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FRB コロナ緊急対応から徐々に戦線縮小へ
  • MRA外国為替レポート

2021年3月22日号

◆先週の市場総括


先週はFOMCを前に週前半は様子見姿勢が強かった。政策変更は予想されておらず、もっぱらメンバーの予測やパウエル議長の会見に注目が集まった。

メンバー18人の予測では成長率見通しが今年6.5%と大幅に上方修正され来年も3.3%。インフレ率も今年2.4%に上方修正された。FF金利の予測中心値は2023年末までゼロ金利だったが、22年には4人が、23年までには7人が利上げを予想。予想平均値は上方修正された。

パウエル議長は景気に強気の見方を示しつつも緩和継続姿勢を崩さず。インフレ率上昇は一時的で政策スタンスに影響しない、と述べた。また量的緩和縮小の際には可能な限り事前に通知するとして市場に安心感を与えた。

ただ最終的には米長期金利上昇の流れは変わらず。米国株は明るい景気見通しに支えられ景気敏感株が堅調。NYダウはFOMC後に史上最高値を更新した。全般に金利上昇が重石。ナスダックは前週から下げて取引を終えた。

重要イベントをこなしてドルは米長期金利に支えられて底固い値動き。ドル円相場は109円を中心としたもみ合い。ユーロドル相場は1.19~1.20で上下したがやや上値重く1.19割れを試す動き。

ユーロ円相場はリスク選好に支えられ130円台前半に上昇する場面もあったが129円台半ば。

日銀は金融政策の調整を実施。10年債利回りの変動幅は小幅拡大。またETF購入枠6兆円を撤廃して市場混乱時・急落時などに実施することとした。

また日経平均連動型を購入対象から外しTOPIX連動型に限定。日経平均は3万円の大台を回復したが定着できなかった。

月曜日の東京市場では日経平均が小幅高。米追加経済対策やワクチン接種の進展から景気回復期待が根強く景気敏感株が上昇。但し買い一巡後は利益確定売りに押され上値重く高値圏で伸び悩み。長期金利上昇懸念からハイテク関連株には売りが嵩んだ。引けは前週末比+49円高の29,767円。

中国の主要経済指標(2月)は軒並み大幅な伸びで予想を大きく上回った。2月までの年初来累計での前年比は、小売売上高が+33.8%、鉱工業生産が+35.1%、都市部固定資産投資が+35.0%。昨年の同時期は感染拡大・ロックダウンにより大きく落ち込んでいたことを踏まえても良好。

ドル円相場は109円ちょうどで始まり、109円を挟んで108円90銭~109円10銭で上下、午後には一時109円30銭台に上昇した。欧州時間に入ると109円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.1950で始まり1.1960台に上昇したがユーロの上値重く、欧州市場にかけて1.1920に下落した。

ユーロ円相場は130円20銭で始まり、40銭中心に推移。ただ欧州市場にかけては130円10銭に下落した。

米国株はしっかり。FOMC前で様子見姿勢も強まったが、経済対策が早くも始動したことを好感。ひとり当たり1,400ドルの支給が始まったことで景気敏感株が堅調。NYダウは前週末比+175ドル高の32,953ドル、ナスダックは同+140ドル高の13,459ドル。VIX指数は20.03に低下した。

米10年債利回りはやや低下して1.607%。ドル円相場は米長期金利が高止まりを続けたこと、株価堅調で底固く、109円20銭近辺に上昇しその後は109円10銭中心に上下。ユーロドル相場は1.1920~30でもみ合い。ユーロ円相場は130円20銭中心にもみ合いとなった。

発表されたNY連銀製造業景気指数(3月)は前月12.1から17.4に大幅改善し昨年7月以来の水準となった。

火曜日の東京市場では日経平均がしっかり。前日引値水準である29,700円台後半で寄付き上昇。前場に一時3万円の大台をつけた。米国でグロース株が堅調となったことで日本でも同様にグロース株に買い。ただ利益確定売りもあり3万円台の上値は重く、FOMC前の様子見姿勢強く29,900円台でじり安となった。引けは前日比+154円高の29,921円。

為替市場は動意薄。ドル円相場は109円10銭~20銭で終始小動き。ユーロ円相場は130円20銭~30銭で上下。ユーロドル相場は1.1930中心に20~40で上下した。

欧州時間に入り発表されたドイツZEW景況感指数(3月)は期待指数が76.6と前月71.2から改善。景気楽観が強まっていることを示した。これを受けてユーロはやや上昇。ユーロドル相場は1.1950へ、ユーロ円相場は130円30銭台へ。しかし上値の重さが意識されると反落。

ユーロドル相場は1.1880へ、ユーロ円相場の下げは大きく129円50銭に下落した。ドル円相場もそれに連れて108円80銭にやや押された。ただその後は反発して109円ちょうど近辺でもみ合い推移した。ユーロ安は一服して1.1900~10でもみ合い、ユーロ円相場は129円70銭~80銭。

米国で発表された経済指標は寒波の影響で冴えない数字となった。小売売上高(2月)は前月比▲3.0%減少、前年同月比は+6.3%と前月の+7.4%から減速した。

鉱工業生産(2月)は前月比▲2.2%、うち製造業生産は▲3.1%。米国株は朝方の指標が天候要因とはいえ冴えなかったこと、長期金利の動向がFOMC前で見極めにくいこと、から様子見姿勢が強かった。

NYダウは終日マイナス圏で推移し前日比▲127ドル安の32,825ドル。ナスダックは+11ドルの13,491ドル。VIX指数はさらに低下して19.79ポイントと20を割り込みコロナ禍での最低水準となった。米10年債利回りはやや上昇して1.62%。

水曜日の東京市場では株・為替ともFOMC結果発表前に小動き。日経平均は29,800円近辺で小幅安寄りしたものの持ち直し、3万円の大台手前まで上昇。ただイベント前に上値も重く29,900円割れに下落。引けにかけてやや持ち直して前日比+7円高の29,914円で引けた。

為替市場ではやや円が軟調。ドル円相場は109円ちょうど近辺で始まり10銭~20銭でもみ合い、夕刻から欧州市場では109円20銭~30銭。ユーロ円相場は129円70銭で始まり80銭~90銭でもみ合い、欧州市場では129円90銭から130円ちょうど~10銭で推移した。

ユーロドル相場は1.1900近辺でもみ合い小動き。夕刻から欧州市場ではやや振れ幅を広げて1.1890~1.1920で上下した。米国市場はFOMCの結果待ち。日本時間木曜日未明3:00に発表された内容を受けてドルは下落、ユーロは上昇した。

米国株は前日比マイナス圏から上昇に転じた。政策は予想通り据え置き。公表されたメンバーの予測で、成長率見通しが上方修正。今年は前回12月時点の4.2%から6.5%に大幅に修正。来年も3.3%と小幅上方修正。インフレ率は今年が2.4%に12月時点の予想1.8%から上振れとしたが、来年以降は2.0%近辺で推移すると予想した。

FF金利は18名の中央値が2023年までゼロ金利継続。ただ2022年の利上げ予想は前回の1名から4名に増加。2023年時点で利上げ実施しているとの予想は5名から7名に増加し、平均値は上昇した。

パウエル議長は会見で景気の強さ、インフレの落ち着き、現状の緩和策継続、の姿勢を強調した。しかし長期金利上昇をとくに牽制せず。利上げを予想するメンバーが増えるのは驚くことではないとした。

また量的緩和の縮小が必要かどうかは経済指標が十分な強さを示した場合に判断するとし、実施する十分前にアナウンスする、と述べた。

米国株は恐れていたよりもハト派だったこと、景気の強さ・インフレの落ち着き、との見方を好感して景気敏感株中心に上昇。NYダウは前日比+189ドル高の33,015ドルで史上最高値を更新。S&P500も+11 ドル高の3,974ドルで史上最高値更新。ナスダックは+54ドル高の13,525ドル。VIX指数は19.23ポイントにさらに低下した。

米10年債利回りは一時1.69%に上昇していたが、FOMC後に1.62%に低下して引けは1.65%。ドル円相場は108円80銭に下落した後は下げ止まり108円90銭近辺で引け。ユーロドル相場は1.1980に上昇し70~80でもみ合い引け。ユーロ円相場は株高を受けて130円30銭~40銭に上昇して取引を終えた。

木曜日の東京市場では日経平均が朝方から上昇。イベントを通過したことの安心感、米国株が景気敏感株を中心に上昇したことから堅調。前場の上げ幅は+500円を超え30,500円に迫った。

ただ昼にこの日から2日間にわたり開催される日銀金融政策決定会合での政策変更、長期金利変動幅の拡大、ETF購入枠(6兆円)の撤廃、などが議論されていると報じられると、為替市場では円高に、日経平均は利益確定売りに押され30,100円割れに下落した。

その後はやや持ち直し、引けは前日比+302円高の30,216円。

ドル円相場は108円90銭で始まり一時70銭に下落したが午前中に109円10銭に上昇。ユーロ円相場は130円40銭で始まり60銭に上昇した。しかし日銀の政策変更に関する報道で円高に振れ、ドル円相場は108円70銭、ユーロ円相場は130円10銭に下落した。

ただ午後はともに持ち直し、ドル円相場は108円90銭中心に推移。ユーロ円相場は130円60銭近辺。ユーロドル相場は1.1980で始まり上値重く1.1960割れ。夕刻は1.1980。

欧州市場に入るとドルが一段高。ドル円相場は109円30銭。ユーロドル相場は1.1950に下落した。ユーロ円相場は130円20銭に下落した。日本時間夕刻から欧州市場にかけて米長期金利が大きく上昇。米10年債利回りが1.74%に上昇したことがドルを押し上げた。

米国市場では株価がハイテク株・グロース株中心に下落。NYダウは寄付きからしばらくは堅調で前日比+200ドル高となる場面もあったが、その後下げに転じて▲153ドル安の32,862ドル。

ナスダックは寄付きから下落して始まり引けにかけて下げ幅を拡大。前日比▲409ドルの大幅安、13,116ドルで引けた。米10年債利回りが1.75%をつけるなど高止まりしたことが嫌気された。

VIX指数は前日に20ポイントを割っていたが、この日は上昇して21.58。

ドルは引き続き堅調。ただ株安でクロス円相場が円高に振れたことでドル円相場の上値も重かった。ドル円相場は108円90銭にじり安となり引け。ユーロドル相場は1.1910~20へユーロ安ドル高。ユーロ円相場は129円60銭~80銭で推移した。

発表されたフィラデルフィア連銀製造業景気指数(3月)は前月23.1から51.8に大きく改善して予想を上回った。新規受注指数も23.4から50.9へ、雇用指数も25.3から30.1に改善した。

週次の新規失業保険申請件数は770千件と前週725千件から増加。継続受給者数は4,142千件から4,124千件にやや減少した。

金曜日の東京市場では日経平均が大幅反落。前日に米国株が下落したことが市場心理を悪化。午後に日銀金融政策決定会合の結果が発表されると一段安となり下げ幅は一時600円近くに及んだ。

日銀は10年国債利回りの変動幅を変更。従来は0%を中心に上下0.20%としていたが0.25%にわずかながら拡大した。またETF購入については年6兆円の枠を撤廃して市場混乱時・下落時のみ購入へ。また購入対象を変更。日経平均連動型を外しすべてTOPIX連動型とすることとした。

これを受けて日経平均採用値がさ株に売りが膨らんだ。引けにかけてやや持ち直したが、前日比▲424円安の29,792円で引け。一方、TOPIXはやや上昇して2,012円と大台を維持した。

ドル円相場は108円90銭で始まり午前中に109円10銭に上昇。しかしその後は軟調となり、日銀金融政策決定会合の結果を踏まえてさらにじり安が続き夕刻には108円60銭。

ユーロ円相場は129円80銭で始まり昼前に90銭近辺で推移していたが、午後には軟調となり夕刻には129円70銭近辺。ユーロドル相場は1.1910~20の小幅なレンジで上下した後持ち直し1.1940。

欧米市場に入ると米10年債利回りが再び上昇し一時1.75%近辺に上昇。これに連れてドルが上昇、ユーロが下落。ドル円相場は109円台を回復し、ユーロドル相場は1.1880割れに下落した。連れてユーロ円相場も129円30銭台に下落。

米国株は強弱まちまち。FRBは、コロナ危機で導入した銀行に対する補完的レバレッジ比率(SLR)の一時的緩和措置を3月末で終了し延長しないことを発表。市場の流動性・資金は潤沢で枯渇するリスクが少ないと判断。

これを受けて金融機関の投融資が鈍り長期債購入が減少するとの見方が広がった。長期金利上昇の一因となり、金融株を下押し。ダウは寄付き早々に前日比▲350ドル超下落した。

その後は持ち直し32,800ドルを回復したが引けにかけ軟調。結局前日比▲234ドル安の32,627ドル。

ナスダックは週末要因もあり前日に大きく下げたグロース株への買い戻しが入り+99ドル高の13,125ドル。VIX指数はやや低下して20.95。

米10年債利回りの上昇は一服しピークからやや低下して1.725%。ドル高も一服。ドル円相場は108円80銭~90銭で引け。ユーロドル相場は1.1900~10に持ち直し。ユーロ円相場は129円60銭~70銭に小反発して引け。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

引き続き景気回復基調が明確となるか。消費支出価格指数にも要注意。結果として長期金利の上昇傾向を刺激するか。

月曜日 中古住宅販売(2月、季節調整済み年率換算、予想654万戸、前月669万戸)

火曜日 新築住宅販売(2月、同、予想885千戸、前月923千戸)、リッチモンド連銀製造業景気指数(3月、前月14)

水曜日 耐久財受注(2月、前月比、予想+0.9%、前月+3.4%、コア、予想+0.6%、前月+1.4%)

PMI景況感指数(3月、製造業、予想59.5、前月58.6、サービス業、予想60.0、前月59.8)

木曜日 GDP(10-12月期、確報、前期比+4.1%)、週次の新規失業保険申請件数、カンサスシティ連銀製造業指数(3月、前月24)

金曜日 個人所得・消費支出(2月、前月比、予想▲7.2%・0.0%、前月+10.0%・+2.4%)個人消費支出価格指数(同、コア指数、前年同月比、予想+1.5%、前月+1.5%)ミシガン大学消費者信頼感指数(3月・確報、予想83.6、速報83.0)

2.パウエル議長発言

今週は22日月曜日、24日水曜日、にFRBパウエル議長の発言予定がある。FOMCを受けても長期金利は一段と上昇し、米10年債利回りは1.75%をつけた。長期金利上昇を牽制しなかったが、現状水準、あるいは足元の動きに牽制姿勢を示すか。市場動向を容認するか。

何らコメントがない場合には市場がさらに長期金利上昇、水準試し、上昇ペース試しとなる可能性があり留意を要する。

FOMCは市場とのコミュニケーションがうまくとれたとの印象だが、とくに修正する姿勢をみせず市場動向容認となるか。

3.欧州の経済指標、ECB経済報告

先般のECBでは景気回復基調を確認しつつも脆弱性から長期金利上昇への警戒を怠らず。今後3ヵ月は債券購入ペースを加速させることを決定し、当面の緩和姿勢を強化、市場を牽制した。

こうした対応を裏付ける弱さを指標が示すか。あるいは感染ペース鈍化やワクチン接種開始を受けて、主としてサービス業を中心に景況感の持ち直し傾向がみられるか。

水曜日 PMI景況感指数(3月、ユーロ圏、製造業、予想57.5、前月57.9、サービス業、予想60.0、前月59.8、ドイツ、製造業、予想60.4、前月60.7、サービス業、予想46.0、前月45.7)

木曜日 ECB経済報告

金曜日 ドイツIFO景況感指数(3月、予想93.0、前月92.4)

◆今週のMRA's Eye


FRB コロナ緊急対応から徐々に戦線縮小へ

先週のFOMCやパウエル議長の発言を当初はハト派と受け止める見方が多かった。確かに恐れていたほどタカ派のニュアンスはなく、NYダウが史上最高値を更新するなど総じて市場には安心感が漂った。

しかしメンバーの予測やパウエル議長の発言をみればハト派とばかりは言い切れない。

むしろ将来の政策変更、現状の超緩和政策の修正への道を開きつつあるようにみえる。

経済指標次第で市場の金利先高感が強まる余地を残した。大幅な株価調整や市場の混乱を招かずに政策の自由度をやや広げたという観点で、市場とのコミュニケーションがうまくとれたといえそうだ。

足元の景気動向に対する見方は大きく改善した。FOMCメンバーによる今年の成長率は6.5%、来年は3.3%に上方修正された。

物価見通しは今年の消費者物価上昇率が2.4%と見込まれている。来年以降は低下するものの2.0%は維持されると予想。2023年に向けて景気・物価動向は理想的なバランスを回復する予想となっている。

ここに至れば、インフレは加速しないとはいえ、現状の超金融緩和政策を維持している必要はなくなる。

あるいは政策金利はなおも長期間維持するとしても、経済活動正常化につれた長期金利のさらなる上昇は今後容認しつづける可能性は大きい。

今後、市場はFRBのスタンスを試す展開を続けるのではないか。

景気が回復しつつあるなか、感染拡大のペースダウンやワクチン接種の拡大が行動規制の緩和につながり、そこにさらに財政拡大による需要喚起が加われば需給面から物価上昇圧力が高まる。

FRBパウエル議長やメンバーが景気拡大加速や物価上昇を一時的との判断を示しても、市場が先走ってインフレ懸念を強め、量的緩和の縮小や利上げの前倒し観測から金利先高感が強まるだろう。

その結果、長期金利が一段と上昇するリスクは否めない。上昇が過熱した資産価格に冷や水を浴びせるかたちとなるだろう。

ただ感染拡大が抑制され景気回復が継続するなか、長期金利の上昇やそれに起因する資産価格の調整が秩序をもって生じるならFRBあるいは民主党政権にとっても想定内、あるいは望ましい展開ではないか。

経済の二極化や格差拡大は、コロナ禍において最も問題となった事象。株価上昇は貧富の格差をさらに拡大し、住宅価格の上昇は低所得層に困難をもたらす。

長期金利上昇により実体経済と資産価格の乖離が修正され整合的な状態に近づくのであれば静観するだろう。株価への影響を考えて長期金利の上昇を抑制することは考えにくい。

さらに大きな視点でみれば、コロナ禍に対する政策対応が、本来あるべき姿を取り戻しつつあるともいえそうだ。コロナ禍による経済危機は、循環的な景気悪化ではなく、突然に経済活動が強制停止させられたことにより生じた。

とくにその影響の強弱がまだら模様であり経済全体が悪化したわけではない点が特徴だ。こうしたケースではマクロ政策としての金融政策は本来ふさわしくない。

急激な景気後退に強力な超金融緩和措置は必要だが、あくまでも応急措置にすぎない。

本来は、感染拡大抑止やワクチン開発・接種の進展による集団免疫の獲得など保健政策、悪影響を受けて困難に直面する経済主体に対する選別的な財政支援・財政政策、が二本柱となるはずだ。

危機発生から1年以上が経過。保健政策・財政政策によって、経済がいよいよ正常化に向けて軌道に乗り始めたところで、応急措置としてのマクロの金融政策が引き気味となり始めてもおかしくない。

FRBはコロナ危機で導入した金融機関に対する資本規制緩和策を3月末で終了し延長しないことを先週末に決定した。

市場の流動性・資金が潤沢であり枯渇するリスクが少ないと判断したためだ。これも金融市場が正常化しており、緊急対応が必要なくなったと判断している証左だろう。

緊急対応としての超金融緩和についても、修正に向けた動きが始まりつつあるとみて良い。

こうしたFRBの動きに加え、日銀も政策の微調整に動いている。

イールドカーブ・コントロールによる10年債利回りの実質的な上昇抑制、0%±0.20%の変動幅を±0.25%に拡大。ETFの購入については6兆円のペースを撤廃し、市場の混乱・株価急落時に限定した。

また買い入れ銘柄から日経平均連動型を外しすべてTOPIX連動型とした。これら日経平均先物や採用銘柄を中心とした投機的な動き、買い上がりを牽制する意味もあるのではないか。

日銀はなおも現状の強力な金融緩和を継続するとしている。しかし、経済はコロナ禍による危機から脱しつつあり、景気回復の可能性が高まったこと、日経平均が3万円の大台を回復するに至り、過剰な金融緩和による弊害を抑制する余裕が生じてきたということだろう。

主要国・地域において、当面は財政政策・保健政策による景気刺激や集団免疫の獲得・感染抑制などを巡る強弱が生じるとみられる。

それに応じて金融政策の正常化に向けた動きの格差につながるだろう。それは長期金利差に反映し通貨強弱に反映すると予想される。ドルはなお底固く推移する可能性が高い。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.88(▲0.01)
ユーロ :129.62(▲0.13)
英ポンド :150.96(▲0.70)
豪ドル :84.29(▲0.20)
カナダドル :87.095(▲0.10)
スイスフラン :117.204(▲0.21)
ブラジルレアル :19.8315(+0.25)
中国人民元 :16.729(▲0.02)
韓国ウォン(日本円=100) :9.64(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1904(▲0.001)
英ポンド :1.3872(▲0.005)
豪ドル :0.7742(▲0.002)
カナダドル :1.25(+0.001)
スイスフラン :0.9288(+0.002)
ブラジルレアル :5.491(▲0.071)
中国人民元 :6.509(+0.002)
韓国ウォン :1131.03(+7.28)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.72(+0.01)
米2年債 :0.15(▲0.00)
日本10年債利回り :0.11(▲0.00)
日本2年債利回り :0.11(+0.00)
独10年債利回り :▲0.29(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.70(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :32,627.97(▲234.33)
NASDAQ :13,215.24(+99.07)
S&P500 :3,913.10(▲2.36)
日経平均株価 :29,792.05(▲424.70)
ドイツ DAX :14,621.00(▲154.52)
インド センセックス :49,858.24(+641.72)
中国上海総合 :3,404.66(▲58.41)
ブラジル ボベスパ :116,221.60(+1,386.20)
英国FT250 :21,420.31(▲148.25)
ビットコイン :58410(+908.50)

【主要商品価格】
WTI :61.42(+1.42)
Brent :64.53(+1.25)
米ガソリン :194.31(▲0.10)
米灯油 :182.23(+3.81)

金 :1745.23(+8.81)
銀 :26.25(+0.17)
プラチナ :1197.86(▲11.88)
パラジウム :2640.31(▲43.37)
銅 :9017.50(▲60:18.5B)
アルミニウム :2223.00(▲4:35C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :1416.25(+24.00)
シカゴ とうもろこし :557.75(+11.25)
シカゴ小麦 :627.00(▲3.50)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。