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想定外の米長期金利上昇とドル円相場
  • MRA外国為替レポート

2021年3月1日号

◆先週の市場総括


先週は米長期金利が大きく上昇。前週末の1.35%から一時1.6%台に大幅に上昇した。景気回復基調に巨額の経済対策・財政支出が確実に。また原油価格や商品市況が全般に堅調に推移していることも金利先高感を強めた。

FRBパウエル議長は現状の金融緩和を継続することを明言したが、一方で長期金利上昇については市場の景気回復期待を反映するものとして現時点ではとくに牽制せず容認した。

金利上昇を嫌気して高PER銘柄やハイテク株を中心に株価は大きく下落した。

NYダウは水曜日に史上最高値を更新し一時32,000ドルをつけたが、週末にかけて合計1,000ドルを超える下落。前週末比▲500ドル安の30,932ドル。ナスダックは同▲700ドルほど下落して13,192ドルで週末の取引を終えた。

ドルは総じて堅調。ユーロドル相場は、週初は1.21台半ばで推移し、その後1.22台半ばに上昇したが週末にかけて大きく反落して引けは1.2070近辺。

ドル円相場は、105円台半ばで始まりパウエル議長の議会証言前に一時105円を割ったが、その後は週末にかけて一貫してドル高円安が進んだ。週末は106円60銭~70銭の高値引け。

ユーロ円相場は127円台後半で始まり週後半に130円に迫ったが、株安・リスク選好の後退、ユーロドル相場の下落から128円台後半に反落して引けた。

月曜日の東京市場では日経平均は30,300円台で高寄りし早々に30,400円をつけたがその後は軟調に推移した。

アジア時間で米10年債利回りが1.39%に上昇。米国株先物がアジア時間に下落したことを受けて30,200割れに反落し、引けにかけて下落してこの日の安値引け。前週末比+138円高に上げ幅を縮め30,156円で引けた。

ドル円相場は105円40銭で始まり堅調。40銭~60銭で上下した後105円60銭~70銭でもみ合い。夕刻から欧州市場にかけて105円80銭に一段高となった。

ユーロ円相場は127円80銭で始まり上昇。128円ちょうど~10銭でもみ合い。ユーロドル相場は1.2110~20で始まり1.2120近辺でもみ合い、夕刻には1.21割れに下落。ユーロ安ドル高気味に推移した。

ただその後、発表されたドイツのIFO景況感指数(2月)が前月90.3から予想90.5への小幅改善に対し、92.4と大幅に改善。これをきっかけにユーロ高ドル安が大きく進んだ。

米国市場にかけてユーロドル相場は1.2170に上昇。ドルは対円でも下落して105円ちょうど~10銭でのもみ合いに。

米国株は大幅安で始まった。ただ経済対策が今週中ないし3月中旬までに成立との見方が強まり、また行動規制の緩和で経済活動が正常化するとの期待が景気敏感株を支えた。NYダウは170ドル安から持ち直しプラス圏を回復、150ドル高に。

ディズニー、キャタピラー、空運、旅行、など景気敏感株中心に上昇した。一方、ハイテク株は長期金利上昇を嫌気して終始軟調。ハイテク株など高PER銘柄中心に下落した。ナスダックは大幅安。前週末比▲341ドル安の13,533ドル。NYダウも引けにかけては反落し上げ幅を縮め、+27ドル高の31,521ドルで引け。

米10年債利回りは上昇一服。アジア時間からやや低下して1.37%。米国時間は株安を受けて円が堅調。ユーロ円相場は127円50銭に下落した後、127円80銭近辺で引けた。

火曜日の東京市場は祝日で休場。アジア時間早々はドルが小幅安。ドル円相場は105円10銭で始まりその後は下げ止まり104円90銭台でもみ合い。

ユーロドル相場は1.2150から上昇して1.2170近辺でもみ合い。午後から欧州時間にかけては円安となりドル円相場は105円10銭台を回復。ユーロ円相場は127円70銭で始まりじり高で90銭、さらに一時128円ちょうどをつけた。

欧州時間に入るとドルが一段高。米10年債利回りが1.38%をつけ底固く推移したことが支え。ドル円相場は105円30銭~40銭に上昇。ユーロドル相場は1.2150に下落した。

米国株は長期金利上昇を嫌気して大幅安で始まった。NYダウは前日比400ドル超下落、ナスダックは500ドル下落して13,000ドルちょうどに迫った。ただその後はパウエルFRB議長の発言を受けて持ち直し下げ幅を縮めた。NYダウは前日比+15ドル高の31,537ドル、ナスダックは同▲67ドル安の13,465ドルと値動きは同様ながらまちまち。

米10年債利回りの上昇は抑制され1.36%。

パウエル議長は上院銀行委員会で半年に一度の議会証言を実施。経済は景気・物価目標から程遠く、一段と顕著な進展がみられるまで現状の金融緩和を継続すると述べた。

一方、経済対策やワクチン普及により年内の経済活動正常化・改善も期待。今年の成長率が6%に達するとの見方にも反対しなかった。この間に抑制された需要の急速な回復(ペントアップディマンド)によるインフレ加速はさほど懸念せず。長期金利上昇は市場が景気回復を確信していることの表れとして懸念せず、見守る姿勢を示した。

ドルは上昇一服も底固く、ドル円相場は105円10銭に下落した後はじり高で引けは105円30銭。ユーロドル相場は1.2140~60で上下を繰り返し引けは1.2150。

ユーロ円相場は127円90銭中心のもみ合いから70銭に下落した後、90銭に持ち直し引けた。発表されたリッチモンド連銀製造業指数(2月)は前月14と変わらず14。消費者信頼感指数(2月)は91.3と前月88.9から予想90.0を上回る回復を示した。

水曜日の東京市場は祝日明け。日経平均は30,000円近辺で安寄りした後は29,900円近辺で一旦踏みとどまったが引けにかけて下げ足を速めて安値引け。月曜引値比▲484円安の29,671円と大台を大きく割り込んだ。

米国市場でのグロース株軟調が波及。高PER銘柄、高値圏の値がさ株中心に利益確定売りが優勢となった。香港株が取引印紙税引き上げで大幅安となったことも心理的な圧迫要因に。

ドル円相場は105円30銭で始まり底固く、午後は105円50銭近辺でもみ合い。欧州市場にかけては80銭に上昇した。ユーロ円相場は127円90銭で始まり128円20銭近辺でもみ合い、さらに128円70銭近辺に上昇した。ユーロドル相場は1.2150~60で上下した後、欧州市場では1.2170近辺に上昇。日本株が下落するなか円が全面安となった。欧州市場では株価はしっかり。

ドイツGDP(10-12月期改定値)が前期比+0.1%から+0.3%へ上方修正された。米国市場では朝方10年債利回りが1.4%を突破して一時1.435%に上昇。ドルが一段高。ドル円相場は106円10銭へ上昇、ユーロドル相場は下落して1.2110へ下落した。

ただパウエル議長が下院での議会証言で、物価が目標を達成するには3年以上かかる可能性がある、と述べたことから、金融緩和長期化との見方が強まり、10年債利回りは低下に転じた。引けは1.37%。

米国株は上昇。長期金利が前日水準に戻したことでやや不安感が後退した。ジョンソン&ジョンソン社のワクチンが近く承認されると報じられたことが景気敏感株を押し上げた。

大手企業163社が1.9兆ドルの経済対策成立のため超党派で行動するよう議会に書簡を送った。

原油価格WTIはさらに大幅高となり63.22ドルに上昇。原油高と長期金利上昇がエネルギー関連株、金融株を押し上げた。

NYダウは一時32,000ドルをつけるなどして前日比+424ドル高の31,961ドルと史上最高値を更新。ナスダックは+132ドル高の13,597ドル。VIX指数は▲1.70ポイント低下して21.41。米長期金利上昇が一服したことでドル高も一服。

ドル円相場はじり安となり引けは105円90銭近辺。ユーロドル相場はじり高となり1.2170に反発。ユーロ円相場は128円40銭に下落していたが反発し、引けは128円80銭台。発表された米国の新築住宅販売(1月)は季節調整済み年率換算で923千戸と前月842千戸から大幅増。

木曜日の東京市場では日経平均が大幅反発し、前日の大幅な下落をすべて取り戻した。ワクチンの普及期待で米国株・NYダウが史上最高値を更新したことを好感。パウエル議長が金融緩和を長期化するとの発言もリスク選好を支えた。

日経平均は30,100円台で大幅高寄り。ただその後は30,100円~200円でもみ合い、横ばい、そのまま引けた。前日比+496円高の30,168円。中国・上海株指数は3日続落の後でこの日は反発。

ドルは底固く推移し、円は軟調。ドル円相場は105円90銭で始まり昼前に106円10銭に上昇。午後に105円90銭に押し戻されたが夕刻から欧州時間には106円10銭に戻した。

米10年債利回りがアジア時間もじり高となり欧州時間には1.45%に上昇しドルを支えた。

ユーロ円相場は128円80銭で始まり128円90銭~129円ちょうどでもみ合い推移。ユーロドル相場は1.2170で始まり60~80で上下。夕刻は1.2170。

米国株は前日引値水準で始まったが一貫して下落し大幅安、安値引けとなった。米7年債入札が不調で債券価格が下落・金利が上昇。

セントルイス連銀総裁が、米10年債利回りの上昇は成長見通しの改善やインフレ期待の持ち直しを反映したもので妥当だ、と長期金利上昇を容認したことも押し上げ要因に。米10年債利回りは一時1.6%台に急上昇し、引けはやや下げたが1.525%と一気に1.5%に乗せた。

FRBが市場の予想より早く量的緩和の縮小を検討するのではないか、との不安も広がり、高PER銘柄、ハイテク株を中心に全面安となった。NYダウは前日比▲560ドル安の31,402ドル。ナスダックは同▲478ドル安の13,119ドル。VIX指数は前日から+7.55ポイントの大幅上昇し28.89。

ドル円相場は106円10銭を中心にもみ合い。その後一時106円40銭に上昇したが106円10銭割れに反落、引けは106円30銭。ユーロドル相場は上昇して1.2230を中心に1.2110~40のレンジで上下動。引けにかけてはユーロ安ドル高となり1.2170に反落した。

ユーロ円相場も同様の値動き。大きく上昇して129円80銭を中心にもみ合い。その後は大幅反落して129円割れで下げ止まり。引けは戻して129円30銭近辺。

発表された米国の週次の失業保険新規申請件数は730千件と前週841千件から減少して予想838千件を大きく下回った。継続受給者数も4,419千件と前週4,520千件から減少。耐久財受注(1月)は前月比+3.4%と9か月連続で増加。前月も+0.2%から+1.2%に上方修正された。

金曜日の東京市場では日経平均が大幅安。米長期金利が大幅に上昇し米国株が下落したことを受けて警戒感が広がった。成長株中心に全面安。半導体関連、ソフトバンク、ユニクロ、など大型株が日経平均の大幅下落に寄与した。寄付きは29,600円近辺だったがその後29,200円近辺まで前日比▲900円超の下落。昼前には29,400円近辺に持ち直してもみ合い。

米10年債利回りが1.45%に低下したこともやや支え。しかし午後には米10年債利回りが上昇に転じ、日本国債10年債利回りも一時0.175%まで上昇し5年ぶりの水準。日銀が許容する変動レンジの上限0.2%に近づいた。

日経平均は後場に再び軟調。次第に下げ足を速め、引け際に下げ幅を縮める場面もあったが結局下げ止まらず。前日比▲1,202円安の28,966円と大台の29,000円を割り込んで引けた。

為替市場では昼にかけて株安のなかクロス円相場中心にやや円高に振れた。ドル円相場は106円20銭~30銭のもみ合いで始まり40銭に上昇した後、米10年債利回りの低下で昼には105円90銭に下落。ただ午後には米長期金利が上昇に転じドル円相場は持ち直し106円20銭に上昇し、夕刻は106円ちょうど近辺。

ユーロ円相場は129円30銭から50銭に上昇した後は株安のなか円高が進み、128円90銭~129円10銭で上下し夕刻は128円70銭。ユーロドル相場は1.2170で始まり方向感なく振れ幅を1.2140~80に広げて推移し、夕刻には1.2130~50に下落した。欧米市場に入っても振れ幅の大きい値動き。

米10年債利回りの上昇が一服し1.41%に低下したがドルは概ね堅調だった。ドル円相場は欧州時間に106円50銭に上昇。

その後20銭に押されたが米国時間には106円70銭に反発して引けは106円50銭~60銭。ユーロドル相場は1.21ちょうどにユーロ安ドル高となり、その後は1.2140に反発したものの、1.2070割れに下落して引けは1.2070台。アジア市場から移管してユーロ安ドル高傾向が続いた。ユーロ円相場は129円を挟んで128円70銭~129円30銭で上下した後、ユーロ安に押されて128円60銭~70銭で引けた。

米国株は長期金利上昇一服で主力ハイテク株には買いが入りナスダックは小幅反発。前日比+73ドル高の13,192ドル。しかし持ち高調整や利益確定売りが優勢となりNYダウは大幅安、前日比▲469ドル安の30,932ドルで引けた。

発表された米国の個人所得・消費支出(1月)は前月比+10.0%・+2.4%と良好。一方、シカゴ購買部協会景気指数(2月)は前月63.8から59.5に悪化した。なお米国下院で追加経済対策が承認された。今後は上院審議へ。内容の修正・減額がどの程度となり承認されるか。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

今週は重要な経済指標発表が続く。米国ではワクチン接種が開始され感染拡大鈍化から行動規制も緩和されている。指標で景気回復継続が確認されるか。とくに雇用改善が勢いを増すか。

月曜日 ISM製造業景気指数(2月、予想58.8、前月58.7)

水曜日 ISM非製造業景気指数(2月、予想58.7、前月58.7)、ADP雇用報告(2月、雇用者数前月比、予想+165千人、前月+174千人)

木曜日 週次の雇用保険新規申請件数、製造業新規受注(1月、前月比、予想+1.0%、前月+1.1%)

金曜日 貿易収支(1月)、雇用統計(2月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+143千人、前月+49千人、失業率、予想6.4%、前月6.3%、平均時給・前年同月比、予想5.3%、前月5.4%)

2.ベージュブック(地区連銀経済報告)

水曜日にベージュブックが公表される。16日・17日の両日に開催されるFOMCでの景況判断の基礎となる。パウエル議長は足元の景気動向に慎重な見方を維持しているが、このところ強めの指標が散見される。

ダウンサイドリスクは遠のいたとの見方が大勢。足元の景気動向について、定性的にどのような見方がされるか。強めのニュアンスが漂えば、引き続き米長期金利の上昇基調が維持されよう。

3.長期金利動向、株価動向

引き続き米国の長期金利動向・株価動向には留意を要する。長期金利上昇は一服しつつあるが、経済対策は下院で承認され一歩前進したことで反転低下は望み薄。景気にポジティブな見方が強まれば、業績期待よりも金融緩和の修正への警戒感は強まろう。

とくに雇用・賃金の動向は市場のインフレ期待や金融政策への見方に影響しよう。決算は一巡し業績期待は織り込まれたなかで、株価調整がなおも続くリスクもある。市場全体のリスク選好後退、ドル持ち直しが続くか。

ほか、5日木曜日に中国・全人代が開幕する。また中国で週初に景況指数の発表が続く。

◆今週のMRA's Eye


想定外の米長期金利上昇とドル円相場

先週は米長期金利が大きく上昇。米10年債利回りは一時1.6%台に乗せた。2月下旬のこの時点でのここまでの長期金利上昇は、大方の市場参加者にとって想定外だろう。昨年末時点での今年の見通し・予想をみても、最終的には1.5%程度までの上昇を見込む予想もあったが、大勢は1%台前半までだった。それもまだ2か月も立たない時点では、タイミングにおいても想定をはるかに超えている。

想定外の事態が生じれば、当然、投資戦略は修正を余儀なくされる。超低金利を前提としたポジションは維持が困難となる。株式市場では高PER(株価/1株利益)=低株式益回り(1株利益/株価)の銘柄の株価が修正を受ける。ハイテク株中心に株価調整が進むのは理にかなった動きだ。

景気回復・企業業績改善で1株利益の成長が見込めれば、金利上昇のマイナスインパクトを吸収できる。

景気敏感株のうち、実際にそれが見込める銘柄であれば想定的には調整が軽微で済む可能性もある。ただ総じてここまで株価が期待先行で上昇し、PERが大きく上昇、株式益回りが大きく低下していれば、ハイテク株か景気敏感株かにかかわらず、株価は下落する。

総じてみれば、景気実態と株価の乖離がようやく修正される局面となったということになる。株式市場は金融相場から業績相場への移行期にあったが、金融相場の要素が強すぎ、また業績改善期待が高まり先取りし過ぎたために、業績相場への移行において生じる長期金利の上昇による株価調整圧力が、株価下支えを上回ってしまったといえそうだ。ここからはしばらく高値圏での乱高下、ないし調整局面が長期化する可能性がある。

名目長期金利の上昇でも実質長期金利がなお低水準にあることで株価が支えられるとの見方がある。しかしその議論は企業利益がインフレに連動して同率で増加することが前提だろう。長期金利だけインフレ率で割引いて実質長期金利で考え、株式益回りからはインフレ率を差し引かないでみることは、フェアではない。

企業利益は、販売価格に原材料価格や人件費の増加を転嫁できなければ、むしろ減少する。すでに原油をはじめとして商品市況は上昇しており、また輸送コストもコンテナ運賃の急騰にみられるように上昇している。

これは、当該業種が利益を得られる可能性があるものの、全般的には企業利益をコスト面で圧迫する要因だ。需要の強さによって販売価格を値上げできるか、が鍵で、仮にそうでなければ利益予想は下方修正をする必要すらあるだろう。

FRB当局者のコメントからは現状の長期金利上昇を容認するスタンスがうかがえる。長短金利差の逆転、逆イールド化は、以前の局面で景気後退シグナルとして受け止められていた。

その逆に、イールドカーブのスティープ化、長短金利差の拡大は、景気見通しに対するポジティブなシグナルとしてむしろ好感しているようでもある。株価上昇その他の資産価格上昇の行き過ぎは、金融緩和の弊害とも言われていたが、それについては容認してきた。

逆に、長期金利上昇により株価や資産価格が調整したとしても、景気そのものの見通しが崩れない限り、とくに意に介することはなさそうだ。むしろ株価調整は健全な動きとして静観を続ける可能性が大きい。また実際にイールドカーブコントロールを行おうとしても、米国債市場は巨大すぎて不可能との認識もあるだろう。

10年債利回りとFF金利の格差の過去の動向を振り返れば、最大で3.0%~3.5%に拡大したことがある。現状はまだ1.5%程度であり、ピークの半分に満たない。ゼロ金利政策を継続するなかでも、財政拡大が景気押し上げとなれば、さらに10年債利回りが上昇するリスクもある。

その結果、業績改善は株価を支えるが、金利をベースとした株価のバリュエーションは割高さを増すことになり、株式市場の調整は長引く可能性がある。

その他の市場も含めて全体の流れをみれば、ひとつずつ変化が生じている。米国の長期金利が底を打ち上昇に転じたのは昨年の夏だ。景気回復期待が金融緩和から財政拡大・ワクチン接種による感染拡大の制御、に移行したことによる。

ただ期待インフレ率が同時に上昇した結果、実質長期金利はなお低下・低迷していた。ただ年末には実質長期金利の低下にも歯止めがかかった。金価格の上昇には歯止めがかかり、ドル安傾向にも変化の兆しが生じ始めた。

ただ株価はなお堅調を続け、ビットコインなど仮想通貨は急騰するなど、資産価格の上昇には歯止めがかからなかった。

ただ2月になると、ドルの底打ち反転も明確になり始めた。リスク選好でドル安、という相関がまず初めに崩れたのがドル円相場だ。リスク選好のなかでドル安・円安双方が進み、そのなかでドルの弱さが際立ったことで、ドル円相場もドル高円安傾向にあった。しかしそれが104円台で底固くなり、米10年債利回りが顕著に上昇したことでドル安円高トレンドをブレーク。ドル高円安へトレンド転換した。

なおもドル高へのトレンド転換を認めない見方も根強い。リスク選好が維持され、FRBが現状の金融緩和を継続すれば、長期金利が上昇してもドル安が続くとの見方だ。足元のドル円相場の上昇も、ドル高ではなく円安とみて、なおドル安基調は続いているとする。

しかし米国経済が財政支出により相対的に堅調となり、世界経済をけん引するとなれば、金利差によるドル堅調に回帰する可能性が高い。金融政策はいずれの先進国も緩和維持、ほぼゼロ金利だ。

しかし米国FRBが想定外に早く「一抜け」する可能性が高まったと市場が認識するだけでドルは独歩高となりやすい。米長期金利の上昇はリスク資産や新興国市場の逆風となる。それもドルを支持する要因となろう。

これはリスク選好の後退であり全般的な円安に歯止めをかける要因だ。ただリスク選好のなかで円売りポジションはさほど積み上がっていない。むしろ対ドルでの円買いポジションがクロス円での円売りポジションを上回っていたようにみえる。

株式市場の調整が長引きリスク選好が後退した場合、クロス円相場、ユーロ円相場などでの円高が生じる可能性がある。ユーロ円相場は先週一時130円近くまでユーロ高円安が進んだ。これが大きく反転下落するようならドル円相場にも円高圧力がかかる。ただそれは一時的だろう。

米金利上昇によるリスク選好の後退においては、ドルを押し上げる力が強く働きそうだ。このもとではユーロ円相場の下落、ドル円相場の上昇、という逆行が生じやすい。

これは株高のもとでドル全面安となり、ユーロ円相場が上昇、ドル円相場が下落、したことの裏返しだ。大きな流れが反転・修正に転じたのであれば、円全面高ではなくこの逆行が当面もっとも生じやすいシナリオだろう。ドル円相場は100円割れとの予想も相当見受けられた。しかし足元のリスクは逆に想定外のドル高かもしれない。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :106.57(+0.36)
ユーロ :128.67(▲0.65)
英ポンド :148.399(▲0.43)
豪ドル :82.126(▲1.51)
カナダドル :83.651(▲0.61)
スイスフラン :117.305(▲0.10)
ブラジルレアル :19.0321(▲0.18)
中国人民元 :16.452(+0.01)
韓国ウォン(日本円=100) :9.472(▲0.02)

【対ドルレート】
ユーロ :1.2075(▲0.010)
英ポンド :1.3933(▲0.008)
豪ドル :0.7706(▲0.017)
カナダドル :1.2738(+0.014)
スイスフラン :0.9085(+0.004)
ブラジルレアル :5.6023(+0.083)
中国人民元 :6.4737(+0.019)
韓国ウォン :1123.53(+15.59)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :1.40(▲0.12)
米2年債 :0.13(▲0.05)
日本10年債利回り :0.16(+0.01)
日本2年債利回り :0.16(+0.02)
独10年債利回り :▲0.26(▲0.03)
独2年債利回り :▲0.66(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :30,932.37(▲469.64)
NASDAQ :13,192.35(+72.92)
S&P500 :3,811.15(▲18.19)
日経平均株価 :28,966.01(▲1202.26)
ドイツ DAX :13,786.29(▲93.04)
インド センセックス :49,099.99(▲1939.32)
中国上海総合 :3,509.08(▲75.97)
ブラジル ボベスパ :110,035.20(▲2,221.20)
英国FT250 :20,910.37(▲287.75)
ビットコイン :45672.05(▲2411.45)

【主要商品価格】
WTI :61.50(▲2.03)
Brent :66.13(▲0.75)
米ガソリン :187.70(▲1.53)
米灯油 :185.65(▲5.01)

金 :1734.04(▲36.52)
銀 :26.67(▲0.76)
プラチナ :1193.02(▲26.33)
パラジウム :2327.25(▲81.88)
銅 :9120.50(▲442:52B)
アルミニウム :2202.50(▲25:0B)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :1405.25(▲0.75)
シカゴ とうもろこし :555.50(+0.75)
シカゴ小麦 :655.00(▲16.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。