CONTENTSコンテンツ

続くリスク選好回復 ~膠着するドル円相場とリスクバイアス
  • MRA外国為替レポート

2019年1月28日号

◆先週の市場総括


先週のドル円相場は109円70銭近辺で始まり、火曜日には一時109円台前半に下落したものの、その後持ち直し、109円後半で上下動。週末にはややドル安に振れて109円50銭台で引けた。

米中関係・中国経済・世界経済に対する懸念が引き続き重石。一方、英国の合意なきEU離脱リスクの後退はリスク回避を緩和。米国株は企業決算がまずまずだったことで底固い展開。

週末にはトランプ大統領と議会主導者がつなぎ予算の合意に達したことで政府機関が再開の見通しとなり、リスク回避がさらに緩和した。

為替市場ではドルと円が下落、ユーロが反発。ユーロは木曜日にドラギECB総裁が会見で、景気下振れリスクの高まりや警戒感を示したことで下落。ユーロ円相場は週初に124円台後半で始まったが123円台後半に下落。ユーロドル相場も1.13台後半から一時1.13割れ。

しかし週末にはユーロは急騰。ユーロ円相場は125円台まで上昇し引けは124円90銭近辺。ユーロドル相場は1.14台を回復。日経平均は20,800円台で始まったが週央には20,500円~600円で低迷したが、週末には持ち直して20,800円近辺で引けた。

月曜日の東京市場のドル円相場は109円70銭で始まり、上値重く109円50銭~70銭で上下動。日経平均は前週末の米国株高を受けて20,800円で高寄りしたが、その後は押されて20,700円近辺で引け。

中国では10-12月期のGDPが発表され前年同期比+6.4%と前期+6.5%からやや減速。この日の海外市場は米国が祝日で休場のため小動き。ドル円相場は109円60銭~70銭でのもみ合いに終始した。

火曜日の東京市場では朝方からややリスク回避が強まり円高気味で株価も軟調となった。米国政府がカナダで逮捕された中国ファーウェイCFOの身柄引き渡しを正式にカナダ政府に通知したことで、米中関係に再び暗雲が垂れ込めたとの懸念が主因。

中国株、アジア株も下落。ドル円相場は109円40銭台でもみ合い。

日経平均は20,700円台で小高く始まったが一時20,550円に下落。引けは20,660円近辺。海外市場に入ってもリスク回避心理が漂うまま。

中国経済への懸念、IMFが世界経済成長率を下方修正したことを改めて織り込み、米国株が大きく下落。米10年債利回りは2.74%にやや低下。この日始まったダボス会議では世界経済減速を懸念する声が相次いだ。

水曜日の東京市場のドル円相場は109円40銭で始まり一時80銭に上昇。その後は109円60銭~70銭で上下動となった。

日経平均は20,450円で安寄りしたがその後は底固く20,600円~20,650円でもみ合い、引けは20,600円近辺。

発表された日本の貿易収支(12月)は550億円の赤字。2018年暦年では1兆2,000億円の赤字。原油価格の上昇による輸入額増加が主要因で赤字は3年ぶり。

日銀はこの日2日間の金融政策決定会合を終え、展望レポートを公表。物価見通しを大幅に引き下げ、2019年は+0.9%とした。また黒田総裁は会見で、海外リスクを主要因に景気下振れリスクを注視するとした。

市場は反応せず。海外市場に入るとドル円相場は110円目前まで上昇。ただ110円近辺の上値は重く、109円40銭に反落。109円60銭近辺でもみ合い引けた。

ユーロドル相場は1.1380~1.1390で小動き。

米国株は小幅高。一部企業決算が好感されたが、米中懸念、政府機関閉鎖、が重石。そうしたなか、イギリスでは合意なき離脱回避、離脱期限の延期に向けた動きがみられ、ポンドが上昇。

木曜日の東京市場のドル円相場は109円60銭で始まり一時50銭を割ったものの夕刻にかけて109円70銭に上昇。

日経平均は20,500円で高寄り、その後500円~600円で上下して20,500円台後半で引け。海外市場に入るとユーロが大幅安。この日開催されたECB理事会終了後の会見でドラギ総裁は、不確実性の高まりで景気下方リスクが高まっている、として警戒感を強めた。

ユーロは対ドルで1.13割れへ、対円で123円80銭へ下落。ドル円相場は109円60銭で引け。米国株は半導体関連銘柄が好決算を受けて反発、NYダウは小幅高。米10年債利回りは一時2.7%を割って低下したが2.71%と小幅低下。

金曜日の東京市場のドル円相場は109円60銭で始まり上昇。夕方には109円90銭。リスク選好が回復するなかドル高というより円安が進み、ユーロ円相場も123円80銭から124円40銭に上昇した。

日経平均は20,600円で寄り付いた後700円台前半で上下動。後場に一段高となり20,800円台に上昇した。前日の米国市場でハイテク銘柄が上昇したことを受けて、値がさハイテク株中心に買い先行。中国株・アジア株も堅調に推移するなか堅調に推移。引けは20,770円近辺。

海外市場に入るとさらにリスク選好が強まった。円安・ドル安の一方、ユーロが大幅高。ドル以外の通貨の対円相場は上昇。トランプ大統領と議会主導者がつなぎ予算で合意。

政府機関再開のめどが立ったことで、ひとつ不透明感が解消しリスク選好が回復した。

ドル円相場が109円60銭~90銭で上下した後、50銭台に下落して引け。一方、ユーロ円相場は一時125円20銭に大幅上昇した。引けは124円90銭。ユーロは対ドルでも1.14台に上昇した。米国株は続伸。高寄り後、もみ合い。米長期金利10年債利回りは2.76%に上昇した

◆今週の3つの注目ポイント


決算発表が内外で本格化する。底固くなってきた株価をさらに押し上げることができるか。また29日火曜日には英国でEU離脱修正案の審議が行われ投票実施が見込まれる。

1.FOMC、米国の経済指標

先週末にかけてリスク選好が回復した。米国の経済指標が安心感をもたらすか。またFOMCが29日・30日の両日開催されパウエル議長が会見を行う(結果・会見は日本時間31日未明)。

景気がしっかりするなか、FRBが慎重・柔軟姿勢を維持する、という組み合わせが、市場のリスク選好の支えとなる。

月曜日 シカゴ連銀景気指数(12月)、ダラス連銀製造業指数(1月)、火曜日に消費者信頼感指数(1月、予想124.0、前月128.1)、貿易収支(11月)

水曜日 ADP雇用報告(1月、雇用者数前月比、予想+175千人、前月+271千人)、GDP(10-12月期、速報、前期比、予想+1.7%、前期+1.5%)

木曜日 個人所得・消費支出(12月)、シカゴ購買部協会景気指数(1月、予想62.3、前月65.4)

金曜日 ISM製造業景気指数(1月、予想54.1、前月54.3)、ミシガン大学消費者マインド指数(同、予想90.7、前月90.7)、雇用統計(1月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+160千人、前月+312千人、平均時給、前年同月比、予想+3.2%、前月+3.2%)

FOMC(連邦公開市場委員会)は29日火曜日・30日水曜日の2日間開催され、結果は日本時間31日木曜日の未明に公表。またパウエル議長の会見が実施される。

2.米中通商協議

30日水曜日・31日木曜日の両日、中国の劉鶴副首相が訪米し、ライトハイザーUSTR代表、ムニューシン財務長官と通商協議を行う予定。

すでに中国が米国からの輸入を段階的に増やし、貿易不均衡を是正する、具体的な金額やスケジュールが検討されていると報じられているが、何らかの進展がみられるか。

知的財産権を巡ってはなお進展が難しいとみられているが、変化はないか。市場の期待と今回の交渉との間で、ネガティブかポジティブなギャップか、いずれかが確認されるか。

3.中国の経済指標

中国経済に対する不安感が漂うなか、経済指標がなお悪化を続けるか、悪化に歯止めの兆しがみられ市場に想定外の安心感をもたらすか。

木曜日に製造業PMI景況感指数(1月、予想49.3、前月49.4)、非製造業景況感指数(同)、金曜日に財新製造業PMI景況感指数(1月、予想49.5、前月49.7)が発表される。

◆今週のMRA's Eye


続くリスク選好回復 ~膠着するドル円相場とリスクバイアス

先週末にかけてさらに市場参加者のリスク選好が回復した。イギリスのEU離脱に関しては合意なき離脱のリスクが後退し、期限延期に傾いていることが要因のひとつ。

また米中摩擦に関しては、すでに前週から貿易不均衡の改善に関する妥協に向けた動き、中国からの提案の一部が漏れ伝えられ、交渉外でのさや当てはありながら、引き続き何らかの成果達成に向けて動いていると市場の期待は維持された。

今週の米中ハイレベルの通商協議への期待感は高まった状況が続く

金融市場を巡る不安定感に関しては、米国では企業決算の発表が続いているが、まずまずの内容で、ハイテク関連に対する不安が払拭されたことで株価は年初からの反発・上昇地合いを続けている。

それとともに、クレジット市場の不穏な動きが解消へ向かっている。急速に拡大していた信用スプレッドは反転、縮小傾向が続き、落ち着きを取り戻している。

そうしたなか、ようやくトランプ大統領と議会がつなぎ予算に合意。米国政府機関の閉鎖解除に目途が立ったことが市場の安心感をさらに後押しした。

こうした状況がドル円相場に与える影響は複雑だ。ドルと円はともにリスク選好が強まった局面では軟調となる傾向にある。

そうしたなかでもドルよりも円が軟調となる度合が強いため基本的にはドル円相場は底固くはなるが、上値を追う力は、イメージされるよりも弱い。

先週末もユーロ円相場やその他の通貨の対円相場は目立って堅調、円安となったが、ドル円相場は110円の上値が重く109円半ばで取引を終えた。

まず、リスク選好が回復する要因が米国なのか米国以外なのか、さらにいえばドル金利先高感に寄与するかどうか、がドル円相場の動きを左右する。

先週末は確かに米国の政府機関封鎖解除の見通しがリスク選好の回復に寄与した。それはドル金利先高感を積極的に強める材料ではない。

長引けば景気にマイナスとなり、利上げがさらに先延ばしとなる可能性があったところ、その懸念が後退したにとどまる。

米10年債利回りは2.7%台で大きく動いていない。他の材料、イギリスの合意なきEU離脱リスクの後退や米中通商交渉の進展は、グローバルな安心材料であり、米国経済ないしドル金利のみにポジティブな材料ではない。

結果として生じたリスク選好の回復は、むしろ新興国市場などリスク資産・通貨にプラスに働き、ドルにはマイナスに働いている。リスク選好のもと、ドル売りリスク通貨(新興国通貨・資源国通貨)買い、ドル軟調との見方からユーロ買いドル売り、が活発となる。

全般的なドル売り圧力にドル円相場は上値を抑制された状況となる。年初のように円が全面高となった後では円安が際立ちドル円相場でもドル高円安となるが、ひとまず円高からの修正・調整は終えており、円安圧力は対ドルでは大きくない。

リスク選好の回復はドルと円にとってマイナスであり、ドル円相場がさらに上値を追うためにはあらためてドル高材料が必要だ。

今週、米中通商交渉がハイレベルで行われる。その結果がある程度ポジティブでもドル高円安となる可能性は小さいのではないか。

FOMCやパウエル議長の会見で、今後の利上げに慎重なスタンスがみられれば、リスク選好にはプラスになり、ドルにとってはどちらかといえばネガティブに働く。ドル円相場にとっては円高抑止・ドル高抑止となり、強弱まちまちの要因であり、ポジティブにドル高円安をもたらして110円台に定着させるのは難しいと思われる。

足元のドル円相場は結果的に膠着しているがリスクは円高サイドが優勢だ。市場心理は年初のリスク回避のピークから回復基調にあり足元ではリスク選好に傾いている。

それだけに、逆に何かあった場合のリスクはやや大きくなっている。

米国の経済指標が景気の急減速を示さないか、中国の景気悪化が続き市場の不安を誘わないか、米中交渉は一定の成果を得られるのか、関税が復活することはないのか。確かめるまでには予断が許せない。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :109.55(▲0.09)
ユーロ :124.92(+0.97)
英ポンド :144.57(+1.33)
豪ドル :78.652(+0.88)
カナダドル :82.878(+0.75)
スイスフラン :110.221(+0.18)
ブラジルレアル :29.0499(▲0.03)
中国人民元 :16.243(+0.10)
韓国ウォン(日本円=100) :9.79(+0.08)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1406(+0.010)
英ポンド :1.3196(+0.013)
豪ドル :0.7179(+0.009)
カナダドル :1.3218(▲0.013)
スイスフラン :0.9939(▲0.003)
ブラジルレアル :3.7709(▲0.000)
中国人民元 :6.7483(▲0.040)
韓国ウォン :1121.25(▲7.40)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.76(+0.04)
米2年債 :2.61(+0.04)
日本10年債利回り :▲0.00(▲0.01)
日本2年債利回り :▲0.00(+0.01)
独10年債利回り :0.19(+0.01)
独2年債利回り :▲0.58(+0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :24,737.20(+183.96)
NASDAQ  :7,164.86(+91.40)
S&P500 :2,664.76(+22.43)
日経平均株価 :20,773.56(+198.93)
ドイツ DAX :11,281.79(+151.61)
インド センセックス :36,025.54(▲169.56)
中国上海総合 :2,601.72(+10.03)
ブラジル ボベスパ :休場( - )
英国FT250 :18,643.58(+15.95)
ビットコイン :3558.51(▲12.42)

【主要商品価格】
WTI :53.69(+0.56)
Brent :61.64(+0.55)
米ガソリン :138.94(+0.18)
米灯油 :189.19(+0.63)

金 :1305.25(+24.04)
銀 :15.77(+0.45)
プラチナ :818.18(+14.95)
パラジウム :1364.03(+39.85)
銅 :5925.50(+4:24.5C)
アルミニウム :1887.00(+16:20.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :925.25(+9.25)
シカゴ とうもろこし :380.25(+3.25)
シカゴ小麦 :520.00(▲1.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

【MRA外国為替レポート】について