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テーパリングの影響一巡で買い戻し優勢
  • MRA商品市場レポート

2021年6月22日 第1979号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「テーパリングの影響一巡で買い戻し優勢」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はその他農産品や貴金属セクターが売られたが、その他のセクターは軒並み水準を切り上げる展開となった。

パウエル議長を初めとするFOMCメンバーは基本的にテーパリングの必要性を訴える主張が目立ったが、テーパリングはそもそも「景気が正常化する見通しとなったので、過剰な金融面での支援を止める」ことであり、金融緩和は継続するということが改めて認識されたことが材料となった。

過去もそうであるが、テーパリングはその方向性を示した翌日が最も顕著に影響を受けるが、それが一巡したという整理だろうか。

ただし、経済活動が正常化していくということは

1.最も回復が先進国中で速い米国の景気循環系商品需要が増加する(特にエネルギー)2.長期金利上昇と米ドル高が進行する3.ロジの回復で供給懸念が後退する4.コロナの間のペントアップ需要が一巡する

ことを意味するため、必ずしも景気循環系商品価格の上昇要因になるわけではない。

なお、イランは核合意復帰が視野に入っていたものの、強硬派のライシ師が大統領選に勝利したことでその可能性が後退した。

【本日の見通し】

本日は商品価格を動かすような経済統計の発表が余りなく、引き続き金融政策関連のコメントに注目している。恐らく、タカ派的な発言が継続されるものの、市場はパニックを乗り越えたとみられ、商品価格への影響は限定されると見ている。

予定では、FRB議長の下院特別小委員会での講演、クリーブランド連銀総裁講演、サンフランシスコ連銀総裁講演、が予定されている。

また、イエレン財務長官が欧州を歴訪するが、最低税率の導入や財政出動によるインフラ投資の必要性(老朽インフラ対策、ITインフラ整備)を訴えるとみられ、場合によるとこの発言が工業金属価格の上昇要因となる可能性もある。

予定されている経済統計では、米中古住宅販売に注目している。米長期金利動向が不安定な中、前月比▲2.2%の572万戸(前月▲2.7%の585万戸)と減速が見込まれており、建材需要減少観測から鉱物資源価格の下押し要因となる。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は上昇した。イランで保守強硬派のライシ師が次期大統領となることが決定、米欧との核協議が10日程度中断すること、ライシ師が「米バイデン大統領とは面談しない」と発言したことで、イランからの原油供給期待が後退したため。

また、昨日は市場参加者のリスクテイクが回復、ドル安が進行したことも材料となった。

豪州石炭スワップ先物価格は小幅に上昇。夏場に向けた中国・日本を含むアジア地域の調達需要は旺盛とみられる。バルチック海運指数は小幅に下落。

JKM先物市場は上昇して12ドルを目指す動き。欧州天然ガスは寄り付きから下落したが、高値を維持。LNG価格の上昇や排出権価格の上昇が材料に。米天然ガスは西部の気温上昇はあるものの、南部と中西部の気温低下予報がこれを相殺した。

6月7日~6月13日の世界のLNG取引は740万トンと先週から+100万トン増加。そのうち27%(前週30%)がスポットで取引された。季節的な需要増加でターム契約ベースの需要が増加したとみられる。

輸入は欧州・中東で減少したが、日本・韓国・中国・インドの輸入が旺盛だった。輸出は中東・豪州からの輸出が増加。

貿易取引は季節性もあって増加しているとみられる。スポットLNGタンカーレートはスエズ東西とも上昇しており、今後再びLNGの価格は上昇圧力が強まることになるだろう。

本日はイランの核合意復帰の議論が少なくとも10日は行われない見通しとなったことや、市場参加者のリスクテイク意欲回復で堅調推移を予想。

石炭は在庫減少に伴う夏場に向けた調達圧力の高まり継続で高値維持。

天然ガスはリフレトレードの巻き戻しの落ち着きから排出権価格にはプラスに作用すること、夏場に向けた調達圧力の強まりから高値維持の公算。

◆非鉄金属

LME非鉄金属価格は下落したがその後反転し、総じて前日比プラスで引けた。リフレトレードの巻き戻し圧力が強まる中、四半期末を意識した売り圧力の強まりで下落していたが、米国時間に株価が反転上昇し、リスクテイク再開でドル安が進行したことが材料となった。

本日は昨日のリスクテイク再開の動きを受けて上昇して始まるとみているが、それでも中国政府の価格上昇抑制方針に変化はなく、四半期末を意識した投機の売り圧力も引き続き強いとみられることから、結局前日比マイナスで引けると予想する。

予定されている経済統計では、米中古住宅販売(市場予想 前月比▲2.2%の572万戸、前月▲2.7%の585万戸)があるが、減速見込みであり非鉄金属価格の下押し要因に。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は横ばい、大連原料炭先物は下落、上海鉄鋼製品先物は大幅に下落した。

7月の中国共産党結党100周年記念を控えて、工業需要が一時的に減少するとの見方が広がり鉄鋼製品価格が下落したことが鉄鋼原料価格を押し下げた。

本日も、中国の祝祭に備えた工業活動の停止が特に鉄鋼製品価格を押し下げるとみられ軟調な推移になると予想。

◆貴金属

昨日の貴金属セクターは上昇した。実質金利の上昇が価格を押し下げたものの、金のリスク・プレミアムがこの3ヵ月~6ヵ月の平均を大きく下回っていたため、ドル安進行の局面で買い戻しが入った。銀も同様。

プラチナ・パラジウムは工業金属的な色彩が強いため、株価の上昇局面ではそれに連れやすく、昨日は大幅な上昇となった。

本日は手がかり材料となる経済統計の発表が少ないが、FOMCメンバーのコメントがいくつか予定されており、恐らくテーパリングの推進に関するコメントをすると予想されることから、やや軟調な推移になると予想する。PGMは昨日の上げ幅が大きかったことから一旦売り戻されると予想。

◆穀物

穀物価格は続伸。米テーパリング進捗の方向性に変わりは無いが、リスクテイクが再開してドル安が進行したことが、テクニカルな買い戻しを誘った形。適切。

移動平均線などを元にすると、トウモロコシは610~670セント、大豆は1,300~1,460セント、小麦は630~670セントが当面の取引価格のコアレンジとなる公算。

ファンダメンタルズ面では中国需要が堅調であることと生産見通しへの楽観で中立だが、リスクテイクのドル安進行がファイナンシャルな面で価格を押し上げるため本日も堅調推移。ただしラニーニャ終了と四半期末を意識したファンド売り圧力も強いとみられ、上記のコアレンジが上値として意識され、上値も重いとみる。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

昨日の市場はアジア時間に大幅な下落となったが、米国時間に買い戻しが入り、テーパリングパニックから「もとに戻る動き」が強まった。

その中でテーパリングの影響をほとんど受けず、堅調な推移となったのが原油である。原油は直接の材料としてはイランのライシ次期大統領の就任が決定し、「米国とは交渉しない」「米国が一方的に課した制裁を解除するのに、イランに義務はない」「中国の支援に大いに期待している」と保守強硬派らしい発言を繰返しており、核交渉も10日間は行われないこととなった。

これによりOPECプラスのメンバーは今後、追加で増産を行うのか、行わないのかが非常に不透明になった。ただ、OPECプラスの盟主、サウジアラビアは今でも80ドル原油を望んでおり、この状態だと「何もしない」選択をする可能性は高い。

この状況で最大消費国である米国の移動制限が解除され、ガソリンや航空機の需要が同じ時期の2019年の水準に戻ったとすると、単純計算で90万バレル程度の需要増加。現在の米国の製品生産の水準が▲80万バレル程度なのでこちらが元に戻ってもやや不足する計算。

しかし、裁判所を動かして増産を阻止したり、役員を送り込んで増産を阻止するパワーゲームが横行している中で、欧米メジャーが計画通り増産出来るとは思えず、価格に上昇圧力が掛る可能性が高まった。

結果、脱炭素がOPEC支配力向上に寄与する形となっている。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・来年の中間選挙を控えて、バイデン大統領が国内の支持を得られない場合。恐らく選挙を考えると今年の夏までが勝負。

財政面や企業負担増の理由から造反が発生し、議会を通過しない場合は景気のリスクに(景気減速要因)。

・米財政出動が加速、景気回復期待を受けた価格上昇が顕著となる場合。

この場合、長期金利上昇でドル高が進行しやすく価格の下落を意識しなければならない。

夏のジャクソンホールのシンポジウムでのテーパリング開始宣言が妥当だが、6月のFOMCでFRBはタカ派に転じた可能性が高く、場合によるとそれよりも早まる可能性も否定出来ない。

・コロナウイルスの感染再拡大(変異種に対してワクチンの効果が期待ほどではなかった場合など)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合(価格下落要因)。これは既に欧州、インド、日本などで顕在化。

逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でハイパーインフレとなるリスク。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は高くなった。

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(これは人口動態を考えると、現実のリスクとなるのは2030年以降か)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は軟調地合の中、中東情勢への不透明さから高値圏でもみ合うと考える。米FRBがタカ派に転じたことでリフレトレードの巻き戻しがおきており、特に利息の付かない商品への投機売り圧力が強まる一方、イランの大統領選挙結果を受けて供給懸念が強まるため。

過去のケースでもテーパリング開始宣言からファイナンシャルな面で売り圧力が強まり、原油価格も下落した。今のところ2023年に2回の利上げが見込まれ、場合によると2022年にも利上げの可能性がある。

しかし、需要面ではコロナのワクチン接種進捗により人や物の移動が増加する見通しであることが需要面で、イランの大統領選挙で強硬派のライシ師が圧勝、イラン核合意復帰はその可能性は高いと考えているが、合意に至るまでには紆余曲折が予想されるため、非OPEC諸国では環境保護派が裁判所を使ったり、取締役を入り込ませて原油の増産を阻んでいる状況下、供給面が強く意識されて価格を下支えすると予想する。

また、イスラエルで連立政権が誕生したが、ネタニヤフ前首相よりもタカ派と言われるベネット党首が輪番制で2年間首相を務める。イランで保守強硬派の大統領が誕生したことで対立がさらに深まり、武力衝突に発展する可能性も排除出来なくなってきた。

【見通しの固有リスク】

・ワクチン接種の進捗が想定よりも早まり、人の移動制限が解除され需要増加に供給が間に合わず、価格が急騰するリスク(価格の上昇要因)。

同時に変異株が猛威を振るい、ワクチンが効かない場合(需要減少で下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でテーパリングなどの金融緩和解除が加速、急速なドル高を通じて投機的な売り圧力が高まる場合(価格の下落要因)。

・OPECプラスの増産タイミングの見誤りによる、供給不足。またはイランを巡り武力衝突や制裁解除が遅れた場合(価格上昇要因)。

米国の橋渡しでイランとサウジを初めとするスンニ派諸国が和解、中東の緊張が緩和するシナリオも排除せず(下落要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる場合

2.中東以外の産油国の生産者の破綻

3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合

4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・脱炭素の過剰な進捗による供給懸念(価格上昇要因)。

かなり過剰なペースで脱炭素が進められており、裁判所を使ってまでシェルに脱炭素推進を促し、ヘッジファンドが株主としてエクソンに対して脱炭素を促し、自身のポートフォリオの価値を上げる目的で取締役を送り込むといったことも常態化しはじめており、「比較的タイムリーな増産」が可能だった米国の生産が増えない可能性は極めて高い。

この場合、「脱炭素移行期間には十分な燃料供給が出来ないリスク」が高まり、来年以降の価格上昇局面で原油価格が100ドルを超えるリスク(ただしまだリスクシナリオの位置づけ)。

なお、脱炭素が完了しても100%原油が不要になることはなく、OPECの価格支配力が増すため、この場合でも価格は上昇へ。

【石炭価格見通し】

海上輸送石炭価格は高値圏を維持すると予想される。欧州排出枠価格が供給減少により2021年の需給がタイトとみられること、中国の製造業活動の回復とそれを受けた電力向け需要が堅調と見られることが背景。

なお、FRBがタカ派に転じたことがリスク資産価格の下押し要因となっているが、脱炭素の流れの中ではファンドですら石炭を投資対象とし難く、その影響は限定と考える。

中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、経済活動の回復に供給が十分ではない。夏場の調達に目処が立てば調整すると見られるが、足下、中国の6大電力会社の石炭在庫水準は過去5年レンジの最低水準と低く、高値圏維持を予想。

ただし、3月の豪雨の影響で供給が減少していた豪州の輸出増加や、環境規制強化の中で石炭需要は減速するとみられること、脱炭素の流れと逆行するが中国政府は海外との対立によって石炭調達に支障が出ることを回避するため、国内生産を増加させていることから海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

5月の石炭輸入は前年比▲4.6%の2,104万トン(前月▲29.8%の2,173万トン)と減少傾向が続いた。中国の需要増加に伴う電力需要回復で進んでいた石炭輸入だが、バルチック海運指数の減速も始まっており、そろそろ目処が立ちつつあると見られる。

しかし、中国6大電力会社の石炭在庫の水準は低く、まだ、季節的な石炭輸入需要の増加は続くと考える。石炭価格の下落は夏場の在庫調達が一巡する必要があるため、7月頃までは高止まりする可能性が高い。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【天然ガス・LNG】

天然ガス価格は中国の経済活動が活発であり、電力向け需要増加が見込まれること、海上輸送石炭価格の高止まり、欧州のメンテナンスによる供給減少といったテクニカル要因で域内需給がタイト化し、価格を高値に維持する見込み。

なお、FRBがタカ派に転じ、リスク資産価格に下押し圧力がかかりやすい地合となっているが、LNG市場はまだ投機の物色対象となっていないことから影響は限定されると見ている。

5月の中国のLNG輸入は前年比+34.4%の703万トン(前月+32.0%の673万トン)と過去5年レンジを大きく上回り、構造的な需要増加が続いている。

なお、5月の天然ガス輸入は前年比+31.6%の1,032万トン(前月31.5%の1,015万トン)と構造的な増加が続いている。中国も明確に石炭からガスへのシフトを進めていると見られ、電力需要の増加を背景に輸入を拡大していることが窺える。

長期契約のLNGに関しては、原油リンクとなるため上昇見通しだが、価格反映までに3ヵ月程度の時間差があるため(消費者への影響はさらに3ヵ月後)、現時点ではまだ上昇していないと考えられる。次の懸念は夏のピーク時の電力・ガス価格への影響だろう。

【見通しの固有リスク】

・米国がノルドストリーム2の建設を容認した場合、欧州ガス需給の緩和(ロシア増産で下落要因)。

・ウクライナやベラルーシといったロシアと欧州の緩衝帯との政治的な軋轢によって、結果的にロシア産ガスの供給がロシア側の都合でコントロールされた場合(実際にロシアが行動を起こした場合、多くのケースで価格の上昇要因)。

・産油国の減産継続による随伴ガス供給の減少懸念。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

・エルニーニョ現象発生が予想される夏場にかけて、北半球が猛暑となるリスク(気象庁の分析では冷夏になりやすい。日本は西日本が猛暑になる可能性)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが664,365枚(前週比 +7,013枚)ショートが140,409枚(▲6,444枚)ネットロングは523,956枚(+13,457枚)

Brentはロングが413,200枚(前週比+19,135枚)ショートが100,934枚(▲2,386枚)ネットロングは312,266枚(+21,521枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦調整する可能性が高まっていると考える。米FRBはテーパリングに関する議論開始を決定、タカ派に転じ、利上げのタイミングやペースも速まると予想されること、四半期末が近いことから、ファイナンシャルな理由で利益確定の動きが強まる可能性があるため。

これまで、投機的な買いが「需給バランス」「脱炭素」をテーマに価格上昇を助長していたことも事実であるが、ドル高・金利高の流れが意識されれば現物を必要としない投機の手仕舞い圧力が強まることになる。

また、中国は国家備蓄を放出の見込みで、Bloombergの報道などでは銅が50万トン程度の放出が見込まれているが、もしこの水準だと2021年の銅需給バランス、弊社は▲60万トン程度の供給不足と見積もっているが、これがほぼ払拭されることになり、下期にかけての下落要因となるだろう(亜鉛、アルミの放出量は不明)。

しかし、この在庫放出も「放出が終ってしまえば影響はなくなる」分けで、年明け以降に予想される米国のインフラ投資の本格化、予想されている通りの鉱山生産回復が見込まれるか、脱炭素の流れに変わりが無いのか、といったことに価格は左右されることになる。

また、米テーパリングにしても「踏み込んだアクセルを緩めるだけであり、ブレーキを踏むわけではないこと」から、売り一巡後(恐らく6月末の四半期末越え後)に買い戻しが入るとみている。

5月の中国製造業PMIは51.0(前月51.1)と市場予想の51.1と前月を小幅に下回った。ただし閾値の50は上回っており中国の製造業活動は拡大過程にあることには変わりはない。

内訳を見ると生産が安定(52.2→52.7)する一方で、新規受注(52.0→51.3)、輸出新規受注(50.4→48.3)、受注残(46.4→45.9)と需要面に減速が見られている。

恐らく、原材料価格の高騰や中国政府の過剰投資抑制方針が徐々にボディブローのように効いていると考えられる。人民元高進行も輸出に重石と考えられる。

工業金属価格に対する説明力が高い新規受注在庫レシオは、完成品が1.10(前月1.11)、原材料が1.08(1.08)と両指数ともほぼ横ばい。

これまで非鉄金属価格の上昇を牽引してきたのは中国の住宅セクターであるが、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と再び回復。悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復した。

住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

その中で輸出向けの需要が欧米との対立と人民元高の中でどれだけ回復出来るかが、次の焦点となる。

5月の中国の貿易統計を見ると、ベンチマークである精錬銅の輸入は前年比+2.3%の44万6,000トン(前月+5.1%の48万4,890トン)とやや伸びが鈍化し、過去5年レンジの上限を下回っている。

一方、5月の銅精鉱の輸入は+15.1%の194万5,000トン(▲5.4%の192万トン)と高い水準を維持、銅スクラップの輸入も+103.1%の16万7,767トン(+90.6%の17万1,996万トン)と堅調であり、まだ中国の銅需要は堅調とみられる。

中期的には米国や欧州の財政出動、脱炭素の動きを受けた動向に左右されることになる。

米民主党政権は1.9兆ドルの経済対策に加え、2兆ドル(インフラ投資は0.6兆ドル程度)の追加対策を実施の計画であり、さらには2022年度予算も戦後最大となる歳出を6兆ドルと、以上と戦後最大の水準とする方針を示した。

インフラや社会プログラム向けに今後10年で4兆5,000億ドルを拠出、道路や橋梁の修復に170億ドル、水道管の工事に45億ドル、ブロードバンド通信網敷設に130億ドルを充当する見込みで、工業金属需要の増加に繋がる。

これらの需要は景気に関係なく発生する需要であるため、需要の見通しは底堅く、価格の調整があっても下値余地は限定される可能性が高い。

こうした政策期待や、インドなどの新興諸国の需要増加を受けた構造的な需要増加を受けて、中・長期的に価格は下支えされ、堅調な推移になると考える。

米国・中国・インドがどのような動きをするかに環境政策は左右されるが、ここまでの各国の動きを見ていると当面は環境向けに使用される金属の需要増加は「今後10年・20年の大きなテーマ」となる可能性が高いと言える。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル、銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

2020年の中国の新エネルギー車の販売は前年比+7.5%の137万台(前年124万台)となった。全体の自動車販売が2,523万台なのでシェアは5.4%(4.9%)と上昇している。それでも電気自動車が非鉄金属市場の重要なテーマになるには、あと数年は要するだろう。

【見通しの固有リスク/個別金属の特殊要因】

・期待されていた米国のインフラ投資規模が、議会の反対で減額ないしは延期される場合(下落リスク)。

・米国経済が正常化する中でドル高が進行し、投機買いが膨らんでいる非鉄金属市場で投機の手仕舞い売り圧力が高まる場合(下落リスク)。

・米中間選挙に向けて、米民主党が追加でインフラ投資(2兆ドルのクリーンインフラ投資など)を議会の採決を得て実行に移す場合(上昇リスク)。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(上昇リスク)。

・中国の環境規制強化に伴う供給の減少。エネルギー排出量の多い新疆ウイグル自治区でのアルミ生産は減産の影響は既に材料視されている(供給減少でアルミ価格の上昇要因に)。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・チリやペルーで広がる左派勢力伸長に伴う大衆迎合的な政策が可決し、鉱山生産に過剰なロイヤルティが適用される場合(供給減少ないしは生産コスト上昇で価格の上昇要因)。

チリで議論されている銅のロイヤルティ増税案の詳細は以下の通り。

年内実施予定の選挙結果では課税強化で生産コスト上昇、または減産となる可能性も。

3%の新ロイヤルティに加え、銅価格に連動して税額が賦課される仕組み。

2ドル~2.5ドル/ポンド(4,406~5,508ドル/トン):15%2.5ドル~3(5,508~6,609):35%3ドル~3.5(6,609~7,711):50%3.5ドル~4(7,710~8,813):60%4ドル~4.5(8,813~9,914):70%

年間販売量が5万トン未満の小規模生産者は品位95%の粗銅の場合▲5%の軽減税率、アノードの場合(99.4~99.6%)が適用される。

2023年までは現行の営業利益率によって5~14%の鉱業ロイヤルティが適用されるが、2024年以降は新税制を適用。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比+3.0%の263億ドル(前週 256億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+2.3%の5,945.5千トン(前週 5,812.6千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、米中のインフラ投資による建材向け需要増加観測を背景に、高値を維持すると予想する。

またこれまでの経済対策の影響で、中国国内の鉄鋼原料在庫日数の水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高い。

ただし、中国政府は景気刺激と同時に住宅セクターのバブルを懸念し始めており、住宅取得規制の動きも見せていること、先物取引市場での監視強化(証拠金引き上げや値幅制限、投機取引の監視など)、在庫日数は低いが粗鋼生産が減少すれば需給は緩和すること、鉄鋼製品在庫は季節性よりも早く再び積み上がっていること、から下落リスクを意識すべきタイミングに。

また、中国共産党は2021年から始まった新しい5ヵ年計画で鉄鋼生産量の削減の必要性を表明している。温室効果ガスの排出削減を目的として、業界として二酸化炭素の輩出の多い鉄鋼業(とアルミ生産業)の生産量を前年比でマイナスとする方針であり、鉄鋼製品向けの需要が減少することから、年後半に掛けては価格は下落すると予想する。

最大生産都市である唐山市は、2021年20日~12月31日まで、大気汚染基準に違反し、データを改ざんした4社は3月20日~6月末まで▲50%、7月~12月末まで▲30%減産、その他の16社は12月末まで▲30%の減産を新たに実施することを義務づけられた。

直近の唐山市の高炉稼働率は過去5年レンジを下回る7割程度の推移となっており、鉄鋼製品生産は抑制された状態になっている。

また、Q221には邯鄲市も生産管理措置を導入する見通しであり、鉄鋼製品供給は制限される可能性が高い。

これにより、唐山市の粗鋼生産は前年比▲2,223万トンの1億2,177万トン、鉄鉱石需要は▲3,500万トン減少するとみられている。ただし今のところ鉄鋼製品価格は高値圏を維持しており、鉄鉱石価格も高止まりしている。

5月の中国鉄鋼業PMIを見ると、総合指数は46.1(前月45.4)と改善。生産が回復(47.0→51.4)した影響が大きい。しかし、新規受注(44.4→39.4)、輸出向け新規受注(51.7→43.9)と軒並み需要面が減速している。

国内の新規受注の減速は資源価格の上昇と国内バブル抑制方針に中国政府が舵を切っていること、輸出向けの減速は5月1日から鋼材輸出の増値税還付が撤廃されたことが影響したとみられる。

需要の減少で目安となる新規受注・在庫レシオは、新規受注完成品レシオが0.91(前月1.29)と低下、新規受注原材料レシオは0.99(1.25)と大幅に低下しており、原材料・鉄鋼製品とも価格の下押し圧力が強まる展開が予想される。

しかし、鉄鋼原料価格の上昇を牽引してきた住宅セクターに関しては、5月の中国の建設業PMIは60.1(57.4)と、悪天候の影響などで減速していた前月から急速に回復。短期的には鉄鋼需要が底堅く推移する可能性が高いことを示唆している。

とはいえ、住宅セクター向けの一連の建材需要は旺盛であるが、中国政府は住宅セクターの加熱を警戒していること、素材価格の上昇が活動を減速させる可能性があるため、やはり先行きの国内向けの需要はそれほど大きく回復はしないだろう。

5月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲5.8%の120万6,000トン(前月+16.2%の117万4,000トン)と伸びが減速したが、過去5年レンジの上限で推移している。

4月の中国粗鋼生産は9,785万トン(前月9,402万トン、2月8,305万トン、1月 9,024万トン、12月9,125万トン、11月 8,766万トン)と同じ時期の過去5年最高水準を大きく上回っている。

その一方、5月の鉄鋼製品の輸出は前年比+19.8%の527万1,000トン(前月+26.2%の797万3,000トン)と伸びが減速した。これは輸出リベートの撤廃による4月の鉄鋼製品輸出駆け込み需要が剥落したことによるものと見られる。

なお、中国の鉄鋼製品需要は旺盛とみられるが、在庫水準は前週比+33万8,000トンの1,511万5,000トン(過去5年平均 1,092万5,000トン)と、例年、在庫減少が続く時期だが在庫は前週比で増加に転じている。

中国当局の景気過熱沈静化の動きの影響が顕在化しつつあると言える。

原料である鉄鉱石の5月の輸入は前年比+3.2%の8,980万トン(前月+3.0%の9,857万トン)と伸びは横ばい。しかし、輸入量の水準は過去5年平均程度まで急速に減速しており、中国の鉄鉱石需要は鈍化している可能性が出てきた。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲165万トンの1億2,460万トン(過去5年平均1億2,462万6,000トン)、在庫日数は22.7日(過去5年平均 27.6日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、在庫の積み増しは継続する見込み。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。

しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

5月の中国の原料炭輸入は前年比▲28.7%の341万1,925トン(前月▲44.6%の348万3,128トン)と減少幅を縮小している。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は前週比▲2万トンの116万トンと過去5年平均の164万トンを上回っている。

在庫日数は前週比▲0.1日の4.1日と、過去5年の平均である6.9日を下回っており、需要を考慮すると原料炭需給はまだタイトな状態にあると言える。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・中国とインドの国境紛争の激化で、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値圏での推移を継続すると考える。米テーパリング進捗観測でドル高が進行していたが、逆に金融引き締め観測が長期金利の上昇を抑制しており、実質金利に低下圧力が掛っていることが背景。

とは言え、米景気の相対的な回復期待の強さからドル高・長期期金利(緩やかに)上昇圧力が強まると予想され、中期的な見通しは弱気。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は1,587ドルと▲5ドル低下、そこからの乖離(リスク・プレミアム)は196ドルと前日から+14ドル上昇している。

リスク・プレミアムは、過去3ヵ月平均で220ドル、6ヵ月で215ドル、1年で230ドル、5年で170ドルとなっている。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、68.7倍。過去1年を基準にすると75倍、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当。

今後、さらに金銀レシオが低下するには、実際に太陽光パネルの設置が米国で進捗するなどの新規材料が必要になるのではないか。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。プラチナの需給バランスはWPICデータを元にすると今年も除く投機で供給過剰であり、投機動向が価格を左右しやすい。

金価格が米長期金利の低下で再び高値で推移していることから、投機的な観点でプラチナにも上昇圧力が掛りやすい地合い。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。投機の比率が高い商品であるため、こうした観測記事だけでも材料に価格が反応しやすい。

パラジウムは景気正常化期待による金価格調整→経済正常化による需要増加、ロシア生産者からの供給減少観測を受けて高値を維持すると考える。

自動車生産が回復すれば再びパラジウム供給不足が発生し、ETFの残高減少と価格上昇が同時に発生する可能性が高いとみている。

5月の米自動車販売は年率1,699万台(前月1,851万台、市場予想1,725万台)と減速。目先は価格の下落要因となりやすい。

中国の5月の自動車販売は中国自動車工業協会の集計で前年比▲3.0%の212万7,000台(前月+8.8%の225万台、3月+76.5%の252万5,000台、2月+371%の146万台、1月+30%の250万台、12月+6.4%の283万台、11月+12.7%の276万9,666台、10月+12.6%の257万3,000台、9月+13.0%の256万5,201台)と前年比マイナスに転じた。

半導体不足が自動車生産に影響を及ぼしているとみられる。

【見通しの固有リスク】

・個人投資家のETFを通じた買いが、経済合理性を無視した水準まで貴金属価格を押し上げるリスク。

・主要生産国の南アフリカの電力供給不安や、コロナウイルスの影響拡大で供給が滞る場合(PGMの価格上昇要因)。

・コロナからの回復は各国まだらであり、先行する米国が金融正常化に動いた場合、新興国から資金が流出して信用リスクが高まる場合(安全資産価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。バイデン政権は対中強硬姿勢を明確にしており、対立がさらに激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加(実際に破綻が意識されるのは2030年以降か)。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が電力供給問題もあって不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが273,947枚(前週比 ▲14,834枚)、ショートが81,911枚(+2,517枚)、ネットロングは192,036枚(▲17,351枚)、銀が88,591枚(+5,213枚)、ショートが36,527枚(+2,955枚)、ネットロングは52,064枚(+2,258枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが36,745枚(前週比 ▲972枚)ショートが16,688枚(▲865枚)、ネットロングは20,057枚(▲107枚)

パラジウムが6,131枚(+4枚)、ショートが3,728枚(+76枚)ネットロングは2,403枚(▲72枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

トウモロコシ・大豆は下落余地を探る動きになると予想する。5月13日に米海洋気象局がラニーニャ現象収束を宣言、エルニーニョ現象の発生が見込まれる中、FRBのテーパリング議論開始を受けたドル高進行によってこれまで維持してきたサポートラインを割り込んだことが背景。

ただし、中国の輸入需要が旺盛であることに変わりがないことから下落余地も限定されよう。

5月の中国の大豆輸入は前年比+2.5%の961万トン(+11.0%の前月745万トン)と季節性に沿って増加しているが、過去5年レンジの上限で推移しており、輸入需要は旺盛。

但し、これまでの20年を振り返るとラニーニャが発生していない時期~エルニーニョの時期にかけては価格が弱含みやすいのでそこまで強気ではない。

更に価格が上昇するとすれば、2000年代にトウモロコシのエタノール需要増加を期待して価格が上昇したことと同じことが、大豆や大豆油に対して起きる場合だろう。

但しこの時も「食品を投機の対象にすること」「燃料に使うこと」への批判が高まり、特に投機に規制がはいることで下落に転じたため「構造的な需要増加要因として織り込まれた後」は下落に転じると考える。

Locust WatchではFAOの予想通り、降雨がなかったため群生相の発生は極めて抑制されている。Locust Watchでも今のところ差し迫った危機の発生リスクは指摘されていない。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/210621DLupdate.jpg

【見通しの固有リスク】

・エルニーニョ現象発生による生産条件改善を受けた増産観測(価格の下落要因)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米作付け意向面積トウモロコシ 9,114万エーカー(市場予想9,313万エーカー、前年9,699万エーカー)大豆 8,760万エーカー(9,010万エーカー、8,351万エーカー)小麦 4,636万エーカー(4,495万エーカー、4,466万エーカー)綿花 1,204万エーカー(1,215万エーカー、1,370万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 179.5Bu/エーカー(179.39、179.5)大豆 50.8Bu/エーカー(50.8、50.8)小麦 50.7Bu/エーカー(NA、50.0)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億9,000万Bu(150億861万Bu、149億9,000万Bu)大豆 44億500万Bu(44億1,096万Bu、44億500万Bu)小麦 18億9,800万Bu(18億8,990万Bu、18億7,200万Bu)

・6月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 24億5,000万Bu(24億5,000万Bu)大豆 20億7,500万Bu(20億7,500万Bu)小麦 9億Bu(9億Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 13億5,700万Bu(14億1,672万Bu、15億700万Bu)大豆 1億5,500万Bu(1億4,256万Bu、1億4,000万Bu)小麦 7億7,000万Bu(7億8,056万Bu、7億7,400万Bu)

・3月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 77億100万Bu(77億7,024万Bu、112億9,400万Bu)大豆 15億6,400万Bu(15億2,829万Bu、29億4,700万Bu)小麦 13億1,400万Bu(12億7,116万Bu、17億300万Bu)

・6月CONABブラジル作付け面積(市場予想/前月)トウモロコシ 1,984万ha(1,975万ha、1,987万ha)大豆 3,815万ha(3,871万ha、3,850万ha)

・6月CONABブラジル生産量(市場予想/前月)トウモロコシ 9,639万トン(9,398万トン、1億641万トン) 単収 4,858kg/ha(4,762Kg/ha、5,355kg/ha)大豆 1億3,586万トン(1億3,682万トン、1億3,541万トン) 単収 3,528kg/ha(3,538Kg/ha、3,517kg/ha)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが496,763枚(前週比 ▲22,839枚)、ショートが95,387枚(+4,213枚)ネットロングは401,376枚(▲27,052枚)

大豆はロングが263,867枚(▲17,480枚)、ショートが58,474枚(+3,815枚)ネットロングは205,393枚(▲21,295枚)

小麦はロングが108,694枚(▲708枚)、ショートが94,746枚(+3,961枚)ネットロングは13,948枚(▲4,669枚)

◆本日のMRA's Eye


「金の過去のリスクイベントを考える-2」

前回のコラムでは、ブレトンウッズ体制が崩壊し、ニクソン・ショック発生後までのリスクイベントを分析した。金価格を長期的な視点で見ると、この1971年以降は地政学的なイベントリスクが非常に多く金価格は実質金利以外の影響が大きかった。

この後、第2次オイルショックなどの大きなイベントリスクが比較的立て続けに発生するが、この間の値動きはどうだっただろうか。前回と同様に価格動向を分析、整理してみたい。

1970年代後半から2000年にかけては、世界中でイベントリスクが多数顕在化した。1978年末にOPECが原油価格を4段階に分けて14.5%値上げすることを決定した。これにより原油価格は上昇し、さらに1979年には親米だったイランのパーレビ政権が倒れ、イラン革命が起きる。

イラン革命自体は1978年1月に亡命中だったホメイニ師を担ぎ上げて始まった活動の結果、起きたものである。

さらにその後、時を同じくして1979年12月にアフガニスタンにソビエトが侵攻、1980年にはイラン・イラク戦争が勃発。1985年にはプラザ合意によるドル協調介入が行われ、レーガノミクスで上昇していたドルが下落に転じる。

その後、1990年には第1次湾岸戦争が勃発、1997年から1999年にかけてはアジア通貨危機、ロシア財政危機などの国レベルの信用危機が勃発した。おのおののイベントリスクの背景は、ほかの歴史系のコラムや学術書に詳しい記載があると思うので、このコラムではイベントの概要は以下に主要なものをまとめるにとどめる。

(第2次オイルショック以降の主な地政学的イベント)

1978年12月31日 第2次オイルショック・1978年末にOPECが段階的に原油価格の引き上げを決定し、原油価格が急上昇

1979年1月16日 イラン革命・シーア派宗教指導者であるホメイニ師に率いられた勢力が、イランのパーレビ政権から政権を奪取、イスラム教国家を出現させた革命

1979年12月 アフガン戦争へのソ連の介入・アフガニスタンのアミン政権が独裁化し、ソ連共産主義者排除を図ったため、共産圏維持目的でソ連が軍事介入

1980年9月22日 イラン・イラク戦争・両国の石油輸出の要衝であるシャトル・アラブの権益を巡る戦争。イラン革命で国内が混乱していることに乗じてイラクが仕掛けた戦争

1985年9月22日 プラザ合意・レーガン政権の高インフレ抑制策を目的とした金融引き締めでドル高が進行、双子の赤字が発生。1971年のニクソン・ショックの再来を懸念した先進国がドル安協調で合意、急速なドル安が進行

1990年8月2日 第1次湾岸戦争・イラクのサダムフセインが石油権益奪取を目的にクウェートに侵攻、イラクと米国を中心とする連合軍の戦争

1997年~1999年 アジア通貨危機・ロシア財政危機・タイを中心に始まったアジア各国の連鎖的な通貨急落。その後、財政状況が悪化していたロシアにも波及し同国がデフォルトした

この間の金価格動向を1977年1年間のデータを用いてこれまでと同様、基準価格とリスク・プレミアムに分解したもので俯瞰してみると、現在、最も説明力が高い実質金利(基準価格部分)は金価格に対して説明力がなく、金価格の構成要素に占める金基準価格の構成比率は、1978年1月から2000年12月までの平均で36.9%に過ぎないことが分かる。

ドル指数と比較してみると、相関係数は▲0.14。この期間、金価格と実質金利の相関をとると0.34と説明力は若干為替よりも高いが、それでも統計上は無相関である。

よく、金はインフレヘッジのために用いられると言われるため、実質金利ではなく消費者物価指数と金価格との相関性を調べてみると相関係数は▲0.06であり、やはりほとんど無相関となった(注:時期を区切れば説明力が高い時期がないこともないが、それほど明確な相関性ではない)。

つまり、この時期、金は実質金利や為替以外の要因によって価格が左右されており、かつ、インフレヘッジに用いられたというよりは、上記のイベントリスク顕在化時に、為替変動やリスク回避の為の逃避資産としての意味合いが非常に強かったといえる。

なお、前回のこのコラムでも指摘したが1977年の実質金利データを元に回帰分析を行っているので、年限が近い方が説明力が高いのは当たり前である。しかし価格との関係性が維持されているならば、2000年になっても金基準価格の説明力は高いままのはずだがそうはなっていない。

ここで注目すべきは、リスク・プレミアムの説明力が増した後、2000年にかけてりスク・プレミアムの説明力が低下している点、イベントリスク発生時の金価格のアップサイドへの反応幅が小さくなっている点だ。

確かに有事は金の需要を高めるものの、主要先進国が破綻して資金決済ができなくなるほどのリスクと見なされなくなってきたためと考えられる。もちろん、これらの分析はどこの期間を基準に回帰分析を行うかによって結果は変わってくるが、少なくとも1978年から2000年にかけて、1977年基準を元にした分析は有効に機能しなくなっていることを示唆している。

まとめればこの20年で、時間経過とともに金基準価格の金価格に占める比率が上昇し、徐々にではあるがイベントリスク発生時に高騰する商品、リスク回避の商品、というよりも実質金利で価格が決定される商品としての色彩を強めたといえるのではないか。

◆主要ニュース


・5月カンザスシティ連銀製造業活動 26(前月 31)

・FRBパウエル議長、「インフレ率はこの数ヵ月で顕著に加速。パンデミックが引き続き経済見通しのリスクに。」

・ニューヨーク連銀ウィリアムズ総裁(投票権あり・中間派)、「顕著な進展の達成には遠い。雇用と物価安定の双方にリスク。見通しは以前不明確。」

・中国人民銀行、金融機関に対して仮想通貨の取り締まり強化を指示。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】

・BofA、「原油価格は来年、100ドルに急騰する可能性。」

・イラン ライシ司法府代表の大統領選勝利を受け、イランの核協議は10日間程度休止の見込み。

・イラク 国営通信社(石油省報道官の発言として)、「同国は原油価格が1バレル80ドルに上昇すると見込んでいる。」

【メタル】

・Glencore、コンゴ最大のMutanda鉱山銅・コバルトプロジェクトの稼働を再開する見込み。

・5月中国粗鋼生産 前年比+7.2百万トンの99.5百万トン(前月97.9百万トン)

・5月中国精錬銅生産 前年比+13千トンの866千トン(前月 901千トン)

・5月中国銅製品生産 前年比▲39千トンの1,838千トン(前月 1,896千トン)

・5月中国精錬亜鉛生産 前年比+13千トンの527千トン(前月 544千トン)

・5月中国精錬鉛生産 前年比+87千トンの593千トン(前月 546千トン)

・5月中国プライマリアルミ生産 前年比+340千トンの3,317千トン(前月 3,346千トン)

・5月中国アルミ製品生産 前年比+0.27百万トンの5.43百万トン(前月 5.41百万トン)

・中国ベースメタル貿易統計(5月)、単位:千トン、錫:トン
 精錬銅輸入 319.1(前月比 ▲35.8, 前年比 +31.2)
 銅精鉱 1,921.4(前月比 ▲249.8, 前年比 ▲108.1)
 銅スクラップ 167.8(前月比 ▲4.2, 前年比 +85.2)
 精錬銅輸出 24.0(前月比 +7.5, 前年比 +7.4)

 精錬亜鉛輸入 49.1(前月比 ▲4.3, 前年比 +10.9)
 精錬亜鉛輸出 0.9(前月比 UC, 前年比 ▲2.2)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.パラジウム ( 貴金属 )/ +4.62%/ +5.75%
2.CBT大豆油 ( 穀物 )/ +4.28%/ +39.88%
3.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.85%/ +6.80%
4.NYM WTI ( エネルギー )/ +2.64%/ +51.55%
5.DME Oman ( エネルギー )/ +2.14%/ +43.32%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.ビットコイン ( その他 )/ ▲7.99%/ +12.70%
65.日経平均 ( 株式 )/ ▲3.29%/ +2.07%
64.SHF亜鉛 ( ベースメタル )/ ▲2.60%/ +3.21%
63.SHF錫 ( ベースメタル )/ ▲2.08%/ +32.68%
62.SHF銅 ( ベースメタル )/ ▲1.55%/ +15.36%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :33,876.97(+586.89)
S&P500 :4,224.79(+58.34)
日経平均株価 :28,010.93(▲953.15)
ドル円 :110.31(+0.10)
ユーロ円 :131.48(+0.73)
米10年債 :1.50(+0.06)
中国10年債利回り :3.10(▲0.04)
日本10年債利回り :0.05(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.17(+0.03)
ビットコイン :32,677.8(▲3145.49)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :27.97(+0.03)
エネルギー :24.71(▲0.32)
ベースメタル :25.38(▲0.16)
貴金属 :28.05(+1.26)
穀物 :38.05(+0.51)
その他農畜産品 :26.36(▲0.28)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :20.03(+0.43)
Brent :13.27(▲2.04)
米天然ガス :32.81(▲0.03)
米ガソリン :16.39(+0.2)
ICEガスオイル :12.28(▲1.13)
LME銅 :21.26(+0.52)
LMEアルミニウム :25.13(+0.09)
金 :41.34(+0.51)
プラチナ :27.33(+1.1)
トウモロコシ :50.04(▲0.01)
大豆 :41.34(+0.51)

【エネルギー】
WTI :73.53(+1.89)
Brent :74.85(+1.34)
Oman :73.18(+1.53)
米ガソリン :219.15(+2.32)
米灯油 :212.33(+3.01)
ICEガスオイル :599.00(+5.50)
米天然ガス :3.20(▲0.02)
英天然ガス :72.54(+0.71)

【貴金属】
金 :1783.06(+18.90)
銀 :25.96(+0.17)
プラチナ :1062.46(+18.98)
パラジウム :2589.71(+114.25)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :9,070(▲160:27.5C)
亜鉛 :2,844(▲43:12C)
鉛 :2,172(+27:9C)
アルミニウム :2,371(▲10:17C)
ニッケル :17,346(+4:36C)
錫 :29,810(▲324:1454B)
コバルト :44,515(▲17)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :9180.00(+31.00)
亜鉛 :2840.00(±0.0)
鉛 :2163.00(+10.00)
アルミニウム :2402.00(+16.50)
ニッケル :17480.00(+290.00)
錫 :30200.00(+285.00)
バルチック海運指数 :3,218.00(▲49.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :215.51(▲1.33)
SGX鉄鉱石 :210.79(▲3.29)
NYMEX鉄鉱石 :212.75(▲1.46)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :171.25(±0.0)
大連原料炭先物 :325.81(▲0.78)
上海鉄筋直近限月 :4,874(▲107)
上海鉄筋中心限月 :4,991(▲113)
米鉄スクラップ :680(+5.00)

【農産物】
大豆 :1415.75(+19.75)
シカゴ大豆ミール :372.60(▲0.80)
シカゴ大豆油 :60.61(+2.49)
マレーシア パーム油 :3565.00(▲28.00)
シカゴ とうもろこし :660.50(+5.25)
シカゴ小麦 :662.75(±0.0)
シンガポールゴム :209.00(▲2.60)
上海ゴム :12575.00(+35.00)
砂糖 :16.78(+0.35)
アラビカ :152.35(+2.45)
ロブスタ :1585.00(+1.00)
綿花 :84.09(▲0.33)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :107.00(▲1.68)
シカゴ生牛 :120.90(▲0.15)
シカゴ飼育牛 :154.68(▲0.35)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。