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良好な雇用統計とドル安で堅調
  • MRA商品市場レポート

2021年7月5日 第1988号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「良好な雇用統計とドル安で堅調」

【昨日の市場動向総括】

週末の商品市場は総じて堅調な推移となった。注目の雇用統計は市場予想を上回る良好な内容だったが、失業率の上昇などを材料に「利上げが想定以上のペースです棲むことはない(という解釈)」との見方が強まり、長期金利が低下してドル安が進行したことが材料となった。

FRBの二大責務は物価の安定と雇用の安定であり、まだ6%内外の失業率であることを考えると早急な利上げがないとの見方に傾いたようだ(雇用統計の詳しい説明は昨日のトピックスをご参照ください)。

市場では徐々に「テーパリングはするが金融緩和の解除は相当時間がかかる」ということを再認識しつつある。

しかし、株価の上昇はテーパリングが進捗する中では企業収益がプラスになるなどのいわゆる株価におけるファンダメンタルズの改善が必要であり以前よりも上値は重く、投機的な買いが株価を押し上げ難くなっているのは事実。

その中でまだ過去最高値に達していない商品市場が投機的な観点での物色対象となる可能性は排除出来ない。ただ基本的にはテーパリングの開始観測で軟調な推移になると考える。

【本日の見通し】

週明け月曜日は米国の主要市場が休場であり、目立った経済統計の発表がないため動意薄い展開が予想される。ただ、1.米来ようと右傾が良好だったこと、2.一方で長期金利の低下とドル安が進行していること、から総じて堅調な推移になると考える。

なお、予定をかなり延長しているOPECプラス総会の結果によっては、原油価格が急落する可能性もあるためその場合には期待インフレ率の低下を通じてインフレ資産価格が下落する可能性があり、その結果は注意したいところ。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格はWTIは高値圏でもみ合い、Brentは上昇した。米雇用統計が市場予想を上回る良好な内容だったため発表直後から上昇、ドル安も進行したことが材料となった。

また、暫定合意と伝えられたOPECプラスがUAEの反対によって昨日も決着せず7月5日に持ち越しされたことも不透明感を強め、価格の上昇要因となった。

しかし、UAEはサウジとロシアが2022年末までの減産延長を主張する一方、2022年4月の減産終了を主張しており隔たりが大きい。決裂すると増産が見送られることになり、価格の上昇要因となるが、仮に「価格が上昇しているのに、約束なんて守っていられるか」という結束の揺らぎまで繋がれば、逆に暴落の可能性も有り得る。

豪州石炭スワップ先物価格は大幅に上昇して140ドル目前まで上昇。気温上昇や中国南部の渇水により十分な電力供給が出来なくなっており、発電燃料調達圧力が旺盛なため。

JKM先物市場は小幅に下落したが13ドルを維持。夏場の北半球の猛暑と渇水の影響による電力供給不足で、中国が化石燃料を求める動きによるもの。

欧州天然ガスは上昇。気温上昇やロシアからの供給減少に伴う需給タイト化観測が引き続き材料となっている。また、欧州生産者やLNGターミナルの定期修繕、ロシアヤマルパイプラインやノルドストリーム1のメンテナンスによる一時的な供給減少も価格を押し上げている。

米天然ガスは上昇。前日発表された週間天然ガス統計で在庫の増加ペースが市場予想を上回ったことで水準を切下げていたが、西部の酷暑に加え、東部のガス処理プラントのトラブルによる供給懸念が価格を押し上げた。

6月21日~6月27日の世界のLNG取引は670万トンと先週から▲80万トン減少した。そのうち26%(前週29%)がスポットで取引された。

輸入は日本・韓国・中国・台湾、南米で減少しているが先週の反動とみられる。ターミナルのメンテナンスなどの影響で西欧州の輸入が減少している。

スポットLNGタンカーレートはスエズ東が低下、西は横這いだった。一旦目先の調達に目処が立った可能性がある。スエズ以西はターミナルのメンテナンスの影響で輸入が減少していることが影響しているのではないか。

週明け月曜日は米主要市場が休場のため動意薄いが、OPECプラスの協議が難航しており高値圏でもみ合うものと予想する。仮にUAEの主張が通れば下落、通らなければ上昇、もめた上で関係が悪化すれば「増産合戦」で下落、の3つのシナリオが想定される。

石炭・LNGは中国を初めとする東アジア諸国の調達圧力と、欧州勢の調達圧力、米国の猛暑による供給がタイトになる可能性があることから高値トライを想定。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は総じて堅調な推移となった。注目の米雇用統計が良好な内容だったことを受けて景気への楽観が広がり、景気循環系商品が物色される流れで上昇、その後ドル安も進行したため投機の買い戻しが入った模様。

なお、猛暑の影響で需要が増加するとみられている鉛、発電燃料である石炭・LNG価格が急騰しているためアルミは比較的顕著な上昇となっている。

週明け月曜日は米国市場が休場だが、米統計の改善や米利上げペースの加速観測の後退(長期金利は低下している)から堅調な推移を予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連先物は小幅上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は小幅上昇、上海鉄鋼製品先物は下落した。

鉄鋼製品価格は中国の悪天候による需要への懸念や、港湾在庫の水準が季節性を上回って上昇していることが材料となり下落。

鉄鋼原料価格は中国政府による鉄鋼生産削減の可能性が材料視され水準を小幅に切下げた。なお、鉄鋼製品の生産が減少すると在庫日数が上昇するため鉄鋼原料の下落要因となる。

週明け月曜日も鉄鋼原料価格は在庫水準の低さから高値を維持すると考える。しかし、粗鋼生産の削減観測が在庫日数を押し上げるため上値も抑制されるとみる。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは堅調。米雇用統計が市場予想を上回る内容だったが「利上げペースが加速しない(という解釈)」で長期金利が低下、実質金利が低下したことが材料となった。

統計は市場予想を上回り、通常であればドル高・長期金利上昇・貴金属安、となっておかしくないのだが、長期金利の振る舞いがやや不自然ではある。

週明け月曜日は米国市場が休場であるため動意薄くもみ合うものと考える。

◆穀物

穀物価格は大豆が前日比プラスとなったが、トウモロコシ・小麦は続落した。月曜日が米主要市場が休場となるためポジション調整の売り圧力が強まったためと考えられる。

トウモロコシは50日移動平均線まで、小麦は200日移動平均線まで水準を切下げた。大豆はドル安の進行も手伝い、100日移動平均線を目指す展開となったが上値重かった。

週明け月曜日はシカゴ市場は休場。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日発表された米雇用統計は雇用環境の改善が継続していることを確認する内容だった。結果をダイジェストすると、非農業部門雇用者数が前月比+85万人(前月+58.3万人)、民間部門雇用者数が+66.2万人(+51.6万人)、製造業は+1.5万人(+3.9万人)となった。

製造業以外には工業や木材、建設などがあるが非製造業と比較すると規模感が小さい。米国は個人消費の国である。

しかし、過去の景気減速・回復局面での雇用者数の「前年比変化」を見ると、製造業の方が雇用者の整理が早く、回復も早い一方、非製造業の雇用者数変化は景気の変動で雇用者数の前年比変化はそれほど大きくない。

そのため、景気回復局面では製造業の雇用者数の伸びは非製造業を上回ることが多く、それについて行く形で非製造業の雇用者数の伸びが上昇する、という流れとなる。

リンク先のグラフはコロナショックによる雇用者数の変化が余りに大きいため、1年程度の時系列のグラフとしているが、今回のコロナショックの例を見ると今年の3月から非製造業の雇用者の伸びが製造業の伸びを上回っており、本格的な回復過程に入った可能性は高い。

それでも失業率は6%弱と高い。これは9月上旬まで予定されている特別給付金の影響で「安い賃金では働きたくない(就業した時の賃金<給付金)」人はそれなりにいると思われる。また、前々年と比較した場合まだ雇用者数はマイナスの状態だ。

しかしこの制度が雇用者の市場復帰を妨げている可能性があるため、一部の地域では前倒しで給付を終了するところも出てきた。今後、この給付金が打ち切られる中での「雇用のミスマッチの解消」がどれだけ進むかが、正常化の動向を左右することになるだろう。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。

財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。

夏のジャクソンホールのシンポジウムでのテーパリング開始宣言が妥当だが、6月のFOMCでFRBはタカ派に転じた可能性が高く、場合によると7月FOMCで宣言される可能性も否定出来ず。

・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は需要回復と、中東情勢への不透明さ、OPECプラスや非OPECプラスの増産の遅れ(OPECプラス内のスタンスの違い、イラン問題、環境保護派のパワーゲームの影響)が価格を押し上げるものの、米テーパリングの進捗観測が上値を抑えるため高値圏でもみ合うと考える。

過去のケースでもテーパリング開始宣言からファイナンシャルな面で売り圧力が強まり、原油価格も下落した。今のところ2023年に2回の利上げが見込まれ、場合によると2022年にも利上げの可能性がある。

しかし、コロナのワクチン接種進捗により人や物の移動が増加する見通しであることが需要面で価格を押し上げる他、供給面ではイラン核合意復帰が先送りになる可能性が供給面で価格を下支えすると考える。

また、イスラエルで連立政権が誕生したが、ネタニヤフ前首相よりもタカ派と言われるベネット党首が輪番制で2年間首相を務める。イランで保守強硬派の大統領が誕生したことで対立がさらに深まり、武力衝突に発展する可能性もゼロではなくなった。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(価格の上昇要因)。

同時に変異株が猛威を振るい、ワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でテーパリングなどの金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。

・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。

価格が上昇する中でOPEC諸国の減産維持統制が効かなくなり、増産競争に舵が切られる場合(下落要因)。

米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解、中東の緊張が緩和するシナリオも排除せず(下落要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。

かなり過剰なペースで脱炭素が進められており、裁判所を使ってまでシェルに脱炭素推進を促し、ヘッジファンドが株主としてエクソンに対して脱炭素を促し、自身のポートフォリオの価値を上げる目的で取締役を送り込むといったことも常態化しはじめており、「比較的タイムリーな増産」が可能だった米国の生産が増えない可能性は極めて高い。

この場合、「脱炭素移行期間には十分な燃料供給が出来ないリスク」が高まり、来年以降の価格上昇局面で原油価格が100ドルを超えるリスク(ただしまだリスクシナリオの位置づけ)。

なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値圏を維持すると予想される。最大消費国である中国の電力需要が拡大している子と、北半球の気温上昇に伴う発電燃料価格の上昇トレンドが継続していることから、昨年からの猛暑・厳冬で在庫水準が低いためスポット調達圧力が強い状態が続くと考えられるため。

また、欧州排出枠価格が供給減少により2021年の需給がタイトとみられることもファイナンシャルな面で価格を押し上げると考える。

なお、FRBがタカ派に転じたことがリスク資産価格の下押し要因となっているが、脱炭素の流れの中ではファンドですら石炭を投資対象とし難く、その影響は限定と考える。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。夏場の調達に目処が立てば調整すると見られるが、足下、中国の6大電力会社の石炭在庫水準は過去5年レンジの最低水準と低く、高値圏維持を予想。

ただし、3月の豪雨の影響で供給が減少していた豪州の輸出増加や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、脱炭素の流れと逆行するが中国政府は海外との対立によって石炭調達に支障が出ることを回避するため、国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

5月の石炭輸入は前年比▲4.6%の2,104万トン(前月▲29.8%の2,173万トン)と減少傾向が続いた。中国の需要増加に伴う電力需要回復で進んでいた石炭輸入だが、バルチック海運指数の減速も始まっており、そろそろ目処が立ちつつあると見られる。

しかし、中国6大電力会社の石炭在庫の水準は低く、まだ、季節的な石炭輸入需要の増加は続くと考える。石炭価格の下落は夏場の在庫調達が一巡する必要があるため、7月頃までは高止まりする可能性が高い。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれること、海上輸送石炭価格の高止まり、欧州のメンテナンスやロシアからの供給減少で欧州の域内需給がタイト化していること、などを背景にスポット玉の調達圧力が強まることから、高値に維持する見込み。

なお、FRBがタカ派に転じ、リスク資産価格に下押し圧力がかかりやすい地合となっているが、LNG市場はまだ投機の物色対象となっていないことから影響は限定されると見ている。

5月の中国のLNG輸入は前年比+34.4%の703万トン(前月+32.0%の673万トン)と過去5年レンジを大きく上回り、構造的な需要増加が続いている。

なお、5月の天然ガス輸入は前年比+31.6%の1,032万トン(前月31.5%の1,015万トン)と構造的な増加が続いている。中国も明確に石炭からガスへのシフトを進めていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・米国がノルドストリーム2の建設を容認した場合、欧州ガス需給の緩和(ロシア増産で下落要因)。

・ウクライナやベラルーシといったロシアと欧州の緩衝帯との政治的な軋轢によって、結果的にロシア産ガスの供給がロシア側の都合でコントロールされた場合(実際にロシアが行動を起こした場合、多くのケースで価格の上昇要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが664,867枚(前週比 ▲5,113枚)ショートが142,377枚(▲1,442枚)ネットロングは522,490枚(▲3,671枚)

Brentはロングが419,482枚(前週比+3,356枚)ショートが111,081枚(+4,687枚)ネットロングは308,401枚(▲1,331枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は企業の決算発表を睨みながら、当面高値圏でのもみ合いになると考える。

基本的に経済活動が回復していること、米国のみならず欧州でもインフラ投資が行われる見通しであること、ロシアの輸出関税強化が価格を押し上げるが、これまで投機筋が「需給バランス」「脱炭素」をテーマに価格を押し上げてきたことも事実であり、テーパリング開始をテーマにドル高・金利高の流れが進行し、現物を必要としない投機の手仕舞い圧力が強まることになるため。

また、中国は国家備蓄放出(銅が50万トンとされる)が見込まれているが、もしこの水準だと2021年の銅需給バランス、弊社は▲86万トン程度の供給不足と見積もっているが、これが▲36万トンに縮小されることになり、下期にかけての下落要因に。

しかし、この在庫放出も「放出が終ってしまえば影響はなくなる」訳であり影響は一時的と考える。

6月の中国製造業PMIは50.9(前月51.0)と市場予想の51.0と前月を小幅に下回った。ただし閾値の50は上回っており中国の製造業活動は拡大過程を維持していると考えられる。

内訳を見ると生産が鈍化(52.7→51.9)する一方で、新規受注(51.3→51.3)、輸出新規受注(48.3→48.1)、受注残(45.9→46.6)と輸出向け受注が減少する一方で新規受注は同じ水準を維持しているため、まだ中国国内の需要は減速を始めていないことが伺われる。

輸出向け新規受注の減少は人民元高が影響しているとみられるが、国内に関しては中国政府が投資抑制に舵を切っているため、徐々にこの政策の影響がでてくると考えられる。

工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.09(前月1.10)、原材料が1.07(1.08)と両指数とも小幅に低下している。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、5月の中国の建設業PMIは60.1(60.1)と高い水準ではあるが前月から横這いであり、鉄鋼製品価格の上昇や中国政府による住宅バブル抑制方針が影響し始めているとみられる。

ただし統計の水準は高く、短期的には中国の住宅セクターは堅調であり、短期的には建材向け需要は堅調に推移するだろう。

その中で輸出向けの需要が欧米との対立と人民元高の中でどれだけ回復出来るかが、次の焦点となる。

5月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+2.3%の44万6,000トン(前月+5.1%の48万4,890トン)とやや伸びが鈍化し、過去5年レンジの上限を下回っている。

一方、5月の銅精鉱の輸入は+15.1%の194万5,000トン(▲5.4%の192万トン)と高い水準を維持、銅スクラップの輸入も+103.1%の16万7,767トン(+90.6%の17万1,996万トン)と堅調であり、まだ中国の銅需要は堅調とみられる。

中期的には米国や欧州の財政出動、脱炭素の動きを受けた動向に左右されることになる。

米バイデン政権は上院の超党派で、8年間で1兆2,000億ドルのインフラ投資計画で合意した、と発表した。今回の合意では、道路・橋梁・主要プロジェクトに1,090億ドル、電力インフラに730億ドル、旅客・貨物鉄道に660億ドル、ブロードバンド・インターネットサービスに650億ドル、公共交通機関に490億ドル、空港に250億ドルを投じる。

さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

これまで中国が鉱物セクターの需要動向に関して主役であり、今後も非鉄金属価格の動向は中国動向が左右するが、「新規の需要」については欧米動向が重要になる可能性は意識しておきたいところ。

この場合、米国の景気回復=ドル高・金属価格上昇、という構図も考えられる。

こうした政策期待や、インドなどの新興諸国の需要増加を受けた構造的な需要増加を受けて、中・長期的に価格は下支えされ、堅調な推移になると考える。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・猛暑による燃料価格上昇で、1.電力供給不足による稼働停止・供給減少、2.発燃料価格の上昇を通じて生産コストが上昇する、場合(価格上昇リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

チリで議論されている銅のロイヤルティ増税案の詳細は以下の通り。

年内実施予定の選挙結果では課税強化で生産コスト上昇、または減産となる可能性も。

3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。

2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%

年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。

2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比+6.8%の246億ドル(前週 230億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+3.3%の5,751.0千トン(前週 5,568.1千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米欧中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

これまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。

また、資源価格の上昇を受けた国内インフレ回避の目的でロシアが8月1日から鉄鋼製品の輸出に関税を課す方針を示しており、このことも需給をタイト化させて価格を押し上げよう。

ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていること、先物取引市場での監視強化(証拠金引き上げや値幅制限、投機取引の監視など)、在庫日数は低いが粗鋼生産が減少すれば需給は緩和すること、鉄鋼製品在庫は季節性よりも早く再び積み上がっていること、共産党結党100周年記念行事はもうすぐ終了し、イベントが一巡することから下落リスクを意識すべきタイミングに。

また、中国共産党は2021年から始まった新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

直近の唐山市の高炉稼働率は過去5年レンジを下回る7割程度の推移となっており、鉄鋼製品生産は抑制された状態になっている。

また、Q221には邯鄲市も生産管理措置を導入する見通しであり、鉄鋼製品供給は制限される可能性が高い。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格は高値圏を維持しており、鉄鉱石価格も高止まりしている。

6月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は45.1(前月46.1)と悪化した。生産指数が低下(51.4→50.7)したが、それ以上に新規受注(39.4→34.8)、輸出向け新規受注(43.9→42.3)と低下した影響が大きかった。

景気過熱を沈静化する方針を中国政府も明確にしており、鉄鋼生産に関しては環境規制強化の流れ(というよりは中国の国民の住環境改善要請に応えたものと考える方が適切)を受けたものであり、新規受注の減速は政策的な支援の減少や輸出に関しては5月1日から鉄鋼製品の増値税還付が撤廃されたことが影響していると考えられる。

需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが0.74(前月0.91)と低下、新規受注原材料レシオは0.93(0.995)と低下基調を維持しており、原材料・鉄鋼製品とも価格の下押し圧力が強まる展開が予想される。

鉄鋼原料価格の上昇を牽引してきた住宅セクターに関しては、6月の中国の建設業PMIは60.1(60.1)と高い水準ではあるが前月から横這いであり、鉄鋼製品価格の上昇や、中国政府による住宅バブル抑制方針が影響し始めているとみられる。

ただし統計の水準は高く、短期的には中国の住宅セクターは堅調であり、短期的には鉄鋼製品並びに鉄鋼原料価格を高止まらせると考える。

5月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲5.8%の120万6,000トン(前月+16.2%の117万4,000トン)と伸びが減速したが、過去5年レンジの上限で推移している。

5月の中国粗鋼生産は前年比+7.8%の9,945万トン(前月+15.1%の9,785万トン)と前年比での伸びが鈍化したが、過去5年レンジは大きく上回っている。

その一方、5月の鉄鋼製品の輸出は前年比+19.8%の527万1,000トン(前月+26.2%の797万3,000トン)と伸びが減速した。これは輸出リベートの撤廃による4月の鉄鋼製品輸出駆け込み需要が剥落したことによるものと見られる。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比+25万3,000トンの1,580万トン(過去5年平均 1,088万1,000トン)と、例年、在庫減少が続く時期だが在庫は前週比で増加が顕著になっている。

粗鋼生産の調整が進まない一方、中国当局の景気過熱沈静化の動きの影響が顕在化しつつあると言える。

原料である鉄鉱石の5月の輸入は前年比+3.2%の8,980万トン(前月+3.0%の9,857万トン)と伸びは横ばい。しかし、輸入量の水準は過去5年平均程度まで急速に減速しており、中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性が出てきた。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+50万トンの1億2,445万トン(過去5年平均1億2,471万6,000トン)、在庫日数は23.1日(過去5年平均 28.9日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、在庫の積み増しは継続する見込み。

ただし在庫日数の低さは粗鋼生産の水準の高さに依拠するため、中国政府が住宅セクターの沈静化をどの程度本気で進めるかに左右されることになる。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

5月の中国の原料炭輸入は前年比▲28.7%の341万1,925トン(前月▲44.6%の348万3,128トン)と減少幅を縮小している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲4万トンの139万トンと過去5年平均の158万トンを下回っている。

在庫日数は前週比▲0.1日の4.1日と、過去5年の平均である6.9日を下回っており、需要を考慮すると原料炭需給はまだタイトな状態にあると言える。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏での推移を継続すると考える。米テーパリング進捗観測でドル高が進行していたが、逆に金融引き締め観測が長期金利の上昇を抑制しており、実質金利に低下圧力が掛っていることが背景。

とは言え、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まると予想され、中期的な見通しは弱気。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,630ドルと前日から+10ドル上昇、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は157ドルと前日から+1ドル上昇。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で220ドル、6ヵ月で210ドル、1年で230ドル、5年で170ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、67.5倍。過去1年を基準にすると73倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になると見られるが、米政府は新疆ウイグル自治区問題を背景に輸入を制限する見通しであり一筋縄では行かないと考える。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

金価格が米長期金利の低下で再び高値で推移していることから、投機的な観点でプラチナにも上昇圧力が掛りやすい地合い。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

5月の米自動車販売は年率1,536万台(前月1,699万台、市場予想1,650万台)と減速。目先は価格の下落要因となりやすい。

中国の5月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比▲3.0%の212万7,000台(前月+8.8%の225万台、3月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と前年比マイナスに転じた。

半導体不足が自動車生産に影響を及ぼしているとみられる。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが254,206枚(前週比 +1,053枚)、ショートが91,980枚(+5,041枚)、ネットロングは162,226枚(▲3,988枚)、銀が71,855枚(▲1,986枚)、ショートが30,378枚(▲3,592枚)、ネットロングは41,477枚(+1,606枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが30,141枚(前週比 ▲1,689枚)ショートが15,397枚(▲3,493枚)、ネットロングは14,744枚(+1,804枚)

パラジウムが4,474枚(UC枚)、ショートが3,066枚(▲336枚)ネットロングは1,408枚(+336枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

シカゴ穀物価格は高値圏で推移すると考える。増加が見込まれていた米国の作付面積は市場予想を下回ったこと、今年の夏場のエルニーニョ現象は、記録的な猛暑をもたらして穀物生産に悪影響となる可能性があること、この状態でも中国の調達意欲は旺盛であることが背景。

ラニーニャ収束で売りに回っていた投機筋の買い戻しも、テクニカルに価格を押し上げると考える。

5月の中国の大豆輸入は前年比+2.5%の961万トン(+11.0%の前月745万トン)と季節性に沿って増加しているが、過去5年レンジの上限で推移しており、輸入需要は旺盛。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/290629DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積 実績(前年)トウモロコシ 9,269万エーカー(9,082万エーカー)大豆 8,756万エーカー(8,383万エーカー)小麦 4,674万エーカー(4,425万エーカー)

・6月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.39、179.5)大豆 50.8Bu/エーカー(50.8、50.8)小麦 50.7Bu/エーカー(NA、50.0)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億861万Bu、149億9,000万Bu)大豆 44億500万Bu(44億1,096万Bu、44億500万Bu)小麦 18億9,800万Bu(18億8,990万Bu、18億7,200万Bu)

・6月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(24億5,000万Bu)大豆 20億7,500万Bu(20億7,500万Bu)小麦 9億Bu(9億Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,700万Bu(14億1,672万Bu、15億700万Bu)大豆 1億5,500万Bu(1億4,256万Bu、1億4,000万Bu)小麦 7億7,000万Bu(7億8,056万Bu、7億7,400万Bu)

・6月末四半期在庫 実績(前期末)トウモロコシ 41億1,200万Bu(77億1004万Bu)大豆 7億6,700万Bu(15億6,400万Bu)小麦 8億4,400万Bu(13億1,400万Bu)

・6月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,984万ha(1,975万ha、1,987万ha)大豆 3,815万ha(3,871万ha、3,850万ha)

・6月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 9,639万トン(9,398万トン、1億641万トン) 単収 4,858kg/ha(4,762Kg/ha、5,355kg/ha)大豆 1億3,586万トン(1億3,682万トン、1億3,541万トン) 単収 3,528kg/ha(3,538Kg/ha、3,517kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが436,054枚(前週比 ▲42,577枚)、ショートが83,087枚(▲7,133枚)ネットロングは352,967枚(▲35,444枚)

大豆はロングが190,144枚(▲48,832枚)、ショートが56,133枚(▲1,895枚)ネットロングは134,011枚(▲46,937枚)

小麦はロングが107,346枚(▲5,278枚)、ショートが80,900枚(▲5,918枚)ネットロングは26,446枚(+640枚)

◆本日のMRA's Eye


「2021年の気象予想は暴動発生リスクを示唆」

2021年の食料品価格は軒並み上昇している。国連が算出している食品価格指数を見ると、上昇の原因はコロナの感染拡大の影響に加え、世界的に異常気象が継続していること、脱炭素の動きが加速していることが背景にあると考えられる。

食品価格の上昇は我々消費者の生活に直接影響を及ぼすが、先進国の場合そこまでの深刻な事態にはならない。産業が安定していることに伴い資金面での問題がない他、安定調達先を確保出来ており、万一に備えて国家で備蓄もあるためだ。

しかし新興国だと産業がまだ不安定であり収入の大部分を農産品の生産・販売に頼っている所も多く、不作になった場合には国・個人とも大きな打撃を受ける。

2010年に中東・北アフリカ諸国で発生した「アラブの春」は独裁支配への反発というよりも食品価格の高騰によって食べる物がなくなったことによる食糧問題である。

中東・アフリカの新興国の場合、国の重要なビジネスが一次産品の生産であることが多く、物理的に重要な生産地を占拠した者がその国の富を握りやすい。収益源が限られるため権力は資源を支配した者に集中するため腐敗も起きる。

食糧危機時に国際機関から提供された食品を横流しして私腹を肥やすということもしばしば発生する。

そのため、食品価格の高騰は暴動の引き金となる。アラブの春は2010年12月のジャスミン革命を機に広がったが、そのときの食品価格水準を「暴動の引き金となる水準」と定義すると、食品価格指数(総合指数)はこのとき129.3だったが、直近の水準は127.1と、まだその水準に達してはいないが、あとわずか1.7%上昇するとレッドゾーン入りすることになる。

食品価格指数の内訳を見ると、主食であるシリアルの価格指数は2021年5月時点で133.1だが、暴動発生時の水準は139.7だった。あと5%程度、価格が上昇すると危険水域に突入することになる。

そして今回最も上昇しているのが調理に用いる油脂価格で、直近の数字は174.7と2010年12月の166.2を上回っているのだ。なお、豚肉を始めとする肉類の価格も105.0(暴動発生時水準97.4)と危険水域に入っている。

油脂価格の上昇は、中国で2018年に豚熱(豚コレラ)が発生し、1億頭を超える豚が殺処分され飼料としての大豆ミール需要が減少、大豆ミール生産時に同時に製造される大豆油の供給も減少、その他の油脂を求める動きが強まったことが背景にある。

また、ラニーニャ現象の影響による気象状況の悪化や、コロナウイルスの感染拡大に伴い労働力の確保が困難になったこと、などの要因で大豆油の原料である大豆価格が上昇したことも価格上昇の一因となった。

しかし2年弱が経過して豚熱の影響が緩和したため中国は畜産業者に対して支援を行い、豚の飼育頭数を急速に増やしたため大豆輸入も増加、大豆油の生産が増加したこと、5月13日に米海洋気象局がラニーニャ現象の収束宣言を発表したため、それを機に投機筋の利益確定の売りが加速して原料である大豆価格が下落したことを背景に足下は油脂類の価格に下押し圧力が強まっている状況だ。

夏場に向けてはエルニーニョ現象の発生が見込まれており、過去の例を参考にするとエルニーニョ現象発生時に穀物価格は下落する傾向が強いため、新興国での暴動リスクはそれほど大きくないと予想される。

では本当に安心か?というとそうとも言えない。

過去の例を見るとエルニーニョ現象発生は穀物の育成に好ましい天候をもたらし、価格が下落するケースが多かった。しかしあくまでそうなったケースが多い、というだけであり、今年は既に北半球の夏場が猛暑となる可能性が高まっている。

さらに悪いことに今年の年末から来年に掛けてラニーニャ現象が再び発生するという見通しを示している気象予報士もいる。

さらに世界的に進む脱炭素の流れで再生可能エネルギー需要が増加する見込みであり、エタノールやバイオ燃料向けの大豆油需要が構造的に増加する可能性も出てくる。こうなった場合、食品価格がさらに上昇して暴動に繋がる可能性は否定出来ない。

◆主要ニュース


・5月ユーロ圏生産者物価指数 前月比+1.3%(前月+0.9%)前年比 +9.6%(+7.6%)

・6月米雇用統計
 非農業部門雇用者数 前月比+850千人(前月改定+583千人(速報比▲24千人))
 民間部門雇用者数 +662千人(+516千人)
 製造業雇用者数 +15千人(+39千人)

・6月米失業率 5.9%(前月 5.8%)
 不完全雇用率 9.8%(10.2%)
 労働参加率 61.6%(61.6%)
 時間当たり平均賃金 前月比+0.3%(+0.4%)
 前年比+3.6%(+1.9%)
 週平均労働時間 34.7時間(34.8時間)

・5月米貿易収支赤字 ▲712億ドル(前月改定▲691億ドル)

・5月米製造業耐久財受注改定
 前月比+2.3%(速報比±0.0%、前月改定▲0.8%)
 除く輸送機器+0.3%(±0.0%、+1.7%)
 製造業新規受注資本財非国防除く航空+0.2%(速報比+0.2%、+2.7%)

・IMF、「FRBは2022年終盤か、2023年序盤に利上げを、2022年上期中にテーパリング開始と予想。」

・サンフランシスコ連銀デイリー総裁(投票権あり・中間派)、「年内か、来年序盤に資産購入の規模縮小を検討するのが適当だ。国債とMBS双方の購入が、全体的な金融の緩和に貢献し、金融市場が景気回復を支えている。そのため安直に住宅市場が強いからといって購入を停止しようと単純には言えない。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数376(前週比+4)
 ガスリグ 99(前週比+1)。

・OPECプラス、2022年4月の減産終了を主張するUAEとサウジアラビア、ロシアが合意に至れず7月5日に再度持ち越し。

・ハリケーン「エルザ」カリブ海を通過してフロリダ半島に。
https://www.nhc.noaa.gov/gtwo.php?basin=atlc&fdays=2

【メタル】

・Hydro、米国のミシガン州でアルミのリサイクル工場の建設を検討。総額1億2,000万ドルを投資し、12万トン/年の生産量のプラントを2023年までに稼働。・アルゼンチン政府は2021年下期の電力価格をさらに引き下げる方針を決定したが、Aluarはフルキャパシティまでの増産は困難な見込み。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME木材 ( その他農産品 )/ +2.91%/ ▲13.33%
2.CBT大豆油 ( 穀物 )/ +2.74%/ +54.21%
3.TCM原油 ( エネルギー )/ +2.09%/ +60.00%
4.LMEアルミ 3M ( ベースメタル )/ +1.93%/ +29.13%
5.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ +1.80%/ +15.49%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲3.13%/ +44.06%
65.中国CSI300 ( 株式 )/ ▲2.84%/ ▲2.50%
64.SGX天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲2.46%/ ▲14.57%
63.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲2.39%/ +3.55%
62.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲2.21%/ +18.95%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,786.35(+152.82)
S&P500 :4,352.34(+32.40)
日経平均株価 :28,783.28(+76.24)
ドル円 :111.05(▲0.48)
ユーロ円 :131.76(▲0.40)
米10年債 :1.42(▲0.03)
中国10年債利回り :3.08(▲0.01)
日本10年債利回り :0.05(+0.00)
独10年債利回り :▲0.24(▲0.04)
ビットコイン :33,142.64(▲279.36)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.42(+0.13)
エネルギー :20.01(+0.32)
ベースメタル :22.53(▲0.13)
貴金属 :28.07(▲0)
穀物 :41.16(+0.02)
その他農畜産品 :24.50(+0.24)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :17.81(▲0.12)
Brent :14.61(▲0.11)
米天然ガス :31.31(+1.86)
米ガソリン :17.95(+0.55)
ICEガスオイル :14.58(▲0)
LME銅 :22.77(▲0.2)
LMEアルミニウム :19.75(+0.34)
金 :47.89(▲0.85)
プラチナ :28.40(+0.01)
トウモロコシ :44.70(+0.57)
大豆 :47.89(▲0.85)

【エネルギー】
WTI :75.16(▲0.07)
Brent :76.17(+0.33)
Oman :74.82(+0.37)
米ガソリン :229.98(+3.22)
米灯油 :217.91(+2.29)
ICEガスオイル :611.25(+5.25)
米天然ガス :3.70(+0.04)
英天然ガス :88.94(▲0.64)

【貴金属】
金 :1787.30(+10.46)
銀 :26.47(+0.44)
プラチナ :1093.74(+7.01)
パラジウム :2790.29(+23.20)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,324(▲44:27C)
亜鉛 :2,932(▲18:15C)
鉛 :2,289(+49:4.5B)
アルミニウム :2,535(+38:15.5C)
ニッケル :18,133(+55:8B)
錫 :31,387(+97:1559B)
コバルト :50,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9379.00(+110.00)
亜鉛 :2935.50(+1.50)
鉛 :2296.50(+40.50)
アルミニウム :2557.50(+48.50)
ニッケル :18330.00(+235.00)
錫 :31520.00(+220.00)
バルチック海運指数 :3,285.00(▲53.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :214.87(▲0.43)
SGX鉄鉱石 :212.06(▲1.17)
NYMEX鉄鉱石 :212.46(▲1.13)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :197.67(+1.00)
大連原料炭先物 :351.46(+0.56)
上海鉄筋直近限月 :4,908(▲63)
上海鉄筋中心限月 :5,115(▲41)
米鉄スクラップ :670(±0.0)

【農産物】
大豆 :1451.75(+5.00)
シカゴ大豆ミール :379.90(▲1.90)
シカゴ大豆油 :66.82(+1.78)
マレーシア パーム油 :3898.00(+56.00)
シカゴ とうもろこし :697.25(▲22.50)
シカゴ小麦 :645.75(▲12.75)
シンガポールゴム :190.00(▲4.80)
上海ゴム :12545.00(+15.00)
砂糖 :18.15(+0.21)
アラビカ :152.55(▲3.45)
ロブスタ :1725.00(+9.00)
綿花 :86.03(+1.02)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :108.65(+1.35)
シカゴ生牛 :122.00(▲1.58)
シカゴ飼育牛 :157.05(+0.73)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。