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割安・割高銘柄の入れ替えで高安まちまち
  • MRA商品市場レポート

2021年2月3日 第1898号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「割安・割高銘柄の入れ替えで高安まちまち」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は高安まちまちとなった。これまで価格上昇を牽引してきた非鉄金属・鉱物セクターが売られる一方、エネルギーセクターの上昇が顕著だった。同時に排出権価格も上昇している。

素直に読み解けば経済活動が再開していることに伴う、「エネルギー源の再物色」が起きていると考えられる。日本は全く進んでいないが、欧米や新興国で進むワクチン接種が材料視されているといえる。また、別の表現を使うと中国の方針変更、ワクチン接種の進捗でテーマが変わり、割安・割高銘柄の入れ替えが起きているともいえるだろう。

なお、「祭り」状態になっていた銀相場は、CMEが証拠金を引き上げたことで急速に収束した。ゲームストップなどの個別株の規模と、銀市場の規模自体の違い、「継続的に銀を購入する実需面でのテーマ」がまだ顕在化していないこと、を考えると、個人投資家の買いが長期にわたって価格を押し上げることは難しいということだろう。

因みに2000年代の非鉄金属価格の上昇は、中国の増加する需要に応えるだけの現物供給が1年単位では困難であり、「高い確率で需給がタイト化する」との見通しの元、コモディティリンク債やETFの登場で、年金資金が長期にわたる買いを入れてきたことが、価格の長期上昇を肯定してきた。

このような「構造的な需給バランスの変化」に伴う価格の持続的な上昇は、起きるとしても脱炭素が進捗するとみられる数年後となると見ている。

【本日の見通し】

本日も、株式市場動向、為替動向を睨みつつ、神経質な推移が予想されるがドル高地合となっていることが総じて価格を下押しすると考える。昨日のドル高は「米経済が本格的に回復してのドル高」ではないと考えられるため、景気循環銘柄の持続的な上昇とドル高が同時に進行することは考えにくいことから。

本日予定されているイベントとしては、米連銀総裁の講演とOPECプラス、米ISM非製造業指数、ADP雇用統計など。

連銀総裁発言は、現在のワクチン接種は進捗し景気回復への期待が徐々に高まる中で、金融政策の正常化、ないしは足下の変異種拡大などを受けて追加緩和などのコメントがあるかに注目している。

OPECプラスは恐らく予想通りでさほどサプライズはないと見ているが、現在の流れだと価格面でプラスに評価されそうだ。

ISM非製造業指数は56.7(前月57.7)と減速見込み。ADP雇用統計は雇用者数の増加が+5万人(前月▲12万3,000人)と回復見込みだが水準低く、両者とも契機循環系商品価格にはマイナスに作用すると予想。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は上昇した。株価の上昇と、米ワクチン接種進捗やバイデン政権の政策への期待から米需要の回復観測が強まっていること、OPECプラスの減産継続などの合わせ技で。

石炭価格(豪州炭)は小幅に下落。気温低下と中国の需要増加に伴う物色が続いているが、目先のLNG調達に目処が立ったと見られLNG価格が小幅に下落した影響を受けた。

極東の天然ガス指標であるJKMは小幅に下落。欧州の天然ガス価格は上昇、米天然ガスは小幅下落。

本日はドル高の進行、米石油統計は原由減少見通しだが、朝方発表のAPI統計では在庫の増加が確認され、予想外の在庫増加となる可能性があることから、一旦下落すると予想する。

ただし、株式市場動向が市場参加者のセンチメントに大きく影響するため、多数予定されている決算発表を受けた株価動向にも注目したい。

なお、OPEC閣僚級会合プラス共同閣僚監視委員会の開催が予定されているが、ここまでの報道だと1月決定を覆す形にはならないため、今の市場のセンチメントを考えると、価格面でプラスに評価される可能性が高い。このことが、価格を下支えするだろう。

石炭は・天然ガスは気温に左右される形で神経質な推移となるが、基本、北半球の気温低下が続いていることから高値圏を維持する公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属は総じて下落した。中国政府のバブル警戒方針に加え、昨日はドル高が進行したことが売り材料となった。中国PMIの内訳を見るに、鉱物資源を巡る需給は緩和し始めている。

なお、今のところ生産に影響は出ていないとされているが、ミャンマーのクーデターの影響が、錫鉱石の輸出に影響をもたらすリスクは小さくないと考える。

本日もドル指数動向と株式市場動向に左右される形で神経質な推移となるが、最大消費国である中国の方針変更に伴う需要の伸び鈍化が価格を下押しすると考える。

しかし、LME指定倉庫在庫の減少や、生産国の生産障害継続を受けて下値余地も限定されると見る。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは続落、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭先物は上昇、鉄鋼製品先物価は直近限月・中心限月ともに下落した。

中国政府の不動産市場のバブル警戒方針が、価格を押し下げる流れが続いてる。

本日も中国政府のバブル警戒方針を受けて、鉄鋼原料価格には下押し圧力が掛る展開が予想される。しかし同時に、中国正月前の在庫積み増し需要で結局高値を維持へ。

◆貴金属

金価格は下落した。欧州GDPを受けた景況感格差などからドルが物色され、ドル指数が上昇したことが背景。この間、実質金利は期待インフレ率の上昇を受けて低下したが、リスク・プレミアムを削る形での下落となった。

銀は金価格の下落と、CMEの証拠金引き上げなどを受けて大幅に下落した。ラディット・ロビンフッダーによる「銀祭り」は取りあえず終了。プラチナも銀祭りの終了で下落している。パラジウムは株価の上昇もあって小幅な下落に止まった。

本日はドル高の進行や「銀祭り」の終了もあって一旦下値余地を探る動きになると考える。

しかし、個人投資家も今回の一件で大きな痛手を被るほどの下落には見舞われていないと考えられることから、早晩銀・プラチナに同様の相場展開が訪れる可能性があることは無視できない。

◆穀物

シカゴ穀物市場は大幅に下落。欧米景況感格差を意識したドル高が進行したことで、ファイナンシャルな面で価格を押し上げてきた投機筋が手仕舞い売り圧力を強めたため。

なお、中国の輸入需要は旺盛であり、ファンダメンタルズ面では価格は下支えされやすい地合。

欧米景況感格差を意識したドル高が進行していることから、手仕舞い売り圧力が強まる展開を予想。ただし、需給ファンダメンタルズはタイトとみられ、下落余地も限定。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日の動きの中で注目したのが、ドル高・株高・原油高が同時に発生している点。この3点セットが同時に発生する場合は、基本的にはエネルギーの最大消費国である米国の景気が回復し、「ポジティブな意味でリスク資産が物色される」状況になった場合である。

昨年1年間は金融緩和に伴うドル安進行が、ファイナンシャルな面で投機的な買いを商品市場にもたらし価格を押し上げていた。しかし、ドル高・株高・原油高が同時に進行している場合、経済活動の再開を価格面でプラスに評価している可能性がある。

ただ、昨日のドル高はユーロ圏GDPの数字を見た欧米の景況感格差が意識されてドルが上昇、ラディット・ロビンフッドパニックの中で大幅な下落となった投機の買い戻しが株式市場に入る中で、原油も循環物色の対象となった、と考えるのが妥当だろう(もちろん、北米の寒波の影響もあるが、天然ガスはそこまでの価格上昇になっていない。むしろ米天然ガスは下落している)。

同時に、ドル高進行で非鉄金属価格は下落している。このことはこれまでの商品セクター上昇のドライバーが、「既に行き過ぎた上昇となっている非鉄金属」から「まだ上げしろが残っている原油」にシフトしたことも示している。

とはいえ、景気の回復に伴うポジティブは株高・ドル高・商品高が発生するのは、まだ先になると考える。

この分析が正しかったかどうか、すなわち、この原油価格の上昇が投機主導なのか、実需主導なのかは毎週末にリリースされるCFTCレポートを確認する必要がある。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合。

米上院選挙の結果を受けて米議会に親トランプ派が乱入、議会がロックダウンされるという事件も起きており、分断された米国の融和は容易ではない。

・「トリプルブルー」になったことで財政出動が加速、景気回復期待を受けた長期金利の上昇がドル高を誘発し、投機が商品価格押し上げの一翼を担ってきたことから、ドル高進行が価格をファイナンシャルな視点で押し下げる可能性。

このシナリオの可能性が高まるのは、Q121の米企業決算が発表され、「それほど悪くない」と言うことが確認される可能性がある4月以降か。

場合によるとワクチン開発と摂取進捗もあり、2020年決算と2021年事業見通しが発表される1月中下旬以降、ドル高進行開始の可能性も否定せず。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は低くなくなった。

・次の最大の成長ドライバーとして期待される、インド経済が期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・米国の財政状況悪化、緩和規模拡大によるドル水準の低下リスク(ドル減価により、名目ドル建て資産価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は中期的には調整圧力が強まる展開が予想される。コロナのロックダウン継続と、高値圏で推移していた株価が個人投資家を中心とした混乱が調整圧力を強めていること、それに伴うドル安基調のドル高基調への転換観測が強まっているため。

ただし、コロナワクチンの開発・接種の進捗を受けて徐々に経済活動が正常化する中で需要が回復、需給ファンダメンタルズがタイト化する方向に少しずつ傾いていくことから、下値が切り上がっていくという展開になるだろう。

価格が持続的に上昇するにはコロナの影響がワクチンの接種進捗や、季節的に弱まる3~4月頃になるとみている。

長期的には、報道通りのペースでワクチンが普及し、深刻な副反応が確認されなければ経済活動の回復とともに原油価格がわかりやすく上昇を始めるのは2021年後半になってからではないか。

ただし、1.OPECプラスの余剰生産能力、2.価格上昇を受けた米国の増産見通し、3.(急に起きるわけではないが)再生可能エネルギーへのシフトが需給タイト化を抑制するため、上昇ペースは緩やか、と見ている。

【見通しの固有リスク】

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合、

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる2.中東以外の産油国の生産者の破綻3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権誕生で、シェールオイルのフラッキングが制限/禁止される場合、供給減少で価格上昇要因に(今のところ生産量の1割程度となる、国有地でのフラッキング禁止にトーンダウンしている)。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い。

・イランの反米感情が高まり、中東の不安定さが増す場合(価格上昇要因)。

イランの核科学者であるファクリザデ氏が(恐らく)イスラエルによって殺害されたが、これによりイラン国内でイスラエルの背後にあると解釈されやすい米国に対する反米気運が高まっている。

これはイラン国内での反米感情を高め、米国を核協議に復帰させないための策略と考えられる。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合(地域安定で原油生産増加、短期的には価格の下落要因に。ただし相当発生の可能性が低いリスクシナリオ)。

・ワクチン・治療薬が想定以上に早く準備でき、移動制限が急速に解除される場合(価格上昇要因)。

【石炭価格見通し】

石炭価格は堅調な推移になると考える。中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、冬場で炭鉱が稼働し難いこと、港湾在庫の水準の低さに反映されるように、供給が十分ではないことが材料。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていること、春先に掛けては季節的に需要が減少することから徐々に海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

12月の中国の石炭輸入は気温低下の影響で前月から大幅に増加。前年水準の14倍、前月から3倍強となる3,907万5,000トン(前月1,176万トン)と顕著に増加した。

中国は国内の石炭産業の強化と政治的に対立する豪州からの輸入制限で、国内生産を増加させる方向性に舵を切っているが、足下の気温急低下を受けてそうも言っていられなくなったようだ。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格はしばらく高値圏での推移になると考える。ラニーニャ現象の影響もあり、気温がアジア・欧州で低下しているため。

極東の天然ガス指標であるJKM価格も、火力発電所が代替燃料として重油を用いるなどの動きを見せており、目先の調達に目処がたち価格の下押し圧力が強まっている。

欧州の気温低下と、昨夏以降の在庫減少で域内需給がタイト化、LNGカーゴの需給もタイト化が予想されるため、高止まりと考える。しかし春先に掛けては季節的な需要の減少で価格は軟調になると予想する。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるためじり高の展開だが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・最大供給国であるロシアの増産。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが676,393枚(前週比 +11,560枚)ショートが171,781枚(+15,532枚)ネットロングは504,612枚(▲3,972枚)

Brentはロングが391,656枚(前週比+24,386枚)ショートが53,503枚(+406枚)ネットロングは338,153枚(+23,980枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は中期的には調整圧力が強まる展開が予想される。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強め、マネー市場での資金吸収を始めていることコロナのロックダウン継続と、高値圏で推移していた株価が個人投資家を中心とした混乱が調整圧力を強めていること、それに伴うドル安基調のドル高基調への転換観測が強まっているため。

また、中国の貿易統計を見るに非鉄金属のベンチマークである銅に関して、精錬品の輸入が減速して過去5年レンジに戻ったことが確認されており、中国の過剰な経済対策による需要創出が一巡した可能性があることを示唆していることも、逆説的ではあるが、非鉄金属価格を下押しするだろう。

ただし、中国は7月に共産党結党100周年記念を控えており、それまで大幅な景気の減速は是が非でも回避するとみられること、緩やかではあるが世界経済は回復していることから下落余地も限定されると考える。

なお、現在の価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化が牽引する価格上昇ではない。

例えば、中国の超高圧送電線網整備額は当初予定比+61%の1,811億人民元とする方針が今年の4月に示されており、電線向けの需要が銅、並びにアルミの需要を押し上げている。アルミは配電には利用されないが、超高圧電線には使用される。

このほか、バイデン政権の政策推進による環境重視の姿勢の強まりが、いわゆる「バイデン・トレード(化石燃料売り・省エネ金属買い、ただし金属生産の際には二酸化炭素が出ることは変わらない)」を加速させ、投機的な買い圧力を強めている。

バイデン・トレードは短期的には顕在化する需要ではないが、省エネ金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性があるため、足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

中国が豪州の銅鉱石輸入を禁止していることで、精錬銅の需要が増加し、ベンチマークの銅価格が堅調に推移していることも地合を強くしよう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合。

・高水準の投機筋買い越しポジションが急速に解消されたときの下落リスク。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(コロナの影響もあって、2020年の鉱山生産は全体で184万1,000トン、コロナの影響で115万1,000トン減少する見込み)。

・ニューカレドニアのGoroプロジェクトはAntfagasutaが買収相手として急浮上しており、過剰な供給不足への懸念が後退していることは価格の下落要因に。ただし楽観はできず。

なお、同プロジェクトのニッケル生産は6万トン/年(シェア2.4%)。

・GlencoreはZhairemプロジェクトの開発を決定しているが、ペルーのIscaycruz鉱山の閉鎖、カナダのMatagami鉱山、Kidd鉱山の鉱山年齢終了に伴う減産を見込んでおり、2021年の亜鉛生産は125万トン(従来見通し140万トン)と下方修正。

・中国の環境規制強化やコロナの影響再発に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・1月の米上院決定投票で民主党が過半数を確保し、「トリプルブルー」となり、脱炭素の動きが加速していわゆる省エネ金属の需要が増加する場合。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲3.7%の274億ドル(前週 284億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲2.8%の6,104.5千トン(前週 6,282.4千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の景気先行指標をみるに堅調な推移を続けると考える。貿易統計で確認できるように鉄鋼製品輸入が増加し、輸出が減少。中国の顕在需要が増加していることを示唆している。鉄鉱石在庫は積み上がっているが日数ベースでは在庫水準は低く、需給はタイトとみられるため。

今後も中国政府のインフラ投資を柱とする経済対策が、今年7月の中国共産党結党100周年記念まで続くと予想されること、中国国内の鉄鋼原料在庫水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

しかし、中国政府は住宅セクターバブルを懸念し始めており、今後、鉄鋼向け需要が減速する可能性が高まっているため、徐々に水準を切り下げると考える。

中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。目先の景気刺激が終了し、景気の巡航速度への回復が確認されるタイミングで景気刺激と鉄鋼増産は回避される可能性が高く、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

1月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は44.3(前月45.8)と大幅に減速した。生産指数は48.7(47.7)と小幅に上昇しているが、新規受注は35.0(42.0)と急減速。これに対して輸出新規受注は55.2(54.4)と改善している。

このことは、中国経済並びに世界経済がワクチン開発・接種の進捗に伴い正常化に向かう動きになりつつあり、商業ベースではエッセンシャルな需要が回復、中国も輸出増加のバイアスが掛かり始めているためと考えられる。

しかし、市場規模としては圧倒的に中国の国内市場規模の方が大きいため、徐々に鉄鋼セクターには減速圧力が掛ることになるだろう。

実際、新規受注は減速し、それと同時に完成品在庫(33.5→48.7)、原材料在庫(32.1→42.3)と急増しており、新規受注在庫レシオは大幅に低下している。このことは鉄鋼製品並びに鉄鋼原料価格を下押しすると予想される。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、12月は137万5,000トン(前月185万トン)と減少傾向を持続し、過去5年レンジに戻った。12月の国内生産は季節性もあるが9,125万トン(前月8,766万トン、10月 9,220万トン、9月 9,256万トン)と回復した。

その一方、12月の鉄鋼製品輸出は485万トン(前月440万トン)と増加し、過去5年レンジの下限を回復した。このことは中国の鉄鋼製品の国内需要が減速し、顕在需要が減少を始めている可能性があることを示唆している。

弊社はこの鉄鋼製品の輸出入動向に注目しているが、輸出/輸入とも過去5年レンジに復帰の過程にあり、徐々に過剰な国内依存の需要環境から、輸出に牽引される形での鉄鋼業の操業状態(通常状態)に戻ると予想している。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが在庫水準は前週比+108万1,000トンの1,103万5,000トン(過去5年平均 963万6,000トン)と、例年よりも在庫水準は高い。

在庫は積み増し時期にあり増加しているが、過去5年平均を下回っている。引き続き中国の鉄鋼需給はタイトな状態が続いていると考えられる。

原料である鉄鉱石の12月の輸入は前年比▲4.5%の9,675万トン(前月+8.3%の9,815万トン)と高い水準を維持しているが減速、過去5年レンジに復帰した。このことは中国の国内需要が減速している可能性を示唆している。前年水準を下回ったことで、中国の国内需要は減速傾向にあると判断される。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+70万トンの1億2,620万トン(過去5年平均1億2,720万5,600トン)、在庫日数は25.5日(過去5年平均 29.9日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均を上回っていたが、再び下回った。目先の価格上昇要因となるだろう。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・カシミール地方を巡る中国との領有権争いが激化した場合、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

【投機筋のポジション動向】

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値を維持すると考える。金融緩和の継続と、株価の上昇に伴う長期金利上昇圧力がせめぎ合う形で実質金利を現状水準に維持すると考えられることから。

なお、リスクオンはドル安で価格上昇、リスクオフで価格下落となる(詳しくは2020年10月12日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,670ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は168ドルと前日比▲32ドル下落した。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、68.9倍。過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

金銀レシオが目先の下値目処の70を下回り、65も下回ったがCMEの証拠金引き上げもあって一巡、一旦テクニカルな銀買い圧力は後退したとみて良いだろう。

金は高値を維持する見通しだがバイデン大統領誕生により、太陽光発電向けに用いられる「バイデン銘柄」であることもあって、需要構造の変化が価格を下支え(金銀レシオは低下)するものと予想。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。足下は、各国の自動車セクターの回復期待が強まっており、工業需要回復期待が価格を押し上げている状況。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは価格は景気の先行き楽観が強まっているが、足下のコロナの感染拡大がこれを相殺するため、現状水準でのもみ合いを予想。

ETF残高とパラジウム価格の連動性が高まっており(管理在庫増加→価格上昇)、一時の、ETF管理在庫減少→価格上昇、のメカニズムから変化してきている。

在庫取り崩し→価格上昇は実際に需給がタイトで、現物確保のためにETFを取り崩さなければならなかったからだが、現在はこれと逆のことが発生している訳で、足元、パラジウムの需給は緩和していると見られる。今後はETFの動向に注目。

1月の米自動車販売は年率1,663万台(前月1,627万台、市場予想1,618万台)と減速した。

中国の12月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+6.4%の283万台(前月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と回復を継続している。

自動車販売は回復しているが、不要不急の消費であるため中国を除いては本格的な回復にはまだ時間がかかる見込み。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが313,532枚(前週比 +6,025枚)、ショートが55,986枚(▲4,883枚)、ネットロングは257,546枚(+10,908枚)、銀が84,444枚(+435枚)、ショートが29,984枚(▲2,023枚)、ネットロングは54,460枚(+2,458枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが38,187枚(前週比 +2,352枚)ショートが8,649枚(+700枚)、ネットロングは29,538枚(+1,652枚)

パラジウムが4,996枚(+18枚)、ショートが2,855枚(+440枚)ネットロングは2,141枚(▲422枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆は中国の需要が想像以上に堅調であり、しばらく高値圏で推移すると考える。ただし、足下株価の調整圧力が強まっているため、ドル高進行で投機的な手仕舞いの動きが強まる可能性は高まっている。

なお、中国の豚肉価格は下落する一方、豚肉の輸入量も減少している。このことは中国の畜豚数の増加(大豆ミール需要の増加)=大豆需要の増加、を示唆している。当面、中国向けの輸出が中国側の事情で増加すると見られることが価格を下支えすると予想。

ただし、生産地の生育環境の改善から供給懸念が後退し始めていること、当期の買いポジション解消の動きが強まると予想されることから、上値も重いと考える。なお、中期的にドルが上昇する見通しは変更していないため、中期的な価格見通しは引き続き下向き。

小麦はさほど投機の買いポジションが積み上がっている訳ではないが、各地で生産見通しが引き上げられており軟調地合。ただし足下のドル安が価格を下支え。

Locust Watchではエチオピア、ケニアで群生が発生している。昨年末も大型のサイクロンがアラビア半島~北アフリカを通過、豪雨が観測されており、バッタの成育に良好な環境が提供されている可能性があり、このままだと今年も蝗害が起きる可能性は否定できない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210118DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象の発生による穀物供給減少リスクの顕在化。害虫の発生、生産地の土壌破壊など(すでに一部顕在化)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・1月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 172.0Bu/エーカー(175.13、175.8)大豆 50.2Bu/エーカー(50.52、50.7)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)

・1月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 141億8,200万Bu(144億4,629万Bu、145億700万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,642万Bu、41億7,000万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)

・1月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億5,000万Bu(26億5,000万Bu)大豆 22億3,000万Bu(22億Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億8,500万Bu)

・1月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億5,200万Bu(15億9,191万Bu、17億200万Bu)大豆 1億4,000万Bu(1億3,861万Bu、1億7,500万Bu)小麦 8億3,600万Bu(8億5,922万Bu、8億6,200万Bu)

・12月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億2,200万Bu(117億4,670万Bu、19億5,000万Bu)大豆 29億3,300万Bu(29億2,900万Bu、5億2,500万Bu)小麦 16億7,400万Bu(16億9,555万Bu、21億5,800万Bu)

・1月CONABブラジル作付け面積(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1,846万ha(1,936万ha、1,844万ha)大豆 3,819万ha(3,848万ha、3,818万ha)

・1月CONABブラジル生産量(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1億231万トン(1億789万トン、1億259万トン) 単収 5,541Kg/ha(5,570kg/ha、5,564kg/ha)大豆 1億3,369万トン(1億3,272万トン、1億3,445万トン) 単収 3,500Kg/ha(3,452kg/ha、3,522kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが627,272枚(前週比 ▲1,039枚)、ショートが79,595枚(▲20,065枚)ネットロングは547,677枚(+19,026枚)

大豆はロングが279,147枚(+3,012枚)、ショートが42,714枚(▲6,734枚)ネットロングは236,433枚(+9,746枚)

小麦はロングが139,986枚(▲5,859枚)、ショートが103,805枚(▲2,993枚)ネットロングは36,181枚(▲2,866枚)

◆本日のMRA's Eye


「コーヒー価格は上昇余地を探るも下落へ」

前回8月の見通しではアラビカ豆価格は上昇し、その後下落する展開を想定していたが、概ね想定通りの展開となった。

しかし、足下の高級コーヒー豆価格の指標であるアラビカ豆価格は、昨年11月以降のワクチン開発報道、それに伴う景気の回復期待を背景に価格水準を切り上げ高値圏での推移となっている。

コロナの感染拡大は外食でのコーヒー消費需要を減じていたが、経済正常化の観測が需要に対する楽観を生んだ。それ以上にラニーニャ現象の影響で、最大生産国であるブラジルの気候が乾燥気候となり、供給への懸念が強まったことが強く影響したと考えられる。

この20年のアラビカ豆価格動向と、エルニーニョ・ラニーニャ現象の発生動向を確認すると、比較的明確な相関性が確認される。2006年頃まではエルニーニョ現象発生時に価格が上昇し、ラニーニャ現象発生時に価格が下落する傾向が強かった。

一般的にエルニーニョ現象の発生は、ブラジルの生産地で降雨による収穫の遅れを生じさせ価格の上昇要因になると理解されていたが、実際は逆になっており、ラニーニャ現象発生時の価格上昇の方がより顕著である。

斯様な環境下、アラビカ豆価格への影響が大きい取引所在庫の水準は低水準で推移しており、過去5年の最低水準近辺での推移となっている。このことも価格を下支えする要因となっている。

しかし、コーヒー価格は恐らく下落に転じると見ている。

昨年12月に発表米農務省の見通しでは2020-2021年は表作の年にあたり、コーヒー豆の生産量はアラビカ・ロブスタ合計で1億7,548万袋と、前年から698万2,000袋増加する見通しであるのに対して、需要は域内需要・輸出需要も含めて576万8,000袋の増加が見込まれており、期末在庫は442万5,000袋増加の1,008万2,000袋が予想されている。

この結果、在庫率は25.0%と、2014-2015年以来の高水準となる。また価格に対する説明力の高い需給率も93.1%と前年の94.4%から低下する見通しであることも価格を下押しするだろう。

では、どのタイミングで下落に転じるかといえば、1.ドル指数動向を受けたブラジルレアル動向、2.ラニーニャ現象の動向、に依拠することになると考えている。

1.に関しては昨年、コロナウイルスの影響が拡大する中、世界中が景気を刺激するために財政出動や金融緩和を行ってきた。特に米国の財政出動と金融緩和が突出していたが、この影響で何かしらの理由、例えば米国の景気が回復基調に入り金融緩和の必要性が薄れた場合などに、ドル安の流れがドル高に転じる可能性がある。

また、景気刺激が顕著になる中で「株高・ドル安」の流れが強まった。しかし、コロナワクチンの接種の進捗を受けた経済の正常化や長期金利の上昇が、逆に期待先行で上昇してきた株を下押しすることも考えられる。このこともドル高要因となり得る。

また、原油価格から乖離して上昇する規定インフレ率修正の可能性もドル高観測を強めることになる。仮にこのような事象を切っ掛けにしてドル高が進行、それに伴ってブラジルレアル安が進めばコーヒー豆輸出競争力の改善で輸出が増加、国際市場の需給緩和に寄与すると予想される。

また、こういったファイナンシャルな面での流れが変わらなかったとしても、ラニーニャ現象が未来永劫続く訳ではない。

過去の例を見ると米海洋大気庁が算出している海洋ニーニョ指数の低下に歯止めがかかり、上昇に転じるタイミングでコーヒー価格は下落している。

気象学の細かい議論はここではあえてしないが、この20年のニーニョ指数の最低値が▲1.70、現在が▲1.30であることを考えるとまだ低下余地があり、コーヒー価格が上昇する余地はある。しかしこのニーニョ指数が上昇を始めるタイミングが価格上昇のピークとなる可能性は高いと考えている。

なお、コーヒー価格の変化がコーヒースタンドチェーン店などの業績に与える影響は、それほど大きくない。売上に占める原価の比率が低いためだ。しかし、焙煎業者やコーヒーの加工品を製造しているような業者は価格転嫁が難しいこともあり、影響を受けることになるだろう。しかし、それ以上にコロナの影響による販売減少の影響の方が大きいと考える。

◆主要ニュース


・1月日本マネタリーベース 前年比+18.9%の6兆1,650億円(前月+18.3%の6兆1,760億円)

・Q420ユーロ圏実質GDP 前期比▲0.7%(前期確定+12.4%)
 前年比▲5.1%(▲4.3%)

・1月米自動車販売年率 1,663万台(前月 1,627万台)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米在庫統計市場予想 原油 ▲972KB(前週▲9,910KB)
 ガソリン+914KB(+2,469KB)
 ディスティレート▲246KB(▲815KB)
 稼働率▲0.02%(▲0.80%)

・API石油統計 原油在庫+4.26MB、クッシング▲1.89MB
 ガソリン▲0.24MB、ディスティレート▲1.62MB

・OPEC+技術員買い、OECD在庫は6月に過去5年平均レベルを下回る見込み。世界の石油備蓄は▲1.1MBDのペースで減少の公算。OPECの生産は4~6月に+0.5MBDのペースで増加。

・Q420 ExxonMobil
 石油換算総生産量368万9,000バレル(前期367万2,000バレル、前年401万8,000バレル)

 液体石油生産 232万5,000バレル(228万6,000バレル、243万6,000バレル)
  米国 71万9,000バレル(69万2,000バレル、66万5,000バレル)

 天然ガス生産 8,185MCFD(8,316MCFD、9,495MCFD)
  米国 2,686MCFD(2,611MCFD、2,713MCFD)

 CAPEX 47億7,100万ドル(前期41億3,300万ドル、84億6,000万ドル)
  上流部門投資 29億3,400万ドル(27億9,400万ドル、60億9,100万ドル)

・Q420 BP
 石油換算総生産量 215万5,000バレル(前期224万3,000バレル、前年269万8,000バレル)

 液体石油生産 111万9,000バレル(112万9,000バレル、132万2,800バレル)

 天然ガス生産 6,011MCFD(6,457MCFD、7,945MCFD)

 CAPEX 34億9,100万ドル(36億3,600万ドル、41億900万ドル)

・IAEA、「イランは地下核施設で新たな高性能遠心分離機を174台稼働」

【メタル】
・Citi、銅価格は信用リスクサイクルの減速(中国)、ロックダウンの可能性、コロナの亜種の影響などを受け、今後2~4週間で大幅に下落する可能性。

・12月チリ銅生産 前年比▲9.4%の499,900トン(前年551,500トン)

・12月日本アルミ港湾在庫 前月比+12,900トンの266,900トン。

・Q420 Nornickel
 ニッケル生産 前年比▲3%の67,956トン(前期60,165トン)、2021年生産目標22万トン~23万トン

 銅 ▲2%の128,598トン(118,674トン)、39万トン~41万トン

 パラジウム ▲3%の77万3,000オンス(78万3,000オンス)、271万5,000オンス~284万3,000オンス

 プラチナ ▲1%の18万2,000オンス(19万オンス)、64万7,000オンス~71万1,000オンス

・バイデン大統領、UAEからのアルミ輸入関税撤廃方針を覆し、10%の課税継続。

・米国防省、豪ライナスに資金支援。レアアース施設建設で。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.欧州排出権 ( 排出権 )/ +6.46%/ +7.18%
2.ビットコイン ( その他 )/ +6.01%/ +23.08%
3.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +4.02%/ +5.00%
4.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +3.85%/ +12.12%
5.TCM原油 ( エネルギー )/ +3.19%/ +14.81%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.銀 ( 貴金属 )/ ▲8.16%/ +1.06%
65.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ ▲4.25%/ ▲4.99%
64.プラチナ ( 貴金属 )/ ▲3.03%/ +2.44%
63.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ ▲1.91%/ +47.08%
62.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ ▲1.59%/ ▲5.46%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :30,687.48(+475.57)
S&P500 :3,826.31(+52.45)
日経平均株価 :28,362.17(+271.12)
ドル円 :104.98(+0.05)
ユーロ円 :126.44(▲0.11)
米10年債 :1.10(+0.02)
中国10年債利回り :3.18(+0.01)
日本10年債利回り :0.05(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.49(+0.03)
ビットコイン :35,687.9(+2023.09)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.52(▲0.52)
エネルギー :26.02(▲3.12)
ベースメタル :22.54(+0.14)
貴金属 :33.84(+1.18)
穀物 :27.58(+0.14)
その他農畜産品 :25.94(▲0.28)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :25.93(▲0.86)
Brent :19.94(▲4.97)
米天然ガス :42.39(▲6.09)
米ガソリン :26.51(▲2.36)
ICEガスオイル :21.49(+1.78)
LME銅 :19.88(+0.24)
LMEアルミニウム :19.27(+0.33)
金 :29.49(+0.2)
プラチナ :42.27(▲0.38)
トウモロコシ :32.23(+0.55)
大豆 :29.49(+0.2)

【エネルギー】
WTI :54.76(+1.21)
Brent :57.46(+1.11)
Oman :57.14(+1.32)
米ガソリン :161.60(+2.59)
米灯油 :167.46(+2.77)
ICEガスオイル :471.75(+17.50)
米天然ガス :2.85(▲0.01)
英天然ガス :48.64(+0.40)

【貴金属】
金 :1838.03(▲22.75)
銀 :26.68(▲2.37)
プラチナ :1098.27(▲34.31)
パラジウム :2248.07(▲5.70)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :7,748(▲76:8B)
亜鉛 :2,563(▲11:23.5C)
鉛 :2,022(▲14:13.5C)
アルミニウム :1,963(▲20:4.5C)
ニッケル :17,807(▲48:51C)
錫 :23,250(+266:1750B)
コバルト :42,976(+1,737)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :7752.00(▲70.50)
亜鉛 :2569.50(▲5.50)
鉛 :2013.50(▲19.50)
アルミニウム :1971.00(+10.50)
ニッケル :17730.00(▲150.00)
錫 :22955.00(▲115.00)
バルチック海運指数 :1,444.00(▲8.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :155.97(▲2.57)
SGX鉄鉱石 :148.07(▲6.57)
NYMEX鉄鉱石 :148.42(▲6.32)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :149.14(▲2.91)
大連原料炭先物 :263.26(+1.05)
上海鉄筋直近限月 :4,105(▲38)
上海鉄筋中心限月 :4,184(▲64)
米鉄スクラップ :500(+4.00)

【農産物】
大豆 :1354.75(▲10.50)
シカゴ大豆ミール :428.00(▲2.50)
シカゴ大豆油 :44.32(▲0.65)
マレーシア パーム油 :3892.00(▲43.00)
シカゴ とうもろこし :543.00(▲6.25)
シカゴ小麦 :644.75(▲6.25)
シンガポールゴム :220.80(▲3.30)
上海ゴム :14575.00(+20.00)
砂糖 :16.29(+0.14)
アラビカ :123.40(▲1.95)
ロブスタ :1299.00(▲21.00)
綿花 :80.69(+0.66)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :71.55(+2.00)
シカゴ生牛 :115.98(+1.10)
シカゴ飼育牛 :139.13(+1.20)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。