米インフラ計画への期待から総じて上昇
- MRA商品市場レポート
2021年8月11日 第2009号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「米インフラ計画への期待から総じて上昇」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場はエネルギーやその他農産品、工業金属、貴金属の中での工業金属としての色彩が強いものが物色され、債券や貴金属などのいわゆる「安全資産」が売られる流れとなった。
米上院は総額1兆ドルのインフラ投資法案を超党派の合意で可決、コロナからの回復期待が高まる中での追加景気刺激策であるため、株式市場がこれをプラスに判断し、株価が上昇したことが総じてリスク資産価格全体を押し上げることとなった。
なお、同法案では道路や橋に1,100億ドル、電力網に730億ドル、アムトラックなど鉄道に660億ドル、高速通信網に650億ドル、水道網に550億ドルを投資する計画となっている。
早晩、欧州も同様のインフラ投資(ただし脱炭素に偏る見込み)を実施する可能性が高く、今後、工業金属に関しては欧米の動向の影響が大きくなるだろう。
【本日の見通し】
本日も昨日のインフラ法案可決への期待から株式市場がこれを楽観して上昇しているため、投機的な観点と期待需要の増加でいわゆる景気循環系の商品価格は上昇すると予想する。
一方、非景気循環系商品である農産品や、安全資産である金銀、債券などは軟調な推移になるのではないか。
本日予定されている材料としては、ファイナンシャルな面で価格への影響が大きいドル指数動向の判断材料の1つである米CPIに注目している。
市場予想は前月比+0.5%(前月+0.9%)、前年比+5.3%(+5.4%)と伸びが減速する見込みであり市場への影響は限定される都見ている。
【昨日のセクター別動向と本日の見通し】
◆エネルギー
原油価格は上昇した。チャートのテクニカルポイントである200日移動平均線を巡る攻防となっていたが、米国のインフラ法案が上院で可決に向けて進んでいるとの前日からの報道を株式市場が織り込み、株高を受けて買い戻しが入った。
そもそも、ここまでの下落のきっかけが株安だったこともあり、株の戻りは原油価格の上昇に繋がる。
この上昇でBrent、WTIとも200日移動平均線のサポートライン(Brent:62.40ドル、WTI:59.30ドル)を回復、上値としては50日移動平均線(Brent:73.50ドル、WTI:71.50ドル)が意識される。
豪州石炭スワップ先物価格は上昇し、170ドルに迫る展開。猛暑・渇水の影響による夏場の需要、冬場に向けた在庫積み増しの動きが続いている。バルチック海運指数は変わらず。
「座礁資産」と呼ばれているが増産ができない、需要側の構造はそう簡単には変わらないことを考えると当面高い水準での推移が予想される。
JKM先物市場は上昇し、16ドルに迫る展開。アジア周りの夏場向けの需要増加は継続しているとみられる。仮に夏場の需要期が終っても在庫水準の低さから冬場に向けた在庫積みの動きは継続するとみられ価格は高いまま。
欧州天然ガスは上昇。メンテナンス中のノルウェー最大のTrollガス田はメンテナンスで供給が減少しているが、設備の不慮の障害でさらに供給量が減少、メンテナンスの期間も延長された。
また、ガスプロムのポーランド経由の欧州向けガス供給も減少しており、数週間は供給減少が続く見込み。
米国のガス価格は気温の再度の上昇観測と欧州向けの輸出増加観測などを背景に上昇している。
スポットLNGタンカーレートはスエズ以東が上昇、以西は横這い。ただし上記の通り欧州のパイプライン経由のガス供給が再び減少する可能性が高く、LNG価格は上昇圧力が掛るとみる。
2021年7月26日~8月1日のLNG取引は前週比+23%の760万トン(前週▲4%の630万トンで、うち、28%がスポット調達であり先週の27%とシェアはほとんど変わらなかった。
LNG取引量の増加は中国・日本・韓国の輸入増加に因るものであるが、これは台風などの天候要因で陸揚げが前週からずれ込んだことによるもの。欧州のLNGの価格輸入は前週比+18%の大幅な増加となった。域内のガス供給減少が影響したとみられる。
本日の原油価格は高値でのもみ合いになると考える。株の戻りとテーパリング、コロナの感染拡大といった強弱材料が混在するため。ただしインフラ法案を背景に株が上昇しているためどちらかと言えば強気か。
本日発表の米石油統計は原油在庫が前週比+227KB(前週+3,627KB)の増加が見込まれているが、朝方発表のAPI石油統計では▲8.2MBの減少となっており、予想外に価格が上昇する可能性。
石炭・LNGは原油に比べて投機の影響を受け難く、需給ファンダメンタルズが重用になるが、気温上昇と欧州のガス供給制限が継続していることから高値維持を予想。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は上昇した。米インフラ法案が上院で可決するとの見通しを背景に株が戻っていたが、可決後、非鉄金属需要が増加するとの見方が強まったため。
米上院はインフラ投資法案を可決したが、730億ドルを電線網整備に投じるとのこと。電線製造の費用に占める非鉄金属のシェアが6割程度なので仮にこの数値を用いると、銅換算で460万トン/5年、年間世界消費の3.7%程度に相当する。
実際にはその他の費用がかかるためこれよりも使用量は少ないと考えられるものの、今後、類似の投資が欧州でも行われ、インドなどの新興国も近代化に向けた電線投資を行うことを考えるとやはり銅価格は中期的には強気となる。
本日も株の戻りやインフラ投資期待などで買い戻しが入り、堅調な推移になると予想されるが、米経済統計改善と欧州統計減速を受けたドル高、米テーパリング観測から上昇余地も限定か。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅に続落、大連先物はほぼ変わらず、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は上昇した。
洪水の影響による建設向け需要の減少観測が鉄鋼製品価格を押し下げていたが、これを受けて先物には割安感からの買いが入った。
本日も中国の経済活動鈍化と鉄鋼生産抑制を受けて鉄鋼製品価格が軟調な推移になり、鉄鋼原料価格も下落するとみる。
逆に鉄鉱石価格に鉄鋼製品価格が収れんするならば、棒鋼先物などの価格は▲10%程度、下落する可能性があることに。
◆貴金属
昨日の貴金属セクターはまちまち。米インフラ投資法案を背景に株が戻る中で実質金利が上昇したことが金銀価格を下押しした。ただし実質金利の変動による基準価格の変動は抑制されており、高値維持、という印象。
PGMは米インフラ投資法案を背景に株価が上昇したことで買い戻しが入り、大幅に上昇。
本日も米インフラ投資への期待から株価上昇・長期金利上昇・ドル高が進行すると予想されることから、金銀価格は下押し圧力が強まる展開。
PGMは株価上昇もあって上昇を想定するが、金銀価格の下落もあるため、特に投機的な観点で物色されているプラチナの上昇余地は限定か。
◆穀物
シカゴ穀物市場はまちまちとなった。トウモロコシは作柄の「若干の改善」とドル高が重石に、大豆は中国向けの新穀大豆13万2,000トン、仕向地不明の輸出13万トンが確認されたことや、CONABの生産見通し下方修正が材料となった。
米週間輸出統計は小麦がやや強気な内容だったもののトウモロコシ・大豆は弱く、為替市場でもドル高が進んだため総じて下落要因となったが、今週発表の米需給報告を控えてポジション調整的な取引が発生したものと考える。
小麦はフランス・ロシアの小麦供給への懸念が材料となった。
昨日発表のCONAB需給見通しはいずれも市場予想を下回った。
・8月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,982万ha(1,977万ha、1,983万ha)大豆 3,853万ha(3,870万ha、3,851万ha)
・8月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 8,665万トン(8,672万トン、9,338万トン) 単収 4,371kg/ha(4,388Kg/ha、4,709kg/ha)大豆 1億3,598万トン(1億3,666万トン、1億3,591万トン) 単収 3,529kg/ha(3,534Kg/ha、3,529kg/ha)
8月米需給報告の市場予想は以下の通り。
・単収見通し(市場予想/前月)トウモロコシ 177.39Bu/エーカー(179.5)大豆 50.28Bu/エーカー(50.8)小麦 45.8Bu/エーカー(NA)
・生産見通しトウモロコシ 149億7,144万Bu(151億6,500万Bu)大豆 43億6,248万Bu(44億500万Bu)小麦 17億2,350万Bu(17億4,600万Bu)
・在庫見通しトウモロコシ 12億7,030万Bu(14億3,200万Bu)大豆 15億6,960万Bu(1億5,000万Bu)小麦 6億3,800万Bu(6億6,500万Bu)
本日も米テーパリング観測と、株高を背景としたドル高進行で価格は下落するとみるが、米需給報告を控えて基本は様子見であり、昨日上昇した穀物は下落、下落した穀物は上昇すると見る。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【昨日のトピックス】
昨日発表された7月のOECD景気先行指数は、どの地域も軒並み改善見通しが示された。OECD景気先行指標は6ヵ月後の景気に連動しそうな指標を集めて指数化したものであり、今月は7月統計であるため来年1月頃の景況感を示すことになる。
結果、OECDDは100.8(前月100.7)と前月から改善、ユーロ圏も100.8(100.6)、アジアが100.9(100.8)、日本が100.9(100.9)、米国が100.5(100.5)、中国が102.4(102.2)となった。
主要国・地域で景況感の分かれ目である100を下回ったのはフランスとインドであり、コロナの変異種の影響が無視できないものと考えられる。
日本では景気ウォッチャー調査が発表された。景気ウォッチャー調査とは、日本を12の主要地域に分けて百貨店、スーパー、コンビニなど、景気に敏感な業種2,000人にヒアリングを行い、足下の景況感を調査・集計した指標で日本の景気に対する先行性が高い指標である。
結果は、現状指数が48.4(前月47.6)と大幅に改善しておりワクチン接種の進捗や、緊急事態宣言が出されていた地域が東京と沖縄に限られていたことなどが影響したと見られる。
しかし、先行きに関しては48.4(前月52.4)と大幅に減速している。低下の背景はコロナの感染再拡大によって小売・飲食・サービス業がいずれも大きく低下したことに因るものであり、オリンピック・パラリンピックの盛り上がりはあるものの、実態経済への影響は限定され、さらに悪化する可能性があることを示唆している。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。
・米テーパリング実施が、コロナの感染に苦慮する中南米、欧州・アフリカの新興国経済に悪影響を及ぼす場合(景気減速要因)。
・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。
この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。
・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など。既に中国製のワクチンは新興国で接種されているが、殆ど効果が出ていない)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、東南アジア、日本などで顕在化。
逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。
・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油価格見通し】
原油価格はOPECの増産、米テーパリング開始観測を背景に軟調な推移になると予想する。
また、正常化が前提であるものの、ここに来てコロナの変異株の感染が拡大、ワクチン接種が世界で最も進んでいるイスラエルでもワクチンの有効性が低下していることは、需要の下押し要因に。
ただ、ジャクソンホールシンポジウムあたりからの下落を想定していたが、7月FOMCのコメントでは、今後数回の会合でテーパリングのスケジュールを決定すると見られるため、直ちにファイナンシャルな面で価格が下がりにくい環境になってきたと考える。
年末、Brentは60ドル台半ば、WTIは60ドル台前半への調整をメインシナリオとしている。
【見通しの固有リスク】
・ワクチン接種が進捗せず、同時に変異株が猛威を振るいワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。
・米国経済が正常化する中でテーパリングなどの金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。
・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。
価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。
米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解、中東の緊張が緩和するシナリオも排除せず(下落要因)。
・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合
1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合
2.中東以外の産油国の生産者の破綻
3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合
4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)
などが価格上昇要因に。
・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。
かなり過剰なペースで脱炭素が進められており、裁判所を使ってまでシェルに脱炭素推進を促し、ヘッジファンドが株主としてエクソンに対して脱炭素を促し、自身のポートフォリオの価値を上げる目的で取締役を送り込むといったことも常態化しはじめており、「比較的タイムリーな増産」が可能だった米国の生産が増えない可能性は極めて高い。
この場合、「脱炭素移行期間には十分な燃料供給が出来ないリスク」が高まり、来年以降の価格上昇局面で原油価格が100ドルを超えるリスク(ただしまだリスクシナリオの位置づけ)。
なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。
【石炭価格見通し】
海上輸送石炭価格は高値圏を維持すると予想される。最大消費国である中国の電力需要が拡大していること、北半球の気温上昇、渇水による水力発電能力の低下で火力発電向けの燃料需要が増加、夏場の猛暑で冬場に向けた在庫積み増しが十分にできないとみられること、脱炭素の強制的な進捗による供給制限が需給をタイト化させるため。
中国政府は脱炭素といいつつ、石炭の国内生産を増加させているが足下の需給タイト化を直ちに解消することは難しいだろう。
また、欧州排出枠価格が供給減少により、2021年の需給がタイトとみられることも投機的な観点で価格を押し上げると考える(取引量は少ないが、ETFなども存在)。
中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。夏場の調達に目処が立てば調整すると見られるが、足下、中国の6大電力会社の石炭在庫水準は過去5年レンジの最低水準と低く価格を下支え。
7月の石炭輸入は前年比+15.6%の3,017万8,000トン(前月+12.3%の2,839万2,000トン)と回復した。猛暑・渇水による発電燃料としての石炭需要増加と、中国の経済活動回復に伴う電力需要の増加が続いているためと考えられる。
中国6大電力会社の石炭在庫の水準は低く、まだ、季節的な石炭輸入需要の増加は続くと考える。石炭価格の下落は夏場の在庫調達が一巡する必要があるため、この夏の間は高止まりする可能性が高い。
【見通しの固有リスク】
・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念(価格の上昇要因。これは既に顕在化しつつある)。
・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。
・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。
・エルニーニョ現象発生が予想される夏場に、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)
【天然ガス・LNG】
天然ガス価格は中国の経済活動が活発である一方、猛暑や水不足による水力発電からの電力供給低下で、火力発電向けの燃料需要が旺盛なこと、同時に海上輸送石炭価格も高い水準で推移していること、欧州のメンテナンスや悪天候、ロシアからの供給減少で欧州の域内需給がタイト化していること、などを背景にスポット玉の調達圧力が強まることから、高値を維持する見込み。
6月の中国のLNG輸入は前年比+15.9%の672万トン(前月+34.4%の703万トン)と過去5年レンジを大きく上回り、構造的な需要増加が続いている。
なお、7月の中国の天然ガス輸入は前年比+27.0%の934万トン(前月+26.2%の1,021万トン)と減少したが、季節的に見ると過去5年レンジを大きく上回った状態が続いている。
長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。
【見通しの固有リスク】
・石炭と同様、「化石燃料であること」を理由に上流部門投資が制限される、あるいは原油生産減少による随伴ガス供給が減少する場合(構造的な価格上昇要因)。
・米国がノルドストリーム2の建設を容認した場合、欧州ガス需給の緩和(ロシア増産で下落要因)。
・ウクライナやベラルーシといったロシアと欧州の緩衝帯との政治的な軋轢によって、結果的にロシア産ガスの供給がロシア側の都合でコントロールされた場合(実際にロシアが行動を起こした場合、多くのケースで価格の上昇要因)。
・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。
・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。
・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが583,470枚(前週比 ▲17,941枚)ショートが152,943枚(+1,296枚)ネットロングは430,527枚(▲19,237枚)
Brentはロングが384,480枚(前週比▲6,795枚)ショートが74,815枚(▲4,801枚)ネットロングは309,665枚(▲1,994枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は、米上院でインフラ投資法案が可決したことで公的需要の増加が期待されることから、一旦買い戻されると考える。ただし実際に現物需要となるのは来年以降であり、現時点では期待先行による上昇となる。
同時にコロナの影響や渇水に伴うエネルギー不足で供給面の問題も噴出していること、企業のデフォルトが増えたことで中国人民銀行が金融緩和(預金準備率の引き下げ)を実施していることも価格を下支えすると考える。
ただし、最大消費国である中国の需要の伸びがやや鈍化しているとみられること、中国政府による企業の締め付けがマインドを悪化させていること、中国の減速が欧州景気にも影響するとみられることから中期的には下押しされるとの見方に変わりはない。
7月の中国製造業PMIは50.4(前月50.9)と市場予想の50.8、前月共に下回った。まだ閾値の50は上回っているが中国の経済活動の過剰な回復は沈静化の方向に向かっていると考えられる。
内訳を見ると生産が鈍化(51.9→51.0)、新規受注(51.5→50.9)、輸出新規受注(48.1→47.7)、受注残(46.6→46.1)と需要が全て鈍化している。
その一方でまだ在庫水準は低いが、完成品在庫は46.7→47.6と増加に転じている。
工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.069(前月1.093)、原材料が1.067(1.073)と両指数とも小幅に低下しており国内の需給が緩和していることをうかがわせる。
これまで非鉄金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、7月の中国の建設業PMIは57.5(60.1)と高い水準ではあるが前月から減速しており、鉄鋼製品価格の上昇や中国政府による住宅バブル抑制方針が影響しているとみられる。
7月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比▲44.3%の42万4,280トン(前月▲34.7%の42万8,000トン)と過去5年平均を下回り、減速感が鮮明となっている。
7月の銅精鉱の輸入+5.4%の188万7,000トン(前月+5.1%の167万1,000トン)と高い水準を維持してはいるが、過去5年の最高水準は下回っている。中国政府によるバブル抑制方針を背景に輸入が減少しているとみられるが、足下、企業支援目的の預金準備率の引き下げが実施されており、再び住宅セクターの回復で輸入は増加するのではないだろうか。
6月の銅スクラップの輸入は+118.8%の15万448トン(前月+103.1%の16万7,767トン)。
中期的には米国や欧州の財政出動、脱炭素の動きを受けた動向に左右されることになる。
米バイデン政権は上院の超党派で、8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画で合意した、と発表した。今回の合意では、道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。
さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。
これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。
これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。
この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。
こうした政策期待や、インドなどの新興諸国の需要増加を受けた構造的な需要増加を受けて、中・長期的に価格は下支えされ、堅調な推移になると考える。
米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。
具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。
2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。
【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】
・猛暑や渇水による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。
・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。
・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。
・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。
・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。
チリで議論されている銅のロイヤルティ増税案の詳細は以下の通り。
年内実施予定の選挙結果では課税強化で生産コスト上昇、または減産となる可能性も。
3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。
2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%
年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。
2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。
【投機筋のポジション動向】
・LME投機筋買い越し金額 前週比+1.2%の320億ドル(前週 316億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+4.5%の6,794.2千トン(前週 6,503.1千トン)
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は中国政府の温室効果ガス排出量削減目的の鉄鋼製品生産減少を受けて、鉄鋼向け需要が減少すること、鉄鋼原料価格を牽引してきた中国の経済活動が中国政府の住宅セクターの加熱沈静化策の執行で鈍化を始めており、徐々に水準を切下げる展開が予想される。
ただし、同時に中国政府は金融緩和を行っていること、米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に下落したとしても下値余地は限定されるのではないか。
中国共産党は2021年から始まった新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。今のところ昨年の生産量を超えないようにする、というのが中国政府の目標。
最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられている。
これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。
粗鋼生産が減少すれば、鉄鉱石の在庫水準の指標である在庫日数も、分母が小さくなるため上昇が予想され、鉄鉱石価格の下落要因となる。これは原料炭も同様。
7月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は43.1(前月45.1)と悪化した。生産指数が低下(50.7→43.1)したが、新規受注が国内向けがやや回復(34.8→36.8)したが、輸出向け新規受注(42.3→30.8)は大幅に悪化した。
中国の国内需給がタイトであることから、リベート撤廃などによる輸出抑制、鉄鋼原料輸入励行(関税引き下げ)、温室効果ガス排出削減の観点からの生産抑制など、非常にまだらな内容であるが、総じて鉄鋼セクターの景況感が悪化していることを確認するもの。
需要は不需要期、悪天候の影響で低迷しているが、粗鋼生産減少(意図的・不慮の両要因)が鉄鋼製品需給をタイト化させている。
需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが1.16(前月0.74)と大幅に上昇、新規受注原材料レシオも1.03(0.93)と上昇しており、統計数値は低いが中国の鉄鋼製品需給バランスがタイトな状況が続いていることを示唆している。
鉄鋼原料価格の上昇を牽引してきた住宅セクターに関しては、7月の中国の建設業PMIは57.5(60.1)と高い水準ではあるが前月から減速しており、鉄鋼製品価格の上昇や中国政府による住宅バブル抑制方針が影響しているとみられる。
結果、鉄鋼製品需給がまだタイトな状態が続くことが鉄鋼原料価格を高止まりさせるが、全体の方向性は弱地合であり徐々に水準を切下げると考えるのが妥当だろう。
7月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲59.8%の104万9,000トン(前月▲33.4%の125万2,000トン)と減速し、過去5年平均を下回った。国内の鉄鋼製品需給緩和を目的とした輸出リベートの撤廃で国内需給が以前よりも緩和しているためとみられる。
6月の中国粗鋼生産は前年比+2.5%の9,388万トン(前月+7.8%の9,945万トン)と前年比での伸びが鈍化。生産調整の影響がでている。しかし、過去5年レンジは上回っており生産水準は高い。
一方、7月の鉄鋼製品の輸出は前年比+35.6%の566万9,000トン(前月+74.5%の645万8,000トン)と前月から前年比の伸びを縮小し、過去5年平均を下回る水準に減少している。やはり輸出リベートの撤廃の影響があるためと考えられる。
なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲10万6,000トンの1,584万8,000トン(過去5年平均 1,121万3,000トン)と、例年と異なり減少している。生産調整の影響が顕在化した可能性がある。
原料である鉄鉱石の7月の輸入は前年比▲21.4%の8,851万トン(前月▲12.1%の8,942万トン)と減速した。中国政府の鉄鋼ミル稼働制限の動きが輸入を鈍化させたとみられる。また中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性がある。
なお、中国の最大の輸入相手である豪州では鉱山の人繰りが付かず生産が停滞しているとの指摘もあるが、直近5月の輸出統計では明確な減速は確認されていない。
鉄鉱石港湾在庫は前週比▲20万トンの1億2,805万トン(過去5年平均1億2,714万トン)、在庫日数は25.2日(過去5年平均 29.4日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。
ただし在庫日数の低さは粗鋼生産の水準の高さに依拠するため、中国政府の鉄鋼生産抑制方針を受けて在庫日数は早晩、上昇に転じ、価格の下押し要因になると予想される。
原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。
しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。
6月の中国の原料炭輸入は前年比▲33.9%の413万4,210トン(前月▲28.7%の341万1,925トン)と減少幅を拡大している。例年よりも輸入の水準は低い。
中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲18万トンの125万トンと過去5年平均の151万6,000万トンを下回っている。
在庫日数は4.6日(▲0.7日)と、過去5年の平均である6.3日を大きく下回り再びタイト化している。しかし、中国政府の方針を受けた粗鋼生産の減少の可能性は高く、価格には下押し圧力が掛る公算。
【見通しの固有リスク】
・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合(価格下落要因)。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合(価格上昇要因)。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク(価格上昇要因)。
・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。
---≪貴金属≫---
【貴金属価格見通し】
<<金>>
金は調整圧力が強まる展開が予想される。米雇用関連統計の改善を背景にテーパリング開始観測が強まり、米長期金利に上昇圧力が掛っていることが背景。
ただし、リスク・プレミアムの低下が余りに顕著であり過去5年平均比で100ドル程度割安であることから、水準訂正の買い戻しはあると考えている。
なお、過去5年平均を基準にすると名目金利1bpに対する金価格の感応度は±3ドル弱であり、米10年金利が現在の水準から30bp上昇すれば▲100ドル弱の下落圧力となる(60bpで▲200ドル)。
現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,670ドルと前日と変わらず、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は59ドルと昨日から▲1ドル低下した。
リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で190ドル、6ヵ月で190ドル、1年で210ドル、5年で170ドルとなっている(数字は10ドル未満を四捨六入)。
なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。
※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。
<<銀>>
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、74.1倍。過去1年を基準にすると71倍、5年では80倍、2000年以降では66倍程度が妥当。
今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になると見られるが、米政府は新疆ウイグル自治区問題を背景に輸入を制限する見通しであり足下その期待は後退している。
なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。
(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%
金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%
<<PGM>>
プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。
パラジウムは経済活動正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加を受けて高値を維持すると考える。
7月の米自動車販売は年率1,475万台(市場予想1,510万台、前月1,536万台)と減速。目先は価格の下落要因となりやすい。
中国の6月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比▲12.4%の201万5,309台(前月▲3.0%の212万7,000台、4月+8.8%の225万台、3月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と前年比マイナス幅を拡大しており、明らかに販売に減速が見られる。
半導体不足が自動車生産に影響を及ぼしているとみられる。調査会社のオートフォーキャスト・ソリューションズによれば半導体不足による供給減少の累積は7月16日時点で167万8,000台となっており、2019年1-7月期の966万9,484台から▲17.4%減少している。
この回復がある、ないしは供給側の混乱(南アフリカ)による生産減少がなければ、PGM価格は低水準で推移しよう。
【見通しの固有リスク】
・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。
・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。
・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。
・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。
・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが273,143枚(前週比 ▲545枚)、ショートが76,808枚(+2,508枚)、ネットロングは196,335枚(▲3,053枚)、銀が66,192枚(▲541枚)、ショートが30,053枚(▲5,463枚)、ネットロングは36,139枚(+4,922枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが30,735枚(前週比 +216枚)ショートが21,931枚(+3,207枚)、ネットロングは8,804枚(▲2,991枚)
パラジウムが5,118枚(+199枚)、ショートが4,030枚(+286枚)ネットロングは1,088枚(▲87枚)
---≪農産品≫---
【穀物価格見通し】
シカゴ穀物価格は現在の水準でもみ合うものと考える。既にラニーニャ現象の終了を織り込んでトウモロコシ・大豆の水準は大きく低下しているが、200日移動平均線でサポートされており、北米の気象状況の悪化が供給懸念を強めるため。
春小麦は乾燥気候の影響もあって作柄が悪く、ロシアの生産見通しも下方修正されていることからさらに上昇余地を探る展開に。
ただし小麦の場合、毎年のことであるが最終的には供給のつじつまが合うことが多いため、年後半に掛けては下落に転じることになろう。
7月の中国の大豆輸入は前年比▲14.0%の867万4,000トン(前月▲3.9%の1,072万2,000トン)と前年から急速に減少し、過去5年平均を下回っている。豚向けの需要増加で輸入も増加していたが、影響が一巡した可能性がある。
Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210805forecast.jpg
【見通しの固有リスク】
・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。
・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。
・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
【米農務省需給報告データ】
・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)
・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)
・7月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(178.74、179.5)大豆 50.8Bu/エーカー(50.64、50.8)小麦 45.8Bu/エーカー(NA、50.7)
・7月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 151億6,500万Bu(151億748万Bu、149億9,000万Bu)大豆 44億500万Bu(43億9,211万Bu、44億500万Bu)小麦 17億4,600万Bu(18億4,343万Bu、18億9,800万Bu)
・7月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億Bu(24億5,000万Bu)大豆 20億7,500万Bu(20億7,500万Bu)小麦 8億7,500Bu(9億Bu)
・7月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 14億3,200万Bu(13億6,114万Bu、13億5,700万Bu)大豆 1億5,500万Bu(1億4,675万Bu、1億5,500万Bu)小麦 6億6,500万Bu(7億2,356万Bu、7億7,000万Bu)
・6月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 41億1,200万Bu(77億1004万Bu)大豆 7億6,700万Bu(15億6,400万Bu)小麦 8億4,400万Bu(13億1,400万Bu)
・8月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,982万ha(1,977万ha、1,983万ha)大豆 3,853万ha(3,870万ha、3,851万ha)
・8月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 8,665万トン(8,672万トン、9,338万トン) 単収 4,371kg/ha(4,388Kg/ha、4,709kg/ha)大豆 1億3,598万トン(1億3,666万トン、1億3,591万トン) 単収 3,529kg/ha(3,534Kg/ha、3,529kg/ha)
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが404,859枚(前週比 +11,396枚)、ショートが86,816枚(+30枚)ネットロングは318,043枚(+11,366枚)
大豆はロングが182,394枚(▲6,151枚)、ショートが66,591枚(+3,707枚)ネットロングは115,803枚(▲9,858枚)
小麦はロングが119,516枚(+13,158枚)、ショートが78,539枚(+2,369枚)ネットロングは40,977枚(+10,789枚)
◆主要ニュース
・7月日本 銀行貸出動向 銀行計 前年比+0.5%(前月+0.7%)含信金 +1.0%(+1.4%)
・6月日本経常収支
(季節調整済)1兆7,791億円の黒字(前月1兆8,665億円の黒字)
(調整前) 9,051億円の黒字(1兆9,797億円の黒字)
貿易収支 6,486億円の黒字(20億円の黒字)
輸出 7兆1,374億円(6兆1,832億円)
輸入 6兆4,889億円(6兆1,812億円)
サービス収支 ▲3,464億円の赤字(▲2,555億円の赤字)
第一次所得収支 6,805億円の黒字(2兆4,518億円の黒字)
・7月日本企業倒産 前年比▲39.67%(前月▲30.64%)
・7月日本景気ウォッチャー調査
現状判断DI 48.4(前月47.6)
先行き判断DI 48.4(52.4)
・8月ZEW独景況感調査期待指数 40.4(前月63.3)
現況指数 29.3(21.9)
ユーロ圏期待指数 42.7(61.2)
・Q221米非農業部門労働生産性速報
前期比年率+2.3%(前期確定+4.3%)
単位当たり労働コスト+1.0%(▲2.8%)
・7月OECD景気先行指数
OECD 100.8(前月100.7)
ユーロ圏 100.8(100.6)
アジア 100.9(100.8)
G7 100.7(100.6)
日本 100.9(100.8)
ドイツ 101.9(101.7)
米国 100.5(100.5)
中国 102.4(102.2)
インド 98.8(98.7)
ロシア 102.1(101.8)
・米上院、1兆ドルのインフラ投資法案、超党派の合意で可決。米議会予算局(CBO)はこの法案で財政赤字が10年間で2,560億ドル拡大する恐れを指摘。道路や橋梁に1,100億ドル、電力網に730億ドル、アムトラックなど鉄道に660億ドル、高速通信網に650億ドル、水道網に550億ドル。民主党は別途、教育・子育て、気候変動対策対応で10年間で3.5兆ドルを投資する予算決議を民主党単独で可決の計画。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・DOE月報
世界石油需要 Q121:92.7、Q221:94.9、Q321:98.0、Q421:99.7、2021:96.3
非OPEC供給(含むNGLs) Q121:62.3、Q221:64.1、Q321:65.6、Q421:66.2、2021:64.5
OPEC生産 Q121:30.4、Q221:30.8、Q321:32.5、Q421:33.6、2021:31.8
※2021年のOPEC供給見通しを下方修正、2022年は需要見通しを下方修正。需給はタイト→緩和へ。
・8月 DOE月報 2021年、2022年エネルギー価格見通し(前月)
WTI 65.93(65.85)、62.37(62.97)
Brent 68.71(68.78)、66.04(66.64)
ガソリン 2.87(2.85)、2.73(2.74)
ディーゼル 3.16(3.16)、3.07(3.09)
灯油 2.97(2.97)、3.04(3.05
天然ガス 11.36(11.24)、11.23(11.01)
電気 13.59(13.57)、13.82(13.81)
・DOE米在庫統計市場予想
原油 +227KB(前週+3,627KB)
ガソリン ▲3,391KB(▲5,291KB)
ディスティレート +112KB(+832KB)
稼働率 +0.37%(+0.20%)
・API石油統計
原油在庫▲8.2MB
クッシング▲0.4MB
ガソリン▲1.1MB
ディスティレート+0.7MB
【メタル】
・チリ Caserones銅鉱山(2020年生産量12万7,000トン)労働者、賃金交渉決裂でストライキ突入も生産は継続。
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE粗糖 ( その他農産品 )/ +6.06%/ +26.47%
2.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +4.09%/ +35.23%
3.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +3.98%/ +97.78%
4.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +2.94%/ +37.49%
5.NYM WTI ( エネルギー )/ +2.72%/ +40.75%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲4.72%/ ▲42.15%
65.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲1.93%/ +44.69%
64.TCM原油 ( エネルギー )/ ▲1.58%/ +47.72%
63.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲1.38%/ +12.98%
62.SHF 銀 ( 貴金属 )/ ▲1.10%/ ▲10.10%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :35,264.67(+162.82)
S&P500 :4,436.75(+4.40)
日経平均株価 :27,888.15(+68.11)
ドル円 :110.57(+0.28)
ユーロ円 :129.59(+0.14)
米10年債 :1.35(+0.03)
中国10年債利回り :2.87(+0.01)
日本10年債利回り :0.03(+0.01)
独10年債利回り :▲0.46(+0.00)
ビットコイン :45,642.9(+178.39)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :28.80(+0.11)
エネルギー :31.88(+0.44)
ベースメタル :18.91(+0.15)
貴金属 :22.61(+0.54)
穀物 :30.88(▲0.35)
その他農畜産品 :32.37(+0.01)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :43.42(+0.93)
Brent :40.68(+0.72)
米天然ガス :32.60(+2.39)
米ガソリン :36.66(▲0.2)
ICEガスオイル :34.54(+1.94)
LME銅 :16.82(+0.35)
LMEアルミニウム :22.00(+0.04)
金 :18.68(+0.27)
プラチナ :27.13(+1.37)
トウモロコシ :71.29(▲0.37)
大豆 :18.68(+0.27)
【エネルギー】
WTI :68.29(+1.81)
Brent :70.86(+1.82)
Oman :69.75(+1.40)
米ガソリン :226.79(+3.31)
米灯油 :208.02(+3.81)
ICEガスオイル :578.50(+16.50)
米天然ガス :4.09(+0.03)
英天然ガス :111.55(+4.27)
【貴金属】
金 :1728.93(▲1.01)
銀 :23.34(▲0.11)
プラチナ :1000.31(+18.22)
パラジウム :2647.17(+39.88)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,435(+98:25.5C)
亜鉛 :2,987(+22:8C)
鉛 :2,293(+13:26.5B)
アルミニウム :2,585(+32:6C)
ニッケル :18,738(▲36:20C)
錫 :35,138(+559:1257B)
コバルト :52,362(▲6)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9512.50(+146.50)
亜鉛 :3000.00(+47.50)
鉛 :2296.50(+31.00)
アルミニウム :2586.00(+32.00)
ニッケル :18885.00(+295.00)
錫 :35045.00(+345.00)
バルチック海運指数 :3,371.00(±0.0)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :165.35(▲1.19)
SGX鉄鉱石 :165.77(▲0.43)
NYMEX鉄鉱石 :168.59(▲4.93)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :218.5(±0.0)
大連原料炭先物 :336.19(+6.27)
上海鉄筋直近限月 :5,311(+3)
上海鉄筋中心限月 :5,426(+81)
米鉄スクラップ :652(+6.00)
【農産物】
大豆 :1447.50(+13.75)
シカゴ大豆ミール :360.30(+0.70)
シカゴ大豆油 :65.41(▲0.31)
マレーシア パーム油 :休場( - )
シカゴ とうもろこし :549.25(▲1.00)
シカゴ小麦 :727.00(+15.75)
シンガポールゴム :192.50(▲1.50)
上海ゴム :13575.00(▲40.00)
砂糖 :19.59(+1.12)
アラビカ :182.00(+2.65)
ロブスタ :1858.00(+73.00)
綿花 :92.74(+1.44)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :109.68(+0.78)
シカゴ生牛 :123.65(+0.65)
シカゴ飼育牛 :159.33(+0.03)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。