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長期金利高止まりとドル高進行で調整継続
  • MRA商品市場レポート

2021年3月1日 第1913号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「長期金利高止まりとドル高進行で調整継続」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はほとんどの商品が下落した。各国政府の財政出動が14兆ドルに達し、一方でコロナのワクチン接種が進んでおり「正常化するけれども経済対策と金融緩和のみ残る」ことによるインフレへの懸念が強まっていたことがリスク資産価格を押し上げてきたが、価格上昇要因の1つである、1.低金利、2.ドル安、が景気への楽観から逆回転を始めたことが材料となった。

また、昨日はG20がオンラインで開催されたが、世界経済の回復の脆弱さを主張、早期の財政出動・金融緩和解除を回避する方向で合意。7月以降にデジタル課税のルール合意を目指すことが確認された。

そもそもイエレン議長が財政出動の継続をG20前に書簡で送付しており、上記の内容は折り込み済。結局「今はいいのだが、先々大きな調整があるかもしれない」と言うことがリスクだろう。

【本日の見通し】

週明け月曜日も長期金利の動向が価格を左右するが、週末の下落が大きかったことから一旦買い戻しが入るものと考える。ただし、長期金利の上昇傾向とドル高地合はしばらく続くとみられ、最終的に価格には下押し圧力が掛るものと予想する。

予定されている材料としては、米ISM製造業指数に注目している。これまでの経済対策はサプライ側によった政策になるためこうした製造業関連の統計は、期待先行で上昇しやすいが、逆に正常化が進む中では下押し圧力が強まると思われる。

先行指標となるシカゴ購買部協会指数は59.5(市場予想61.0、前月63.8)と予想外の減速となっており、ISM製造業指数が悪化する可能性は高い。

今のところ市場予想は58.6(前月58.7)と小幅な減速、新規受注については60.0(61.1)と減速が見込まれている。通常通りであれば景気循環銘柄価格の下押し要因となる。

また、明日であるが中国の製造業PMIにも注目したい。市場予想は51.0(51.3)とやはり減速見込みであり、予想通りであれば特に鉱物資源価格の下落要因となる。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は下落した。米景気回復期待を受けた長期金利の上昇と株安、それに伴うドル高進行が価格を下押しした。ただし、景気回復に伴う需要の回復期待も根強いため大幅な調整にはならなかった。

石炭価格(豪州炭)は小幅に下落。冬場があと1ヵ月程度で終了する一方、足下の需要増加が価格を下支えしている。バルチック海運指数は小幅に下落。

極東の天然ガス指標であるJKMは小幅に反発。欧州天然ガスは小幅に下落、米天然ガス価格も小幅に下落した。

長期金利の上昇が一服したことから、週明け月曜日は一旦買い戻しが入ると考える。しかし、週末に発表されたシカゴ購買部協会指数の減速を受けてISM製造業指数も減速が予想されることから、下落に転じると考える。

石炭・天然ガスはまだ気温が低いこともあり、スポット価格は高値圏での推移を続けるものと思料。

◆非鉄金属

LME非鉄金属は長期金利の上昇が一服したもののドル高が進行したことで、利益確定の売りに押されて大幅に水準を引き下げた。

ここまでの価格上昇はコロナの影響による生産国の供給制限と、先進主要国の財政政策への期待によるものであり、ドル高などの要因は価格の下押し要因となりやすい。

週後半の下落幅が大きかったこと、長期金利の上昇が一服したことから一旦買い戻しが入ると考えるが、米ISM製造業指数は鈍化が予想されているため利益確定の売りの動きが継続、結局下落すると予想する。ただし、各国の財政出動への期待と、LME指定倉庫在庫の減少継続から下落余地も限定されると見る。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅下落、大連原料炭先物は下落、上海鉄鋼製品先物価は直近限月・中心限月とも小幅に下落した。

株価が大きく調整する中で、住宅セクターの投資需要も減少するとの見方から先物の調整圧力が強まった。

本日も高値圏での推移を予想する。中国では春先の建設シーズンに向けて季節的な需要の増加が見込まれること、中国政府も住宅セクターの沈静化のために、直ちにブレーキを踏む意向は今のところないため。

◆貴金属

金価格は大幅に下落。長期金利の上昇は一服したものの、ドル高の進行が継続したため、リスク・プレミアムが剥落する形で大幅な調整となった。なお、長期金利の上昇が一服したため、実質金利で説明可能な金の基準価格は1,570ドルに上昇している。

銀価格は金価格の下落もあって大幅に調整、プラチナも投機買いに支えられていたこともあり大きく調整、株価の調整もあってパラジウムも下落した。

週明け月曜日は長期金利上昇が一服したため、一旦買い戻しが入ると考えるが、景気への楽観から長期金利上昇、ドル高圧力は持続するとみられやはり軟調な推移になると予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は総じて軟調な推移となった。ドル高が持続、新規材料に乏しい中で利益確定の動きが強まったため。

なお、コンサルタント会社のAGリソースは、2020-2021年のブラジル産大豆の生産見通しを発表したが、1億2,998万トン(従来見通し1億2,800万トン)に引き上げた。

週明け月曜日は、ドル高圧力が継続するとみられることから軟調な推移になると予想。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日、バイデン政権はシリアの親イラン系武装勢力の勢力圏を空爆した。しかしこの空爆の前に、イスラエルのネタニヤフ首相、サウジアラビアのサルマン国王、イラクのカディミ首相とは電話で会談をしており、今回の空爆は事前に調整済だった可能性が高い。

今回の空爆はイランと対立することが目的ではなく、イランの核合意復帰に向けて、「交渉のテーブルに着きたいならば、中東の他地区での挑発行為をやめよ」といった圧力を掛けたものだ。

しかし同時にイエメンの親イラン組織であるフーシ派のテロ組織指定も解除し、サウジに対するイエメン内戦向けの武器売却も停止、またUAEに対するF35の売却とアルミ関税撤廃方針も解除した。

これらの一連の動きはイランとの核合意復帰に真剣、ということである。米バイデン政権は中東和平を進捗させることで、中東に展開している米軍を撤収、人的・軍事的資源を対中国に裂くための布石、と言えるだろう。

しかし、上述のサウジアラビアとの電話会談で、米サキ報道官は「バイデン大統領のカウンターパーティはサルマン国王であり(暗にムハンマド皇太子ではない)とした。

これは米民主党が最も重要視する人権問題でカショギ氏暗殺を主導したのがムハンマド皇太子であり、ムハンマド皇太子は中東和平に寄与しない人物、と判断している可能性が高いことを示唆している。

実際、カショギ氏暗殺の首謀者はムハンマド皇太子であると結論づける、CIAの調査結果を公表。当然サウジアラビアはこれを全面否定している。

そもそも米民主党は9.11の実行犯の大半がサウジアラビア人であり、これに対して2016年9月、「テロ支援者制裁法(JASTA)」を成立させている(オバマ大統領はこれに拒否権を行使したが結局成立)。

また、バイデン政権は就任後のサウジアラビアへの連絡は2月25日。対立する中国ですら2月11日に電話をしているのにここまで遅くなった。これらの一連の米民主党の対応は、ムハンマド皇太子と言うよりもサウジアラビアという国との関係を米政権は問題視している、ということである。

今後、米政権のサウジアラビアへの関与が、ムハンマド皇太子の皇位継承にまで影響を及ぼすかどうかは、中東情勢を考える上で非常に重要になってくるだろう。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合。

・「トリプルブルー」になったことで財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならないが、足下、どの中央銀行・政府も景気過熱は意識しているものの沈静化させるタイミングと判断していないため、しばらくは顕著な価格上昇リスクとなる見込み。

ただし、ある意味「意図的にミニバブルを形成」している状態ともいえ、先々の下落リスクが大きくなっている点もリスクに。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は低くなくなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・米国の財政状況悪化、緩和規模拡大によるドル水準の低下リスク(ドル減価により、名目ドル建て資産価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は調整圧力が強まる展開を予想する。

短期的に原油価格の上昇要因となっていた米シェールオイルの生産減少が、来週以降に回復する見通しであること、4月以降、サウジアラビアが自主減産を終了する見通しであること、ファイナンシャルな面では米景気回復期待で長期金利に上昇圧力がかかっていることが材料。

一方で、FRB議長が緩和解除は当面ない、との意向を繰り返し表明していることや、米イエレン財務長官が早くも次の財政出動を示唆する発言をしていることなどが、ファイナンシャルな面で価格を下支えすると考える。

また、本日の動きではないが、ワクチン接種が進みヒトの移動制限が早期に解除された場合、供給が間に合わずに価格が急騰するリスクは無視できなくなってきた。

弊社は2021年内に発生すると想定していなかったが、原油価格が移動制限が解除になる可能性がある夏場に急騰し、70ドルを上回る可能性は高まったと言わざるを得ない(需要の回復に供給が間に合わない時間差のリスクの顕在化)。

とは言え、早ければ2022年頃からと見られる米国の金融緩和解除や、OPECの増産、シェールオイルの増産を受けて2022年には一旦調整局面があり、その後、持続可能な上昇になると予想する。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(供給の時間差リスク)。

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングを制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い。

・イランの反米感情が高まり、中東の不安定さが増す場合(価格上昇要因)。

イランでは6月に大統領選挙が予定されており、国内保守派に配慮してロウハニ大統領はタカ派的な発言をする可能性があるが、制裁解除に向けた融和的なコメントも欧米向けに発信せざるを得ず、ロウハニ大統領の発言で価格は左右される見込み。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合(地域安定で原油生産増加、短期的には価格の下落要因に。ただし相当発生の可能性が低いリスクシナリオ)。

・ワクチン・治療薬が想定以上に早く準備でき、移動制限が急速に解除される場合(価格上昇要因)。

【石炭価格見通し】

石炭価格は高値を維持するが、春先に向けて水準を切り下げる展開になると考える。

高値維持の背景は、中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、冬場で炭鉱が稼働し難いこと、港湾在庫の水準の低さに反映されるように、供給が十分ではないことが材料。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていること、春先に掛けては季節的に需要が減少することから徐々に海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

12月の中国の石炭輸入は気温低下の影響で前月から大幅に増加。前年水準の14倍、前月から3倍強となる3,907万5,000トン(前月1,176万トン)と顕著に増加した。

中国は国内の石炭産業の強化と政治的に対立する豪州からの輸入制限で、国内生産を増加させる方向性に舵を切っているが、足下の気温急低下を受けてそうも言っていられなくなったようだ。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は冬場の終了が近づいていることから下落すると予想する。しかし、在庫が十分ではないため底堅い推移になると予想する。

欧州も気温低下と、昨夏以降の在庫減少で域内需給がタイト化、引き続き在庫水準は低いことから、高止まりと考える。しかし春先に掛けては季節的な需要の減少で価格は軟調になると予想する。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・最大供給国であるロシアの増産。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】・WTIは投機の買いが増加、ショートも増加したがネット買越し幅は拡大。Brentは高値圏にあることからショートが増加し、ネット買越し幅は縮小している。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが682,881枚(前週比 ▲14,214枚)ショートが171,041枚(▲11,341枚)ネットロングは511,840枚(▲2,873枚)

Brentはロングが414,238枚(前週比+1,678枚)ショートが65,454枚(+426枚)ネットロングは348,784枚(+1,252枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は短期的には調整圧力が強まる展開になると予想する。かねてから指摘してきた景気の正常化に伴う長期金利の上昇が顕在化しており、それに伴うドル高進行が、ファイナンシャルな要因で上げが加速してきた非鉄金属セクターの下押し要因となるため。

ただし、各国の財政出動並びに金融緩和スタンスは継続される見込みであり、中国のみならず、米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、4年で2兆ドル規模の経済対策(クリーンインフラ投資)を検討、中国も7月の共産党結党100周年記念までは少なくとも景気刺激を続けると見られる。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

なお、中期的には調整圧力が強まる展開になるとの予想は、現時点では変更する必要はないと考えている。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強めていること、米経済統計回復に伴うドル高進行、早ければ2021年末頃から始まる可能性がある、米テーパリング開始の可能性、生産国の生産が回復する可能性が高いことが材料。

なお、現在の価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化が牽引する価格上昇ではない。

例えば、中国の超高圧送電線網整備額は当初予定比+61%の1,811億人民元とする方針が今年の4月に示されており、電線向けの需要が銅、並びにアルミの需要を押し上げている。アルミは配電には利用されないが、超高圧電線には使用される。

このほか、バイデン政権の政策推進による環境重視の姿勢の強まりが、いわゆる「バイデン・トレード(化石燃料売り・省エネ金属買い、ただし金属生産の際には二酸化炭素が出ることは変わらない)」を加速させ、投機的な買い圧力を強めている。

バイデン・トレードは短期的には顕在化する需要ではないが、省エネ金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性があるため、足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

中国が豪州の銅鉱石輸入を禁止していることで、精錬銅の需要が増加し、ベンチマークの銅価格が堅調に推移していることも地合を強くしよう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資を行う場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク。

コロナの影響もあって、2020年12月1日時点の鉱山生産への影響は全体で184万1,000トン、コロナの影響によるものは112万3,000トン。

精錬品生産で影響を受ける規模が、全体で141万6,000トン、コロナによるものが62万8,000トン。

・中国の環境規制強化やコロナの影響再発に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・先週、投機筋の買いが再び加速。大幅な買越しとなっている。投機筋の比率を見ると最も高いのが亜鉛(46.1%)、アルミ(40.9%)、ニッケル(38.7%)、CME銅(35.6%)、銅(28.1%)、鉛(25.2%)、錫(3.0%)。

・LME投機筋買い越し金額 前週比+10.0%の336億ドル(前週 305億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+5.5%の6,839.8千トン(前週 6,483.0千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の景気先行指標をみるに堅調な推移を続けると考える。中国の顕在需要が増加していることが背景。

今後も、中国政府のインフラ投資を柱とする経済対策が今年7月の中国共産党結党100周年記念まで続くと予想されること、これに加えて米国もインフラ近代化を目的とした公共投資を行う可能性が出てきたこと、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

中国政府は住宅セクターのバブルを懸念し始めており、偽装離婚による住宅取得を規制するなどの動きを見せている。しかし、同時に自動車取得を促す政策も発表(ナンバープレート取得条件緩和、新エネルギー車購入に補助金、自動車ローンの頭金引き下げ)しており、政策には一貫性がない。バブルは警戒しているが、直ちに規制を強めることはなさそうだ。

ただし、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。目先の景気刺激が終了し、景気の巡航速度への回復が確認されるタイミングで景気刺激と鉄鋼増産は回避される可能性が高く、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

1月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は44.3(前月45.8)と大幅に減速した。生産指数は48.7(47.7)と小幅に上昇しているが、新規受注は35.0(42.0)と急減速。これに対して輸出新規受注は55.2(54.4)と改善している。

このことは、中国経済並びに世界経済がワクチン開発・接種の進捗に伴い正常化に向かう動きになりつつあり、商業ベースではエッセンシャルな需要が回復、中国も輸出増加のバイアスが掛かり始めているためと考えられる。

しかし、市場規模としては圧倒的に中国の国内市場規模の方が大きいため、徐々に鉄鋼セクターには減速圧力が掛ることになるだろう。

実際、新規受注は減速し、それと同時に完成品在庫(33.5→48.7)、原材料在庫(32.1→42.3)と急増しており、新規受注在庫レシオは大幅に低下している。このことは鉄鋼製品並びに鉄鋼原料価格を下押しすると予想される。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、12月は137万5,000トン(前月185万トン)と減少傾向を持続し、過去5年レンジに戻った。12月の国内生産は季節性もあるが9,125万トン(前月8,766万トン、10月 9,220万トン、9月 9,256万トン)と回復した。

その一方、12月の鉄鋼製品輸出は485万トン(前月440万トン)と増加し、過去5年レンジの下限を回復した。このことは中国の鉄鋼製品の国内需要が減速し、顕在需要が減少を始めている可能性があることを示唆している。

弊社はこの鉄鋼製品の輸出入動向に注目しているが、輸出/輸入とも過去5年レンジに復帰の過程にあり、徐々に過剰な国内依存の需要環境から、輸出に牽引される形での鉄鋼業の操業状態(通常状態)に戻ると予想している。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが在庫水準は前週比+386万7,000トンの1,782万6,000トン(過去5年平均 1,647万1,000トン)と、例年よりも在庫水準は高くなった。

これまで需給はタイト化しているとみられたが、中国政府が過度な住宅セクーの過熱を警戒しているせいか、やや緩和方向にシフトしている可能性がある。

原料である鉄鉱石の12月の輸入は前年比▲4.5%の9,675万トン(前月+8.3%の9,815万トン)と高い水準を維持しているが減速、過去5年レンジに復帰した。このことは中国の国内需要が減速している可能性を示唆している。前年水準を下回ったことで、中国の国内需要は減速傾向にあると判断される。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+275万トンの1億2,865万トン(過去5年平均1億3,0886万6,000トン)、在庫日数は23.5日(過去5年平均 30.5日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均を回復しているが、鉄鋼生産量の水準対比ではまだ在庫水準は低いといえる。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏でもみ合うものと考える。長期金利上昇、景気回復期待でのドル高進行が米雇用統計の結果を受けてややトーンダウン、結局景気刺激や低金利政策の方針に当面変更はないとの見方が強まっているため。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,570ドルに上昇。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は161ドルと、▲80ドル低下している。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、65.0倍。過去1年を基準にすると86倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

金は高値を維持する見通しだがバイデン大統領誕生により、太陽光発電向けに用いられる「バイデン銘柄」であることもあって、需要構造の変化が価格を下支え(金銀レシオは低下)するものと予想。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。足下は、各国の自動車セクターの回復期待と、主要生産国である南アフリカの供給不安が強まっており、価格を押し上げている状況。

しかしそれ以上に貴金属セクターの「基準」となる金価格が長期金利上昇で調整しているため、しばらくは下押し圧力が強まることになると見る。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、から、一旦下落後、上昇に転じると予想される。

コロナショック後、パラジウム価格は基本的にETF価格との連動性が高まった(自動車向けの需要減少で余剰が発生したため)が、足下、ETFの残高の変動以上に価格が上昇している状況。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

1月の米自動車販売は年率1,663万台(前月1,627万台、市場予想1,618万台)と減速した。

中国の1月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+30%の250万台)前月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と前年比の伸びが加速している。

自動車販売は回復しているが、不要不急の消費であるため中国を除いては本格的な回復にはまだ時間がかかる見込み。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが284,081枚(前週比 ▲19,502枚)、ショートが68,348枚(▲266枚)、ネットロングは215,733枚(▲19,236枚)、銀が78,710枚(▲2,938枚)、ショートが31,067枚(▲757枚)、ネットロングは47,643枚(▲2,181枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが46,903枚(前週比 ▲1,334枚)ショートが11,936枚(+276枚)、ネットロングは34,967枚(▲1,610枚)

パラジウムが4,286枚(▲144枚)、ショートが3,898枚(+489枚)ネットロングは388枚(▲633枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆は中国の需要が想像以上に堅調であること、北米の降雪や気温低下の影響による供給懸念から、しばらく高値圏で推移すると考える。

しかし、米長期金利上昇によるドル高を受けて、投機的な視点で利益確定による売り圧力が強まると予想されるため徐々に水準を切り下げる動きになると考える。

足下の価格上昇を受けて作付け面積の拡大が全ての穀物で見込まれており、価格の下押し要因となる。

しかし、寒波と降雪の影響で作付けに影響がでる可能性がある。冬場の降雪量が多かった場合、通常であれば春の土壌水分改善で播種が進み豊作に繋がると判断されるのだが、想定以上の雪解け水が発生した場合には逆に耕作が不可能になるため、価格の上昇リスクとなり得る。

また今穀物年度は小麦を含む穀物の輸出制限の動きが生産国で強まっている。いずれも国内供給を確保することが目的だ。

ロシアは12月に穀物価格の高騰を受けて輸出制限の動きを加速、1月からひまわりの種・菜種に輸出税を課すことを決定、2月からは小麦に輸出税を賦課、大麦、トウモロコシも対象とすることとなった。

ウクライナも国内飼料供給確保の観点から輸出枠に制限を設定、アルゼンチンはトウモロコシの輸出禁止を決定(後に撤回)するなど、国内供給への警戒が強まっている。

Locust Watchではエチオピア、ケニアで群生が発生していたが、アラビア半島を北上し始めている。

昨年末も大型のサイクロンがアラビア半島~北アフリカを通過、豪雨が観測されており、バッタの成育に良好な環境が提供されている可能性があり、このままだと今年も蝗害が起きる可能性は否定できない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210223DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象の発生による穀物供給減少リスクの顕在化。害虫の発生、生産地の土壌破壊など(すでに一部顕在化)。

春から夏にかけて発生する可能性が高まっているエルニーニョ現象の影響による不作。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・2月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 172.0Bu/エーカー(NA、172.0)大豆 50.2Bu/エーカー(NA、50.2)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)

・2月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 141億8,200万Bu(NA、141億8,200万Bu)大豆 41億3,500万Bu(NA、41億3,500万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)

・2月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 26億Bu(25億5,000万Bu)大豆 22億5,000万Bu(22億3,000万Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億8,500万Bu)

・2月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億200万Bu(13億8,388万Bu、15億5,200万Bu)大豆 1億2,000万Bu(1億2,071万Bu、1億4,000万Bu)小麦 8億3,600万Bu(8億3,454万Bu、8億3,600万Bu)

・12月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億2,200万Bu(117億4,670万Bu、19億5,000万Bu)大豆 29億3,300万Bu(29億2,900万Bu、5億2,500万Bu)小麦 16億7,400万Bu(16億9,555万Bu、21億5,800万Bu)

・1月CONABブラジル作付け面積(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1,846万ha(1,936万ha、1,844万ha)大豆 3,819万ha(3,848万ha、3,818万ha)

・1月CONABブラジル生産量(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1億231万トン(1億789万トン、1億259万トン) 単収 5,541Kg/ha(5,570kg/ha、5,564kg/ha)大豆 1億3,369万トン(1億3,272万トン、1億3,445万トン) 単収 3,500Kg/ha(3,452kg/ha、3,522kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが606,483枚(前週比 +4,273枚)、ショートが76,649枚(▲11,102枚)ネットロングは529,834枚(+15,375枚)

大豆はロングが277,284枚(+3,470枚)、ショートが37,476枚(▲230枚)ネットロングは239,808枚(+3,700枚)

小麦はロングが128,491枚(▲3,798枚)、ショートが101,093枚(+626枚)ネットロングは27,398枚(▲4,424枚)

◆本日のMRA's Eye


「コモディティ・スーパーサイクル論」

コモディティ・スーパーサイクルが到来した、というコメントや記事を頻繁に目にするようになった。弊社は商品価格の上下は、需要と供給の時間差によって発生すると整理している。

そのため、在庫の投資循環サイクル(通常現在だと4年程度)で価格は山→谷→山となるわけだが、「スーパー」サイクルはこれがより長期になる、というものである。言葉を換えると「長期にわたって需給バランスがまずタイト化し、その後緩和する」ことが起きる、という整理になる。

ただし重要なのが、この上昇・下落が「循環的に訪れる」という訳ではなく、何らかの需要面の材料を切っ掛けに上昇が始まり、下落する、というのが1セット、ということ。つまり20年に1度といった周期性がある訳ではない、ということだ。

例えば、ネットなどの辞書で「スーパーサイクル」を調べると、「相場の周期的変動や景気循環のうち、数十年の周期で起こるもの」とある。多くの人はこのように、「理屈は分らないが、10年や20年といった周期性を持って定期的に訪れるサイクル」と理解している人が大半と思われる。これをコモディティに当てはめ、あたかも定期的な周期的に価格上昇局面が訪れる、というのは恣意性や違和感を感じざるを得ないし、誤解してはならない所だろう。

経済学でも、コンドラチェフサイクルやクズネッツサイクル、ジュグラーサイクルなどの超長期の経済活動の周期性を指摘する考え方はあるが、サンプルの少なさもあり、そういう概念があると認識はするもののかっちりとしたものではない。比較的高い確率で存在すると考えられ、検証も可能なキチンサイクル(在庫投資循環サイクル)とはやや趣が異なる。超長期になるとその循環性は証明が難しい。

長期にわたって需給バランスがタイト化するのは、1.需要が構造的な増加を見せる、2.何らかの規制が世界中で行われて供給が構造的に減少する、3.1.2.の両方が同時に起きる、のいずれかしかない。

弊社は常々、需要の構造的な増加をもたらすのは人口動態であると主張してきたが、これまで概ねその見通しに沿った相場展開となっている。2010年に中国の人口動態はピークアウトしたが、その後の景気後退を回避するための公共投資が一時的に、特に鉱物資源価格を支えたが、その後下落に転じている。

2018年からインドの人口ボーナス期入りによって、2020年~2022年頃にかけて再び鉱物資源価格が上昇するとみていたが、足下はその通りとなっている。これに、コロナ禍による景気悪化を回避するための財政出動による景気刺激策に加え、直接、コロナは関係ないのだが、コロナを契機に脱炭素の方向性が決まったことが重なった形だ。

特に、脱炭素を進めるとインフラ投資が必要になってくる。今回トヨタ自動車が新しく作るスマートシティはインフラ投資を伴う実験都市である。このための建材需要が増加するのは直感的にも分る。

そもそも、石油の需要に関しても長期的に脱化石燃料が進むと見ていたので2040年頃にピークアウトすると考えていたが、期せずしてこれが前倒しになっているようだ。

ただ、原油価格も急に脱炭素が進んで消費が減って価格が下落する、ということは直ちには発生せず、むしろ脱炭素のためのインフラ投資実施、それに伴う景気回復期待が高まれば需要が増加して価格にプラスに作用することになるだろう。これが前述のインドの人口ボーナス期入りに重なった。

そのように整理すると、確かに長期にわたる上昇が起きてもおかしくはなさそうだ。これを背景に投資を促そうという動きが各所で強まることも否定できない。特に欧米でそのような流れになった場合、我々日本人は国際価格で商品を購入しているため、好むと好まざると価格が上昇する可能性は否定できない。

そして、これもこのコラムで何回か指摘しているが、国内価格の反映までにも時間差がある。つまり、私たちが実際に「価格が上昇して大変なことになった」と認識するのは既に価格が上昇して手が打てなくなった時、という可能性が高いということである。

特に各国がインフラ投資を積極的に行い、さらには中央銀行がインフレになっても対処可能であるため現状を放置している状況だと、不本意かもしれないが、さらなる価格上昇リスクをある程度考慮しておく必要があるのでは無いだろうか。

◆主要ニュース


・2月東京消費者物価指数 前年比▲0.3%(前月▲0.5%)
 除く生鮮▲0.3%(▲0.5%)、除く生鮮エネルギー+0.2%(+0.2%)

・1月日本鉱工業生産速報  前月比+4.2%(前月改定▲1.0%)前年比▲5.3%(▲2.6%)
 出荷+3.2%(▲1.1%)、▲5.1%(▲2.9%)
 在庫▲0.2%(+1.1%)、▲10.5%(▲8.4%)

・1月日本小売売上高 前月比▲0.5%(前月▲0.7%)前年比▲2.4%(▲0.2%)

・1月日本百貨店スーパー販売額 前年比▲7.2%(前月▲3.4%)

・1月日本住宅着工戸数 前年比▲3.1%の80.1万戸(前月▲9.0%の78.4万戸)

・1月日本建設工事受注 前年比+14.1%(前月▲1.3%)

・1月独輸入物価指数 前月比+1.9%(前月+0.6%)、前年比▲1.2%(▲3.4%)

・1月米前渡商品貿易収支 ▲837億ドルの赤字(▲832億ドルの赤字)

・1月米卸売在庫 前月比+1.3%(前月+0.5%)

・1月米個人所得 前月比 +10.0%(前月+0.6%)
 個人支出+2.4%(▲0.2%)
 実質支出+2.0%(▲0.8%)
 PCEデフレータ 前月比+0.3%(+0.4%)、前年比+1.5%(+1.3%)
 コアデフレータ 前月比+0.3%(+0.3%)、前年比+1.5%(+1.4%)
 貯蓄率 20.5%(13.4%)

・2月シカゴ購買部協会指数 59.5(前月 63.8)

・2月米ミシガン大学消費者マインド指数改定 76.8(速報比+0.6、前月79.0)
 現況指数 86.2(±0.0、86.7)
 先行指数 70.7(+0.9、74.0)
 1年期待インフレ率 3.3%(±0.0%、3.0%)
 5年期待インフレ率 2.7%(±0.0%、2.7%)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数309(前週比+4)
 ガスリグ 92(前週比+1)。

・米国、シリア東部の親イラン武装勢力の勢力圏を空爆。

【メタル】
・1月日本アルミ圧延品出荷 前年比▲2.3%の13万8,365トン(2020年▲9.7%の172万2,319トン)。18ヵ月連続で前年比マイナス。

・Vale、2021年の銅生産予測を36万~39万トンから36万トン~38万トンに引き下げ。安全対策の影響などで。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +1.27%/ +10.07%
2.ドル指数 ( その他 )/ +0.83%/ +1.05%
3.CBT大豆油 ( 穀物 )/ +0.75%/ +18.49%
4.TCMガソリン ( エネルギー )/ +0.55%/ +22.46%
5.SHFアルミ ( ベースメタル )/ +0.55%/ +10.77%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.ビットコイン ( その他 )/ ▲5.01%/ +57.51%
65.SGX天然ゴム ( その他農産品 )/ ▲4.47%/ +10.61%
64.LME錫 3M ( ベースメタル )/ ▲4.37%/ +24.05%
63.日経平均 ( 株式 )/ ▲3.99%/ +5.55%
62.インド・センセックス ( 株式 )/ ▲3.80%/ +2.82%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :30,932.37(▲469.64)
S&P500 :3,811.15(▲18.19)
日経平均株価 :28,966.01(▲1202.26)
ドル円 :106.57(+0.36)
ユーロ円 :128.68(▲0.63)
米10年債 :1.40(▲0.12)
中国10年債利回り :3.28(+0.01)
日本10年債利回り :0.16(+0.01)
独10年債利回り :▲0.26(▲0.03)
ビットコイン :45,672.05(▲2411.45)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.42(+1.51)
エネルギー :26.40(+1.18)
ベースメタル :29.86(+5.23)
貴金属 :33.20(+0.15)
穀物 :21.10(▲0.29)
その他農畜産品 :27.95(+1.24)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :26.70(+3.61)
Brent :20.81(+1.31)
米天然ガス :56.11(+0.21)
米ガソリン :23.16(+0.76)
ICEガスオイル :20.86(+2.2)
LME銅 :27.88(+8.89)
LMEアルミニウム :18.02(+0.81)
金 :18.86(▲1.01)
プラチナ :42.77(+1.14)
トウモロコシ :25.31(▲0)
大豆 :18.86(▲1.01)

【エネルギー】
WTI :61.50(▲2.03)
Brent :66.13(▲0.75)
Oman :64.09(▲0.14)
米ガソリン :187.70(▲1.53)
米灯油 :185.65(▲5.01)
ICEガスオイル :532.00(▲10.25)
米天然ガス :2.77(▲0.01)
英天然ガス :39.79(▲0.50)

【貴金属】
金 :1734.04(▲36.52)
銀 :26.67(▲0.76)
プラチナ :1193.02(▲26.33)
パラジウム :2327.25(▲81.88)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,121(▲442:52B)
亜鉛 :2,837(▲70:15.5C)
鉛 :2,120(▲47:13C)
アルミニウム :2,203(▲25:0B)
ニッケル :18,653(▲961:46C)
錫 :25,875(▲1,435:1625B)
コバルト :51,953(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9000.00(▲355.00)
亜鉛 :2780.50(▲83.00)
鉛 :2067.00(▲78.00)
アルミニウム :2157.00(▲61.50)
ニッケル :18555.00(▲340.00)
錫 :25245.00(▲1155.00)
バルチック海運指数 :1,700.00(▲9.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :172.63(+1.52)
SGX鉄鉱石 :165.61(+0.21)
NYMEX鉄鉱石 :165.61(+0.59)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :146.41(▲0.95)
大連原料炭先物 :229.31(▲18.63)
上海鉄筋直近限月 :4,587(▲35)
上海鉄筋中心限月 :4,671(▲2)
米鉄スクラップ :580(±0.0)

【農産物】
大豆 :1405.25(▲0.75)
シカゴ大豆ミール :423.20(▲0.90)
シカゴ大豆油 :51.34(+0.38)
マレーシア パーム油 :3986.00(▲48.00)
シカゴ とうもろこし :555.50(+0.75)
シカゴ小麦 :655.00(▲16.75)
シンガポールゴム :246.00(▲11.50)
上海ゴム :16150.00(▲625.00)
砂糖 :17.53(▲0.31)
アラビカ :136.85(▲2.35)
ロブスタ :1458.00(▲1.00)
綿花 :87.82(▲0.42)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :87.15(▲2.60)
シカゴ生牛 :113.10(▲3.90)
シカゴ飼育牛 :138.68(▲1.75)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。