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米CPI上昇も長期金利低下・ドル安で総じて堅調
  • MRA商品市場レポート

2021年6月11日 第1973号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米CPI上昇も長期金利低下・ドル安で総じて堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は米需給報告を受けて穀物セクターのうち大豆・油脂関連価格が下落、LME非鉄金属が水準を切り下げたが、その他の商品はインフレ系商品を中心に上昇した。

注目されていた米消費者物価指数だが、市場予想を上回る伸びが確認されインフレ懸念が強まった。統計発表直後こそ金利は上昇したが、記録的な水準になっていた投機の国債売りポジションの解消が進み、金利が急低下したことによる実質金利の低下、それに伴うドル安進行が材料となったようだ(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)。

物価上昇は一時的なもの、という見方に弊社は賛同するが、それでも景気は回復基調にあるため長期金利に上昇圧力がかかるという一般的な見方も妥当と考える。

そのため昨日の市場の動きも一時的なものであり、テーパリングによる資産価格の調整は「あるべき調整」であり今後も発生する可能性は高いと考えている。

【本日の見通し】

本日は積極的に手がかりとなる統計の発表は予定されていないが、先ほど発表された中国のマネー関連統計で、経済活動の鈍化がまだ明確ではないことが確認されたこと、まだドル安基調であることから総じて堅調な推移になると考える。

この統計を見るに、中国の鉱物資源価格を中国政府が望むように低下させたいのならば、中国人民銀行による金融引き締めが必要になると考えられる。

・5月中国人民元建て新規融資 前年比+1.2%の15,000億元(前月▲13.4%の14,700億元)

・5月中国マネーサプライ M2 前年比+8.3%の227兆5,500億元(前月+8.1%の226兆2,100億元) M1 +6.1%の61兆6,800億元(+6.2%の60兆5,400億元) ファイナンス規模 1兆9,200億元(1兆8,507億元) 国内企業全体の総財務残高 298兆元(296兆2,000億元)

その他、G7首脳会議にも注目している。中国に対する包囲網形成や制裁、環境規制強化に関してどのように議論されるかに注目。経済・市場動向の方向性を決定づけるため重要。

また、G7に続いて行われる米露首脳会議(16日)にも注目したい。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は下落後上昇し、前日比プラスで引けた。米国がイランの元石油会社社長数名に対する制裁を解除するとの報道を受けて、イラン制裁解除観測が強まったことが売り材料となったが、米CPIが市場予想以上に改善したものの長期金利が低下、ドル安が進行したことがファイナンシャルな面で価格を押し上げた。

石炭価格(豪州炭)は大幅に続伸し、130ドルを目指す展開。中国の経済活動の回復や脱炭素に伴う石炭供給減少による需給タイト感が継続している。

一方、中国の石炭輸入動向の指標の1つであるバルチック海運指数は昨日は小幅に反発している。

中国の6大電力会社の石炭在庫水準は同じ時期の過去5年の最低水準を維持しており、港湾在庫の水準よりも6大電力会社の保有在庫の水準の方がケタが違うため、当面は電力会社の石炭調達需要を背景に、海上輸送石炭市場の需給がタイトな状態は続き、石炭価格は高値で推移しよう。

JKM先物市場は続伸して高値圏を維持。石炭および欧州・米国のガス価格上昇に連れた。

欧州天然ガスはノルウェーからの供給が再開した物の、回復ペースが緩慢であるため引き続き上昇要因に。米天然ガスは在庫統計が市場予想ほどの増加にならなかったため、上昇した。

5月31日~6月6日の世界のLNG取引640万トンのうち、30%がスポットで取引され、先週の36%から低下した。中国の輸入が前週比▲19%の減少(主に豪州・マレーシアから)となったが、長契分の調達は堅調だった。

総じて貿易は減少傾向にあるが、LNGタンカーレートがスエズ以西で再び上昇しており(スエズ以東は横ばい)、今後、夏場に向けて再び調達が増加する可能性は有り得る。

本日は米国のイラン制裁解除期待を受けた需給緩和観測で軟調推移を予想。ただし、昨日の米CPIを受けてもテクニカルな要因で米長期金利が低下しており、足下まだドル安圧力が強まっているため底堅いと見る。

石炭価格は中国の購入意欲が引き続き旺盛で高値圏維持、天然ガスは欧州の天然ガス調達圧力が再び高まっていることから上昇余地を試す展開を予想。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落した。ただし引けに掛けて米長期金利が低下したことに伴うドル安が進行したため下げ幅を削る展開となった。

本日は固有の手がかり材料に乏しいが、朝方発表された中国のマネー関連統計が前月から伸びを記録していること、昨日の米CPIを受けても長期金利が低下しドル安基調となり、それがまだ続いていることから買い戻しが入り、上昇余地を探る展開になると予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅に上昇、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は中心限月価格が上昇した。

目立った新規手がかり材料に乏しいが、鉄鋼製品先物価格の上昇に連れる形で鉄鉱石先物価格も上昇した。ただし、鉄鋼製品価格から類推される鉄鉱石価格よりも40ドル近く高い水準での取引が続いている。

本日も鉄鋼原料価格への決定力が大きい鉄鋼製品価格が堅調に推移していることから、高値圏での推移を予想。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターはパラジウムを除いて上昇した。米CPIは予想を上回る物価上昇率の加速を見たが、逆に長期金利は低下し、実質金利が低下したことが価格を押し上げる形となった。

本日手がかり材料に乏しいが、ドル安基調がまだ続いていることから現状水準で堅調にもみ合う物と考える。

◆穀物

穀物価格は高安まちまち。基本的にドル安だったため価格には上昇圧力が掛りやすい地合だったが、米需給報告ではトウモロコシは在庫見通しが引き下げられたことが買い材料となった。

大豆は需給見通しで圧搾需要が下方修正され、在庫見通しが大きく引き上げられたことが売り材料となった。小麦は在庫見通し下方修正で小幅に上昇。

本日は週末ということもあってポジション調整的な取引が主体とみるが、ドル安基調となっているため堅調推移を予想。

昨日発表された米需給報告とCONAB需給見通しは以下の通り。

・6月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.39、179.5)大豆 50.8Bu/エーカー(50.8、50.8)小麦 50.7Bu/エーカー(NA、50.0)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億861万Bu、149億9,000万Bu)大豆 44億500万Bu(44億1,096万Bu、44億500万Bu)小麦 18億9,800万Bu(18億8,990万Bu、18億7,200万Bu)

・6月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(24億5,000万Bu)大豆 20億7,500万Bu(20億7,500万Bu)小麦 9億Bu(9億Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,700万Bu(14億1,672万Bu、15億700万Bu)大豆 1億5,500万Bu(1億4,256万Bu、1億4,000万Bu)小麦 7億7,000万Bu(7億8,056万Bu、7億7,400万Bu)

・6月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,984万ha(1,975万ha、1,987万ha)大豆 3,815万ha(3,871万ha、3,850万ha)

・6月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 9,639万トン(9,398万トン、1億641万トン) 単収 4,858kg/ha(4,762Kg/ha、5,355kg/ha)大豆 1億3,586万トン(1億3,682万トン、1億3,541万トン) 単収 3,528kg/ha(3,538Kg/ha、3,517kg/ha)

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日発表された米国の消費者物価指数は、市場予想を上回る伸びとなり、米国債利回りは休場したが、その後急速に利回りが低下を始め、10年債利回りは▲6bpの大幅な低下となった。

テーパリング開始や物価の急上昇を受けた長期債利回りの上昇(債券価格は下落)に賭け、債券の売りを仕掛けていた市場参加者の買い戻しが入ったためと見られる。

債券市場になじみのない人もいると思うので念のため整理すると、需要の増加や供給制限の中で物価が上昇しており、景気そのものの回復も継続しているためテーパリングの解除観測が台頭、景気回復はそのまま長期金利の上昇(国債価格の低下)に繋がるため、国債先物市場で「売り」を入れ、金融緩和解除による金利上昇局面(債券価格は下落)で買い戻し、利益を得る、というポジションを取る。

しかし、物価上昇はFRBが言うとおり一時的であり、今すぐテーパリングが始まる訳ではないことから、6月末の四半期決算前に手仕舞いの動きが強まり、さらに想定以上に金利が低下(債券価格が上昇)したため、いわゆる「ロスカット」を巻き込んで利回りが低下したと考えられる。

結局、整理すれば「長期金利は上昇する方向に間違いはないものの、急上昇ではないのではないか」という考えが浸透し始め、FRBの意識と市場参加者のギャップが足下は埋まり始めている、ということである。

確かに、昨日の米石油統計を見ると石油製品の出荷は季節性と関係なく減速しており、ワクチン接種も頭打ちの状態であり、市場の期待ほどテーパリングが早くなくなる可能性も排除出来なくなっている。

しかしこの金融面での政策変更見送りが、金融面でいろいろなリスク資産価格を押し上げることは先々のリスク、と考えるべきである。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。

財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。

これまでの雇用関連統計の改善を考えると、夏のジャクソンホールのシンポジウムでのテーパリング開始宣言が妥当だが、コロナの変異株の拡大の影響や雇用のミスマッチの影響で雇用環境の改善が頭打ちとなる可能性はあり、テーパリング開始が後ろ倒し(景気回復の遅れ・金融緩和継続で商品価格は上昇)となるケースも想定される。

・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括

---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は軟調ながらも、高値でもみ合うものと考える。最大消費国である米国の経済統計は良好なものが多いこと、DOEやOPECなどの見通しは需給ファンダメンタルズがさらにタイト化する見通しであることが背景。

しかし、OPECの増産バイアスは強まり、米国のイランに対する制裁が解除される可能性が高まっていること、コロナの変異種拡大の影響が続くインドや欧州の回復にはまだ時間がかかること、米石油統計で出荷ペースの回復に陰りが見られること、米景気の回復期待で米長期金利上昇・ドル高圧力がかかるシナリオは依然、メインシナリオであり調整圧力が上昇圧力を上回る可能性は低くない。

なお、米国のイラン核合意復帰に向けた動きが進んでおり、サウジアラビアも米国の軍事的な支援を得られなくなったことでイランとの距離を縮める動きを見せていることから、当面、原油価格には下押し圧力になると見られる。

しかし、イランで対米強硬派が次の大統領となる可能性が高く、これまでの融和ムードが「ご破算」になるシナリオも無視できない。

また、イスラエルで連立政権が誕生したが、ネタニヤフ前首相よりもタカ派と言われるベネット党首が輪番制で2年間首相を務める。この間にイランとの対立がさらに深まり、武力衝突に発展する可能性も排除出来なくなってきた。

金融面に関しては、常識的に考えれば経済活動の再開で2022年頃(早ければ今年の年末)から米国でテーパリングが始まり、過去の例を考えると長期金利の上昇などを通じてリスク資産価格には一時的に調整圧力が強まる可能性は高い。そのため、2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク。これは既に顕在化しているかもしれない)。

同時に変異株が猛威を振るい、ワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因。これは既に顕在化しているかもしれない)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングやパイプライン敷設を制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国の和解による中東の緊張緩和(下落要因)。

ただし、イランで強硬派が次の大統領となる可能性が高まっており、再び緊張感が高まる可能性も否定できず(上昇要因)。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値圏を維持すると予想される。欧州排出枠価格が供給減少により2021年の需給がタイトとみられること、中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が堅調と見られることが背景。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。夏場の調達に目処が立てば調整すると見られるが、足下、中国の6大電力会社の石炭在庫水準は過去5年レンジの最低水準と低く、高値圏維持を予想。

ただし、豪雨の影響で供給が減少していた豪州の輸出増加や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、脱炭素の流れと逆行するが中国政府は海外との対立によって石炭調達に支障が出ることを回避するため、国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

5月の石炭輸入は前年比▲4.6%の2,104万トン(前月▲29.8%の2,173万トン)と減少傾向が続いた。中国の需要増加に伴う電力需要回復で進んでいた石炭輸入だが、バルチック海運指数の減速も始まっており、そろそろ目処が立ちつつあると見られる。

しかし、中国6大電力会社の石炭在庫の水準は低く、まだ、季節的な石炭輸入需要の増加は続くと考える。石炭価格の下落は夏場の在庫調達が一巡する必要があるため、7月頃までは高止まりする可能性が高い。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれること、海上輸送石炭価格の高止まり、ロシアが6月のウクライナ経由・欧州向けのガス供給枠を増枠しなかったことで域内需給がタイト化し、価格を高値に維持する見込み。

4月の中国のLNG輸入は前年比+32.0%の673万トン(前月+34.6%の564万トン)と構造的な増加が続いている。

なお、5月の天然ガス輸入は前年比+31.6%の1,032万トン(前月31.5%の1,015万トン)と構造的な増加が続いている。中国も明確に石炭からガスへのシフトを進めていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・米国がノルドストリーム2の建設を容認した場合、欧州ガス需給の緩和(ロシア増産で下落要因)。

・ウクライナやベラルーシといったロシアと欧州の緩衝帯との政治的な軋轢によって、結果的にロシア産ガスの供給がロシア側の都合でコントロールされた場合(実際にロシアが行動を起こした場合、多くのケースで価格の上昇要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが638,635枚(前週比 +13,067枚)ショートが147,338枚(▲2,740枚)ネットロングは491,297枚(+15,807枚)

Brentはロングが374,269枚(前週比+11,542枚)ショートが106,987枚(+2,712枚)ネットロングは267,282枚(+8,830枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦調整する可能性が高まっていると考える。米国のテーパリングは物価水準似かかわらず恐らく実施される見込みであることから、ファイナンシャルな理由で利益確定の動きが強まる可能性があるため。

これまで、投機的な買いが「需給バランス」「脱炭素」をテーマに価格上昇を助長していたことも事実であるが、ドル高・金利高の流れが意識されれば現物を必要としない投機の手仕舞い圧力が強まることになる。

ただし、各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、7月の共産党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けるとみられる中国のみならず、米国も対中戦略の観点からインフラ投資を積極的に推進する見込みであることも価格を下支えするため、下落余地も限定されると考える。

米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(インフラ投資は0.6兆ドル程度)の追加対策を実施の計画であり、さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針を示した。

インフラや社会プログラム向けに今後10年で4兆5,000億ドルを拠出、道路や橋梁の修復に170億ドル、水道管の工事に45億ドル、ブロードバンド通信網敷設に130億ドルを充当する見込みで、工業金属需要の増加に繋がる。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

その後、再び需要の回復期待で上昇するだろうが、早ければ年末~年始に開始されるとみられるテーパリングの影響で価格は再び調整しよう。その後、価格が上昇するか否かは、1.インドなどの構造的な需要増加が見込める国の需要増加が本当にあるか、2.脱炭素が本当に進捗して金属セクターの物色が続くか、に依拠するためまだなんとも言えない。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

5月の中国製造業PMIは51.0(前月51.1)と市場予想の51.1と前月を小幅に下回った。ただし閾値の50は上回っており中国の製造業活動は拡大過程にあることには変わりはない。

内訳を見ると生産が安定(52.2→52.7)する一方で、新規受注(52.0→51.3)、輸出新規受注(50.4→48.3)、受注残(46.4→45.9)と需要面に減速が見られている。

恐らく、原材料価格の高騰や中国政府の過剰投資抑制方針が徐々にボディブローのように効いていると考えられる。人民元高進行も輸出に重石と考えられる。

工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.10(前月1.11)、原材料が1.08(1.08)と両指数ともほぼ横ばい。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引しているのは中国の住宅セクターであるが、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と再び回復。悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復した。

住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

その中で輸出向けの需要が欧米との対立と人民元高の中でどれだけ回復出来るかが、次の焦点となる。

5月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+2.3%の44万6,000トン(前月+5.1%の48万4,890トン)とやや伸びが鈍化し、過去5年レンジの上限を下回っている。

一方、5月の銅精鉱の輸入は+15.1%の194万5,000トン(▲5.4%の192万トン)と高い水準を維持、銅スクラップの輸入も+103.1%の16万7,767トン(+90.6%の17万1,996万トン)と堅調であり、まだ中国の銅需要は堅調とみられる。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・LMEのファンド筋のポジションは、銅、亜鉛、アルミ、錫でロングの解消が進んだが、同時に銅、亜鉛、アルミはショートも減少したため、全体の動きはまちまちだった。

高値圏にあることは事実で解消売り圧力が強まっていたが、調整も大きかったためショートの解消圧力も強まったと見られる。

結局、市場参加者は高値を維持すると見ている可能性が高く、しばらくはレンジワークが続くと予想される。

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲3.8%の256億ドル(前週 266億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲0.7%の5,812.6千トン(前週 5,855.9千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。

ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていること、先物取引市場での監視強化(証拠金引き上げや値幅制限、投機取引の監視など)から、徐々に水準を切り下げる展開を予想。

また、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

また、Q221には邯鄲市も生産管理措置を導入する見通しであり、鉄鋼製品供給は制限される可能性が高い。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格は高値圏を維持しており、鉄鉱石価格も高止まりしている。

5月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は46.1(前月45.4)と改善。生産が回復(47.0→51.4)した影響が大きい。しかし、新規受注(44.4→39.4)、輸出向け新規受注(51.7→43.9)と軒並み需要面が減速している。

国内の新規受注の減速は資源価格の上昇と国内バブル抑制方針に中国政府が舵を切っていること、輸出向けの減速は5月1日から鋼材輸出の増値税還付が撤廃されたことが影響したとみられる。

需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが0.91(前月1.29)と低下、新規受注原材料レシオは0.99(1.25)と大幅に低下しており、原材料・鉄鋼製品とも価格の下押し圧力が強まる展開が予想される。

しかし、鉄鋼原料価格の上昇を牽引してきた住宅セクターに関しては、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と、悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復。短期的には鉄鋼需要が底堅く推移する可能性が高いことを示唆している。

とはいえ、住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

5月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲5.8%の120万6,000トン(前月+16.2%の117万4,000トン)と伸びが減速したが、過去5年レンジの上限で推移している。

4月の中国粗鋼生産は9,785万トン(前月9,402万トン、2月8,305万トン、1月 9,024万トン、12月9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。

その一方、5月の鉄鋼製品の輸出は前年比+19.8%の527万1,000トン(前月+26.2%の797万3,000トン)と伸びが減速した。これは輸出リベートの撤廃による4月の鉄鋼製品輸出駆け込み需要が剥落したことによるものと見られる。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲10万7,000トンの1,470万3,000トン(過去5年平均 1,111万9,000トン)と、例年の在庫取り崩しペースを下回っている。中国当局の景気過熱沈静化の動きの影響が顕在化しつつあると言える。

原料である鉄鉱石の5月の輸入は前年比+3.2%の8,980万トン(前月+3.0%の9,857万トン)と伸びは横ばい。しかし、輸入量の水準は過去5年平均程度まで急速に減速しており、中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性が出てきた。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲85万トンの1億2,7650万トン(過去5年平均1億2,628万6,000トン)、在庫日数は23.3日(過去5年平均 28.0日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

4月の中国の原料炭輸入は前年比▲44.6%の348万トン(前月▲13.0%の491万トン)と減少している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比+5万トンの174万トンと過去5年平均の162万2,000トンを上回っている。

在庫日数は前週比▲0.3日の5.7日と、過去5年の平均である7.1日を下回っており、需要を考慮すると原料炭需給はまだタイトな状態にあると言える。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏での推移を継続すると考える。長期金利の上昇圧力がやや緩和していること、市場での期待インフレ率の高まりで実質金利に低下圧力が掛っていることが材料。また、「金の競合となると(勝手に)期待された仮想通貨が下落」していることで、改めて安全資産としての金需要が戻っていることも高値圏を維持する要因となっている。

とは言え、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まると予想され、中期的な見通しは弱気。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,633ドルと+30ドル上昇。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は266ドルと前日から▲20ドル低下。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で215ドル、6ヵ月で215ドル、1年で230ドル、5年で170ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、67.8倍。過去1年を基準にすると75倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのではないか。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

金価格が米長期金利の低下で再び高値で推移していることから、投機的な観点でプラチナにも上昇圧力が掛りやすい地合い。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

5月の米自動車販売は年率1,699万台(前月1,851万台、市場予想1,725万台)と減速。目先は価格の下落要因となりやすい。

中国の4月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+8.8%の225万台(前月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と伸びが減速を始めている。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが288,826枚(前週比 +560枚)、ショートが75,125枚(+1,501枚)、ネットロングは213,701枚(▲941枚)、銀が84,400枚(▲1,613枚)、ショートが36,883枚(+1,352枚)、ネットロングは47,517枚(▲2,965枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが39,063枚(前週比 +875枚)ショートが15,018枚(▲183枚)、ネットロングは24,045枚(+1,058枚)

パラジウムが5,908枚(+400枚)、ショートが3,546枚(▲69枚)ネットロングは2,362枚(+469枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

トウモロコシ・大豆は上昇余地を探る展開になると予想する。ラニーニャ収束を手掛かりに投機の手仕舞い売りが価格を押し下げていたが、チャート上のテクニカルなサポートラインまで売り込まれたこと、中国の輸入需要が旺盛であることに変わりがないことから、再び買戻しが入ると予想されるため。

5月の中国の大豆輸入は前年比+2.5%の961万トン(+11.0%の前月745万トン)と季節性に沿って増加しているが、過去5年レンジの上限で推移しており、輸入需要は旺盛。

但し、これまでの20年を振り返るとラニーニャが発生していない時期~エルニーニョの時期にかけては価格が弱含みやすいのでそこまで強気ではない。

更に価格が上昇するとすれば、2000年代にトウモロコシのエタノール需要増加を期待して価格が上昇したことと同じことが、大豆や大豆油に対して起きる場合だろう。

但しこの時も「食品を投機の対象にすること」「燃料に使うこと」への批判が高まり、特に投機に規制がはいることで下落に転じたため「構造的な需要増加要因として織り込まれた後」は下落に転じると考える。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210527DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.39、179.5)大豆 50.8Bu/エーカー(50.8、50.8)小麦 50.7Bu/エーカー(NA、50.0)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億861万Bu、149億9,000万Bu)大豆 44億500万Bu(44億1,096万Bu、44億500万Bu)小麦 18億9,800万Bu(18億8,990万Bu、18億7,200万Bu)

・6月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(24億5,000万Bu)大豆 20億7,500万Bu(20億7,500万Bu)小麦 9億Bu(9億Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,700万Bu(14億1,672万Bu、15億700万Bu)大豆 1億5,500万Bu(1億4,256万Bu、1億4,000万Bu)小麦 7億7,000万Bu(7億8,056万Bu、7億7,400万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)

・6月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,984万ha(1,975万ha、1,987万ha)大豆 3,815万ha(3,871万ha、3,850万ha)

・6月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 9,639万トン(9,398万トン、1億641万トン) 単収 4,858kg/ha(4,762Kg/ha、5,355kg/ha)大豆 1億3,586万トン(1億3,682万トン、1億3,541万トン) 単収 3,528kg/ha(3,538Kg/ha、3,517kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが531,338枚(前週比 +13,193枚)、ショートが78,962枚(▲10,757枚)ネットロングは452,376枚(+23,950枚)

大豆はロングが276,257枚(+848枚)、ショートが52,181枚(▲2,173枚)ネットロングは224,076枚(+3,021枚)

小麦はロングが113,330枚(▲3,832枚)、ショートが94,535枚(▲4,216枚)ネットロングは18,795枚(+384枚)

◆主要ニュース


・5月日本国内企業物価指数 前月比+0.7%(前月+0.9%)前年比+4.9%(+3.8%)

・5月東京都心オフィス空室率 5.90%(前月5.65%)

・5月米消費者物価指数 前月比+0.6%(前月+0.8%)、前年比 +5.0%(+4.2%)
 コア 前月比+0.7%(+0.9%)、前年比+3.8%(+3.0%)

・5月米実質平均賃金 前年比▲2.2%(前月▲1.7%)
 実質平均時給▲2.8%(▲3.7%)

・米週間新規失業保険申請件数 376千件(前週385千件)
 失業保険継続受給者数 3,499千人(3,757千人)

・Q121米家計純資産変化
 +4兆9,970億ドル(前期+8兆640億ドル)

・5月米財政収支 ▲1,320億ドルの赤字(前月▲3,988億ドルの赤字)

・ECB政策金利を±0.00%に据え置き。上限政策金利も0.25%に据え置き、下限政策金利は▲0.5%に据え置き。パンデミック緊急拡大プログラム(PEPP)を1.85兆ユーロを維持。

・ECBラガルド総裁、「基調的な物価上昇圧力は依然として弱い。PEPP終了の議論はそのうち。今は時期尚早。」

・ECB経済見通し 2021年/2022年/2023年()は前回
 GDP 4.6%(4.0%)/4.7%(4.1%)/2.1%(2.1%)インフレ率 1.9%(1.5%)/1.5%(1.2%)/1.4%(1.4%)

・中国、海外から制裁を受けた場合の報復を行う「反外国制裁法」を可決。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・DOE天然ガス稼働在庫 2,411BCF(前週比+98BCF)
 東部 445BCF(+32BCF)
 中西部 547BCF(+25BCF)
 山間部 160BCF(+9BCF)
 太平洋地区276BCF(+8BCF)
 南中央 983BCF(+24BCF)

・OPEC月報
 世界石油需要 Q121:92.9、Q221:95.3、Q321:98.2、Q421:99.8、2021:96.6
 非OPEC供給(含むNGLs) Q121:62.4、Q221:63.1、Q321:64.3、Q421:65.1、2021:63.7
 Call on OPEC Q121:30.5、Q221:32.2、Q321:33.9、Q421:34.7、2021:32.8
※下期から需要回復が加速すると予想。

・米政府、イラン国営石油の元社長、アーマド・ガレバニ氏を含む数人に対する制裁を解除。

・Nord Stream 2 AG、金曜日にパイプラインのテストを開始。

【メタル】

・BHP Billiton チリ遠隔操作センターの職員200人がストライキを終了し、職場に復帰。

・CRU、「中国青山控股集団、インドネシアで2023年からアルミの生産量を50万トン/年とする計画を進めている。」

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ニューキャッスル炭 ( エネルギー )/ +1.86%/ +56.52%
2.ICEココア ( その他農産品 )/ +1.49%/ ▲8.45%
3.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +1.43%/ +24.61%
4.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ +1.20%/ +36.56%
5.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +1.19%/ +44.42%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲3.61%/ +28.53%
65.CBT大豆油 ( 穀物 )/ ▲1.58%/ +62.61%
64.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ ▲1.24%/ ▲12.15%
63.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲1.18%/ +4.27%
62.CBT大豆 ( 穀物 )/ ▲1.18%/ +17.39%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,466.24(+19.10)
S&P500 :4,239.18(+19.63)
日経平均株価 :28,958.56(+97.76)
ドル円 :109.33(▲0.30)
ユーロ円 :133.05(▲0.47)
米10年債 :1.43(▲0.06)
中国10年債利回り :3.13(▲0.01)
日本10年債利回り :0.06(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.26(▲0.01)
ビットコイン :36,494.57(+86.18)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.65(▲0.34)
エネルギー :29.11(▲0.71)
ベースメタル :29.51(▲0.22)
貴金属 :16.80(+0.03)
穀物 :29.79(▲0.04)
その他農畜産品 :28.32(▲0.45)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :29.79(▲0.17)
Brent :23.19(▲3.5)
米天然ガス :30.41(▲0.01)
米ガソリン :24.11(▲0.17)
ICEガスオイル :18.54(▲0.91)
LME銅 :20.46(▲0.02)
LMEアルミニウム :25.69(▲2.03)
金 :21.20(▲0.64)
プラチナ :19.92(+0.06)
トウモロコシ :50.40(+0.34)
大豆 :21.20(▲0.64)

【エネルギー】
WTI :70.29(+0.33)
Brent :72.33(+0.11)
Oman :71.28(+0.42)
米ガソリン :221.22(+0.97)
米灯油 :214.34(+1.39)
ICEガスオイル :584.75(±0.0)
米天然ガス :3.15(+0.02)
英天然ガス :70.28(+0.99)

【貴金属】
金 :1898.51(+9.94)
銀 :27.99(+0.22)
プラチナ :1155.47(+2.25)
パラジウム :2779.14(▲1.13)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,835(▲70:26C)
亜鉛 :2,987(▲31:21C)
鉛 :2,180(▲15:11.5C)
アルミニウム :2,448(▲1:22.5B)
ニッケル :17,818(▲299:35C)
錫 :31,150(▲90:1758B)
コバルト :42,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9894.00(▲77.00)
亜鉛 :3001.00(▲11.50)
鉛 :2185.00(▲7.50)
アルミニウム :2478.00(+26.50)
ニッケル :18200.00(+60.00)
錫 :31300.00(+30.00)
バルチック海運指数 :2,481.00(+61.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :208.87(+0.95)
SGX鉄鉱石 :212.81(+2.52)
NYMEX鉄鉱石 :211.91(+1.72)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :167(+0.17)
大連原料炭先物 :282.17(+11.95)
上海鉄筋直近限月 :4,898(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :5,130(+97)
米鉄スクラップ :630(±0.0)

【農産物】
大豆 :1544.00(▲18.50)
シカゴ大豆ミール :381.60(▲4.80)
シカゴ大豆油 :70.46(▲1.13)
マレーシア パーム油 :4050.00(▲40.00)
シカゴ とうもろこし :699.00(+8.25)
シカゴ小麦 :683.75(+1.50)
シンガポールゴム :219.20(▲2.40)
上海ゴム :12700.00(±0.0)
砂糖 :17.66(▲0.07)
アラビカ :158.70(+1.50)
ロブスタ :1585.00(+3.00)
綿花 :87.36(+0.74)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :122.45(+0.50)
シカゴ生牛 :117.58(+0.18)
シカゴ飼育牛 :148.40(+0.13)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。