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コロナと米上院選を受けたドル高進行で引けに掛けて下落
  • MRA商品市場レポート

2021年1月5日 第1879号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「コロナと米上院選を受けたドル高進行で引けに掛けて下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は鉱物資源価格が上昇し、エネルギーやその他の商品価格が水準を切り下げる流れとなった。

米上院決戦投票を控えたリスク回避の動きや、欧州のコロナウイルス感染拡大防止のためのロックダウンの動きが拡大していることがドル高を進行させたため、需給ファンダメンタルズがさほど強くない商品は水準を切り下げ、需給がタイトな商品はそれほどの下落にならなかったため。

様々なイベントリスクがあるものの、総じて経済活動は緩やかな回復を継続しており、リスク資産価格に調整があるとしてもそれほど大きなものにはならないのでは、という見方が市場で醸成されつつあることが、価格を下支えしているようにも見える。

ただ、このように市場参加者の多くが先行きを楽観しがちな時こそ、最も下落リスクを警戒すべきタイミングである。

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【本日の見通し】

本日は米国のジョージア州での決選投票を控えた様子見姿勢の強まりと、ロックダウンの再拡大を受けたリスク回避の動きでアジア時間は軟調な推移になると予想される。

米上院選挙は民主党が2議席を確保する可能性がまだ残っており、「トリプルブルー」による増税懸念はくすぶっている。この場合、一般的な整理では景気循環系の商品価格には下押し圧力が掛ることになる。

しかし、「投機の指標」である株式市場では、仮にトリプルブルーになったとしても圧倒的な過半数ではないため、民主党の思うような政策が取れると判断しておらず、仮にそうなったとしても影響は限定、として押し目買いのスタンス。

結果的に市場参加者のリスク選好が回復するため、需給ファンダメンタルズにかかわらず割安銘柄が物色される流れになる可能性は排除しない。

本日予定されている材料では、上記の上院選挙に加え、昨日決着しなかったOPECプラス会合、米ISM製造業景況指数に注目している。

OPECプラスは、ロシアがサウジアラビアに配慮する形で、2月の増産は回避されるのではないか。仮にそうなれば原油価格には上昇要因となる。ただ、決裂した場合増産合戦となるため、価格には大きな下押し圧力が掛ることになるだろう。

この場合、期待インフレ率の下押し圧力となるため、ドル高進行、リスク資産価格下落の切っ掛けとなり得る。

ISM製造業指数は56.6(前月57.5)と減速見込みであるが、依然、閾値の50を上回るため価格への影響は限定されるとみている。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は下落した。英国でロックダウンの動きが広がっていることや、それを受けたドル高の進行で引けに掛けて急速に水準を切り下げる流れとなった。

また、OPECプラス会合は紛糾しており、協調減産継続への懸念が広がったこともいったん売り材料となった。

直近で発表された米石油統計は原油・ガソリンブル、ディスティレートベアな内容だった。原油は生産が横ばい、輸入が減少(▲0.2MBD)、稼働率は上昇(+1.4%)、在庫は▲6.1MBの大幅な減少となった。

原油価格に影響が大きいクッシング在庫は+27KB(▲264KB)と増加、在庫スペースの稼働率は74.0%と変わらずで、極端な価格下落リスクは後退している。

石油製品は主に在庫水準よりも出荷動向に注目している。製品の出荷は▲6.4%の19.07MBD(▲8.7%の18.9MBD)と回復、輸出を含む出荷は▲5.9%の24.33MBD(▲7.7%の24.02MBD)と回復した。徐々にではあるが、製品出荷動向は回復基調にあり、製品価格の押し上げ要因となるだろう。

石炭価格は北東アジアの厳冬と中国の経済活動回復で、80ドルを超える高値圏を維持した。

本日は米上院選挙やコロナの感染再拡大を受けたリスク回避のドル高が進行しやすいことから、引き続き利益確定の売りに押される展開を予想。OPECプラス動向にも注目。

石炭に関しては投機的な売買余地があまりないため、足下の需給ファンダメンタルズのタイトさを背景に引き続き堅調な推移を予想。

◆非鉄金属

LME非鉄金属は上昇後下落した。昨年末に発表された中国製造業PMIは減速感が強まったものの、LME指定倉庫在庫の減少を受けた需給ファンダメンタルズのタイトさは継続しており、上昇してオープン。

しかし、英国のロックダウンの再拡大を受けてリスク回避のドル高が進行、ドル建て資産価格の下落要因となった。

英国のロックダウン再拡大や、米ジョージア州の上院決戦投票の行方を睨み、市場参加者のリスク回避姿勢が続くと考えられ、本日は軟調な推移を予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は小幅上昇、大連原料炭先物は上昇、鉄鋼製品先物価は直近限月が横ばい、中心限月が上昇した。

年明けの行動再開と、2月の中国正月に向けた在庫積み増しの動きで鉄鋼原料価格は水準を切り上げる展開。

本日も新規材料に乏しい中、高値圏を維持すると予想。しかし、鉄鋼製品の価格水準が高く、レーショニングを引き起しているためそろそろ鉄鉱石先物の上値も重くなると予想。

◆貴金属

金価格は水準を切り上げた。原油価格は下落したものの期待インフレ率が上昇し、実質金利が低下したことや欧州のロックダウン、米上院決戦投票を控えたリスク回避の動きでリスク・プレミアムも上昇したことが背景。

銀は太陽光パネル、という分かりやすい「テーマ」があるため積極的に物色されており、金銀レシオを低下させながら大幅な上昇となった。

PGMは株価の影響を受けやすくプラチナは小幅高、パラジウムは大幅な下落となった。

本日も米上院決戦投票や英国のロックダウンを控えたリスク回避の動きが強まるため、金が物色されると見るが同時にドル高も進行するため本日はほぼ横ばい推移、株の影響を受けやすいPGMは水準を切り下げる展開を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇後下落したが、前日比ではプラスで引けた。生産地の生育環境の悪化と中国の輸入需要が堅調であることが価格を押し上げたが、コロナの感染再拡大や米上院選挙を控えたリスク回避の動きでドル高が進行したことが価格を下押しした。

2020年12月31日時点の米主要穀物の輸出検証高は以下の通り。トウモロコシ 912.80千トン(前週比▲342.54千トン)大豆 1,305.79千トン(▲896.12千トン)小麦 324.98千トン(▲82.00千トン)

本日は米上院選挙を控えたリスク回避の動きでドル高地合になりやすいと予想されることから、軟調地合を維持か。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

年末に発表された中国の製造業PMIは、51.9(市場予想52.0、前月52.1)と小幅に減速したもののほぼ市場予想通りの内容となった。中国製造業の産業活動が回復基調を維持していることを確認する内容。

しかし、統計の内訳をみると、ややその活動に鈍化の兆しが見られる。生産活動は鈍化(54.7→54.2)し、新規受注も減速(53.9→53.6)、その一方で完成品在庫は増加した(45.7→46.2)。

需要の小幅な減速と共に、在庫が積み上がっていることが分かる。実際、新規受註完成品在庫レシオは1.16(前月1.18)と低下、新規受注原材料在庫レシオも1.10(1.11)と低下している。中国の非鉄金属を初めとする工業金属需給はやや緩和しているようだ。

これが切っ掛けとなり、年末のLME非鉄金属市場では利益確定の動きが強まったものと推察される。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は低くなくなった。

・次の最大の成長ドライバーとして期待される、インド経済が期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速。

・米国の財政状況悪化、緩和規模拡大によるドル水準の低下リスク(ドル減価により、名目ドル建て資産価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は短期的には調整圧力が強まる展開を予想する。ファイザーのワクチン報道とOPECプラスの減産期間延長報道を受けて水準を切り上げているが、1月から増産が始まること、期待先行の部分は否めないこと、欧州でコロナウイルスの変異型が確認されたことでロックダウンの動きが広がっていることから利益確定の圧力が強まると考えられるため。

また、今回のOPEC・OPECプラス会合の段階的減産解除でももめたように、価格下落・価格上昇ともに生産国の抜け駆け増産を助長するため、そのことも価格を下押しすると予想する。

結局、OPEC諸国の足並みが混乱なく揃うのは、景気が回復して需要が順調な時のみといえる。結局辞任は見送ったが、サウジアラビアは一時、OPECプラスの議長ポストを辞任する意向を示すなど、今後もOPECプラスの結束を維持することがいかに困難であるかをうかがわせる。

価格が上昇するには需給ファンダメンタルズの変化が必要で、ロックダウンが加速しやすく、ワクチン接種もまだ本格化していないことから価格上昇が肯定されるのは、恐らく3~4月頃になるだろう。

中長期的には、報道通りのペースでワクチンが普及し、深刻な副反応が確認されなければ経済活動の回復とともに原油価格がわかりやすく上昇を始めるのは2021年後半になってから、と考えられる。

しかし、足下の市場は景気先行きを楽観しており、株価対比で割安な原油を物色する流れが発生している。

つまり、ファンダメンタルズ以上に原油価格が上昇していることもまた事実であり、四半期末や年度末、期初、といったわかりやすい節目以外は、価格が高値で推移しやすい地合にあることは注意が必要か。

【見通しの固有リスク】

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機的な売り圧力が高まる場合。

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合、

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる2.中東以外の産油国の生産者の破綻3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権誕生で、シェールオイルのフラッキングが制限/禁止される場合、供給減少で価格上昇要因に(今のところ生産量の1割程度となる、国有地でのフラッキング禁止にトーンダウンしている)。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に。ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い。

・イランの反米感情が高まり、中東の不安定さが増す場合(価格上昇要因)。

イランの核科学者であるファクリザデ氏が(恐らく)イスラエルによって殺害されたが、これによりイラン国内でイスラエルの背後にあると解釈されやすい米国に対する反米気運が高まっている。

これはイラン国内での反米感情を高め、米国を核協議に復帰させないための策略と考えられる。

・ワクチン・治療薬が想定以上に早く準備でき、移動制限が急速に解除される場合(価格上昇要因)。

【石炭価格見通し】

石炭価格は堅調な推移になると考える。中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、冬場で炭鉱が稼働し難いこと、港湾在庫の水準の低さに反映されるように、供給が十分ではないことが材料。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化のの中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから徐々に海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

なお、気温低下の影響で主要3国(豪州・インドネシア・ロシア)の輸出は、過去5年平均を回復している。

11月の中国の石炭輸入は前月から大幅に減少。前年水準を▲43.8%下回る1,167万1,000トン(前月▲46.6%の1,372万6,000トン)と減速傾向を持続した。

中国は国内の石炭産業の強化と政治的に対立する豪州からの輸入制限で、国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、それが影響しているとみられる。

バルチック海運指数も過去5年平均程度で低迷しており、輸入の動きは鈍化。しかし一方で中国の港湾在庫は減少しているため、ピークシーズンということもあって堅調な推移となろう。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【投機筋のポジション動向】

・WTIはロング・ショートとも減少しているが、Brentはロングが増加、ショートが減少している。欧州の感染者数がピークアウトしている可能性があることやOPEC増産幅が小幅に収まったことが材料となった可能性が高い。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが655,694枚(前週比 ▲9,904枚)ショートが143,963枚(+4,067枚)ネットロングは511,731枚(▲13,971枚)

Brentはロングが326,488枚(前週比▲8,141枚)ショートが46,190枚(▲7,592枚)ネットロングは280,298枚(▲549枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は中国の景気先行指数を見るに数ヵ月は強含みやすいとみているが、英国でコロナウイルスの変異型発生によるロックダウンの動きの再拡大を背景に上値は重いと考える。

現在の価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化が牽引する価格上昇ではない。

例えば、中国の超高圧送電線網整備額は当初予定比+61%の1,811億人民元とする方針が今年の4月に示されており、電線向けの需要が銅、並びにアルミの需要を押し上げている。アルミは配電には利用されないが、超高圧電線には使用される。

このほか、バイデン政権の政策推進による環境重視の姿勢の強まりが、いわゆる「バイデン・トレード(化石燃料売り・省エネ金属買い、ただし金属生産の際には二酸化炭素が出ることは変わらない)」を加速させ、投機的な買い圧力を強めている。

バイデン・トレードは短期的には顕在化する需要ではないが、省エネ金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性があるため、足下は期待選好で、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

中国が豪州の銅鉱石輸入を禁止していることで、精錬銅の需要が増加し、ベンチマークの銅価格が堅調に推移していることも地合を強くしよう。

しかし、中国の最大貿易相手経済圏である欧州でロックダウンの動きが再び見られること、季節的に南半球の供給が再開される可能性が高いこと、12月のファンド決算を意識した売り圧力の強まりが価格を押し下げるため上値も重いと考える。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合。

・高水準の投機筋買い越しポジションが急速に解消されたときの下落リスク。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(コロナの影響もあって、2020年の鉱山生産は全体で184万1,000トン、コロナの影響で115万1,000トン減少する見込み)。

・ニューカレドニアのGoroプロジェクトはAntfagasutaが買収相手として急浮上しており、過剰な供給不足への懸念が後退していることは価格の下落要因に。ただし楽観はできず。

なお、同プロジェクトのニッケル生産は6万トン/年(シェア2.4%)。

・GlencoreはZhairemプロジェクトの開発を決定しているが、ペルーのIscaycruz鉱山の閉鎖、カナダのMatagami鉱山、Kidd鉱山の鉱山年齢終了に伴う減産を見込んでおり、2021年の亜鉛生産は125万トン(従来見通し140万トン)と下方修正。

・中国の環境規制強化やコロナの影響再発に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・1月の米上院決定投票で民主党が過半数を確保し、「トリプルブルーリスク」が顕在化、脱炭素の動きが加速していわゆる省エネ金属の需要が増加する場合。

【投機筋のポジション動向】・昨年末に掛けて非鉄金属市場では投機の手仕舞い売り圧力が強まった。全ての非鉄金属に売りが入り、投機の買越しは金額・枚数とも減少している。

・LME投機筋買い越し金額 前週比▲16.5%の251億ドル(前週 301億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比▲18.7%の5,419.9千トン(前週 6,664.7千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の景気先行指標をみるに堅調な推移を続けると考える。貿易統計で確認できるように鉄鋼製品輸入が増加し、輸出が減少。中国の顕在需要が増加していることを示唆している。鉄鉱石在庫は積み上がっているが日数ベースでは在庫水準は低く、需給はタイトとみられるため。

豪州に対する制裁で、最大輸入相手国からの調達に障害が出ていることも、中国着の鉄鉱石価格の押し上げ要因になっていると考えられる。

12月の中国の鉄鋼業PMIを見ると、総合指数が49.3から45.8に急減速した。変動性が大きいためなんともいえないが、生産が47.7(前月53.3)と減速、新規受注が42.0(47.2)と大幅に減速したことによる。

しかし、輸出向け新規受註は54.4(45.9)と大幅に回復、完成品在庫が増加(32.2→33.5)して原材料在庫が減少(38.0→32.1)している。このことは、外需の回復を受けて中国政府が国内の経済対策に伴う発注を減少させている可能性がある。

海外の需要が回復したことによる過度な景気刺激が不要になった、と判断したことによるものである可能性がある。しかしながら単月の動きであり、鉄鋼業PMIは製造業PMIに比して変動性が高いため、来月以降の内容を見極める必要があろう。

なお、新規受注完成品在庫レシオは低下し、若干完成品の需給が緩和、一方で新規受注原材料在庫レシオは上昇しており、原材料需給がタイト化していることを示唆している。総じてまだ鉄鋼製品市場の需給はタイトである、とみるべきだろう。

今後も中国政府のインフラ投資を柱とする経済対策が、今年7月の中国共産党結党100周年記念まで続くと予想されること、中国国内の鉄鋼原料在庫水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

ただし価格上昇が需要の減少を引き起こすレーショニングが意識されるほか、南米生産者の増産見通しを考えると上値も重いと考える。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、11月は185万トン(前月193万トン)と減少傾向を持続した。11月の国内生産は季節性もあるが8,766万トン(10月 9,220万トン、9月 9,256万トン)と過去最高水準を記録した8月からは減速している。それでも水準は過去5年レンジを遙かに上回り、高い。

その一方、11月の鉄鋼製品輸出は440万トン(前月404万トン)と増加している。このことは中国の鉄鋼製品の国内需要が減速し、顕在需要が減少を始めている可能性があることを示唆するものだ。

弊社はこの鉄鋼製品の輸出入動向に注目しているが、このまま輸入の減少・輸出の増加が続くようであれば、国内の景況感が悪化している可能性があるため要注意である。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが在庫水準は前週比+2万9,000トンの848万2,000万トン(過去5年平均 833万2,000トン)と、例年よりも在庫水準は高い。

しかし、国内の鉄鋼製品在庫の減少ペースは例年を上回っており、鉄鋼製品輸出も減少、輸入が増加している状況で、中国の鉄鋼製品需給はまだタイトな状態といえる。しばらくは鉄鋼製品の需要が鉄鉱石需要を牽引する状態が続くと見られる。

原料である鉄鉱石の11月の輸入は前年比+8.3%の9,815万トンと高い水準を維持している。しかし10月の前年比+14.9%の1億674万トン、9月の+9.2%の1億855万トンからは減速傾向となっており、中国の国内需要が減速している可能性を示唆する内容。それでも、前年比大幅なプラスであり、中国の国内需要の絶対水準は高い。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲20万トンの1億2,675万トン(過去5年平均1億2,608万6,000トン)、在庫日数は26.7日(過去5年平均 32.7日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

一方、中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は、依然として過去5年の最低水準であることから価格の下支え要因となる。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・カシミール地方を巡る中国との領有権争いが激化した場合、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

【投機筋のポジション動向】

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値を維持すると考える。金融緩和の継続と、株価の上昇に伴う長期金利上昇圧力がせめぎ合う形で実質金利を現状水準に維持すると考えられることから。

なお、リスクオンはドル安で価格上昇、リスクオフで価格下落となる(詳しくは2020年10月12日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は長期金利の上昇で1,650ドルと、長期金利の低下による実質金利の低下が水準を押し上げている。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は255ドルと前日比+37ドル上昇した。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、71.3倍。過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当だが、足元、70倍を目指して低下傾向にある。

金銀レシオのチャートを見ると、70倍を切るとテクニカルに65倍が視野に入る。金価格が変わらなかったとしても、70倍から65倍に低下しただけで、+7.7%の銀価格上昇となるため、消費者は要注意だ。

金は高値を維持する見通しだがバイデン大統領誕生により、太陽光発電向けに用いられる「バイデン銘柄」であることもあって、需要構造の変化が価格を下支え(金銀レシオは低下)するものと予想。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。足下は、各国の自動車セクターの回復期待が強まっており、工業需要回復期待が価格を押し上げている状況。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは価格は景気の先行き楽観が強まっているが、足下のコロナの感染拡大がこれを相殺するため、現状水準でのもみ合いを予想。

ETF残高とパラジウム価格の連動性が高まっており(管理在庫増加→価格上昇)、一時の、ETF管理在庫減少→価格上昇、のメカニズムから変化してきている。

在庫取り崩し→価格上昇は実際に需給がタイトで、現物確保のためにETFを取り崩さなければならなかったからだが、現在はこれと逆のことが発生している訳で、足元、パラジウムの需給は緩和していると見られる。今後はETFの動向に注目。

11月の米自動車販売は年率1,555万台(市場予想 1,610万台、前月 1,621万台)と減速した。長期金利の上昇が影響したと見られる。

中国の11月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比+12.7%の276万9,666台(前月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と回復を継続している。

自動車販売は回復しているが、不要不急の消費であるため中国を除いては本格的な回復にはまだ時間がかかる見込み。

【見通しの固有リスク】

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが341,812枚(前週比 ▲8,058枚)、ショートが72,940枚(+1,266枚)、ネットロングは268,872枚(▲9,324枚)、銀が88,868枚(▲1,605枚)、ショートが34,089枚(+905枚)、ネットロングは54,779枚(▲2,510枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが35,228枚(前週比 ▲563枚)ショートが9,399枚(▲1,687枚)、ネットロングは25,829枚(+1,124枚)

パラジウムが4,973枚(▲117枚)、ショートが2,259枚(▲229枚)ネットロングは2,714枚(+112枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆は中国の需要が想像以上に堅調であり、しばらく高値圏で推移すると考える。しかし、投機の買いポジションは記録的な水準であるため、期初の益出し売りで上値も限定されると考える。

なお、中国の豚肉価格は下落する一方、豚肉の輸入量も減少している。このことは中国の畜豚数の増加(大豆ミール需要の増加)=大豆需要の増加、を示唆している。当面、中国向けの輸出が中国側の事情で増加すると見られることが価格を下支えすると予想。

小麦はさほど投機の買いポジションが積み上がっている訳ではないが、各地で生産見通しが引き上げられており、また、ロシアの輸出関税引き上げ報道を受けた駆け込み輸出増加で、やや軟調に推移。

バッタ被害はLocust Watchでは、エチオピア、イエメン、ケニア、サウジアラビアの一部で深刻な状態が続いている。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/DL507map_pg1e.jpg

昨年末も大型のサイクロンがアラビア半島~北アフリカを通過、豪雨が観測されている。このままだと来年も蝗害が起きる可能性は否定できない。

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象の発生による穀物供給減少リスクの顕在化。害虫の発生、生産地の土壌破壊など(すでに一部顕在化)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・12月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 175.8Bu/エーカー(NA、175.8)大豆 50.7Bu/エーカー(NA、50.7)小麦 49.7Bu/エーカー(NA、49.7)

・12月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 145億700万Bu(NA、145億700万Bu)大豆 41億7,000万Bu(NA、41億7,000万Bu)小麦 18億2,600万Bu(NA、18億2,600万Bu)

・12月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 26億5,000万Bu(26億5,0500万Bu)大豆 22億Bu(22億Bu)小麦 9億8,500万Bu(9億7,500万Bu)

・12月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 17億200万Bu(16億9,100万Bu、171億200万Bu)大豆 1億7,500万Bu(1億6,912万Bu、1億9,000万Bu)小麦 8億6,200万Bu(8億7,652万Bu、8億7,700万Bu)

・9月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 19億億9,500万Bu(22億6,554万Bu、52億2,400万Bu)大豆 5億2,300万Bu(5億7,838万Bu、13億8,600万Bu)小麦 21億5,900万Bu(22億4,035万Bu、10億4,400万Bu)

・12月CONABブラジル作付け面積(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1,844万ha(1,943万ha、1,844万ha)大豆 3,818万ha(3,845万ha、3,825万ha)

・12月CONABブラジル生産量(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 1億259万トン(1億938万トン、1億489万トン) 単収 5,564Kg/ha(5,630kg/ha、5,688kg/ha)大豆 1億3,445万トン(1億3,325万トン、1億3,495万トン) 単収 3,522Kg/ha(3,468kg/ha、3,528kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが631,599枚(前週比 +65,521枚)、ショートが121,051枚(▲8,572枚)ネットロングは510,548枚(+74,093枚)

大豆はロングが300,675枚(▲8,879枚)、ショートが40,227枚(+1,911枚)ネットロングは260,448枚(▲10,790枚)

小麦はロングが123,208枚(+4,926枚)、ショートが95,755枚(▲2,121枚)ネットロングは27,453枚(+7,047枚)

◆本日のMRA's Eye


「2021年 異常気象と地政学的リスク」

2020年は米国とイランの対立、その後の新型コロナウイルスの発生で世界経済が大混乱となった。そもそもオリンピックが東京で予定されていたことなど嘘のようである。しかし、過去の異常気象の発生状況を振り返ると、2021年も穏やかな年にならないかもしれない。

まず現時点(2020年12月時点)でラニーニャ現象が発生している。気象庁ではラニーニャ現象とは、太平洋の赤道付近の海面温度の5か月移動平均が、過去30年の数値よりも0.5度以上低い状態が続く現象と定義している。逆に0.5度以上高くなる現象をエルニーニョ現象と定義している(なお、この定義は国によって微妙に異なる)。エルニーニョ現象やラニーニャ現象が発生すると、世界各地で異常気象が発生しやすくなる。

例えば直近の世界の異常気象(2020年9月~11月)をみると、足下の北アジアの気温低下とは裏腹に、世界的に高温となっている。エルニーニョ・ラニーニャ現象発生時の異常気象の種類や規模は傾向がある、とされているが必ずしもその傾向通りの気象になるわけではない。

※詳しくはこちらから。
https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/seasonal/

ここで、過去にラニーニャ現象が発生した時期をピックアップしてみると、なぜか政治的なイベントが発生していることが多い。エルニーニョ現象発生時にも政治イベントは発生しているが、影響の大きいイベントはラニーニャ現象発生時の方が多い。

グラフは米国海洋気象局(NOAA)が算出している、海洋ニーニョ指数(ONI=Oceanic Nino Index)の推移とシカゴ小麦価格の推移である。海洋ニーニョ指数が▲0.5を下回るとラニーニャ現象が、+0.5を上回るとエルニーニョ現象が発生していることを表している。

1997年から1998年に掛けてはアジア危機・ロシア財政危機が発生した時期であり、リーマンショックやアラブの春、北朝鮮と米国の対立が激化したのもラニーニャ現象発生時である。そして、ラニーニャ現象が発生している年は、小麦の価格が上昇しているケースが多い。小麦は欧州やアフリカなど、世界各地で主食とされている。

風が吹けば桶屋が儲かるではないが、その主食の価格が上昇することによって貧困層の不満が高まり、域内の不安定さや政情の不安定さにつながり、こうした政治的なイベント発生につながった可能性はあり得る。

もちろん、これらの政治的な出来事や自然災害とラニーニャ、小麦価格の関係性を明確に証明することはできないが、大きなイベントリスクが顕在化しているケースが多いことは事実である。

そして2020年は周知の通り新型コロナウイスルの感染拡大というパンデミックが発生した。さらに、中東・北アフリカ・西アジアでバッタが大量発生し、貧困地区に深刻な食糧問題をもたらしている。

2020年のバッタの大量発生は明らかに天候状況との因果関係がある。これは2018年にアラビア半島にサイクロンが2つ上陸、2020年には観測史上最強となるサイクロン「キャー」も上陸し、土壌水分が十分だったことで多くのバッタが越冬することができ、かつ、食料となる植物が育ったためだ。またアジアでは、トウモロコシやイネ科の植物の大害虫であるツマジロクサヨトウという蛾も発生した。

今年もソマリアの観測史上最強となるサイクロン「ガチ」が11月に上陸、記録的な降雨量となった。恐らくこの影響で今年も越冬できるバッタの数は増加し、2021年に再び大きな食糧被害をもたらす可能性が出てくる。

問題はこのバッタ被害が中東・北アフリカ地区で発生する可能性がある点だ。そもそも中東・北アフリカ地区は、今回のコロナウイルスの感染拡大による世界的なロックダウンによる輸送需要の減少で、原油の販売量の減少、価格の低下に苦しんでいる。

基本的に中東産油国の王族の力の源泉は、彼らが権利を有する「原油」であり、これが売れない、価格が上がらないという状態は非常に問題だ。というのも、どこの国でも同じだが、為政者はその国の富を再配分するのが重要な仕事であるため、「再配分できる富の減少」は支配力の低下に繋がるためである。

今のところコロナワクチンの完成と接種の拡大で、経済活動は2021年後半にはプレ・コロナの時の状況に近づくと「期待」されてはいるものの、そう簡単にはいかないだろう。

結果、時間経過と共に中東・北アフリカ産油国の体力は削られていく可能性が高い。また、この1~2年に急にそのような世界になるとは思わないが、欧州発祥で世界中にその動きが広がっている脱炭素の動きも、中長期的に中東産油国の財政状況を悪化させることになるだろう。

積極的に石油主体のビジネスモデルを転換しなければならない時期にさしかかっているといえるのだが、王族の源泉である油田を手放し、新しいビジネスを積極的に推進する仕組みに転換することは容易ではない。

しかし、そこを見越し、かつ、宗教的に対立するイランからの圧力の防波堤として、米国の庇護を得る、または石油以外の新しいビジネスチャンスを手に入れる目的で、イスラエルと国交を樹立する中東・北アフリカ諸国は増加した。

なお、これはイスラエル政権の軍事侵攻も含む長年の外交政策の結果であり、それに加えて極めて親イスラエルのトランプ大統領が誕生したことで、国交樹立の動きが加速したと整理するのが妥当である。

今のところサウジアラビアは、イスラエルとの国交樹立にはパレスチナへの配慮から慎重な姿勢を示している。しかし、同国の実力者であるムハンマド皇太子はイスラエルとの国交樹立に前向きとされる。

米国のバイデン次期大統領はジャーナリストのカショギ氏暗殺の一件から、サウジアラビアに対しては厳しい対応をすると予想されているため、場合によると1月20日にバイデン大統領が誕生する前に、ムハンマド皇太子の号令の下、サウジアラビアとイスラエルが国交を樹立することもあるかもしれない。

この場合、イランが反発して反イスラエル・反サウジアラビア・反米姿勢を強める可能性は高い。最悪の場合軍事行動を起こすことも否定できない。

既にイランでは同国の最も重要な核科学者であるファクリザデ氏が暗殺された。イラン政府はイスラエルの犯行と主張しており、イラン国内では反イスラエル・反米機運が高まっている。

ただしこの場合のイランの軍事行動は、直接的な攻撃は米国の反撃をもたらすため、2019年のサウジアラビアのアブカイク製油所の攻撃のような、下部組織を利用した局地的な攻撃になると想定される。

バイデン次期大統領が公約している通り、オバマ政権時代に成立させた「イラン核合意」に復帰した場合、逆にサウジアラビアやイスラエルがこれに反発する可能性は十分にあり得る。

しかしバイデン次期大統領とすれば、トランプ政権時代に関係が悪化した欧州との関係修復も背景にあるため、欧州が主導した核合意に復帰することは欧州との関係改善のための必要条件ともいえる。

ところが今回の米大統領選挙で分かったことは、米国内でのトランプ大統領の積極的な支持者の数は、バイデン次期大統領の積極的な支持者を上回ること。すなわち、直ちにトランプ政権の政策を覆した場合、米国内での批判が高まる可能性があるということだ。

結果的にバイデン次期大統領は国内の反発を回避するために、中東問題に対して思い切った行動が取り難い。

しかし、来年6月にはイランの大統領選挙が予定されており、米国がイランに対する対応を多少なりとも緩和しなければ対米強硬派の大統領が誕生する可能性もある。そのため、バイデン次期大統領は早いタイミングで何らかの決断をせざるを得ず、調整をしている時間はそれほどない。このように考えると、来年の上半期中に何らかの動きがある可能性はある。

多くの場合、資金が潤沢な国では国民の不満が高まっている時に、財政政策でその不満を解消することができる。しかし、こうした政治的に不安定、かつ、財政的にゆとりがない状況で食糧危機などの問題が発生すると、対応が困難になる。場合によると国内で暴動が起きることもあり得るだろう。既に国民は、コロナウイルスの感染拡大で疲弊している状況なのだ。

中東に限らず、各国ともさらなるショックに耐えられるような体力がある状態ではない。このことは、新たなリスクの顕在化が、財政的にゆとりがない新興国での暴動につながる可能性が高まっていることを意味する。

その観点では、2021年も春~夏頃まで続くとみられるラニーニャ現象の発生リスクは、無視できないリスクといえるのではないか。

◆主要ニュース


・11月日本鉱工業生産速報  前月比±0.0%(前月改定+4.0%)前年比▲3.4%(▲3.0%)
 出荷▲0.9%(+4.9%)、▲3.8%(▲3.0%)
 在庫▲1.1%(▲1.8%)、▲8.7%(▲8.1%)

・12月日本製造業PMI改定 50.0(速報比+0.3、前月改定 49.0)

・12月中国製造業PMI 51.9(前月52.1)、生産 54.2(54.7)
 新規受注 53.6(53.9)、輸出新規受注 51.3(51.5)
 受注残 47.1(46.7)、輸入 50.4(50.9)
 完成品在庫 46.2(45.7)、原材料在庫 48.6(48.6)

・12月中国非製造業PMI 55.7(前月56.4)、新規受注 51.9(52.8)
 新規輸出 47.5(49.0)、受注残 44.7(45.2)、在庫 47.0(48.8)
 雇用 48.7(48.9)

・12月中国財新製造業PMI 53.0(前月 54.9)

・12月中国鉄鋼業PMI 45.8(前月49.3)、生産 47.7(53.3)
 新規受注 42.0(47.2)、輸出新規受注 54.4(45.9)
 完成品在庫 33.5(32.2)、原材料在庫 32.1(38.0)

・11月インド財政収支 ▲1兆2,235億3,000万ルピーの赤字(前月▲3,916億1,000万ルピーの赤字)

・12月インド製造業PMI 56.4(前月 56.3)

・12月ユーロ圏製造業PMI改定 55.2(速報比▲0.3、前月改定 53.8)

・12月独製造業PMI改定 58.3(速報比▲0.3、前月改定 57.8)

・12月ダラス連銀製造業活動 9.7(前月12.0)
 生産 25.5(7.2)
 新規受注 17.8(7.2)
 受注残 8.7(8.4)
 完成品在庫 ▲8.1(▲14.7)
 雇用者数 19.6(11.7)

・10月米S&Pコアロジック住宅価格指数 前月比+1.61%(前月+1.44%)、前年比+7.95%(+6.64%)

・12月シカゴ購買部協会指数 59.5(前月 58.2)

・11月米中古住宅販売仮契約 前月比▲2.6%(前月▲0.9%)、前年比+16.0%(+19.7%)

・米週間新規失業保険申請件数 787千件(前週806千件)
 失業保険継続受給者数 5,219千人(5,322千人)

・12月米製造業PMI改定 57.1(速報比+0.6、前月改定 56.7)

・11月米建設支出 前月比 +0.9%(前月改定+1.6%)

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・OPECプラス、過半数が2月の生産引き上げに反対。ロシアは50万バレルの増産を支持。5日も討議継続。

・イラン、ホルムズ海峡で韓国籍の石油タンカーを拿捕。ウラン20%濃縮に着手。

・サウジアラビアとカタール、陸海空の国境開放で合意。

【メタル】
・特になし。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ +7.84%/ +7.84%
2.ビットコイン ( その他 )/ +6.89%/ +6.89%
3.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +5.41%/ +5.41%
4.SGX鉄鉱石 ( 鉄鋼原料 )/ +5.01%/ +5.01%
5.SGX天然ゴム ( その他農産品 )/ +4.99%/ +4.99%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.NYM RBOB ( エネルギー )/ ▲3.00%/ ▲3.00%
65.CME肥育牛 ( 畜産品 )/ ▲2.66%/ ▲2.66%
64.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲2.56%/ ▲2.56%
63.NYM WTI ( エネルギー )/ ▲2.35%/ ▲2.35%
62.ICE Brent ( エネルギー )/ ▲2.03%/ ▲2.03%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :30,223.89(▲382.59)
S&P500 :3,700.65(▲55.42)
日経平均株価 :27,258.38(▲185.79)
ドル円 :103.15(▲0.05)
ユーロ円 :126.37(+0.31)
米10年債 :0.91(±0.0)
中国10年債利回り :3.17(+0.03)
日本10年債利回り :0.02(±0.0)
独10年債利回り :▲0.60(▲0.04)
ビットコイン :30,992.9(+1742.01)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :23.81(+0.57)
エネルギー :33.10(+1.06)
ベースメタル :18.92(+1.92)
貴金属 :22.81(+0.18)
穀物 :18.99(▲0.11)
その他農畜産品 :23.62(+0.16)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :22.55(+1.32)
Brent :20.59(+0.78)
米天然ガス :74.26(+4.89)
米ガソリン :26.62(+2.08)
ICEガスオイル :26.06(▲0.28)
LME銅 :14.36(+2.15)
LMEアルミニウム :16.30(+1.48)
金 :16.00(▲0.08)
プラチナ :24.17(▲4.77)
トウモロコシ :15.14(+0.24)
大豆 :16.00(▲0.08)

【エネルギー】
WTI :47.38(▲1.14)
Brent :50.75(▲1.05)
Oman :50.50(▲0.56)
米ガソリン :136.61(▲4.23)
米灯油 :145.70(▲1.93)
ICEガスオイル :415.25(▲5.50)
米天然ガス :2.60(+0.06)
英天然ガス :59.45(+3.05)

【貴金属】
金 :1943.18(+44.51)
銀 :27.27(+0.86)
プラチナ :1072.20(+0.18)
パラジウム :2386.04(▲62.77)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :7,931(+174:12.5C)
亜鉛 :2,798(+53:22.5C)
鉛 :2,042(+60:18.5C)
アルミニウム :2,016(+36:2.5C)
ニッケル :17,403(+796:59C)
錫 :20,735(+445:299B)
コバルト :33,000(+968)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :7856.00(+102.50)
亜鉛 :2798.00(+49.00)
鉛 :2065.00(+76.50)
アルミニウム :2030.00(+49.50)
ニッケル :17375.00(+805.00)
錫 :20970.00(+620.00)
バルチック海運指数 :1,366.00(+4.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :158.9(+0.92)
SGX鉄鉱石 :163.65(+7.81)
NYMEX鉄鉱石 :163.93(+8.09)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :109.35(+7.95)
大連原料炭先物 :246.69(+16.81)
上海鉄筋直近限月 :4,220(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :4,346(+40)
米鉄スクラップ :492(+20.00)

【農産物】
大豆 :1317.00(+1.75)
シカゴ大豆ミール :427.50(▲6.90)
シカゴ大豆油 :42.93(▲0.40)
マレーシア パーム油 :3950.00(+59.00)
シカゴ とうもろこし :484.75(+0.75)
シカゴ小麦 :643.25(+2.75)
シンガポールゴム :233.50(+11.10)
上海ゴム :13940.00(+345.00)
砂糖 :15.76(+0.27)
アラビカ :126.15(▲2.10)
ロブスタ :1360.00(▲14.00)
綿花 :78.97(+0.85)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :71.38(+1.10)
シカゴ生牛 :112.10(▲0.85)
シカゴ飼育牛 :135.25(▲3.70)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。