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米市場休場で動意薄い~アフリカのクーデター続く
  • MRA商品市場レポート

2021年9月7日 第2027号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米市場休場で動意薄い~アフリカのクーデター続く」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は米国市場休場で動意薄かったが、天然ガスやアルミなど、固有の要因がない商品は掃除t恵軟調な推移となった。どちらかと言えばポジション調整の売買が主体だったと考えられる。やや懸念されるのはアフリカでクーデターが頻発していることだ(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)。

しかし、米国の統計が弱いこと、欧州も金融緩和解除の開始は先送りされるのでは、との見方が広がっていることが再び株式市場参加者を強気に傾けている。しかし今後、テーパリングが進む見通しであり、徐々に業績相場に移行することから、コロナからの脱却の見通しがより重要になると考えられる。

ただ、「ゼロコロナ」を目指していた台湾やシンガポールもウィズコロナにシフト(ニュージーランドはまだゼロコロナ対策を継続)しており、世界の潮流は想定した政策にシフト(ニュージーランドはゼロコロナを継続)している。

恐らく日本も早晩そちらに舵を切るタイミングが訪れると予想される。これは小さい方針転換ではない。その政策転換を次の政権が負うことになるため、政権交代で仕切り直しとなる日本の国内政治が混乱するリスクは小さくないと考えられる。

【本日の見通し】

本日も欧米経済統計の原則を受けた緩和政策解除ペース鈍化期待をうけたリスク選好で株が上昇すると見られることから、投機的な買いが価格を押し上げると考える。

ただし、米国で金融緩和の縮小が始まる可能性は高く、基本的には「下りのエスカレーター」に乗っている商品が多いとみられ上昇余地も限られよう。

本日予定されている統計で注目は、中国貿易統計と独NEW景況感指数。中国の経済活動がどの程度減速しているかに特に注目したい。

9月独ZEW景気期待指数 市場予想 30.8(前月40.4) 現状指数 34.0(29.3)

8月中国貿易統計 輸入 前年比+26.9%(+28.1%) 輸出 +17.3%(+19.3%)

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆エネルギー

原油価格は下落した。米国主要市場が休場の中、メキシコ湾の緩やかな生産再開とドル高進行が材料となった。

サウジアラムコの調整金引き下げで「価格競争が強まる」との報道もあったが、そもそも期間構造を反映してのOSP見直しであり、バック幅が縮小していることに伴う調整金引き下げであり、弊社の推定値とほとんど誤差がない水準での決定でサプライズはない。

ただしサウジアラムコの調整金動向はアナウンスメント効果があるため、これが材料になったとしてもおかしくはない。

9月6日時点で米メキシコ湾の原油・ガスの生産は回復しているが、引き続き8割を超える生産が停止している状態(減産の詳細はエネルギー関連ニュースをご参照ください)。

引き続き、テクニカルなポイントが意識されるが、50日移動平均線が100日移動平均線を上から下に抜ける「デッドクロス」が近づいている。

チャートポイントは高い所から、50日移動平均線(Brent:72.50ドル、WTI:70.14ドル)、100日移動平均線(Brent:71.23ドル、WTI:68.51ドル)、200日移動平均線(Brent:65.04ドル、WTI:61.83ドル)。

豪州石炭スワップ先物価格は下落して180ドルを下回った。競合燃料である欧州天然ガスがロシアからの供給減少観測を受けて高値圏を維持、JKM価格が高止まりしていることが影響している。

中国の石炭輸入動向への説明力が高いバルチック海運指数は低下している。

このままこの統計の水準の高さを「中国の需要増加」とするのは乱暴ではあるが、同指数への中国石炭輸入の説明力は相応にあるため、やや調達圧力が季節的に緩和した可能性は有り得る。

JKM先物市場は横這い。欧州の天然ガス価格が新たな供給停止に加え、ロシアからの供給減少観測を通じて高値圏を維持していることが材料となった。

欧州天然ガスは高値を維持。定収時期でありガス田のメンテナンスが続く中で供給が制限されており、さらに、政治的な意図か本当に在庫が少ないのか不明だが、ロシアが自国内の在庫積み上げのために欧州への供給が制限される、との見方が強まっていることが価格を押し上げている。

米天然ガスはメキシコ湾のガス生産回復が遅れており、高値圏を維持している。

スポットLNGタンカーレートはスエズ以東・以西共に低下した。ピークシーズンの終了もあるが、総じて調達意欲は旺盛とみられこれから季節的な在庫積み増し時期に早くも入るため再び上昇に転じることになろう。

2021年8月16日~8月22日のLNG取引は前週比+5%の730万トン(前週+4%の700万トン)と増加、スポット調達のシェアは27%(24%)と上昇。日本と中国のスポット調達が先週からかい。日本と中国、韓国、台湾の輸入が増加した。スポット調達のシェアは日本と中国で低下。スポット調達のシェアは24%と先週の28%から低下。

本日は、欧州の緩和政策継続などへの期待から株価が堅調に推移しており、投機的な買いが入りやすいが、メキシコ湾の生産再開も徐々に進んでいることからもみ合うものと考える。

LNGは、欧州域内のガス供給減少とロシアの供給制限、北米の生産回復の遅れから高値を維持する公算。石炭もガス価格が高値を維持することから高値を維持すると考える。

季節的には不需要期であり、LNG・石炭とも下落する時期であるが在庫の積み増しが不十分であり「価格が高いまま冬場を迎える」のがメインシナリオに。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は鉛、ニッケル、すずが下落、アルミ、銅、亜鉛は上昇した。

米国市場が休場の中、動意薄い展開が予想されたが欧州の緩和縮小が先送りされるとの見方やそれに伴うユーロ安・ドル高が材料となった。固有の材料としてはギニアのクーデターによるボーキサイト供給減少が意識された。

ギニアで大統領官邸が襲撃され、特殊部隊が大統領を拘束、憲法停止が宣言された。同国はボーキサイト供給の世界シェアが22.1%(2020年生産:8,200万トン USGA推計)であり、供給懸念が意識されたことはアルミ価格の上昇要因となった。

本日は欧州の緩和政策縮小が先送りされる展開が意識され、株が上昇していることから上昇余地を探る動きを予想。しかし、中国の貿易統計は輸出が前年比+17.3%(前月19.3%)、輸入が+26.9%(+28.1%)と減速見込みであり、上値も重いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅下落、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は上昇した。

中国政府による鉄鋼製品生産の削減方針を受けて鉄鋼向けの鉄鉱石需要減少が予想され、在庫日数も上昇している鉄鉱石は売られたが、引き続き在庫の水準が低い原料炭は買われ、供給減少が見込まれる鉄鋼製品は9月のピークということもあって上昇した。

本日も当局による鉄鋼製品生産規制で鉄鉱石は軟調、在庫水準の低さから原料炭は底堅い推移を予想。

なお供給減少と需要増加で鉄鋼製品価格が堅調に推移すると予想されるため調整幅はいずれにしても限定の公算。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは下落した。米国主要市場、特に金価格と対になる債券市場が休場だったことで動意薄く、欧州緩和縮小の先送り観測を背景に、ユーロ安・ドル高が進行したことがリスク・プレミアムを押し下げたため。

本日は株価の戻りが見込まれる中、長期金利に上昇圧力が掛かることからドル高が進行しやすく、軟調地合を維持の公算。

◆穀物

シカゴ穀物市場は休場。

本日も米国はハリケーンの影響からの復帰が遅れており、トウモロコシ・大豆は軟調地合となる公算。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日、アフリカのギニアでクーデターが発生し、政権が転覆した。大統領の圧政に不満を持ってのクーデターだが、背景には、1.コロナの感染拡大で人命が失われていること、2.食品価格が高騰しており生活が厳しいこと、3.新興鉱産国の場合資源は一部の既得権益権者が有しており、貧富の差が拡大しやすいこと、といったことが背景にあると考えられる。

ILOの集計だと失業率は4.3%(2019年)と低く、直近のデータがないためなんとも言えないがこのときよりは状況は悪化している可能性が高い。

これはギニアに限った話ではなく、昨年はマリでクーデターが発生、今年に入ってからもチュニジアでも政変が起きており、明らかにアフリカの新興諸国の治安が悪化していることがうかがわれる。

特に、脱炭素で鉱物資源を求める動きが強まる中では、貧富の差が拡大しやすくなるため暴動がさらに起きやすくなる。これは中南米などでも同様である。

この流れはリーマンショック後に雪崩を打つように国が崩壊していった、アラブの春に状況が似る。今とリーマンショックに共通の項目は「景気の悪化」である。

もし今後、米国がテーパリングに動いた場合これらの新興国経済が悪化してさらに暴動が起きるリスクは意識せざるを得ない。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・アフガン情勢の混乱が域内経済に混乱(大量の難民発生、コロナの感染拡大が欧州圏にもたらされるなど)をもたらし、米中対立を先鋭化させる場合(景気の減速要因)。

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

アフガン政策のミスは致命傷となる可能性も。

・米テーパリング実施が、コロナの感染に苦慮する中南米、欧州・アフリカの新興国経済に悪影響を及ぼす場合(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。

・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など。既に中国製のワクチンは新興国で接種されているが、殆ど効果が出ていない)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、東南アジア、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は中期的にはOPECの増産、米テーパリング開始を背景に軟調な推移になると予想する。ハリケーンの影響は2~3週間に及ぶ見通しだが、基本的には回復していくため下落要因となる。

前回テーパリング中盤に原油価格は下落に転じており、今回テーパリング開始も価格の下押し要因となるが、利上げの先送り観測でドル安が進行するならしばらくは価格の下支え要因となる。

なお、正常化が前提であるものの、ここに来てコロナの変異株の感染が拡大、ワクチン接種が世界で最も進んでいるイスラエルでもワクチンの有効性が低下していることは、需要の下押し要因となる。

最大消費国である米国の石油製品出荷は2015-2019年の平均水準を回復しており、需要の回復は順調であり下落余地もそろそろ限定されるだろう。

年末に向けてBrentは60ドル台半ば、WTIは60ドル台前半への調整をメインシナリオとしている。その後は金融面の政策調整一巡から、再び上昇に転じると考えている。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種が進捗せず、同時に変異株が猛威を振るいワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でテーパリングなどの金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。

・OPECプラスの増産ペースの遅れによる供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。

価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

かなり過剰なペースで脱炭素が進められており、オイルメジャーも株主・政府の圧力を受けて脱炭素に舵を切り、タイムリーな原油増産が困難になっている。

この場合、「脱炭素移行期間の景気回復時」には十分な燃料供給が出来ないリスクが高まり、来年以降の価格上昇局面で原油価格が100ドルを超えるリスク(リスクシナリオの位置づけ)。

なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は堅調な推移になると考える。中国の電力需要向けの調達は夏場のピークを過ぎても堅調であること、基本、季節的に調達圧力が弱まる時期にあるものの、ロシアのNord Stream2を巡る欧州へのガス供給減少や米国のハリケーンの影響が競合燃料である天然ガス価格を高止まりさせることが要因。

このまま高い水準のまま、冬場に突入する可能性が高いと考える。

しかし、中国政府は脱炭素といいつつ、石炭の国内生産を増加させていること、国内のバブル抑制に舵を切り、中国経済が減速傾向にあること、からそろそろ調整があってもおかしく無い。

石炭は「座礁資産」と呼ばれ、上流部門投資ができなくされていることから、増産をしているのはGlencoreや中国企業ぐらいであり、供給が不十分であること、需要側の構造はそう簡単には変わらないことを考えると、調整があるといってもしばらくは高い水準での推移が予想される。

7月の石炭輸入は前年比+15.6%の3,017万8,000トン(前月+12.3%の2,839万2,000トン)と回復した。猛暑・渇水による発電燃料としての石炭需要増加と、中国の経済活動回復に伴う電力需要の増加が続いているためと考えられる。

中国6大電力会社の石炭在庫の水準は低く、まだ、季節的な石炭輸入需要の増加は続くと考える。石炭価格の下落は夏場の在庫調達が一巡する必要があるため、この夏の間は高止まりする可能性が高い。

【見通しの固有リスク】

・Nord Stream2の稼働が早期に行われ、天然ガス価格が急落する場合(下落要因)。

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念(価格の上昇要因。これは既に顕在化しつつある)。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生の可能性がある秋以降、再びラニーニャ現象が発生し、厳冬となる場合(価格上昇リスク)。

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発である一方、猛暑や水不足による水力発電からの電力供給低下で、火力発電向けの燃料需要が旺盛なこと、同時に海上輸送石炭価格も高い水準で推移していること、欧州のメンテナンスや悪天候、ロシアからの供給減少で欧州の域内需給がタイト化していること、米国のハリケーンの影響で大西洋地区の天然ガス供給が制限されることから、価格は高値を維持すると考える。

ハリケーンからの復旧には数週間かかるとみられており、「夏場終了の価格下落」を消費者側は期待していたが、その可能性は著しく後退した。

在庫不足の状態に変わりはないため価格は高値維持だが、そろそろ季節的な調整には備えるべきではないか。

7月の中国のLNG輸入は前年比+12.6%の567万トン(前月+15.9%の672万トン)と過去5年レンジを上回り構造的な需要増加は続いているが、やや伸びは鈍化した。

なお、7月の中国の天然ガス輸入は前年比+27.0%の934万トン(前月+26.2%の1,021万トン)と減少したが、季節的に見ると過去5年レンジを大きく上回った状態が続いている。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・8月18日にNord Stream2が稼働しているとの誤ったデータが発表された直後、ガス価格が大幅に下落している。

政治的な要因でNord Stream2の稼働は遅れると考えられるが、同パイプラインが稼働して欧州のガス需給が緩和した場合(価格下落要因)。

・石炭と同様、「化石燃料であること」を理由に上流部門投資が制限される、あるいは原油生産減少による随伴ガス供給が減少する場合(構造的な価格上昇要因)。

・ウクライナやベラルーシといったロシアと欧州の緩衝帯との政治的な軋轢によって、結果的にロシア産ガスの供給がロシア側の都合でコントロールされた場合(実際にロシアが行動を起こした場合、多くのケースで価格の上昇要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが515,630枚(前週比 ▲13,154枚)ショートが159,102枚(+4,630枚)ネットロングは356,528枚(▲17,784枚)

Brentはロングが340,265枚(前週比+15,093枚)ショートが66,371枚(▲12,837枚)ネットロングは273,894枚(+27,930枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は直近の直近の工業生産、固定資産投資、不動産投資とも前年比ベースの減速が顕著であり、工業セクター利益も減速、中国政府の想定通り中国経済は過熱が沈静化の方向に向かっていることから、米テーパリング早期開始観測と相まって水準を切下げる展開が予想される。

しかし、米上院でインフラ投資法案が可決したこと、コロナの影響や渇水に伴うエネルギー不足で供給面の問題も噴出していること、企業のデフォルトが増えたことで中国人民銀行が金融緩和(預金準備率の引き下げ)を実施していること、テーパリングは行うもののペースが緩やかで、利上げも先送りの可能性が出ていることから、下落余地も限定されると考える。

なお、長期的にはまだ脱炭素の流れ、省エネの流れに変わりがないため、供給面・需要面の制限から価格が上昇するという見通しを変更する必要はないと考えている。

8月の中国製造業PMIは50.1(前月50.4)と市場予想の50.2、前月共に下回った。まだ閾値の50は上回っているが中国の経済活動は鈍化の方向に向かっていると考えられる。

内訳を見ると生産鈍化(51.0→50.9)は続いているがまだ高水準だが、新規受注(50.9→49.6)、輸出新規受注(47.7→46.7)、受注残(46.1→45.9)と需要の鈍化が顕著である。

その一方でまだ在庫水準は低く、完成品在庫は47.6→47.7、原材料在庫は47.7→47.7、サプライヤー納期も短縮(48.9→48.0)している。

さらに細かく見ると、購買量は高い水準を維持(50.8→50.3)しており、購入価格も高値を維持(62.9→61.3)、販売価格も低下しては来たが高い水準を維持(53.8→53.4)という状態。

このことは、1.在庫水準が低いため在庫積み増しの動きはみられる、2.供給制限は徐々に解消しているが恐らく完全ではないため、仕入れ値は高い、3.価格上昇に伴い最終需要が減少している(レーショニング。特に中国の消費者は価格感応度が高い)可能性がある。

工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.040(前月1.069)、原材料が1.040(1.067)と両指数とも小幅に低下しており国内の需給が緩和していることをうかがわせる。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは7月、減速していた。しかし8月の統計は60.5(前月57.5)と回復している。鉄鋼製品価格の上昇が7月の需要を減じていたとみられ、8月の鉄鋼製品価格は下落している。

中国政府も増加するデフォルトを回避する目的で金融緩和を行っていることもあり、建築向けの需要は政府当局は抑制方針であるものの底堅く推移するのではないか。

7月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲44.3%の42万4,280トン(前月▲34.7%の42万8,000トン)と過去5年平均を下回り、減速感が鮮明となっている。

7月の銅精鉱の輸入+5.4%の188万7,000トン(前月+5.1%の167万1,000トン)と高い水準を維持してはいるが、過去5年の最高水準は下回っている。

中国政府によるバブル抑制方針を背景に輸入が減少しているとみられるが、足下、企業支援目的の預金準備率の引き下げが実施されており、再び住宅セクターの回復で輸入は増加するのではないだろうか。

7月の銅スクラップの輸入は+98.9%の14万9,369トン(前月+118.8%の15万448トン)。

中期的には米国や欧州の財政出動、脱炭素の動きを受けた動向に左右されることになる。

米バイデン政権は上院の超党派で、8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画で合意した、と発表した。今回の合意では、道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。

さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。

この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。

こうした政策期待や、インドなどの新興諸国の需要増加を受けた構造的な需要増加を受けて、中・長期的に価格は下支えされ、堅調な推移になると考える。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・ロジスティクスに障害が残る中、非鉄金属の偏在が現物プレミアムを押し上げるリスク。

・猛暑や渇水による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

チリで議論されている銅のロイヤルティ増税案の詳細は以下の通り。

年内実施予定の選挙結果では課税強化で生産コスト上昇、または減産となる可能性も。

3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。

2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%

年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。

2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比+2.1%の271億ドル(前週 266億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲0.6%の6,165.6千トン(前週 6,202.9千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は中国政府の温室効果ガス排出量削減目的の鉄鋼製品生産減少を受けて、鉄鋼向け需要が減少すること、鉄鋼原料価格を牽引してきた中国の経済活動が中国政府の住宅セクターの加熱沈静化策の執行で鈍化を始めていることから、水準を切下げる展開を予想。

直近の工業生産、固定資産投資、不動産投資とも前年比ベースの減速が顕著であり、中国政府の想定通り中国経済は過熱が沈静化の方向に向かっている。

工業金属需要の下押し要因となるため、鉄鋼原料価格も下押しされよう。

ただし、同時に中国政府は金融緩和を行っていること、米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に下落したとしても下値余地は限定されるのではないか。米国では鉄鋼製品価格上昇が継続している。

なお、鉄鉱石先物の期先の価格が限界生産コストの目安として意識されるが、80ドル程度で安定しており、やはり中長期的にはこの水準に価格が回帰すると考えている。

中国共産党は2021年から始まった新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。今のところ昨年の生産量を超えないようにする、というのが中国政府の目標。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられている。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。

別の話だが、半年後、北京オリンピック中に粗鋼生産が停止させられる可能性は高い。

粗鋼生産が減少すれば、鉄鉱石の在庫水準の指標である在庫日数も、分母が小さくなるため上昇が予想され、鉄鉱石価格の下落要因となる。これは原料炭も同様。

8月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は41.8(前月43.1)と悪化した。生産がやや回復(43.1→44.0)、輸出向け新規受注がやや回復(30.8→31.8)したが、新規受注が国内向けが鈍化(36.8→31.6)したことが影響した。いずれにしても閾値の50を大きく下回っており、中国の鉄鋼業の景況感は悪い。

コロナの感染拡大の影響、異常気象による生産抑制、中国政府が温室効果ガス削減、というよりは国内の住環境改善を目的として過剰な鉄鋼生産を抑制していること、などが素直に統計に反映された形。

なお、何もなければ9月は中国の鉄鋼需要のピークになるため生産活動の回復が見込まれるが、今年は政策的な抑制の方針を背景にそれほどの需要増加にはならないのではないか。

需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが0.94(前月1.16)と大幅に低下、新規受注原材料レシオも0.89(1.03)と低下しており、中国の鉄鋼製品需給バランスが緩和方向の圧力を受けていることを示唆している。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、中国の建設業PMIは7月、減速していた。しかし8月の統計は60.5(前月57.5)と回復している。

鉄鋼製品価格の上昇が7月の需要を減じていたとみられ、8月の鉄鋼製品価格は下落している。

中国政府も増加するデフォルトを回避する目的で金融緩和を行っていることもあり、建築向けの需要は政府当局は抑制方針であるものの底堅く推移するのではないか。

7月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲59.8%の104万9,000トン(前月▲33.4%の125万2,000トン)と減速し、過去5年平均を下回った。国内の鉄鋼製品需給緩和を目的とした輸出リベートの撤廃で国内需給が以前よりも緩和しているためとみられる。

7月の中国粗鋼生産は前年比▲7.0%の8,679万トン(前月+2.5%の9,388万トン、前々月+7.8%の9,945万トン)と減速が鮮明になった。前年比での伸びが鈍化。生産調整の影響が出ている。

一方、7月の鉄鋼製品の輸出は前年比+35.6%の566万9,000トン(前月+74.5%の645万8,000トン)と前月から前年比の伸びを縮小し、過去5年平均を下回る水準に減少している。やはり輸出リベートの撤廃の影響があるためと考えられる。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲3万トンの1,563万9,000トン(過去5年平均 1,139万7,000トン)と例年を上回り水準は高い。

原料である鉄鉱石の7月の輸入は前年比▲21.4%の8,851万トン(前月▲12.1%の8,942万トン)と減速した。中国政府の鉄鋼ミル稼働制限の動きが輸入を鈍化させたとみられる。

また中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性がある。

なお、中国の最大の輸入相手である豪州では鉱山の人繰りが付かず生産が停滞しているとの指摘もあるが、直近5月の輸出統計では明確な減速は確認されていない。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+200万トンの1億3,140万トン(過去5年平均1億2,619万トン)、在庫日数は27.0日(過去5年平均 27.8日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。

在庫日数は粗鋼生産の水準の高さに依拠するため、中国政府の鉄鋼生産抑制方針を受けて在庫日数の上昇傾向は続き、価格の下押し要因になると予想される。

原料炭は中国の生産活動回復が継続しているが、前年比の伸び鈍化が明確になってきたため(中国政府の方針通り)、価格は下落余地を探る動きになると考える。

また、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることも、海上輸送原料炭価格を下押ししよう。

とは言え、環境規制強化の流れで世界的に原料炭供給を増加させられる地域が限定されることから、下落余地も同様に限定される都見るのが妥当だ。

7月の中国の原料炭輸入は前年比▲48.8%の377万1,291トン(前月▲33.9%の413万4,210トン)と減少幅を拡大している。例年よりも輸入の水準は低い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲8万トンの115万トンと過去5年平均の119万4,000万トンを下回っている。

在庫日数は4.6日(▲0.3日)と、過去5年の平均である5.0日を下回り、タイトな状態。しかし、中国政府の方針を受けた粗鋼生産の減少の可能性は高く、価格には下押し圧力が掛る公算。

【見通しの固有リスク】

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合(価格上昇要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク(価格上昇要因)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金はしばらく上昇圧力が強まる展開が予想される。米雇用統計がやや弱気な内容だったことでテーパリングは早期に行われるものの、ぺースが緩慢で利上げはまだ先と強調されたことで、一旦調整的に長期金利の下押し圧力が強まるため。

ただしテーパリングが進捗する中では長期金利に上昇圧力が掛り、中期的に下落に転じる見通しに変化はない。

なお、過去5年平均を基準にすると名目金利1bpに対する金価格の感応度は±3.5ドル弱であり、米10年金利が現在の水準から30bp上昇すれば▲105ドルの下落圧力となる(60bpで▲210ドル)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,663ドルと昨日と変わらず、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は159ドルと昨日から昨日から▲5ドル低下している。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で140ドル、6ヵ月で180ドル、1年で200ドル、5年で175ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、75.0倍。過去1年を基準にすると72倍、5年では80倍、2000年以降では66倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になると見られるが、米政府は新疆ウイグル自治区問題を背景に輸入を制限する見通しであり足下その期待は後退している。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

パラジウムは経済活動正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加を受けて高値を維持すると考える。

8月の米自動車販売は年率1,306万台(市場予想1,443万台、前月1,475万台)と減速。目先はパラジウム価格の下落要因となりやすい。

中国の7月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比▲11.8%の186万3,550台。前月▲12.4%の201万5,309台5月▲3.0%の212万7,000台、4月+8.8%の225万台3月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台9月+13.0%の256万5,201台

と前年比でマイナス幅は若干縮小したが、国内景気の減速と半導体供給不足が材料となり販売は落ち込んでいる。

調査会社のオートフォーキャスト・ソリューションズによれば半導体不足による供給減少の累積は7月16日時点で167万8,000台となっており、2019年1-7月期の966万9,484台から▲17.4%減少している。

この回復がある、ないしは供給側の混乱(南アフリカ)による生産減少がなければ、PGM価格は低水準で推移しよう。

【見通しの固有リスク】

・アフガニスタン情勢がかなり混迷の度合いを深めており、周辺地域への影響(南欧など)が拡大し、軍事的な行動に発展、足下のリスク・プレミアムが低いことからリスク回避の見直し買いが入る場合(貴金属セクター全体の上昇要因)。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが311,004枚(前週比 +11,920枚)、ショートが94,454枚(+6,023枚)、ネットロングは216,550枚(+5,897枚)、銀が62,935枚(▲376枚)、ショートが40,604枚(▲846枚)、ネットロングは22,331枚(+470枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが33,413枚(前週比 +371枚)ショートが25,356枚(+1,457枚)、ネットロングは8,057枚(▲1,086枚)

パラジウムが3,152枚(+76枚)、ショートが3,333枚(▲109枚)ネットロングは▲181枚(+185枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は軟調な推移になると考える。ハリケーンの影響で輸出が停滞する可能性があるほか、降雨が作況の改善に寄与すると考えられることから。

春小麦は乾燥気候の影響もあって作柄が悪く、ロシアの生産見通しも下方修正されていることからさらに上昇余地を探る展開に。

ただし小麦の場合、毎年のことであるが最終的には供給のつじつまが合うことが多いため、年後半に掛けては下落に転じることになろう。

7月の中国の大豆輸入は前年比▲14.0%の867万4,000トン(前月▲3.9%の1,072万2,000トン)と前年から急速に減少し、過去5年平均を下回っている。豚向けの需要増加で輸入も増加していたが、影響が一巡した可能性がある。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210825update.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)

・8月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 174.6Bu/エーカー(177.39、179.5)大豆 50.0Bu/エーカー(50.28、50.8)小麦 44.5Bu/エーカー(NA、45.8)

・8月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 147億5,000万Bu(149億7,144万Bu、151億6,500万Bu)大豆 43億3,900万Bu(43億6,248万Bu、44億500万Bu)小麦 16億9,700万Bu(17億2,350万Bu、17億4,600万Bu)

・8月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億Bu(25億Bu)大豆 20億5,500万Bu(20億7,500万Bu)小麦 8億7,500Bu(8億7,500万Bu)

・8月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 12億4,200万Bu(12億7,030万Bu、14億3,200万Bu)大豆 1億5,500万Bu(1億5,696万Bu、1億5,500万Bu)小麦 6億2,700万Bu(6億3,800万Bu、6億6,500万Bu)

・6月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 41億1,200万Bu(77億1004万Bu)大豆 7億6,700万Bu(15億6,400万Bu)小麦 8億4,400万Bu(13億1,400万Bu)

・8月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,982万ha(1,977万ha、1,983万ha)大豆 3,853万ha(3,870万ha、3,851万ha)

・8月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 8,665万トン(8,672万トン、9,338万トン) 単収 4,371kg/ha(4,388Kg/ha、4,709kg/ha)大豆 1億3,598万トン(1億3,666万トン、1億3,591万トン) 単収 3,529kg/ha(3,534Kg/ha、3,529kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが400,723枚(前週比 ▲18,814枚)、ショートが96,551枚(+7,981枚)ネットロングは304,172枚(▲26,795枚)

大豆はロングが158,981枚(▲16,270枚)、ショートが77,846枚(+4,242枚)ネットロングは81,135枚(▲20,512枚)

小麦はロングが112,124枚(▲20,957枚)、ショートが89,319枚(▲8,714枚)ネットロングは22,805枚(▲12,243枚)

◆本日のMRA's Eye


「銅価格年後半の調整見通しもあと4ヵ月」

銅価格は「脱炭素の必須金属」と位置づけられ堅調に推移してきたが、5月頃をピークに調整が続いていた。

価格動向を考える上では需要面・供給面の両面を考慮する必要があるが、恐らく今回の下落はまず需要面が意識され、次いで供給、これらを材料とした投機の手仕舞いが価格を下押ししたと考えられる。

銅の最大消費国である中国の需要を顕在需要(国内精錬銅生産+輸入-輸出±取引所銅在庫変化)の前年比変化で見てみると、米中対立の激化を受けて2018年~2019年に掛けて前年比マイナスとなり、その後、コロナの感染拡大を受けて固定資産投資を主体とする経済対策が行われたことで急速に回復した。

しかし足下は、昨年の反動もあって足下は前年比マイナスとなっている。

背景には、1.昨年から懸念を公にしている不動産セクターバブルの抑制、2.素材価格の上昇によるレーショニングリスクの顕在化、3.経済対策の一巡による水準の変化、4.共産党結党100周年イベントが終了し、無理に景気を過熱させる必要がなくなった、といったところが上げられるのではないか。

なお、世界の銅需要動向を示す現物プレミアムは欧米で上昇している。一方シンガポール・上海はようやく底入れしたが、絶対水準は他地域と比較して低い。

しかし、規模的にシンガポール・上海の影響が大きいため、まだ需要は低迷していると考えられる。実際、直近発表された中国の工業セクター利益は銅価格への説明力が高いが、6月が前年比+20.0%(前月+36.4%)と減速が鮮明になっている。

供給面もコロナの感染拡大に伴う稼働停止やチリのEscondidaなどの主要鉱山でのストライキ実施などの供給減少リスクは多いものの、鉱石供給は回復しているとみられ鉱石需給も緩和、TCは上昇基調にある。

需給の最終的な仕上がり指標である取引所在庫水準は増加を続けており、LME指定倉庫在庫はこの1年で最高水準に。

銅3ヵ月先渡し価格と銅キャッシュ価格のタイムスプレッドは、在庫増加に歩調を合わせ緩和方向に(3ヵ月先渡し価格>キャッシュ価格)シフトしている。

今後、中国が不動産バブルを抑制の方針であることや米国のテーパリングは実施される可能性が高いこと、鉱山生産の回復などで比較的短い中期的な銅価格の見通しは弱気ではある。

しかし、中国政府によるデフォルトリスク回避目的の金融緩和が既に実施されている他、そもそも季節的に年後半に掛けて中国の電線投資が増加すること、2022年は米国や中国で電力網整備を伴うインフラ投資が行われること、インドも(支持率集めの色彩は否めないが)1.4兆ドルに及ぶインフラ投資を実施の見込みであること、意見は分かれるが世界的に脱炭素の動きはまだ継続する見込みであり、電化向けの需要は堅調と見られることから、2021年後半以降の見通しは強気である。しかし、もうすでにQ421は目前であり、調整の期間は限られるかもしれない。

◆主要ニュース


・7月独製造業受注 前月比+3.4%(前月改定+4.6%)前年比+24.4%(+26.5%)

・9月ユーロ圏センティックス投資家信頼感 19.6(前月22.2)

・8月独建設業PMI 44.6(前月47.1)

・1-8月 中国新エネルギー車販売は170万台(前年60万台)、自動車販売に占めるシェアは約10%。

・ロシア、北方領土に外国企業からの関税免除区域導入方針を決定。

・アフガニスタン タリバン政権、北部同盟の最後の拠点を制圧と報道(反タリバン派はこれを否定)。

・ギニアでクーデター、軍の特殊部隊が大統領拘束。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・フーシ派、サウジアラビアに対する弾道ミサイル攻撃を実施、犯行声明。

・メキシコ湾の原油・天然ガス生産減産状況(9月6日時点)
 有人プラットフォーム退避 17.68%の99基(先週末23.75%の133基)
 避難リグ 45.45%の5基(54.55%の6基)
 移動リグ 20%の3基(26.7%の4基)
 原油生産減少 83.87%の152万6,409バレル(93.33%の169万8,559バレル)
 ガス生産減少 80.78%の1,801.42MCFD(89.25%の1,990.19MCFD)

・欧州主要ガスプロジェクトメンテナンス予定
 Karsto 9月7-8日 12.1MCFD
 Troll 9月5-8日 26.0MCFD
 Kollsnes 9月5-10日 38.5MCFD
 Valke Kapusany 9月6-15日 25.0MCFD
 Troll 9月8-9日 76.0MCFD
 Troll 9月9-10日 26.0MCFD
 Kollsnes 9月10-15日 16.5MCFD
 Troll 9月10-17日 11.0MCFD
 Kollsnes 9月10-24日 12.5MCFD
 Sleipner 8月27ー9月16日 11.1MCFD
 Gina Krog 8月27日ー9月17日 9.8MCFD
 Mazara 8月2日ー9月17日 22.5MCFD
 Perenco Dimlington 9月3-24日 5.5MCFD

・10月サウジアラムコ調整金
 スーパーライト 3.15ドル(▲1.3ドル)
 アラビアンライト 1.70ドル(▲1.3ドル)
 ヘビー 0.40ドル(▲1.0ドル)

【メタル】

・チリ Caserones銅鉱山(2020年生産量 127,000トン)労働者が賃金提案を承諾、ストライキ終了へ。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +3.55%/ +79.11%
2.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +2.83%/ ▲6.03%
3.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +2.81%/ +137.78%
4.中国CSI300 ( 株式 )/ +1.87%/ ▲5.33%
5.SHFアルミ ( ベースメタル )/ +1.85%/ +38.44%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲7.50%/ ▲13.89%
65.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲1.97%/ +49.17%
64.LME錫 3M ( ベースメタル )/ ▲1.84%/ +61.03%
63.LMEニッケル 3M ( ベースメタル )/ ▲1.36%/ +18.32%
62.DME Oman ( エネルギー )/ ▲1.27%/ +37.03%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :休場( - )
S&P500 :休場( - )
日経平均株価 :29,659.89(+531.78)
ドル円 :109.86(+0.15)
ユーロ円 :130.40(+0.07)
米10年債 :1.32(±0.0)
中国10年債利回り :2.83(+0.00)
日本10年債利回り :0.05(+0.01)
独10年債利回り :▲0.37(▲0.01)
ビットコイン :51,934.73(+266.52)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.82(▲0.63)
エネルギー :33.67(▲1.01)
ベースメタル :25.97(▲0.47)
貴金属 :24.54(▲1.6)
穀物 :23.46(±0)
その他農畜産品 :28.48(▲0.49)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :33.60(±0)
Brent :32.78(▲1.19)
米天然ガス :50.07(±0)
米ガソリン :47.52(±0)
ICEガスオイル :32.91(▲2.07)
LME銅 :26.00(▲0.25)
LMEアルミニウム :21.56(+0.4)
金 :29.59(±0)
プラチナ :26.41(+0.03)
トウモロコシ :24.11(±0)
大豆 :29.59(±0)

【エネルギー】
WTI :69.29(▲0.70)
Brent :72.22(▲0.39)
Oman :69.97(▲0.90)
米ガソリン :215.40(▲0.95)
米灯油 :215.94(▲0.83)
ICEガスオイル :607.00(▲6.25)
米天然ガス :4.71(+0.07)
英天然ガス :134.11(+3.66)

【貴金属】
金 :1823.29(▲4.44)
銀 :24.68(▲0.03)
プラチナ :1023.72(▲3.04)
パラジウム :2414.42(▲5.83)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,412(+40:10.5C)
亜鉛 :3,019(+23:11C)
鉛 :2,273(▲18:101B)
アルミニウム :2,758(+55:12.5C)
ニッケル :19,620(+176:20B)
錫 :32,830(▲220:420B)
コバルト :50,501(▲16)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9454.00(▲16.00)
亜鉛 :3018.00(+19.00)
鉛 :2271.00(▲24.50)
アルミニウム :2767.50(+34.50)
ニッケル :19605.00(▲270.00)
錫 :32770.00(▲615.00)
バルチック海運指数 :3,944.00(▲57.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :143.89(▲2.23)
SGX鉄鉱石 :134.19(▲10.88)
NYMEX鉄鉱石 :休場( - )
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :274(▲0.33)
大連原料炭先物 :526.69(+35.68)
上海鉄筋直近限月 :5,354(+52)
上海鉄筋中心限月 :5,427(+46)
米鉄スクラップ :休場( - )

【農産物】
大豆 :休場( - )
シカゴ大豆ミール :休場( - )
シカゴ大豆油 :休場( - )
マレーシア パーム油 :4552.00(+2.00)
シカゴ とうもろこし :休場( - )
シカゴ小麦 :休場( - )
シンガポールゴム :185.40(▲0.20)
上海ゴム :12915.00(+115.00)
砂糖 :休場( - )
アラビカ :休場( - )
ロブスタ :2082.00(+23.00)
綿花 :休場( - )

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :休場( - )
シカゴ生牛 :休場( - )
シカゴ飼育牛 :休場( - )

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。