「リスク回避による円高」の態様 その1
- MRA外国為替レポート
2019年1月14日号
◆先週の市場総括
先週の市場は引き続きリスク回避が後退、リスク選好が回復する流れが続いた。
週央に公表されたFOMC議事録(12月18日・19日開催分)
米国株は1月4日から5日続伸。週末も落ち着いた値動き。
しかし議事録を受けて107円80銭に下落。
ドル円相場は108円台を回復し週末NYの引けは108円50銭
しかしECB議事録で慎重姿勢も伝えられ反落。1.
日経平均は20,200円近辺に大幅高寄りして始まり、
月曜日の東京市場のドル円相場は108円40銭~
トランプ大統領は6日日曜日、中国との通商協議は非常に順調に進んでいる、と述べていた。しかしその後はじり安となり後場は20,100円中心。
ドル円相場は108円20銭近辺でもみ合い。
リスク選好が回復するなかドルと円が軟調。
米国のロス商務長官は米中交渉について、当座の問題では妥当な合意が可能、ただし貿易を巡る構造問題、知的財産権の保護などについては慎重な見方を示した。
発表されたISM非製造業景気指数(12月)は57.
火曜日の東京市場のドル円相場は108円70銭で始まり底固い値
日経平均は20,200円で寄り付き堅調。後場は一時20,
米国株は3日続伸。米10年債利回りは2.73%に小幅上昇。
米中交渉は当初月曜日・
水曜日の東京市場のドル円相場は108円80銭近辺で始まり10
日経平均は堅調な米国株を好感して20,
海外市場に入るとドルは下落。公表されたFOMC議事録(
米経済は底固いとしつつも、不安定な金融市場、世界経済減速見通しにFRB内でも懸念が高まり、
この議事録のハト派的な内容に加え、シカゴ連銀総裁、ボストン連銀総裁から利上げに辛抱強くなれると発言。ドルは大きく下落。ドル円相場は一時108円ちょうど、ユーロドル相場は1.
一方、FRBのハト派・柔軟姿勢、
木曜日の東京市場のドル円相場は108円20銭で始まり実需の円
日経平均は反落して20,300円で安寄り、続落して20,
中国商務省は米中協議で技術の強制移転や知的財産権などの構造問題で進展がみられた、としたが、詳細は明らかにしなかった。
海外市場に入るとドルは反発。ユーロが反落。
一方、FRBパウエル議長は安定的な物価指標を踏まえ金融政策(
現時点であらかじめ決められた金利の道筋があるわけではない、世界経済が一段と鈍化すれば柔軟・迅速に政策を展開することは可能と述べた。ただ一方で、保有資産は大きく縮小する方針(市場からの資金吸収)、と以前の保有資産拡大もありうるとのニュアンスの発言を覆した。
これを受けて米10年債利回りは2.75%に上昇。ドルは堅調。
米国株は米中通商摩擦懸念の後退やパウエル議長の柔軟発言が引き続きリスク選好の回復に寄与して5日続伸。
金曜日の東京市場は総じて動意薄。
海外市場では前日に続きユーロ安・ドル高が進んだ。ユーロ安が目立ち、ユーロドル相場は1.1530から1.1450へ下落、
その傍らでドルは全般的にしっかり。ドル円相場は小幅上昇して108円60銭近辺で引けた。
米国株は小動き、横ばい。
この日発表された米国の消費者物価指数(12月)は前月比▲0.
◆今週の3つの注目ポイント
1.イギリス議会EU離脱協定案採決
15日火曜日にイギリス議会でEU離脱協定案が採決にかけられる
否決された場合に市場が混乱する可能性があり要注意。
イギリスにはマイナスであり再びポンド安も。ユーロにも波及する可能性。リスク回避センチメントから円高となる可能性も。
2.ベージュブック(米地区連銀経済報告)
16日水曜日にベージュブックが公表される。
また懸念のみならず、実際の企業業績にどれほどの影響が生じているか。市場に懸念をもたらす内容か、既知の範囲内の景気先行き懸念にとどまるか。
3.米国の経済指標
米国経済がなお堅調に推移しているかどうかは、市場のリスク選好回復基調を維持できるかどうかにとって重要。年末商戦や企業の景況感・活動状況はどうか。
火曜日 貿易収支、生産者物価指数、NY連銀製造業指数(1月、予想12.0、12月10.90-11月23.
なお、政府機関封鎖の影響で指標の発表が遅れる可能性がある。
このほか、14日月曜日には中国の貿易収支が、
◆今週のMRA's Eye
「リスク回避による円高」の態様 その1
米中通商摩擦、中国景気悪化、米国景気減速、米政府機関の封鎖、など山積する不透明感から、年末年初にリスク回避が高まり米国株が大幅下落。年初には円が急騰した。ある程度想定されていたが、リスク回避による円高、がまたしても現実のものとなった。
ただひと口に「リスク回避の円高」といってもその背景・態様は様々だ。また「リスク回避の円高」というフレーズ、
おそらく新興国の発展が「BRICs」
また裁定取引や統計手法による金融取引手法の発展も大いに関係がある。2000年代に入ってからのヘッジファンド業界の成長・
その意味で、「リスク回避の円高」という概念は、長い歴史のなかでみれば、経済理論的な根拠のある概念というよりは、投資家行動や経験に根差した概念、もしかするとある一時期に隆盛を極めている「流行り」といった方がよいのかもしれない。
唯一、日本は貿易黒字国であり何らかの資本流出(投資・投機にかかわらず円売り)がなければ常に円高圧力がかかる、
2000年以前においても円高局面はあった。
1985年のプラザ合意による急激なドル安円高は円高というより
1995年にドル円相場は初めて100円を割り80円割れを記録
日本に対しては貿易問題を厳しく取り上げ、為替を貿易交渉の材料に使う、とのスタンスまで示していた。
このように1990年代までの円高、というよりドル安は、
グローバルな資本の流れも現在ほど大きくなく、また金融市場においてはようやくデリバティブ取引が活発化し、あるいはヘッジファンドが台頭し始めた時期だ。
資本の流れ、今でいうリスク回避による円高があったとすれば、
ただこれは、いわゆるリスク回避による円高、というよりは、通常の資本フローの範囲内の現象だ。内外資本動向がようやく活発化し始めていたが、この頃まではまだ貿易収支の動向も為替相場の材料として機能していた。
加えて、95年のドル安円高の後、ドル買い協調介入が実施され、
90年代後半に入ると、
米国には海外から投資資金・資本が流入し、当局のドル買い協調介入の流れのままにドル高が進んだ。
その傍らで1997年にはアジア通貨危機が、
少なくとも、この時点までは、日本は安全ではなく、リスク回避の円買い、という概念とはかけ離れた世界だった。
日本の状況が悪化しているなか円を買わなければならなかったのは傷んだ日本の投資家で、グローバルにリスク回避の円買いというよりも、本邦投資家による母国回帰バイアスだけだった。
そうしたなか、リスク回避の円高、の兆しが垣間見られた。
グローバル金融市場の成長・拡大・質的な発展により、この頃にはデリバティブ取引や裁定取引が活発化していた。大手ヘッジファンドが台頭し、大きなポジションで市場を席捲していた。
為替市場においては、
1997年のアジア危機については、
その結果、
為替市場の動きだけに注目すればソロスによるポンド危機のアジア版ともいえる。
1998年のロシア危機はLTCMという巨大なヘッジファンドは
そのひとつがロシア国債投資。ロシア財政の破綻確率が低いとみつもり、高金利のロシア短期国債をドル資金で大量に購入していた。
ロシアが債務不履行を宣言し、統計的に安全としていた取引が破綻した。そこから様々な取引が手仕舞いを余儀なくされ、その動きは他のヘッジファンドや投資家も巻き込んだ。
1997年の日本の金融危機を材料とした「日本売り・円売り」
ドル円相場は140円台から半年で110円台に、
そしてこの時期は、日本が「失われた10年」に突入、
そして2000年代に入っていくことになる。
(その2に続く)
◆主要指標
【対円レート】
ドル :108.48(+0.05)
ユーロ :124.44(▲0.27)
英ポンド :139.319(+1.08)
豪ドル :78.294(+0.38)
カナダドル :81.766(▲0.16)
スイスフラン :110.307(+0.16)
ブラジルレアル :29.2332(+0.02)
中国人民元 :16.024(+0.09)
韓国ウォン(日本円=100) :9.703(+0.00)
【対ドルレート】
ユーロ :1.1469(▲0.003)
英ポンド :1.2844(+0.010)
豪ドル :0.7215(+0.003)
カナダドル :1.3267(+0.003)
スイスフラン :0.9835(▲0.001)
ブラジルレアル :3.714(+0.003)
中国人民元 :6.763(▲0.026)
韓国ウォン :1116.36(▲2.24)
【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00
【主要国長期金利】
米10年債 :2.70(▲0.04)
米2年債 :2.54(▲0.03)
日本10年債利回り :0.02(▲0.01)
日本2年債利回り :0.02(+0.00)
独10年債利回り :0.24(▲0.02)
独2年債利回り :▲0.59(+0.00)
【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :23,995.95(▲5.97)
NASDAQ :6,971.48(▲14.59)
S&P500 :2,596.26(▲0.38)
日経平均株価 :20,359.70(+195.90)
ドイツ DAX :10,887.46(▲34.13)
インド センセックス :36,009.84(▲96.66)
中国上海総合 :2,553.83(+18.73)
ブラジル ボベスパ :93,658.31(▲147.62)
英国FT250 :18,542.31(+106.69)
ビットコイン :3649.21(+18.35)
【主要商品価格】
WTI :51.59(▲1.00)
Brent :60.48(▲1.20)
米ガソリン :140.07(▲3.00)
米灯油 :187.97(▲2.64)
金 :1290.25(+3.60)
銀 :15.60(+0.03)
プラチナ :810.16(▲10.20)
パラジウム :1323.25(▲2.79)
銅 :5950.00(+18:23.5C)
アルミニウム :1840.50(▲17:24.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック
シカゴ大豆 :899.25(+3.75)
シカゴ とうもろこし :378.25(+2.00)
シカゴ小麦 :519.50(+5.75)
※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。