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感染拡大続くなかリスク選好は継続するか
  • MRA外国為替レポート

2020年11月30日号

◆先週の市場総括


先週は引き続きワクチン開発に関するポジティブな報道による経済正常化期待、バイデン政権でイエレン元FRB議長が財務長官に就任による景気対策強化・金融緩和継続期待などで市場のリスク選好が強まった。

週初に発表となったPMI景況感指数は米国が改善、欧州は悪化と明暗が分かれるなか米国株は上昇。NYダウは火曜日に30,000ドルの大台に乗せた。

週央に発表されたFOMC議事録では比較的早い段階で資産購入規模の拡大が必要となる可能性がある、とされたことで追加緩和期待もやや強まった。

足元では感染拡大に歯止めがかからず行動規制が強化されたことから、米国株は景気敏感株が調整、ハイテク株は堅調。その後週末にかけては感謝祭の休日で取引閑散となった。NYダウは29,910ドルで引け。ナスダックは12,205ドル。日経平均は米国株の堅調、海外投資家の買いに支えられて堅調。26,000円台でじり高となり週末は26,644円で引けた。

米10年債利回りは週を通じて小動きで週末は0.88%。

為替市場では引き続きリスク選好の強まり、FRBの追加緩和期待が強まったこと、などからドルが軟調。ドル円相場は103円台半ばで始まり一時104円台後半に上昇したが、週末に一時104円を割るなど上値重く、週末の引けは104円ちょうど近辺。

ユーロドル相場は1.18台半ばで始まり週末は1.19台半ばに上昇した。ユーロ円相場は123円ちょうどで始まり週末の引けは124円台半ば。リスク選好の強まりはクロス円相場、ユーロ円相場の支えとなった。

月曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は103円70銭~80銭で小動き。ユーロ円相場は123円ちょうど近辺で始まり123円20銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.1850台から小幅上昇して1.1870~80でもみ合い。

米国株は主要3指数がそろって上昇。ファイザー社、モデルナ社、に続き、アストラゼネカ社がワクチン開発の暫定試験結果で高い有効性を確認したとして12月にも接種開始と伝えられた。

またバイデン政権の閣僚人事が次第に明らかになるなか、財務長官にイエレン元FRB議長が就任と伝えられた。ハト派の同氏が財務長官に就任することで積極的な財政政策の期待、FRBの超金融緩和が長期化するのではないかとの期待が強まり株価の押し上げ材料に。

また発表されたPMI景況感指数(11月)が予想より強く製造業が前月53.4から56.7へ、サービス業が56.9から57.7へ改善、総合指数は57.9と2015年3月以来の高水準に回復したことも好感された。

米国株は景気敏感株中心に上昇。NYダウは前週末比+328ドル高の29,591ドル。ナスダックは同+25ドル高の11,880ドル。為替市場ではドルは大きく上昇し、円は全面安となった。

ユーロドル相場は1.19ちょうど近辺から1.18ちょうど近辺に大幅にユーロ安ドル高が進んだ。欧州のPMI景況指数が米国とは対照的に前月から悪化したことが背景。

ユーロ円相場も123円40銭~50銭から30銭割れに小幅安。ドル円相場は104円60千に大きく上昇した。その後、引けにかけてはドル高一服。ユーロドル相場は1.1840~50。ユーロ円相場は123円70~80銭で引け。

火曜日の東京市場は3連休明け。日経平均は米国株高、背景にあるワクチン開発の進展やイエレン氏の財務長官就任予定などを好感して大幅に上昇。前週末比+638円の大幅高となり26,165円で引け。

一方、為替市場は小動き。ドル円相場は104円50銭~60銭でもみ合い、その後夕刻から欧州市場にかけて104円20銭へじり安。ユーロ円相場は123円70銭~80銭で始まり70銭近辺に小幅円高。ユーロドル相場は1.1840~50近辺で小動き。

欧米市場ではこの日も株価が堅調。米国株は大幅続伸。NYダウは史上初の30,000ドルにのせ、ナスダックは12,000ドル台。引き続きワクチン開発進展による経済正常化期待やイエレン財務長官実現への期待、トランプ大統領が政権移行手続きに協力する姿勢を示したことも好感された。

発表された米国小売業の決算も良好。景気敏感株に加えハイテク株も堅調。NYダウは+455ドル高の30,046ドル、ナスダックは+156ドル高の12,036ドル。

円は全面安。ドル円相場は104円20銭から70銭に上昇した後、反落して引けは104円40銭。ユーロドル相場は1.1890から1.1840に下落した後1.1890に持ち直して引け。ユーロ円相場は株価上昇、リスク選好の強まりを背景に堅調となり124円20銭~30銭で引けた。

発表されたドイツのIFO景況感指数(11月)は前月の92.7から90.7に悪化。米国の消費者信頼感指数(11月)は前月の100.9から96.1に悪化して予想98.0を下回った。リッチモンド連銀製造業指数(11月)は前月の29から15に悪化。

水曜日の東京市場の日経平均は米国株高を受けて26,600円近辺で大幅高寄り、その後一時26,700円台に上昇。ただ急速な上昇に利益確定売りも強まり後場には軟調となり上げ幅を縮めた。引けは前日比+131円高の26,297円。

ドル円相場は104円40銭台で始まり50銭を中心に上下。夕刻から欧州市場にかけては104円30銭近辺にやや軟調。ユーロ円相場は124円20銭で始まり底固く、その後は上下して夕刻は124円50銭。ユーロドル相場は1.1890で始まり上下して夕刻は1.1920。

欧米市場では株価上昇が一服。米国の週次失業保険新規申請件数は778千件と前週の748千件から増加。継続受給者数は前週の6,370千件から6,071千件に減少したが、足元の感染拡大の影響が顕在化。

個人所得・支出(10月)は前月比▲0.7%・+0.5%と所得はマイナスに、支出は伸びが鈍化。こちらにも影響が出始めたとの見方で景気敏感株を抑制した。

一方、公表されたFOMC議事録で、比較的早い時期に資産購入拡大が必要となる可能性がある、とされたことで、追加緩和期待が強まり、ハイテク株には追い風となった。このところのセクターローテーション、景気敏感株高・ハイテク株が逆行。

NYダウは前日比▲174ドル安の29,872ドル、ナスダックは+57ドル高の12,094ドル。

為替市場では欧州時間から米国時間にかけて円高。ドル円相場は104円20銭台に下落、ユーロ円相場は124円20銭近辺に下落してもみ合い。

ユーロドル相場は1.1920から1.1880にユーロ安ドル高。ただその後は円安に反転してドル円相場は104円50銭。ユーロ円相場は124円50銭。ユーロドル相場は1.1910~20に反発して引けた。

木曜日の東京市場では引き続き株価が堅調。ワクチン開発への期待、ハイテク株上昇からじり高。前日比+240円高の26,537円。

為替市場は小動き。米国が感謝祭で休場となるなかアジア時間の取引も閑散。ドル円相場は104円50銭から下落して104円20銭~30銭でもみ合い。

ユーロ円相場は124円40銭近辺のもみ合いの後50銭台にややしっかり。ユーロドル相場は1.1910で始まり1.1920~30でもみ合い。夕刻には1.1940。その後、欧米時間に入っても総じて小動き。

ドル円相場は閑散で104円30銭で小動き。ユーロ円相場は123円90銭~124円20銭で上下。ユーロドル相場は1.1890~1.1910で方向感なく上下した。

金曜日の東京市場ではなおも株価が堅調。日経平均は前日引値近辺の26,500円台で始まり上下動。後場は26,600円台でもみ合い週末の取引を終えた。引けは前日比+107円高の26,644円。

ドル円相場は104円30銭で始まり円高に振れ、東証引けにかけて103円90銭に下落。ユーロ円相場も124円20銭から123円90銭に下落してもみ合い。ユーロドル相場は1.1910で始まり底固く1.1920~30でもみ合い。

米国市場は短縮取引。米国株は小じっかり。トランプ大統領が選挙人投票でバイデン大統領が当選すればホワイトハウスから退去する、と述べたことで、円滑な政権移行への期待がさらに高まった。ワクチン普及への期待も根強く支え。

ナスダックは4日続伸。前日比+111ドル高の12,205ドル。NYダウはほぼ横ばいの同+38ドル高の29,910ドル。

為替市場では、FOMC議事録で追加緩和期待が高まった状態が続き、また株価が支えられ、リスク選好のもとでのドル安が進行した。ユーロは堅調。ユーロドル相場は1.1960へ上昇して引け。ユーロ円相場は124円50銭に上昇。ドル円相場は方向感なく104円ちょうど~10銭でもみ合い引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

足元で感染拡大の悪影響が懸念されるが、経済指標にさらに顕在化するか。市場のリスク選好に水を差し株価調整につながるか。景況感にかかわる指標は前月から悪化が予想されており、週末の雇用統計が注目される。

月曜日 シカゴ購買部協会景気指数(11月、予想59.0、前月61.1)ダラス連銀製造業活動指数(同、前月19.8)

火曜日 ISM製造業景気指数(同、予想57.8、前月59.3)

水曜日 ADP雇用報告(同、雇用者数・前月比、予想+430千人、前月+365千人)

木曜日 週次の失業保険新規申請件数、ISM非製造業景気指数(11月、予想56.0、前月56.6)

金曜日 雇用統計(11月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+500千人、前月+638千人、失業率、予想6.8%、前月6.9%、平均時給・前年同月比、予想+4.2%、前月+4.5%)

2.ベージュブック、パウエル議長発言

今週水曜日(日本時間・木曜日未明4:00)にベージュブック(地区連銀経済報告)が公表される。FOMCでの議論の土台となる景気状況がどのように報告されるか。足元の経済指標を総括し、また定性的、あるいは足の速い判断、感染拡大に対する警戒感がどのように示されているか。

市場で高まっている追加緩和への期待感を後押しするハト派的な内容となるか。また今週はパウエル議長の発言機会もある。

この間は追加緩和に距離をとるスタンスとみられてきたが、緩和に傾斜したスタンスが垣間見えれば、ハイテク株を中心とした株価に後押しとなる一方でドル安を促すリスクもある。

3.中国の経済指標

欧米の感染拡大、景気悪化でも市場全体がリスク回避に傾かないひとつの要因、拠り所は中国で感染拡大が抑制され経済が順調に回復している点が大きい。

経済指標に順調な回復ペースが示されるか。あるいは欧米の悪影響や回復のペースダウンがみられるか。グローバルな株価動向、とくに高値を更新する日本株の動向に影響しやすいため留意を要する。

月曜日 製造業PMI景況感指数(11月、予想51.5、前月51.4)、非製造業PMI

火曜日 民間調査の財新製造業PMI(同、予想53.5、前月53.6)

木曜日 財新サービス業PMI(同、予想56.4、前月56.8)

◆今週のMRA's Eye


感染拡大続くなかリスク選好は継続するか

株式市場のシナリオは11月に入ると、ハイテク株から景気敏感株へ、というセクターローテーションの動きが鮮明となりつつあった。ワクチン開発の進展、米国の選挙終了による不透明感緩和、適度なバランスによる政権移行、などが景気へのポジティブな見方につながった。感染拡大が深刻化していたにもかかわらず、そうした材料・期待感が勝った。

しかし先週末にかけてはハイテク株堅調、景気敏感株はやや頭打ちとなり、セクターローテーションの動きは一服した。

感染拡大に歯止めがかからず状況が悪化するなか、経済指標にも弱い数字が散見されはじめたことが一因。そこに都合よくFOMC議事録が公表され、追加緩和姿勢が垣間見えたことが、ハイテク株高・景気敏感株頭打ちへの逆戻りを後押しした。

議事録では、比較的早い時期に資産購入の拡大が必要となる可能性がある、と記されていた。

これは、それまでパウエル議長が、当面は追加緩和よりも財政拡大など政府の経済対策が必要、として金融政策は様子見とのスタンスを匂わせていたのに比べてハト派な内容だった。

これで市場全体のシナリオは、感染拡大による景気悪化のなか、政府の対策に加えて積極的な金融緩和が支えとなる、との、ひとつ前の、いわば不景気の株高・金融相場・ハイテク株高に逆戻する機会を得たようだ。

FRBの追加緩和を睨み、財政出動の下支えが見込まれるなか、感染拡大による行動規制による景気下押しでもリスク選好、となると、為替市場ではドル安が進みやすい。

米長期金利の底打ち、反転上昇が一服したことはドルの上値を抑制する要因となる。市場全体のリスク選好が維持される要因として、中国の感染抑制、相対的に順調な景気回復も大きな要素だ。

グローバル経済全体の下方リスクが少ないなかで、FRBの超金融緩和強化、となるとドル安が進みやすい。

一方、リスク選好が維持されている限り、円高圧力もまた鈍い。

クロス円相場、ユーロ円相場が堅調に推移するなかでは、ドル円相場の下値が固い状況もまた続く構図が続くことになる。

一方、リスク選好が後退、株価が調整し、様々なリスクポジションが調整局面を迎える可能性もある。

株価上昇が実体経済の回復から乖離して行き過ぎ感があることは多く指摘されるところ。資産市場への資金流入は過剰にみえる。仮想通貨、ビットコインの価格が急騰して史上最高値に迫っていることも証左だ。

中国など中央銀行主導でのデジタル通貨流通に向けた動きに沿ったものとの見方もあるが、通貨全般の超低金利化、量的緩和による過剰流動性、などが裏側にある。

ペーパー資産(広く金融資産)への資金流入が過剰となり、実体経済に裏打ちされた実物資産への資金流入が相対的に停滞している。

資金の行き場がない、と言われるが、過大評価の修正が一時的にせよ生じる可能性がある。

実体経済が回復するまで、なお多くの時間がかかるとみられ、また足元ではむしろ感染拡大で景気が悪化し資産価格との乖離が拡大する兆しもある。

年末年初という時間的な要因も手伝って、ポジション調整が生じるリスクは、通常に時間帯よりも高い。懐事情からみても利益確定は行いやすく、ひとまずキャッシュ比率を高める動きが生じてもおかしくない。

この場合はドルが消去法的に買われやすい。株価調整=リスク回避との見方で一時的に円高に振れる可能性もあるが、現在のポジションからみれば円売りは溜まっておらず、円買い戻しの余地は小さいとみられる。

円買いはむしろ新たなポジション作成につながる可能性があり、手仕舞いの動きとは矛盾する。

結果、ドルのほうが堅調となり、最終的にドル円相場は上昇する可能性がある。円高、ドル高、と不安定な値動きとなることが予想される。

もうひとつ、リスク選好が続くとして、そのもとでのドル高のシナリオはないか。先週初にはそうした動きも垣間見られた。

このシナリオの支えとなるのは、米国経済が相対的に明確な優位性があり、強いファンダメンタルズを背景とする金融緩和からの転換などで他をリードするとの見方が必要だ。

先週、このシナリオが頓挫した要因は、米国での感染拡大・低調な経済指標に加え、FRBのハト派スタンスの再確認、追加緩和の可能性が高まったとの見方が広がったことが大きい。

これらが払しょくされなければ、ポジティブな状況のなかでのドル高は実現しにくい。

それには米国内での感染拡大鎮静化、景気回復が再び、三度、勢いを取り戻すこと、米長期金利のもう一段の上昇、10年債利回りが0.9%から1.0%を伺う展開となること、などが必要だ。

それにはなお時間がかかり来年春頃となるか。その頃には、バイデン新政権が本格的に始動し、同時にワクチン接種が動き始め、一方で感染拡大が春の訪れとともに自然体で鎮静化するなど、ポジティブな要因が重なる可能性がある。

そうなればドル円相場も105円台を安定的に回復し、今年春からのドル安円高トレンド・支持線をブレーク。ドル堅調に転換している可能性もあろう。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :104.09(▲0.17)
ユーロ :124.48(+0.26)
英ポンド :138.54(▲0.74)
豪ドル :76.894(+0.13)
カナダドル :80.127(+0.03)
スイスフラン :114.877(▲0.10)
ブラジルレアル :19.4808(▲0.06)
中国人民元 :15.812(▲0.05)
韓国ウォン(日本円=100) :9.418(▲0.01)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1963(+0.005)
英ポンド :1.3311(▲0.005)
豪ドル :0.7387(+0.003)
カナダドル :1.2989(▲0.003)
スイスフラン :0.9063(▲0.001)
ブラジルレアル :5.3369(+0.005)
中国人民元 :6.5781(+0.003)
韓国ウォン :1103.48(▲0.72)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :0.84(▲0.04)
米2年債 :0.15(▲0.01)
日本10年債利回り :0.03(+0.01)
日本2年債利回り :0.03(+0.01)
独10年債利回り :▲0.59(±0.0)
独2年債利回り :▲0.76(+0.00)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :29,910.37(+37.90)
NASDAQ :12,205.85(+111.45)
S&P500 :3,638.35(+8.70)
日経平均株価 :26,644.71(+107.40)
ドイツ DAX :13,335.68(+49.11)
インド センセックス :44,149.72(▲110.02)
中国上海総合 :3,408.31(+38.57)
ブラジル ボベスパ :110,575.50(+348.40)
英国FT250 :19,462.71(+66.37)
ビットコイン :17005.85(▲49.65)

【主要商品価格】
WTI :45.53(▲0.18)
Brent :48.18(+0.38)
米ガソリン :128.20(▲0.55)
米灯油 :138.05(▲0.61)

金 :1787.79(▲28.01)
銀 :22.57(▲0.85)
プラチナ :967.80(+2.20)
パラジウム :2428.47(+39.07)
銅 :7476.50(+106:14.5C)
アルミニウム :1988.50(+11:13.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :1191.75(+7.75)
シカゴ とうもろこし :425.50(+5.50)
シカゴ小麦 :596.50(+8.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。