米雇用統計を控えたポジション調整も総じて堅調
- MRA商品市場レポート
2021年5月6日 第1949号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「米雇用統計を控えたポジション調整も総じて堅調」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場はその他農産品や非鉄金属の一角が買われ、貴金属やWTIなどが売られた。明日の米雇用統計を控えたポジション調整的な取引が主体だったと考えられる。
しかし全体では上昇した商品がほとんどであり、市場参加者のリスクテイク意欲は旺盛とみられる。景気への楽観と、ロジスティクスの問題による供給制限が多くの商品価格の押し上げ要因となっている。
昨日、G7外相会合が開催されたが、中国を意識した内容となった。足下、米トランプ政権時代に分断が進んだ各国の協調体制の再構築の動きが強まっている。背景には中国が「メンツ」のために隠蔽したと考えられているコロナ対応への不振がある。
これまでは経済状況が悪化すると中国と妥協点を見いだす動きが強まったが、今回は実際に多数の人がコロナでなくなっており、どの国の為政者も簡単に中国に対して白旗を揚げる、という感じではなくなっている。
このことはコロナ対策に失敗した国の為政者は失脚する可能性が高いことの裏返しでもある。対中国で旧西側諸国が結束を強めようとしているが、失脚する為政者が出てきた場合に政策の舵が逆に切られる可能性もあるため、引き続き、コロナ対応の巧拙は非常に重要なファクターとなるだろう。
また、G7やG20などの主要国会合はこれまでほとんど無視されていたが、非常に重要な会合になった、と認識すべきであるし、商品価格への影響、ロジスティクスへの影響は無視できない。特に中国が入らないG7の重要度はG20以上に高い。
【本日の見通し】
本日は明日の米雇用統計の発表を控えて様子見気分が強く、方向性に欠ける展開が予想される。雇用の安定はFRBの二大責務の1つであり、この統計の改善があれば年内に政策変更(金融緩和策の解除)観測が強まることになるため、むしろ統計の改善が価格の下押し要因となる可能性があるためだ。
しかし、チャート的にも経済統計的にもドル高が進行しやすい地合にある中で、調整売り圧力に押される商品が目立つものと予想する。
本日は、雇用環境を把握する上で、米週間新規失業保険申請件数に注目している(市場予想 538千人、前週 553千人)。
【セクター別動向と見通し】
◆エネルギー
原油価格は上昇後下落した。米石油統計で原油在庫の減少が確認されたことやこの2日間の上昇が顕著だったことから引けに掛けては手仕舞い売りに押される形となった。
昨日発表の米石油統計は予想比で原油・ディスティレートが強気、ガソリンが弱気な内容だった。
原油は生産が横ばい、輸入は減少(▲1.2MBD)、稼働率は回復(+1.1%)、在庫は▲8.0MBの減少となった。在庫日数は▲0.9日の30.9日と、過去5年平均を下回った。在庫減少・稼働率回復の両要因によるもの。
製油所の稼働率は回復し、ほぼ5年平均を回復するに至った。2月の大寒波の影響からの脱却に3ヵ月かかったことになる。
原油価格に影響が大きいクッシング在庫は稼働率が上昇(+2.4%)し、輸入が減少(▲0.2MBD)したが+254KB(+92KB)と増加。クッシングの在庫スペースの稼働率は58.0%(57.0%)と上昇。
石油製品在庫は、ガソリンが増加、ディスティレートは減少した。ガソリンは+0.7MB(前週+0.1MB)、ディスティレートは▲2.9MB(▲3.3MB)となった。
石油製品はコロナショック後以降、出荷動向に注目しているが、米ガソリン出荷は前年比+67.9%の8.95MBD(前週+61.4%の8.93MBD)と回復しているが、コロナの影響がなかった2019年と比較すると▲5.5%(▲5.5%)と低迷している。
ディスティレートは前年比+27.8%の4.11MBD(+17.5%の3.99MBD、2019年比+8.5%(+5.9%))と大幅に回復している。在宅向けの輸送需要(新規)やBtoB需要が回復しているものと見られる。
製品全体では、前年比+34.2%の19.79MBD(+35.5%の19.68MBD、2019年比▲2.0%(▲2.5%))と、2019年比でも回復が続いている。
輸出は▲3.2%の5.13MBD(▲10.0%の5.04MBD、2019年比▲3.5%(▲5.1%))と回復。出荷+輸出は+24.3%の24.92MBD(+22.8%の24.72MBD、2019年比▲2.4%(▲3.0%))と回復基調が続いているが、2019前年比でプラスに回復するにはまだ時間がかかりそうだ。
またさらなる回復のためには、少なくとも米国内の移動制限解除が必要だろう。今のところ米政府はサマーバケーションまでにはワクチン接種を終了させる計画であり、本格的な回復は7月頃になるのではないか。
石炭価格(豪州炭)は高値圏を維持。中国の石炭港湾在庫は過去5年平均を下回っており、国内経済活動の回復と夏場に向けた調達圧力が継続していることが背景(豪州炭は輸入していないが、他国産の石炭を物色するため、海上輸送炭市場需給はタイト化する)。
中国の石炭輸入動向の指標の1つであるバルチック海運指数は昨日も上昇し、この時期としては非常に高い水準に。
中国の鉄鉱石・石炭・大豆の輸入量と同指数の相関性は高いが、足下のバルチック海運指数の上昇は、航空貨物キャパシティの減少と人員確保ができていないことが背景で、必ずしも中国向けのバルクコモディティ需要増加の影響だけではない。
JKMは小幅に下落。夏場に向けた在庫積み増しの動きと、ロシアの欧州向けガス供給の増加がないことがLNGカーゴ需給をタイト化させ、価格の押し上げ要因に。
欧州天然ガスは気温低下を受けて上昇。また、ウクライナ経由のロシアのガス供給割り当て増加がないことも域内供給への懸念が強めている。
そもそも冬場の在庫減少による再積み増し需要が旺盛であり、需給は逼迫しているとみられる。
米国天然ガスは気温上昇で暖房需要が減少していることが売り材料視された。
本日は明日の米雇用統計を控えて様子見気分強く、もみ合うものと考える。
天然ガスは中国の需要が旺盛な環境下、欧州需給の逼迫観測からJKMにも上昇圧力が掛る公算。石炭もLNG価格の上昇を受けて高値維持。
◆非鉄金属
LME非鉄金属価格は高安まちまち。LME指定倉庫在庫の減少は継続しており総じて需給はタイトだが、需給・環境をテーマに投機が買い進んできたこと出価格が上昇したことも事実であり、銅10,000ドル達成を受けて調整圧力が強まった。
LME非鉄金属の投機筋ポジションが発表されたが、ベンチマークであり、かつ、高値圏で推移していた銅は売り越し幅が増加したが、その他の金属は広く買い戻しが入っている。
本日はチャート的にドル高が進行しやすい地合にあること、高値圏にあることから調整売り圧力が強まる展開を予想。ただし、需給バランスはタイトであり、市場参加者は「脱炭素」をテーマにした買いを「入れたい」と考えているため下値余地も限定。
◆鉄鋼・鉄鋼原料
中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は休場、豪州原料炭スワップ先物は小幅に上昇、大連原料炭先物は休場、上海鉄鋼製品先物は休場。
鉄鋼製品価格の上昇もあって鉄鉱原料価格は高止まりしている。
本日も鉄鋼製品価格が高値で推移していることから、鉄鋼原料価格を押し上げる展開が継続すると予想される。
◆貴金属
金価格は上昇。長期金利低下に伴う実質金利低下が価格を押し上げた。銀も金と同様の相場展開だったが前日比マイナスで引けた。プラチナ、パラジウムも金銀価格の下落に押された。
本日は明日の米雇用統計を控えて様子見気分が強いが、チャート的にドル高が進行しやすい地合であり、軟調推移を予想。
◆穀物
穀物価格は総じて堅調な推移となった。ブラジルの生産地での乾燥気候を警戒しており、中国の需要が堅調な中でトウモロコシが上昇、その他の商品も連れ高となった。米グレートプレーンズの乾燥気候も小麦価格の上昇要因に。
需給両面で高値圏での推移が続いているが、ドル指数がチャート的に反転上昇しそうな環境になりつつあるため、投機の手仕舞いも予想されることから本日は軟調推移を予想。
※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。
【昨日のトピックス】
今年のGW中は簡易レポートを作成して配信していたが、今日、このレポートを久しぶりに見る方も多いと思うので、トピックスというよりは4月28日から昨日までの市場を外観する。
セクターで見たときに最も上昇したのが穀物セクター。中国の輸入需要が旺盛であること、米国の作付面積が低水準のままであるリスクが意識されていることが材料視されている。特に、油脂価格の上昇が顕著であり、大豆価格上昇を牽引し、その他の農産品にも影響がでているようだ。
次に上昇が顕著だったのがLME非鉄金属。新規材料は乏しいものの、中国と米国のインフラ投資計画を受けて「テーマ」があることから積極的に物色されている。
また同時に新興国(日本もそうであるが)でコロナの変異株の影響が拡大しており、鉱山生産が低迷していることが価格を押し上げている。工業金属価格の上昇は「脱炭素」ではなく「コロナの影響とそこからの脱却をめざした経済対策・公共投資」の影響とみるのが適切である。
次いでエネルギー。最大消費国である米国のコロナワクチン接種進捗を受けた、消費増加期待が価格を押し上げている。特にこの間の原油価格上昇率はWTIが+2.8%であるのに対して、Brentは+2.5%に止まっている。
次いで上昇が顕著なのは貴金属。想定以上に上昇していた長期金利が、本邦系投資家の長期債の買いで低下していることが材料となっている。
逆に下落しているのは畜産セクター。新規材料に乏しい中、景気に連動し難いこともあり景気循環系商品価格が上昇する中では逆に売られたようだ。ソフトコモディティも同様だが、米住宅セクターの好調を背景とした材木価格の上昇がその他の商品下落を相殺している。
個別商品では材木の上昇が最も顕著で、次いで欧州天然ガス、トウモロコシ、牛乳、もみ米、鉄鉱石、錫、エタノール、オマーン原油、ビットコインとなった。
【マクロ見通しのリスクシナリオ】
・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。
財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。
・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。
この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならないが、足下、どの中央銀行・政府も景気過熱は意識しているものの沈静化させるタイミングと判断していないため、しばらくは顕著な価格上昇リスクとなる見込み。
常識的に考えると今年の年末頃からテーパリング開始の見通しとなるが、来年の米中間選挙を控えて米政権がテーパリング実施にクギを刺す可能性がある。この場合、2022年にかけて、さらにリスク資産価格が上昇する可能性も。
・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生、効くと期待しているワクチンが変異種などを対象にそれほど今夏がなかった場合、など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。
これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。
逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。
・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。
・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。
「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。
・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。
2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。
◆昨日の商品市場(個別)の総括
---≪エネルギー≫---
【原油価格見通し】
原油価格は高値でもみ合うものと考える。最大消費国である米国の経済統計は良好なものが多いこと、本邦系投資家と思われる米国の長期債の買いで米長期金利の上昇が鈍化、ドル安バイアスが強まることが背景。
しかし、OPECの増産バイアスは強まり、米国のイランに対する制裁が解除される可能性がたかまっていること、コロナのロックダウンの影響が広がっている欧州・インドでの需要減速は不可避であること、米景気の回復期待で長期金利上昇・ドル高圧力がかかるシナリオは依然、メインシナリオであり調整圧力が上昇圧力を上回る可能性は低くない。
なお、米国の核合意復帰に向けた動きをイスラエルが強く牽制しており、武力衝突の懸念が高まっているように見えるが、今のところ本格的な武力行使になるとは見ていない(交渉に圧力を掛ける目的以上のものではない)。
常識的に考えれば経済活動の再開で2022年頃(早ければ今年の年末)から米国でテーパリングが始まり、過去の例を考えると長期金利の上昇などを通じてリスク資産価格には一時的に調整圧力が強まる可能性は高い。そのため、2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。
【見通しの固有リスク】
・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク)。
・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。
・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。
・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合
1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる
2.中東以外の産油国の生産者の破綻
3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合
4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)
などが価格上昇要因に。
・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングやパイプライン敷設を制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。
また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。
・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合。
リスクシナリオの位置づけだったが、「巨大なイスラム圏」ができることにはならないが、バイデン政権誕生によってサウジアラビアはイランと関係改善に動かざるを得なくなっており、域内の緊張緩和観測が強まっている。
【石炭価格見通し】
海上輸送石炭価格は高値を維持すると考える。中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が旺盛と考えられるため。LNG価格の上昇も価格上昇を後押し。
中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。
ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。
3月の石炭輸入は前年比▲1.8%の2,733万トンとなったが、前月(▲14.8%の2,077万トン)から大幅に回復した。中国国内の電力需要が回復していることが影響していると見られる。やはりバルチック海運指数の上昇に、中国の石炭輸入需要が寄与していたと見られる。
燃料炭の港湾在庫の水準を見るに、需要減速・国内生産が同時に起きていると予想される。よって、石炭価格にも徐々に下押し圧力が掛りやすくなることが予想される。
【見通しの固有リスク】
・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。
・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。
・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。
・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)
【天然ガス・LNG】
天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれること、ロシアの欧州向けのガス供給が制限される(増枠がないということ)ことから、石炭価格と歩調を合わせ、堅調な推移になると予想。
3月の中国のLNG輸入は前年比+26.2%の873万トン(前月912万トン)と大幅な増加となっている。徐々に中国も石炭からガスへのシフトが起きていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。
長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。
【見通しの固有リスク】
・ロシア・ウクライナの対立で、欧州向けのガス供給が制限される場合、LNGカーゴ市場の需給タイト化で価格の上昇要因。
・最大供給国であるロシアの増産(下落要因)。
・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。
・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。
・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
WTIはロングが650,300枚(前週比 ▲567枚)ショートが160,589枚(+9,705枚)ネットロングは489,711枚(▲10,272枚)
Brentはロングが391,604枚(前週比+4,530枚)ショートが86,505枚(+5,175枚)ネットロングは305,099枚(▲645枚)
---≪LME非鉄金属≫---
【非鉄金属価格見通し】
非鉄金属価格は高値圏を維持すると予想する。
各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、中国のみならず、米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(インフラ投資は0.6兆ドル程度)の追加対策を実施の計画であり、中国も7月の共産党結党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けると見られるため。
これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。
また、投機的な買いの手仕舞いは4月初で一巡(ファイザー社のワクチン開発成功の時期の水準)、投資銀行を中心に「脱炭素」をテーマに市場参加者に非鉄金属に投資を「させたい」と考えている可能性は高く、投機的な買いが価格を当面高値に押し上げることになるだろう。
弊社はベンチマークである銅の価格が、指定倉庫在庫の水準から判断するに1,000ドル程度高いと見ていたが、「テーマ性(今は市場では「脱炭素銘柄」とされている)があること」から、水準感は9,000ドル~11,000ドルに切り上がっていると判断せざるを得ない。
しかし、それでも中期的には調整圧力が強まる展開になるとの予想は、現時点では変更する必要はないと考えている。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強めていること、米経済統計回復に伴うドル高進行、早ければ2021年末頃から始まる可能性がある、米テーパリング開始の可能性、生産国の生産が回復する可能性が高いことが材料。
4月の中国製造業PMIは51.1(前月51.9)と市場予想の56.1を大きく下回った。中国政府も投資主導による景気の過熱に配慮せざるを得ない状況になっていると考えられ、総じて指数の内数はほとんど水準を低下させている。
新規受注は52.0(53.6)と前月から▲1.6低下、輸出新規受注が50.4(51.2)と▲0.8の低下となった。このことは中国国内の需要の伸びが減速していることを示唆している。
新規受注在庫レシオは、完成品が1.11(前月1.15)、原材料が1.08(1.11)と両指数とも低下。それにもかかわらずLMEインデックスが上昇している。
このことは、中国の需給面というよりも、1.中国外の需要が旺盛、2.供給の影響、3.ドル安進行に伴う投機的な動き、のいずれかの要因によるものと考えられるが、中国以外の需要回復はもちろんあるが、2.3.の影響が大きいと考えられる。
これまで非鉄金属価格の上昇を牽引しているのは中国の住宅セクターであるが、4月の中国の建設業PMIは57.4(62.3)と、閾値の50を上回っているが急減速している。
住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるがその「増加ペース」が鈍化していることは、やはり先行きの住宅向けの需要が減速する可能性が高まりつつあることを示唆している。
米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。
足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。
具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。
2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。
【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】
・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。
・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。
・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を行う場合(上昇リスク)。
・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。
コロナの影響もあって、2020年12月1日時点の鉱山生産への影響は全体で184万1,000トン、コロナの影響によるものは112万3,000トン。
精錬品生産で影響を受ける規模が、全体で141万6,000トン、コロナによるものが62万8,000トン。
・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。特にエネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響を免れない状況に(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。
・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。
・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。
また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。
【投機筋のポジション動向】・非鉄金属は銅を除けばアップサイドを意識した動きが強まっている。米中のインフラ投資計画に加え、供給制限が継続していることが材料視されているようだ。
・LME投機筋買い越し金額 前週比+8.8%の305億ドル(前週 280億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+4.5%の6,418.5千トン(前週 6,140.7千トン)
---≪鉄鋼原料≫---
【鉄鋼原料価格見通し】
鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。
またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていることから、徐々に住宅向けの需要は減速しよう。
また、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。
最大生産都市である唐山市は、2021年3月20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。
これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格の上昇もあって、鉄鉱石価格には下押し圧力がそれほど強まっていない状況。
4月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は45.4(前月47.9)と減速した。指数の内訳を見ると新規受注はそれなりに堅調であるものの、生産が落ち込んでいることが影響した。上述の唐山市を中心とする、環境規制強化の中での生産減少が総合指数悪化に寄与した。
しかし、生産が落ち込んでいるものの完成品・原材料とも在庫水準は若干切り上がっている。絶対水準自体が低いので引き続き完成品・鉄鋼原料とも需給はタイトとみられる。
目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが1.29(1.30)とやや低下、新規受注原材料レシオは1.25(1.18)と水準は高い。経験則になるがこのレシオが1を超えると各種製品価格の上昇が顕著になる。
3月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比+16.0%の132万トン(前月+6.9%の108万トン)と増加、過去5年レンジの上限で推移している。
3月の中国粗鋼生産は9,402万トン(前月8,305万トン、1月 9,024万トン、12月9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。
その一方、3月の鉄鋼製品輸出は+16.4%の754万トン(前月490万トン)と加速し、過去5年平均を回復した。国内需要の減速と、海外情勢の回復による輸出需要の増加の両面の影響だろう。
なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲82万トンの1,632万5,000トン(過去5年平均 1,339万2,000トン)と、例年よりも在庫水準は高いが、既に在庫の取り崩し時期に突入している。在庫の減少ペースは再び例年を上回っている。
4月の中国の建設業PMIは57.4(62.3)と、閾値の50を上回っているが急減速している。需要は旺盛であるがその「増加ペース」が鈍化していることは、やはり先行きの住宅向けの需要が減速する可能性が高まりつつあることを示唆している。
原料である鉄鉱石の3月の輸入は前年比+18.9%の1億211万トン(前月+3.8%の9,050万トン)。この時期の輸入量としては過去5年のレンジを大きく上回っている。引き続き鉄鉱石需要は旺盛と見られる。
鉄鉱石港湾在庫は前週比▲28万トンの1億3,310万トン(過去5年平均1億2,799万6,000トン)、在庫日数は25.3日(過去5年平均 30.3日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。一時回復傾向が見られたが、再び低下しており、価格を下支えしよう。
原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。
しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。
3月の中国の原料炭輸入は前年比▲13.0%の491万トン(前月▲39.6%の323万トン)と減少している。
中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比+5万トンの140万トンと過去5年平均の157万トンを下回っている。
在庫日数は前週比+0.2日の5.1日と、過去5年の平均である7.1日を下回っている。再び原料炭需給はタイト化の方向にある。
【見通しの固有リスク】
・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。
・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。
・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。
・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。
---≪貴金属≫---
【貴金属価格見通し】
<<金>>
金は高値圏での推移を継続すると考える。長期金利の上昇圧力がやや緩和していること、リスクテイク回復の中ドル安傾向であることが材料。しかし、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まることから、中期的な見通しはやや弱気。
現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,621ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は164ドルと昨日から+3ドル上昇。
なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。
※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。
<<銀>>
銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、67.5倍。過去1年を基準にすると80倍、5年でも80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。
バイデン政権のグリーン政策期待で上昇してきたが、一連の対策が発表される中で材料一巡、金銀レシオは70倍程度に落ち着きつきつつある。
今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのでは中。
なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。
(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%
金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%
<<PGM>>
プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。これまで、各国の自動車セクターの回復期待と、主要生産国である南アフリカの供給不安が価格を押し上げている。
ただし米長期金利上昇に伴う、ベンチマークの金価格の調整や、南アフリカのコロナの影響緩和期待で下押し圧力が強まることになるだろう。上値も重い。
仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。
パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。
コロナショック後、パラジウム価格は基本的にETF価格との連動性が高まった(自動車向けの需要減少で余剰が発生したため)が、足下、ETFの残高の変動以上に価格が上昇している状況。
自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。
3月の米自動車販売は年率1,775万台(前月1,567万台、市場予想1,638万台)と急回復した。
中国の3月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+76.5%の252万5,000台(前月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と高い水準を維持している。
ただし2019年比では±0.0%であり、横ばい。
【見通しの固有リスク】
・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。
・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。
・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。
・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。
・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。
・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。
環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。
・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは、金はロングが270,717枚(前週比 ▲5,268枚)、ショートが100,098枚(+5,611枚)、ネットロングは170,619枚(▲10,879枚)、銀が76,380枚(+1,213枚)、ショートが33,539枚(+53枚)、ネットロングは42,841枚(+1,160枚)
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
プラチナはロングが40,496枚(前週比 +3,281枚)ショートが11,200枚(▲330枚)、ネットロングは29,296枚(+3,611枚)
パラジウムが5,997枚(+110枚)、ショートが2,993枚(▲199枚)ネットロングは3,004枚(+309枚)
---≪農産品≫---
【穀物価格見通し】
トウモロコシ・大豆は米需給報告・作付け意向面積の結果を受けた需給タイト化観測を背景に、高値圏での推移になると考える。
しかし、米国の作付進捗率は例年を大きく上回っており、もし米国の作付面積が意向面積を上回った場合、エルニーニョ発生の可能性も考慮すると下落リスクが小さくないと弊社は考えている。
Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。当初懸念されていた食害発生のリスクは低下している。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210423update.jpg
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210413DLforecast.jpg
【見通しの固有リスク】
・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。
・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。
・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。
【米農務省需給報告データ】
・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)
・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)
・4月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 172.0Bu/エーカー(NA、172.0)大豆 50.2Bu/エーカー(NA、50.2)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)
・4月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 141億8,200万Bu(NA、141億8,200万Bu)大豆 41億3,500万Bu(NA、41億3,500万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)
・4月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 26億7,500万Bu(26億Bu、25億5,000万Bu)大豆 22億8,000万Bu(22億5,000万Bu、22億3,000万Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億8,500万Bu)
・4月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,200万Bu(13億7,882万Bu、15億200万Bu)大豆 1億2,000万Bu(1億1,789万Bu、1億2,000万Bu)小麦 8億5,200万Bu(8億4,611万Bu、8億3,600万Bu)
・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)
・4月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,972万ha(1,966万ha、1,950万ha)大豆 3,847万ha(3,863万ha、3,846万ha)
・4月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億879万トン(1億785万トン、1億807万トン) 単収 5,526kg/ha(5,477Kg/ha、5,543kg/ha)大豆 1億3,554万トン(1億3,525万トン、1億3,513万トン) 単収 3,523kg/ha(3,501Kg/ha、3,513kg/ha)
【投機筋のポジション動向】
・直近の投機筋のポジションは以下の通り。
トウモロコシはロングが594,192枚(前週比 ▲13,262枚)、ショートが72,629枚(▲12,080枚)ネットロングは521,563枚(▲1,182枚)
大豆はロングが301,810枚(+10,857枚)、ショートが51,177枚(+3,386枚)ネットロングは250,633枚(+7,471枚)
小麦はロングが138,786枚(+7,864枚)、ショートが109,082枚(▲815枚)ネットロングは29,704枚(+8,679枚)
◆本日のMRA's Eye
「ニッケルは上昇も年後半は下落か」
ニッケル価格は2月後半にドル指数が上昇、3月の四半期末を意識した手仕舞い売り(投機筋の利益確定)の動きが強まったことが切っ掛けで水準を切り下げていた。
しかし、この下落局面で中国のニッケル・ステンレスの大手である青山集団が、2020年末までに高品質のニッケルマットの生産体制を整えた、として、2021年10月からHyayou Cobaltに6万トン、CNGR Advanced Materialに4万トン供給する契約を締結した、と3月3日に発表、これが足下の価格下落と相まって、大幅な下落となった。
ニッケル鉱石を巡る市場は、ステンレス向けのNPI(クラス2)の過剰供給と、EV自動車向けの高純度ニッケル(クラス1)の供給不足の構造となっているが、仮にNPIを原料にクラス1ニッケルが製造できるのであれば、LMEニッケル価格の下落要因となる。
しかしニッケル価格は200日移動平均線がサポートラインとして意識され、この水準が下値として強く意識され、結局この水準を割り込むことがなかった。一方、青山集団のニュースについてもやや野心的な計画を報道しており、今年の10月から供給開始というのは相当タイトなスケジュールであるように感じる。つまり、供給増加期待はやや期待先行の可能性は否定できない、ということだ。
また、温室効果ガスの排出量が従来のHPAL法よりも数倍多いことを考えると、欧米の需要家は引き続き、NPI由来のクラス1ニッケルよりも、従来通りのクラス1ニッケルを希望すると考えられるため、ニッケル需給の緩和に本当に寄与するかどうかは不透明だ。
一方、中国のニッケル需要は引き続き堅調であり、ニッケル鉱石の港湾在庫は過去5年の最低水準を下回っている。
中国は景気刺激のために住宅セクターを対象とする対策を行ったとみられ、明らかに住宅販売は好調である。そのため恐らく高級住宅向けと思われるステンレス需要は旺盛で、ステンレス鋼の生産は前年比で堅調に増加しており、これに歩調を合わせる形でニッケル価格は上昇してきた。
中国政府もこの住宅バブルは昨年末頃から警戒してはいるものの、中国政府が7月の共産党結党100周年記念までは景気の減速は是が非でも回避しようとする可能性が高いことを考えると、住宅向けとみられる需要は底堅い推移になるだろう。
ただし、現物プレミアムを見るに中国国内の需要もやや沈静化している可能性は高く、上昇時も上昇余地は限定される可能性は高いと考えられる。
また、フィリピン ドゥテルテ大統領が停止していた鉱山開発の開発を許可、コロナによって停滞した景気を資源セクターの対策を行うことで回復させようともくろんでいる。ただ、実際に開発が始まり、生産がオンスとリームになるのは何年も先であるため、これが需給の緩和要因になるわけではない。
しかし、投機目的の人達からすると「需給緩和観測」を意識指せるため、米景気回復の中でドル高地合になる可能性が高いことを考えると、売り材料となるだろう。
当面は7月以降まで、200日移動平均線を維持しているかどうかがポイントとなるだろう。
◆主要ニュース
・4月インドサービス業PMI 54.0(前月54.6)、コンポジット 55.4(56.0)
・4月ユーロ圏サービス業PMI改定 50.5(速報比+0.2、前月改定49.6)、コンポジット 53.8(+0.1、53.2)
・4月独サービス業PMI改定 49.9(速報比▲0.2、前月改定51.5)、コンポジット 55.8(▲0.2、57.3)
・3月ユーロ圏生産者物価指数 前月比+1.1%(前月+0.5%)前年比 +4.3%(+1.5%)
・4月米ADP雇用統計 前月比+742千人(前月改定+565千人)
・4月米サービス業PMI改定 64.7(速報比+1.6、前月改定60.4)、コンポジット 63.5(+0.7、59.7)
・4月米ISM非製造業景況指数 62.7(前月63.7)、新規受注 63.2(67.2)
輸出向新規受注 58.6(55.5)、受注残 55.7(50.2)、入荷遅延 66.1(61.0)
在庫増減 49.1(54.0)、在庫景況感 46.8(52.7)、雇用 58.8(57.2)
・G7外相会合、対中国で強調姿勢を確認。G7の復権目指す。来月には首脳会合を開催の予定。
◆エネルギー・メタル関連ニュース
【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲8.0MB(クッシング+0.3MB)
ガソリン+0.7MB
ディスティレート▲2.9MB
稼働率+1.1
原油・石油製品輸出 8,072KBD(前週比+261KBD)
原油輸出 2,948KBD(+172KBD)
ガソリン輸出 625KBD(▲59KBD)
ディスティレート輸出 989KBD(▲34KBD)
レジデュアル輸出 140KBD(+44KBD)
プロパン・プロピレン輸出 1,261KBD(+69KBD)
その他石油製品輸出 2,020KBD(+75KBD)
【メタル】
・IEA、グリーンエネルギー転換に伴う地政学的リスクを経過。コバルトやリチウムなどの必須金属の備蓄を検討するべき。
・Q121 Century Aluminum アルミ出荷 195,697トン(前期 194,940トン、前年202,905トン)
・Q121 Antofagasta
銅年初来生産 前年比▲5.7%の183.0千トン(前期 192.6千トン、前年 194.0千トン)
金生産▲9.2%の65.1千オンス(54.7千オンス、59.1千オンス)
2020年の銅生産計画 730千トン~760千トン
キャシュコスト 2,754ドル
CAPEX 160億ドル
・Q121BHP Billiton
鉄鉱石生産 前年比±0.0%59.9百万トン(前期+3%の62.4百万トン)
2021年間生産目標 245~253百万トン(前回見通し245~255百万トン)
原料炭 +4%の9.6百万トン(▲13%の9.5百万トン
39~41百万トン(40~44百万トン)
燃料炭 ▲17%の4.8百万トン(▲41%の3.6百万トン)
18~20百万トン(21~23百万トン)
銅 ▲8%の391.4千トン(▲6%の428.1千トン)
1,535~1,660千トン(1,510~1,645千トン)
Escondida銅山 ▲14%の249.3千トン(▲7%の287.6千トン)
1,010~1,060千トン(970~1,030千トン)
ニッケル ▲2%の20.4千トン(+75%の24.0千トン)
85~95千トン(85~95千トン)
亜鉛 +5%の33,299トン(+86%の41,909トン)
原油 ±0%の11.6MMBBoe(▲16%の23.8MMBoe)
95~102MMBoe(95~102MMBoe)
天然ガス +2%の82.6BCF(▲11%の79BCF)
・Q121Rusal
アルミ生産 前年比▲0.8%の932千トン(前期950千トン)
販売 962千トン(1,028千トン)、3,926千トン(4,176千トン)
アルミナ生産 +1.6%の2,045千トン(2,142千トン)
ボーキサイト生産 3,801千トン(3,539千トン)
・Q121 Nornickel
ニッケル生産 前年比▲10%の46,639トン(前期▲3%の67,956トン)
2021年生産目標 19万トン~20万トン(前回22万トン~23万トン)
銅 ▲21%の91,292トン(▲2%の128,598トン)
33万5,000トン~35万5,000トン(39万トン~41万トン)
パラジウム +40%の76万6,000オンス(▲3%の77万3,000オンス)
235万オンス~241万オンス(271万5,000オンス~284万3,000オンス)
プラチナ +23%の18万4,000オンス(▲1%の18万2,000オンス)
58万オンス~64万オンス(64万7,000オンス~71万1,000オンス)
・インドネシア アネカ・タンバンのQ121ニッケル鉱石生産量は前年比4.2倍の264万ウェットトン、販売は160万ウェットトン。
◆主要商品騰落率
【上昇率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME牛乳 ( 畜産品 )/ +8.56%/ +21.20%
2.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ +6.91%/ +15.79%
3.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ +4.44%/ +9.61%
4.ビットコイン ( その他 )/ +3.88%/ +96.22%
5.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +3.58%/ +9.40%
【下落率上位5商品】
商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CBT大豆油 ( 穀物 )/ ▲1.78%/ +54.03%
65.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲0.98%/ +15.71%
64.プラチナ ( 貴金属 )/ ▲0.84%/ +14.59%
63.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲0.80%/ +6.62%
62.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲0.71%/ +9.08%
※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
◆主要指標
【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,230.34(+97.31)
S&P500 :4,167.59(+2.93)
日経平均株価 :28,812.63(▲241.34)
ドル円 :109.21(▲0.12)
ユーロ円 :131.11(▲0.24)
米10年債 :1.57(▲0.03)
中国10年債利回り :休場( - )
日本10年債利回り :0.10(±0.0)
独10年債利回り :▲0.23(+0.01)
ビットコイン :56,895.44(+2125.05)
【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :22.95(+0.81)
エネルギー :21.87(▲0.66)
ベースメタル :19.20(▲0.99)
貴金属 :19.81(▲0.51)
穀物 :26.16(+0.08)
その他農畜産品 :24.62(+3)
【主要商品ボラティリティ】
WTI :24.71(+0.07)
Brent :22.30(+0.02)
米天然ガス :21.90(▲2.17)
米ガソリン :21.46(▲0.38)
ICEガスオイル :20.67(▲1.74)
LME銅 :14.41(▲1.47)
LMEアルミニウム :11.56(▲0.67)
金 :17.88(▲0.56)
プラチナ :24.01(▲0.04)
トウモロコシ :30.83(▲0)
大豆 :17.88(▲0.56)
【エネルギー】
WTI :65.63(▲0.06)
Brent :68.96(+0.08)
Oman :67.60(+1.05)
米ガソリン :215.13(+0.01)
米灯油 :200.25(+0.37)
ICEガスオイル :559.25(+8.00)
米天然ガス :2.94(▲0.03)
英天然ガス :61.70(+2.13)
【貴金属】
金 :1786.87(+7.81)
銀 :26.49(▲0.02)
プラチナ :1228.53(▲10.36)
パラジウム :2973.52(▲11.40)
※ニューヨーククローズ。
【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,991(+32:1B)
亜鉛 :2,952(▲19:16.5C)
鉛 :2,202(+22:15.5C)
アルミニウム :2,440(+12:6.5B)
ニッケル :18,013(+128:28C)
錫 :29,550(+546:2875B)
コバルト :45,165(±0.0)
(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9932.00(▲18.00)
亜鉛 :2931.00(▲23.50)
鉛 :2169.00(▲15.50)
アルミニウム :2447.50(+18.50)
ニッケル :17890.00(+245.00)
錫 :29770.00(+440.00)
バルチック海運指数 :3,157.00(+104.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :190.23(+0.86)
SGX鉄鉱石 :190.73(+0.90)
NYMEX鉄鉱石 :190.41(+0.69)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :111.83(+0.66)
大連原料炭先物 :休場( - )
上海鉄筋直近限月 :休場( - )
上海鉄筋中心限月 :休場( - )
米鉄スクラップ :580(±0.0)
【農産物】
大豆 :1582.00(+5.00)
シカゴ大豆ミール :424.30(+0.80)
シカゴ大豆油 :66.74(▲1.21)
マレーシア パーム油 :4598.00(+4.00)
シカゴ とうもろこし :753.25(+8.50)
シカゴ小麦 :755.75(+18.75)
シンガポールゴム :227.30(+1.20)
上海ゴム :休場( - )
砂糖 :17.53(+0.41)
アラビカ :148.50(+9.60)
ロブスタ :1506.00(+64.00)
綿花 :86.23(+0.06)
【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :111.38(+0.23)
シカゴ生牛 :114.43(+1.40)
シカゴ飼育牛 :131.48(+1.73)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。