天然ガス
豪州石炭スワップ先物価格は小幅に上昇。中国の石炭輸入動向への説明力が高いバルチック海運指数は続伸。
バルチック海運指数は中国の石炭輸入の指標の1つであるが、冬場に向けた調達が始まった可能性は否定できない。
なお、昨日、習近平国家主席が「石炭部門は低炭素化に取り組むべきだ(石炭火力の能力改善)」としており、同国が直ちに石炭火力を止めるつもりがないことを示唆している。
JKM先物市場は上昇。欧州天然ガス価格が域内供給不足と、ノルドストリーム2の稼働が来年夏になるとの観測報道、米メキシコ湾の生産回復の遅れで「冬場の供給が十分ではない」とみられたことが材料となった。
しかしこの冬は、構造的な中国の輸入増加が継続していることや、欧州の天然ガス価格上昇で絶対価格水準は高く、既に、2021年11月~2022年2月のJKM先物は25ドルを超えており、冬場に向けた在庫積み増しが不十分であることを示唆している。
ラニーニャ現象発生が見込まれるこの冬に、今年の1月に見られたような電力スポット価格の暴騰発生リスクは小さくなくなってきた。
ただし9月8日~15日の間に、日本から中国にスポットカーゴが売却されたとの情報もあり、国内の調達はある程度目処が立った可能性は排除しない。
欧州天然ガスは続伸。定期メンテナンスの影響が継続している他、ガスプロムが10月1日からノルドストリーム2が稼働することはない、と発言したことで供給懸念が強まったことが背景。
ただ、後述するようにLNGタンカーレートは低下しており、ここまでの価格上昇は投機の買いが支えている部分も否めず、徐々に上値は重くなると見られる。
スポットLNGタンカーレートはスエズ以東・以西とも低下している。そろそろ冬場のピークシーズンに向けて調達が増えてもおかしく無い時期にあるが、調達圧力が低下している可能性がある。
米天然ガスは続伸。メキシコ湾の生産回復の遅れや「ニコラス」がハリケーンに発達したことが材料視された。また、米東部の気温が例年を上回る上昇になるとの見通しが材料。
2021年9月6日~9月12日のLNG取引は前週比+70万トンの680万トン、スポット調達のシェアは23%(27%)と低下。スポット取引の減少は、日本、韓国、中国、台湾で、特に韓国の減少が顕著だった。逆に日本は中国のバイヤーに対してスポットカーゴを売却している。
本日も欧州域内ガス供給不足から高値圏を維持すると予想。既に11月~来年2月のJKM先物は25ドルを超えていることは留意。
本日発表予定の米天然ガス在庫は前週比+75.9BCF(前週52.0BCF)と増加見通しで、価格の下押し要因になるが米国ガス価格への影響に限定されるとみる。
石炭もガス価格が高値を維持することから競合燃料需要の増加で高値維持の公算。
ただし、中国の主要電力会社の在庫増加やLNGタンカーレートの低下もあって、ピークシーズン前に「一時的に」小幅な価格調整がある可能性は排除せず。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は鉛が下落したが、それ以外の商品は大幅に上昇した。中国の重要統計ははっきり言って弱い内容だったが、米国時間に発表されたニューヨーク連銀景況感指数が予想外の大幅改善となりリスクテイク意欲が回復、株価の上昇とドル安進行で買い戻しが入った。
鉱物資源の供給不足を背景とした価格上昇で、実需筋も下落局面を狙ったディップ買い意欲を強めていると考えられ、下落時にはしっかり買いが入っている状況。
昨日発表された中国のフロー需要の指標である工業生産は前年比伸び率が+6.4%→+5.3%と減速、固定資産投資も年初来で+10.3%→+8.9%と同様に減速、中国政府が神経をとがらせている不動産市場の指標である不動産投資も年初来累計で+12.7%→+10.9%と減速しており、統計的には鉱物資源価格の上昇要因となるような内容ではなかった。
しかし、前年比ベースでのプラスは維持しており、しばらくは鉱物資源価格を高値に維持する材料にはなっていると考えられる。
本日は、昨日の中国統計が弱い中での価格上昇だったため、再び利益確定で下落すると考える。しかし、需要家の買い意欲も旺盛であり。やはり下落余地は限定されるだろう。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは続落、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は大幅に下落した。
鉄鋼製品価格は中国の重要統計の悪化を受けて下落、それを受けて鉄鉱石価格の下落が続いている。一方で国内調達が洪水やコロナの影響でモンゴルからの陸運に遅れが出ている原料炭価格は高値を維持している。
状況に大きな変化はなく、中国の経済活動の減速が価格の絶対水準を押し下げ(中期的なトレンド)、鉄鉱石価格はさらに下押し、原料炭価格は高値維持の公算。
◆貴金属
昨日の貴金属セクターは高安まちまち。
金は米ニューヨーク連銀景況感指数の改善を受けて株高が進行、長期金利が上昇したが期待インフレ率も上昇したため、実質金利要因は価格に中立だったが、株高進行でリスク・プレミアムが削られ、結局前日比でマイナスとなった。
ただ、来週のFOMCを控えてテクニカルな売買に終始しているとの印象は否めない。
銀価格は金価格の下落を受けて小幅安だが、総じて小動き。PGMは説明力が高い株価の戻りもあって上昇した。
本日は金銀は米株価の戻りを受けたリスクテイク再開によるドル安と、実質金利の上昇が相殺し合い、結局現状水準でもみ合うと考える。
PGMは株の戻りで堅調と見るが、そもそも半導体不足による自動車向けの需要回復が遅れる中で絶対水準はしばらく切り上がらないと考える。その中で株価の上昇が持続するかどうかは新たな材料待ちであり上値も重く、同様に上値も重いと考える。
◆穀物
シカゴ穀物市場は大幅に上昇した。メキシコ湾からの輸出が制限される中で域内需給が緩和するとの見方から下落していたが、米石油統計でのエタノール在庫の減少やドル安の進行を手がかり材料に、買い戻しが進んだため。
本日も、ハリケーン・熱帯性暴風雨の影響に拠る輸出減少はあるものの、割安感、ドル安進行などを材料に買い戻しが進むと考える。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【昨日のトピックス】
昨日発表された中国の重要統計は、明確に中国の経済活動がピークアウトしていることを示唆する内容だった。
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-8月期累計で前年比+13.1%(1-7月期+14.4%)と伸びが鈍化、単月でも 前年比+5.3%(前月+6.4%)と鈍化が鮮明になっている。
ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+8.9%(+10.3%)と明確に減速。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+11.5%(+13.4%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。
中国政府が最も懸念している不動産開発投資はまだ前年比+10.9%(1-7月期+12.7%の8兆4,895億元)と高い伸びを維持しているがそれでも減速基調にあり、新築住宅販売の前年比上昇も+0.16%(前月+0.30%)と伸びが鈍化している。
また、規模が大きくないが、中国の個人消費は小売売上高が年初来累計で前年比+18.1%(1-7月期+20.7%)とこちらも減速が鮮明。中国の景気は7月の共産党結党100周年記念を境に、調整局面に入ったと考えられる。特に工業金属需要を下押しし、価格を下押ししよう。
ただしいずれも「伸び」が鈍化しているのみであり、中国の経済活動が回復していることは間違いがない。しかし、需要の伸びが想定を下回る場合、多くの場合供給過剰を誘発して価格の下押し要因となる。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。
・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。
アフガン政策のミスは致命傷となる可能性も。
・米テーパリング実施が、コロナの感染に苦慮する中南米、欧州・アフリカの新興国経済に悪影響を及ぼす場合(景気減速要因)。
・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。
この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。
・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など。既に中国製のワクチンは新興国で接種されているが、殆ど効果が出ていない)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、東南アジア、日本などで顕在化。
逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油価格見通し】
原油価格は比較的短い中期的には、米メキシコ湾の生産回復の遅れがOPEC増産の効果を相殺しているため、高値を維持、中期的にはOPECの増産、米テーパリング開始を背景に軟調な推移になると予想する。
ハリケーンの影響は未来永劫続くわけではなく、時間経過と共に下落要因となるが10月頃まで時間がかかりそうだ。
前回テーパリング中盤に原油価格は下落に転じており、今回テーパリング開始も価格の下押し要因となるが、利上げの先送り観測でドル安が進行するならしばらくは価格の下支え要因となる。
なお、正常化が前提であるものの、ここに来てコロナの変異株の感染が拡大、ワクチン接種が世界で最も進んでいるイスラエルでもワクチンの有効性が低下していることは、需要の下押し要因となる。
ただ懸念材料はガス・石炭価格が高騰し、代替燃料として石油製品を求める動きが強まっている点。ガス価格が高騰を続ける場合は季節性が余りない原油価格が冬場に上昇する可能性は出てきた。
中国の輸入規模はその水準は世界最大であるものの、原油価格に余り影響を与えない中国の原油輸入は、8月は前年比▲6.2%の4,453万トン(前月▲19.6%の4,124万トン)と前年比では減速しているが、大幅に増加している。
中国は輸入に関して価格感応度が高いため、7月・8月の価格下落時の輸入が増加している。需要の回復もあろうが、主に戦略備蓄向けと考えられる。
最大消費国である米国の石油製品出荷は2015-2019年の平均水準を回復しており、需要の回復は順調であり下落余地もそろそろ限定されるだろう。
年末に向けてBrentは60ドル台半ば、WTIは60ドル台前半への調整をメインシナリオとしている。その後は金融面の政策調整一巡から、再び上昇に転じると考えている。
米DOEの2021年供給は96.10MBD、需要は97.37MBD、需給バランスは▲1.27MBDの供給不足。
【見通しの固有リスク】
・ワクチン接種が進捗せず、同時に変異株が猛威を振るいワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。
・米国経済が正常化する中でテーパリングなどの金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。
・OPECプラスの増産ペースの遅れによる供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。
価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。
・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合
・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。
1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合
2.中東以外の産油国の生産者の破綻
3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合
4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)
かなり過剰なペースで脱炭素が進められており、オイルメジャーも株主・政府の圧力を受けて脱炭素に舵を切り、タイムリーな原油増産が困難になっている。
この場合、「脱炭素移行期間の景気回復時」には十分な燃料供給が出来ないリスクが高まり、来年以降の価格上昇局面で原油価格が100ドルを超えるリスク(リスクシナリオの位置づけ)。
なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。
【石炭価格見通し】
海上輸送石炭価格は堅調な推移になると考える。中国の冬場の電力需要向けの調達は堅調であること、基本、季節的に調達圧力が弱まる時期にあるものの、ロシアのNord Stream2を巡る欧州へのガス供給減少や米国のハリケーンの影響が競合燃料である天然ガス価格を高止まりさせることが要因。
中国政府は脱炭素といいつつ、石炭の国内生産を増加させていること、国内のバブル抑制に舵を切り、中国経済が減速傾向にあること、中国6大電力会社の石炭在庫水準もじりじり増加を始めていることから、そろそろ調整があってもおかしく無い。
石炭は「座礁資産」と呼ばれ、上流部門投資ができなくされていることから、増産をしているのはGlencoreや中国企業ぐらいであり、供給が不十分であること、需要側の構造はそう簡単には変わらないことを考えると、調整があるといってもしばらくは高い水準での推移が予想される。
8月の石炭輸入は前年比+35.8%の2,805万2,000トン(前月+15.6%の3,017万8,000トン)と前月から水準は減少したが、昨年の水準を上回った。過去5年平均は上回っている。
猛暑・渇水による発電燃料としての石炭需要増加と、中国の経済活動回復に伴う電力需要の増加が続いているためと考えられる。
【見通しの固有リスク】
・Nord Stream2の稼働が早期に行われ、天然ガス価格が急落する場合(下落要因)。
・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念(価格の上昇要因。これは既に顕在化しつつある)。
・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。
・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。
・エルニーニョ現象発生の可能性がある秋以降、再びラニーニャ現象が発生し、厳冬となる場合(価格上昇リスク)。
【天然ガス・LNG】
天然ガス価格は中国の経済活動が活発である一方、猛暑や水不足による水力発電からの電力供給低下で、火力発電向けの燃料需要が旺盛なこと、同時に海上輸送石炭価格も高い水準で推移していること、欧州のメンテナンスや悪天候、ロシアからの供給減少で欧州の域内需給がタイト化していること、米国のハリケーンの影響で大西洋地区の天然ガス供給が制限されることから、価格は高値を維持すると考える。
在庫不足の状態に変わりはなく、ノルドストリーム2の稼働も来年夏にずれ込む可能性が出てきたことから価格は高値維持。
8月の中国の天然ガス輸入は前年比+11.5%の1,044万トン(前月+27.0%の934万トン)と減少したが、季節的に見ると過去5年レンジを大きく上回った状態が続いている。
7月の中国のLNG輸入は前年比+12.6%の567万トン(前月+15.9%の672万トン)と過去5年レンジを上回り構造的な需要増加は続いているが、やや伸びは鈍化した。
長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。
【見通しの固有リスク】
・8月18日にNord Stream2が稼働しているとの誤ったデータが発表された直後、ガス価格が大幅に下落している。
政治的な要因でNord Stream2の稼働は遅れると考えられるが、同パイプラインが稼働して欧州のガス需給が緩和した場合(価格下落要因)。
・石炭と同様、「化石燃料であること」を理由に上流部門投資が制限される、あるいは原油生産減少による随伴ガス供給が減少する場合(構造的な価格上昇要因)。
・ウクライナやベラルーシといったロシアと欧州の緩衝帯との政治的な軋轢によって、結果的にロシア産ガスの供給がロシア側の都合でコントロールされた場合(実際にロシアが行動を起こした場合、多くのケースで価格の上昇要因)。
・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。
・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが506,565枚(前週比 ▲9,065枚)ショートが157,407枚(▲1,695枚)ネットロングは349,158枚(▲7,370枚)
Brentはロングが340,520枚(前週比+255枚)ショートが61,088枚(▲5,283枚)ネットロングは279,432枚(+5,538枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は直近の直近の工業生産、固定資産投資、不動産投資とも前年比ベースの減速が顕著であり、工業セクター利益も減速、中国政府の想定通り中国経済は過熱が沈静化の方向に向かっていることから、米テーパリング早期開始観測と相まって水準を切下げる展開が予想される。
しかし、米上院でインフラ投資法案が可決したこと、コロナの影響や渇水に伴うエネルギー不足で供給面の問題も噴出していること、企業のデフォルトが増えたことで中国人民銀行が金融緩和(預金準備率の引き下げ)を実施していること、テーパリングは行うもののペースが緩やかで、利上げも先送りの可能性が出ていることから、下落余地も限定されると考える。
なお、長期的にはまだ脱炭素の流れ、省エネの流れに変わりがないため、供給面・需要面の制限から価格が上昇するという見通しを変更する必要はないと考えている。
【LME金属需給見通し】
(2021年)
銅 生産 24,947千トン 需要 26,790千トン 需給 ▲842千トン
亜鉛 生産 14,045千トン 需要 14,069千トン 需給 ▲24千トン
鉛 生産 12,381千トン 需要 12,168千トン 需給 +213千トン
アルミ 生産 67,716千トン 需要 66,444千トン 需給 +1,272千トン
ニッケル 生産 2,573千トン 需要 2,612千トン 需給 ▲40千トン
錫 生産 429千トン 需要 431千トン 需給 +28千トン
【中国重要統計の評価】
8月の中国製造業PMIは50.1(前月50.4)と市場予想の50.2、前月共に下回った。まだ閾値の50は上回っているが中国の経済活動は鈍化の方向に向かっていると考えられる。
内訳を見ると生産鈍化(51.0→50.9)は続いているがまだ高水準だが、新規受注(50.9→49.6)、輸出新規受注(47.7→46.7)、受注残(46.1→45.9)と需要の鈍化が顕著である。
その一方でまだ在庫水準は低く、完成品在庫は47.6→47.7、原材料在庫は47.7→47.7、サプライヤー納期も短縮(48.9→48.0)している。
さらに細かく見ると、購買量は高い水準を維持(50.8→50.3)しており、購入価格も高値を維持(62.9→61.3)、販売価格も低下しては来たが高い水準を維持(53.8→53.4)という状態。
このことは、1.在庫水準が低いため在庫積み増しの動きはみられる、2.供給制限は徐々に解消しているが恐らく完全ではないため、仕入れ値は高い、3.価格上昇に伴い最終需要が減少している(レーショニング。特に中国の消費者は価格感応度が高い)可能性がある。
工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.040(前月1.069)、原材料が1.040(1.067)と両指数とも小幅に低下しており国内の需給が緩和していることをうかがわせる。
これまで非鉄金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは7月、減速していた。しかし8月の統計は60.5(前月57.5)と回復している。鉄鋼製品価格の上昇が7月の需要を減じていたとみられ、8月の鉄鋼製品価格は下落している。
中国政府も増加するデフォルトを回避する目的で金融緩和を行っていることもあり、建築向けの需要は政府当局は抑制方針であるものの底堅く推移するのではないか。
8月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲41.1%の39万4,017トン(前月▲44.3%の42万4,280トン)と過去5年平均を下回り続けており、減速感が鮮明となっている。
8月の銅精鉱の輸入は前年比+18.6%の188万6,000トン(前月+5.5%の189万トン)と高い水準を維持している。TCの上昇もあって製錬需要が増加したと考えられる。
7月の銅スクラップの輸入は+98.9%の14万9,369トン(前月+118.8%の15万448トン)。
ただし全体としては輸入に下押し圧力が掛っている印象は否めず、しばらくは調整圧力が強まる展開が予想される。
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-8月期累計で前年比+13.1%(1-7月期+14.4%)と伸びが鈍化、単月でも 前年比+5.3%(前月+6.4%)と鈍化が鮮明になっている。
ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+8.9%(+10.3%)と明確に減速。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+11.5%(+13.4%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。
中国政府が最も懸念している不動産開発投資はまだ前年比+10.9%(1-7月期+12.7%の8兆4,895億元)と高い伸びを維持しているがそれでも減速基調にあり、新築住宅販売の前年比上昇も+0.16%(前月+0.30%)と伸びが鈍化している。
いずれも「伸び」が鈍化しているのみであり、中国の経済活動が回復していることは間違いがない。しかし、需要の伸びが想定を下回る場合、多くの場合供給過剰を誘発して価格の下押し要因となる。
【政策動向・脱炭素】
政策動向・脱炭素の流れは中長期的な材料。
米バイデン政権は上院の超党派で、8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画で合意した、と発表した。今回の合意では、道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。
さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。
これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。
これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。
この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。
こうした政策期待や、インドなどの新興諸国の需要増加を受けた構造的な需要増加を受けて、中・長期的に価格は下支えされ、堅調な推移になると考える。
米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。
具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。
2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。
【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】
・ロジスティクスに障害が残る中、非鉄金属の偏在が現物プレミアムを押し上げるリスク。
・猛暑や渇水による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。
・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。
・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。
・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。
チリで議論されている銅のロイヤルティ増税案の詳細は以下の通り。
年内実施予定の選挙結果では課税強化で生産コスト上昇、または減産となる可能性も。
3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。
2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%
年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。
2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。
【投機筋のポジション動向】
・LME投機筋買い越し金額 前週比+6.5%の309億ドル(前週 290億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+1.4%の6,372.2千トン(前週 6,282.1千トン)
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は中国政府の温室効果ガス排出量削減目的の鉄鋼製品生産減少を受けて、鉄鋼向け需要が減少すること、鉄鋼原料価格を牽引してきた中国の経済活動が中国政府の住宅セクターの加熱沈静化策の執行で鈍化を始めていることから、水準を切下げる展開を予想。
直近の工業生産、固定資産投資、不動産投資とも前年比ベースの減速が顕著であり、中国政府の想定通り中国経済は過熱が沈静化の方向に向かっている。
工業金属需要の下押し要因となるため、鉄鋼原料価格も下押しされよう。
ただし、同時に中国政府は金融緩和を行っていること、米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に下落したとしても下値余地は限定されるのではないか。米国では鉄鋼製品価格上昇が継続している。
なお、鉄鉱石先物の期先の価格が限界生産コストの目安として意識されるが、80ドル程度で安定しており、やはり中長期的にはこの水準に価格が回帰すると考えている。
【中国の政策動向】
中国共産党は2021年から始まった新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。今のところ昨年の生産量を超えないようにする、というのが中国政府の目標。
最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられている。
これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。
別の話だが、半年後、北京オリンピック中に粗鋼生産が停止させられる可能性は高い。
粗鋼生産が減少すれば、鉄鉱石の在庫水準の指標である在庫日数も、分母が小さくなるため上昇が予想され、鉄鉱石価格の下落要因となる。これは原料炭も同様。
【中国重要統計の評価】
8月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は41.8(前月43.1)と悪化した。生産がやや回復(43.1→44.0)、輸出向け新規受注がやや回復(30.8→31.8)したが、新規受注が国内向けが鈍化(36.8→31.6)したことが影響した。いずれにしても閾値の50を大きく下回っており、中国の鉄鋼業の景況感は悪い。
コロナの感染拡大の影響、異常気象による生産抑制、中国政府が温室効果ガス削減、というよりは国内の住環境改善を目的として過剰な鉄鋼生産を抑制していること、などが素直に統計に反映された形。
なお、何もなければ9月は中国の鉄鋼需要のピークになるため生産活動の回復が見込まれるが、今年は政策的な抑制の方針を背景にそれほどの需要増加にはならないのではないか。
需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが0.94(前月1.16)と大幅に低下、新規受注原材料レシオも0.89(1.03)と低下しており、中国の鉄鋼製品需給バランスが緩和方向の圧力を受けていることを示唆している。
これまで非鉄金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは7月、減速していた。しかし8月の統計は60.5(前月57.5)と回復している。
鉄鋼製品価格の上昇が7月の需要を減じていたとみられ、8月の鉄鋼製品価格は下落している。
中国政府も増加するデフォルトを回避する目的で金融緩和を行っていることもあり、建築向けの需要は政府当局は抑制方針であるものの底堅く推移するのではないか。
工業金属のフロー需要に影響する工業生産は、1-8月期累計で前年比+13.1%(1-7月期+14.4%)と伸びが鈍化、単月でも 前年比+5.3%(前月+6.4%)と鈍化が鮮明になっている。
ストック需要の指標である固定資産投資も年初来累計で+8.9%(+10.3%)と明確に減速。公的セクターの伸び鈍化は所与としても、よりボリュームの大きな民間部門が前年比+11.5%(+13.4%)と伸びが減速していることは、中国政府によるバブル抑制行動が影響しているとみられる。
中国政府が最も懸念している不動産開発投資はまだ前年比+10.9%(1-7月期+12.7%の8兆4,895億元)と高い伸びを維持しているがそれでも減速基調にあり、新築住宅販売の前年比上昇も+0.16%(前月+0.30%)と伸びが鈍化している。
いずれも「伸び」が鈍化しているのみであり、中国の経済活動が回復していることは間違いがない。しかし、需要の伸びが想定を下回る場合、多くの場合供給過剰を誘発して価格の下押し要因となる。
【中国鉄鋼製品輸出入・在庫動向】
8月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲52.5%の106万3,000トン(前月▲59.8%の105万トン)と低迷し、過去5年平均を下回った状態が続いている。
8月の中国粗鋼生産は前年比▲12.2%の8,324万トン(前月▲7.0%の8,679万トン、前々月+2.5%の9,388万トン、前々々月+7.8%の9,945万トン)と減速が鮮明になった。前年比での伸びが鈍化。生産調整の影響が出ている。
一方、8月の鉄鋼製品の輸出は前年比+37.3%の505万3,000トン(前月+35.6%の567万トン)と前月から前年比の伸びを拡大した。ただし、過去5年平均を下回る水準に減少しており、やはり国内供給を優先させていることが窺える。
なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲12万6,000トンの1,551万3,000トン(過去5年平均 1,138万6,000トン)と例年を上回り水準は高い。
【中国鉄鉱石輸出入・在庫動向】
原料である鉄鉱石の7月の輸入は前年比▲21.4%の8,851万トン(前月▲12.1%の8,942万トン)と減速した。中国政府の鉄鋼ミル稼働制限の動きが輸入を鈍化させたとみられる。
また中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性がある。
なお、中国の最大の輸入相手である豪州では鉱山の人繰りが付かず生産が停滞しているとの指摘もあるが、直近5月の輸出統計では明確な減速は確認されていない。
鉄鉱石港湾在庫は前週比▲90万トンの1億3,050万トン(過去5年平均1億2,566万トン)、在庫日数は26.9日(過去5年平均 27.7日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。
在庫日数は粗鋼生産の水準の高さに依拠するため、中国政府の鉄鋼生産抑制方針を受けて在庫日数の上昇傾向は続き、価格の下押し要因になると予想される。
【中国原料炭輸出入・在庫動向】
原料炭は中国の生産活動回復が継続しているが、前年比の伸び鈍化が明確になってきたため(中国政府の方針通り)、価格は下落余地を探る動きになると考える。
また、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることも、海上輸送原料炭価格を下押ししよう。
とは言え、環境規制強化の流れで世界的に原料炭供給を増加させられる地域が限定されることから、下落余地も同様に限定される都見るのが妥当だ。
7月の中国の原料炭輸入は前年比▲48.8%の377万1,291トン(前月▲33.9%の413万4,210トン)と減少幅を拡大している。例年よりも輸入の水準は低い。
中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲8万トンの115万トンと過去5年平均の119万4,000万トンを下回っている。
在庫日数は4.6日と、過去5年の平均である5.0日を下回り、タイトな状態。しかし、中国政府の方針を受けた粗鋼生産の減少の可能性は高く、価格には下押し圧力が掛る公算。
【見通しの固有リスク】
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合(価格上昇要因)。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク(価格上昇要因)。
---≪貴金属≫---
【貴金属価格見通し】
【金】
金はしばらく上昇圧力が強まる展開が予想される。米雇用統計がやや弱気な内容だったことでテーパリングは早期に行われるものの、ペースが緩慢で利上げはまだ先と強調されたことで、一旦調整的に長期金利の下押し圧力が強まるため。
ただしテーパリングが進捗する中では(というよりは、テーパリング宣言からテーパリング実施まで、その影響を織り込む中では)長期金利に上昇圧力が掛り、中期的に下落に転じる見通しに変化はない。
なお、過去5年平均を基準にすると名目金利1bpに対する金価格の感応度は±3.0ドル弱であり、米10年金利が現在の水準から30bp上昇すれば▲90ドルの下落圧力となる(60bpで▲180ドル)。
現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,674ドルと昨日と変わらず。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は121ドルと昨日から▲10ドル低下している。
リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で130ドル、6ヵ月で180ドル、1年で200ドル、5年で175ドルとなっている。
なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。
※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。
【銀】
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、75.6倍。過去1年を基準にすると72倍、5年では80倍、2000年以降では66倍程度が妥当。
今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になると見られるが、米政府は新疆ウイグル自治区問題を背景に輸入を制限する見通しであり足下その期待は後退している。
なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。
(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%
金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%
【PGM】
プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。
パラジウムは経済活動正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加を受けて高値を維持すると考える。
8月の米自動車販売は年率1,306万台(市場予想1,443万台、前月1,475万台)と減速。目先はパラジウム価格の下落要因となりやすい。
中国の7月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比▲11.8%の186万3,550台。前月▲12.4%の201万5,309台5月▲3.0%の212万7,000台、4月+8.8%の225万台3月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台9月+13.0%の256万5,201台
と前年比でマイナス幅は若干縮小したが、国内景気の減速と半導体供給不足が材料となり販売は落ち込んでいる。
調査会社のオートフォーキャスト・ソリューションズによれば半導体不足による供給減少の累積は7月16日時点で167万8,000台となっており、2019年1-7月期の966万9,484台から▲17.4%減少している。
この回復がある、ないしは供給側の混乱(南アフリカ)による生産減少がなければ、PGM価格は低水準で推移しよう。
【見通しの固有リスク】
・アフガニスタン情勢がかなり混迷の度合いを深めており、周辺地域への影響(南欧など)が拡大し、軍事的な行動に発展、足下のリスク・プレミアムが低いことからリスク回避の見直し買いが入る場合(貴金属セクター全体の上昇要因)。
・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。
・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。
・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。
・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが306,017枚(前週比 ▲4,987枚)、ショートが99,978枚(+5,524枚)、ネットロングは206,039枚(▲10,511枚)、銀が63,879枚(+944枚)、ショートが35,323枚(▲5,281枚)、ネットロングは28,556枚(+6,225枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが32,183枚(前週比 ▲1,230枚)ショートが25,834枚(+478枚)、ネットロングは6,349枚(▲1,708枚)
パラジウムが3,222枚(+70枚)、ショートが3,557枚(+224枚)ネットロングは▲335枚(▲154枚)
---≪農産品≫---
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格は軟調な推移になると考える。収穫シーズンを迎えたハーベスト・プレッシャーが価格を下押ししやすい他、相次ぐハリケーン・熱帯性暴風雨の影響での影響で輸出が停滞する可能性があることから。
8月の中国の大豆輸入は前年比▲1.2%の948万8,000トン(前月▲14.0%の867万トン)と回復し、過去5年水準を上回った。依然として中国の大豆在庫の水準は低いため、相応の輸入需要があると見られる。
Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210908update.jpg
【見通しの固有リスク】
・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。
・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。
・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
【米農務省需給報告データ】
・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)
・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)
・9月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 176.3Bu/エーカー(175.6、174.6)大豆 50.6Bu/エーカー(50.4、50.0)小麦 44.5Bu/エーカー(NA、44.5)
・9月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,600万Bu(149億137万Bu、147億5,000万Bu)大豆 43億7,400万Bu(43億6,526万Bu、43億3,900万Bu)小麦 16億9,700万Bu(NA、16億9,700万Bu)
・9月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億7,500万Bu(24億Bu)大豆 20億9,000万Bu(20億5,500万Bu)小麦 8億7,500Bu(8億7,500万Bu)
・9月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 14億800万Bu(13億4,137万Bu、12億4,200万Bu)大豆 1億8,500万Bu(1億8,152万Bu、1億5,500万Bu)小麦 6億1,500万Bu(6億1,259万Bu、6億2,700万Bu)
・6月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 41億1,200万Bu(77億1004万Bu)大豆 7億6,700万Bu(15億6,400万Bu)小麦 8億4,400万Bu(13億1,400万Bu)
・9月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,987万ha(NA、1,982万ha)大豆 3,853万ha(NA、3,853万ha)
・9月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 8,575万トン(NA、8,665万トン) 単収 4,316kg/ha(NA、4,371kg/ha)大豆 1億3,591万トン(NA、1億3,598万トン) 単収 3,527kg/ha(NA、3,529kg/ha)
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが382,214枚(前週比 ▲18,509枚)、ショートが114,437枚(+17,886枚)ネットロングは267,777枚(▲36,395枚)
大豆はロングが148,848枚(▲10,133枚)、ショートが78,611枚(+765枚)ネットロングは70,237枚(▲10,898枚)
小麦はロングが108,298枚(▲3,826枚)、ショートが90,758枚(+1,439枚)ネットロングは17,540枚(▲5,265枚)
◆本日のMRA's Eye
「小麦価格さらなる上昇の可能性」
上昇を続けていた小麦価格は再び下落し、水準を切下げた。その他の穀物と同様、小麦も市場参加者が海洋ニーニョ指数を参考にしながら取引をするようになっていると考えられ、2021年5月13日の米海洋大気庁によるラニーニャ現象収束宣言以降水準を切下げていたが、今年は春小麦(春に播種して秋に収穫する。
米国では冬小麦の方が生産量が多い)の作柄が歴史的に悪く、春小麦価格の上昇に牽引される形で冬小麦価格も上昇していた。
しかし、作柄は悪いものの収穫の進捗に伴ういわゆるハーベスト・プレッシャーや、直近のハリケーン「アイダ」の影響でメキシコ湾からの輸出ができない状態となって米国内需給が緩和したことで水準を切下げ、現在軟調な推移となっている。期せずして天候要因が小麦価格を乱高下させることとなった。
小麦は世界中で生産・収穫されるため、トウモロコシや大豆などのように生産が北米に比較的偏っている穀物に比べると天候不順の生産への影響は比較的限定される。
あるいは収穫の時期になると「需給の帳尻」があって、上昇していても下落に転じることは多い。
かつて小麦が上昇を長期にわたって続けたのは、2010年~2012年のラニーニャ現象が発生した時ぐらいであり、このときに食品価格の高騰でアラブの春が発生したことはこのコラムでも何回か触れている通りだ。
今年は年初に秋頃にエルニーニョ現象が発生し、冬場に再びラニーニャ現象が発生する見通しがいくつかの気象予報で示されたが予想の通りにはならなかった。
しかし、気象庁の予報では秋から年初にかけてラニーニャ現象がおよそ3割の確率で発生することが予想されており、エルニーニョ現象を経ずにそのままラニーニャ現象が発生する可能性が出てきた。
市場参加者が海洋ニーニョ指数動向に非常に敏感に反応することを考えると、本格的な価格調整を経ずに再び価格が上昇に転じるリスクは無視できないと言える。
また、直近の米農務省の需給報告でも、需給バランスのタイト化を受けて再び価格が上昇する可能性が高いことを示唆している。
弊社は穀物価格を見通す上でその穀物年度の需要を供給量で割った需給率が重要であると考えているが、小麦の場合はシカゴ定期価格であっても米国の需給率よりも世界の需給率の方が説明力が高く、2021-2022年の需給率が前年比+0.6%の77.9%になることを考えると、直近5年のトレンドを参考にすれば平均価格で700セントを上回る水準に上昇してもおかしく無いことを示唆している(昨日、限月交代で直近価格は既に700セントを回復)。
また、シカゴの受け渡し可能在庫の水準は過去5年の最低水準であり、統計上の米国内需給がタイトであることも価格を高値に維持しよう。
また、中国が安全保障の観点から穀物調達を増やす可能性があることも価格の押し上げ材料となり得る。
今年から始まった5ヵ年計画では中国の食糧生産能力を年間6億5,000万トンとすれば5ヵ年計画中の食糧供給は十分とされ、足下の国家備蓄の水準も高く、さらなる在庫積み増しの需要は大きくないと考えられる。
しかし、米中が対立して最悪の場合、武力衝突が有り得る状況を考えると、自給が基本ではあるが結党以降、食糧問題に悩まされてきた中国共産党が予防的に在庫を積み増す動きを強めてもおかしく無い。さらに毎年豊作になる保証はないのだ。
米農務省の見通しでは2021-2022年の中国の小麦の期末在庫は1億4,102万トンと前年から▲310万トン減少する見通しである。需要に対する在庫の水準である在庫率は94.0%(前年95.6%)と2期連続で100%を下回り、かつ、前年を下回る見通しだ。
2021-2022年の世界の在庫率が36.0%であることを考えると中国の在庫率は著しく高いが、それでも需要を全て満たす量の在庫を確保する可能性は低くないと考えるべきだろう。
あくまでリスクシナリオであるが、仮に100%まで積み増すなら1,210万トンの輸入増となり、世界の需給率をさらに1%程度押し上げるため、需給率分析を元に回帰分析を行うと、価格ベースで1ドルを超える価格上昇となる。
では日本への影響はどうか。日本は国内供給を100%自給できないため、もちろん国際価格が上昇すると国内価格にも影響が出ることになる。日本は政府と輸入委託契約を締結した輸入者から政府が小麦を買い上げ、相場変動を考慮して実需家に販売する相場連動性で小麦を供給している。
以前は年間を通じて価格が固定の標準売渡価格制度となっていたが、相場変動が激しくなる中で、市場の相場変動を迅速に販売価格に転嫁する方針にシフトし、毎年4月と10月に過去6ヶ月間の主要小麦5種の平均買付価格を元に売渡価格を変更している。
しかし、生産地から日本までの輸送期間や小麦を仕入れた製粉業者が小麦粉にして価格を転嫁するまでの時間を考慮すると、最終価格ヘの反映はさらに数ヵ月遅れることになる。
この1年間、山谷はありながらも小麦の国際価格は上昇を続けているため、引き続き国内の小麦価格は上昇圧力に晒されると見ておくべきだろう。
◆主要ニュース
・7月日本機械受注総額
前月比+11.7%の2,876億円(前月▲6.6%の2,574億円)
前年比+49.3%(+43.1%)
船舶電力を除く民需+0.9%の860億円(▲1.5%の852億円)+11.1%(+18.6%)
・7月日本第3次産業活動指数 前月比▲0.6%(前月+2.2%)
・1-8月期中国工業生産 前年比+13.1%(1-7月期+14.4%)
8月 前年比+5.3%(前月+6.4%)
・1-8月期中国固定資産投資 前年比+8.9%(1-7月期+10.3%)
公的+6.2%(+7.1%)、民間+11.5%(+13.4%)
・1-8月期中国小売売上高 前年比+18.1%の28兆1,224億元(1-7月期+20.7%の24兆6,829億元)
8月+2.5%の3兆4,395億元(前月+8.5%の3兆4,925億元)
・1-8月期中国不動産開発投資 前年比+10.9%の9兆8,060億元(1-7月期+12.7%の8兆4,895億元)
・8月中国新築住宅価格 前月比+0.16%(前月+0.30%)
・7月ユーロ鉱工業生産 前月比 +1.5%(前月▲0.1%) 前年比+14.2%(+15.0%)
・Q221 ユーロ圏労働コスト 前年比▲0.1%%(前期+1.3%)
・米MBA住宅ローン
申請指数 前週比 +0.3%(前週▲1.9%)
購入指数 +7.5%(▲0.2%)
借換指数 ▲3.2%(▲2.8%)
固定金利30年 3.03%(3.03%)
15年 2.34%(2.37%)
・9月ニューヨーク連銀製造業景況感指数 34.3 (前月18.3)
仕入価格 75.7(76.1)
販売価格 47.8(46.0)
入荷遅延 36.5(28.3)
新規受注 33.7(14.8)
受注残 20.9(15.0)
在庫水準 11.3(6.2)
雇用者数 20.5(12.8)
6ヵ月先景況指数 48.4(46.5)
・8月米輸出物価指数 前月比+0.4%(+1.1%)、前年比+16.8%(+17.0%)
輸入物価指数 ▲0.3%(+0.3%)、+9.0%(+10.3%)
除原油 前月比▲0.1%(+0.3%)
・8月米鉱工業生産 前月比+0.4%(前月+0.8%)
設備稼働率 76.4%(76.2%)
製造業生産 +0.2%(+1.6%)
・中国政府、不動産大手中国恒大集団お主要債券銀行に対し、20日が期限の利払いを行わない見込みと伝達。
・北朝鮮、長距離ミサイル2発を発射、日本海に着水。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲6.4MB(クッシング▲1.1MB)
ガソリン▲1.9MB
ディスティレート▲1.7MB
稼働率+0.2
原油・石油製品輸出 7,782KBD(前週比▲328KBD)
原油輸出 2,705KBD(▲201KBD)
ガソリン輸出 686KBD(▲5KBD)
ディスティレート輸出 992KBD(▲71KBD)
レジデュアル輸出 93KBD(+7KBD)
プロパン・プロピレン輸出 1,219KBD(+60KBD)
その他石油製品輸出 2,004KBD(▲116KBD)
・メキシコ湾の原油・天然ガス生産減産状況(9月15日時点)
有人プラットフォーム退避 6.43%の36基(前日6.69%の39基)
避難リグ なし(なし)
移動リグ 13.33%の2基(13.33%の2基)
原油生産減少 29.52%の53万7,193バレル(39.57%の72万217バレル)
ガス生産減少 39.40%の878.7MCFD(48.20%の1,074.81MCFD)
・欧州主要ガスプロジェクトメンテナンス予定
Teesside CATS(ターミナル) 9月14-16日 輸出停止
BBL(パイプライン) 9月14-16日
Aasta Hansteen(ガス田) 9月14-16日 25.8MCFD
Zeebruge(ターミナル) 9月13-17日 42.4MCFD
Troll(ガス田) 9月10-17日 11.0MCFD
Aasta Hansteen(ガス田) 9月16-17日 18.3MCFD
Gina Krog(ガス田) 8月27日-9月18日 9.8MCFD
Perenco Bacton(ターミナル) 9月15-18日 11.0MCFD
Cygnus(ガス田) 9月15-20日 7.9MCFD
Sleipner(ガス田) 8月27日-9月20日 11.1MCFD
Oseberg(ガス田) 9月16-20日 5.0MCFD
Kollsnes(プラント) 9月10-24日 12.5MCFD
Troll(ガス田) 9月17-24日 7.0MCFD
Dimlington(ターミナル) 9月3-24日 5.5MCFD
・ガスプロム アレックス・ミラーCEO、「ノルドストリーム2は10月1日から稼働しない。」
・「ニコラス」はハリケーンに発達。テキサス州に上陸する見通し。ただしメキシコ湾の主要原油・ガス田は回避する見通し(製油設備への影響は不可避か)。
【メタル】
・WBMS 1-7月期
銅需給 ▲10万3,000トンの供給不足
鉛 ▲24万2,000トンの供給不足
亜鉛 ▲9万トンの供給不足
アルミ ▲107万6,000トンの供給不足
ニッケル ▲4万4,700トンの供給不足
錫 ▲2,100トンの供給不足
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +7.49%/ +214.36%
2.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +6.06%/ +10.23%
3.CBT小麦 ( 穀物 )/ +3.98%/ +11.20%
4.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +3.80%/ +115.05%
5.NYM WTI ( エネルギー )/ +3.05%/ +49.65%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲3.52%/ ▲47.96%
65.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲2.60%/ ▲20.76%
64.SHFアルミ ( ベースメタル )/ ▲2.39%/ +42.17%
63.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ ▲1.55%/ ▲22.67%
62.SHF鉛 ( ベースメタル )/ ▲1.18%/ ▲0.31%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,814.39(+236.82)
S&P500 :4,480.70(+37.65)
日経平均株価 :30,511.71(▲158.39)
ドル円 :109.38(▲0.31)
ユーロ円 :129.25(▲0.21)
米10年債 :1.30(+0.02)
中国10年債利回り :2.89(+0.01)
日本10年債利回り :0.04(▲0.02)
独10年債利回り :▲0.31(+0.03)
ビットコイン :47,941.58(+1113.40)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.81(+0.69)
エネルギー :33.11(+0.34)
ベースメタル :26.44(+0.14)
貴金属 :25.95(+0.24)
穀物 :25.07(+2.95)
その他農畜産品 :24.81(+0.26)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :33.03(+1.07)
Brent :32.79(+0.41)
米天然ガス :51.67(▲0.1)
米ガソリン :47.03(▲0.04)
ICEガスオイル :31.11(+0.59)
LME銅 :27.05(+0.13)
LMEアルミニウム :25.20(▲0.14)
金 :25.92(+0.77)
プラチナ :26.64(+0.19)
トウモロコシ :33.54(+8.89)
大豆 :25.92(+0.77)
【エネルギー】
WTI :72.61(+2.15)
Brent :75.49(+1.89)
Oman :73.47(+1.52)
米ガソリン :220.66(+3.42)
米灯油 :220.53(+4.40)
ICEガスオイル :629.75(+14.75)
米天然ガス :5.46(+0.20)
英天然ガス :177.30(+12.35)
【貴金属】
金 :1794.06(▲10.45)
銀 :23.84(▲0.01)
プラチナ :950.07(+6.07)
パラジウム :2009.51(+31.99)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,505(+89:16.5C)
亜鉛 :3,067(+43:15C)
鉛 :2,227(▲40:7.5B)
アルミニウム :2,888(+30:20C)
ニッケル :19,840(+215:10B)
錫 :33,575(▲5:800B)
コバルト :51,202(▲6)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9608.50(+176.00)
亜鉛 :3073.00(+29.00)
鉛 :2238.00(▲23.00)
アルミニウム :2890.00(+59.00)
ニッケル :19930.00(+345.00)
錫 :33985.00(+290.00)
バルチック海運指数 :4,221.00(+58.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :127.69(▲3.31)
SGX鉄鉱石 :123.49(▲3.30)
NYMEX鉄鉱石 :124.16(▲3.95)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :329.33(▲0.67)
大連原料炭先物 :534.94(+57.43)
上海鉄筋直近限月 :5,466(▲106)
上海鉄筋中心限月 :5,495(▲103)
米鉄スクラップ :594(+6.00)
【農産物】
大豆 :1294.50(+18.00)
シカゴ大豆ミール :335.90(▲5.30)
シカゴ大豆油 :58.31(+1.63)
マレーシア パーム油 :4700.00(+69.00)
シカゴ とうもろこし :533.50(+30.50)
シカゴ小麦 :712.25(+27.25)
シンガポールゴム :176.80(+0.80)
上海ゴム :12795.00(+145.00)
砂糖 :19.52(+0.56)
アラビカ :187.00(+4.00)
ロブスタ :2091.00(+19.00)
綿花 :94.67(▲0.29)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :82.28(+1.90)
シカゴ生牛 :124.18(+0.05)
シカゴ飼育牛 :154.73(▲0.55)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。