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株式市場の混乱続き、景気循環系商品売られる
  • MRA商品市場レポート

2021年2月1日 第1896号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「株式市場の混乱続き、景気循環系商品売られる」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は株価が急落を受けて、これまで何らかのテーマを持って物色されていた商品が下落し、景気に連動し難い農産品やソフトコモディティ、自国通貨建て商品が上昇した。

株価急落の背景はこれまでの高値警戒感からの調整ではあるが、ロビンフッドが個人の株売買に制限を掛けたことで、これまで株価を上昇させてきた一因でもある「給付金マネーの株式市場からの流出」が起きたためと考えられる。

そのため、これまで株高・ドル安の組み合わせで、ドル安を通じてドル建て商品価格は上昇してきたことは否めないが、これが逆回転している形。

ただ、ドット・フランク法の施行以降、初めてかもしれない「循環物色での買いで上昇」してきた商品に下落は限定されたようだ。

【本日の見通し】

週明け月曜日も株式市場の混乱の収束度合いに左右される形となるが、これまでの経緯を見るに早期に収束するとは考え難く、株安地合の影響でドル高にもなりやすいため、総じて軟調な推移になると予想する。

ただし景気循環系商品は景気の回復は続いていることから、徐々に下値は切り上がっているため、下落余地も限定されると考える。ただ、投機買いで上げが加速していた非鉄金属セクターは、中国当局のバブル抑制方針もあって下値余地を探る動きが続こう。

予定されている統計では、なんと言っても米ISM製造業指数に注目している。市場予想は60.0(前月60.5)と若干減速見込みであるが、先行指標であるシカゴPMIは63.8(市場予想58.5、前月58.7)と大幅な改善となっているため、市場予想を上回る内容になるのではないか。

この場合、景気循環系商品価格の上昇要因となるが、同時にドル高が進行すると予想されるため影響は相殺されるだろう。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格はまちまちとなった。株価の大幅な調整が続く中、リスク回避の動きが強まったことと、経済統計の改善やワクチン接種進捗を背景とした実需の回復観測がせめぎ合う形となった。

石炭価格(豪州炭)は小幅に下落。まだ気温低下と中国の需要増加に伴う物色が続いていると見られる。中国の石炭輸入動向に対する説明力が高いバルチック海運指数は続落。石炭調達にも目処が立った可能性がある。

極東の天然ガス指標であるJKMは小幅に上昇。目先の調達に目処が立ったものの、北アジアの気温低下は続いており高値を維持している。

欧州天然ガス・米天然ガスとも週末を控えた利益確定売りとみられる売りで下落。ただし来週以降は極渦の影響で大幅な気温低下が見込まれている。

週明け月曜日も株式市場の混乱の収束状況にもよるが、株安がドル高バイアスを強めるため、軟調な推移を予想。ただしISM製造業指数の改善もあって下値余地も限定か。

石炭は・天然ガスは気温に左右される形で神経質な推移となるが、基本、北半球の気温低下が続いていることから高値圏を維持する公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属は下落した。LME指定倉庫在庫の減少傾向は続き、生産国での供給の遅れも指摘されているものの、株安を受けたドル高の進行や、中国当局のバブル抑制方針が、投機の手仕舞い売りを加速させているためと考えられる。

週明け月曜日は非鉄金属も株価動向に左右される形になるとみるが、需要を牽引していた中国の正常化による、過剰需要の伸び減速が予想されるため総じて軟調な推移になると予想する。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は下落、鉄鋼製品先物価は直近限月・中心限月ともに下落した。

中国正月前の調達需要が価格を押し上げる一方、中国政府によるバブル抑制方針が価格を下押ししている。

週明け月曜日も、中国政府のバブル警戒方針を受けて価格には下押し圧力が掛るが、中国正月前の在庫積み増し需要で結局高値を維持すると考える。

◆貴金属

金価格は下落後上昇。株式市場動向を受けて為替が乱高下したことが影響した。

銀は市場で話題になっているレディット利用者の間で「1,000ドルまで上昇して当然」といった発言に個人投資家が反応、ETFを通じた買いが加速したことが価格を大きく押し上げた。

ETFであれば小口から取引が可能であり、実需の影響を受け難い金銀は、こうした個人投資家のターゲットとなりやすい。

プラチナも上昇したが、個人投資家にとっては銀ほど知名度がないこと、株価の影響を受けやすいことが上昇余地を限定した。パラジウムは株価下落で大幅に水準を切り下げた。

週明け月曜日も株価動向に左右される展開で、リスク回避のドル高進行が価格を下押しすると予想。ただし、ロビンフッダーが銀や金を物色するような流れを醸成しており、下落余地も限定されると考える。銀価格のさらなる上昇は警戒。

◆穀物

シカゴ穀物市場は大幅に上昇。中国によるトウモロコシの買いが記録的な水準となったことで買い圧力が強まったため。

米農務省の報告では、中国向けのトウモロコシの旧穀210万8,000トンの輸出が制約したとのこと。この水準は1991年に米国がソ連向けに約定した372万トンに次ぐ水準であり、1日の販売量としては過去2番目であった。

2021年1月21日時点の米主要穀物販売実績は以下の通り。トウモロコシ 1,850.30千トン(前週比 +366.3千トン)大豆 2,030.40千トン(▲618.3千トン)小麦 596.50千トン(+266.9千トン)

本日も株価動向が不安定な中ドル高が進行することが価格を下押しするが、ラニーニャ現象野影響による不作や、中国の極めて旺盛な輸入需要に牽引される形で高値圏を維持する公算。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

株式市場の混乱が続いている。経済対策の可決への懸念や大統領選の混乱収束で材料一巡したから、という説明が一般的だが、米ロビンフッドが一部の銘柄に関して個人の取引を制限、それに伴う手仕舞い売りが売りを呼ぶ展開となり暴落となった、という説明の方がしっくりくる。

そもそも昨年から続く米国株上昇、それに伴う各国株の上昇は、コロナ対策のための大規模な財政出動、金融緩和で下地ができる中、政府が生活支援のために行った給付金によって、ある程度生活にゆとりがある国民の多くが株式市場に一斉に参入したことが一因である。

さらに、SNSなどで市場参加者が繋がり、風説の流布(有価証券の価格を変動させる目的で、虚偽の情報を流すこと)や相場操縦に分類されてもおかしくない取引がごく自然に発生し、さらに実質的にこれを規制することもできないことも背景にあるといえる。

これにより、プロのファンドが打ち込まれることになり、プロ投資家が個人投資家に駆逐される、という異常事態が起きつつある。

しかし、資金規模やその影響の大きさから当局は大手機関投資家の破綻を回避する方向に動く可能性もあり、再び金融緩和や財政出動、場合によると基本的に弱者救済傾向が強い(今回の場合、本当に個人投資家が弱者といえるかどうか分からないが)米民主党政権が、個人投資家救済に動くかもしれない。

そしてこの動きは再びバブルを誘発し、その後急落という、負のループに陥る可能性があることを示唆している。普及するSNSなどのIT技術の進歩に、市場がついていけていないともいえるだろう。

こうした動きをどのように規制していくのか、あるいはしないのか。実は個人が主体の市場は転換点を迎えているのかもしれない。こうした動きは個人投資家の物色対象となりつつある商品市場への影響も小さくないと考えている。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合。

米上院選挙の結果を受けて米議会に親トランプ派が乱入、議会がロックダウンされるという事件も起きており、分断された米国の融和は容易ではない。

・「トリプルブルー」になったことで財政出動が加速、景気回復期待を受けた長期金利の上昇がドル高を誘発し、投機が商品価格押し上げの一翼を担ってきたことから、ドル高進行が価格をファイナンシャルな視点で押し下げる可能性。

このシナリオの可能性が高まるのは、Q121の米企業決算が発表され、「それほど悪くない」と言うことが確認される可能性がある4月以降か。

場合によるとワクチン開発と摂取進捗もあり、2020年決算と2021年事業見通しが発表される1月中下旬以降、ドル高進行開始の可能性も否定せず。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は低くなくなった。

・次の最大の成長ドライバーとして期待される、インド経済が期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・米国の財政状況悪化、緩和規模拡大によるドル水準の低下リスク(ドル減価により、名目ドル建て資産価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格はいったん調整圧力が強まる展開が予想される。コロナのロックダウン継続と、高値圏で推移していた株価が個人投資家を中心とした混乱が調整圧力を強めていること、それに伴うドル安基調のドル高基調への転換観測が強まっているため。

ただし、コロナワクチンの開発・接種の進捗を受けて徐々に経済活動が正常化する中で需要が回復、需給ファンダメンタルズがタイト化する方向に少しずつ傾いていくことから、下値が切り上がっていくという展開になるだろう。

価格が持続的に上昇するにはコロナの影響がワクチンの接種進捗や、季節的に弱まる3~4月頃になるとみている。

長期的には、報道通りのペースでワクチンが普及し、深刻な副反応が確認されなければ経済活動の回復とともに原油価格がわかりやすく上昇を始めるのは2021年後半になってからではないか。

ただし、1.OPECプラスの余剰生産能力、2.価格上昇を受けた米国の増産見通し、3.(急に起きるわけではないが)再生可能エネルギーへのシフトが需給タイト化を抑制するため、上昇ペースは緩やか、と見ている。

【見通しの固有リスク】

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合、

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる2.中東以外の産油国の生産者の破綻3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権誕生で、シェールオイルのフラッキングが制限/禁止される場合、供給減少で価格上昇要因に(今のところ生産量の1割程度となる、国有地でのフラッキング禁止にトーンダウンしている)。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い。

・イランの反米感情が高まり、中東の不安定さが増す場合(価格上昇要因)。

イランの核科学者であるファクリザデ氏が(恐らく)イスラエルによって殺害されたが、これによりイラン国内でイスラエルの背後にあると解釈されやすい米国に対する反米気運が高まっている。

これはイラン国内での反米感情を高め、米国を核協議に復帰させないための策略と考えられる。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合(地域安定で原油生産増加、短期的には価格の下落要因に。ただし相当発生の可能性が低いリスクシナリオ)。

・ワクチン・治療薬が想定以上に早く準備でき、移動制限が急速に解除される場合(価格上昇要因)。

【石炭価格見通し】

石炭価格は堅調な推移になると考える。中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、冬場で炭鉱が稼働し難いこと、港湾在庫の水準の低さに反映されるように、供給が十分ではないことが材料。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていること、春先に掛けては季節的に需要が減少することから徐々に海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

12月の中国の石炭輸入は気温低下の影響で前月から大幅に増加。前年水準の14倍、前月から3倍強となる3,907万5,000トン(前月1,176万トン)と顕著に増加した。

中国は国内の石炭産業の強化と政治的に対立する豪州からの輸入制限で、国内生産を増加させる方向性に舵を切っているが、足下の気温急低下を受けてそうも言っていられなくなったようだ。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格はしばらく高値圏での推移になると考える。ラニーニャ現象の影響もあり、気温がアジア・欧州で低下しているため。

極東の天然ガス指標であるJKM価格も、火力発電所が代替燃料として重油を用いるなどの動きを見せており、目先の調達に目処がたち価格の下押し圧力が強まっている。

欧州の気温低下と、昨夏以降の在庫減少で域内需給がタイト化、LNGカーゴの需給もタイト化が予想されるため、高止まりと考える。しかし春先に掛けては季節的な需要の減少で価格は軟調になると予想する。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるためじり高の展開だが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・最大供給国であるロシアの増産。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが676,393枚(前週比 +11,560枚)ショートが171,781枚(+15,532枚)ネットロングは504,612枚(▲3,972枚)

Brentはロングが391,656枚(前週比+24,386枚)ショートが53,503枚(+406枚)ネットロングは338,153枚(+23,980枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格はいったん調整圧力が強まる展開が予想される。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強め、マネー市場での資金吸収を始めていることコロナのロックダウン継続と、高値圏で推移していた株価が個人投資家を中心とした混乱が調整圧力を強めていること、それに伴うドル安基調のドル高基調への転換観測が強まっているため。

また、中国の貿易統計を見るに非鉄金属のベンチマークである銅に関して、精錬品の輸入が減速して過去5年レンジに戻ったことが確認されており、中国の過剰な経済対策による需要創出が一巡した可能性があることを示唆していることも、逆説的ではあるが、非鉄金属価格を下押しするだろう。

ただし、中国は7月に共産党結党100周年記念を控えており、それまで大幅な景気の減速は是が非でも回避するとみられること、緩やかではあるが世界経済は回復していることから下落余地も限定されると考える。

なお、現在の価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化が牽引する価格上昇ではない。

例えば、中国の超高圧送電線網整備額は当初予定比+61%の1,811億人民元とする方針が今年の4月に示されており、電線向けの需要が銅、並びにアルミの需要を押し上げている。アルミは配電には利用されないが、超高圧電線には使用される。

このほか、バイデン政権の政策推進による環境重視の姿勢の強まりが、いわゆる「バイデン・トレード(化石燃料売り・省エネ金属買い、ただし金属生産の際には二酸化炭素が出ることは変わらない)」を加速させ、投機的な買い圧力を強めている。

バイデン・トレードは短期的には顕在化する需要ではないが、省エネ金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性があるため、足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

中国が豪州の銅鉱石輸入を禁止していることで、精錬銅の需要が増加し、ベンチマークの銅価格が堅調に推移していることも地合を強くしよう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合。

・高水準の投機筋買い越しポジションが急速に解消されたときの下落リスク。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(コロナの影響もあって、2020年の鉱山生産は全体で184万1,000トン、コロナの影響で115万1,000トン減少する見込み)。

・ニューカレドニアのGoroプロジェクトはAntfagasutaが買収相手として急浮上しており、過剰な供給不足への懸念が後退していることは価格の下落要因に。ただし楽観はできず。

なお、同プロジェクトのニッケル生産は6万トン/年(シェア2.4%)。

・GlencoreはZhairemプロジェクトの開発を決定しているが、ペルーのIscaycruz鉱山の閉鎖、カナダのMatagami鉱山、Kidd鉱山の鉱山年齢終了に伴う減産を見込んでおり、2021年の亜鉛生産は125万トン(従来見通し140万トン)と下方修正。

・中国の環境規制強化やコロナの影響再発に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・1月の米上院決定投票で民主党が過半数を確保し、「トリプルブルー」となり、脱炭素の動きが加速していわゆる省エネ金属の需要が増加する場合。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲2.6%の284億ドル(前週 292億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲3.1%の6,282.4千トン(前週 6,486.1千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の景気先行指標をみるに堅調な推移を続けると考える。貿易統計で確認できるように鉄鋼製品輸入が増加し、輸出が減少。中国の顕在需要が増加していることを示唆している。鉄鉱石在庫は積み上がっているが日数ベースでは在庫水準は低く、需給はタイトとみられるため。

今後も中国政府のインフラ投資を柱とする経済対策が、今年7月の中国共産党結党100周年記念まで続くと予想されること、中国国内の鉄鋼原料在庫水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

しかし、中国政府は住宅セクターバブルを懸念し始めており、今後、鉄鋼向け需要が減速する可能性が高まっているため、徐々に水準を切り下げると考える。

中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。目先の景気刺激が終了し、景気の巡航速度への回復が確認されるタイミングで景気刺激と鉄鋼増産は回避される可能性が高く、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

12月の中国の鉄鋼業PMIを見ると、総合指数が49.3から45.8に急減速した。変動性が大きいためなんともいえないが、生産が47.7(前月53.3)と減速、新規受注が42.0(47.2)と大幅に減速したことによる。

しかし、輸出向け新規受註は54.4(45.9)と大幅に回復、完成品在庫が増加(32.2→33.5)して原材料在庫が減少(38.0→32.1)している。このことは、外需の回復を受けて中国政府が国内の経済対策に伴う発注を減少させている可能性がある。

海外の需要が回復したことによる過度な景気刺激が不要になった、と判断したことによるものである可能性がある。しかしながら単月の動きであり、鉄鋼業PMIは製造業PMIに比して変動性が高いため、来月以降の内容を見極める必要があろう。

なお、新規受注完成品在庫レシオは低下し、若干完成品の需給が緩和、一方で新規受注原材料在庫レシオは上昇しており、原材料需給がタイト化していることを示唆している。総じてまだ鉄鋼製品市場の需給はタイトである、とみるべきだろう。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、12月は137万5,000トン(前月185万トン)と減少傾向を持続し、過去5年レンジに戻った。12月の国内生産は季節性もあるが9,125万トン(前月8,766万トン、10月 9,220万トン、9月 9,256万トン)と回復した。

その一方、12月の鉄鋼製品輸出は485万トン(前月440万トン)と増加し、過去5年レンジの下限を回復した。このことは中国の鉄鋼製品の国内需要が減速し、顕在需要が減少を始めている可能性があることを示唆している。

弊社はこの鉄鋼製品の輸出入動向に注目しているが、輸出/輸入とも過去5年レンジに復帰の過程にあり、徐々に過剰な国内依存の需要環境から、輸出に牽引される形での鉄鋼業の操業状態(通常状態)に戻ると予想している。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが在庫水準は前週比+108万1,000トンの1,103万5,000トン(過去5年平均 963万6,000トン)と、例年よりも在庫水準は高い。

在庫は積み増し時期にあり増加しているが、過去5年平均を下回っている。引き続き中国の鉄鋼需給はタイトな状態が続いていると考えられる。

原料である鉄鉱石の12月の輸入は前年比▲4.5%の9,675万トン(前月+8.3%の9,815万トン)と高い水準を維持しているが減速、過去5年レンジに復帰した。このことは中国の国内需要が減速している可能性を示唆している。前年水準を下回ったことで、中国の国内需要は減速傾向にあると判断される。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+70万トンの1億2,620万トン(過去5年平均1億2,720万5,600トン)、在庫日数は25.5日(過去5年平均 29.9日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均を上回っていたが、再び下回った。目先の価格上昇要因となるだろう。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・カシミール地方を巡る中国との領有権争いが激化した場合、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

【投機筋のポジション動向】

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値を維持すると考える。金融緩和の継続と、株価の上昇に伴う長期金利上昇圧力がせめぎ合う形で実質金利を現状水準に維持すると考えられることから。

なお、リスクオンはドル安で価格上昇、リスクオフで価格下落となる(詳しくは2020年10月12日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,670ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は179ドルと前日比+13ドル上昇した。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、68.5倍。過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

金銀レシオのチャートを見ると、70倍を切るとテクニカルに65倍が視野に入る。ロビンフッダーと思われる市場参加者の買いで銀が暴騰し、70倍を下回っているため、短期的には価格上昇リスクを警戒すべきだろう。

金は高値を維持する見通しだがバイデン大統領誕生により、太陽光発電向けに用いられる「バイデン銘柄」であることもあって、需要構造の変化が価格を下支え(金銀レシオは低下)するものと予想。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。足下は、各国の自動車セクターの回復期待が強まっており、工業需要回復期待が価格を押し上げている状況。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは価格は景気の先行き楽観が強まっているが、足下のコロナの感染拡大がこれを相殺するため、現状水準でのもみ合いを予想。

ETF残高とパラジウム価格の連動性が高まっており(管理在庫増加→価格上昇)、一時の、ETF管理在庫減少→価格上昇、のメカニズムから変化してきている。

在庫取り崩し→価格上昇は実際に需給がタイトで、現物確保のためにETFを取り崩さなければならなかったからだが、現在はこれと逆のことが発生している訳で、足元、パラジウムの需給は緩和していると見られる。今後はETFの動向に注目。

12月の米自動車販売は年率1,627万台(市場予想1,580万台、前月1,555万台)と減速した。

中国の12月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+6.4%の283万台(前月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と回復を継続している。

自動車販売は回復しているが、不要不急の消費であるため中国を除いては本格的な回復にはまだ時間がかかる見込み。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが313,532枚(前週比 +6,025枚)、ショートが55,986枚(▲4,883枚)、ネットロングは257,546枚(+10,908枚)、銀が84,444枚(+435枚)、ショートが29,984枚(▲2,023枚)、ネットロングは54,460枚(+2,458枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが38,187枚(前週比 +2,352枚)ショートが8,649枚(+700枚)、ネットロングは29,538枚(+1,652枚)

パラジウムが4,996枚(+18枚)、ショートが2,855枚(+440枚)ネットロングは2,141枚(▲422枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆は中国の需要が想像以上に堅調であり、しばらく高値圏で推移すると考える。ただし、足下株価の調整圧力が強まっているため、ドル高進行で投機的な手仕舞いの動きが強まる可能性は高まっている。

なお、中国の豚肉価格は下落する一方、豚肉の輸入量も減少している。このことは中国の畜豚数の増加(大豆ミール需要の増加)=大豆需要の増加、を示唆している。当面、中国向けの輸出が中国側の事情で増加すると見られることが価格を下支えすると予想。

ただし、生産地の生育環境の改善から供給懸念が後退し始めていること、当期の買いポジション解消の動きが強まると予想されることから、上値も重いと考える。なお、中期的にドルが上昇する見通しは変更していないため、中期的な価格見通しは引き続き下向き。

小麦はさほど投機の買いポジションが積み上がっている訳ではないが、各地で生産見通しが引き上げられており軟調地合。ただし足下のドル安が価格を下支え。

Locust Watchではエチオピア、ケニアで群生が発生している。昨年末も大型のサイクロンがアラビア半島~北アフリカを通過、豪雨が観測されており、バッタの成育に良好な環境が提供されている可能性があり、このままだと今年も蝗害が起きる可能性は否定できない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210118DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象の発生による穀物供給減少リスクの顕在化。害虫の発生、生産地の土壌破壊など(すでに一部顕在化)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・1月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 172.0Bu/エーカー(175.13、175.8)大豆 50.2Bu/エーカー(50.52、50.7)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)

・1月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 141億8,200万Bu(144億4,629万Bu、145億700万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,642万Bu、41億7,000万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)

・1月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億5,000万Bu(26億5,000万Bu)大豆 22億3,000万Bu(22億Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億8,500万Bu)

・1月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億5,200万Bu(15億9,191万Bu、17億200万Bu)大豆 1億4,000万Bu(1億3,861万Bu、1億7,500万Bu)小麦 8億3,600万Bu(8億5,922万Bu、8億6,200万Bu)

・12月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億2,200万Bu(117億4,670万Bu、19億5,000万Bu)大豆 29億3,300万Bu(29億2,900万Bu、5億2,500万Bu)小麦 16億7,400万Bu(16億9,555万Bu、21億5,800万Bu)

・1月CONABブラジル作付け面積(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1,846万ha(1,936万ha、1,844万ha)大豆 3,819万ha(3,848万ha、3,818万ha)

・1月CONABブラジル生産量(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1億231万トン(1億789万トン、1億259万トン) 単収 5,541Kg/ha(5,570kg/ha、5,564kg/ha)大豆 1億3,369万トン(1億3,272万トン、1億3,445万トン) 単収 3,500Kg/ha(3,452kg/ha、3,522kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが627,272枚(前週比 ▲1,039枚)、ショートが79,595枚(▲20,065枚)ネットロングは547,677枚(+19,026枚)

大豆はロングが279,147枚(+3,012枚)、ショートが42,714枚(▲6,734枚)ネットロングは236,433枚(+9,746枚)

小麦はロングが139,986枚(▲5,859枚)、ショートが103,805枚(▲2,993枚)ネットロングは36,181枚(▲2,866枚)

◆本日のMRA's Eye


「銅価格は高値維持~春先にかけては軟調か」

銅価格は足下、調整圧力が強まっているがそれでも総じて高い水準を維持している。

基本的に商品価格は需要が牽引する形で変動するが、コロナウイルスの感染拡大による、景気減速を回避するための中国政府による景気刺激作の影響で公的需要を中心に、銅の需要が回復していることが背景。

実際、銅の主要用途である電線向け需要は回復しており、過去5年レンジの上限近辺での推移となっている。中国の政策的な需要刺激は、恐らく今年7月の中国共産党100周年記念まで継続するとみられ、銅の需要を底堅く推移させるだろう。

一方で供給面にも影響が出ている。コロナの感染第2波が南米を襲っていることに伴う、鉱山の稼働停止や、コロナも影響しているとみられる労使交渉の難航が、実際に供給が減少させている。

銅鉱石の最大生産国であるチリの生産は昨年後半に掛けて大きく水準を切り下げている。

MBの推計では、鉱山生産は184万トン/年の生産能力に生産障害が出ているとみられるが、そのうち112万トンが新型コロナウイルスの影響に因るものである。

精錬銅についても、全体で142万トンの生産能力に障害が発生しているが、そのうち、新型コロナウイルスの影響に因るものが63万トンと(2020年12月時点)見積もられており、供給面も価格上昇の要因となっている。

こうしたタイトな需給ファンダメンタルズと、米国を中心とした景気刺激・金融緩和の影響でドル安が進行したことも、銅価格を押し上げてきた。このドル建て資産価格の上昇は銅に限った話ではないが、投機的な観点で商品が幅広く物色されるようになったのは、正直、ボルカールール適用以降、初めてかもしれない。

しかし、さらに銅価格が上値を望む展開は、構造的な需給バランスの変化が起きないと難しいと考えている。

理由はいくつかあるのだが、主なところでは

1.株の上昇がやや期待先行過ぎたこと2.米追加経済対策の実施も、米上院が50:50となる中ではなかなか難しいと考えられること(トランプ政権発足時に、1兆ドルのインフラ投資が実施できなかったことは記憶に新しい)3.ワクチン接種で米国の景気回復期待が強まり、ドル高が進行する見通しであること(株が調整すれば、リスク回避でもドル高に)4.中国の国内供給は実は緩和している可能性があること(鉱石輸入の減少と、精錬品輸入の減少、国内在庫(推計値)の増加、など)5.中国当局が不動産バブルを警戒、短期金融市場から資金の引き上げを行っていること

あたりが考えられる。そして、中国の銅を巡る調達・消費動向を見るに、国内生産の減少と同時に、精錬品輸入の減少も確認されている。最終的には財政的な負担が重い、内需刺激よりも、海外の経済活動再開に伴う輸出の回復によって景気を牽引する方向に舵が切られると思われ、そこの「つなぎ」のタイミングで調整する可能性は高いと考えている。

やはり春先にかけては、下値余地を試すと考えておくのが無難だろう。そして景気の回復に伴い、年末に向けて再度価格は上昇するとみている。

◆主要ニュース


・12月日本小売売上高 前月比▲0.3%(前月+0.6%)前年比▲0.8%(▲2.1%)

・12月日本百貨店スーパー販売額 前年比▲3.5%(前月▲3.4%)

・1月東京消費者物価指数 前年比▲0.5%(前月▲1.3%)
 除く生鮮▲0.4%(▲0.9%)、除く生鮮エネルギー+0.2%(▲0.4%)

・12月日本失業率 2.9%(前月2.9%)、有効求人倍率 1.06倍(1.06倍)

・12月日本鉱工業生産速報  前月比▲1.6%(前月改定▲0.5%)前年比▲3.2%(▲3.9%)
 出荷▲1.6%(▲1.2%)、▲3.4%(▲4.0%)
 在庫+1.1%(▲1.5%)、▲8.4%(▲9.0%)

・12月日本住宅着工戸数 前年比▲9.0%の78.4万戸(前月▲3.7%の82.0万戸)

・12月日本建設工事受注 前年比▲1.3%(前月▲4.7%)

・1月日本消費者態度指数 29.6(前月31.8)

・12月インド財政収支 ▲8,296億2,000万ルピーの赤字(前月▲1兆2,235億3,000万ルピーの赤字)

・2021インドGDP予想 前年比+4.0%(前年+6.5%)

・1月ユーロ圏消費者信頼感改定 ▲15.5(速報比変わらず、前月改定 ▲13.8)

・1月ユーロ圏景況感指数 91.5(92.4)
 鉱工業景況感 ▲5.9(▲6.8)
 サービス景況感 ▲17.8(▲17.1)

・1月独消費者物価指数 前月比+1.4%(前月+0.6%)、前年比+1.6%(▲0.7%)

・1月独失業者数 前月比▲41.0千人(前月▲40.0千人)
 失業保険申請率 6.0%(6.0%)

・Q420独実質GDP速報 前期比+0.1%(前期改定+8.5%)、労働日調整済前年比▲3.9%(▲4.0%)、季節調整前 前年比▲7.9%(+4.3%)

・12月米前渡商品貿易収支 ▲825億ドルの赤字(▲855億ドルの赤字)

・米週間新規失業保険申請件数 847千件(前週914千件)
 失業保険継続受給者数 4,771千人(4,974千人)

・Q420米GDP速報 前期比年率 +4.0%(前期確定+33.4%)
 個人消費+2.5%(+41.0%)
 総民間国内投資+25.3%(+86.3%)
 設備投資+13.8%(+22.9%)
 輸出+22.0%(+59.6%)
 輸入+29.5%(+93.1%)
 政府支出▲1.2%(▲4.8%)
 GDPデフレータ+2.0%(+3.5%)、コアPCE +1.4%(+3.4%)

・12月米景気先行指標総合指数 前月比 +0.3%(前月改定+0.7%)

・12月米新築住宅販売件数 前月比+1.6%の84.2万戸(前月▲12.6%の82.9万戸)

・1月カンザスシティ連銀製造業活動 17(前月 14)

・Q420米雇用コスト指数 +0.7%(前期+0.5%)

・12月米個人所得 前月比 +0.6%(前月▲1.3%)
 個人支出▲0.2%(▲0.7%)
 実質支出▲0.2%(▲0.7%)
 PCEデフレータ 前月比+0.4%(±0.0%)、前年比+1.3%(+1.1%)
 コアデフレータ 前月比+0.3%(±0.0%)、前年比+1.5%(+1.4%)
 貯蓄率 13.7%(12.9%)

・1月シカゴ購買部協会指数 63.9(前月 58.7)

・12月米中古住宅販売仮契約 前月比▲0.3%(前月▲2.5%)、前年比+22.8%(+16.1%)

・1月米ミシガン大学消費者マインド指数改定 79.0(速報比▲0.2、前月80.7)
 現況指数 86.7(▲1.0、90.0)
 先行指数 74.0(+0.2。74.6)
 1年期待インフレ率 3.0%(±0.0、2.5%)
 5年期待インフレ率 2.7%(±0.0%、2.5%)

・中国国防省報道官、「台湾の独立は戦争に該当する。」

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE天然ガス稼働在庫 2,880BCF(前週比▲129BCF)
 東部 641BCF(▲38BCF)
 中西部 780BCF(▲48BCF)
 山間部 170BCF(▲6BCF)
 太平洋地区275BCF( 変わらずBCF)
 南中央 1,014BCF(▲37BCF)

・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数295(前週比+6)
 ガスリグ 88(前週比±0)。

・1月OPEC産油量2,575万バレル(前月比+16万バレル)、サウジアラビア、イラク、イランが増産。ナイジェ利がが減産。

・サウジアラビア ムハンマド皇太子、サウジアラムコ株の追加売却を検討。

【メタル】
・チリ Collahuasiを含む主要銅鉱山の精鉱出荷が高波の影響で2~3週間遅れ。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CBTエタノール ( エネルギー )/ +7.19%/ +14.45%
2.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ +4.24%/ +1.13%
3.ビットコイン ( その他 )/ +4.19%/ +19.47%
4.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +3.28%/ ▲4.12%
5.CBT小麦 ( 穀物 )/ +2.47%/ +3.51%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲8.74%/ ▲5.76%
65.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲4.56%/ ▲8.76%
64.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲3.75%/ +0.98%
63.ブラジル・ボベスパ ( 株式 )/ ▲3.21%/ ▲3.32%
62.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲2.95%/ +0.92%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :29,982.62(▲620.74)
S&P500 :3,714.24(▲73.14)
日経平均株価 :27,663.39(▲534.03)
ドル円 :104.68(+0.44)
ユーロ円 :127.04(+0.68)
米10年債 :1.07(+0.02)
中国10年債利回り :3.18(▲0.01)
日本10年債利回り :0.05(+0.01)
独10年債利回り :▲0.52(+0.02)
ビットコイン :34,641.09(+1393.08)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.30(▲0.05)
エネルギー :28.81(▲0.46)
ベースメタル :24.13(▲0.02)
貴金属 :30.85(+1.44)
穀物 :27.41(▲0.18)
その他農畜産品 :26.84(▲0.23)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :25.67(+0.07)
Brent :25.73(▲0.05)
米天然ガス :48.37(▲1.91)
米ガソリン :28.95(+0.07)
ICEガスオイル :19.74(▲0.54)
LME銅 :21.15(+0.25)
LMEアルミニウム :20.04(▲0.19)
金 :29.32(+0.19)
プラチナ :38.92(▲0)
トウモロコシ :32.03(+0.29)
大豆 :29.32(+0.19)

【エネルギー】
WTI :52.20(▲0.14)
Brent :55.88(+0.35)
Oman :54.63(+0.18)
米ガソリン :157.25(▲1.04)
米灯油 :160.04(▲0.13)
ICEガスオイル :450.25(▲1.00)
米天然ガス :2.56(▲0.10)
英天然ガス :53.15(▲5.09)

【貴金属】
金 :1847.65(+4.48)
銀 :26.99(+0.48)
プラチナ :1078.02(+0.59)
パラジウム :2234.20(▲106.77)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :7,874(+90:3.5B)
亜鉛 :2,587(+17:21.5C)
鉛 :2,027(▲1:14C)
アルミニウム :1,988(+9:0.5C)
ニッケル :17,761(+57:34C)
錫 :23,140(+355:517B)
コバルト :41,243(▲4)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :7813.50(▲90.50)
亜鉛 :2571.00(▲18.00)
鉛 :2024.00(▲3.50)
アルミニウム :1977.00(▲4.50)
ニッケル :17670.00(▲150.00)
錫 :22550.00(▲520.00)
バルチック海運指数 :1,470.00(▲70.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :157.57(▲7.25)
SGX鉄鉱石 :168.13(▲0.26)
NYMEX鉄鉱石 :168.13(▲0.50)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :121.7(+1.15)
大連原料炭先物 :280.01(▲2.49)
上海鉄筋直近限月 :4,191(▲19)
上海鉄筋中心限月 :4,270(▲57)
米鉄スクラップ :492(▲5.00)

【農産物】
大豆 :1370.00(+16.75)
シカゴ大豆ミール :431.00(+3.90)
シカゴ大豆油 :44.62(▲0.03)
マレーシア パーム油 :3935.00(+160.00)
シカゴ とうもろこし :547.00(+12.50)
シカゴ小麦 :663.00(+16.00)
シンガポールゴム :221.00(+4.60)
上海ゴム :14315.00(+265.00)
砂糖 :15.83(+0.24)
アラビカ :122.95(▲1.05)
ロブスタ :1306.00(+3.00)
綿花 :80.64(+0.71)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :69.80(▲0.15)
シカゴ生牛 :115.05(▲0.95)
シカゴ飼育牛 :137.73(+2.03)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。