CONTENTSコンテンツ

ドル安で堅調も農産品・畜産品・自国通貨建て商品売られる
  • MRA商品市場レポート

2021年5月25日 第1961号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ドル安で堅調も農産品・畜産品・自国通貨建て商品売られる」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は自国通貨建て商品やその他農産品、畜産品などの「非景気循環・非インフレ資産」が売られ、景気循環系商品に買い戻しが入る形となった。

特に上昇が顕著だったのがエネルギーセクターで、これまでイランの核合意に米国が復帰する、との期待から下落していたわけだが、昨日は米ブリンケン国務長官が「イランが米国が合意に復帰するためにやらなければ成らないことを、解っているけれどもやるかどうかは把握していない」と発言したことが材料視されたようだ。

ただ、このブリンケン国務長官の発言も交渉中の戦略的な発言であり、長続きする材料ではない、とみる。

【本日の見通し】

本日も米金融政策動向を睨んだ為替の動向に左右される展開が予想される。

今のところ米長期金利の上昇が抑制されており、本日発表予定の米コンファレンスボード消費者信頼感指数は119.0(前月121.7)と減速見込みであり、独IFO指数は期待指数(99.5→101.0)、現況指数(94.1→95.5)、企業景況感指数(96.8→98.0)とも改善見込みで、ドル安バイアスがかかりやすいことから、堅調な推移を予想。

また、材木価格の上昇が重石となる可能性がある米新築住宅販売(前月比▲7.0%の95万戸、前月+20.7%の102.1万戸)にも注目。

このほか、シカゴ連銀、リッチモンド連銀、FRBクォールズ副議長が公の場で発言するため、その発言にも注目。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は上昇した。市場参加者のリスクテイク意欲回復と米長期金利低下によるドル安進行が材料となった。

また、ブリンケン国務長官が、イランとの核合意に関してイランの意思を米国は把握出来ていない、と発言したことで米国の核合意復帰期待が後退、買い戻し材料となった。

どちらかと言えばドル安・リスクテイク再開の影響が大きいと思うが、イラン問題が材料視されているとすれば、核合意復帰時には昨日の2ドルを超える上昇は逆に2ドルを超える下落要因になると考えるべきである。

石炭価格(豪州炭)は上昇。中国の経済活動の回復や脱炭素に伴う石炭供給減少が引き続き材料視され、価格は高値を維持している。

中国の石炭輸入動向の指標の1つであるバルチック海運指数は、昨日も上昇している。しかし、中国の港湾在庫の水準が増加し、同じ時期の過去5年の最高水準に迫る中、そろそろ中国の夏場を睨んだ石炭調達に目処が立つと思われる。

JKMは上昇。豪州石炭価格の上昇に反映されるように、域内の夏場向けの冷房燃料需要がまた旺盛なものと考えられる。また排出権価格の上昇も価格を押し上げたようだ。

しかし、欧州天然ガスは小幅に下落。気温の上昇予報や、ウクライナが開催予定のオークションでガスプロムがどのような動きをするかに注目が集まり、様子見気分が強まったことが影響したようだ。

米国天然ガスも気温の上昇予報を受けて下落。

5月10日~16日の世界のLNG取引750万トンのうち230万トンがスポットで取引された。先週から▲30万トン減少。国別では、日本、韓国、中国の調達が増加したが、台湾、インド、英国の調達が減少している。

本日は米国の長期金利上昇一服、独IFO指数の改善観測を受けたユーロ高・ドル安で堅調な推移を予想。ただし米コンファレンスボード消費者信頼感指数は低下が見込まれており、引けに掛けては需要減少観測で売られる展開か。

石炭・LNGは夏に向けた在庫積み増しの動きがアジア・欧州で継続しているため、高値圏を維持する見込み。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格はまちまちながら、総じて堅調な推移となった。

LME指定倉庫在庫の減少は総じて継続しておりファンダメンタルズ面で価格を下支えする一方、昨日は米長期金利低下に伴いドル安が進行したことで買い戻しが優勢となった。下落を予想していたが、ドル安進行が地合を反転させた。

本日は米新築住宅販売に注目しているが、コロナの影響による輸送問題、材木価格の上昇、これまでの長期金利上昇で減速が予想され建材向け需要の減少観測から価格は下落すると予想。

ただし、米国の金融緩和解除観測がやや後退しており、独景況感指数も改善が見込まれることからドル安が進行しやすくかつ、株高を通じてリスクテイクの買いが入りやすいことから下落余地は限定の公算。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは続落、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は下落した。

中国政府による資源価格上昇、特に鉄鉱石・鉄鋼製品価格上昇を証拠金の引き上げなどで抑制する動きを強めていることで鉄鋼製品価格が下落、それに連れる形で鉄鉱石価格は下落した。

中国政府は鉄鉱石・鉄鋼・銅・アルミ生産者と会合を開き、商品価格高騰の抑制を呼びかけた。中国の場合、当局の意向が非常に大きく価格を左右する。

鉄鋼製品価格動向が鉄鋼原料価格を左右しているが、恐らく先物には割安感からの買いが予想されるため、高値圏での推移を予想。ただし当局の価格高騰抑制方針を受けて上値も重いと考える。

◆貴金属

昨日の貴金属価格は高安まちまち。金は実質金利の上昇とドル安が進行したものの、ビットコインが反発する中でビットコイン下落時に再物色されていた金に売り圧力が強まり、リスク・プレミアムが切り下がったことが影響した。

銀もほぼ同じ値動きとなったが、金ほどビットコインからの逃避買いがあった訳ではないようで、昨日の強気材料を受けて前日比プラス、プラチナも同様。

パラジウムは50日移動平均線のレジスタンスラインを回復出来ず、テクニカルな売りに押された。パラジウムも投機要因が価格を左右しやすくなっているが、ローソク足の上ひげが長くなっており、短期的に調整(目処は100日移動平均線となる2,570ドル)する可能性。

本日は、米長期金利低下による実質金利低下と、独統計改善観測を受けたドル安バイアスを受けて堅調な推移を予想。

◆穀物

穀物価格は下落した。トウモロコシ・大豆の作付進捗と冬小麦の豊作観測で軟調な推移となった。ただ、相場の環境が変わったのは13日の米海洋気象局によるラニーニャ収束宣言とみられる。

トウモロコシ・大豆・小麦の作付は例年を上回るペースで進捗し、ほぼ終了している。あとは最終作付面積が昨年比でどの水準に着地するかであるが材料としては価格を下押ししやすいものが増えている。

ただ、小麦に関し、作柄が例年よりも悪化していることは価格の下支え要因。

本日は米長期金利低下と独統計改善観測でドル安圧力が強まると予想されるため、ファイナンシャルな面で買い戻しが入ると予想。

当面はチャートのテクニカル分析に基づくチャートポイントが価格の目処となるが、50日移動平均線が目先の下値目処に。トウモロコシは625セント、大豆は1,490セント、小麦は670セント。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日、米国が日本に対する一般の渡航中止・退避勧告を発出した。

既存のワクチンが効きにくいとされるインド変異株の感染拡大観測と、ようやく大規模接種が日本でも始まったが接種率が低いことが背景にあると考える。その一方で、オリンピックには選手団を派遣の方針。

このことは引き続き日本が置かれている状況が厳しく、内需主導で景気が回復するような状況にないことを改めて意識させるものとなった。

日本の場合の通常の景気回復は外需主導で回復し、その後、輸出企業製造業の景況感改善が内需にも波及、回復に至るという過程を経るが、今回はワクチン接種が進んでいないことで強制的に国内の消費活動を制限している状況であり、この通常の回復過程を経る可能性は高いとは言えない。

ワクチン接種進捗がブレークスルーに成れば良いが、変異種の発生でまた別のワクチン接種が必要(まだ従来型のものも打ち終っていない)となる場合、2022年~と期待された日本の景気回復がさらに遅れる可能性も有り得る。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。

財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならないが、足下、どの中央銀行・政府も景気過熱は意識しているものの沈静化させるタイミングと判断していないため、しばらくは顕著な価格上昇リスクとなる見込み。

常識的に考えると今年の年末頃からテーパリング開始の見通しとなるが、来年の米中間選挙を控えて米政権がテーパリング実施にクギを刺す可能性がある。この場合、2022年にかけて、さらにリスク資産価格が上昇する可能性も。

・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は軟調ながらも、高値でもみ合うものと考える。最大消費国である米国の経済統計は良好なものが多いこと、DOEやOPECなどの見通しは需給ファンダメンタルズがさらにタイト化する見通しであることが背景。

しかし、OPECの増産バイアスは強まり、米国のイランに対する制裁が解除される可能性が高まっていること、コロナの変異種拡大の影響が続くインドや欧州の回復にはまだ時間がかかること、米景気の回復期待で米長期金利上昇・ドル高圧力がかかるシナリオは依然、メインシナリオであり調整圧力が上昇圧力を上回る可能性は低くない。

なお、米国のイラン核合意復帰に向けた動きが進んでおり、サウジアラビアも米国の軍事的な支援を得られなくなったことでイランとの距離を縮める動きを見せていることから、当面、原油価格には下押し圧力になると見られる。

金融面に関しては、常識的に考えれば経済活動の再開で2022年頃(早ければ今年の年末)から米国でテーパリングが始まり、過去の例を考えると長期金利の上昇などを通じてリスク資産価格には一時的に調整圧力が強まる可能性は高い。そのため、2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク)。

同時に変異株が猛威を振るい、ワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングやパイプライン敷設を制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合。

リスクシナリオの位置づけだったが、「巨大なイスラム圏」ができることにはならないが、バイデン政権誕生によってサウジアラビアはイランと関係改善に動かざるを得なくなっており、域内の緊張緩和観測が強まっている。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値圏を維持すると予想される。欧州排出枠価格が供給減少により2021年の需給がタイトとみられること、中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が堅調と見られることが背景。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。夏場の調達に目処が立てば調整すると見られるが、それでも高値圏維持を予想。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

4月の石炭輸入は前年比▲29.8%の2,173万トン(前月▲1.8%の2,733万トン)と減少に転じた。中国国内の電力需要が回復していることで輸入が増加していたが、調達に目処が立った可能性がある。

ただ、中国の石炭輸入需要の指標であるバルチック海運指数が高い水準を維持していることを考慮すると、まだ輸入は高水準で推移する可能性が高いと考える。

燃料炭の港湾在庫の水準を見るに、需要減速・国内生産が同時に起きていると予想される。よって、石炭価格にも徐々に下押し圧力が掛りやすくなることが予想される。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれるため高値圏を維持するものの、ロシアの欧州向けガス供給枠増加を受けた欧州市場の需給緩和観測の強まりと、排出枠価格の水準低下で軟調な推移になると考える。

4月の中国のLNG輸入は前年比+32.0%の673万トン(前月+34.6%の564万トン)と構造的な増加が続いている。徐々に中国も石炭からガスへのシフトが起きていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・米国がノルドストリーム2の建設を容認した場合、欧州ガス需給の緩和(ロシア増産で下落要因)

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが612,530枚(前週比 ▲37,588枚)ショートが136,583枚(▲16,974枚)ネットロングは475,947枚(▲20,614枚)

Brentはロングが381,189枚(前週比▲4,123枚)ショートが95,189枚(+5,710枚)ネットロングは286,000枚(▲9,833枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦調整圧力が強まるものの、高値圏を維持すると予想する。

各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、中国のみならず、米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(インフラ投資は0.6兆ドル程度)の追加対策を実施の計画であり、中国も7月の共産党結党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けると見られるため。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

また、投機的な買いは続いており、投資銀行を中心に「脱炭素」をテーマに市場参加者に非鉄金属に投資を促す動きが強まっていることから、投機的な動きが当面高値に押し上げることになるだろう(逆にドル高進行、株安の局面では大きな下落圧力となる)。

弊社はベンチマークである銅の価格が、指定倉庫在庫の水準から判断するに1,000ドル程度高いと見ていたが、「テーマ性(今は市場では「脱炭素銘柄」とされている)があること」から、水準感は9,000ドル~11,000ドルに切り上がっていると判断せざるを得ない。

しかし、それでも中期的には調整圧力が強まる展開になるとの予想は、現時点では変更する必要はないと考えている。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強めていること、米経済統計回復に伴うドル高進行、早ければ2021年末頃から始まる可能性がある、米テーパリング開始の可能性、生産国の生産が回復する可能性が高いことが材料。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

4月の中国製造業PMIは51.1(前月51.9)と市場予想の56.1を大きく下回った。中国政府も投資主導による景気の過熱に配慮せざるを得ない状況になっていると考えられ、総じて指数の内数はほとんど水準を低下させている。

新規受注は52.0(53.6)と前月から▲1.6低下、輸出新規受注が50.4(51.2)と▲0.8の低下となった。このことは中国国内の需要の伸びが減速していることを示唆している。

新規受注在庫レシオは、完成品が1.11(前月1.15)、原材料が1.08(1.11)と両指数とも低下。それにもかかわらずLMEインデックスが上昇している。

このことは、中国の需給面というよりも、1.中国外の需要が旺盛、2.供給の影響、3.ドル安進行に伴う投機的な動き、のいずれかの要因によるものと考えられるが、中国以外の需要回復はもちろんあるが、2.3.の影響が大きいと考えられる。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引しているのは中国の住宅セクターであるが、4月の中国の建設業PMIは57.4(62.3)と、閾値の50を上回っているが急減速している。

住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるがその「増加ペース」が鈍化していることは、やはり先行きの住宅向けの需要が減速する可能性が高まりつつあることを示唆している。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・LMEのファンド筋のポジションは、銅、亜鉛でロングが減少、その他は増加した。特に銅はショートも増加しておりやや弱気に転じている。

その他はロング増加・ショート減少が確認されているが逆に「下落時のポジションが軽い」ことから、下げ局面入りした時の下げ幅は大きくなると予想される。

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲6.8%の308億ドル(前週 330億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲3.1%の6,410.3千トン(前週 6,617.8千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。

ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていること、先物取引市場での監視強化(証拠金引き上げや値幅制限、投機取引の監視など)から、徐々に水準を切り下げる展開を予想。

また、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

また、Q221には邯鄲市も生産管理措置を導入する見通しであり、鉄鋼製品供給は制限される可能性が高い。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格は高値圏を維持しており、鉄鉱石価格も高止まりしている。

4月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は45.4(前月47.9)と減速した。指数の内訳を見ると新規受注はそれなりに堅調であるものの、生産が落ち込んでいることが影響した。上述の唐山市を中心とする、環境規制強化の中での生産減少が総合指数悪化に寄与した。

しかし、生産が落ち込んでいるものの完成品・原材料とも在庫水準は若干切り上がっている。絶対水準自体が低いので引き続き完成品・鉄鋼原料とも需給はタイトとみられる。

目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが1.29(1.30)とやや低下、新規受注原材料レシオは1.25(1.18)と水準は高い。経験則になるがこのレシオが1を超えると各種製品価格の上昇が顕著になる。

4月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比+16.2%の117万4,000トン(前月+15.8%の132万トン)と伸びが増加、過去5年レンジの上限で推移している。

3月の中国粗鋼生産は9,785万トン(前月9,402万トン、2月8,305万トン、1月 9,024万トン、12月9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。

その一方、4月の鉄鋼製品の輸出は前年比+26.2%の797万3,000トン(前月+16.4%の754万トン)と加速し、過去5年平均を維持。国内需要の減速と、海外情勢の回復による輸出需要の増加の両面の影響だろう。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲42万2,000トンの1,514万5,000トン(過去5年平均 1,177万2,000トン)と、例年の在庫取り崩しペースを下回った。中国当局の景気過熱沈静化の動きの影響が顕在化しつつあると言える。

4月の中国の建設業PMIは57.4(62.3)と、閾値の50を上回っているが急減速している。需要は旺盛であるがその「増加ペース」が鈍化していることは、やはり先行きの住宅向けの需要が減速する可能性が高まりつつあることを示唆している。

原料である鉄鉱石の4月の輸入は前年比+3.0%の9,857万トン(前月+18.9%の1億211万トン)と鈍化した。しかしそれでもこの時期の輸入量としては過去5年のレンジを大きく上回っている。引き続き鉄鉱石需要は旺盛と見られる。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲270万トンの1億2,835万トン(過去5年平均1億2,750万6,000トン)、在庫日数は25.2日(過去5年平均 30.5日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

3月の中国の原料炭輸入は前年比▲13.0%の491万トン(前月▲39.6%の323万トン)と減少している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比+13万トンの166万トンと過去5年平均の158万8,000トンを上回った。

在庫日数は前週比+0.5日の5.8日と、過去5年の平均である7.0日を下回っており、需要を考慮すると原料炭需給はまだタイトな状態にあると言える。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏での推移を継続すると考える。長期金利の上昇圧力がやや緩和していること、市場での期待インフレ率の高まりで実質金利に低下圧力が掛っていることが材料。また、「金の競合となると(勝手に)期待された仮想通貨が下落」していることで、改めて安全資産としての金需要が戻っていることも高値圏を維持する要因となっている。

とは言え、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まると予想され、中期的な見通しは弱気。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,611ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は270ドルと昨日から▲12ドル低下。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で189ドル、6ヵ月で214ドル、1年で230ドル、5年で165ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、67.6倍。過去1年を基準にすると75倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのではないか。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

金価格が米長期金利の低下で再び高値で推移していることから、投機的な観点でプラチナにも上昇圧力が掛りやすい地合い。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

4月の米自動車販売は年率1,851万台(前月1,775万台、市場予想1,764万台)と回復継続。

中国の4月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+8.8%の225万台(前月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と伸びが減速を始めている。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが290,267枚(前週比 +8,106枚)、ショートが91,378枚(+1,472枚)、ネットロングは198,889枚(+6,634枚)、銀が86,640枚(+243枚)、ショートが35,659枚(+2,105枚)、ネットロングは50,981枚(▲1,862枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが38,874枚(前週比 ▲864枚)ショートが13,060枚(+589枚)、ネットロングは25,814枚(▲1,453枚)

パラジウムが6,120枚(▲26枚)、ショートが3,583枚(+218枚)ネットロングは2,537枚(▲244枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

トウモロコシ・大豆は軟調な推移になると考える。これまでラニーニャ現象が価格上昇要因となっていたが、米海洋気象局はラニーニャが終了したと宣言したことで、テクニカルな売りの動きが強まると予想されるため。

今後は夏場から秋の収穫期にかけてのエルニーニョ現象発生が材料視されることになり、総じて軟調な推移になりやすい。当面はチャートのテクニカル分析に基づくチャートポイントが価格の目処となる。

ただし、米需給報告・作付け意向面積の結果、中国の需要継続を背景に需給タイト化観測は根強く、下落余地も限定されると考える。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。当初懸念されていた食害発生のリスクは低下している。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210517update.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・5月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.5、172.0)大豆 50.8Bu/エーカー(50.9、50.2)小麦 50.0Bu/エーカー(NA、49.7)

・5月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億2,931万Bu、141億8,200万Bu)大豆 44億500万Bu(44億3,105万Bu、41億3,500万Bu)小麦 18億7,200万Bu(18億7,715万Bu、18億2,600万Bu)

・5月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(NA、26億7,500万Bu)大豆 20億7,500万Bu(NA、22億8,000万Bu)小麦 9億Bu(NA、9億6,500万Bu)

・5月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億700万Bu(13億2,715万Bu、13億5,200万Bu)大豆 1億4,000万Bu(1億3,319万Bu、1億2,000万Bu)小麦 7億7,400万Bu(7億5,132万Bu、8億5,200万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)

・5月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,987万ha(1,971万ha、1,972万ha)大豆 3,850万ha(3,864万ha、3,847万ha)

・5月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億642万トン(1億112万トン、1億897万トン) 単収 5,355kg/ha(5,132Kg/ha、5,526kg/ha)大豆 1億3,541万トン(1億3,614万トン、1億3,554万トン) 単収 3,517kg/ha(3,526Kg/ha、3,523kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが544,062枚(前週比 ▲36,895枚)、ショートが84,584枚(+4,483枚)ネットロングは459,478枚(▲41,378枚)

大豆はロングが284,732枚(▲14,745枚)、ショートが56,391枚(+2,822枚)ネットロングは228,341枚(▲17,567枚)

小麦はロングが128,954枚(+919枚)、ショートが103,206枚(▲506枚)ネットロングは25,748枚(+1,425枚)

◆本日のMRA's Eye


「気象に左右される農産品~今年は年末にかけて乱高下か」

穀物を初めとする農産品価格が高値圏で推移している。穀物に関しては昨年の春先以降、価格が顕著に上昇しているが、コロナの影響による輸出市場の流動性の枯渇懸念や、多くの穀物の最大輸入国である中国の国内で豚熱の影響が緩和、養豚数の増加に伴い飼料需要が増加したことに加え、飼料需要低迷時に油脂の国内供給が減少して食用油の需要が増加、中国の穀物輸入が増加したことが要因である。

またこの間バイデン政権が誕生し、米国も欧州の規制に歩調を合わせて脱炭素政策を進める方針を決定、これによって2005年の米ブッシュ大統領が2005年エネルギー政策法以来初めてとなる「政策転換による需要構造の変化」が起きる可能性が高まった。

つまり、既にトウモロコシの需要の4割を占めるエタノール向け需要に加え、大豆油をバイオ燃料として用いる可能性が高まったのだ。こうした多くの需要面の材料に加え、供給減少が重なったため価格は大幅な上昇となった。

このコラムでは何回か指摘しているが、世界の農産品価格はこの20年、エルニーニョ現象よりもラニーニャ現象が発生したときの方が価格が上昇しているケースが多い。

直感的にエルニーニョ現象の時の方が異常気象が発生しやすく、より、農産品の生産に影響がでる印象が強いが数字を見ると必ずしもそうではない。

エルニーニョ現象・ラニーニャ現象の定義は国によって異なるが、データが取得・加工しやすい米国海洋気象局のデータを元にすると昨年8月から始まったラニーニャ現象はようやく終了した模様で、米海洋気象局は5月13日にラニーニャ現象が終了し、中立状態になったと発表した。

そして67%の確率で6月~8月にかけてはラニーニャ現象・エルニーニョ現象とも発生しない状態になると予想している。過去の例を見ると、これを受けて多くの農産品価格が下落する可能性が高い。

主要穀物だけ取り上げてみても、トウモロコシ、小麦、大豆とも価格に対する影響力が大きい投機筋の直近のネット買越しポジションは、トウモロコシが過去5年レンジを遙かに上回る水準の買越しとなり、大豆も5年レンジを越え、小麦も過去5年レンジの上限近辺の買越しとなっている。

基本的に投機目的の市場参加者は現物を必要としないため、このポジションは早晩解消することになる。足下、米景気の回復期待が高まり、米FRBがどのタイミングで金融緩和を解除するとの期待が高まる中でドル高圧力が強まる、緩和解除がなかったとしても他国と比較した時の景況感格差でドル高が進行する、というシナリオがメインシナリオとなる可能性が高い。

ドル高進行は多くのドル建て商品についてファイナンシャルな面で売り材料となる。そのため、主要穀物価格はこれから夏場に掛けて下落する可能性が高いと考えるべきだろう。

ただ、冒頭の解説通り、環境規制強化の流れの中で構造的な需要変化が起きていること、中国の輸入需要は旺盛であることから調整すると言っても下落余地は比較的限定されると見ている。

しかし、ここで気にしておきたいのは、今後エルニーニョ現象が発生する可能性が高い点だ。

上述の通りエルニーニョ現象発生時は農産品価格が下落しやすいのだが、今回エルニーニョ現象が発生する可能性があるのが夏から秋にかけて。つまり米国のハリケーンシーズンに重なる。過去のハリケーンはラニーニャ現象の時に勢力が弱く(ただし雨量は多い)、エルニーニョ現象の時に勢力が強い。重要な北米の収穫時期に農地やインフラが破壊される可能性があるということである。

さらには年末から来年初にかけて再びラニーニャ現象の発生を指摘する気象予報士もおり、この場合、年末から年明けにかけて南半球の生産に悪影響が出て、価格が上昇する今年のような展開になる可能性も否定出来ない。

今年の後半から来年にかけての農産品価格は、極めて変動性の高い相場展開になると予想される。

◆主要ニュース


・4月日本全国百貨店売上高 前年比+167.0%の3,179億円(前月+21.8%の4,077億円)
 東京都区部百貨店売上高 +186.2%の862億円(+18.5%の1,101億円)

・4月シカゴ連銀製造業活動 0.24(前月1.71)

・米国、日本を渡航中止先に。コロナの感染拡大で。

・FRBブレイナード理事、「パンデミックからの米経済再開に伴い、インフレの高進が予想される。ただ持続的なオーバーシュートに繋がるリスクは低い。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・IAEAとイラン、イランへの核査察を巡る合意を1ヵ月延長することを決定。

・エジプト シシ大統領とバイデン大統領が電話会談。ガザ地区の問題解決に向けて協議。
・米ブリンケン国務長官、イスラエルをはじめとする中東諸国を歴訪へ。イスラエルとハマスの停戦遵守や再発防止に関して協議。

・イラン ザリフ外相、欧州諸国を歴訪。

・米ブリンケン国務長官、「核開発に関する遵守で何をすべきかイランは把握していると思うが、やるべきことを行う決断の用意や意思があるかどうかは米国はまだ把握していない。」

【メタル】

・中国Huayou Cobalt、インドネシアにニッケル湿式製錬のJV設立で合意。

・チリ議会に提出された氷河近くでの鉱山創業を規制する法案に関し、Codelcoは「最大40%銅の生産が減少する可能性がある」との書簡を送付。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +10.70%/ +34.58%
2.NYM WTI ( エネルギー )/ +3.88%/ +36.13%
3.DME Oman ( エネルギー )/ +3.49%/ +31.81%
4.ICE Brent ( エネルギー )/ +3.04%/ +32.16%
5.NYM灯油 ( エネルギー )/ +2.71%/ +38.32%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲3.62%/ +8.76%
65.SHFアルミ ( ベースメタル )/ ▲3.52%/ +15.46%
64.ICEココア ( その他農産品 )/ ▲2.73%/ ▲8.22%
63.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲2.60%/ +7.57%
62.CBT小麦 ( 穀物 )/ ▲1.78%/ +3.40%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,393.98(+186.14)
S&P500 :4,197.05(+41.19)
日経平均株価 :28,364.61(+46.78)
ドル円 :108.75(▲0.21)
ユーロ円 :132.85(+0.11)
米10年債 :1.60(▲0.02)
中国10年債利回り :3.07(+0.00)
日本10年債利回り :0.08(▲0.00)
独10年債利回り :▲0.14(▲0.01)
ビットコイン :39,024.16(+5323.61)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :28.88(+0.16)
エネルギー :27.76(+1.33)
ベースメタル :31.36(+1.75)
貴金属 :18.78(▲0.47)
穀物 :30.00(▲1.83)
その他農畜産品 :30.78(▲0.08)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :31.97(+2.72)
Brent :29.05(+1.79)
米天然ガス :31.52(+2.36)
米ガソリン :28.18(+0.74)
ICEガスオイル :24.46(+0.57)
LME銅 :28.68(+0.58)
LMEアルミニウム :26.01(+4.77)
金 :19.95(▲1.26)
プラチナ :21.81(▲0.44)
トウモロコシ :42.70(▲2.19)
大豆 :19.95(▲1.26)

【エネルギー】
WTI :66.05(+2.47)
Brent :68.46(+2.02)
Oman :67.30(+2.27)
米ガソリン :211.77(+4.92)
米灯油 :204.20(+5.38)
ICEガスオイル :556.75(+10.25)
米天然ガス :2.89(▲0.02)
英天然ガス :62.39(▲0.35)

【貴金属】
金 :1881.02(▲0.23)
銀 :27.77(+0.21)
プラチナ :1178.28(+6.03)
パラジウム :2736.23(▲48.69)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,884(▲144:16C)
亜鉛 :2,942(▲56:10.5C)
鉛 :2,156(▲58:12.5C)
アルミニウム :2,337(▲97:32C)
ニッケル :16,824(▲259:44C)
錫 :29,206(▲367:2789B)
コバルト :43,615(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9983.00(+82.00)
亜鉛 :2948.00(▲17.50)
鉛 :2139.00(▲57.00)
アルミニウム :2390.00(+10.50)
ニッケル :17135.00(+405.00)
錫 :29535.00(▲45.00)
バルチック海運指数 :2,869.00(+45.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :212.05(▲3.59)
SGX鉄鉱石 :205.3(▲2.53)
NYMEX鉄鉱石 :208.2(▲0.93)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :124.5(+3.00)
大連原料炭先物 :258.75(+3.86)
上海鉄筋直近限月 :4,960(▲154)
上海鉄筋中心限月 :4,953(▲205)
米鉄スクラップ :615(±0.0)

【農産物】
大豆 :1522.75(▲3.50)
シカゴ大豆ミール :400.20(+1.30)
シカゴ大豆油 :65.13(▲0.36)
マレーシア パーム油 :4232.00(▲159.00)
シカゴ とうもろこし :657.25(▲2.25)
シカゴ小麦 :662.25(▲12.00)
シンガポールゴム :231.50(▲2.00)
上海ゴム :13495.00(+160.00)
砂糖 :16.83(+0.16)
アラビカ :149.00(▲1.10)
ロブスタ :1451.00(±0.0)
綿花 :82.82(±0.0)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :113.35(▲0.88)
シカゴ生牛 :116.75(▲0.93)
シカゴ飼育牛 :136.28(▲0.95)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。