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FOMCを控え動意薄い
  • MRA商品市場レポート

2021年6月15日 第1975号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「FOMCを控え動意薄い」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は長期金利の上昇を受けて貴金属セクターと、景気非循環系商品である農産品セクターが売られ、その他の商品は総じて堅調な推移となった。

FOMCを控えて様子見気分が強く、為替の変動を受けて多少のポジション調整があったとみられるが、取り立てて大きな動きはなかった。

その中で最も上昇したのがビットコイン。エルサルバドルがビットコインを法定通貨とする法案を可決したとの報道が5日前に流れたが、それを受けて物色されているとみられる。

ビットコインを初めとする仮想通貨は安全資産ではなく、「リスクオン資産」であり、市場参加者がリスクオンに傾いていることの目安とも言える。

【本日の見通し】

本日もFOMCを控えて市場参加者の様子見は続き、方向感に欠ける展開が予想される。ただ、今晩発表の米PPIが「やや」先月から鈍化する見通しであり、予想通りであればドル安が進行するため、多くのドル建て資産価格の押し上げ要因になると考える。

本日予定されている経済統計で注目は以下の通り。

米生産者物価指数 市場予想 前月比+0.5%(前月+0.6%)コア +0.5%(+0.7%)

ニューヨーク連銀製造業景気指数 22.7(24.3)

米小売売上高 ▲0.7%(±0.0%)、除く自動車 +0.4%(▲0.8%)

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は上昇後下落。イランの核合意復帰が大統領選後にずれ込むとの見方が価格を押し上げたが、米長期金利上昇を背景とするドル高進行と英国の移動制限解除先送りを受けてファイナンシャル・需要両面が価格を下押しした。

豪州石炭スワップ先物価格は小幅に下落。価格上昇ペースの早さからやや買い手控えが入ったとみられる。一方、バルチック海運指数はケープサイズの価格が急上昇しており、(鉄鉱石の可能性もあるが)再び中国の調達圧力が強まっている可能性を示唆。

JKM先物市場はほぼ変わらず、欧州天然ガスはノルウェーのメンテナンスによる供給減少と排出権価格の上昇が材料で上昇、米天然ガスは気温上昇見通しを受けて水準を切り上げた。

5月31日~6月6日の世界のLNG取引640万トンのうち、30%がスポットで取引され、先週の36%から低下した。中国の輸入が前週比▲19%の減少(主に豪州・マレーシアから)となったが、長契分の調達は堅調だった。

総じて貿易は減少傾向にあるが、LNGタンカーレートがスエズ以西で再び上昇しており(スエズ以東は横ばい)、今後、夏場に向けて再び調達が増加する可能性は有り得る。

本日は、先週の米石油統計で減速が確認された石油製品需要動向を占う上でも、景況感指標である米ニューヨーク連銀製造業景気指数と米PPIに注目しているが、FOMCの結果発表が明日であることから様子見気分強く、高値圏でのもみ合いを予想。

ただし、米PPIの伸びがやや前月比で鈍化する見通しであり、ドル安進行が価格を下支えすると予想。

石炭は夏場の猛暑観測とバルチック海運指数の上昇に見られるように中国の調達圧力の強まりが海上輸送市場需給をタイト化させるため堅調、天然ガスも欧州のメンテナンスの影響ややはり気温上昇予想で高値を維持するとみる。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は総じて堅調だったが、ベンチマークである銅価格は下落した。LME指定倉庫在庫指定倉庫在庫が比較的まとまったロットで減少したことが背景で、主に韓国の在庫が増加している。

中国周りの在庫増加は中国からの輸出増加か、輸入増加のいずれかしかあり得ないが、裁定取引は中国輸出有利の状況であり、中国の現物プレミアムの低下が続いていることを考えると、輸出増加の可能性はある。

その他の金属のLME指定倉庫在庫は減少しており価格を押し上げたが、緩やかなドル高進行が重石となった。

本日は非鉄金属固有の材料はLME指定倉庫在庫動向だけであり、為替動向に左右されやすい地合い。FOMCを控えて様子見気分強いが、米PPIは「やや」先月から鈍化する見込みであり予想通りであればドル安進行で価格を押し上げへ。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は休場、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は休場、上海鉄鋼製品先物は休場だった。

バルチック海運指数の上昇を見ると(燃料炭の可能性もあるが)、中国の鉄鉱石輸入需要がまだ旺盛であり、中国政府による金融引き締めがなければ価格は上昇を続けそうな地合。

本日は休み明けの中国勢の買いで先物は高値圏で推移すると予想。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは総じて下落、プラチナのみ前日比プラスで引けた。金はここに来て市場が再び「リスクオン」となっているため、リスクオン資産であるビットコインを初めとする仮想通貨に資金が還流したとみられる。

弊社はビットコインを安全資産と定義していないが、ここに来て低格付の国がビットコインを法定通貨とする法案が可決した。

仕組みで価値を担保するビットコインは仕組みの変更で価値がなくなる上、変動性が高いため通貨としては扱いにくい。しかし、その国の通貨の方が変動性が高く、財務の安定性もなければビットコインを選択するというのは選択肢としてなくはない。

ただ、エルサルバドルはドルを通貨として用いていたので、今回の選択に余り合理性はないように思われる。

プラチナは、南アフリカの電力公社Eskomの老朽石炭発電施設で断続的に故障が発生し、供給に懸念が広がったことが材料となった。

本日はFOMCの結果発表を明日に控えて方向感が出難い地合が続くと考える。ただし夜間に発表される米PPIは「やや」鈍化が見込まれており予想通りであればドル安となることから堅調推移を予想。

◆穀物

穀物価格は続落した。生産地の成育状況の改善が材料となっているが、これもラニーニャ現象の収束宣言以降の流れ。

引き続き固有の材料は「天候要因」であるが、ラニーニャ収束で生産環境の改善が見込まれるため基本は軟調推移を維持。本日は昨日試した移動平均線のサポートを試す展開を予想。

トウモロコシは50日移動平均線を昨日割り込んでいるが恐らくこの水準を目処にもみ合い(660セント)、大豆は100日移動平均線(1,460セント)、小麦も100日移動平均線となる660セントが目処か。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

G7が閉幕し、複数の分野で欧米と協力し、中国を牽制していく方向性が確認された。「先進国首脳会議」の名にふさわしく、今後の世界経済の方向性を決める重要な会議だったといえる。

しかし、中国が台頭し、インドも成長著しく、中東・北アフリカ諸国の経済も勃興しておりかつて世界のGDPの7割を誇ったG7の経済規模も今は4割まで低下しており、その影響力の低下は否定出来ない。

言葉を選ばずに言えば「落日にある覇権国同盟が、昔を懐かしみ元に戻そうとしている」とも言える。実際、中国の振る舞いに賛同する国の数は、米国に賛同する国の数の倍以上いるとされ、世界は「民主主義ではなく専制主義」が主体の世の中になった。

確かに先端技術は先進国の方が進んでいるが、「数の勝負」になった時に少数派がこれに勝つことは民主主義の否定である。結局、「いかに民主主義が素晴らしいか」を納得してもらい、それを受け入れてもらう努力をしなければならない。

国連は国連総会でいろいろな決め事を行うが、一国一票制度が原則となっており、国の大小に影響を受けない。

しかし、国連安全保障理事会は常任理事国5ヵ国と2年の任期を持つ非常任理事国の10ヵ国で構成され、各理事国は1票を有するが、常任理事国が拒否権を持っている。

経済社会理事会は54ヵ国で構成され、3分の1にあたる18ヵ国が3年任期で改選される。経済・社会・文化・教育・保険などの国際協力を通じて生活水準向上を目指す機関で、世界保健機関(WHO)、国連食糧農業機関(FAO)、国際通貨基金(IMF)などの専門機関を有する。

いずれも多数決で物事が進むため、「支持されている」ことが重要になる。これは自国の価値観に照らして「おかしい」と思っていても支持されていればそちらの方が強いのだ。

中国はこの仕組みを深く理解し、中国を支持する国を増やしてきた。一帯一路戦略もその一環だろう。かなり計画的にこの戦略を推し進めているため、この流れを変えることは容易ではない。

こうしたことを考えると、「G7の復権」と言うよりも「民主主義の専制政治への挑戦」と言うべきであり、G7諸国は挑戦者側という表現を使う方が適切かもしれない。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。

財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。

これまでの雇用関連統計の改善を考えると、夏のジャクソンホールのシンポジウムでのテーパリング開始宣言が妥当だが、コロナの変異株の拡大の影響や雇用のミスマッチの影響で雇用環境の改善が頭打ちとなる可能性はあり、テーパリング開始が後ろ倒し(景気回復の遅れ・金融緩和継続で商品価格は上昇)となるケースも想定される。

・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は軟調ながらも、高値でもみ合うものと考える。最大消費国である米国の経済統計は良好なものが多いこと、OPECの追加増産に慎重な姿勢、米国の脱炭素派の発言権の強まりを受けてオイルメジャーが増産に躊躇している子と、から、需給ファンダメンタルズがさらにタイト化する見通しであることが背景。

しかし、そういってもここまで価格が上昇するとOPECの増産バイアスは強まることが予想され、米国のイランに対する制裁が解除される可能性が高まっていること、コロナの変異種拡大の影響が続くインドや欧州の回復にはまだ時間がかかること、米石油統計で出荷ペースの回復に陰りが見られること、米景気の回復期待で米長期金利上昇・ドル高圧力がかかるシナリオは依然、メインシナリオであり調整圧力が上昇圧力を上回る可能性は低くない。

なお、米国のイラン核合意復帰に向けた動きが進んでおり、サウジアラビアも米国の軍事的な支援を得られなくなったことでイランとの距離を縮める動きを見せていることから、当面、原油価格には下押し圧力になると見られる。

しかし、イランで対米強硬派が次の大統領となる可能性が高く、これまでの融和ムードが「ご破算」になるシナリオも無視できない。

また、イスラエルで連立政権が誕生したが、ネタニヤフ前首相よりもタカ派と言われるベネット党首が輪番制で2年間首相を務める。この間にイランとの対立がさらに深まり、武力衝突に発展する可能性も排除出来なくなってきた。

金融面に関しては、常識的に考えれば経済活動の再開で2022年頃(早ければ今年の年末)から米国でテーパリングが始まり、過去の例を考えると長期金利の上昇などを通じてリスク資産価格には一時的に調整圧力が強まる可能性は高い。そのため、2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク。これは既に顕在化しているかもしれない)。

同時に変異株が猛威を振るい、ワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因。これは既に顕在化している可能性が高い)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングやパイプライン敷設を制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国の和解による中東の緊張緩和(下落要因)。

ただし、イランで強硬派が次の大統領となる可能性が高まっており、再び緊張感が高まる可能性も否定できず(上昇要因)。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値圏を維持すると予想される。欧州排出枠価格が供給減少により2021年の需給がタイトとみられること、中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が堅調と見られることが背景。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。夏場の調達に目処が立てば調整すると見られるが、足下、中国の6大電力会社の石炭在庫水準は過去5年レンジの最低水準と低く、高値圏維持を予想。

ただし、3月の豪雨の影響で供給が減少していた豪州の輸出増加や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、脱炭素の流れと逆行するが中国政府は海外との対立によって石炭調達に支障が出ることを回避するため、国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

5月の石炭輸入は前年比▲4.6%の2,104万トン(前月▲29.8%の2,173万トン)と減少傾向が続いた。中国の需要増加に伴う電力需要回復で進んでいた石炭輸入だが、バルチック海運指数の減速も始まっており、そろそろ目処が立ちつつあると見られる。

しかし、中国6大電力会社の石炭在庫の水準は低く、まだ、季節的な石炭輸入需要の増加は続くと考える。石炭価格の下落は夏場の在庫調達が一巡する必要があるため、7月頃までは高止まりする可能性が高い。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれること、海上輸送石炭価格の高止まり、欧州のメンテナンスによる供給減少といったテクニカル要因で域内需給がタイト化し、価格を高値に維持する見込み。

4月の中国のLNG輸入は前年比+32.0%の673万トン(前月+34.6%の564万トン)と構造的な増加が続いている。

なお、5月の天然ガス輸入は前年比+31.6%の1,032万トン(前月31.5%の1,015万トン)と構造的な増加が続いている。中国も明確に石炭からガスへのシフトを進めていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・米国がノルドストリーム2の建設を容認した場合、欧州ガス需給の緩和(ロシア増産で下落要因)。

・ウクライナやベラルーシといったロシアと欧州の緩衝帯との政治的な軋轢によって、結果的にロシア産ガスの供給がロシア側の都合でコントロールされた場合(実際にロシアが行動を起こした場合、多くのケースで価格の上昇要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが657,352枚(前週比 +18,717枚)ショートが146,853枚(▲485枚)ネットロングは510,499枚(+19,202枚)

Brentはロングが394,065枚(前週比+19,796枚)ショートが103,320枚(▲3,667枚)ネットロングは290,745枚(+23,463枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦調整する可能性が高まっていると考える。米国のテーパリングは物価水準似かかわらず恐らく実施される見込みであることから、ファイナンシャルな理由で利益確定の動きが強まる可能性があるため。

これまで、投機的な買いが「需給バランス」「脱炭素」をテーマに価格上昇を助長していたことも事実であるが、ドル高・金利高の流れが意識されれば現物を必要としない投機の手仕舞い圧力が強まることになる。

ただし、各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、7月の共産党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けるとみられる中国のみならず、米国も対中戦略の観点からインフラ投資を積極的に推進する見込みであることも価格を下支えするため、下落余地も限定されると考える。

米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(インフラ投資は0.6兆ドル程度)の追加対策を実施の計画であり、さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針を示した。

インフラや社会プログラム向けに今後10年で4兆5,000億ドルを拠出、道路や橋梁の修復に170億ドル、水道管の工事に45億ドル、ブロードバンド通信網敷設に130億ドルを充当する見込みで、工業金属需要の増加に繋がる。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

その後、再び需要の回復期待で上昇するだろうが、早ければ年末~年始に開始されるとみられるテーパリングの影響で価格は再び調整しよう。その後、価格が上昇するか否かは、1.インドなどの構造的な需要増加が見込める国の需要増加が本当にあるか、2.脱炭素が本当に進捗して金属セクターの物色が続くか、に依拠するためまだなんとも言えない。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

5月の中国製造業PMIは51.0(前月51.1)と市場予想の51.1と前月を小幅に下回った。ただし閾値の50は上回っており中国の製造業活動は拡大過程にあることには変わりはない。

内訳を見ると生産が安定(52.2→52.7)する一方で、新規受注(52.0→51.3)、輸出新規受注(50.4→48.3)、受注残(46.4→45.9)と需要面に減速が見られている。

恐らく、原材料価格の高騰や中国政府の過剰投資抑制方針が徐々にボディブローのように効いていると考えられる。人民元高進行も輸出に重石と考えられる。

工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.10(前月1.11)、原材料が1.08(1.08)と両指数ともほぼ横ばい。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引しているのは中国の住宅セクターであるが、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と再び回復。悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復した。

住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

その中で輸出向けの需要が欧米との対立と人民元高の中でどれだけ回復出来るかが、次の焦点となる。

5月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+2.3%の44万6,000トン(前月+5.1%の48万4,890トン)とやや伸びが鈍化し、過去5年レンジの上限を下回っている。

一方、5月の銅精鉱の輸入は+15.1%の194万5,000トン(▲5.4%の192万トン)と高い水準を維持、銅スクラップの輸入も+103.1%の16万7,767トン(+90.6%の17万1,996万トン)と堅調であり、まだ中国の銅需要は堅調とみられる。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・LMEのファンド筋のポジションは、銅、亜鉛、アルミ、錫でロングの解消が進んだが、同時に銅、亜鉛、アルミはショートも減少したため、全体の動きはまちまちだった。

高値圏にあることは事実で解消売り圧力が強まっていたが、調整も大きかったためショートの解消圧力も強まったと見られる。

結局、市場参加者は高値を維持すると見ている可能性が高く、しばらくはレンジワークが続くと予想される。

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲3.8%の256億ドル(前週 266億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲0.7%の5,812.6千トン(前週 5,855.9千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。

ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていること、先物取引市場での監視強化(証拠金引き上げや値幅制限、投機取引の監視など)から、徐々に水準を切り下げる展開を予想。

また、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

直近の唐山市の高炉稼働率は過去5年レンジを下回る7割程度の推移となっており、鉄鋼製品生産は抑制された状態になっている。

また、Q221には邯鄲市も生産管理措置を導入する見通しであり、鉄鋼製品供給は制限される可能性が高い。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格は高値圏を維持しており、鉄鉱石価格も高止まりしている。

5月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は46.1(前月45.4)と改善。生産が回復(47.0→51.4)した影響が大きい。しかし、新規受注(44.4→39.4)、輸出向け新規受注(51.7→43.9)と軒並み需要面が減速している。

国内の新規受注の減速は資源価格の上昇と国内バブル抑制方針に中国政府が舵を切っていること、輸出向けの減速は5月1日から鋼材輸出の増値税還付が撤廃されたことが影響したとみられる。

需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが0.91(前月1.29)と低下、新規受注原材料レシオは0.99(1.25)と大幅に低下しており、原材料・鉄鋼製品とも価格の下押し圧力が強まる展開が予想される。

しかし、鉄鋼原料価格の上昇を牽引してきた住宅セクターに関しては、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と、悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復。短期的には鉄鋼需要が底堅く推移する可能性が高いことを示唆している。

とはいえ、住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

5月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲5.8%の120万6,000トン(前月+16.2%の117万4,000トン)と伸びが減速したが、過去5年レンジの上限で推移している。

4月の中国粗鋼生産は9,785万トン(前月9,402万トン、2月8,305万トン、1月 9,024万トン、12月9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。

その一方、5月の鉄鋼製品の輸出は前年比+19.8%の527万1,000トン(前月+26.2%の797万3,000トン)と伸びが減速した。これは輸出リベートの撤廃による4月の鉄鋼製品輸出駆け込み需要が剥落したことによるものと見られる。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比+7万4,000トンの1,477万7,000トン(過去5年平均 1,098万8,000トン)と、例年、在庫減少が続く時期だが在庫は前週比で増加に転じている。

中国当局の景気過熱沈静化の動きの影響が顕在化しつつあると言える。

原料である鉄鉱石の5月の輸入は前年比+3.2%の8,980万トン(前月+3.0%の9,857万トン)と伸びは横ばい。しかし、輸入量の水準は過去5年平均程度まで急速に減速しており、中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性が出てきた。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲140万トンの1億2,625万トン(過去5年平均1億2,480万6,000トン)、在庫日数は23.0日(過去5年平均 27.6日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、在庫の積み増しは継続する見込み。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

4月の中国の原料炭輸入は前年比▲44.6%の348万トン(前月▲13.0%の491万トン)と減少している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲19万トンの140万トンと過去5年平均の176万8,000トンを上回っている。

在庫日数は前週比▲0.7日の4.9日と、過去5年の平均である7.4日を下回っており、需要を考慮すると原料炭需給はまだタイトな状態にあると言える。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏での推移を継続すると考える。長期金利の上昇圧力がやや緩和していること、市場での期待インフレ率の高まりで実質金利に低下圧力が掛っていることが材料。また、「金の競合となると(勝手に)期待された仮想通貨が下落」していることで、改めて安全資産としての金需要が戻っていることも高値圏を維持する要因となっている。

とは言え、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まると予想され、中期的な見通しは弱気。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,620ドルと▲1ドル低下。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は247ドルと前日から▲10ドル低下。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で215ドル、6ヵ月で215ドル、1年で230ドル、5年で170ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、67.3倍。過去1年を基準にすると75倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのではないか。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

金価格が米長期金利の低下で再び高値で推移していることから、投機的な観点でプラチナにも上昇圧力が掛りやすい地合い。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

5月の米自動車販売は年率1,699万台(前月1,851万台、市場予想1,725万台)と減速。目先は価格の下落要因となりやすい。

中国の4月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+8.8%の225万台(前月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と伸びが減速を始めている。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが288,781枚(前週比 ▲45枚)、ショートが79,394枚(+4,269枚)、ネットロングは209,387枚(▲4,314枚)、銀が83,378枚(▲1,022枚)、ショートが33,572枚(▲3,311枚)、ネットロングは49,806枚(+2,289枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが37,717枚(前週比 ▲1,346枚)ショートが17,553枚(+2,535枚)、ネットロングは20,164枚(▲3,881枚)

パラジウムが6,127枚(+219枚)、ショートが3,652枚(+106枚)ネットロングは2,475枚(+113枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

トウモロコシ・大豆は上昇余地を探る展開になると予想する。5月13日に米海洋気象局がラニーニャ現象収束を宣言、これを手掛かりに投機の手仕舞い売りが価格を押し下げていたが、チャート上のテクニカルなサポートラインまで売り込まれたこと、中国の輸入需要が旺盛であることに変わりがないことから、再び買戻しが入ると予想されるため。

5月の中国の大豆輸入は前年比+2.5%の961万トン(+11.0%の前月745万トン)と季節性に沿って増加しているが、過去5年レンジの上限で推移しており、輸入需要は旺盛。

但し、これまでの20年を振り返るとラニーニャが発生していない時期~エルニーニョの時期にかけては価格が弱含みやすいのでそこまで強気ではない。

更に価格が上昇するとすれば、2000年代にトウモロコシのエタノール需要増加を期待して価格が上昇したことと同じことが、大豆や大豆油に対して起きる場合だろう。

但しこの時も「食品を投機の対象にすること」「燃料に使うこと」への批判が高まり、特に投機に規制がはいることで下落に転じたため「構造的な需要増加要因として織り込まれた後」は下落に転じると考える。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210527DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.39、179.5)大豆 50.8Bu/エーカー(50.8、50.8)小麦 50.7Bu/エーカー(NA、50.0)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億861万Bu、149億9,000万Bu)大豆 44億500万Bu(44億1,096万Bu、44億500万Bu)小麦 18億9,800万Bu(18億8,990万Bu、18億7,200万Bu)

・6月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(24億5,000万Bu)大豆 20億7,500万Bu(20億7,500万Bu)小麦 9億Bu(9億Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,700万Bu(14億1,672万Bu、15億700万Bu)大豆 1億5,500万Bu(1億4,256万Bu、1億4,000万Bu)小麦 7億7,000万Bu(7億8,056万Bu、7億7,400万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)

・6月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,984万ha(1,975万ha、1,987万ha)大豆 3,815万ha(3,871万ha、3,850万ha)

・6月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 9,639万トン(9,398万トン、1億641万トン) 単収 4,858kg/ha(4,762Kg/ha、5,355kg/ha)大豆 1億3,586万トン(1億3,682万トン、1億3,541万トン) 単収 3,528kg/ha(3,538Kg/ha、3,517kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが519,602枚(前週比 ▲11,736枚)、ショートが91,174枚(+12,212枚)ネットロングは428,428枚(▲23,948枚)

大豆はロングが281,347枚(+5,090枚)、ショートが54,659枚(+2,478枚)ネットロングは226,688枚(+2,612枚)

小麦はロングが109,402枚(▲3,928枚)、ショートが90,785枚(▲3,750枚)ネットロングは18,617枚(▲178枚)

◆本日のMRA's Eye


「豚肉価格上昇は沈静化へ~他商品・他業種業績への影響も」

米国の豚赤身肉先物価格が高騰し、「ポークショック」との見出しも目にするようになった。豚赤身肉価格の上昇はその他の商品と同様、コロナウイルスの感染拡大もあるが、それ以外の要素も絡んだ複合要因で上昇している。

しかし豚肉価格の上昇は、米国内外の需要・供給両要因による物だが、恐らく年末年始に掛けて下落する展開になると予想される。

ここまでの豚肉価格の上昇は、そもそも2018年に中国から始まった。豚熱(当時は豚コレラと呼ばれていた)の感染が中国で拡大、ベトナムなどの周辺国にも感染が広がりその影響で肥育豚が殺処分されたことが切っ掛けとなった。

米農務省の資料を基にすると2019年の中国の飼育頭数は4億2,807万頭だったが、2020年は3億1,041万頭と1億頭以上が殺処分されている。通常、屠畜した豚の肉は食用に供されるが、豚熱や口蹄疫などの感染症の場合は人間への感染への懸念があるため食用とされない。これは日本で鳥インフルエンザが発生した場合に殺処分されて食用に供されないのと同じである。

話を戻すと、中国人は肉類尾中で最も豚肉を好むとされ、豚肉価格が同国の消費者物価指数を乱高下させるほど影響が大きい。もちろん豚肉が食べられなくなれば鶏肉や羊肉、牛肉などの代替需要が増加し、それらの価格も大きく上昇するのだが、やはり最も上昇が顕著だったのは豚肉で中国政府も海外から豚肉を確保せざるを得なくなった。

このとき、中国は米国との通商戦争が一巡、農畜産品の輸入量を増加させることで合意していたため、「米国に言われなくても自国の需要を満たすため」に米国からの豚肉輸入も増加させた。

それまで中国は米国からも豚肉を輸入していたが、米国の豚肉輸出は長らくメキシコが1位であり2位が日本だったが、今回の豚熱で2019年11月頃から米国の最大の豚肉輸出国となった。

供給側の米国は2020年のコロナの感染拡大で米食肉大手タイソン・フーズでクラスターが発生、ノースカロライナの工場では4人に1人が感染、工場閉鎖が相次ぎ需要に合わせた出荷が困難となったため屠畜業者による屠畜が進んだ。

米農務省の統計では2020年の米国の豚肉生産は1,284万3,000トンと、前年の1,254万3,000トンから増加している。中国での殺処分と異なり、豚熱感染による屠畜ではなく屠畜された豚の肉は製品として流通されるため、通常、豚肉価格にとって屠畜進ちょくは下押し要因となる。

また、豚熱の影響が緩和した中国で、コロナからの経済立て直しのために養豚業者への飼育頭数増加策を行った結果、豚の飼育頭数が増加、豚の飼料向け需要も増加したため世界的に飼料価格(大豆ミール)が上昇、さらに、ラニーニャ現象発生による生産見通し不安から大豆ミールの原料である大豆価格も上昇し大豆ミール価格上昇を助長、生産コストの上昇で採算が悪化した米生産者はさらに屠畜を進め、結果的に米国の飼育頭数は減少した。

しかしこの間も中国向けへの輸出が増加し、過去最高水準で推移したため米国内の豚肉在庫の水準が低下し、今年に入ってからの価格上昇に寄与した。

しかし、中国では豚熱の影響が一巡し、中国政府による養豚業者への支援もあって国内生産が回復、中国の豚肉卸売価格は急速に低下している。今後も飼育頭数は増加する見込みで、2021年の中国の飼育頭数は4億650万頭が見込まれており、中国の豚肉輸入量は前年比▲8.2%の485万トンが減少すると予想されている。

これにより米国の豚肉輸出需要は減少が見込まれ、米国内需給の緩和を通じて豚肉価格を押し下げることになるだろう。足下の価格高騰を受けて結果、米国の豚肉需給の緩和に寄与すると考えられる。

これに加えて、米国もコロナワクチンの接種進捗と、豚肉価格の高騰を受けて飼育頭数を増加させると見られる。

通常、豚は妊娠期間が約4ヵ月、生まれてから6ヵ月程度で出荷されるため養豚業者が出荷を前提に飼育頭数を増やしたとしても10ヵ月程度で市場に出荷が可能となる。意思決定の時間も含めれば1年程度だろうか。昨年11月にファイザー社のワクチン開発成功が発表され、米国は通常の活動に徐々に戻りつつあり、仮に春頃から豚の飼育頭数の増加が始まっていれば年明けには出荷可能な状態になると予想される。

この間も中国での増産は続き、輸出市場の需給には緩和圧力が強まるだろう。価格上昇局面で投機の買いが価格を押し上げた可能性があるため、米テーパリングが意識される年後半には上述の需給見通しを背景に手仕舞い売りが価格を押し下げる可能性はある。

また、豚肉生産者が採算確保のために出荷前に先行して先物に利益確定の売り(販売価格下落リスクヘッジ)を行う可能性も有り得るため、年末年始といわずもう少し早く下落する可能性は十分有り得る。

ただ、米中の生産頭数が増加するとは言っても上述の通り生産開始決定から出荷まで1年程度の時間があるため需給緩和にも時間がかかり、下落余地を限定させるだろう。

なお日本への影響だが、日本の豚肉の輸入品の流通シェア(推定出回り量シェア)は、2020年度実績が49.9%とほぼ半分が輸入品となっているため、豚肉の流通価格が上昇し小売価格にも影響が出ることも十分考えられる。

日本の食肉加工メーカーの業績への影響も懸念されるが、加工事業においてはハムやソーセージなど、販売価格を変動させることが難しい一般向けの加工食品事業においては減益要因となり得るが、食肉事業などの場合には販売先への価格転嫁が可能なケースも多いため、影響はこの状況においても限定されるとみる(消費者にとってはマイナスに)。

それよりも、豚肉需要の回復に伴う飼育頭数の回復、飼料需要の増加や脱炭素の流れを受けたバイオ燃料需要の増加が、大豆ミールやトウモロコシ価格を押し上げて、飼料価格の上昇が生産者(食肉加工メーカーも自社で家畜を育てているケースは多い)の業績に影響を与える可能性の方が高いのではないだろうか。

そしてここでぜひ意識したいのが、「豚肉→大豆ミール→大豆→大豆油→バイオ燃料→エタノール(または粗糖)→ガソリンなどの輸送燃料→物価への影響」といった連関性がある点だ。

風が吹けば桶屋が儲かるではないが、「その資源価格の変動はこの資源価格とは関係ない」と思っていたものも、今回の豚肉価格問題のように複雑に絡み合い、影響を与え合う市場になっているといえる。

このことは、全く関係が無いと思われたイベントリスクが、自社の調達コストや販売価格のリスクになり得ることを意味し、企業業績への影響が無視できなくなっていることを示唆している。

また、今回の豚肉価格上昇は中国での豚熱が切っ掛けであるが、(その後発生したコロナはもちろんだが)ラニーニャなどの異常気象の発生も価格形成に大きな影響を及ぼしている。

気象の影響を受けないはずだった商品の価格も、全てが説明可能な形でその他の商品価格の形成と有機的に結びつく時代になっているため、互いに影響しあっていることを認知することは今後の市場動向を考える上では重要なのではないか。

◆主要ニュース


・4月日本鉱工業生産改定  前月比+2.9%(速報比+0.4%、前月改定+1.7%)前年比+15.8%(+0.4%+3.4%)
 出荷+3.1%(+0.5%、+0.4%)、+16.2%(+0.5%、+3.4%)
 在庫▲0.1%(±0.0%、+0.4%)、▲9.8%(±0.0%、▲9.8%)

・4月日本設備稼働率 前月比+1.1%(前月+5.6%)前年比+23.8%(+7.3%)

・5月インド消費者物価指数 前年比+6.30%(前月+4.29%)

・4月ユーロ鉱工業生産 前月比 +0.8%(前月+0.1%) 前年比+39.3%(+11.5%)

・ウクライナ ゼレンスキー大統領、「NATO加盟を巡り、米国から明確な答えを得ていない。」

・米・トルコ首脳会談、主要な問題での合意はなかったが互いに「建設的だった」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・イラン外務省報道官、「技術的、政治的、法的、そして実質的な問題が残っており、2015年の核合意に戻るための時間はほとんど残っていない」

・イラン核合意復帰は大統領選以降に持ち越し濃厚。時間切れで。

・英国、今月21日に予定していた移動制限解除を7月19日に延期。

【メタル】

・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +7.21%/ +37.37%
2.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +3.89%/ +24.52%
3.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ +2.27%/ +11.26%
4.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ +1.97%/ +69.63%
5.ICEココア ( その他農産品 )/ +1.96%/ ▲7.95%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲7.77%/ ▲8.53%
65.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲5.95%/ +14.10%
64.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲3.69%/ +36.21%
63.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ ▲2.77%/ ▲4.54%
62.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲2.68%/ +0.85%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,393.75(▲85.85)
S&P500 :4,255.15(+7.71)
日経平均株価 :29,161.80(+213.07)
ドル円 :110.07(+0.41)
ユーロ円 :133.40(+0.62)
米10年債 :1.49(+0.04)
中国10年債利回り :休場( - )
日本10年債利回り :0.04(+0.01)
独10年債利回り :▲0.25(+0.02)
ビットコイン :39,831.57(+571.25)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.56(+0.24)
エネルギー :28.13(+0.41)
ベースメタル :26.57(▲0.05)
貴金属 :15.69(▲0.75)
穀物 :28.52(+0.88)
その他農畜産品 :28.04(+0.28)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :25.35(▲0.9)
Brent :21.68(▲0.21)
米天然ガス :34.58(+4.25)
米ガソリン :21.24(▲0.32)
ICEガスオイル :17.92(▲0.16)
LME銅 :20.81(+0.41)
LMEアルミニウム :24.58(▲0.02)
金 :21.61(+1.33)
プラチナ :19.24(+0.36)
トウモロコシ :46.34(▲1.25)
大豆 :21.61(+1.33)

【エネルギー】
WTI :70.88(▲0.03)
Brent :72.86(+0.17)
Oman :71.53(+0.05)
米ガソリン :217.12(▲1.49)
米灯油 :211.16(▲0.91)
ICEガスオイル :594.25(+4.75)
米天然ガス :3.35(+0.06)
英天然ガス :70.23(+2.63)

【貴金属】
金 :1866.18(▲11.35)
銀 :27.86(▲0.06)
プラチナ :1167.54(+16.62)
パラジウム :2755.19(▲21.90)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,935(▲125:35C)
亜鉛 :3,058(+31:15C)
鉛 :2,207(+1:21C)
アルミニウム :2,478(+1:26B)
ニッケル :18,307(▲15:31C)
錫 :31,662(+161:1520B)
コバルト :42,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9957.00(▲38.00)
亜鉛 :3056.00(+5.00)
鉛 :2205.00(▲1.00)
アルミニウム :2488.50(+26.50)
ニッケル :18470.00(+125.00)
錫 :31725.00(+100.00)
バルチック海運指数 :2,857.00(+188.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :213.02(+1.50)
SGX鉄鉱石 :215.78(+1.41)
NYMEX鉄鉱石 :214.05(+0.92)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :172(+3.33)
大連原料炭先物 :278.26(▲3.92)
上海鉄筋直近限月 :休場( - )
上海鉄筋中心限月 :休場( - )
米鉄スクラップ :675(±0.0)

【農産物】
大豆 :1472.25(▲36.25)
シカゴ大豆ミール :373.90(▲9.40)
シカゴ大豆油 :65.96(▲1.02)
マレーシア パーム油 :3559.00(▲300.00)
シカゴ とうもろこし :659.25(▲25.25)
シカゴ小麦 :674.50(▲6.25)
シンガポールゴム :223.50(+3.50)
上海ゴム :休場( - )
砂糖 :17.29(▲0.25)
アラビカ :154.10(▲3.35)
ロブスタ :1569.00(▲23.00)
綿花 :84.95(▲2.05)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :122.88(+0.20)
シカゴ生牛 :119.38(+0.68)
シカゴ飼育牛 :154.60(+3.43)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。