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米国市場休場で動意薄い
  • MRA商品市場レポート

2021年1月19日 第1888号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米国市場休場で動意薄い」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は米国市場が休場のため動意薄い展開となったが、中国の主要統計が総じて強い内容だったことが景気循環銘柄価格を押し上げる一方、市場の最大の関心事となりつつあるドル指数が、上昇基調(後に下落)となったことが価格を下押ししたため、高安まちまちとなった。

経済活動はコロナの影響で各国で制限されており、感染抑制に成功したとみられた中国でも感染者の増加が確認されていることから、経済環境は決して良いとはいえない。

バイデン時期大統領が追加対策を表明し、目先の景気や相場の上昇圧力となりそうな材料は一巡しており、そろそろ多くの商品の上値が重くなってきたとの印象。

【本日の見通し】

本日もドル指数動向を睨み、一進一退の展開を予想する。現在、ドル指数は50日移動平均線がテクニカルに上値として意識されており、ここを上抜けするかどうかが一つのポイントとなるだろう。

これまで、リスクテイクのドル安・株高がセットになっていたが、株が下落する局面では逆にドル高となりやすい。アジア時間の株式市場は上昇基調であり、これを見るとドル安となる可能性が高い。

その意味で、本日公聴会に出席するイエレン財務長官候補の発言には注目したい。恐らくドル安を志向しないと表明(資金調達の観点からもドル高を是とする組織のトップであるので、ある意味当然)する見込みであり、これを分かりやすい手がかりとして、上述の50日移動平均線を上抜けてドル高が加速する可能性もあり得る。

本日発表予定の重要統計では、独ZEW指数と欧州新車販売に注目している。

独ZEW期待指数は59.4(前月55.0)、現状指数は▲68.3(▲66.5)と先行きが改善見通し。

欧州自動車販売は前月が前年比▲12.0%であり、これに回復が見られるかどうかが焦点。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は小幅に下落した。米国市場が休場の中動意が薄い展開だったが、ドルに緩やかな上昇圧力が掛ったこと(後に下落)を受けて水準を切り下げた。

石炭価格(豪州炭)は小幅安も高値維持。北半球全体が極渦の影響で気温低下となる、との見通しとLNG市場の需給悪化が石炭需要を高めている状況。

極東の天然ガス指標であるJKMは軟調。目先の調達にいったん目処が立ったと考えられることが背景。今後、さらに上昇があるかどうかは気温次第だが、スポットカーゴの到着まで数ヶ月かかることを考えると、冬場の調達には目処がたった可能性がある。欧州ガス価格はJKMの調整を受けて大幅に続落した。

本日もドル指数動向を睨み、一進一退の推移になると予想される。予定されている材料としてはIEA月報があるが、これまで需要回復期待先行で価格が上昇してきているため、需要見通しをどの程度上方修正するかに注目したい。

石炭に関しては投機的な売買余地があまりないため、足下の需給ファンダメンタルズが価格を決定するが、北半球の気温低下予想を受けて堅調推移を予想。

スポットLNG価格は第一弾の調達に目処が立ったとみられ、いったん下落すると考えるが、状況に大きな変化はなく高値圏を維持。

◆非鉄金属

LME非鉄金属はまちまち。固定資産投資や不動産投資が市場予想を下回ったが、中国の工業関連統計が良好な内容だったことが価格を押し上げたが、ドルが高値で推移したことで利益確定の売りに押される展開。

フィリピンの供給減少が懸念されるニッケルと、半導体、巣ごもり需要で家電向けのはんだ需要が期待される錫、指定倉庫在庫の減少が確認された銅が前日比プラスとなった。LME指定倉庫在庫の急増が確認されたアルミ価格は下落。

中国の重要統計は改善傾向が持続したものの、徐々に正常化(無理な景気刺激の必要性後退)していることから公共投資期待の若干の鈍化を意識させる内容。

本日はドル指数動向を受けて一進一退の展開を予想。ただしLME指定倉庫在庫の減少傾向に大きな変化はないため、下値も堅いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は上昇、鉄鋼製品先物価は直近限月・中心限月ともに上昇した。

鉄鋼原料は、市場予想は下回ったが良好な内容だった中国の重要統計の発表と、新型ウイルスの南米での拡大による供給懸念の影響で、先物価格が上昇。

本日も中国統計の改善と、足下の需給タイト化で高値圏を維持の公算も、徐々に中国の製造業活動が(海外向けも含めて)正常化し始めているため、上値も重くなると考える。

◆貴金属

金価格は上昇した。米国市場が休場のため実質金利変動による売買、というよりはドルが若干調整したことで引けに掛けてドル指数変化を材料とした買いが入った。

銀価格も上昇、プラチナも水準を切り上げ。パラジウムは株価の調整もあって小幅安に。

本日もドル指数動向をにらみ、一進一退の展開で現状水準でもみ合うものと予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は休場。

本日も、中国の購入(特に豚向けの需要増加の大豆)継続と、南米の生産下方修正見通しを受けて需給はタイトであり高値維持だが、上昇傾向にあるドル指数動向が重石に。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日は中国の重要統計が複数発表された。まず2020年のGDP成長は前年比+2.3%と主要国の中で唯一プラス成長を果たした。コロナの感染拡大抑制に成功したこともあるが、それに伴う需要の減速を財政出動で補ったところが大きかったと考えられる。

実際、2020年の固定資産投資は前年比+2.9%の51兆8,907億元と増加、このうち、 公的セクター需要が+5.3%(+5.6%)、民間セクターが+1.0%(+0.2%)と、圧倒的に公的セクターの伸びが大きい。

しかし、ボリューム的には民間セクターの方が大きいため、こちらの成長ペースの加速は「今後中国政府が追加の対策をしなくても良い」ステージに入った可能性があることを示唆している。

実際、鉱工業生産も通年で+2.8%、12月単月は+7.3%(前月+7.0%)とその伸びが加速している。また、不動産投資も通年で+7.0%の14兆1,443億元と前期(1-11月期)の+6.8%の12兆9,492億元から伸びが加速した。

これらの統計は、工業セクター関連の需要が旺盛であることを示しており、今後も鉱物資源価格などの価格の押し上げ要因となる。

一方、改善はしているものの個人消費は前年比マナス成長となっている。また、調査失業率も5.2%と高止まりだ。失業関連統計はごく一部を対象として行われているため、実際の失業率(都市部在住ではない人口を対象としたものを含む)はさらに高いと考えられる。

今後、政策需要から民間需要へのシフトが起きる中で景気が一時的に減速すると予想され、その後、年末に向けての立ち直りがあるかどうかが2021年の商品相場(特に鉱物資源価格)を考える上で、重要なポイントとなるだろう。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合。

米上院選挙の結果を受けて米議会に親トランプ派が乱入、議会がロックダウンされるという事件も起きており、分断された米国の融和は容易ではない。

・「トリプルブルー」になったことで財政出動が加速、景気回復期待を受けた長期金利の上昇がドル高を誘発し、投機が商品価格押し上げの一翼を担ってきたことから、ドル高進行が価格をファイナンシャルな視点で押し下げる可能性。

このシナリオの可能性が高まるのは、Q121の米企業決算が発表され、「それほど悪くない」と言うことが確認される可能性がある4月以降か。

場合によるとワクチン開発と摂取進捗もあり、2020年決算と2021年事業見通しが発表される1月中下旬以降、ドル高進行開始の可能性も否定せず。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は低くなくなった。

・次の最大の成長ドライバーとして期待される、インド経済が期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・米国の財政状況悪化、緩和規模拡大によるドル水準の低下リスク(ドル減価により、名目ドル建て資産価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は短期的に調整圧力が強まる展開が予想される。米財政出動期待、OPECプラスの増産+サウジのサプライズ減産は取りあえず材料としては価格に織り込み済みであり、今後はむしろドル指数動向が価格を左右しやすいが、期待先行の剥落で株に調整圧力が強まり、ドル高となる可能性があることから。

価格が持続的に上昇するには需給ファンダメンタルズの変化が必要で、ロックダウンが加速しやすく、ワクチン接種もまだ本格化していないことから価格上昇が肯定されるのは、引き続き3~4月頃になるとみている。

長期的には、報道通りのペースでワクチンが普及し、深刻な副反応が確認されなければ経済活動の回復とともに原油価格がわかりやすく上昇を始めるのは2021年後半になってから、と考えられる。

【見通しの固有リスク】

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合、

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる2.中東以外の産油国の生産者の破綻3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権誕生で、シェールオイルのフラッキングが制限/禁止される場合、供給減少で価格上昇要因に(今のところ生産量の1割程度となる、国有地でのフラッキング禁止にトーンダウンしている)。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い。

・イランの反米感情が高まり、中東の不安定さが増す場合(価格上昇要因)。

イランの核科学者であるファクリザデ氏が(恐らく)イスラエルによって殺害されたが、これによりイラン国内でイスラエルの背後にあると解釈されやすい米国に対する反米気運が高まっている。

これはイラン国内での反米感情を高め、米国を核協議に復帰させないための策略と考えられる。

・ワクチン・治療薬が想定以上に早く準備でき、移動制限が急速に解除される場合(価格上昇要因)。

【石炭価格見通し】

石炭価格は堅調な推移になると考える。中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、冬場で炭鉱が稼働し難いこと、港湾在庫の水準の低さに反映されるように、供給が十分ではないことが材料。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化のの中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから徐々に海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

12月の中国の石炭輸入は気温低下の影響で前月から大幅に増加。前年水準の14倍、前月から3倍強となる3,907万5,000トン(前月1,176万トン)と顕著に増加した。

中国は国内の石炭産業の強化と政治的に対立する豪州からの輸入制限で、国内生産を増加させる方向性に舵を切っているが、足下の気温急低下を受けてそうも言っていられなくなったようだ。

バルチック海運指数も過去5年のレンジを大幅に上抜けしており、中国の石炭輸入需要が旺盛であることを示唆している。

ただ、足下は若干低下傾向となっており目先の燃料調達に目処が立った可能性がある。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格はしばらく高値圏での推移になると考える。ラニーニャ現象の影響もあり、気温がアジア・欧州で低下しているため。

極東の天然ガス指標であるJKM価格も、火力発電所が代替燃料として重油を用いるなどの動きを見せていることから今のところ上昇は一服している。

しかし、欧州の気温低下と、昨夏以降の在庫減少で域内需給がタイト化、LNGカーゴの需給もタイト化が予想されるため、高止まりと考える。

なお、欧州では極渦の影響も取り沙汰されているため、2014年、2018年の極渦発生による気温低下時を参考にすると、Q121の間はJKM価格は高止まりする可能性が高い。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるためじり高の展開だが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・最大供給国であるロシアの増産。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが692,315枚(前週比 +8,183枚)ショートが164,598枚(▲885枚)ネットロングは527,717枚(+9,068枚)

Brentはロングが370,912枚(前週比+18,496枚)ショートが53,604枚(▲6,493枚)ネットロングは317,308枚(+24,989枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は中国の景気先行指数を見るに中国の需要が今後数ヵ月は堅調さを維持するとみられること、米上院選挙の結果を受けて米国の財政出動が加速し、リスク資産価格全体が強含みやすい地合にあることから、高値を維持するとみている。

また、12月の中国の貿易統計を見ると、非鉄金属のベンチマークである銅に関して、精錬品の輸入が減速して過去5年レンジに戻ったことが確認されている。このことは中国の過剰な経済対策による需要創出が一巡した可能性があることを示唆しており、今後、非鉄金属価格には下押し圧力が強まることになるだろう。

また、米経済対策期待を受けたドル高圧力が強まっており、徐々に利益確定の売りに押され、ファイナンシャルな観点からも価格の調整圧力は強まると予想される。

なお、現在の価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化が牽引する価格上昇ではない。

例えば、中国の超高圧送電線網整備額は当初予定比+61%の1,811億人民元とする方針が今年の4月に示されており、電線向けの需要が銅、並びにアルミの需要を押し上げている。アルミは配電には利用されないが、超高圧電線には使用される。

このほか、バイデン政権の政策推進による環境重視の姿勢の強まりが、いわゆる「バイデン・トレード(化石燃料売り・省エネ金属買い、ただし金属生産の際には二酸化炭素が出ることは変わらない)」を加速させ、投機的な買い圧力を強めている。

バイデン・トレードは短期的には顕在化する需要ではないが、省エネ金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性があるため、足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

中国が豪州の銅鉱石輸入を禁止していることで、精錬銅の需要が増加し、ベンチマークの銅価格が堅調に推移していることも地合を強くしよう。

しかし、中国の最大貿易相手経済圏である欧州でロックダウンの動きが再び見られること、季節的に南半球の供給が再開される可能性が高いこと、12月のファンド決算を意識した売り圧力の強まりが価格を押し下げるため上値も重いと考える。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合。

・高水準の投機筋買い越しポジションが急速に解消されたときの下落リスク。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(コロナの影響もあって、2020年の鉱山生産は全体で184万1,000トン、コロナの影響で115万1,000トン減少する見込み)。

・ニューカレドニアのGoroプロジェクトはAntfagasutaが買収相手として急浮上しており、過剰な供給不足への懸念が後退していることは価格の下落要因に。ただし楽観はできず。

なお、同プロジェクトのニッケル生産は6万トン/年(シェア2.4%)。

・GlencoreはZhairemプロジェクトの開発を決定しているが、ペルーのIscaycruz鉱山の閉鎖、カナダのMatagami鉱山、Kidd鉱山の鉱山年齢終了に伴う減産を見込んでおり、2021年の亜鉛生産は125万トン(従来見通し140万トン)と下方修正。

・中国の環境規制強化やコロナの影響再発に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・1月の米上院決定投票で民主党が過半数を確保し、「トリプルブルー」となり、脱炭素の動きが加速していわゆる省エネ金属の需要が増加する場合。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比+20.9%の298億ドル(前週 246億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+23.4%の6,606.1千トン(前週 5,354.5千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の景気先行指標をみるに堅調な推移を続けると考える。貿易統計で確認できるように鉄鋼製品輸入が増加し、輸出が減少。中国の顕在需要が増加していることを示唆している。鉄鉱石在庫は積み上がっているが日数ベースでは在庫水準は低く、需給はタイトとみられるため。

豪州に対する制裁で、最大輸入相手国からの調達に障害が出ていることも、中国着の鉄鉱石価格の押し上げ要因になっていると考えられる。

また、米国で民主党政権が上下院とも制したため、財政出動に伴うインフラ投資が米国でも実施されるのは都の期待が強まっていることも、鉄鋼原料価格を先物主導で下支えするとみる。

12月の中国の鉄鋼業PMIを見ると、総合指数が49.3から45.8に急減速した。変動性が大きいためなんともいえないが、生産が47.7(前月53.3)と減速、新規受注が42.0(47.2)と大幅に減速したことによる。

しかし、輸出向け新規受註は54.4(45.9)と大幅に回復、完成品在庫が増加(32.2→33.5)して原材料在庫が減少(38.0→32.1)している。このことは、外需の回復を受けて中国政府が国内の経済対策に伴う発注を減少させている可能性がある。

海外の需要が回復したことによる過度な景気刺激が不要になった、と判断したことによるものである可能性がある。しかしながら単月の動きであり、鉄鋼業PMIは製造業PMIに比して変動性が高いため、来月以降の内容を見極める必要があろう。

なお、新規受注完成品在庫レシオは低下し、若干完成品の需給が緩和、一方で新規受注原材料在庫レシオは上昇しており、原材料需給がタイト化していることを示唆している。総じてまだ鉄鋼製品市場の需給はタイトである、とみるべきだろう。

今後も中国政府のインフラ投資を柱とする経済対策が、今年7月の中国共産党結党100周年記念まで続くと予想されること、中国国内の鉄鋼原料在庫水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

ただし価格上昇が需要の減少を引き起こすレーショニングが意識されるほか、南米生産者の増産見通しを考えると上値も重いと考える。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、12月は137万5,000トン(前月185万トン)と減少傾向を持続し、過去5年レンジに戻った。11月の国内生産は季節性もあるが8,766万トン(10月 9,220万トン、9月 9,256万トン)と過去最高水準を記録した8月からは減速傾向を持続している。

その一方、12月の鉄鋼製品輸出は485万トン(前月440万トン)と増加し、過去5年レンジの下限を回復した。このことは中国の鉄鋼製品の国内需要が減速し、顕在需要が減少を始めている可能性があることを示唆している。

弊社はこの鉄鋼製品の輸出入動向に注目しているが、輸出/輸入とも過去5年レンジに復帰の過程にあり、徐々に過剰な国内依存の需要環境から、輸出に牽引される形での鉄鋼業の操業状態(通常状態)に戻ると予想している。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが在庫水準は前週比+37万9,000トンの936万9,000トン(過去5年平均 963万6,000トン)と、例年よりも在庫水準は低くなった。

在庫の減少ペースも過去5年平均を上回っていたが、直近ではこれを下回っている。徐々に中国の国内需要が減速しているないしは鉄鋼生産ペースが加速しているのいずれかである。今後も在庫の減少ペースは注目だ。

原料である鉄鉱石の12月の輸入は前年比▲4.5%の9,675万トン(前月+8.3%の9,815万トン)と高い水準を維持しているが減速、過去5年レンジに復帰した。このことは中国の国内需要が減速している可能性を示唆している。前年水準を下回ったことで、中国の国内需要は減速傾向にあると判断される。

鉄鉱石港湾在庫は前週比+55万トンの1億2,800万トン(過去5年平均1億2,726万6,000トン)、在庫日数は26.3日(過去5年平均 33.1日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は急速に増加して、過去5年平均を回復した。目先の価格下押し要因となるだろう。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・カシミール地方を巡る中国との領有権争いが激化した場合、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

【投機筋のポジション動向】

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値を維持すると考える。金融緩和の継続と、株価の上昇に伴う長期金利上昇圧力がせめぎ合う形で実質金利を現状水準に維持すると考えられることから。

なお、リスクオンはドル安で価格上昇、リスクオフで価格下落となる(詳しくは2020年10月12日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,660ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は180ドルと前日比+10ドル上昇した。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、72.6倍。過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当だが、足元、70~75倍での推移となっている。

金銀レシオのチャートを見ると、70倍を切るとテクニカルに65倍が視野に入る。金価格が変わらなかったとしても、70倍から65倍に低下しただけで、+7.7%の銀価格上昇となるため、消費者は要注意だ。

金は高値を維持する見通しだがバイデン大統領誕生により、太陽光発電向けに用いられる「バイデン銘柄」であることもあって、需要構造の変化が価格を下支え(金銀レシオは低下)するものと予想。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。足下は、各国の自動車セクターの回復期待が強まっており、工業需要回復期待が価格を押し上げている状況。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは価格は景気の先行き楽観が強まっているが、足下のコロナの感染拡大がこれを相殺するため、現状水準でのもみ合いを予想。

ETF残高とパラジウム価格の連動性が高まっており(管理在庫増加→価格上昇)、一時の、ETF管理在庫減少→価格上昇、のメカニズムから変化してきている。

在庫取り崩し→価格上昇は実際に需給がタイトで、現物確保のためにETFを取り崩さなければならなかったからだが、現在はこれと逆のことが発生している訳で、足元、パラジウムの需給は緩和していると見られる。今後はETFの動向に注目。

12月の米自動車販売は年率1,627万台(市場予想1,580万台、前月1,555万台)と減速した。

中国の12月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+6.4%の283万台(前月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と回復を継続している。

自動車販売は回復しているが、不要不急の消費であるため中国を除いては本格的な回復にはまだ時間がかかる見込み。

【見通しの固有リスク】

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが313,217枚(前週比 ▲36,729枚)、ショートが66,990枚(▲3,638枚)、ネットロングは246,227枚(▲33,091枚)、銀が87,905枚(▲2,872枚)、ショートが35,113枚(▲113枚)、ネットロングは52,792枚(▲2,759枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが36,718枚(前週比 ▲594枚)ショートが9,259枚(▲431枚)、ネットロングは27,459枚(▲163枚)

パラジウムが5,314枚(▲605枚)、ショートが2,352枚(+172枚)ネットロングは2,962枚(▲777枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆は中国の需要が想像以上に堅調であり、しばらく高値圏で推移すると考える。しかし、ドルが反転上昇の傾向を強めていることから、高水準な投機の買いポジションに解消売り圧力が強まると予想されるため、上昇余地も限定されると考える。

なお、中国の豚肉価格は下落する一方、豚肉の輸入量も減少している。このことは中国の畜豚数の増加(大豆ミール需要の増加)=大豆需要の増加、を示唆している。当面、中国向けの輸出が中国側の事情で増加すると見られることが価格を下支えすると予想。

小麦はさほど投機の買いポジションが積み上がっている訳ではないが、各地で生産見通しが引き上げられており、ドル高進行もあってやや軟調に推移か。

Locust Watchでは、サジアラビアで発生した個体の、北アフリカとインド・パキスタン・イランへの拡大懸念を指摘している。

昨年末も大型のサイクロンがアラビア半島~北アフリカを通過、豪雨が観測されている。このままだと来年も蝗害が起きる可能性は否定できない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75_en_070606DL.png

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象の発生による穀物供給減少リスクの顕在化。害虫の発生、生産地の土壌破壊など(すでに一部顕在化)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・1月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 172.0Bu/エーカー(175.13、175.8)大豆 50.2Bu/エーカー(50.52、50.7)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)

・1月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 141億8,200万Bu(144億4,629万Bu、145億700万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,642万Bu、41億7,000万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)

・1月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 25億5,000万Bu(26億5,000万Bu)大豆 22億3,000万Bu(22億Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億8,500万Bu)

・1月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億5,200万Bu(15億9,191万Bu、17億200万Bu)大豆 1億4,000万Bu(1億3,861万Bu、1億7,500万Bu)小麦 8億3,600万Bu(8億5,922万Bu、8億6,200万Bu)

・12月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億2,200万Bu(117億4,670万Bu、19億5,000万Bu)大豆 29億3,300万Bu(29億2,900万Bu、5億2,500万Bu)小麦 16億7,400万Bu(16億9,555万Bu、21億5,800万Bu)

・1月CONABブラジル作付け面積(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1,846万ha(1,936万ha、1,844万ha)大豆 3,819万ha(3,848万ha、3,818万ha)

・1月CONABブラジル生産量(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1億231万トン(1億789万トン、1億259万トン) 単収 5,541Kg/ha(5,570kg/ha、5,564kg/ha)大豆 1億3,369万トン(1億3,272万トン、1億3,445万トン) 単収 3,500Kg/ha(3,452kg/ha、3,522kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが658,723枚(前週比 +14,132枚)、ショートが116,600枚(▲6,894枚)ネットロングは542,123枚(+21,026枚)

大豆はロングが276,834枚(▲8,250枚)、ショートが45,977枚(+2,461枚)ネットロングは230,857枚(▲10,711枚)

小麦はロングが137,150枚(+2,490枚)、ショートが106,326枚(+7,013枚)ネットロングは30,824枚(▲4,523枚)

◆本日のMRA's Eye


「アルミは石炭価格上昇で高値維持」

アルミ価格(3ヵ月先渡し価格)は昨年4月に1,455ドルの安値をつけてから600ドル超上昇し、一時2,100ドルに迫った。アルミ価格の上昇は弊社のコラムでも繰り返し主張しているように、中国の公共投資などを切っ掛けとする経済活動の活性化と、生産コストの大半を占める電力価格が、北アジアの気温低下(北半球全体の気温が低下し始めているが...)によって急騰していることが背景にある。

それと同時に中国の主要な石炭の輸入相手国だった豪州に対して、1.コロナウイルスに関する中国への批判に対する報復、2.ファーウェイ問題への対応に対する報復、を目的として主要な一次産品の輸入を制限していることが、さらに中国の国内石炭需給を逼迫させ、価格の押し上げ要因となっている。

中国の国内石炭価格とアルミ価格の相関性が高いことは現在の中国国内の石炭価格を参考にすると、アルミ価格は2,265ドル程度まで上昇してもおかしくない水準。

また、価格上昇の牽引役となる需要面も、一時低迷していたアルミの現物プレミアムは世界各地で上昇に転じており、中国以外の地区の需要も回復基調にある。

ただ、コストを上回る上昇を容認できるほどの需要増加、供給不足に転じているとは考え難い。とは言ってもアルミを巡る現物需給がややタイトな状態を維持しているものと考えるべきで、少なくとも石炭価格が下落に転じると期待される春先頃までは現在の高値圏での推移が続く可能性が高いと考えている。

しかし、価格上昇の牽引役となった中国のアルミの生産・消費を巡る環境は鉄鋼製品と同様、正常化の方向に向かいつつある。

具体的には、アルミの輸入が増加して輸出を上回るネット輸入超の状態は解消し、徐々に輸出超の状態に復帰、過去5年レンジに復帰しつつある。このことは、海外の需要増加による外需増加で、中国政府が過剰に景気刺激で内需を増加させる必要性が低下していることを意味している。

結果、そこの「バトンタッチ」が上手くいかない場合、需要減速で価格はむしろ下落することになる(通常であれば中国の需要+外需でさらに価格が上昇、ということになるが現在はある意味異常な状態であり、中国政府もさらに財政状況が悪化するこの状況を長期化させたくない)。

また、ここまでの価格上昇を投機筋の買いが支えてきたこともまた事実である。昨年の後半から、ドル安を材料に広くドル建て資産が物色され全ての商品価格の値動きが同じになる「金融相場」の色彩を商品市場は強めてきた。

この間に投機の買いがほかの非鉄金属と同様、アルミにも入ったことは間違いがない。この買いは基本的に中国の需要回復による需給タイト化によって発生したものであるが、上述のドル安が牽引したこともまた否めない。

もし、米国の景気が回復、ないしは米民主党政権の財政出動で回復するのならば「良いドル高」が発生し、それが景気となって非鉄金属価格が投機主導で下落する可能性は十分にあり得る。

そのため、これまでそれほど意識してこなかった、米FOMCの結果や方針は、アルミ価格に大きな影響を及ぼすといえ、今後もFOMCは注目イベントになるだろう。

ただでさえ、冬場が終われば石炭価格が下落するため、アルミ価格には下押し圧力が掛りやすいため、春先にかけてはこの下落リスクをむしろ意識した方がいいかもしれない(弊社はこの投機の手仕舞い売りが12月~1月初にかけて起きるとみていたが、非常に限定的な規模でしか発生しなかったため、春先に遅れて顕在化するとみている)。

また、このほかの大きな下落がある可能性がある時期は、中国正月前の駆け込みの現物調達が終了する1月末~2月初にかけてではないだろうか。

◆主要ニュース


・11月日本鉱工業生産改定  前月比▲0.5%(速報比▲0.5%、前月改定+4.0%)前年比▲3.9%(▲0.5%、▲3.0%)
 出荷▲1.2%(▲0.3%、+4.9%)、▲4.0%(▲0.2%、▲3.0%)
 在庫▲1.5%(▲0.4%、▲1.8%)、▲9.0%(▲0.3%、▲8.1%)

・1-12月期中国工業生産 前年比+2.8%(1-11月期+2.3%)、12月+7.3%(前月+7.0%)

・1-12月期中国固定資産投資 前年比+2.9%の51兆8,907億元(1-11月期+2.6%の49兆9,560億元)
 公的+5.3%(+5.6%)、民間+1.0%(+0.2%)

・1-12月期中国小売売上高 前年比▲3.9%の39兆1,981億元(1-11月期▲4.8%の35兆1,415億元)
 12月+4.6%の4兆566億元(前月+5.0%の3兆9,514億元)

・1-12月期中国不動産開発投資 前年比+7.0%の14兆1,443億元(1-11月期 +6.8%の12兆9,492億元)

・12月中国調査失業率 5.2%(前月5.2%)

・Q420中国実質GDP 年初来 前年比+2.3%(前期+0.7%) 前年比+6.5%(+4.9%)、前期比+2.6%(+3.0%)

・EU、「ドル優位の抑制、米制裁を含む金融リスクの脆弱性改善を目指す。」

・ロシア当局、ナリワヌイ氏を逮捕拘束。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・サウジアラビア、UAE、エジプト、バーレーンはカタールと国交を回復。

【メタル】
・Q420Rio Tinto
 鉄鉱石生産 前年比+3%の86.0百万トン(前期▲1%の86.4百万トン)、2021年生産計画 325百万トン~340百万トン

 ボーキサイト▲12%の13,299千トン(+5%の14,459千トン、56百万トン~59百万トン)

 アルミナ+3%の2,085千トン(+7%1,954千トン、7.8百万トン~8.2百万トン)

 アルミ+4%の815千トン(+1%の797千トン、3.1百万トン~3.3百万トン)

 銅鉱山生産▲4%の132.5千トン(▲18%の129.6千トン、5百万トン~5.5百万トン)

・Trevali Mining、Caribou鉱山の亜鉛生産は3月初旬に回復の見込み。

・Vedanta Gamsberg亜鉛鉱山、2ヵ月のシャットダウンの後、稼働再開。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ +3.71%/ +13.02%
2.銀 ( 貴金属 )/ +2.36%/ ▲3.97%
3.SHF錫 ( ベースメタル )/ +1.42%/ +3.66%
4.LIFFEココア ( その他農産品 )/ +1.21%/ +1.04%
5.中国CSI300 ( 株式 )/ +1.11%/ +5.90%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲7.57%/ ▲2.73%
65.MDEパーム油 ( その他農産品 )/ ▲4.61%/ ▲6.48%
64.SHF亜鉛 ( ベースメタル )/ ▲2.72%/ ▲2.25%
63.SHF 銀 ( 貴金属 )/ ▲2.67%/ ▲7.78%
62.SHFニッケル ( ベースメタル )/ ▲2.04%/ +7.75%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :休場( - )
S&P500 :休場( - )
日経平均株価 :28,242.21(▲276.97)
ドル円 :103.69(▲0.16)
ユーロ円 :125.23(▲0.25)
米10年債 :1.08(±0.0)
中国10年債利回り :3.17(+0.03)
日本10年債利回り :0.06(+0.01)
独10年債利回り :▲0.53(+0.02)
ビットコイン :36,234.12(▲27.40)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.64(▲0.04)
エネルギー :38.18(+0.11)
ベースメタル :21.72(▲0.07)
貴金属 :29.06(▲0.34)
穀物 :22.39(±0)
その他農畜産品 :24.10(▲0.03)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :29.13(±0)
Brent :28.71(+0.17)
米天然ガス :69.59(±0)
米ガソリン :34.46(±0)
ICEガスオイル :26.77(▲0.59)
LME銅 :19.42(▲0.19)
LMEアルミニウム :18.97(+0.26)
金 :20.23(±0)
プラチナ :35.95(▲1.7)
トウモロコシ :19.41(±0)
大豆 :20.23(±0)

【エネルギー】
WTI :52.36(▲1.21)
Brent :54.75(▲0.35)
Oman :54.20(▲0.58)
米ガソリン :152.84(▲2.55)
米灯油 :159.29(▲2.65)
ICEガスオイル :452.50(+0.50)
米天然ガス :2.74(+0.07)
英天然ガス :54.86(▲4.49)

【貴金属】
金 :1841.26(+12.81)
銀 :25.35(+0.59)
プラチナ :1085.50(+10.26)
パラジウム :2372.22(▲17.62)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :7,984(▲6:11.5C)
亜鉛 :2,686(▲34:21.5C)
鉛 :2,004(+5:22.5C)
アルミニウム :1,984(▲15:4.5C)
ニッケル :18,102(+105:46C)
錫 :21,324(+249:482B)
コバルト :37,491(▲9)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :7945.00(+11.00)
亜鉛 :2678.00(▲8.00)
鉛 :1995.00(+4.00)
アルミニウム :1970.00(▲12.00)
ニッケル :18090.00(+40.00)
錫 :21225.00(+100.00)
バルチック海運指数 :1,754.00(▲38.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :170.96(+0.15)
SGX鉄鉱石 :171.26(+1.11)
NYMEX鉄鉱石 :休場( - )
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :114.6(+4.10)
大連原料炭先物 :279.46(+32.12)
上海鉄筋直近限月 :4,240(+34)
上海鉄筋中心限月 :4,373(+5)
米鉄スクラップ :512(▲2.00)

【農産物】
大豆 :休場( - )
シカゴ大豆ミール :休場( - )
シカゴ大豆油 :休場( - )
マレーシア パーム油 :3639.00(▲176.00)
シカゴ とうもろこし :休場( - )
シカゴ小麦 :休場( - )
シンガポールゴム :239.70(▲1.00)
上海ゴム :14665.00(+115.00)
砂糖 :休場( - )
アラビカ :休場( - )
ロブスタ :1337.00(▲8.00)
綿花 :休場( - )

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :休場( - )
シカゴ生牛 :休場( - )
シカゴ飼育牛 :休場( - )

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。