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堅調な中国統計とドル安で堅調
  • MRA商品市場レポート

2021年5月18日 第1956号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「堅調な中国統計とドル安で堅調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は穀物を中心に農産品が下落したが、その他の景気循環系商品が物色される流れとなった。

中国の主要統計は市場予想を若干下回ったものの同国の景気拡大が継続していることを確認する内容だったこと、実質金利低下の影響でドル安が進行したこともあってドル建て資産が広く物色される流れとなった。

穀物はこのコラムでも主張しているが、予想取りラニーニャ現象の終了宣言を切っ掛けにこれまで積み上がってきた投機筋の手仕舞い売りが加速しているとみられる。

昨日最も上昇したのが米天然ガス。気温上昇でエアコン向けの需要が増加するとみられたことが材料。次いで上昇が顕著だったのは亜鉛。鋼材需要増加が価格を押し上げている形。

【本日の見通し】

本日は新規手がかり材料に乏しく、昨日の上昇もあって一旦手仕舞い売りに押される展開が予想される。しかし、状況に大きな変化がないため利食い売り程度であり高値圏を維持すると予想。

穀物セクターは、ラニーニャ現象収束が売り材料となっているため当面軟調推移だがこの数日の下落が大きかったことから一旦買い戻しが入るか。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は上昇した。ドル指数が断続的に下落し、実質金利低下に歩調を合わせドル安が進行したことがファイナンシャルな面で価格を押し上げた。

石炭価格(豪州炭)は下落。中国の経済活動の回復や脱炭素に伴う供給減少が引き続き材料視され価格が高値を維持しているが、中国の石炭港湾在庫が順調に積み上がっており、徐々に調達圧力は弱まる公算。

こうした動きもあり、中国の石炭輸入動向の指標の1つであるバルチック海運指数は大幅に続落。欧米の航空機による移動制限解除の動きが一部始まっていることで、今後緩和の見込み。

JKMは大幅に上昇して10ドルを上回った。LNG調達で競合する欧州はロシアのガス供給枠割り当てで下落したが、時間的にこのニュースが反映されなかった可能性。

欧州天然ガスはアジアの上昇を受けて上昇したものの、ロシアの決定を受けて取引後半に下落。米天然ガスは今後2週間の気温上昇予報と、広くエネルギーが物色される流れに連れる形となった。

5月3日~9日の世界のLNG取引740万トンのうち260万トンがスポットで取引された。豪州とエジプトが供給のトップ2。中国は鉱物資源分野で制裁をしている豪州から主に調達。

本日は目立った材料に乏しい中、前日の反動で下落すると予想する。

石炭・LNGは夏に向けた在庫積み増しの動きがアジア・欧州で旺盛とみられ、高値圏を維持すると予想。ただしLNGのタンカーレートを見るに、夏場に向けた調達はそろそろピークとなる可能性。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は堅調な推移となった。中国の固定資産投資や工業生産が市場予想を下回ったものの、不動産投資などと合わせてみると総じて好調な内容であり、LME指定倉庫在庫の減少とドル安進行が買い材料となった。

本日は目立った新規手がかり材料に乏しい中、主に中国の需要増加と供給制限の継続、ドル安進行を背景とする投機買いの回復で堅調な推移を予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物は下落した。

中国の固定資産投資などがやや市場予想を下回ったことで鉄鋼製品価格が下落したが、鉄鋼原料は港湾在庫水準の低さからまだ調達需要が旺盛と見られ買いが入った。

本日も、鉄鋼製品価格が鉄鉱石価格(先物)を牽引しているため、鉄鋼製品需給がタイトであることから鉄鉱石価格は高止まりすると予想。

豪州原料炭は中国との対立で低水準も底堅い展開に。

◆貴金属

実質金利の低下とドル安進行が金需要を押し上げている。商品インフレを指摘する向きも多いが、この数日はリスク・プレミアムの上昇による上昇であり、思惑的な買いが価格を押し上げていると考える。

銀価格は上昇、プラチナも上昇したが株安で小幅高、パラジウムも小幅高となった。

本日も長期金利動向・為替動向に左右されるが、手がかり材料に乏しく、高値圏でもみ合うものと予想。

◆穀物

穀物価格は大幅に続落。輸出統計は増加が確認されたものの、米海洋気象局のラニーニャ収束宣言以降、下落傾向が強まっており、投機筋の手仕舞いが続いている模様。

当面はチャートのテクニカル分析に基づくチャートポイントが価格の目処となるが、50日移動平均線が目先の下値目処に。トウモロコシは620セント、大豆は1,480セント、小麦は670セント。

2021年5月13日時点の米主要穀物輸出検証高は以下の通り増加。トウモロコシ 1,892.24千トン(+175.94千トン)大豆 308.82千トン(+64.76千トン)小麦 658.51千トン(+94.91千トン)

本日はこの数日の下落が余りに大きかったため、一旦買い戻しが入ると考える。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日発表された中国の重要統計は、不動産セクターの減速が確認出来なかったが、固定資産投資や工業生産などは伸びがやや鈍化する形となり、まだらな減速とまだらな回復が入り交じる形となった。

工業生産は前年比+19.9%(市場予想+21.1%、1-3月期+24.5%)、4月は前年比+9.8%(+10.0%、+14.1%)と前年比で見た場合に高い水準を維持したが伸びは減速している。

固定資産投資も年初来累計で前年比+19.9%(+20.0%、1-3月期+25.6%)と減速。公的部門(+25.3%→+18.6%)、民間部門(+26.0%→+21.0%)ともに減速している。

また、小売売上高は年初来で+29.6%(+31.9%、+33.9%)とより減速感が鮮明であり、個人消費の回復が遅れていることを確認する内容だった。ただ、GDPに占める比率が4割程度と低いため、このセクターの回復の遅れの影響は大きくない。

一方、伸びの抑制を行っている不動産投資は前年比+21.6%(市場予想+20.0%、1-3月期+25.6%)と前月は下回ったものの市場予想は上回っており、想定以上に住宅セクターの沈静化が遅れていることを示している。

結局、建材需要の増加で鉱物資源セクターの価格は堅調に推移することになるだろう。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。

財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならないが、足下、どの中央銀行・政府も景気過熱は意識しているものの沈静化させるタイミングと判断していないため、しばらくは顕著な価格上昇リスクとなる見込み。

常識的に考えると今年の年末頃からテーパリング開始の見通しとなるが、来年の米中間選挙を控えて米政権がテーパリング実施にクギを刺す可能性がある。この場合、2022年にかけて、さらにリスク資産価格が上昇する可能性も。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生、効くと期待しているワクチンが変異種などを対象にそれほど今夏がなかった場合、など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。

これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は高値でもみ合うものと考える。最大消費国である米国の経済統計は良好なものが多いこと、DOEやOPECなどの見通しは需給ファンダメンタルズがさらにタイト化する見通しであることが背景。

しかし、OPECの増産バイアスは強まり、米国のイランに対する制裁が解除される可能性がたかまっていること、コロナの変異種拡大の影響が続くインドや欧州の回復にはまだ時間がかかること、米景気の回復期待で米長期金利上昇・ドル高圧力がかかるシナリオは依然、メインシナリオであり調整圧力が上昇圧力を上回る可能性は低くない。

なお、米国のイラン核合意復帰に向けた動きが進んでおり、サウジアラビアも米国の軍事的な支援を得られなくなったことでイランとの距離を縮める動きを見せていることから、当面、原油価格には下押し圧力になると見られる。

ただ、イスラエル・パレスチナの対立がイランに波及する場合(イスラエルに対する攻撃をしているハマスを支援している可能性。ハマスはスンニ派だが、イランが反イスラエルの文脈で武器を供与したことあり)。

金融面に関しては、常識的に考えれば経済活動の再開で2022年頃(早ければ今年の年末)から米国でテーパリングが始まり、過去の例を考えると長期金利の上昇などを通じてリスク資産価格には一時的に調整圧力が強まる可能性は高い。そのため、2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク)。

同時に変異株が猛威を振るい、ワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングやパイプライン敷設を制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合。

リスクシナリオの位置づけだったが、「巨大なイスラム圏」ができることにはならないが、バイデン政権誕生によってサウジアラビアはイランと関係改善に動かざるを得なくなっており、域内の緊張緩和観測が強まっている。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値を維持すると考える。中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が旺盛と考えられるため。LNG価格の上昇も価格上昇を後押し。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

4月の石炭輸入は前年比▲29.8%の2,173万トン(前月▲1.8%の2,733万トン)と減少に転じた。中国国内の電力需要が回復していることで輸入が増加していたが、調達に目処が立った可能性がある。

ただ、中国の石炭輸入需要の指標であるバルチック海運指数が高い水準を維持していることを考慮すると、まだ輸入は高水準で推移する可能性が高いと考える。

燃料炭の港湾在庫の水準を見るに、需要減速・国内生産が同時に起きていると予想される。よって、石炭価格にも徐々に下押し圧力が掛りやすくなることが予想される。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれること、ロシアの欧州向けのガス供給が制限される(増枠がないということ)ことから、石炭価格と歩調を合わせ、堅調な推移になると予想。

3月の中国のLNG輸入は前年比+34.6%の564万トン(前月555万トン)と大幅な増加となっている。徐々に中国も石炭からガスへのシフトが起きていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・ロシア・ウクライナの対立で、欧州向けのガス供給が制限される場合、LNGカーゴ市場の需給タイト化で価格の上昇要因。

・最大供給国であるロシアの増産(下落要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが650,118枚(前週比 ▲8,559枚)ショートが153,557枚(▲5,107枚)ネットロングは496,561枚(▲3,452枚)

Brentはロングが385,312枚(前週比▲14,452枚)ショートが89,479枚(+6,285枚)ネットロングは295,833枚(▲20,737枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は高値圏を維持すると予想する。

各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、中国のみならず、米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(インフラ投資は0.6兆ドル程度)の追加対策を実施の計画であり、中国も7月の共産党結党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けると見られるため。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

また、投機的な買いが再び復活しており、投資銀行を中心に「脱炭素」をテーマに市場参加者に非鉄金属に投資を促す動きが強まっていることから、投機的な買いも価格を当面高値に押し上げることになるだろう。

弊社はベンチマークである銅の価格が、指定倉庫在庫の水準から判断するに1,000ドル程度高いと見ていたが、「テーマ性(今は市場では「脱炭素銘柄」とされている)があること」から、水準感は9,000ドル~11,000ドルに切り上がっていると判断せざるを得ない。

しかし、それでも中期的には調整圧力が強まる展開になるとの予想は、現時点では変更する必要はないと考えている。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強めていること、米経済統計回復に伴うドル高進行、早ければ2021年末頃から始まる可能性がある、米テーパリング開始の可能性、生産国の生産が回復する可能性が高いことが材料。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

4月の中国製造業PMIは51.1(前月51.9)と市場予想の56.1を大きく下回った。中国政府も投資主導による景気の過熱に配慮せざるを得ない状況になっていると考えられ、総じて指数の内数はほとんど水準を低下させている。

新規受注は52.0(53.6)と前月から▲1.6低下、輸出新規受注が50.4(51.2)と▲0.8の低下となった。このことは中国国内の需要の伸びが減速していることを示唆している。

新規受注在庫レシオは、完成品が1.11(前月1.15)、原材料が1.08(1.11)と両指数とも低下。それにもかかわらずLMEインデックスが上昇している。

このことは、中国の需給面というよりも、1.中国外の需要が旺盛、2.供給の影響、3.ドル安進行に伴う投機的な動き、のいずれかの要因によるものと考えられるが、中国以外の需要回復はもちろんあるが、2.3.の影響が大きいと考えられる。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引しているのは中国の住宅セクターであるが、4月の中国の建設業PMIは57.4(62.3)と、閾値の50を上回っているが急減速している。

住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるがその「増加ペース」が鈍化していることは、やはり先行きの住宅向けの需要が減速する可能性が高まりつつあることを示唆している。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を行う場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。特にエネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響を免れない状況に(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・LMEのファンド筋のポジションは、アルミと錫がロングが減少、ショートも減少したがロング解消の圧力が強かった。

それ以外の金属は全てロング増加とショート減少が顕著であり、明らかに投機筋はアップサイドにベットしている状況。しばらくアップサイドモメンタムは強い状態が続きそうだ。

ただし、ロングの増加とショートの減少は、「価格面でのネガティブ材料」が出たときに、ロングの解消とショートの新規積み上げを容易にするため、相応に下落リスクが高まっていることも認識すべきである。

・LME投機筋買い越し金額 前週比+8.4%の330億ドル(前週 305億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+3.1%の6,617.8千トン(前週 6,418.5千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていることから、徐々に住宅向けの需要は減速しよう。

また、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年3月20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

また、Q221には邯鄲市も生産管理措置を導入する見通しであり、鉄鋼製品供給は制限される可能性が高い。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格の上昇もあって、鉄鉱石価格には下押し圧力がそれほど強まっていない状況。

4月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は45.4(前月47.9)と減速した。指数の内訳を見ると新規受注はそれなりに堅調であるものの、生産が落ち込んでいることが影響した。上述の唐山市を中心とする、環境規制強化の中での生産減少が総合指数悪化に寄与した。

しかし、生産が落ち込んでいるものの完成品・原材料とも在庫水準は若干切り上がっている。絶対水準自体が低いので引き続き完成品・鉄鋼原料とも需給はタイトとみられる。

目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが1.29(1.30)とやや低下、新規受注原材料レシオは1.25(1.18)と水準は高い。経験則になるがこのレシオが1を超えると各種製品価格の上昇が顕著になる。

4月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比+16.2%の117万4,000トン(前月+15.8%の132万トン)と伸びが増加、過去5年レンジの上限で推移している。

3月の中国粗鋼生産は9,402万トン(前月8,305万トン、1月 9,024万トン、12月9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。

その一方、4月の鉄鋼製品の輸出は前年比+26.2%の797万3,000トン(前月+16.4%の754万トン)と加速し、過去5年平均を維持。国内需要の減速と、海外情勢の回復による輸出需要の増加の両面の影響だろう。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲75万8,000トンの1,556万7,000トン(過去5年平均 1,233万6,000トン)と、例年よりも在庫水準は高いが、既に在庫の取り崩し時期に突入している。在庫の減少ペースは再び例年を上回っている。

4月の中国の建設業PMIは57.4(62.3)と、閾値の50を上回っているが急減速している。需要は旺盛であるがその「増加ペース」が鈍化していることは、やはり先行きの住宅向けの需要が減速する可能性が高まりつつあることを示唆している。

原料である鉄鉱石の4月の輸入は前年比+3.0%の9,857万トン(前月+18.9%の1億211万トン)と鈍化した。しかしそれでもこの時期の輸入量としては過去5年のレンジを大きく上回っている。引き続き鉄鉱石需要は旺盛と見られる。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲27万5,000トンの1億2,830万トン(過去5年平均1億2,750万6,000トン)、在庫日数は25.2日(過去5年平均 30.5日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

3月の中国の原料炭輸入は前年比▲13.0%の491万トン(前月▲39.6%の323万トン)と減少している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比+22万トンの145万トンと過去5年平均の147万8,000トンを下回っている。

在庫日数は前週比+0.8日の5.3日と、過去5年の平均である6.5日を下回っており、需要を考慮すると原料炭需給はまだタイトな状態にあると言える。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏での推移を継続すると考える。長期金利の上昇圧力がやや緩和していること、リスクテイク回復の中ドル安傾向であることが材料。しかし、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まることから、中期的な見通しは弱気。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,629ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は237ドルと昨日から+28ドル上昇。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、66.3倍。過去1年を基準にすると80倍、5年でも80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのではないか。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。これまで、各国の自動車セクターの回復期待と、主要生産国である南アフリカの供給不安が価格を押し上げている。

ただし米長期金利上昇に伴う、ベンチマークの金価格の調整や、南アフリカのコロナの影響緩和期待で下押し圧力が強まることになるだろう。上値も重い。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

コロナショック後、パラジウム価格は基本的にETF価格との連動性が高まった(自動車向けの需要減少で余剰が発生したため)が、足下、ETFの残高の変動以上に価格が上昇している状況。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

3月の米自動車販売は年率1,775万台(前月1,567万台、市場予想1,638万台)と急回復した。

中国の3月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+76.5%の252万5,000台(前月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と高い水準を維持している。

ただし2019年比では±0.0%であり、横ばい。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが282,161枚(前週比 +11,967枚)、ショートが89,906枚(▲9,547枚)、ネットロングは192,255枚(+21,514枚)、銀が86,397枚(+7,539枚)、ショートが33,554枚(+2,563枚)、ネットロングは52,843枚(+4,976枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが39,738枚(前週比 ▲156枚)ショートが12,471枚(+808枚)、ネットロングは27,267枚(▲964枚)

パラジウムが6,146枚(+107枚)、ショートが3,365枚(+411枚)ネットロングは2,781枚(▲304枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

トウモロコシ・大豆は軟調な推移になると考える。これまでラニーニャ現象が価格上昇要因となっていたが、米海洋気象局はラニーニャが終了したと宣言したことで、テクニカルな売りの動きが強まると予想されるため。

当面はチャートのテクニカル分析に基づくチャートポイントが価格の目処となる。

ただし、米需給報告・作付け意向面積の結果、中国の需要継続を背景に需給タイト化観測は根強く、下落余地も限定されると考える。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。当初懸念されていた食害発生のリスクは低下している。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210517update.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・5月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.5、172.0)大豆 50.8Bu/エーカー(50.9、50.2)小麦 50.0Bu/エーカー(NA、49.7)

・5月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億2,931万Bu、141億8,200万Bu)大豆 44億500万Bu(44億3,105万Bu、41億3,500万Bu)小麦 18億7,200万Bu(18億7,715万Bu、18億2,600万Bu)

・5月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(NA、26億7,500万Bu)大豆 20億7,500万Bu(NA、22億8,000万Bu)小麦 9億Bu(NA、9億6,500万Bu)

・5月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億700万Bu(13億2,715万Bu、13億5,200万Bu)大豆 1億4,000万Bu(1億3,319万Bu、1億2,000万Bu)小麦 7億7,400万Bu(7億5,132万Bu、8億5,200万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)

・5月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,987万ha(1,971万ha、1,972万ha)大豆 3,850万ha(3,864万ha、3,847万ha)

・5月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億642万トン(1億112万トン、1億897万トン) 単収 5,355kg/ha(5,132Kg/ha、5,526kg/ha)大豆 1億3,541万トン(1億3,614万トン、1億3,554万トン) 単収 3,517kg/ha(3,526Kg/ha、3,523kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが580,957枚(前週比 ▲28,413枚)、ショートが80,101枚(+6,877枚)ネットロングは500,856枚(▲35,290枚)

大豆はロングが299,477枚(▲2,987枚)、ショートが53,569枚(▲1,308枚)ネットロングは245,908枚(▲1,679枚)

小麦はロングが128,035枚(▲8,980枚)、ショートが103,712枚(▲5,263枚)ネットロングは24,323枚(▲3,717枚)

◆本日のMRA's Eye


「銀価格 引き続き投機動向が価格を左右」

銀価格は2020年7月に支持率でトランプ大統領をリードしていたバイデン大統領候補が環境向け投資加速を公約としたことから上昇を初め、2021年4月以降の米長期金利低下と金価格上昇を受け、「基準価格」が上昇した状況が続いている。

銀の供給は鉛・亜鉛鉱山のバイ・プロダクトとしての供給が31.7%、銀鉱山からが26.7%、銅鉱山からが25.3%、金鉱山からが15.7%といずれもバイ・プロダクトとしての供給の比率が高い。そのため、各々の金属の需要動向に供給が左右され、現物需給のコントロールが難しい。

Silver Instituteの分析では、2020年の鉱山生産は前年比▲5.9%の7億8,440万オンスで、プライマリ銀鉱山からの生産は前年比▲▲11.9%、鉛・亜鉛鉱山からの生産は▲7.4%、金鉱山からの生産は▲5.7%の減少となった。

最も影響を受けたのはペルー(▲2,610万オンス)、アルゼンチン(▲1,000万オンス)。しかし、時間はかかるものの恐らく2021年を通じて銀の生産は回復し、2021年の銀鉱山生産は8億4,850万オンスに回復する見込み。

銀は精密機械の接点部品やワイヤとして使われる他、はんだや太陽光発電向けの正極材としても用いられる工業金属である。銀の工業需要は前年比+7.6%の5億2,400万オンスに増加すると見込まれている。

しかし市場で材料とされている「グリーン投資」の中核である太陽光発電向けは前年比+4.0%の1億500万オンスに止まる見込みで、回復の多くが電子部品やはんだといった通常の中核需要の増加に因るもの。

特にIT化(EVも含む)が進む中では電子部品向けの需要に増加圧力が掛りやすい。

しかし、投機を除いた需給バランスは大幅な京急過剰となる見込みであり、投機動向が価格を左右する状態が続くことはほぼ間違いがない。

実際、銀価格動向を複数年俯瞰してみると、需要に占める「投機のシェア」に左右されていることが分る。

今のところ市場参加者は「脱炭素」「景気回復」「IT化」をテーマに銀に買いを入れている。米政府の景気刺激策の中に含まれる個人向け給付の影響で、ETFなどを通じた個人の投機資金も流入しやすくなっており、「祭り」状態が続く可能性は高い。

しかし、投機動向が価格を決めやすい上、取引所在庫の水準は歴史的に見ても最高水準まで増加しており、明確に「余っている」状態といえ、金融政策の変更やドル高進行などの「外的要因」で急落する可能性は否定出来ない。

その観点ではテーパリングが始まる可能性がある今年の年末にかけては下落リスクを意識する必要があると考える。

◆主要ニュース


・4月日本国内企業物価指数 前月比+0.7%(前月+1.0%)前年比 +3.6%(+1.2%)

・4月日本工作機械受注速報  前年比+120.8%の1,239億4,600万円(前月+65.1%の1,278億7,600万円)
 外需+151.3%の879億3,500万円(+102.3%の873億8,900万円)

・4月中国新築住宅価格 前月比+0.48%(前月+0.41%)

・1-4月期中国工業生産 前年比+19.9%(1-3月期+24.5%)、4月前年比+9.8%(+14.1%)

・1-4月期中国固定資産投資 前年比+19.9%(1-3月期+25.6%)
 公的+18.6%(+25.3%)、民間+21.0%(+26.0%)

・1-4月期中国小売売上高 前年比+29.6%の13兆8,373億元(1-3月期+33.9%の10兆5,221億元)、4月+17.7%の3兆3,153億元(+34.2%の3兆5,484億元)

・1-4月期中国不動産開発投資 前年比+21.6%の4兆240億元(1-3月期+25.6%の2兆7,576億元)

・5月ニューヨーク連銀製造業景況感指数 24.3 (前月26.3)
 新規受注 28.9(26.9)
 受注残 21.4(21.2)
 在庫水準 7.1(11.6)
 雇用者数 13.6(13.9)
 6ヵ月先景況指数 36.6(39.8)

・5月米NAHB住宅市場指数 83(前月 83)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・米ブリンケン国務長官、イスラエル・パレスチナ問題についてカタール、エジプト、サウジアラビアの外務大臣と電話会議。

・米バイデン大統領、イスラエルネタニヤフ首相と電話会談、パレスチナ自治区ガザを実効支配するハマスとイスラエルの停戦を支持。
・南アフリカ Eskom、燃料炭価格の値上げに合意。Seriti Resourcesが同社に対する最大の供給者に。

・カテゴリー3サイクロン「Tauktae」、インド西部のグジャラート州に上陸。

・ドイツ連邦海事水路庁、ノルドストリーム2パイプラインのさらなる建設を許可へ。

・ロシア、1,500万立方メートル/日の追加ガス供給キャパシティをウクライナ経由の欧州向けガス供給枠に付与。

【メタル】
・Q321の日本向けアルミ現物プレミアム、180~190ドルで提示。

・南山?業(Shandong Nanshan Aluminum)、インドネシアのアルミナプロジェクトでの生産を開始。最終的に200万トン/年の生産能力に。第一フェーズでは100万トン/年。

・中国のニッケル銑鉄(NPI)価格はステンレス鋼価格の上昇に連れ高。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +5.00%/ +22.45%
2.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ +3.15%/ +10.24%
3.SHF錫 ( ベースメタル )/ +2.83%/ +30.89%
4.銀 ( 貴金属 )/ +2.73%/ +6.70%
5.ICEココア ( その他農産品 )/ +2.63%/ ▲2.46%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲15.26%/ +51.99%
65.ビットコイン ( その他 )/ ▲8.90%/ +54.56%
64.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ ▲4.74%/ +34.81%
63.CBT小麦 ( 穀物 )/ ▲3.78%/ +9.25%
62.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲2.35%/ +20.46%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,327.79(▲54.34)
S&P500 :4,163.29(▲10.56)
日経平均株価 :27,824.83(▲259.64)
ドル円 :109.21(▲0.14)
ユーロ円 :132.71(▲0.05)
米10年債 :1.65(+0.02)
中国10年債利回り :3.14(+0.01)
日本10年債利回り :0.09(▲0.00)
独10年債利回り :▲0.12(+0.02)
ビットコイン :44,816.08(+717.16)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.91(+1.16)
エネルギー :23.51(+0.28)
ベースメタル :27.00(▲0.26)
貴金属 :20.72(+0.43)
穀物 :33.97(+1.45)
その他農畜産品 :29.95(+2.29)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :25.18(+0.35)
Brent :23.24(+0.23)
米天然ガス :23.05(▲0.13)
米ガソリン :24.76(+0.42)
ICEガスオイル :19.85(+0.25)
LME銅 :23.62(▲0.34)
LMEアルミニウム :19.14(▲0.36)
金 :21.39(+0.61)
プラチナ :22.08(+0.27)
トウモロコシ :48.36(+4.3)
大豆 :21.39(+0.61)

【エネルギー】
WTI :66.27(+0.90)
Brent :69.57(+0.86)
Oman :67.70(+0.70)
米ガソリン :215.83(+3.17)
米灯油 :206.04(+2.42)
ICEガスオイル :566.00(+8.75)
米天然ガス :3.11(+0.15)
英天然ガス :67.23(▲1.48)

【貴金属】
金 :1866.90(+23.47)
銀 :28.17(+0.75)
プラチナ :1243.20(+13.71)
パラジウム :2901.75(+6.33)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :10,284(+44:26.5C)
亜鉛 :2,974(+34:20C)
鉛 :2,196(+33:14C)
アルミニウム :2,479(+17:24C)
ニッケル :17,728(+295:5C)
錫 :29,884(+604:2239B)
コバルト :44,095(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :10367.00(+133.50)
亜鉛 :3030.50(+92.50)
鉛 :2206.00(+50.00)
アルミニウム :2496.50(+50.00)
ニッケル :17940.00(+300.00)
錫 :29950.00(+585.00)
バルチック海運指数 :2,939.00(▲138.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :208.84(▲11.80)
SGX鉄鉱石 :211.44(+2.85)
NYMEX鉄鉱石 :214.99(+4.91)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :118.33(+0.33)
大連原料炭先物 :276.29(+12.19)
上海鉄筋直近限月 :5,580(▲14)
上海鉄筋中心限月 :5,620(▲141)
米鉄スクラップ :615(±0.0)

【農産物】
大豆 :1587.50(▲16.25)
シカゴ大豆ミール :414.90(▲8.60)
シカゴ大豆油 :68.97(+0.56)
マレーシア パーム油 :4687.00(▲113.00)
シカゴ とうもろこし :652.50(▲32.50)
シカゴ小麦 :699.75(▲27.50)
シンガポールゴム :234.00(+1.50)
上海ゴム :13090.00(+100.00)
砂糖 :16.99(+0.03)
アラビカ :145.00(+0.75)
ロブスタ :1416.00(▲1.00)
綿花 :82.32(▲0.11)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :108.65(▲2.50)
シカゴ生牛 :115.35(+0.05)
シカゴ飼育牛 :137.93(+0.38)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。