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主要市場休場もリフレトレード続く
  • MRA商品市場レポート

2021年2月16日 第1905号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「主要市場休場もリフレトレード続く」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は米国・中国市場が休場だったが、オープンしている市場は景気循環系商品を中心に大幅な上昇となった。日経平均株価は30年半振りの3万円台を回復して引けている。

特段市場で目立った材料はなかったのだが、1.コロナを景気とする各国の財政出動、2.金融緩和を早晩終了させる予定はないとの意向を各国中銀が表明していること、3.1.2.の切っ掛けとなったコロナがワクチン開発や、医療体制の整備進捗でその影響が低下してきていること、から、「そして金融緩和・財政出動のみ残った」という感じだろうか。

結果的にリスク資産価格が上昇してもおかしくない状況だけ、持続しているとも言えるだろう。

コロナに関しては確かにワクチン開発と接種の進捗が、経済活動の回復期待を高めているが、変異種の発生などによって人の移動制限が解除されている訳ではなく、まだ収束するには1年~2年はかかるだろう。

さらに、経済が正常化すれば、1.2.の対策も不要になるわけで、その調整がいずれかのタイミングで起きることは間違いが無い。ただし、「それは今ではない」というのが市場参加者の現在のコンセンサスなのだろう。

問題は今後、である。

【本日の見通し】

本日は米国休場明けとなるが、市場参加者のリスク選好が継続していること、リフレトレードの継続から、商品価格も高値を維持すると考える。

ただしこれまでの上昇ペースが顕著であるため、まずは一旦利食い売りで下落する商品が多かろう。

本日予定されている統計で注目は、ドイツのIFO景況感指数の先行指標であるZEW景況感指数(期待指数 市場予想 59.5、前月 61.8 現状指数 ▲66.5、▲66.4)、ニューヨーク連銀指数(市場予想 6.0、前月 3.5)に注目している。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は続伸した。需要の回復期待が強い中で、北米の気温低下によってシェールオイルが100万バレル近い減産となっていると報じられたことが材料となった。

需給バランスがタイトであることは事実であるが、それ以上に価格が上昇しているとの印象は否めない。

石炭価格(豪州炭)は小幅に下落。中国勢が休日であることもあって買い圧力が弱まったためと考えられる。中国の石炭需要の指標であるバルチック海運指数は小幅に上昇。

極東の天然ガス指標であるJKMは小幅に下落。欧州天然ガス価格は下落、米天然ガスは気温低下で水準を切り上げた。これまでほとんどプラス側に反応していなかった米天然ガス、米灯油も上昇(クラックスプレッドが小幅拡大)している。

本日も景気に対する楽観が強まっていることや、米気温急低下が供給懸念をもたらしていることから、原油価格は高値を維持する公算。

石炭・天然ガスは気温に左右される形で神経質な推移となるが、基本、北半球の気温低下が続いていることから高値圏で小動きの公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属は下落後上昇。中国勢が不在の中、価格上昇を受けて利食い売り圧力が強まり、一時大きく水準を切り下げる局面があったが、ドル安進行や世界的な株高を受けた循環物色で水準を切り上げ、多くの非鉄金属が前日比プラスで引けた。

利益確定の売りが出る予想ではあったが、その後の大幅な買い戻しは想定外で、市場参加者のセンチメントは大きく強気に傾いたままのようだ。

本日も中国勢が不在であることから、利食い売りに押されて軟調な推移になるとみるが、市場参加者の強気バイアスが変化するような材料が出てきていないため、投機を巻き込んだ上昇で高値を維持すると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は休場、豪州原料炭スワップ先物は小幅上昇、大連原料炭先物は休場、上海鉄鋼製品先物価は休場だった。

中国勢の不在で買い圧力は緩和したが、高値圏を維持している。

中国正月でアジアの中華圏市場が休場であることから、小動きを予想。

◆貴金属

金価格は小幅に下落した。景気への楽観が強まる中で景気に循環しやすい商品へのシフトが進む中、金の売り圧力が強まった。足下、リスク・プレミアムを削る形で水準を切り下げており、概ねリスク・プレミアムは過去10年平均程度の水準まで回帰している。

銀価格は上昇。バイデン政権の環境インフラ投資報道を受けて、銀は財政出動期待で上昇する金属に構造が変質しつつある。

プラチナは大幅に上昇。「テーマ性のある金属」が物色される中で、銀に対して割安感があることから物色されている。足下の価格動向を見ると、ETFで上昇しているというよりは、先物で投機買いが加速している影響が大きそうだ。

本日も市場参加者のリスク先行の回復で、銀・プラチナ・パラジウムは堅調、金は金利上昇と期待インフレの上昇観測が価格を支えると考える。

◆穀物

シカゴ穀物市場は休場。

本日も市場参加者のリスク選好回復に伴うドル安基調維持と、中国向けの需要堅調、米国の気温低下や豪雪の影響で堅調な推移を予想(トウモロコシに関して詳しくは、本日のMRA's Eyeをご参照ください)。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日は日経平均が30年半振りに3万円台を回復した。第一次安倍政権発足時に表明した「アベノミクス」で公共投資が拡充され、日銀が過剰な金融緩和を行い、さらにはETFを中央銀行が購入し、するという禁じ手まで行い、なりふり構わない株価上昇政策を取ってきた結果といえる。

景気回復の結果株が上昇する、という因果関係ではなく安倍政権発足以降、株価を上昇させることが1つの命題になっていたことは否めない。ただしこれは日本に限った話ではなく、ECBやスイス中銀なども株を購入している。米FRBは株を購入していないが、これは法律によって禁じられているためだ。代わりにFRBは社債ETFや住宅ローン担保債券を購入している。

いずれも、株価が下落した場合のクレジット市場などでの逆回転リスクを警戒しているためである。例えば企業の創業者や富裕層は、自己保有株式を担保に資金調達を行い、その他の市場に投資をしているケースは多い。

仮に担保である株価の評価が下がれば、その他のリスク資産に負の影響が拡散する可能性がある。それを回避しよう、ということだろう。

しかし、それ以上に問題なのが株価が下落による年金の運用実績の悪化だろう。例えば公的年金基金の運用を行っている年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の投資内訳のうち、半分が株式であり、その半分が国内株である。

仮に株価が下落すればパフォーマンスが悪化し、年金の配当に影響がでてくることになる。そして当然であるが、年金受給者の選挙に与える影響は小さくない。

ただし、中央銀行が株を積極的に購入して形成されている株価が、持続可能であるかどうかは議論が分かれる所だろう。今のところさらなる高値を期待する市場参加者が多いが、中央銀行の買いがなくとも、株価が維持できるのかどうかを問われるタイミングが早晩来るものと考えている。

株価上昇に世の中が沸いているが、あえてリスクについて指摘しておきたい。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合。

米上院選挙の結果を受けて米議会に親トランプ派が乱入、議会がロックダウンされるという事件も起きており、分断された米国の融和は容易ではない。

・「トリプルブルー」になったことで財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならないが、足下、どの中央銀行・政府も景気過熱は意識しているものの沈静化させるタイミングと判断していないため、しばらくは顕著な価格上昇リスクとなる見込み。

ただし、ある意味「意図的にミニバブルを形成」している状態ともいえ、先々の下落リスクが大きくなっている点もリスクに。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は低くなくなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

・米国の財政状況悪化、緩和規模拡大によるドル水準の低下リスク(ドル減価により、名目ドル建て資産価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は短期的には上昇圧力が強まり、中期的には調整圧力が強まる展開がを想定している。

短期的には最大消費国である米国の雇用環境が改善を続けているが、今後も景気刺激への期待が高まっていること、OPECプラスが減産を継続し。サウジアラビアが自主減産を行っていることが需給をタイト化させるため。

CFTCのポジション動向を見るに投機のポジションが価格を押し上げているというよりは、実需の買い増加が価格を押し上げている状況(エッセンシャルな需要の緩やかな回復と、北半球の気温低下による暖房需要の高まり)。すなわち、足下の価格上昇は需給ファンダメンタルズによるものと考えられる。

ただし、価格上昇の前提はOPECプラスの減産継続とサウジの自主減産で需給が引き締まっていることによるものであり、おそらく春先以降の増産が予想されることから、中期的には一旦下落に転じると考えている。

長期的には、報道通りのペースでワクチンが普及し、深刻な副反応が確認されなければ経済活動の回復とともに原油価格持続可能な上昇を始めるのは2021年後半になってからではないか。

【見通しの固有リスク】

・米国経済が正常化する中で急速なドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権がシェールオイルのフラッキングを制限/禁止する場合、供給減少で価格上昇要因に。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い。

・イランの反米感情が高まり、中東の不安定さが増す場合(価格上昇要因)。

イランでは6月に大統領選挙が予定されており、国内保守派に配慮してロウハニ大統領はタカ派的な発言をする可能性があるが、制裁解除に向けた融和的なコメントも欧米向けに発信せざるを得ず、ロウハニ大統領の発言で価格は左右される見込み。

・米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解し、巨大なイスラム教圏が誕生した場合(地域安定で原油生産増加、短期的には価格の下落要因に。ただし相当発生の可能性が低いリスクシナリオ)。

・ワクチン・治療薬が想定以上に早く準備でき、移動制限が急速に解除される場合(価格上昇要因)。

【石炭価格見通し】

石炭価格は高値を維持するが、春先に向けて水準を切り下げる展開になると考える。

高値維持の背景は、中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、冬場で炭鉱が稼働し難いこと、港湾在庫の水準の低さに反映されるように、供給が十分ではないことが材料。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていること、春先に掛けては季節的に需要が減少することから徐々に海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

12月の中国の石炭輸入は気温低下の影響で前月から大幅に増加。前年水準の14倍、前月から3倍強となる3,907万5,000トン(前月1,176万トン)と顕著に増加した。

中国は国内の石炭産業の強化と政治的に対立する豪州からの輸入制限で、国内生産を増加させる方向性に舵を切っているが、足下の気温急低下を受けてそうも言っていられなくなったようだ。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格はしばらく高値圏での推移になると考える。ラニーニャ現象の影響もあり、気温が北半球で低下しているため。

極東の天然ガス指標であるJKM価格も、火力発電所が代替燃料として重油を用いるなどの動きを見せており、目先の調達に目処がたち価格の下押し圧力が強まっている。

欧州の気温低下と、昨夏以降の在庫減少で域内需給がタイト化、LNGカーゴの需給もタイト化が予想されるため、高止まりと考える。しかし春先に掛けては季節的な需要の減少で価格は軟調になると予想する。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・最大供給国であるロシアの増産。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【投機筋のポジション動向】・WTIは投機の買いが増加、実需は価格上昇を受けてショートを増加させたが、この間、価格が上昇しているため投機の買い圧力が強かったものと考えられる。

Brentについては投機の売り買いは拮抗しており、そろそろ転換点に差しかかっている可能性が高いことを示唆。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが694,842枚(前週比 +19,381枚)ショートが180,584枚(+4,297枚)ネットロングは514,258枚(+15,084枚)

Brentはロングが404,969枚(前週比+7,699枚)ショートが57,317枚(+6,100枚)ネットロングは347,652枚(+1,599枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は短期的には上昇余地を試す展開になると予想される。中国政府はバブルを警戒しつつも景気刺激を継続していること、コロナの影響で供給側に障害が生じていること、株価上昇が続きリスク資産に買いが入る流れが継続しているため。

しかし、中期的には調整圧力が強まる展開になるとの予想は、現時点では変更する必要はないと考えている。中国政府が国内バブルを警戒する姿勢を強めていること、米経済統計回復に伴うドル高進行、生産国の生産回復が材料。

また、中国の貿易統計を見るに非鉄金属のベンチマークである銅に関して、精錬品の輸入が減速して過去5年レンジに戻ったことが確認されており、中国の過剰な経済対策による需要創出が一巡した可能性があることを示唆していることも、逆説的ではあるが、非鉄金属価格を下押し。

ただし、中国は7月に共産党結党100周年記念を控えており、それまで大幅な景気の減速は是が非でも回避するとみられること、世界経済は緩やかに回復していることから下落余地も限定されると考える。

なお、現在の価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化が牽引する価格上昇ではない。

例えば、中国の超高圧送電線網整備額は当初予定比+61%の1,811億人民元とする方針が今年の4月に示されており、電線向けの需要が銅、並びにアルミの需要を押し上げている。アルミは配電には利用されないが、超高圧電線には使用される。

このほか、バイデン政権の政策推進による環境重視の姿勢の強まりが、いわゆる「バイデン・トレード(化石燃料売り・省エネ金属買い、ただし金属生産の際には二酸化炭素が出ることは変わらない)」を加速させ、投機的な買い圧力を強めている。

バイデン・トレードは短期的には顕在化する需要ではないが、省エネ金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性があるため、足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

中国が豪州の銅鉱石輸入を禁止していることで、精錬銅の需要が増加し、ベンチマークの銅価格が堅調に推移していることも地合を強くしよう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合。

・高水準の投機筋買い越しポジションが急速に解消されたときの下落リスク。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(コロナの影響もあって、2020年の鉱山生産は全体で184万1,000トン、コロナの影響で115万1,000トン減少する見込み)。

・中国の環境規制強化やコロナの影響再発に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】・投機筋はさすがにこの価格上昇の中で手仕舞いの動きを強める形となった。しかし、米財政出動や中国のマネーマーケットの加熱などで、再び買い圧力が強まっており、恐らく来週のこのレポートでは、投機買いの再度の増加が確認されると予想される。

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲1.3%の270億ドル(前週 274億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲2.2%の5,969.2千トン(前週 6,104.5千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の景気先行指標をみるに堅調な推移を続けると考える。中国の顕在需要が増加していることが背景。

今後も、中国政府のインフラ投資を柱とする経済対策が、今年7月の中国共産党結党100周年記念まで続くと予想されること、中国国内の鉄鋼原料在庫水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

中国政府は住宅セクターバブルを懸念し始めており、偽装離婚による住宅取得を規制するなどの動きを見せている。しかし、同時に自動車取得を促す政策も発表(ナンバープレート取得条件緩和、新エネルギー車購入に補助金、自動車ローンの頭金引き下げ)しており、政策には一貫性がない。バブルは警戒しているが、直ちに規制を強めることはなさそうだ。

ただし、中国共産党は2021年から始まる新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。目先の景気刺激が終了し、景気の巡航速度への回復が確認されるタイミングで景気刺激と鉄鋼増産は回避される可能性が高く、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

1月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は44.3(前月45.8)と大幅に減速した。生産指数は48.7(47.7)と小幅に上昇しているが、新規受注は35.0(42.0)と急減速。これに対して輸出新規受注は55.2(54.4)と改善している。

このことは、中国経済並びに世界経済がワクチン開発・接種の進捗に伴い正常化に向かう動きになりつつあり、商業ベースではエッセンシャルな需要が回復、中国も輸出増加のバイアスが掛かり始めているためと考えられる。

しかし、市場規模としては圧倒的に中国の国内市場規模の方が大きいため、徐々に鉄鋼セクターには減速圧力が掛ることになるだろう。

実際、新規受注は減速し、それと同時に完成品在庫(33.5→48.7)、原材料在庫(32.1→42.3)と急増しており、新規受注在庫レシオは大幅に低下している。このことは鉄鋼製品並びに鉄鋼原料価格を下押しすると予想される。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、12月は137万5,000トン(前月185万トン)と減少傾向を持続し、過去5年レンジに戻った。12月の国内生産は季節性もあるが9,125万トン(前月8,766万トン、10月 9,220万トン、9月 9,256万トン)と回復した。

その一方、12月の鉄鋼製品輸出は485万トン(前月440万トン)と増加し、過去5年レンジの下限を回復した。このことは中国の鉄鋼製品の国内需要が減速し、顕在需要が減少を始めている可能性があることを示唆している。

弊社はこの鉄鋼製品の輸出入動向に注目しているが、輸出/輸入とも過去5年レンジに復帰の過程にあり、徐々に過剰な国内依存の需要環境から、輸出に牽引される形での鉄鋼業の操業状態(通常状態)に戻ると予想している。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが在庫水準は前週比+132万4,000トンの1,395万9,000トン(過去5年平均 1,479万7,000トン)と、例年よりも在庫水準は低い。

在庫は積み増し時期にあり増加しているが、過去5年平均を下回っている。引き続き中国の鉄鋼需給はタイトな状態が続いていると考えられる。

原料である鉄鉱石の12月の輸入は前年比▲4.5%の9,675万トン(前月+8.3%の9,815万トン)と高い水準を維持しているが減速、過去5年レンジに復帰した。このことは中国の国内需要が減速している可能性を示唆している。前年水準を下回ったことで、中国の国内需要は減速傾向にあると判断される。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲25万トンの1億2,590万トン(過去5年平均1億3,006万6,000トン)、在庫日数は23.0日(過去5年平均 30.3日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均を回復しているが、鉄鋼生産量の水準対比ではまだ在庫水準は低いといえる。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

【投機筋のポジション動向】

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏でもみ合うものと考える。長期金利上昇、景気回復期待でのドル高進行が米雇用統計の結果を受けてややトーンダウン、結局景気刺激や低金利政策の方針に当面変更はないとの見方が強まっているため。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,660ドル。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は155ドルと、昨日から▲7ドル低下した。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、65.9倍。過去1年を基準にすると87倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

金は高値を維持する見通しだがバイデン大統領誕生により、太陽光発電向けに用いられる「バイデン銘柄」であることもあって、需要構造の変化が価格を下支え(金銀レシオは低下)するものと予想。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。足下は、各国の自動車セクターの回復期待と、主要生産国である南アフリカの供給不安が強まっており、価格を押し上げている状況。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは価格は景気の先行き楽観が強まっているが、貴金属セクターの投機筋物色が続いていることから、高値を維持する見込み。

コロナショック後、パラジウム価格は基本的にETF価格との連動性が高まった(自動車向けの需要減少で余剰が発生したため)が、足下、ETFの残高の変動以上に価格が上昇している状況。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

1月の米自動車販売は年率1,663万台(前月1,627万台、市場予想1,618万台)と減速した。

中国の1月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+30%の250万台)前月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と前年比の伸びが加速している。

自動車販売は回復しているが、不要不急の消費であるため中国を除いては本格的な回復にはまだ時間がかかる見込み。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが309,326枚(前週比 ▲5,026枚)、ショートが57,919枚(+693枚)、ネットロングは251,407枚(▲5,719枚)、銀が80,133枚(▲501枚)、ショートが30,590枚(+1,365枚)、ネットロングは49,543枚(▲1,866枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが47,530枚(前週比 +7,278枚)ショートが11,330枚(+1,288枚)、ネットロングは36,200枚(+5,990枚)

パラジウムが4,122枚(+3枚)、ショートが3,385枚(▲35枚)ネットロングは737枚(+38枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆は中国の需要が想像以上に堅調であり、しばらく高値圏で推移すると考える。

なお、中国の豚肉価格は下落する一方、豚肉の輸入量も減少している。このことは中国の畜豚数の増加(大豆ミール需要の増加)=大豆需要の増加、を示唆している。当面、中国向けの輸出が中国側の事情で増加すると見られることが価格を下支えすると予想。

小麦も投機のネット買越しポジションの水準が高いことから、投機的な視点で利益確定による売り圧力が強まる展開を予想。ただし、需要面・供給面はタイトな状態が続いており、価格は高値維持を予想。

ただし、今年は寒波の襲来で北米も降雪が深刻な被害となっている。冬場の降雪量が多かった場合、通常であれば春の土壌水分改善で播種が進み、豊作に繋がるのだが想定以上の雪解け水が発生した場合には逆に耕作が不可能になるため、価格の上昇リスクとなり得る。

また今穀物年度は小麦を含む穀物の輸出制限の動きが生産国で強まっている。いずれも国内供給を確保することが目的だ。

ロシアは12月に穀物価格の高騰を受けて輸出制限の動きを加速、1月からひまわりの種・菜種に輸出税を課すことを決定、2月からは小麦に輸出税を賦課、大麦、トウモロコシも対象とすることとなった。

ウクライナも国内飼料供給確保の観点から輸出枠に制限を設定、アルゼンチンはトウモロコシの輸出禁止を決定(後に撤回)するなど、国内供給への警戒が強まっている。

Locust Watchではエチオピア、ケニアで群生が発生している。昨年末も大型のサイクロンがアラビア半島~北アフリカを通過、豪雨が観測されており、バッタの成育に良好な環境が提供されている可能性があり、このままだと今年も蝗害が起きる可能性は否定できない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210204HoAupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象の発生による穀物供給減少リスクの顕在化。害虫の発生、生産地の土壌破壊など(すでに一部顕在化)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・2月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 172.0Bu/エーカー(NA、172.0)大豆 50.2Bu/エーカー(NA、50.2)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)

・2月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 141億8,200万Bu(NA、141億8,200万Bu)大豆 41億3,500万Bu(NA、41億3,500万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)

・2月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 26億Bu(25億5,000万Bu)大豆 22億5,000万Bu(22億3,000万Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億8,500万Bu)

・2月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 15億200万Bu(13億8,388万Bu、15億5,200万Bu)大豆 1億2,000万Bu(1億2,071万Bu、1億4,000万Bu)小麦 8億3,600万Bu(8億3,454万Bu、8億3,600万Bu)

・12月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 113億2,200万Bu(117億4,670万Bu、19億5,000万Bu)大豆 29億3,300万Bu(29億2,900万Bu、5億2,500万Bu)小麦 16億7,400万Bu(16億9,555万Bu、21億5,800万Bu)

・1月CONABブラジル作付け面積(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1,846万ha(1,936万ha、1,844万ha)大豆 3,819万ha(3,848万ha、3,818万ha)

・1月CONABブラジル生産量(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1億231万トン(1億789万トン、1億259万トン) 単収 5,541Kg/ha(5,570kg/ha、5,564kg/ha)大豆 1億3,369万トン(1億3,272万トン、1億3,445万トン) 単収 3,500Kg/ha(3,452kg/ha、3,522kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが613,127枚(前週比 +2,980枚)、ショートが90,695枚(+9,062枚)ネットロングは522,432枚(▲6,082枚)

大豆はロングが286,213枚(+4,762枚)、ショートが37,038枚(▲2,191枚)ネットロングは249,175枚(+6,953枚)

小麦はロングが129,840枚(▲5,773枚)、ショートが102,068枚(▲720枚)ネットロングは27,772枚(▲5,053枚)

◆本日のMRA's Eye


「トウモロコシ価格高騰の国内への影響」

トウモロコシ価格の上昇が継続している。トウモロコシ価格上昇の背景には、中国の輸入増加が挙げられる。

そもそも中国はトウモロコシを自給自足してきたが、米農務省の統計を参考にすると、2017-2018穀物年度から需給バランスは供給不足となり、輸入も増加させてきた。

飼料向け需要、工業向け需要共に増加する一方で生産は頭打ちとなっており、国内需給バランスが急速にタイト化しているためだ。

中国の在庫水準を需要で割った在庫率は、2015-2016穀物年度が直近10年の最高で92.6%となっていたが、現在は67.9%まで低下、需給バランスの指標である需給率(需要÷供給。この数値が上昇するほど需給バランスがタイトであることを意味する)も2015-2016年の51.9%から59.6%に上昇している。

中国のトウモロコシ輸入も増加しており、2020年の輸入実績は1,129万トンと、前年の480万トンを649万トン上回った。これは、前年からの増加分だけで世界需要の0.5%に相当する。また、中国は1月に米国から210.8万トンの輸入を成約している。

中国の輸入増加はある程度構造変化によるものと考えられ、この輸入需要の増加は継続すると見られる(米国との通商合意を遵守するための購入ではなく、実際に中国側が必要なために輸入している)。

こうした需要面に加えて生産・供給面でもラニーニャ現象による生産減少や、ロシアやウクライナ、アルゼンチンのトウモロコシの輸出制限の動きなども価格を押し上げている。

価格動向を占う上で、投機・実需の取引動向は参考になるが、このコラムでも何回か指摘しているように、現在の投機筋のトウモロコシのネット買越しはこの時期としては記録的に高い水準になっている。

また、投機と実需のネットポジション動向を比較してみると、昨年6月以降、投機のネット買越しポジションが大幅に拡大し、実需のネット売り越しポジションも減少している。

実需と投機のネットポジションは一致する(誤差漏洩あり)ため、このときのポジション変化でトウモロコシの価格がどのように動いたかを考えることで、「実需・投機どちらの要因で価格が変化したか」を判断することが可能だ。

昨年6月以降、トウモロコシ価格は急速に価格水準を切り上げているため、「投機の買い圧力が実需の売り圧力に勝った」と言えるだろう。つまり、投機筋が現在のポジションを解消する動きを強めた場合、価格は下落する可能性が高い、ということである。

今後、米景気が回復し、ドル高バイアスがかかる可能性が高いことを考えると、これらの投機ポジションが四半期末などの節目に解消して価格が下落するリスクは小さくないと考える。

しかし、コロナウイルスの感染拡大がまだ継続していることで、国内・国外ともロジスティックスが不安定であり、かつ、ラニーニャ現象が継続、ドルも早晩上昇すると言われているもののまだ市場参加者のリスク選好姿勢は継続しており、しばらくはドルの水準は低いままとなりそうである。

また、北米の厳冬や降雪が耕作地の状態を悪化させて、今年の春以降の作付け作業に影響する可能性も無視できず、コロナの影響が緩和すれば自動車向けのエタノール需要が回復する可能性もあり、下落するリスクがある、といいながらも投機の手仕舞い売りもしばらくは発生しなさそうだ。恐らく次の節目は四半期末となる3月末にかけて、利益確定の動きがあるかどうかだろう。

なお、これらのトウモロコシは主に飼料用のトウモロコシであり、我々が日々食用にしているトウモロコシとは別物である。

そのため、海外市況の上昇は鶏肉や豚肉、牛肉の飼料価格上昇によって肉類の価格が時間差を持って値上げされるという形で、我々消費者に影響を与えることになる。実際、農畜産業振興機構の飼料工場渡価格と輸入トウモロコシ価格の相関性は高い。

このように、国際商品価格の変動は日本で暮らす我々にとっては、時間差を持って影響するものが多いため、国際市況が下落に転じているにもかかわらず国内市況は高いまま、ということが今後発生する可能性は十分に有り得る。

また、肉類の価格上昇に繋がるリスクを消費者は警戒すべきだが、生産者はその「値上げの時間差」発生による業績悪化リスクに対応する必要が出てくるのではないか。

◆主要ニュース


・Q420日本実質GDP速報 前期比+3.0%(前期確定+5.3%)、前期比年率+12.7%(+22.7%)
 GDPデフレータ 前年比+0.2%(+1.2%)
 民間消費支出 前期比+2.2%(+5.1%)
 民間住宅+0.1%(▲5.7%)
 民間企業設備投資+4.5%(▲2.4%)
 公的固定資本形成(政府公共投資) +1.3%(+0.9%)

・12月日本鉱工業生産改定  前月比▲1.0%(速報比+0.6%、前月改定▲0.5%)前年比▲2.6%(+0.6%、▲3.9%)
 出荷▲1.1%(+0.5%、▲1.2%)、▲2.9%(+0.5%、▲4.0%)
 在庫+1.1%(±0.0%、▲1.5%)、▲8.4%(±0.0%、▲9.0%)

・12月日本設備稼働率 前月比+0.8%(前月▲2.9%)

・12月インド卸売物価指数 前年比+2.03%(前月+1.22%)

・1月インド貿易収支 ▲145億4,000万ドルの赤字(前月▲154億4,000万ドルの赤字)
 輸出 前年比 +6.2%(+0.1%)
 輸入 +2.0%(7.6%)

・12月ユーロ鉱工業生産 前月比 ▲1.6%(前月+2.6%)
 前年比▲0.8%(▲0.6%)

・12月ユーロ圏貿易収支(季節調整済) 275億ユーロの黒字(前月 249億ユーロの黒字)
 調整前 292億ユーロの黒字(249億ユーロの黒字)

・日経平均、終値ベースで3万円台を回復。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・米パーミヤン鉱区の原油生産、寒波の影響で生産が▲100万バレル減少。

・イラン外務省報道官、「2015年の核合意に関して、21日までに参加国が義務を果たさなければIAEAの追加議定書の自主的な履行を停止する。」

・イラン ザリフ外相、日本と欧米に対して米国にイランへの制裁解除を促すよう要請。

・サウジアラビア主導の有志連合軍、フーシ派発射のミサイルを迎撃。

【メタル】
・亜鉛のスポットTC(中国)、70ドル~85ドルと2年半来の低水準。ペルーのロックダウンが継続していることで鉱石供給に影響。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.プラチナ ( 貴金属 )/ +3.90%/ +21.75%
2.LME錫 3M ( ベースメタル )/ +3.81%/ +19.90%
3.TCMガソリン ( エネルギー )/ +3.32%/ +16.93%
4.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +3.08%/ +23.17%
5.TCM灯油 ( エネルギー )/ +3.07%/ +13.64%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲7.29%/ ▲26.28%
65.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲1.25%/ +21.11%
64.LIFFEロブスタ ( その他農産品 )/ ▲0.75%/ ▲3.06%
63.LMEアルミ 3M ( ベースメタル )/ ▲0.55%/ +5.02%
62.LME鉛 3M ( ベースメタル )/ ▲0.47%/ +6.61%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :休場( - )
S&P500 :休場( - )
日経平均株価 :30,084.15(+564.08)
ドル円 :105.38(+0.44)
ユーロ円 :127.82(+0.63)
米10年債 :1.21(±0.0)
中国10年債利回り :休場( - )
日本10年債利回り :0.08(+0.01)
独10年債利回り :▲0.38(+0.05)
ビットコイン :48,203.45(+256.29)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :25.18(+0.71)
エネルギー :22.25(+0.23)
ベースメタル :24.23(+3.72)
貴金属 :30.51(+0.19)
穀物 :25.75(±0)
その他農畜産品 :25.28(+0.11)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :20.69(±0)
Brent :15.15(▲0.52)
米天然ガス :44.56(±0)
米ガソリン :16.59(±0)
ICEガスオイル :20.85(+1.96)
LME銅 :17.82(+0.85)
LMEアルミニウム :15.56(▲0.67)
金 :27.90(±0)
プラチナ :37.23(+1.61)
トウモロコシ :32.74(±0)
大豆 :27.90(±0)

【エネルギー】
WTI :59.47(+1.23)
Brent :63.30(+0.87)
Oman :62.25(+0.86)
米ガソリン :169.25(+4.23)
米灯油 :177.14(+2.68)
ICEガスオイル :518.25(+15.50)
米天然ガス :2.91(+0.04)
英天然ガス :41.58(▲3.27)

【貴金属】
金 :1818.86(▲5.37)
銀 :27.62(+0.26)
プラチナ :1305.33(+48.95)
パラジウム :2390.74(+4.55)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :8,391(+140:25.5B)
亜鉛 :2,828(+21:14C)
鉛 :2,122(▲1:12.5C)
アルミニウム :2,083(+2:3.5C)
ニッケル :18,658(+254:46C)
錫 :24,151(+708:4748B)
コバルト :47,000(±0.0)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :8395.00(+77.00)
亜鉛 :2844.00(+7.00)
鉛 :2120.00(▲10.00)
アルミニウム :2080.00(▲11.50)
ニッケル :18600.00(▲20.00)
錫 :24400.00(+895.00)
バルチック海運指数 :1,364.00(+25.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :161.48(▲0.28)
SGX鉄鉱石 :161.22(+0.40)
NYMEX鉄鉱石 :休場( - )
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :144.65(+0.15)
大連原料炭先物 :263.23(▲0.94)
上海鉄筋直近限月 :4,294(+14)
上海鉄筋中心限月 :休場( - )
米鉄スクラップ :休場( - )

【農産物】
大豆 :休場( - )
シカゴ大豆ミール :休場( - )
シカゴ大豆油 :休場( - )
マレーシア パーム油 :3925.00(+27.00)
シカゴ とうもろこし :休場( - )
シカゴ小麦 :休場( - )
シンガポールゴム :225.00(+6.00)
上海ゴム :休場( - )
砂糖 :休場( - )
アラビカ :休場( - )
ロブスタ :1332.00(▲10.00)
綿花 :休場( - )

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :休場( - )
シカゴ生牛 :休場( - )
シカゴ飼育牛 :休場( - )

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。