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ドル続落で大幅に上昇
  • MRA商品市場レポート

2021年4月15日 第1941号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ドル続落で大幅に上昇」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は軒並み続伸した。金融機関の良好な決算を受けてリスク選好が回復、ドル安が進行したことが材料となった。しかしその意味ではまだ金融相場を脱しているとは言えず、ややテクニカルな上昇だったと言える。

昨日最も価格が上昇したのはエネルギーセクターだが、これは米石油統計での原油在庫減少が顕著だったことによる。また、IEAの月報やつい先日発表された長期見通しでも、上流部門投資の少なさから供給が制限されるのでは、との見方が強まっていることが材料になったようだ。

ただ、冒頭のコメントの通り、米景気回復期待でリスク選好も回復、ドル安が進行して商品が物色される、という流れは本来的な流れではなく、景気回復・需要回復期待で上昇する流れにならなければ持続的な価格上昇にはなり難い。

ただ、昨日の価格上昇で、エネルギーや非鉄金属とも、チャートの重要な節目を上抜けしたことから、テクニカルに買い圧力が強まる可能性が出てきていることは、注意が必要である。

※レポートで紹介するほどではない、軽いニュースに関するコメントはFBで更新していますので、不定期ですがご興味のある方はフォローをお願いします。
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【本日の見通し】

本日は米経済統計の改善が見込まれることからドル高となり、多くのドル建て資産価格に下押し圧力が強まる展開を予想する。

ただし、昨日の価格上昇でチャート上の重要なポイントを上抜けした商品は多く、下落余地も限られると見ている。

本日発表が予定されている統計では、ニューヨーク連銀製造業景気指数(市場予想20.0、前月17.4)、フィラデルフィア連銀製造業指数(41.5、51.8)、米鉱工業生産(+2.5%、▲2.2%)に注目しているが、いずれも米国の経済状態が良好であることを確認する内容になる見込み。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は上昇した。IEA月報での需給見通し上方修正に加え、米石油統計で原油在庫が市場予想を上回る減少となったことで、需給改善観測が強まったこと、ドル安の進行が背景。

昨日発表の米石油統計は予想比で原油・ディスティレートが強気、ガソリンが弱気な内容だった。

原油は生産が減少(+0.1MBD)、輸入は増加(▲0.4MBD)、稼働率は回復(+1.0%)、在庫は▲5.9MBの減少となった。在庫日数は▲0.3日の31.9日と、過去5年レンジを回復した。稼働率の回復の影響が大きい。

製油所の稼働率は緩やかに回復しているが、想定因りも回復ペースは遅い。このペースだと例年の水準を回復するまでにまだあと2週間程度かかりそうだ。

原油価格に影響が大きいクッシング在庫は+346(▲735KB)と増加。輸入が減少(▲0.2MBD)したが、製油所の稼働率が大幅に低下(▲4.1%)したことが影響した。上昇(+2.5%)したことが影響した。クッシングの在庫スペースの稼働率は59.0%(58.0%)と上昇。

石油製品在庫は、ガソリンが増加、ディスティレートは減少した。ガソリンは+0.3MB(前週+4.0MB)、ディスティレートは▲2.1MB(+1.5MB)となった。

石油製品はコロナショック後以降、出荷動向に注目しているが、米ガソリン出荷は前年比+16.4%の8.81MBD(前週+0.2%の8.68MBD)と回復しているが、コロナの影響がなかった2019年と比較すると▲6.0%(▲5.6%)と減速している。

ディスティレートは前年比▲0.2%の3.87MBD(▲4.4%の3.85MBD、2019年比▲8.1%(▲9.6%))と足踏み。

製品全体では、前年比+20.0%の19.65MBD(+5.5%の19.30MBD、2019年比▲2.2%(▲5.8%))と、2019年比でも回復が続いている。

輸出は▲15.4%の4.82MBD(▲15.4%の4.64MBD、2019年比▲6.3%(▲4.7%%))と回復。出荷+輸出は+10.8%の24.47MBD(+0.7%の23.93MBD、2019年比▲3.0%(▲5.6%))と回復基調が続いている。

ただ、回復ペースは緩やかでさらなる回復があるには、少なくとも国内の移動制限解除が必要だろう。本格的な回復はワクチン接種や欧州のロックダウンの状況を考えると輸出も本格的に増加するには時間がかかり、やはり夏頃になるのではないか。

石炭価格(豪州炭)は小幅に下落。中国の電力向けの需要増加で、豪州炭もめぐり巡って価格は高値を維持している。

JKMは横ばい。需要が増加している中国の買い圧力の強まりが材料。既に夏場の調達が始まっているとみられる。

欧州天然ガスは小幅に上昇。気温の低下見通しが示されたことが材料。ロシアとウクライナの対立が供給に影響を与える可能性はあるが、今のところそこまで積極的に材料視されていない。恐らく軍事侵攻が勃発してから反応するとみられる。米天然ガス価格は気温の変動が穏やかとの見通しで小動き。

本日は一転、下落すると予想する。昨日の価格上昇は米石油統計での原油在庫減少とドル安を材料にしたものだが、本日発表の米統計は改善が予想されており、ドルが上昇すると見られることから。目先、50日移動平均線(Brent 64.30ドル、WIT 61.16ドル)が意識されることになろう。

石炭は中国向けの需要が旺盛であることから堅調、天然ガスも極東の天然ガスについては上昇、欧米は現状水準でのもみ合いを予想。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は総じて堅調な推移となった。50日移動平均線のサポートラインを維持したことで、ドル安進行も手伝い、テクニカルに買い圧力が強まった形。

需給バランスはまだ経済対策やコロナの影響による輸送制限でタイトな状態が続いており、高値維持は肯定される状況。

本日は米統計の改善が予想され、ドルが上昇する見通しであること、昨日の上げ幅が大きかったことから一旦調整売りに押されると予想される。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは小幅上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は横ばい、大連原料炭先物は小幅上昇、上海鉄鋼製品先物は上昇した。

中国の鉄鋼セクターの動きが活発であることが統計で確認されたことから、価格は高値を維持している。また、排出規制強化によって鉄鋼製品生産に制限がかかっている状況が、鉄鋼製品価格を押し上げ、結果的に鉄鉱石価格を押し上げる状態が継続。

鉄鉱石は鉄鋼製品需給のタイト化による価格上昇を受けて、堅調な推移が続く見込み。

◆貴金属

金価格は下落。米長期金利の上昇がドル指数の下落の影響を上回った。銀は小幅な上昇、プラチナ前日の下落からの買い戻しが入り上昇、パラジウムは金安・株安が価格を下押し。

本日は米統計が改善の見込みでドルが上昇すると見られることから、やや軟調な推移になると予想。

◆穀物

穀物価格は堅調な推移となった。ドル安が進行したこと、米石油統計でガソリン価格が上昇したこと、米需給報告を受けたトウモロコシ・大豆の供給懸念が材料となっている。小麦はトウモロコシに連れ高。

本日は、ドルが経済統計の改善で上昇すると見られることから、一旦調整的に売られると予想。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日のニュースではないが、この数週間、中東とロシアを巡る地政学的なリスクが意識されている。需要と供給がタイトであり、供給に制限がある場合にこれらの材料は価格の上昇要因として強く意識されるが、今のところ供給面では「まだ」ゆとりがある状態であり、市場はこれらを積極的に材料視していない。

イランとイスラエルを巡る動きは、どちらかと言えばイスラエル側から動いている可能性が高く、明らかに米国がイランとの核合意に復帰することを妨げようとする動きである。

イラン側もこれを座視するつもりはないため反撃しているが、イランからすれば制裁を解除してもらいためここで米国を激しく挑発する必要性はない。

ただ、これまでの報道を見るに制裁は解除される可能性が高く、イランも昨年8月頃から原油を増産しており、「輸出再開の準備」は整っているように感じる。

ロシアについては、バイデン政権がナワリヌイ氏の殺害疑惑を巡ってプーチン大統領を人殺し、と発言したことに対する反発、ウクライナ ゼレンスキー大統領の「クリミア・プラットフォーム(ロシアに圧力を掛けるための国際的な枠組み)」に対する牽制が目的だろう。

その意味では筋書きが決まっている「プロレス」の可能性が高い。しかし、やろうと思えば大規模な軍事行動が可能な兵力が集結していることも事実であり、予断を許さない状況にあるのは事実だ。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合(今のところ成功している模様)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならないが、足下、どの中央銀行・政府も景気過熱は意識しているものの沈静化させるタイミングと判断していないため、しばらくは顕著な価格上昇リスクとなる見込み。

常識的に考えると今年の年末頃からテーパリング開始の見通しとなるが、来年の米中間選挙を控えて米政権がテーパリング実施にクギを刺す可能性がある。この場合、2022年にかけて、さらにリスク資産価格が上昇する可能性も。

・バイデン政権の追加経済対策が、財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合(価格下落要因)。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生、効くと期待しているワクチンが変異種などを対象にそれほど今夏がなかった場合、など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は高値でもみ合うものと考える。予想外にOPECプラスは増産を決定したが、同時に最大消費国である米国のISM製造業指数・ISM非製造業指数が顕著な改善となったことで、需要回復期待が強まっていることから。

しかし、OPECの減産解除は続き、米国のイランに対する制裁解除が進捗する可能性があることコロナのロックダウンの影響が広がっている欧州での需要減速は不可避であること、米景気の回復期待で長期金利上昇・ドル高圧力が掛りやすいことからしばらくは調整圧力の方が上回る可能性はある。

今のところWTI・Brentとも50日移動平均線を上回ったため、当面はこの水準が下値の目処となる。

なお、米国の核合意復帰に向けた動きをイスラエルが強く牽制しており、武力衝突の懸念が高まっているように見えるが、今のところ本格的な武力行使になるとは見ていない(交渉に圧力を掛ける目的以上のものではない)。

常識的に考えれば経済活動の再開で2022年頃からテーパリングが始まり、過去の例を考えると長期金利の上昇などを通じてリスク資産価格には一時的に調整圧力が強まる可能性は高い。そのため、2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク)。

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングやパイプライン敷設を制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い。

・イランの反米感情が高まり、中東の不安定さが増す場合(価格上昇要因)。

イランでは6月に大統領選挙が予定されており、国内保守派に配慮してロウハニ大統領はタカ派的な発言をする可能性があるが、制裁解除に向けた融和的なコメントも欧米向けに発信せざるを得ず、ロウハニ大統領の発言で価格は左右される見込み。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合(地域安定で原油生産増加、短期的には価格の下落要因に。ただし相当発生の可能性が低いリスクシナリオ)。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値を維持すると考える。中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が旺盛と考えられるため。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

3月の石炭輸入は前年比▲1.8%の2,733万トンとなったが、前月(▲14.8%の2,077万トン)から大幅に回復した。中国国内の電力需要が回復していることが影響していると見られる。やはりバルチック海運指数の上昇に、中国の石炭輸入需要が寄与していたと見られる。

燃料炭の港湾在庫の水準を見るに、需要減速・国内生産が同時に起きていると予想される。よって、石炭価格にも徐々に下押し圧力が掛りやすくなることが予想される。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれることから、季節性とは関係なく石炭価格と歩調を合わせ、堅調な推移になると予想。

3月の中国のLNG輸入は前年比+26.2%の873万トン(前月912万トン)と大幅な増加となっている。徐々に中国も石炭からガスへのシフトが起きていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・ロシア・ウクライナ情勢の悪化を受けて、ロシアがウクライナスルーでの天然ガス供給を停止する場合(上昇要因)。

・最大供給国であるロシアの増産(下落要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが649,237枚(前週比 ▲21,921枚)ショートが137,512枚(▲2,336枚)ネットロングは511,725枚(▲19,585枚)

Brentはロングが355,296枚(前週比▲18,459枚)ショートが85,795枚(+1,819枚)ネットロングは269,501枚(▲20,278枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は軟調地合ながらも、高値圏を維持すると予想する。

各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、中国のみならず、米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(ウチ インフラ投資は0.6兆ドル)の追加対策を実施の計画であり、中国も7月の共産党結党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けると見られるため。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

また、投機的な買いが価格を押し上げ、その調整売りが期末・期初に発生しているが、現在のLME非鉄金属の投機筋による買越し水準(金額・枚数)は昨年11月の「ファイザー社のワクチン開発成功」の時期と同じ水準まで低下しており、目先の利益確定の動きが一巡した可能性が高いことも、価格を押し上げやすい。

中期的には調整圧力が強まる展開になるとの予想は、現時点では変更する必要はないと考えている。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強めていること、米経済統計回復に伴うドル高進行、早ければ2021年末頃から始まる可能性がある、米テーパリング開始の可能性、生産国の生産が回復する可能性が高いことが材料。

ここまでの価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化が牽引する価格上昇ではない。

3月の中国の製造業PMIは51.9と市場予想の51.9、前月の50.6を上回る改善が確認された。

特に生産の回復が堅調で(51.9→53.9)、新規受注も生産ほどではないが、回復している(51.5→53.6)。輸出向け新規受注をみると、今月は輸出の回復が新規受注の回復に寄与したと考えられる。

新規受注在庫レシオは、完成品も原材料も上昇、中国国内の製品・原料需給はタイト化している可能性が高い。

このこと自体は価格上昇要因となるが、これまでの価格上昇が、1.コロナの影響による供給への懸念、2.景気減速を回避するための各国の積極的な金融・財政政策、3.コロナの影響からの脱却期待、4.(まだ起きてもいない)環境重視型社会へのシフトに伴う鉱物資源需要増加、といったことを背景とするものであり、「実態以上に買われてきた」可能性は否定しない。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を行う場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

コロナの影響もあって、2020年12月1日時点の鉱山生産への影響は全体で184万1,000トン、コロナの影響によるものは112万3,000トン。

精錬品生産で影響を受ける規模が、全体で141万6,000トン、コロナによるものが62万8,000トン。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。特にエネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響を免れない状況に。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・引き続き投機のポジション解消圧力が強いが、アルミ・鉛・ニッケルのショート解消の動き(上昇要因)が顕著。

・LME投機筋買い越し金額 前週比+3.3%の259億ドル(前週 251億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+2.1%の5,758.5千トン(前週 5,641.3千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。

ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せている。同時に、米国のインフラ投資政策に関して疑問を呈する声もあり、財政出動が計画通り行われるかどうかに関してはやや黄色信号が点り始めていることも、価格上昇を抑制しよう。

また、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業の生産量を、前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年3月20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格の上昇もあって、鉄鉱石価格には下押し圧力がそれほど強まっていない状況。

3月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は47.9(前月48.6)と減速した。輸出向け新規受注が横ばい(43.3→43.3)だったうえ、生産が悪天候などの影響で減少(54.7→51.3)したことが影響している。

ただ、ロジスティクスの問題もあり完成品在庫(38.1→33.2)、原材料在庫(46.6→36.6)と低下しており、新規受注完成品レシオ(1.14→1.30)、新規受注原材料レシオ(0.93→1.18)と急回復、需給バランス自体は原材料・完成品ともタイトだ。当面、鉄鋼製品・原料価格とも高止まりするのではないか。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、3月は前年比+16.0%の132万トン(前月+6.9%の108万トン)と増加、過去5年レンジの上限で推移している。

2月の中国粗鋼生産は8,305万トン(前月9,024万トン、12月 9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。

その一方、3月の鉄鋼製品輸出は+16.4%の754万トン(前月490万トン)と加速し、過去5年平均を回復した。国内需要の減速と、海外情勢の回復による輸出需要の増加の両面の影響だろう。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比▲103万1,000トンの1,885万5,000トン(過去5年平均 1,551万4,000トン)と、例年よりも在庫水準は高いが、既に在庫の取り崩し時期に突入しており、例年よりも在庫の減少ペースは速い。

これまで需給が緩和傾向にあるのでは、と見ていたが、3月の鉄鋼業PMIは62.3と前月の54.7から急回復している。気温の回復や、中国政府の対策期待の根強さが影響しているとみられる。

原料である鉄鉱石の3月の輸入は前年比+18.9%の1億211万トン(前月+3.8%の9,050万トン)。この時期の輸入量としては過去5年のレンジを大きく上回っている。引き続き鉄鉱石需要は旺盛と見られる。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲5万トンの1億3,430万トン(過去5年平均1億3,026万6,000トン)、在庫日数は28.9日(過去5年平均 31.1日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。2月の中国の原料炭輸入は前年比▲39.6%の323万トン(前月312万トン)と減少している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲13万トンの189万トンと過去5年の最高水準である252万トンを下回った。

在庫日数は前週比▲0.5日の7.8日と、過去5年の最高水準である11.0日を下回っている。再び原料炭需給はタイト化の方向にある。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は軟調な推移になると考える。長期金利上昇、景気回復期待でのドル高進行が米雇用統計を受けて加速していることから。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,564ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は173ドルと昨日から▲10ドル低下。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、68.3倍。過去1年を基準にすると81倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

バイデン政権のグリーン政策期待で上昇してきたが、一連の対策が発表される中で材料一巡、金銀レシオは70倍程度に落ち着きつきつつある。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのでは中。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。これまで、各国の自動車セクターの回復期待と、主要生産国である南アフリカの供給不安が価格を押し上げている。

ただし米長期金利上昇に伴う、ベンチマークの金価格の調整は下押し圧力を強めることになるだろう。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

コロナショック後、パラジウム価格は基本的にETF価格との連動性が高まった(自動車向けの需要減少で余剰が発生したため)が、足下、ETFの残高の変動以上に価格が上昇している状況。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

3月の米自動車販売は年率1,775万台(前月1,567万台、市場予想1,638万台)と急回復した。

中国の2月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+371%の146万台(前月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と前年比の伸びが加速している。

ただし今月の加速は昨年のコロナからの反動で、2019年比では▲1.8%とまだ回復していない。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが275,703枚(前週比 +12,250枚)、ショートが86,194枚(▲9,731枚)、ネットロングは189,509枚(+21,981枚)、銀が67,245枚(+743枚)、ショートが34,930枚(▲2,602枚)、ネットロングは32,315枚(+3,345枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが43,621枚(前週比 +2,604枚)ショートが10,873枚(+462枚)、ネットロングは32,748枚(+2,142枚)

パラジウムが5,361枚(+134枚)、ショートが2,823枚(▲61枚)ネットロングは2,538枚(+195枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

トウモロコシ・大豆は米需給報告・作付け意向面積の結果を受けた需給タイト化観測を背景に、高値圏での推移になると考える。

しかしながら、米作付け意向面積の結果を懐疑的に見る向きも多いこと、ラニーニャ現象の影響緩和、ラニーニャ現象への移行の可能性が高まっていること、総じてドルに上昇圧力が掛りやすいことから上値も重いと考える。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。当初懸念されていた食害発生のリスクは低下している。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210413DLforecast.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・4月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 172.0Bu/エーカー(NA、172.0)大豆 50.2Bu/エーカー(NA、50.2)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)

・4月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 141億8,200万Bu(NA、141億8,200万Bu)大豆 41億3,500万Bu(NA、41億3,500万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)

・4月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 26億7,500万Bu(26億Bu、25億5,000万Bu)大豆 22億8,000万Bu(22億5,000万Bu、22億3,000万Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億8,500万Bu)

・4月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,200万Bu(13億7,882万Bu、15億200万Bu)大豆 1億2,000万Bu(1億1,789万Bu、1億2,000万Bu)小麦 8億5,200万Bu(8億4,611万Bu、8億3,600万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)

・4月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,972万ha(1,966万ha、1,950万ha)大豆 3,847万ha(3,863万ha、3,846万ha)

・4月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 1億879万トン(1億785万トン、1億807万トン) 単収 5,526kg/ha(5,477Kg/ha、5,543kg/ha)大豆 1億3,554万トン(1億3,525万トン、1億3,513万トン) 単収 3,523kg/ha(3,501Kg/ha、3,513kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが608,489枚(前週比 ▲4,957枚)、ショートが72,337枚(▲5,764枚)ネットロングは536,152枚(+807枚)

大豆はロングが276,934枚(+15,175枚)、ショートが43,131枚(▲6,949枚)ネットロングは233,803枚(+22,124枚)

小麦はロングが120,515枚(+3,150枚)、ショートが109,311枚(▲4,970枚)ネットロングは11,204枚(+8,120枚)

◆本日のMRA's Eye


「鉛価格は調整圧力強まる見込み」

鉛価格は昨年の10月頃に底を打ち、11月のファイザー社ワクチン開発報道を受けた、経済活動音再開期待を受けて上昇。その後やや低迷する局面もあったが、再び2月に上昇した。

しかし、3月には非鉄金属セクター全体がやや弱気に傾いたこともあって下落し、現在は2,000ドルを下回る水準でもみ合っている。

3月の価格下落は、その他の非鉄金属と同様、3月の「ファンド四半期決算入り」のタイミングで、四半期決算を意識した売りに押されたことによるもの。

また、米国の景気回復期待の高まりから長期金利が上昇し、金利差を意識したドル高が進行したことがその切っ掛けになったと考えられる。

そのほか、固有の材料としては年初に北半球を襲った大寒波の影響で気温が低下し、バッテリーの交換需要が増加していたが、3月に入って気温が緩んだことにより、バッテリーの交換需要が減速したことが挙げられる。

また、米国南部を襲った大寒波の影響で電力システムに悪影響が及び(氷点下での稼働を前提としない地域での発電であり、風力発電の風車が凍結して動かなくなった。

これにより半導体の生産が停止、自動車向けのみならず半導体が不足したこと、日本のルネサスエレクトロニクスでは火事が発生し、同様に半導体が供給できなくなった(報道では最大4ヵ月程度とみられる)ことも自動車生産の減少・。それに伴うバッテリー需要の減少観測を強めることとなった。

さらには、砂漠の砂嵐の影響による視界不良でコンテナ船が、スエズ運河で座礁、スエズ運河を封鎖してしまったため、物流に支障が出たこと、などが需要面での減速感を意識させ、いずれも鉛価格の下落要因となった。

しかし、現物プレミアムを見ると米国の現物プレミアムの上昇が突出している。これは気温低下でバッテリー向け需要が増加したものの、米国にはLME指定倉庫在庫がなくプライマリのアルミ供給がないうえ、セカンダリの供給能力が116万トン(2019-2020年の平均)であるのに対して、需要が158万トンと▲40万トンも供給不足であり、この状態に拍車がかかっているとみられる。

気温上昇や生産回復を受けてLME指定倉庫在庫も増加傾向にあり、生産も遅々としているが回復基調にあるため、先行きの見通しはやや弱気となる。

バイデン政権が打ち出している経済対策も、「クリーンなもの」に偏っており鉛はこの恩恵を受け難い(ただし太陽光パネルを初めとするバックアップ電源は引き続き鉛バッテリーが主流であるため、このメリットは出てくるかもしれない)。

夏場に向けては、1.季節的な需要の増加、2.ワクチン接種の進捗や寒波・火事の影響からの脱却による半導体供給の再開が自動車販売にプラスに作用すること、から再び上昇余地を探る動きになると予想される。

リスク要因とすると、コロナの影響が継続して外出向けの需要が回復しないことや、今後夏にかけて発生が見込まれているエルニーニョ現象の影響で冷夏となり、交換用バッテリー需要が回復しないことが挙げられる。

◆主要ニュース


・2月日本機械受注総額 前月比 +26.4%の3兆310億円(前月▲1.7%の2兆3,970億円(前月+10.5%の2兆4,380億円)、前年比+40.7%(▲0.8%)
 船舶電力を除く民需 ▲8.5%の7,700億円(▲4.5%の8,420億円)、前年比▲7.1%(+1.5%)

・2月ユーロ鉱工業生産 前月比 ▲1.0%(前月+0.8%)
 前年比+1.6%(+0.1%)

・3月米輸出物価指数 前月比+2.1%(+1.6%)、前年比+9.1%(+5.3%)
 輸入物価指数 +1.2%(+1.3%)、+6.9%(+3.1%)
  除原油 前月比+0.9%(+0.5%)

・米ベージュブック、「全国的な経済活動は2月遅くから4月にかけて緩やかなペースで拡大した。消費は力強さを増した。観光業に関する報告はより前向きな内容となった。」

・米MBA住宅ローン申請指数 前週比 ▲3.7%(前週▲5.1%)
 購入指数 ▲1.4%(▲4.6%)
 借換指数 ▲5.0%(▲5.3%)
 固定金利30年 3.27%(3.36%)、15年 2.67%(2.74%)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲5.9MB(クッシング+0.3MB)
 ガソリン+0.3MB
 ディスティレート▲2.1MB
 稼働率+1.0

 原油・石油製品輸出 7,738KBD(前週比+199KBD)
 原油輸出 2,917KBD(+15KBD)
 ガソリン輸出 607KBD(+20KBD)
 ディスティレート輸出 1,000KBD(+97KBD)
 レジデュアル輸出 82KBD(+11KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,080KBD(+34KBD)
 その他石油製品輸出 1,979KBD(+19KBD)

・IEA月報
 世界石油需要 Q121:93.7、Q221:95.1、Q321:98.3、Q421:99.5、2021:96.7
 非OPEC供給(含むNGLs) Q121:62.3、Q221:63.7、Q321:64.6、Q421:64.7、2021:63.8
 Call on OPEC Q121:31.4、Q221:31.4、Q321:33.7、Q421:34.8、2021:32.9
※需要見通しを上方修正、北米・欧州の生産減少によってCall on OPEC増加。

・IAEA、福島第一原発処理水の検証のため調査団の派遣を検討。

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.NYM WTI ( エネルギー )/ +4.94%/ +30.15%
2.DME Oman ( エネルギー )/ +4.79%/ +26.91%
3.ICE Brent ( エネルギー )/ +4.57%/ +28.53%
4.NYM灯油 ( エネルギー )/ +4.16%/ +28.02%
5.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +3.68%/ +25.55%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.ビットコイン ( その他 )/ ▲1.28%/ +115.15%
65.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲1.06%/ +7.94%
64.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ ▲0.91%/ +1.58%
63.CME牛乳 ( 畜産品 )/ ▲0.62%/ +10.70%
62.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲0.58%/ +9.31%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :33,730.89(+53.62)
S&P500 :4,124.66(▲16.93)
日経平均株価 :29,620.99(▲130.62)
ドル円 :108.93(▲0.13)
ユーロ円 :130.50(+0.19)
米10年債 :1.63(+0.02)
中国10年債利回り :3.16(▲0.01)
日本10年債利回り :0.09(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.26(+0.03)
ビットコイン :62,384.18(▲809.37)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.76(▲0.19)
エネルギー :35.16(+1.31)
ベースメタル :24.72(▲3.92)
貴金属 :23.21(▲0.46)
穀物 :27.90(+0.57)
その他農畜産品 :23.96(+0.42)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :56.47(+3.09)
Brent :52.30(+2.89)
米天然ガス :29.23(▲0.25)
米ガソリン :39.14(+0.68)
ICEガスオイル :34.74(+2.78)
LME銅 :19.67(+0.12)
LMEアルミニウム :19.94(▲0.97)
金 :26.07(+0.58)
プラチナ :26.31(+0.6)
トウモロコシ :28.65(+1.02)
大豆 :26.07(+0.58)

【エネルギー】
WTI :63.15(+2.97)
Brent :66.58(+2.91)
Oman :64.80(+2.96)
米ガソリン :203.55(+5.98)
米灯油 :189.00(+7.55)
ICEガスオイル :528.25(+18.75)
米天然ガス :2.62(▲0.00)
英天然ガス :48.88(+0.28)

【貴金属】
金 :1736.43(▲9.08)
銀 :25.42(+0.07)
プラチナ :1175.41(+15.70)
パラジウム :2676.83(▲15.58)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,003(+105:8.5B)
亜鉛 :2,812(+36:22C)
鉛 :1,991(+14:22.5C)
アルミニウム :2,315(+22:17.5C)
ニッケル :16,257(+45:52C)
錫 :25,948(+318:1748B)
コバルト :49,819(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9080.00(+185.00)
亜鉛 :2832.00(+46.00)
鉛 :1999.00(+14.00)
アルミニウム :2328.00(+23.50)
ニッケル :16370.00(+290.00)
錫 :26055.00(+490.00)
バルチック海運指数 :2,140.00(▲5.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :172.3(▲0.18)
SGX鉄鉱石 :171.42(+0.40)
NYMEX鉄鉱石 :171.42(+0.38)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :113.83(±0.0)
大連原料炭先物 :256.21(+0.56)
上海鉄筋直近限月 :5,050(+40)
上海鉄筋中心限月 :5,131(+69)
米鉄スクラップ :620(+1.00)

【農産物】
大豆 :1410.00(+20.50)
シカゴ大豆ミール :398.20(+3.20)
シカゴ大豆油 :54.24(+1.21)
マレーシア パーム油 :4200.00(▲45.00)
シカゴ とうもろこし :594.00(+14.00)
シカゴ小麦 :648.00(+18.25)
シンガポールゴム :216.80(+7.30)
上海ゴム :13500.00(±0.0)
砂糖 :15.86(+0.43)
アラビカ :132.10(+2.05)
ロブスタ :1365.00(+21.00)
綿花 :84.20(+2.38)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :103.60(+0.20)
シカゴ生牛 :122.10(▲0.30)
シカゴ飼育牛 :141.15(▲1.30)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。