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FRBの「梯子外し」~リフレトレードの死
  • MRA外国為替レポート

2021年6月21日号

◆先週の市場総括


先週は火曜日・水曜日の両日に開催されたFOMCが市場に大きな波乱を生じた。結果は日本時間木曜日未明に公表され、政策は据え置きながら出席メンバーの金利見通しが大きく上方修正された。

従来は2023年末まで据え置きが主流だったが、2023年中に2回の利上げ予想が中央値に。議長に近い理事にも利上げを見込む向きが増加した。またパウエル議長が会見で量的緩和縮小の議論を開始することを明確に。市場は量的緩和縮小のみならず利上げの前倒しも織り込むこととなった。

米国株は、週初はFOMCへの警戒感から様子見姿勢が強いなか上値重く推移。FOMC後、週末にかけては、強力な景気刺激策を背景とする株高を見込むトレード(リフレトレード)が修正を余儀なくされ全面安となった。

NYダウは前週末比▲1,200ドル安の33,300ドル近辺。ナスダックはほぼ同水準で引け。今回のFOMCは無難に乗り切るとの思惑は打ち砕かれ、前週末に15ポイント台まで低下していたVIX指数(恐怖指数)は20ポイントに上昇して引けた。

日経平均は米国株の底固さ、米長期金利の落ち着き、国内でのワクチン接種進展から週初は上昇し29,000円をしっかり回復。しかしFOMC後は米国株の下落とともに調整色を強めた。

週末は28,964円で引けたが、その後海外市場で日経平均先物は米株安に連れて28,400円近辺まで大きく下落した。

ドル円相場は109円台半ばで始まりFOMC前に110円ちょうど近辺で推移。FOMCを受けて米10年債利回りが1.6%に迫る動きをみせるなか110円80銭近辺まで上昇した。ただ週末にかけて米国株が大幅安となりリスク回避から米国債が買われ長期金利が低下するなか110円20銭近辺で取引を終えた。

ユーロ円相場が大きく下落。週前半は133円台半ばで推移していたが、株安・リスク回避のなかドルと円が堅調となり、週末は130円台半ばに下落して引けた。ユーロドル相場は1.21台から1.18台半ばに下落して引けた。

月曜日の東京市場の日経平均は日経平均が堅調。週末の米国株高、国内でのワクチン接種進展、感染抑制による経済正常化期待が支え。

米長期金利が低位安定していることで高PERのグロース株・ハイテク株がしっかりだった。ただFOMCを前に様子見姿勢も強く売買は低調。寄付きは29,200円と高寄りした後は反落して29,050円~29,100円で推移しその後はじり高。引けにかけて上昇し、前日比+213円高の29,161円で引けた。

為替市場は小動き。ドル円相場は底固くもみ合い。109円60銭台で始まり70銭~80銭で上下、夕刻はやや押されて60銭近辺。ユーロ円相場は132円70銭で始まり80銭~90銭で上下、夕刻は132円70銭。

ユーロドル相場は1.2110で始まり1.21ちょうど近辺でもみ合い。その後欧州時間に入り米国市場にかけてドル円相場を中心に円が全面安となった。米10年債利回りが一時1.5%を回復したことでドル円相場が押し上げられた。

一貫してドル高円安が進み110円の大台に乗せてもみ合い。引けは110円10銭近辺。ユーロ円相場も同様に右肩上がりとなり133円30銭~40銭でもみ合い引けた。

ユーロドル相場は小幅にユーロ高ドル安に振れて1.2130に上昇。引けは1.2120近辺で東京時間朝方とさほど変わらぬ水準。

米国株はまちまち。NYダウは終日マイナス圏で推移。引けにかけて持ち直したものの前週末比▲85ドル安の34,393ドル。一方ナスダックは堅調で+104ドル高の14,174ドル。VIX指数は反発し0.74ポイント上昇して16.39。長期金利上昇にもかかわらず一部銘柄が上昇を支えた。

米10年債利回りは1.497%と概ね1.5%近辺。原油価格WTIは70.88ドルとやや下落したものの依然として高止まりが続く。

火曜日の東京市場では日経平均が堅調。29,300円近辺で高寄りし400円台に上昇。前日の米国株が堅調でナスダックが史上最高値を更新したことでハイテク株中心に上昇した。ドル円相場が110円台に乗せていることも支え。

上げ幅は一時+300円。後場は29,400円台を中心にもみ合い、引けは+279円高の29,441円。

為替市場はFOMCを前に小動き。ドル円相場はアジア時間、欧州、米国時間を通じて終始110円10銭を中心に小動き、もみ合い横ばい。

ユーロドル相場は1.2120で始まり欧州時間1.2150近くに上昇したが、反落して上下動。1.2110割れの後1.2120~30でもみ合い。ユーロ円相場も同様に133円70銭に上昇したが、30銭に下落、その後は133円50銭近辺でもみ合い。

米国株は主要3指数がそろって下落。この日から始まったFOMCの結果を前に様子見姿勢が強かった。

ハイテク株は前日に上昇した反動で下落。ダウは下落したが原油価格上昇でエネルギー関連株が上昇して下げ幅を縮めた。米国とEUが航空機を巡る報復関税の停止に合意し連携して貿易ルールの確立や半導体供給網の整備など対中対抗策に注力することを確認した。

ダウは前日比▲94ドル安の34,299ドル、ナスダックは▲101ドル安の14,072ドル。VIX指数は+0.63ポイント上昇して17.02。

原油価格は+1.24ドル上昇し72.12ドルと2018年10月以来の高値。米10年債利回りは1.493%と概ね横ばい。

発表された米国の生産者物価指数(5月)は前年同月比+6.6%と10年半ぶりの上昇率。小売売上高(5月)は前月比▲1.3%と3ヵ月ぶりのマイナス。鉱工業生産(5月)は前月比+0.8%と前月から伸びが加速。設備稼働率は前月74.9%から75.2%に上昇した。

水曜日の東京市場では日経平均が反落。米国株が下落したことを受けて29,300円近辺で安寄り。その後400円台に反発したが概ねじり安となり29,300円を割り込んだ。FOMCの結果を前に様子見姿勢が強く終始軟調。引けは前日比▲150円安の29,294円。

為替市場は動意薄で小動き。ドル円相場は終始110円10銭近辺で小動き、もみ合い横ばい。ユーロ円相場は133円50銭近辺で、ユーロドル相場は1.2120~30で、それぞれ小動きだった。

欧州市場に入るとやや円高に振れ、ドル円相場は109円90銭~110円ちょうど、さらに109円90銭近辺でもみ合い。ユーロ円相場は133円10銭~30銭で上下。ユーロドル相場は1.2120中心にもみ合い。

FOMCの結果待ちとなったが、結果は想定以上のタカ派な内容となり市場は大きく動いた。

金融政策は据え置きとなったものの、声明文では、ワクチン接種の進展でウィルスの蔓延リスクは減少した、とし、前回まで記されていた「コロナ禍による危機が経済の重石となっている」との文言を削除。

市場に大きなショックを与えたのはメンバーによる予測。政策金利の見通しの中心値が2023年に2回の利上げを織り込んだ。

利上げを見込むメンバーの数が前回の7人から13人に倍増。執行部の理事にも利上げを見込むメンバーが出るなど、これまでの、2023年まではゼロ金利維持、とのスタンスの変更を匂わせる結果となった。

2022年の利上げ予想も4人から7人に増加した。パウエル議長は会見で量的緩和縮小の議論を始めたと述べ、金融政策の正常化に向けて明確に舵を切ったことを表明。

これを受けて市場では2023年1月の利上げを織り込み。米10年債利回りは大きく上昇して一時1.59%、引けは1.58%。ドルは全面高。ドル円相場は110円70銭に上昇して引け。

ユーロドル相場は1.20割れへユーロ安ドル高が進んだ。ユーロ円相場はユーロ安に押されて132円80銭近辺。

米国株はFOMCで予想外にタカ派な姿勢が示され、量的緩和縮小のみならず利上げが視野に入り始めたことを嫌気。主要3指数はそろって下落。NYダウは一時▲400ドル下落し、その後は戻したが前日比▲265ドル安の34,033ドル。

ナスダックは▲33ドル安の14,039ドル。VIX指数は1.13ポイント上昇して18.15。

木曜日の東京市場では日経平均が下落。FOMCで想定外の早期緩和解除が示唆されたことから米国株が大きく下落。FOMCを無事通過するとの思惑が外れ日経平均も一時前日比▲400円超下落した。

ただ国内ワクチン接種進展による期待感が下支え、引けは▲272円安の29,018円。

為替市場では午後にかけて小動き、その後はユーロが下落した。ドル円相場は110円70銭中心、60銭~80銭で方向感なく上下動。ユーロ円相場は132円80銭近辺でもみ合い。ただ午後から夕刻にかけて下落して132円20銭近辺でもみ合いとなった。

ユーロドル相場は1.20近辺で始まり一時1.1990割れに下落した後、1.20中心にもみ合い。ただ午後から夕刻にかけて1.1950に下落した。

欧州から米国市場にかけてユーロはさらに下落。ユーロ円相場は131円ちょうど近辺に下落。その後引けにかけては戻して131円30銭近辺。ユーロドル相場も1.19割れに下落して引けは1.1910近辺。ドル円相場はユーロ円相場の大幅安に押されたかたち。

米10年債利回りが予想より悪い経済指標を受けて一時1.47%に低下したことも下押し要因となり一時110円20銭を割り込んだ。その後は長期金利低下が一服しドル円相場は110円20銭~30銭でもみ合い引け。米10年債利回りは結局1.51%で取引を終えた。

ドルインデックスは91.91ポイントに上昇し、5月下旬から続いた90ポイント近辺での底ばいから抜けて反発を明確にした。

米国株はまちまち。景気敏感株が売られ、一方、長期金利の低下からハイテク株が堅調。日中の値幅が大きく、NYダウは一時▲400ドル下落した場面もあったが、下げ幅を縮めて▲210ドル安の33,823ドル。ナスダックは+121ドル高の14,161ドル。VIX指数は▲0.40ポイント低下して17.75。

この日は商品相場が大きく下落。FOMCを受けた早期緩和解除・利上げ観測が下押し要因に。

金相場は前日比▲86.6ドル大幅下落して1774.8ドル/オンス。原油価格WTIは▲111ドル安の71.04ドル/バレル。

発表された週次の失業保険新規申請件数は412千件と前週375千件から360千件への予想に反して7週ぶりの増加。継続受給者数も3,518千件と前週からほぼ横ばい。フィラデルフィア連銀製造業景気指数(6月)は前月31.5から30.7へ低下した。

金曜日の東京市場では日経平均が小幅続落。前日の米国市場で米長期金利が落ちつくなかハイテク株高となったことを受けてグロース株がけん引して29,100円台で高寄り。

ただ米国市場と同様、景気敏感株中心に利益確定売りが広がった。国内感染者数の下げ止まりも嫌気された。寄付き後はもみ合いながらじり安となり29,000円近辺で推移し安値引け。前日比▲54円安の28,964円。

ドル円相場は110円20銭~30銭で上下動した後は20銭近辺でもみ合い、夕刻欧州時間には110円ちょうど~10銭に下落した。

ユーロ円相場が軟調。131円30銭~40銭で上下した後、130円80銭台に下落。ユーロドル相場も1.1910~20で推移した後1.1890に下落した。その後はドルが軟調となるタイミングでそれぞれ131円30銭台、1.1910~20に戻した。

その後米国市場にかけてはドル高ユーロ安。FOMCの余波は続き、量的緩和縮小のみならず利上げ前倒し観測が強まったことを背景に、株式市場ではいわゆるリフレトレードの修正が生じて景気敏感株が売られ、主要3指数は下落して全面安。

債券市場では利上げを意識してイールドカーブのスティープ化(長短金利差拡大)から早くもフラットニング(長短金利差縮小)を意識した動きが生じ、株安・リスク回避とともに長期債に買いが入って長期金利が低下した。

NYダウは前日比▲533ドルの大幅安となり33,290ドル。ナスダックは▲130ドル安の14,030ドル。VIX指数は+2.95ポイント上昇して20.70と20ポイントの大台に乗せた。

セントルイス連銀総裁は、インフレ加速なら2022年にも利上げするだろう、と述べた。ユーロドル相場は1.1850へと大きく下落。ユーロ円相場も130円60銭台に。逆にドル円相場は110円40銭台に上昇した。

その後もユーロドル相場の上下動が中心の値動き。ユーロの上値は重く、ユーロドル相場は1.1880に反発した後、1.1850に反落して引け。ユーロ円相場は130円90銭に戻した後に130円70銭で引け。

ドル円相場は株安・リスク回避・米長期金利低下で110円10銭に押された後、110円20銭近辺で週末の取引を終えた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FRB当局者発言、ECB当局者発言

先週FOMCが終了したことでFRB当局者のブラックアウト期間(発言禁止期間)が終了し、今週は発言機会が多い。

FOMCでどのような議論がなされ、地区連銀総裁や理事らがいかなる考え方に傾いているか、より詳細に知る機会となる。

量的緩和解除や利上げにどの程度前向きなスタンスに傾いているか。発言を受けて資産価格の調整がさらに進むか。

月曜日にセントルイス連銀総裁、NY連銀総裁、ダラス連銀総裁、火曜日にパウエル議長が下院特別小委員会でパンデミック緊急融資や資産購入プログラムについて証言、サンフランシスコ連銀総裁、クリーブランド連銀総裁に発言機会。

水曜日にブラウン理事、アトランタ連銀総裁、ボストン連銀総裁、木曜日にNY連銀総裁が講演、ほか金曜日にかけても発言が続く。

また月曜日にはECBラガルド総裁が欧州議会で証言、水曜日にデギンドス副総裁が講演する。欧米の金融政策スタンス格差がより意識されるか。

2.米国の経済指標

FOMCでは景気回復の不透明感後退、インフレ加速への警戒感、が明らかになった。今週の指標がそれを後押しする強い数字となるか。

月曜日 シカゴ連銀活動指数(5月)

火曜日 リッチモンド連銀製造業指数(6月、予想18、前月18)、中古住宅販売(5月、季節調整済み年率換算、予想574万戸、前月585万戸)、

水曜日 PMI景況感指数(6月、製造業、予想60.2、前月62.1、サービス業、予想64.5、前月70.4)新築住宅販売(5月、季節調整済み年率換算、予想890千戸、前月863千戸)

木曜日 耐久財受注(5月、前月比、予想+2.1%、前月▲1.3%)、週次失業保険新規申請件数、カンザスシティ連銀製造業指数(6月)

金曜日 個人所得・消費支出(5月、前月比、予想▲2.5%・+0.3%、前月▲13.1%・+0.5%)消費支出物価指数(同、コア、前年同月比、予想+3.4%、前月+3.1%)ミシガン大学消費者信頼感指数(6月・確報)

3.各国のPMI景況感指数

水曜日に各国のPMI景況感指数(6月)が発表される。ポイントは3点。経済正常化でサービス業改善がなおも続くか、国別格差が拡大・縮小どのようになるか、すでに高水準にある指標が勢いを鈍化させるか。サービス業の景況感改善はワクチン接種の進展や経済正常化の度合いを反映する。

そしてその国別・地域別の指数の格差はファンダメンタルズ格差・金融政策格差に反映し為替相場の強弱をもたらす可能性がある。

一方、指数がやや低下するようなら、株式市場がさらにネガティブに反応しリスク回避が強まる可能性があり注意を要する。

◆今週のMRA's Eye


FRBの「梯子外し」~リフレトレードの死

今回のFOMCは後に振り返れば重要な転換点だったと記憶されることになるだろう。

今回の会合で、これまで実施していた超金融緩和の解除、金融正常化に一気に舵を切った。量的緩和縮小を巡る市場の関心は、議論開始、縮小方針の表明、縮小実施、のタイミングにあった。

パウエル議長が再三にわたり緩和解除の検討は時期尚早としハト派スタンスを明確にしていたため、いずれ縮小に動くのは所与としても、慎重に、ゆっくりと動くとの期待が根強かった。

今回は、なお量的緩和縮小の議論の開始が表明されることはないとの見方が大勢で、無風のFOMCが予想されていた。

しかし議長は量的緩和縮小の議論開始を表明。さらにメンバーの予測数値が上方修正され、物価見通しは足元のインフレ率急上昇は一時的としても、その後落ち着いた段階で目標値である2%を安定的に上回るとの見方が示された。

政策金利もこれまでは2023年末まではゼロ金利解除=利上げを行わないというスタンスを明確にしていたが、メンバーの予測中央値が2023年に2回の利上げを予想。2022年に利上げ実施との見方もあった。

量的緩和縮小のみならず、一気に利上げ前倒しを示唆。極めて重要な政策スタンス変更だ。

今回の結果は、想定外、というだけでは済まない重みがある。

景気回復と経済正常化の足腰の強さを確認、デフレ懸念から急激な物価上昇圧力とインフレ目標達成、その結果、金融政策が大きなトレンド転換を迎えたことが明確になった。

大袈裟にいうなら、コロナ禍に対する勝利宣言と、それによって当然生ずる緊急対応(金融緩和)の解除宣言ということになろうか。

振り返れば、コロナ禍の前の米国経済は米中通商摩擦やグローバルな半導体サイクルの押し目から持ち直しの兆しをみせていた。

FRBは予防的利下げを終了し量的緩和の縮小を開始しバランスシートの縮小を開始。しかしその矢先に、コロナ禍による経済活動の急停止、急激な景気悪化に見舞われた。

金融システムは万全に機能していたが、実体経済からくる恐慌リスクに対し、強力な政策対応がとられた。

まずは金融政策が先行し、中央銀行は潤沢な資金供給で一段と金融システム・金融市場を支え、経済主体の金融コスト・信用コストを軽減すべく、ゼロ金利政策と大規模な量的緩和に踏み切った。

並行して政府は給付金や資金繰り支援など財政支出拡大による下支えを実施。景気てこ入れ策を打ち出した。

ただそもそもの原因である感染対策、保健政策が鍵を握る。決め手のワクチン接種拡大、感染抑制、ロックダウン解除、経済活動の正常化が確実となったところで、緊急対応が解除のタイミングを迎えたのが今の局面だ。

財政支出の目的は、後ろ向きの経済下支え策ではなく、前向きな成長戦略に転じている。

今回のFOMCにおける政策転換は、FRBとくにパウエル議長のハト派スタンスを信じていた市場にとっては衝撃が大きいはずだ。壮大な梯子外し、ともいえる。

もちろんいずれ金融緩和が解除されることは織り込んでいたはずだが、市場はどこまでFRBを信奉してついて行くつもりだったのか。想定よりかなり早いスタンス変化に、ギリギリまで当局のハト派戦略についていくつもりだった市場参加者は方針を改めざるをえない。

金融政策のトレンド転換という大きな流れでとらえれば、投資戦略全般の見直しも必要だ。

極端な表現をするなら、リフレトレードの死、か。

投資戦略は、キャピタルゲイン重視からインカムゲイン重視へシフトしていく可能性がある。大がかりな方針転換となればショックは長引く可能性がある。また、織り込み済み、や、材料出尽くし、とはならない。

今後は、資産価格調整圧力、とくに金利のない金融資産への強い逆風が強まるだろう。金、コモディティ、仮想通貨、などが該当する。これら資産は資金流出・価格下落リスクが高まる。上昇トレンドが転換することもリスクとして視野に入れる必要がある。

米長期金利には、インフレ率上昇と政策変更(量的緩和縮小と利上げ観測)による上昇圧力がかかる一方、リスク選好の後退・利回り選好による資金流入により低下圧力もかかりそうだ。

足元の長期金利低下は、リスク回避やポジション調整による一時的な動きではないか。

リフレトレードの一環としてのイールドカーブスティープニング(長短金利差拡大)を見越したポジションの調整が寄与しているようにもみえる。

また米長期金利上昇を抑制するその他の要因としては、海外対比で相対的に高い米債利回りの魅力による海外からの資金流入もありえよう。

為替相場へのインプリケーションはまず素直にドル高だろう。リスク選好の緩和、一時的な波乱・リスク回避の発生が生じるが、これは景気見通し悪化ではなく米金融緩和解除が主因。

ドルは、リスク選好の後退とドル金利上昇がともに下支え要因となり堅調を維持しよう。

円は、リスク選好の後退が円安にブレーキをかけるものの相対的な軟調は不変だろう。ユーロは、ドル高の反面で堅調に推移してきた反動で下落するリスクが大きい。

新興国通貨、とくに非資源国通貨や対外収支赤字・対外債務の大きい通貨は、ドル高・米金利上昇・リスク選好後退による逆風を強く受ける。

クロス円相場の調整・円高リスクがあり、これがドル円相場の上昇抑制要因となりうるが、ドルの相対的優位性は不変で、緩やかなドル高円安基調は維持されるだろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :110.21(±0.0)
ユーロ :130.74(▲0.48)
英ポンド :152.169(▲1.27)
豪ドル :82.439(▲0.81)
カナダドル :88.41(▲0.74)
スイスフラン :119.474(▲0.61)
ブラジルレアル :21.6571(▲0.35)
中国人民元 :17.086(▲0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.737(+0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1864(▲0.004)
英ポンド :1.381(▲0.011)
豪ドル :0.7479(▲0.007)
カナダドル :1.2465(+0.011)
スイスフラン :0.9216(+0.004)
ブラジルレアル :5.0901(+0.081)
中国人民元 :6.4531(+0.005)
韓国ウォン :1132.19(+1.87)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.44(▲0.07)
米2年債 :0.25(+0.04)
日本10年債利回り :0.06(▲0.00)
日本2年債利回り :0.06(+0.01)
独10年債利回り :▲0.20(▲0.01)
独2年債利回り :▲0.67(+0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :33,290.08(▲533.37)
NASDAQ :14,030.38(▲130.97)
S&P500 :4,166.45(▲55.41)
日経平均株価 :28,964.08(▲54.25)
ドイツ DAX :15,448.04(▲279.63)
インド センセックス :52,344.45(+21.12)
中国上海総合 :3,525.10(▲0.51)
ブラジル ボベスパ :128,405.40(+348.20)
英国FT250 :22,324.19(▲210.95)
ビットコイン :35517.31(▲2230.21)

【主要商品価格】
WTI :71.64(+0.60)
Brent :73.51(+0.43)
米ガソリン :216.83(+3.41)
米灯油 :209.32(+2.64)

金 :1764.16(▲9.34)
銀 :25.79(▲0.12)
プラチナ :1043.48(▲23.40)
パラジウム :2475.46(▲22.17)
銅 :9230.00(▲227:24C)
アルミニウム :2380.00(▲27:6C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :1396.00(+66.25)
シカゴ とうもろこし :655.25(+22.25)
シカゴ小麦 :662.75(+23.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。