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政策催促相場はピークを越えたか
  • MRA外国為替レポート

2019年1月7日号

◆先週の市場総括


クリスマス休暇明けから年末にかけて、市場心理は引き続きリスク回避的なまま推移した。

米中通商摩擦、中国の景気悪化、米国経済の先行き不透明感、加えて米国では予算を巡る大統領と民主党議会の対立で政府機関が閉鎖、と懸念材料に事欠かない状況。

クリスマス休暇前に米国株は大きく調整。日経平均は3連休明けの25日に1年3ヶ月ぶりに2万円の大台を割り込んだ。

その後米国ではクリスマス商戦の好調が伝えられるなどで株価は持ち直したが、値動きの荒い不安定な展開。日経平均は2万円をかろうじて維持して大納会を終えた。

ドル円相場は値動きの荒い株価動向を傍目に比較的安定した値動き。111円ちょうど近辺から3連休明けの株安を受けて110円近辺まで下げたが底固く持ち直し。28日の週末にかけて再び111円台を回復した。

ただその後海外市場ではドルが軟調。28日に発表されたシカゴ購買部協会景気指数(12月)は65.4と前月から小幅低下したものの予想を上回った。

しかし31日に発表されたダラス連銀製造業活動指数(12月)は▲5.1と前月17.6から大きく悪化し予想15を下回り市場の景気先行き懸念が高まったまま。ドル円相場はじり安となり110円を割って、109円60銭近辺で年末の取引を終えた。

年明けの市場は2日水曜日の海外市場から始まったが、年末のリスク回避的な動きが継続。ドル円相場はアジア時間にじり安となり、欧州市場に入ると一時109円ちょうどを割り込んだ。

その後は年初の米株式市場が堅調に推移するなか109円40銭近辺まで持ち直した。

しかし2日米株式市場引け後、日本時間の3日早朝に米アップル社が中国での不振を主要因として業績予想を大きく下方修正。これをきっかけに、米国景気、中国景気、への不安感が高まり、リスク回避が急速に強まった。

為替市場では、市場取引が薄いなか、プログラム売買やリスクポジションの手仕舞い、日本の個人投資家・外為証拠金取引における円売りが相次いでストップロス、損失確定の手仕舞い=円買戻しが誘発され、一気に円買いが進んでドル円相場は一時105円を割り込んだ。

ユーロ円相場も一時119円割れ。いわゆるフラッシュ・クラッシュ、と呼ばれる瞬間的な相場のクラッシュが発生した。

ただその後市場参加者が戻り始めるとすぐに107円台に戻しもみ合い推移。ユーロも122円近辺に戻した。なお、この円急騰のなか、ドルもしっかりで、ユーロドル相場は1.14台後半から1.13台前半へとユーロ安ドル高となった。

3日木曜日の海外市場では米国株が大幅安。アップルの業績下方修正を受けて中国依存度の高い企業の株が軒並み下落した。

また発表された、ISM製造業景気指数(12月)は54.1と前月59.3から大きく悪化。景況感の分かれ目である50を上回っているものの2年ぶりの低水準に低下。

また前月からの変化としては2008年10月以来の大幅悪化。これを受けて米10年債利回りは2.65%から2.55%へと急速に低下。ドルの上値を重くした。

ただドル円相場は急落後だけに107円台後半で底固い値動きとなりそのまま引け。一方ユーロは対ドルで1.14ちょうど近辺まで戻した。こちらは前日の反動でユーロ高ドル安の動き。ユーロ円相場はじり高で122円台後半~123円へ上昇した。

4日金曜日の東京市場では日経平均が年末年始の海外市場の株価動向や急激に進んだ円高を嫌気して大幅安。寄付きからすぐに19,300円近辺に下落してもみ合い。大納会の引けからの下げ幅は一時700円を超えた。

ただ後場に入ると持ち直し。中国株・上海総合指数が堅調に推移。米中が7日・8日に次官級協議を行うと報じられ、米中通商摩擦への警戒感が後退。

また李克強首相が景気テコ入れのため金融緩和を示唆したことも好感された。日経平均は19,560円まで持ち直して引け。

リスク回避が緩和するなかドル円相場もじり高。108円40銭近辺に上昇した。夕刻から米国市場にかけては108円ちょうど近辺でもみ合い。ユーロ円相場も123円台前半でもみ合い。

中国人民銀行は金融緩和策を正式に発表。預金準備率を15日に0.5%、25日にさらに0.5%、合計1%引き下げることとした。これにより1兆5千億元(約24兆円)の資金供給効果がある見込みとなった。

その後はこの日発表される米雇用統計(12月)の発表待ち。結果は強い内容で米国景気の後退懸念は後退した。

非農業部門雇用者数・前月比は+312千人と予想+184千人を大きく上回る増加となった。また前月も+155千人から+176千人に上方修正。

さらに平均時給は前月比+0.4%と予想+0.3%、前月+0.2%を上回り上昇が加速。前年同月比も+3.2%と予想+3.0%を上回り前月+3.1%から加速。

失業率は3.9%に前月3.7%から上昇したが労働参加率が63.1%と前月62.9%から上昇したことによるものと解釈された。

米国株は大幅上昇となり、前日の下げを全て取り戻した。米長期金利10年債利回りは急反発。2.55%から2.67%に上昇。2年債利回りも2.38%から2.50%に。

リスク選好が回復するなか前日までのリスク回避による円全面高の反動で円は軟調、全面安となった。ドル円相場は108円50銭近辺に上昇してもみ合い。ユーロ円相場も123円70銭近辺に上昇して引け。

ユーロドル相場は、雇用統計発表直後にはユーロ安ドル高に振れ1.14台から1.1350へ下落、しかしその後リスク選好が回復するなかドルは対ユーロで軟調となり1.14台に戻した。

この日のリスク選好の回復にはFRBパウエル議長のハト派的な発言、柔軟な姿勢を示したことも寄与した。議長は、インフレ率が落ち着いていることから当局は経済のリスクを精査するうえで辛抱強くなれる、と利上げを急がない姿勢を示した。

また、景気拡大の維持に資するうえで適切と判断した場合は政策を迅速かつ柔軟に調整し、経済を支える全ての手段を活用する用意がある、と述べた。

市場に留意している、とも発言。またトランプ政権の姿勢にかかわらず辞任しない、とした。これが市場に安心感をもたらし、リスク選好を回復させた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米中次官級協議

7日・8日の両日にわたり、米国と中国は北京において次官級協議を開催する。この間、米中通商摩擦に関しては、前向きな動きがいくつかみられたものの、中国企業ファーウェイ幹部の逮捕や製品不使用の動きなど「場外」での対立も目立った。

今回の協議から通商問題の「手打ち」に向けて前向きなメッセージが発せられるか。市場のリスク選好のさらなる回復に重要な第一歩となるか。

2.米国の経済指標

米国経済の後退懸念が年末年初のリスク回避、株安や円高を主導した面もある。週末の雇用統計でそうした懸念は一服したが、さらに米国経済への信認が維持されるか。

FRBの現在の政策、スタンスが、景気堅調と併せて適切と判断され、市場のストレスが解消されるかどうか。経済指標がそれを示せるか。

火曜日 ISM非製造業景気指数(12月、予想59.5、前月60.7)、貿易収支(11月)金曜日 消費者物価指数(12月、前年同月比、予想+1.9%、前月+2.2%、コア、予想+2.2%、前月+2.2%)

3.FOMC議事録

木曜日にFOMC議事録(12月18日・19日開催分)が公表される。週末にはパウエル議長がハト派寄り、柔軟な姿勢を示したが、12月の会合時点でそうしたスタンスで議論がされていることが確認されるか

市場はこの間、政策催促相場の様相を呈していたが、市場に優しい当局のスタンス、があらためて確認されるか。

◆今週のMRA's Eye


政策催促相場はピークを越えたか 

新年早々、株式市場、為替市場、ともに荒れ相場でスタートした。昨年来、不透明要因や不安材料には事欠かない。米中通商摩擦、中国景気の悪化、米国景気の減速・後退懸念、着地のみえない英国のEU離脱、トランプ大統領と民主党議会の対立に起因する米政府機関の封鎖、など。

新年を展望すれば、ベースラインが景気減速のため、強気のスタンス、リスク選好が維持しにくい状態であったのは確か。そうした市場心理のなかでFRBが年末に追加利上げを実施したこと、今後も利上げを継続するスタンスと受け止められたこともリスク資産には逆風となり、年末まで弱気相場が続いた。

そこにアップルが中国要因で業績を下方修正したことが、市場のストレスを最大限まで引き上げてしまった。その結果の急激な株安・円高だ。

ただ為替市場の値動きはやや割り引いて考える必要がある。米国市場の引け間際、アジア市場の早朝は、24時間開いている為替市場にとっても最も参加者が少ない時間帯だ。

日本時間3日早朝の急激な円高は、そうした取引が薄いなかで、リスク回避を材料にシステム売買による円買いが生じ、それが日本の個人投資家の証拠金取引におけるストップロス=損切りを誘発し、急速かつスパイラル的に円高が生じた結果だ。

アップルの業績下方修正でここまでの値動きとなるのは明らかに行き過ぎだ。材料としては年末と大きく変わったわけではない。悲観が極まり、こうした値動きとなったことでいわゆる、陰の極、となった可能性はある。

あくまでも一時的な円買いやポジション手仕舞いによる消極的な円買いが主導。リーマンショックや欧州債務危機のように、欧米市場の信認が低下した結果、積極的に円が逃避地となったケースの円高とは異なる。

その意味で、今後の円相場を展望するに際し、まずは円売りポジションの手仕舞いがどの程度進んでいるか、がポイントとなる。この点、日本の外為証拠金取引の損切り・円買戻しは自動的に発動されるため整理はついただろう。

ただ3日は取引が薄いなかでの急速な円高だったために、それ以外、海外投機筋の手仕舞い=円買戻しはあまり進んでいない可能性がある。

また本邦輸出企業による円買い、ドル円相場の戻り売りが今後活発化する可能性がある。12月調査の日銀短観における大企業製造業の計画レートは109円台。ここを抜けてドル安円高が進んだだけに、110円に戻る過程では次第にドル売り円買いが活発化すると想定される。

結果、調整は長引く可能性があり、しばらくは107円~109円で110円の上値が重く推移する可能性が高い。中国景気への懸念、米中摩擦への懸念が残るなか、

市場全体のリスク回避的なムードは容易には払拭できない。

年末来のリスク回避、荒れ相場は、いわば政策催促相場。値動きとしてはひとまず峠を越えたとみられるが、さらなる好転には、米中通商交渉の進展、米政府機関の封鎖解除、市場の混乱に配慮した政策対応、など何らかの動きがあるのか、がポイント。

この点、中国で景気配慮の金融緩和が決定されたこと、FRBパウエル議長が市場動向に留意し柔軟かつハト派的な姿勢を示したこと、は少なくとも株価の下値不安、リスク回避、円高リスクを軽減する材料だ。

さらに米国経済がなお堅調に推移している証左が経済指標で示されれば不安はさらに後退するだろう。そこに米中通商摩擦の解消に向けた動きが加われば、リスク選好がさらに回復することになる。

円売りポジションの解消が相応に進めば、あるいは進まないとしても上記の何らかのポジティブな材料がみられれば、次第にドル円相場は110円近辺、ユーロ円相場は125円近辺で落ち着くと想定される。

リスクシナリオのひとつは、市場の過度な懸念が、過剰な株安や信用スプレッドの拡大をもたらし、主として企業の資金調達コストを想定外に上昇させることによって、実体経済に悪影響をもたらす点だ。

そうなると、景気悪化と市場の反応との間に悪循環が生じてしまう。市場と実体経済のスパイラル的な状況悪化に歯止めをかけられるか

その役割を担うのが政策だ。現局面ではまず金融政策面で米中から市場に安心感をもたらす対応がみられた。さらに効果的なのがトランプ政権の通商外交政策の変化だが、それがみられるか。

もうひとつのリスクシナリオは、米国の通商政策とリンクするが、米国経済の本格的な悪化。企業景況感などセンチメントだけではなく、個人消費や生産など実態的な数字で景気悪化が確認されるケース。

この場合は105円~110円での低迷が長期に続く可能性もあろう。ただ足元では雇用情勢は堅調。クリスマス商戦も活況だった。懸念としては残るものの、仮にこのリスクシナリオが顕在化するとしてもなお時間を要し、現時点で織り込むことは難しい。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :108.51(+0.83)
ユーロ :123.64(+0.97)
英ポンド :138.068(+2.10)
豪ドル :77.167(+1.74)
カナダドル :81.129(+1.29)
スイスフラン :109.879(+0.76)
ブラジルレアル :29.2076(+0.55)
中国人民元 :15.766(+0.07)
韓国ウォン(日本円=100) :9.719(+0.16)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1395(+0.000)
英ポンド :1.2723(+0.010)
豪ドル :0.7113(+0.011)
カナダドル :1.3374(▲0.011)
スイスフラン :0.9876(+0.001)
ブラジルレアル :3.7154(▲0.044)
中国人民元 :6.8692(▲0.003)
韓国ウォン :1124.45(▲3.44)

【主要国政策金利】
米国 :2.50
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :2.67(+0.11)
米2年債 :2.49(+0.12)
日本10年債利回り :▲0.04(▲0.04)
日本2年債利回り :▲0.04(+0.04)
独10年債利回り :0.21(+0.06)
独2年債利回り :▲0.60(+0.02)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :23,433.16(+746.94)
NASDAQ  :6,738.86(+275.35)
S&P500 :2,531.94(+84.05)
日経平均株価 :19,561.96(▲452.81)
ドイツ DAX :10,767.69(+351.03)
インド センセックス :35,695.10(+181.39)
中国上海総合 :2,514.87(+50.51)
ブラジル ボベスパ :91,840.79(+276.54)
英国FT250 :17,795.88(+356.97)
ビットコイン :3833.53(+38.61)

【主要商品価格】
WTI :48.31(+1.22)
Brent :57.42(+1.47)
米ガソリン :135.88(+0.93)
米灯油 :178.00(+3.80)

金 :1286.05(▲8.23)
銀 :15.70(▲0.04)
プラチナ :822.70(+24.95)
パラジウム :1302.19(+31.59)
銅 :5860.00(+23:20C)
アルミニウム :1862.00(+42:17B)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :909.50(+9.25)
シカゴ とうもろこし :383.00(+3.25)
シカゴ小麦 :517.00(+3.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。

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