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方向感に欠ける展開~米石油製品出荷鈍化は懸念
  • MRA商品市場レポート

2021年6月10日 第1972号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「方向感に欠ける展開~米石油製品出荷鈍化は懸念」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は方向感に掛ける展開となった。

中国の消費者物価指数・生産者物価指数が発表され、企業の調達コスト上昇が顕著になることを確認する一方、消費者向けの価格転嫁は需要の弱さから進んでいないこと、企業業績の悪化を通じて商品需要に影響がでる可能性が高まっていること、など、どのようにも解釈出来る材料となったため。

また、米石油統計における石油製品出荷の回復遅れ(むしろ減少している)を受け、期待していたほどのペースで米国の景気が回復しないのではとの懸念を強めたことも景気循環系商品価格の下落要因となる一方、同時に金融緩和継続観測を強め、価格を下支える形となった。

結局のところ、当局が「この方向で」という方向性を示さない限り、「良い統計=需要増加(景気循環系商品価格の上昇要因)=金利上昇・テーパリング観測(ファイナンシャルな面で商品価格の下落要因)」となる。

また、「悪い統計=需要減少(景気循環系商品価格の下落要因)=金利低下・テーパリング先送り観測(ファイナンシャルな面で商品価格の上昇要因)」の構図となるため、景気循環系商品は顕著な供給不足や過剰がなければ横ばい、景気に連動しない商品はドル指数動向に左右される、という展開が続くことになりそうだ。

【本日の見通し】

本日も米金融当局の政策動向を探る展開となり、多くの商品が一進一退でレンジワークとなるだろう。ただし、予定されている米消費者物価指数は前年比での伸びが加速する見込みで、予想通りであればドル建て商品価格の下落要因となる。

5月米消費者物価指数 前月比+0.5%(前月+0.8%)、前年比+4.7%(+4.2%)コア指数 前月比+0.5%(+0.9%)、前年比+3.5%(+3.0%)

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は下落した。ドルが株安を受けたリスク回避の動きで上昇したほか、発表された米石油統計で石油製品出荷の鈍化が確認されたことが材料となった。

昨日発表の米石油統計は原油が予想比強気、製品が弱気な内容だった。先週に続き、製油所の稼働率の回復によって製品生産が増加したため。

全体として原油について強気な内容だったが、製品出荷の減速が続いており、米国内出荷は過去5年平均を下回った。価格上昇によるレーショニングや、ワクチン接種進捗が頭打ちとなっていることで、徐々に回復の速度が弱まっている点は懸念である。

原油は生産が増加(+0.2MBD)、輸入は増加(+1.0MBD)、稼働率は上昇(+2.6%)、在庫は▲5.2MBの減少となった。在庫日数は▲1.2日の28.7日と、過去5年平均を下回っている。

原油価格に影響が大きいクッシング在庫は+165KB(+784KB)と増加。輸入が増加(+0.7MBD)、製油所の稼働率も低下(▲0.5%)したことによるもの。クッシングの在庫スペースの稼働率は56.0%(56.0%)で変わらず。

石油製品在庫は、ガソリン(+7.0MB)、ディスティレート(+4.4MB)と増加、ただしいずれも過去5年平均を回復してはいない。在庫日数はガソリンが5年平均を回復しているが、ディスティレートについては下回っている。

石油製品はコロナショック後以降、出荷動向に注目しているが、米ガソリン出荷は前年比+25.3%の9.08MBD(前週+30.4%の9.16MBD)と減少、コロナの影響がなかった2019年と比較すると▲2.9%(▲3.2%)と回復基調は継続しているが、まだマイナスの状態。

一方、ディスティレートは前年比+16.9%の3.94MBD(+17.4%の4.08MBD、2019年比+1.3%(+1.5%))と先週に続いて減速した。季節性や直接給付金効果の剥落による巣篭り需要の一巡、価格上昇によるレーショニングが見られた可能性がある。しかし、2019年水準を回復した状態が2ヵ月継続している。

製品全体では、前年比+16.7%の19.02MBD(+17.7%の18.96MBD、2019年比▲6.8%(▲5.1%))と減速した。

輸出は+23.5%の5.27MBD(+31.8%の5.40MBD、2019年比+4.5%(+4.6%))と減速。海外でのロックダウンなどの影響が出ているとみられる。

出荷+輸出は+18.1%の24.29MBD(+20.6%の24.36MBD、2019年比▲4.5%(▲3.1%))と減速した。

全体の出荷・輸出は再び減速の度合いを強めている。海外は変異株の感染拡大、米国内はワクチン接種の伸びが頭打ちしていることに加えて、価格上昇に伴うレーショニングの影響が小さくないと考える。

今後の需要増加は全面的な人・物の移動解除が必要条件であり当面、需要回復の遅れがエネルギーセクター価格上昇の重石となる可能性が高いと考える。

石炭価格(豪州炭)は続伸。中国の経済活動の回復や脱炭素に伴う石炭供給減少による需給タイト感が継続しており、昨日も価格は上昇した。

一方、中国の石炭輸入動向の指標の1つであるバルチック海運指数は昨日も低下しており、中国の石炭調達に目処が立ちつつある可能性を示唆している。

しかし、中国の6大電力会社の石炭在庫水準は同じ時期の過去5年の最低水準を維持しており、港湾在庫の水準よりも6大電力会社の保有在庫の水準の方がケタが違うため、当面は電力会社の石炭調達需要を背景に、石炭価格は高値で推移しよう。

JKM先物市場は続伸して高値圏を維持。石炭および欧州・米国のガス価格上昇に連れた。

欧州天然ガスは大幅に上昇。ノルウェーからの供給が、Kollsnes処理工場の稼働が1日止まったことで▲1億4,900万立方メートル(前日比▲48%)の減少となったことや、ノルドストリームがメンテナンスの影響で輸送量が減少したこと、気温の上昇が材料となった。

米国天然ガスも気温の影響や在庫積みの遅れで上昇。

5月31日~6月6日の世界のLNG取引640万トンのうち、30%がスポットで取引され、先週の36%から低下した。中国の輸入が前週比▲19%の減少(主に豪州・マレーシアから)となったが、長契分の調達は堅調だった。

総じて貿易は減少傾向にあるが、LNGタンカーレートがスエズ以西で再び上昇しており(スエズ以東は横ばい)、今後、夏場に向けて再び調達が増加する可能性は有り得る。

本日は昨日の米石油統計での石油製品出荷減少を受けた需要への懸念から軟調推移を予想。米消費者物価指数が予想通りであれば金融引き締め観測が強まるため、さらに水準を切り下げる可能性も。

石炭価格は中国の購入意欲が引き続き旺盛で高値圏維持、天然ガスは欧州地区の天然ガス調達圧力が再び高まっていることから上昇余地を試す展開を予想。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は錫が割高感から売られて小幅下落したが、その他の金属は前日比プラスで引けた。

中国の生産者物価指数が上昇、輸送制限や生産低迷による供給環境のタイトさが意識されたほか、米長期金利低下に伴うドル安(後にドル高に転じる)が価格を押し上げた。

本日は米国時間に発表される米消費者物価指数が市場予想通りであれば金融引き締め観測が強まるため、ドル高進行で軟調な推移になると予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は変わらず、大連原料炭先物は上昇、上海鉄鋼製品先物はまちまち。

中国のPPIが市場予想を上回る上昇となり、原材料調達環境がタイトと見られたことが鉄鋼原料価格も押し上げる形となった。なお、中国当局は投機取引への規制を強めていく方針であるが、需給ファンダメンタルズのタイトさからその効果は顕在化している漢字ではない。

本日も鉄鋼原料価格への決定力が大きい鉄鋼製品価格が高止まりしていることから、高値圏での推移を予想、ただし、鉄鋼製品価格から推定される鉄鉱石価格は180ドル程度であり、上昇余地も限定と考える。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは銀を除いて前日比マイナスで引けた。長期金利低下による実質金利押し下げが価格を押し上げていたが、原油下落に伴う期待インフレ率の低下で実質金利が上昇したため、引けに掛けて水準を切り下げた。

株価が調整したこともあり、工業金属の色彩が相対的に強いPGMは金以上に下落した。

本日は米国時間に発表される消費者物価指数に注目が集まるが、市場予想通りであれば長期金利上昇・ドル高進行となるため価格の下落要因に。

◆穀物

穀物価格は高安まちまち。トウモロコシは米石油製品生産が増加し、エタノール生産も季節性を上回って増加したため、エタノール向け需要増加観測が価格を押し上げた。

大豆は前日の流れを継いで下落基調だったが、ドル高が進行したことで下げ幅を加速し続落。小麦は50日移動平均線を挟んでテクニカルな売買に終始した。

本日は米需給報告の期末在庫見通しを受けて高安まちまちになると考える。現時点の市場予想は以下の通り。

・6月米需給報告単収見通し市場予想(前月)トウモロコシ 179.39Bu/エーカー(179.5)大豆 50.79Bu/エーカー(50.8)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億861万Bu(149億9,000万Bu)大豆 44億1,096万Bu(44億500万Bu)小麦 18億8,990万Bu(18億7,200万Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 14億1,672万Bu(15億700万Bu)大豆 1億4,256万Bu(1億4,000万Bu)小麦 7億8,056万Bu(7億7,400万Bu)

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日発表された中国の物価指数は、生産者物価指数が市場予想を上回り、消費者物価指数は下回った。

生産者物価指数の伸びは2008年以来の高い伸びであり、物流の制限などを背景とする輸入物価指数の上昇が影響したと見られる。

しかし同時に消費者物価指数の伸びが市場予想ほどではなかったということは、個人消費が回復していない、ないしは価格上昇によるレーショニングが起きていると考えるのが妥当だろう。

中国政府は原材料の供給増加や投機の規制などを行っているが、現在起きている価格上昇は世界的な景気刺激で需要が増加する一方、コロナの影響による生産・輸送に影響が出ていることによるものであり、中国政府の対策ではこの状況の改善には繋がらない。

あるとすれば利上げや金融引き締めによって企業活動を鈍化させることが必要となるが、共産党結党100周年記念を目前に控える中、このタイミングでの実施は想定し難い。結果、しばらく生産者物価指数は高い伸びを続ける、と見ておくのが妥当だろう。

この結果、消費者に価格が転嫁されるのはまだ先、と考えられる。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。

財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。

これまでの雇用関連統計の改善を考えると、夏のジャクソンホールのシンポジウムでのテーパリング開始宣言が妥当だが、コロナの変異株の拡大の影響や雇用のミスマッチの影響で雇用環境の改善が頭打ちとなる可能性はあり、テーパリング開始が後ろ倒し(景気回復の遅れ・金融緩和継続で商品価格は上昇)となるケースも想定される。

・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は軟調ながらも、高値でもみ合うものと考える。最大消費国である米国の経済統計は良好なものが多いこと、DOEやOPECなどの見通しは需給ファンダメンタルズがさらにタイト化する見通しであることが背景。

しかし、OPECの増産バイアスは強まり、米国のイランに対する制裁が解除される可能性が高まっていること、コロナの変異種拡大の影響が続くインドや欧州の回復にはまだ時間がかかること、米石油統計で出荷ペースの回復に陰りが見られること、米景気の回復期待で米長期金利上昇・ドル高圧力がかかるシナリオは依然、メインシナリオであり調整圧力が上昇圧力を上回る可能性は低くない。

なお、米国のイラン核合意復帰に向けた動きが進んでおり、サウジアラビアも米国の軍事的な支援を得られなくなったことでイランとの距離を縮める動きを見せていることから、当面、原油価格には下押し圧力になると見られる。

しかし、イランで対米強硬派が次の大統領となる可能性が高く、これまでの融和ムードが「ご破算」になるシナリオも無視できない。

また、イスラエルで連立政権が誕生したが、ネタニヤフ前首相よりもタカ派と言われるベネット党首が輪番制で2年間首相を務める。この間にイランとの対立がさらに深まり、武力衝突に発展する可能性も排除出来なくなってきた。

金融面に関しては、常識的に考えれば経済活動の再開で2022年頃(早ければ今年の年末)から米国でテーパリングが始まり、過去の例を考えると長期金利の上昇などを通じてリスク資産価格には一時的に調整圧力が強まる可能性は高い。そのため、2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク。これは既に顕在化しているかもしれない)。

同時に変異株が猛威を振るい、ワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因。これは既に顕在化しているかもしれない)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングやパイプライン敷設を制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国の和解による中東の緊張緩和(下落要因)。

ただし、イランで強硬派が次の大統領となる可能性が高まっており、再び緊張感が高まる可能性も否定できず(上昇要因)。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値圏を維持すると予想される。欧州排出枠価格が供給減少により2021年の需給がタイトとみられること、中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が堅調と見られることが背景。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。夏場の調達に目処が立てば調整すると見られるが、足下、中国の6大電力会社の石炭在庫水準は過去5年レンジの最低水準と低く、高値圏維持を予想。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

5月の石炭輸入は前年比▲4.6%の2,104万トン(前月▲29.8%の2,173万トン)と減少傾向が続いた。中国の需要増加に伴う電力需要回復で進んでいた石炭輸入だが、バルチック海運指数の減速も始まっており、そろそろ目処が立ちつつあると見られる。

しかし、中国6大電力会社の石炭在庫の水準は低く、まだ、季節的な石炭輸入需要の増加は続くと考える。石炭価格の下落は夏場の在庫調達が一巡する必要があるため、7月頃までは高止まりする可能性が高い。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれること、海上輸送石炭価格の高止まり、ロシアが6月のウクライナ経由・欧州向けのガス供給枠を増枠しなかったことで域内需給がタイト化し、価格を高値に維持する見込み。

4月の中国のLNG輸入は前年比+32.0%の673万トン(前月+34.6%の564万トン)と構造的な増加が続いている。

なお、5月の天然ガス輸入は前年比+31.6%の1,032万トン(前月31.5%の1,015万トン)と構造的な増加が続いている。中国も明確に石炭からガスへのシフトを進めていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・米国がノルドストリーム2の建設を容認した場合、欧州ガス需給の緩和(ロシア増産で下落要因)

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが638,635枚(前週比 +13,067枚)ショートが147,338枚(▲2,740枚)ネットロングは491,297枚(+15,807枚)

Brentはロングが374,269枚(前週比+11,542枚)ショートが106,987枚(+2,712枚)ネットロングは267,282枚(+8,830枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦調整する可能性が高まっていると考える。米国のテーパリングは物価水準似かかわらず恐らく実施される見込みであることから、ファイナンシャルな理由で利益確定の動きが強まる可能性があるため。

これまで、投機的な買いが「需給バランス」「脱炭素」をテーマに価格上昇を助長していたことも事実であるが、ドル高・金利高の流れが意識されれば現物を必要としない投機の手仕舞い圧力が強まることになる。

ただし、各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、7月の共産党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けるとみられる中国のみならず、米国も対中戦略の観点からインフラ投資を積極的に推進する見込みであることも価格を下支えするため、下落余地も限定されると考える。

米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(インフラ投資は0.6兆ドル程度)の追加対策を実施の計画であり、さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針を示した。

インフラや社会プログラム向けに今後10年で4兆5,000億ドルを拠出、道路や橋梁の修復に170億ドル、水道管の工事に45億ドル、ブロードバンド通信網敷設に130億ドルを充当する見込みで、工業金属需要の増加に繋がる。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

その後、再び需要の回復期待で上昇するだろうが、早ければ年末~年始に開始されるとみられるテーパリングの影響で価格は再び調整しよう。その後、価格が上昇するか否かは、1.インドなどの構造的な需要増加が見込める国の需要増加が本当にあるか、2.脱炭素が本当に進捗して金属セクターの物色が続くか、に依拠するためまだなんとも言えない。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

5月の中国製造業PMIは51.0(前月51.1)と市場予想の51.1と前月を小幅に下回った。ただし閾値の50は上回っており中国の製造業活動は拡大過程にあることには変わりはない。

内訳を見ると生産が安定(52.2→52.7)する一方で、新規受注(52.0→51.3)、輸出新規受注(50.4→48.3)、受注残(46.4→45.9)と需要面に減速が見られている。

恐らく、原材料価格の高騰や中国政府の過剰投資抑制方針が徐々にボディブローのように効いていると考えられる。人民元高進行も輸出に重石と考えられる。

工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.10(前月1.11)、原材料が1.08(1.08)と両指数ともほぼ横ばい。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引しているのは中国の住宅セクターであるが、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と再び回復。悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復した。

住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

その中で輸出向けの需要が欧米との対立と人民元高の中でどれだけ回復出来るかが、次の焦点となる。

5月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+2.3%の44万6,000トン(前月+5.1%の48万4,890トン)とやや伸びが鈍化し、過去5年レンジの上限を下回っている。

一方、5月の銅精鉱の輸入は+15.1%の194万5,000トン(▲5.4%の192万トン)と高い水準を維持、銅スクラップの輸入も+103.1%の16万7,767トン(+90.6%の17万1,996万トン)と堅調であり、まだ中国の銅需要は堅調とみられる。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・LMEのファンド筋のポジションは、銅、亜鉛、アルミ、錫でロングの解消が進んだが、同時に銅、亜鉛、アルミはショートも減少したため、全体の動きはまちまちだった。

高値圏にあることは事実で解消売り圧力が強まっていたが、調整も大きかったためショートの解消圧力も強まったと見られる。

結局、市場参加者は高値を維持すると見ている可能性が高く、しばらくはレンジワークが続くと予想される。

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲3.8%の256億ドル(前週 266億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲0.7%の5,812.6千トン(前週 5,855.9千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。

ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていること、先物取引市場での監視強化(証拠金引き上げや値幅制限、投機取引の監視など)から、徐々に水準を切り下げる展開を予想。

また、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

また、Q221には邯鄲市も生産管理措置を導入する見通しであり、鉄鋼製品供給は制限される可能性が高い。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格は高値圏を維持しており、鉄鉱石価格も高止まりしている。

5月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は46.1(前月45.4)と改善。生産が回復(47.0→51.4)した影響が大きい。しかし、新規受注(44.4→39.4)、輸出向け新規受注(51.7→43.9)と軒並み需要面が減速している。

国内の新規受注の減速は資源価格の上昇と国内バブル抑制方針に中国政府が舵を切っていること、輸出向けの減速は5月1日から鋼材輸出の増値税還付が撤廃されたことが影響したとみられる。

需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが0.91(前月1.29)と低下、新規受注原材料レシオは0.99(1.25)と大幅に低下しており、原材料・鉄鋼製品とも価格の下押し圧力が強まる展開が予想される。

しかし、鉄鋼原料価格の上昇を牽引してきた住宅セクターに関しては、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と、悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復。短期的には鉄鋼需要が底堅く推移する可能性が高いことを示唆している。

とはいえ、住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

5月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲5.8%の120万6,000トン(前月+16.2%の117万4,000トン)と伸びが減速したが、過去5年レンジの上限で推移している。

4月の中国粗鋼生産は9,785万トン(前月9,402万トン、2月8,305万トン、1月 9,024万トン、12月9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。

その一方、5月の鉄鋼製品の輸出は前年比+19.8%の527万1,000トン(前月+26.2%の797万3,000トン)と伸びが減速した。これは輸出リベートの撤廃による4月の鉄鋼製品輸出駆け込み需要が剥落したことによるものと見られる。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲10万7,000トンの1,470万3,000トン(過去5年平均 1,111万9,000トン)と、例年の在庫取り崩しペースを下回っている。中国当局の景気過熱沈静化の動きの影響が顕在化しつつあると言える。

原料である鉄鉱石の5月の輸入は前年比+3.2%の8,980万トン(前月+3.0%の9,857万トン)と伸びは横ばい。しかし、輸入量の水準は過去5年平均程度まで急速に減速しており、中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性が出てきた。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲85万トンの1億2,7650万トン(過去5年平均1億2,628万6,000トン)、在庫日数は23.3日(過去5年平均 28.0日)と例年と比較して在庫日数の水準は低い。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

4月の中国の原料炭輸入は前年比▲44.6%の348万トン(前月▲13.0%の491万トン)と減少している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比+5万トンの174万トンと過去5年平均の162万2,000トンを上回っている。

在庫日数は前週比▲0.3日の5.7日と、過去5年の平均である7.1日を下回っており、需要を考慮すると原料炭需給はまだタイトな状態にあると言える。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏での推移を継続すると考える。長期金利の上昇圧力がやや緩和していること、市場での期待インフレ率の高まりで実質金利に低下圧力が掛っていることが材料。また、「金の競合となると(勝手に)期待された仮想通貨が下落」していることで、改めて安全資産としての金需要が戻っていることも高値圏を維持する要因となっている。

とは言え、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まると予想され、中期的な見通しは弱気。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,603ドルと変わらず。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は286ドルと前日から▲4ドル低下。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で215ドル、6ヵ月で215ドル、1年で230ドル、5年で170ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、68.0倍。過去1年を基準にすると75倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのではないか。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

金価格が米長期金利の低下で再び高値で推移していることから、投機的な観点でプラチナにも上昇圧力が掛りやすい地合い。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

5月の米自動車販売は年率1,699万台(前月1,851万台、市場予想1,725万台)と減速。目先は価格の下落要因となりやすい。

中国の4月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+8.8%の225万台(前月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と伸びが減速を始めている。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが288,826枚(前週比 +560枚)、ショートが75,125枚(+1,501枚)、ネットロングは213,701枚(▲941枚)、銀が84,400枚(▲1,613枚)、ショートが36,883枚(+1,352枚)、ネットロングは47,517枚(▲2,965枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが39,063枚(前週比 +875枚)ショートが15,018枚(▲183枚)、ネットロングは24,045枚(+1,058枚)

パラジウムが5,908枚(+400枚)、ショートが3,546枚(▲69枚)ネットロングは2,362枚(+469枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

トウモロコシ・大豆は上昇余地を探る展開になると予想する。ラニーニャ収束を手掛かりに投機の手仕舞い売りが価格を押し下げていたが、チャート上のテクニカルなサポートラインまで売り込まれたこと、中国の輸入需要が旺盛であることに変わりがないことから、再び買戻しが入ると予想されるため。

5月の中国の大豆輸入は前年比+2.5%の961万トン(+11.0%の前月745万トン)と季節性に沿って増加しているが、過去5年レンジの上限で推移しており、輸入需要は旺盛。

但し、これまでの20年を振り返るとラニーニャが発生していない時期~エルニーニョの時期にかけては価格が弱含みやすいのでそこまで強気ではない。

更に価格が上昇するとすれば、2000年代にトウモロコシのエタノール需要増加を期待して価格が上昇したことと同じことが、大豆や大豆油に対して起きる場合だろう。

但しこの時も「食品を投機の対象にすること」「燃料に使うこと」への批判が高まり、特に投機に規制がはいることで下落に転じたため「構造的な需要増加要因として織り込まれた後」は下落に転じると考える。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210527DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・5月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.5、172.0)大豆 50.8Bu/エーカー(50.9、50.2)小麦 50.0Bu/エーカー(NA、49.7)

・5月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億2,931万Bu、141億8,200万Bu)大豆 44億500万Bu(44億3,105万Bu、41億3,500万Bu)小麦 18億7,200万Bu(18億7,715万Bu、18億2,600万Bu)

・5月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(NA、26億7,500万Bu)大豆 20億7,500万Bu(NA、22億8,000万Bu)小麦 9億Bu(NA、9億6,500万Bu)

・5月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億700万Bu(13億2,715万Bu、13億5,200万Bu)大豆 1億4,000万Bu(1億3,319万Bu、1億2,000万Bu)小麦 7億7,400万Bu(7億5,132万Bu、8億5,200万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)

・5月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,987万ha(1,971万ha、1,972万ha)大豆 3,850万ha(3,864万ha、3,847万ha)

・5月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億642万トン(1億112万トン、1億897万トン) 単収 5,355kg/ha(5,132Kg/ha、5,526kg/ha)大豆 1億3,541万トン(1億3,614万トン、1億3,554万トン) 単収 3,517kg/ha(3,526Kg/ha、3,523kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが531,338枚(前週比 +13,193枚)、ショートが78,962枚(▲10,757枚)ネットロングは452,376枚(+23,950枚)

大豆はロングが276,257枚(+848枚)、ショートが52,181枚(▲2,173枚)ネットロングは224,076枚(+3,021枚)

小麦はロングが113,330枚(▲3,832枚)、ショートが94,535枚(▲4,216枚)ネットロングは18,795枚(+384枚)

◆本日のMRA's Eye


「LNG価格は想定以上に上昇」

コロナのワクチン接種の進捗に伴う米国の経済活動再開によって需要は増加しており、OPECプラスの減産もあって価格も上昇、現在取得可能なデータを元にすると多くのシェールオイル生産者は増産が可能な状況にある。

ベイカー・ヒューズの原油リグ稼働数は原油価格の回復を受けて増加しており、今後、生産が増加する可能性は高い。

しかし、WTIとシェールオイルの生産動向を分析すると、コロナショック入りする前は、WTIの価格反転から増産まで概ね3~4ヵ月程度の時間差があったが、足下は5~6ヵ月と、「原油価格が採算が取れる水準になってから増産に至るまでの時間が長期化」している。

背景には、欧州を中心に世界的な広がりとなっている環境規制の強化に伴い、「原油増産に関して株主からの認可が得難くなってきた」ことがあると見られる。

この結果、米国の原油の増産が遅れ想定以上に原油価格が上昇する可能性があるほか、原油生産に伴う随伴ガス生産も増産ペースが鈍化して予想外に価格が上昇するリスクが高まることになる。

同時に環境規制強化の流れが強まっているため、炭素排出量の削減を企図した天然ガス需要は増加が見込まれることから、北米の天然ガス需給がタイト化し、さらに価格の上昇リスクを高めることになる。

少し前までは「2030年までLNGの供給過剰構造は続き、価格は上がらない」という見通しがファンダメンタリストの間では一般的な見方だったが、ややこのシナリオから天然ガス価格は乖離を始めている。

JKM価格の上昇は続いており、過去5年のレンジを上抜けている。背景には、1.この数年使用量を大幅に増加させている中国の経済活動が活性化しており、発電向けの燃料需要が旺盛であること、2.冬場の需要増加で北半球の在庫が減少、夏場に向けた在庫積み増し需要が旺盛であること、3.エルニーニョ現象発生観測により夏場の需要が増加する可能性があること、がある。

天然ガスの輸入量は日中韓台印といったアジア地域が圧倒的に多く、ロシアからパイプラインで天然ガスを取得している欧州向けのカーゴはそれほど多いわけではない。

しかし、2021年に関しては欧州の需要は季節性と関係なく増加しており、スポットLNGカーゴ市場のタイト化に寄与した。足下は、LNGスポットカーゴのレートは低下を始めており、徐々に夏場の天然ガス調達に目処が立っている可能性が出てきた。

しかし、ロシアが6月分のウクライナ経由での欧州向けガス供給に関して枠の増加を見送ったことから欧州の天然ガス需給が再びタイト化する可能性があるため、季節的にも価格が上昇しやすい6月に再び上昇余地を探る可能性は無視できない。

また、今年の夏はエルニーニョ現象の発生が見込まれている。過去の例では一般的に北半球は低温、西欧州で高温となる。ただ、「その傾向がある」だけであり異常気象となるが高温となる可能性も否定出来ない。

実際、気象庁の3ヵ月予報では日本の夏場は平年よりも気温が上昇する見通しとなっており、やはり価格がさらに上昇するリスクは無視できないと考えている。

◆主要ニュース


・5月日本マネーストックM2 前年比+7.9%(前月+9.2%)M3 前年比+6.9%(+7.8%)

・5月日本工作機械受注速報  前年比+140.7%の1,233億2,800万円(前月+120.8%の1,239億7,400万円)
 外需+172.3%の900億200万円(+151.2%の878億9,600万円)

・5月中国消費者物価指数 前年比+1.3%(前月+0.9%)
 生産者物価指数 +9.0%(+6.8%)

・4月独経常収支 213億ユーロの黒字(前月300億ユーロの黒字)
 貿易収支155億ユーロの黒字(202億ユーロの黒字)
 輸出 前月比+0.3%(+1.3%)、輸入▲1.7%(+7.1%)

・米MBA住宅ローン
 申請指数 前週比 ▲3.1%(前週▲4.0%)
 購入指数 +0.3%(▲3.1%)
 借換指数 ▲5.1%(▲4.6%)
 固定金利30年 3.15%(3.17%)
 15年 2.52%(2.56%)

・4月米卸売在庫 前月比+0.8%(前月+1.2%)
 卸売売上高 +0.8%(+4.3%)
 在庫率 1.22ヵ月(1.22ヵ月)

・5月OECD景気先行指数
 OECD 100.5(前月100.3)
 ユーロ圏 100.2(99.9)
 アジア 100.9(100.7)
 G7 100.5(100.3)
 日本 100.6(100.5)
 ドイツ 101.6(101.2)
 米国 100.6(100.4)
 中国 102.5(102.2)
 インド 98.6(98.4)
 ロシア 101.0(100.7)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・DOE米石油統計 原油▲5.2MB(クッシング+0.2MB)
 ガソリン+7.0MB
 ディスティレート+4.4MB
 稼働率+2.6

 原油・石油製品輸出 8,324KBD(前週比+154KBD)
 原油輸出 3,054KBD(+284KBD)
 ガソリン輸出 771KBD(▲9KBD)
 ディスティレート輸出 1,011KBD(▲20KBD)
 レジデュアル輸出 75KBD(▲8KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,089KBD(▲147KBD)
 その他石油製品輸出 2,239KBD(+63KBD)

・イラン黒衣石油(NIOC)、「制裁が解除されれば1ヵ月以内に330万バレルまでの増産が可能。全面回復にも3ヵ月で可能。」

・7月サウジアラムコ調整金 アラビアンライト 1.90ドル(+0.2ドル)、ヘビー0.40ドル(▲0.1ドル)

【メタル】

・渇水の影響で稼働が停止していた中国雲南省の亜鉛精錬所の稼働が再開へ。同地区の生産は中国供給の2割を占める。

・日鉄ステンレス、ステンレス冷延後半価格クロム系を1万円/トン、ニッケル系を1.5万年/トン引き上げ。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ビットコイン ( その他 )/ +8.26%/ +25.56%
2.欧州排出権 ( その他 )/ +2.57%/ +63.95%
3.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +2.29%/ +22.85%
4.SHF錫 ( ベースメタル )/ +2.06%/ +39.03%
5.SHF鉛 ( ベースメタル )/ +1.91%/ +3.64%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲2.15%/ +5.11%
65.ICEココア ( その他農産品 )/ ▲1.14%/ ▲9.80%
64.CBT大豆 ( 穀物 )/ ▲1.11%/ +18.80%
63.SGX天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲1.07%/ ▲0.36%
62.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲1.05%/ +13.54%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :34,447.14(▲152.68)
S&P500 :4,219.55(▲7.71)
日経平均株価 :28,860.80(▲102.76)
ドル円 :109.63(+0.13)
ユーロ円 :133.53(+0.23)
米10年債 :1.49(▲0.04)
中国10年債利回り :3.13(▲0.01)
日本10年債利回り :0.07(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.24(▲0.02)
ビットコイン :36,408.39(+2778.43)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.99(▲0.39)
エネルギー :29.81(▲0.01)
ベースメタル :29.73(+0.04)
貴金属 :16.77(▲1.4)
穀物 :29.83(▲0.45)
その他農畜産品 :28.77(▲0.45)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :29.96(+0.05)
Brent :26.71(▲0.16)
米天然ガス :30.42(▲0.47)
米ガソリン :24.28(+0.23)
ICEガスオイル :19.38(▲0.01)
LME銅 :20.47(▲0.66)
LMEアルミニウム :27.73(+0.22)
金 :21.84(▲0.21)
プラチナ :19.86(▲0.84)
トウモロコシ :50.06(+0.02)
大豆 :21.84(▲0.21)

【エネルギー】
WTI :69.96(▲0.09)
Brent :72.12(▲0.10)
Oman :70.86(▲0.02)
米ガソリン :220.25(▲1.65)
米灯油 :212.95(▲0.55)
ICEガスオイル :582.75(+2.25)
米天然ガス :3.13(+0.00)
英天然ガス :69.29(+1.55)

【貴金属】
金 :1888.57(▲4.32)
銀 :27.77(+0.15)
プラチナ :1153.22(▲11.53)
パラジウム :2780.27(▲29.42)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,905(+3:27.5C)
亜鉛 :3,017(±0.0:20.5C)
鉛 :2,195(+41:12C)
アルミニウム :2,449(+11:10.5B)
ニッケル :18,117(+266:29C)
錫 :31,240(+15:1581B)
コバルト :42,500(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9971.00(▲44.00)
亜鉛 :3012.50(▲5.00)
鉛 :2192.50(+12.00)
アルミニウム :2451.50(+2.00)
ニッケル :18140.00(+155.00)
錫 :31270.00(+35.00)
バルチック海運指数 :2,420.00(▲8.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :207.92(+3.43)
SGX鉄鉱石 :210.29(+2.85)
NYMEX鉄鉱石 :210.19(+2.35)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :166.83(±0.0)
大連原料炭先物 :270.23(+17.04)
上海鉄筋直近限月 :4,898(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :5,033(+63)
米鉄スクラップ :630(±0.0)

【農産物】
大豆 :1562.50(▲17.50)
シカゴ大豆ミール :386.40(▲3.40)
シカゴ大豆油 :71.59(▲0.49)
マレーシア パーム油 :4090.00(▲90.00)
シカゴ とうもろこし :690.75(+10.75)
シカゴ小麦 :682.25(▲2.75)
シンガポールゴム :221.60(▲2.40)
上海ゴム :12700.00(+25.00)
砂糖 :17.73(+0.02)
アラビカ :157.20(▲0.50)
ロブスタ :1582.00(▲14.00)
綿花 :86.62(+1.48)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :121.95(+1.25)
シカゴ生牛 :117.40(+0.68)
シカゴ飼育牛 :148.28(▲0.98)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。