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ポジション調整主体で方向感に欠ける展開続く
  • MRA商品市場レポート

2020年12月4日 第1866号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「ポジション調整主体で方向感に欠ける展開続く」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は高安まちまちとなった。ドル安の進行が総じて価格を下支えしたが、エネルギーに買いが入り、工業金属セクターがやや軟調な推移となった。固有の材料があった、というよりは、四半期末を控えたポジション調整のと利引きが主体だったと考えられる。

徐々に市場のテーマが少なくなり、市場参加者も減少し、流動性が低下する中でのポジション解消の動きは、値動きを大きくする可能性がある。特に流動性が低い商品はそうなりがちだ。

昨日では気温上昇が材料に天然ガス価格が下落しているが、これも積み上がったロングの解消によるものだ。パラジウムもほぼ同じと考えられる。

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【本日の見通し】

本日も年末のファンド決算やクリスマス休暇を意識した動きで方向感がでにくい展開が予想される。

本日発表される統計で注目は、やはり米雇用統計ということになる。市場予想は、非農業部門雇用者数が+47.8万人(前月+63.8万人)と減速見込みであり、民間部門雇用者数も+55.0万人(+90.6万人)と減速感が強い。製造業の雇用者は緩やかながら増加(+3.8万人→+4.5万人)となる見込みであることと比較すると、やはりコロナの影響による消費者の行動変化が、特にサービス業に与える影響が大きくなると予想されている。

注目は低下を続けている失業率の低下が続くか(市場予想6.8%、前月6.9%)、それが労働参加率の低下によってもたらされている低下なのか、そうではないのか(市場予想61.8%、前月61.7%)に注目が集まる。

仮に労働参加率も上昇し、失業率が低下しているのならば米景気回復への期待が強まり、長期金利上昇、株価・原油・非鉄金属価格上昇、金価格下落、という展開になると予想されるが、週次の雇用関連統計は決して良い内容ではなく、やや減速感が強まっているため、厳しい内容になるのではないか。

【セクター別動向と見通し】

◆エネルギー

原油価格は上昇した。固有の材料というよりは、株価が調整する中で長期金利低下・ドル安が進行したことが材料となった。ファイナンシャルな材料での上昇だった可能性が高い。

昨日、OPECプラスは1月から50万バレルの段階的な増産で合意。市場はQ121の減産規模維持を想定していたため、ややトーンダウンした形。

それ以上に、OPECプラスの調整に嫌気がさしたサウジアラビアが共同議長のポジションを辞めるとしたことに象徴されるように、今後、OPECプラスが結束を維持できるかどうかは疑問の残る会合となった。

石炭価格は大幅に上昇。中国の国内景況感改善に伴う電力向け需要増加と、対豪制裁による輸入低下で国内の在庫が減少し、「背に腹は代えられなくなった」ことが影響した模様。

中国の電力消費は8月から前年比+21.2%→+11.5%→+6.6%と伸びは鈍化しているものの、前年比プラスであり、石炭価格にはプラスに作用している。

本日はOPECの増産決定を受けて軟調推移を予想。雇用統計は、恐らく雇用者数の増加ペースは鈍化するとみられ実需面では価格にマイナスだが、ドル安が進行するため結果的に影響は中立。

石炭価格は中国の経済活動に鈍化の兆しが見られないこと、気温低下、在庫減少から高値を維持。

◆非鉄金属

LME非鉄金属は高安まちまち。固有の材料に乏しい中、四半期末を控えた利益確定の動きが価格を下押ししたが、米長期金利低下に伴うドル安進行が価格をファイナンシャルな面で押し上げ、結局はレンジワーク。

本日も四半期末を意識し、積み上がった投機ロングポジションの解消売りで軟調地合を維持。なお、米雇用統計が発表されるが恐らく雇用者数の増加ペースは鈍化するとみられ実需面では価格にマイナス、その一方でドル安が進行するため結果的に影響は中立と予想。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、大連先物は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭先物は上昇、鉄鋼製品先物価は直近限月が変わらず、中心限月が小幅に下洛した。

特段、現物周りの需給環境に大きな変化はなく基本的に価格は高値維持だが、昨日はValeの2020年生産見通しが下方修正されたことが先物価格を押し上げた。

本日も堅調な国内需要を背景に、鉄鋼製品・鉄鋼原料は高値圏での推移が続くことになると予想。

◆貴金属

金価格は上昇。実質金利が低下したことに加え、ドル安が進行したことが材料となった。銀はもみ合った結果、前日比マイナスで引けた。

プラチナは金価格の上昇とドル安を背景に、恐らく投機的な買いが入り上昇、パラジウムは固有材料なく、テクニカルな売りで下落した。

なお、最大生産者のNorilsk Nickelは2020年のパラジウムは▲40万オンスの供給不足となり、当初予想の▲10万オンスを大きく上回る見通しを示している。

本日は米雇用統計を背景にややドル安が進行するとみられることから、投機的な色彩の強い金銀プラチナは上昇、パラジウムは雇用統計の減速を背景に軟調な推移を予想。

◆穀物

シカゴ穀物市場は高安まちまち。

トウモロコシと大豆はドル安進行で買い戻しが入り上昇、

小麦はカナダの2020-2021年の生産が過去最高となる3,520万トンになるとの見通しをカナダ統計局が示したことが売り材料となった。このほか、豪州も生産見通しを上方修正し、ロシアも輸出量を引き上げると報じられたことも価格を下押しした。例年通り、最終的に小麦の供給はつじつまが会うことになりそうだ。

2020年11月26日発表の米主要穀物輸出成約高は、軒並み減少している。トウモロコシ 1,371.40千トン(前週比▲294.2千トン)大豆 406.90千トン(▲361.2千トン)小麦 446.40千トン(▲349.3千トン)

需給ファンダメンタルズが強いことから高値圏維持も、投機のロングが記録的な高水準、ショートが低水準であることから調整圧力が強まる展開で軟調な推移を予想。

※中長期見通しは個別セクターのコラムをご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日のトピックス】

市場総括のところでもコメントしたが、ここから年末に掛けては、ポジションが積み上がっているものの解消圧力が強まると予想される。主要な商品のロング・ショート動向を確認しておくとリンク先の通りとなっている。

9月比でロングが増加している商品は実はそれほど多くなく、トウモロコシ・大豆・プラチナ程度であり、後は銅、エネルギーセクターが若干、買い越し幅を広げている。これらにはその買い越し幅の増加の程度に合わせて調整圧力が掛りやすい。

一方、ネットロングが減少しているのは生牛、肥育牛、コーヒーなどでこれらには買い戻し圧力が掛ろう。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

・米大統領選挙前後の国内融和にバイデン次期大統領が失敗する場合。

・欧州の政治混乱(トルコと欧州の関係悪化、ハードブレグジットなど)によるリスク回避の動きの強まり。

・コロナウイルスの感染再拡大(または新たなウイルスの発生)によるロックダウンが景気循環系商品の需要を減じる場合。逆に想定以上にワクチン・治療薬の開発が速やかに行われた場合は需要の増加要因に。

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

・米中対立激化による、新冷戦構造が発現しブロック経済圏が発生して貿易活動が鈍化する場合(場合によると武力衝突も)。

「能動的に」軍事を行う方針に舵を切った中国習近平政権が、台湾統一を目指して侵略する可能性は低くなくなった。

・次の最大の成長ドライバーとして期待される、インド経済が期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023~2024年頃。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速。

・米国の財政状況悪化、緩和規模拡大によるドル水準の低下リスク(ドル減価により、名目ドル建て資産価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油価格見通し】

原油価格は短期的には調整圧力が強まる展開を予想する。ファイザーのワクチン報道とOPECプラスの減産期間延長報道を受けて水準を切り上げてきたが、実際に需給環境が変わっている訳ではなく、期待先行の部分は否めないため年末年始を控えた利益確定の圧力が強まると予想されることから。

また、今回のOPEC・OPECプラス会合の段階的減産解除でももめたように、価格下落・価格上昇ともに生産国の抜け駆け増産を助長するため、そのことも価格を下押しすると予想する。

結局、OPEC諸国の足並みが混乱なく揃うのは、景気が回復して需要が順調な時のみ、といえる。実際、サウジアラビアはOPECプラスの議長ポストを退任の意向だ。

価格が上昇するには需給ファンダメンタルズの変化が必要で、ロックダウンが加速しやすく、ワクチン接種もまだ本格化していないことから価格上昇が肯定されるのは、恐らく3~4月以降になるのではないか。

中長期的には、報道通りのペースでワクチンが普及し、深刻な副作用が確認されなければ経済活動の回復とともに原油価格がわかりやすく上昇を始めるのは2021年後半になってから、と考えられる。

【見通しの固有リスク】

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。逆に価格低迷で歳入確保の増産が加速する場合、またはOPECプラスのプログラムの対象となっていない中東諸国の増産(価格下落要因)。

景気回復時の増産タイミングの見誤りによる、供給不足(価格上昇要因)。

・脱炭素の進捗、生活様式の変化による構造的な需要減少が加速した場合、

1.中東産油国の財政悪化によって情勢不安が顕在化、供給途絶リスクが高まる2.中東以外の産油国の生産者の破綻3.上流投資部門投資が減速し、インドなどの新興国需要顕在化時に供給が間に合わない場合4.価格面、数量面で予算を確保できない産油国が、OSPを大幅に引き上げる場合(第3次オイルショック)

などが価格上昇要因に。

・バイデン政権誕生で、シェールオイルのフラッキングが制限/禁止される場合、供給減少で価格上昇要因に(今のところ生産量の1割程度となる、国有地でのフラッキング禁止にトーンダウンしている)。

また、イランに対する制裁が緩和される場合、原油価格の下落要因に(ただし、米国内の反イラン感情の高まりで、直ちに制裁が緩和される可能性は低い)。

・ワクチン・治療薬が想定以上に早く準備でき、移動制限が急速に解除される場合(価格上昇要因)。

【石炭価格見通し】

石炭価格は堅調な推移になると考える。中国政府は国内炭の供給能力増強にシフトしているが、冬場で炭鉱が稼働し難いこと、港湾在庫の水準の低さに反映されるように、供給が十分ではないことが材料。

ただし、豪州との対立や、環境規制強化のの中で石炭需要は減速するとみられること、非常に矛盾するが国内生産を増加させていることから徐々に海上輸送炭価格の上値は重くなると予想される。

なお、気温低下の影響で主要3国(豪州・インドネシア・ロシア)の輸出は、過去5年平均を回復している。

10月の中国の石炭輸入は前月から大幅に減少。前年水準を▲46.6%下回る1,372万6,000トン(前月▲38.3%の1,867万6,000トン)と過去5年の最低水準となった。

中国は国内の石炭産業の強化と政治的に対立する豪州からの輸入制限で、国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、それが影響しているとみられる。

バルチック海運指数も過去5年平均程度で低迷しており、輸入の動きは鈍化。しかし一方で中国の港湾在庫は減少しているため、ピークシーズンということもあって堅調な推移となろう。

【見通しの固有リスク】

・世界的な環境重視型世界へのシフトを受けた、石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。短期的には価格の上昇要因。

・中国と豪州の対立、中国国内の生産能力増強に伴う、海上輸送炭需要の減少。

・北半球の夏場の猛暑(/冷夏)・冬場の厳冬(暖冬)。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが673,157枚(前週比 +34,912枚)ショートが150,518枚(▲6,916枚)ネットロングは522,639枚(+41,828枚)

Brentはロングが304,506枚(前週比+42,898枚)ショートが86,916枚(+5,918枚)ネットロングは217,590枚(+36,980枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は中国の景気先行指数を見るに数ヵ月は強含みやすいとみているが、さすがに投機の期末を控えた売り圧力の強まりで調整すると考える。

現在の価格上昇は実際に中国の需要の増加による需給タイト化によるものであり、環境規制強化に伴う価格上昇ではない。

例えば、中国の超高圧送電線網整備額は当初予定比+61%の1,811億人民元とする方針が今年の4月に示されており、電線向けの需要が銅、並びにアルミの需要を押し上げている。アルミは配電には利用されないが、超高圧電線には使用される。

このほか、バイデン政権の政策推進による環境重視の姿勢の強まりが、いわゆる「バイデン・トレード(化石燃料売り・省エネ金属買い、ただし金属生産の際には二酸化炭素が出ることは変わらない)」を加速させ、投機的な買い圧力を強めている。

短期的には顕在化する需要ではないが、省エネ金属の需要増加は「今後10年の大きなテーマ」となる可能性があるため、総じて中長期的には物色されやすい地合が続くとみる。

具体例を挙げると、軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなどが挙げられる。

中国が豪州の銅鉱石輸入を禁止する方針を打ち出したことで、精錬銅の需要が増加し、ベンチマークの銅価格が堅調に推移していることも地合を強くしよう。

しかし、中国の最大貿易相手経済圏である欧州でロックダウンの動きが再び見られること、季節的に南半球の供給が再開される可能性が高いこと、11月・12月のファンド決算を意識した売り圧力の強まりが価格を押し下げるため上値も重いと考える。

【見通しの固有リスク】

・高水準の投機筋買い越しポジションが急速に解消されたときの下落リスク。

・主に銅山を中心とする労使交渉長期化による供給減少が、2021年も継続する場合(コロナの影響もあって、2020年の鉱山生産は全体で184万1,000トン、コロナの影響で115万1,000トン減少する見込み)。

・ニューカレドニアのGoroプロジェクトはAntfagasutaが買収相手として急浮上しており、過剰な供給不足への懸念が後退していることは価格の下落要因に。ただし楽観はできず。

なお、同プロジェクトのニッケル生産は6万トン/年(シェア2.4%)。

・中国の環境規制強化やコロナの影響再発に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化によるコスト増加)。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・1月の米上院決定投票で民主党が過半数を確保し、「トリプルブルーリスク」が顕在化、脱炭素の動きが加速していわゆる省エネ金属の需要が増加する場合。

【投機筋のポジション動向】

・LME投機筋買い越し金額 前週比+10.5%の254億ドル(前週 230億ドル)・LME投機筋買い越し数量 前週比+9.9%の6,098.1千トン(前週 5,546.9千トン)

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は、中国の景気先行指標をみるに堅調な推移を続けると考える。貿易統計で確認できるように鉄鋼製品輸入が増加し、輸出が減少。中国の顕在需要が増加していることを示唆している。鉄鉱石在庫は積み上がっているが日数ベースでは在庫水準は低く、需給はタイトとみられるため。

11月の中国の鉄鋼業PMIを見ると、閾値の50は下回っているものの、新規受注の改善(44.9→47.2)、輸出向け新規受注の悪化(52.0→45.9)を考えると、明らかに「国内向けの新規受注」が増加していることを示唆する内容。

今後も中国政府のインフラ投資を柱とする経済対策が、来年7月の中国共産党結党100周年記念まで続くと予想されること、中国国内の鉄鋼原料在庫水準が低いことから(鉄鋼製品在庫の水準は増加)在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

ただし価格上昇が需要の減少を引き起こすレーショニングが意識されるほか、南米生産者の増産見通しを考えると上値も重いと考える。

中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、10月は193万トン(前月288万5,000トン)と、記録的な水準となった前月からは急減速した。しかし、国内生産も10月時点で9,220万トン(前月9,256万トン)と過去最高水準を記録した8月からは減速したものの、依然として高い水準を維持している。

中国の国内需要が旺盛であることを示しているが、中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲66万5,000トンの1,028万8,000万トン(過去5年平均 836万3,000トン)と、例年よりも在庫水準は高い。

しかし、国内の鉄鋼製品在庫の減少ペースは例年を上回っており、鉄鋼製品輸出も減少、輸入が増加している状況で、中国の鉄鋼製品需給はまだタイトな状態といえる。しばらくは鉄鋼製品の需要が鉄鉱石需要を牽引する状態が続くと見られる。

原料である鉄鉱石の10月の輸入は前年比+14.9%の1億674万トン(前月+9.2%の1億855万トン)と以前高水準であり、需要が旺盛であることをうかがわせる。

鉄鉱石港湾在庫は前週比▲130万トンの1億3,030万トン(過去5年平均1億2,135万トン)、在庫日数は▲0.3日の25.2日(過去5年平均 30.0日)と例年と比較して在庫日数の水準は低く、相応の輸入需要は持続するものと思料。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。しかし、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

一方、中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は急速に増加しているが、依然として過去5年の最低水準であることから価格の下支え要因となる。

【見通しの固有リスク】

・鉄鉱石価格の上昇がレーショニング(価格上昇による需要減少)を引き起こす場合。

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による、鉱山生産の減少リスク。

・カシミール地方を巡る中国との領有権争いが激化した場合、インドが中国に対して鉄鉱石輸出を制限する可能性(中国のFOBインデックスは上昇、その他の地域の鉄鉱石価格は低下)。

【投機筋のポジション動向】

---≪貴金属≫---

【貴金属価格見通し】

<<金>>

金は高値を維持すると考える。金融緩和の継続と、株価の上昇に伴う長期金利上昇圧力がせめぎ合う形で実質金利を現状水準に維持すると考えられることから。

なお、リスクオンはドル安で価格上昇、リスクオフで価格下落となる(詳しくは2020年10月12日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格(金基準価格)は長期金利の上昇で1,640ドルと、長期金利の低下による実質金利の低下が水準を押し上げている。そこからの乖離(リスク・プレミアム)は197ドルと前日比+1ドル上昇した。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替は名目金利の影響も受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

<<銀>>

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、76.5倍。過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当だが、足元、80倍程度で落ち着いている。

金は高値を維持する見通しだがバイデン大統領誕生見通しであり、太陽光発電向けに用いられる「バイデン銘柄」であることもあって、需要構造の変化が価格を下支え(金銀レシオは低下)するものと予想。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)する点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

<<PGM>>

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによる。足下は、各国の自動車セクターの回復期待が強まっており、工業需要回復「期待」が価格を押し上げている状況。

仮に脱炭素が進んで水素が用いられ、燃料電池が進むのであればプラチナの構造的な需要が増加するシナリオは、需要・価格面でのポジティブリスクシナリオ。

パラジウムは価格は景気の先行き楽観が強まっているが、足下のコロナの感染拡大がこれを相殺するため、現状水準でのもみ合いを予想。

ETF残高とパラジウム価格の連動性が高まっており(管理在庫増加→価格上昇)、一時の、ETF管理在庫減少→価格上昇、のメカニズムから変化してきている。

在庫取り崩し→価格上昇は実際に需給がタイトで、現物確保のためにETFを取り崩さなければならなかったからだが、現在はこれと逆のことが発生している訳で、足元、パラジウムの需給は緩和していると見られる。今後はETFの動向に注目。

11月の米自動車販売は年率1,555万台(市場予想 1,610万台、前月 1,621万台)と減速した。長期金利の上昇が影響したと見られる。

中国の10月の自動車販売は中国自動車工業協会の速報で前年比+12.6%の257万3,000台(前月+13.0%の256万5,201台)。

自動車販売は回復しているが、不要不急の消費であるため中国を除いては本格的な回復にはまだ時間がかかる見込み。

【見通しの固有リスク】

・世界的な成長力の低下に伴い、各国の財政状況が悪化、地政学的リスクが顕在化する場合(中東・北アフリカのリスク顕在化の可能性は低くない)。リスク・プレミアム上昇を通じて貴金属価格の上昇要因に。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

環境重視型社会へのシフトはパラジウム需要を増加させるが、さらに加速して「水素社会」まで到達すると、燃料電池車需要が増加して構造的にプラチナ価格の上昇要因となる可能性。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが320,324枚(前週比 ▲9,374枚)、ショートが76,422枚(▲2,006枚)、ネットロングは243,902枚(▲7,368枚)、銀が74,771枚(▲861枚)、ショートが29,091枚(▲927枚)、ネットロングは45,680枚(+66枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが30,036枚(前週比 +541枚)ショートが11,271枚(▲2,052枚)、ネットロングは18,765枚(+2,593枚)

パラジウムが5,718枚(▲130枚)、ショートが2,691枚(▲94枚)ネットロングは3,027枚(▲36枚)

---≪農産品≫---

【穀物価格見通し】

穀物価格はトウモロコシ・大豆は期末を控えた売りでいったん調整すると考える。

しかし、ラニーニャ現象の発生によって、足下南米の生産状況悪化が意識されていること、中国向けの輸出が中国側の事情で増加すると見られることが価格を下支えすると予想。

小麦はさほど投機の買いポジションが積み上がっている訳ではないが、各地で生産見通しが引き上げられており、やや軟調に推移。

バッタ被害はLocust Watchでは、エチオピア、イエメン、ケニア、サウジアラビアの一部で深刻な状態が続いている。

西部に広がっていたバッタの固体(群棲相を形成していない)はチャドとモーリタニアで拡大しており、影響拡大への懸念がやや強まっている。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/201101forecast.jpg

やや懸念されるのが、サイクロン「Geti」がソマリアを通過すること。これにより水分が土壌に供給され、植物も生長することから越冬するバッタが増加するとみられる。来年のリスクは小さくなくなっている。
http://www.fao.org/ag/locusts/common/ecg/75/en/20112306gati.jpg

【見通しの固有リスク】

・ラニーニャ現象の発生による穀物供給減少リスクの顕在化。害虫の発生、生産地の土壌破壊など(すでに一部顕在化)。

・環境重視型社会へのシフトにより、燃料向け穀物需要が増加する場合(価格の上昇要因)。現在はそれほどの数量でもない、バイオディーゼル向けの大豆需要増加など。

・新型コロナウイルスの影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

【米農務省需給報告データ】

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・11月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 175.8Bu/エーカー(177.87、178.4)大豆 50.7(51.6、51.9)小麦 49.7Bu/エーカー(前月 49.7)

・11月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 145億700万Bu(146億7,607万Bu、147億2,200万Bu)大豆 41億7,000万Bu(42億4,822万Bu、42億6,800万Bu)小麦 18億2,600万Bu(前月18億2,600万Bu)

・11月米需給報告輸出見通し(実績/前月)トウモロコシ 26億5,000万Bu(23億2,500万Bu)大豆 22億Bu(22億Bu)小麦 9億7,500万Bu(9億7,500万Bu)

・11月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 17億200万Bu(20億4,696万Bu、21億6,700万Bu)大豆 1億9,000万Bu(2億4,389万Bu、2億9,000万Bu)小麦 8億7,700万Bu(8億8,244万Bu、8億8,300万Bu)

・9月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 19億億9,500万Bu(22億6,554万Bu、52億2,400万Bu)大豆 5億2,300万Bu(5億7,838万Bu、13億8,600万Bu)小麦 21億5,900万Bu(22億4,035万Bu、10億4,400万Bu)

【投機筋のポジション動向】

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが573,646枚(前週比 +37,760枚)、ショートが122,307枚(▲2,079枚)ネットロングは451,339枚(+39,839枚)

大豆はロングが323,110枚(+2,710枚)、ショートが41,380枚(▲2,677枚)ネットロングは281,730枚(+5,387枚)

小麦はロングが128,060枚(+1,053枚)、ショートが96,668枚(▲11,918枚)ネットロングは31,392枚(+12,971枚)

◆主要ニュース


・11月日本サービス業PMI改定 47.8(速報比+1.1、47.7)、コンポジット 48.1(+1.1、48.0)

・11月中国財新サービス業PMI 57.8(前月56.8)、コンポジット 57.5(55.7)

・11月インドサービス業PMI 53.7(前月54.1)、コンポジット 56.3(58.0)

・11月独サービス業改定 46.0(速報比▲0.2、49.5)、コンポジット 51.7(▲0.3、55.0)

・11月ユーロ圏サービス業PMI改定 41.7(速報比+0.4、46.9)、コンポジット 45.3(+0.2、50.0)

・10月ユーロ圏小売売上高 前月比+1.5%(前月▲1.7%)前年比+4.3%(+2.5%)

・米週間新規失業保険申請件数 712千件(前週787千件)
 失業保険継続受給者数 5,520千人(6,089千人)

・11月米チャレンジャー社解雇者数 前年比 +45.4%(前月+60.4%)

・11月米サービス業PMI改定 58.4(速報比+0.7、56.9)、コンポジット 58.6(+0.7、56.3)

・11月米ISM非製造業景況指数 55.9(前月56.6)、新規受注 57.2(61.2)
 受注残 50.7(54.4)、在庫増減 49.3(53.1)
 在庫景況感 49.9(51.1)、雇用 51.5(50.1)

・FRB理事候補、ウォーラー氏を上院が承認。

・米ファイザー、コロナウイルスのワクチンの今年の出荷量が当初計画の半分に留まる見通し(ダウジョーンズ)。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE天然ガス稼働在庫 3,940BCF(前週比▲1BCF)
 東部 934BCF( 変わらずBCF)
 中西部 1,122BCF(▲11BCF)
 山間部 240BCF(▲2BCF)
 太平洋地区318BCF(▲2BCF)
 南中央 1,326BCF(+14BCF)

・OPECプラスは段階的な減産幅の縮小で合意。1月から50万バレルの増産を開始。

【メタル】
・Vale、2020年の鉄鉱石生産は3億1,000万トン~3億3,000万トンの下限になる見通し。2021年のガイダンスは3億1,500万トン~3億3,500万トン。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CBT大豆油 ( 穀物 )/ +3.23%/ +12.15%
2.ニューキャッスル炭 ( エネルギー )/ +3.01%/ +8.64%
3.TCM原油 ( エネルギー )/ +2.36%/ ▲29.92%
4.NYM灯油 ( エネルギー )/ +1.98%/ ▲31.31%
5.NYM RBOB ( エネルギー )/ +1.76%/ ▲25.69%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲9.82%/ +14.53%
65.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ ▲5.55%/ +32.60%
64.パラジウム ( 貴金属 )/ ▲3.82%/ +19.21%
63.LMEアルミ 3M ( ベースメタル )/ ▲2.23%/ +11.76%
62.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲1.86%/ +18.27%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :29,969.52(+85.73)
S&P500 :3,666.72(▲2.29)
日経平均株価 :26,809.37(+8.39)
ドル円 :103.84(▲0.58)
ユーロ円 :126.10(▲0.40)
米10年債 :0.91(▲0.03)
中国10年債利回り :3.30(▲0.01)
日本10年債利回り :0.03(±0.0)
独10年債利回り :▲0.56(▲0.04)
ビットコイン :19,462.14(+305.47)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :31.98(▲0.46)
エネルギー :41.67(▲0.44)
ベースメタル :18.31(▲0.03)
貴金属 :30.38(▲2.17)
穀物 :20.27(▲0.01)
その他農畜産品 :38.46(▲0.36)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :41.61(▲1.44)
Brent :37.23(▲0.43)
米天然ガス :55.06(▲1.52)
米ガソリン :40.13(▲0.59)
ICEガスオイル :36.46(▲0.14)
LME銅 :21.31(+0.01)
LMEアルミニウム :14.92(+1.12)
金 :17.31(▲0.5)
プラチナ :28.95(▲0.8)
トウモロコシ :21.76(▲0.1)
大豆 :17.31(▲0.5)

【エネルギー】
WTI :45.64(+0.36)
Brent :48.71(+0.46)
Oman :48.51(+0.27)
米ガソリン :126.17(+2.18)
米灯油 :139.33(+2.71)
ICEガスオイル :396.50(+6.00)
米天然ガス :2.51(▲0.27)
英天然ガス :41.20(▲2.42)

【貴金属】
金 :1841.08(+9.80)
銀 :24.07(▲0.04)
プラチナ :1033.10(+16.67)
パラジウム :2319.47(▲92.16)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :7,682(+59:3C)
亜鉛 :2,768(+23:21C)
鉛 :2,058(+12:11.5C)
アルミニウム :2,040(▲23:11.5C)
ニッケル :15,996(+90:59C)
錫 :18,831(▲49:19B)
コバルト :32,014(▲6)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :7658.50(▲16.50)
亜鉛 :2758.00(+8.50)
鉛 :2033.00(▲19.00)
アルミニウム :2015.00(▲46.00)
ニッケル :15980.00(+10.00)
錫 :18925.00(+120.00)
バルチック海運指数 :1,201.00(▲10.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :135.45(+2.08)
SGX鉄鉱石 :135.63(+1.29)
NYMEX鉄鉱石 :135.66(+1.10)
NYMEX豪州原料炭スワップ先物 :108(±0.0)
大連原料炭先物 :239.04(+2.18)
上海鉄筋直近限月 :4,258(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,895(▲19)
米鉄スクラップ :377(+3.00)

【農産物】
大豆 :1168.25(+15.25)
シカゴ大豆ミール :392.80(+3.30)
シカゴ大豆油 :38.68(+1.21)
マレーシア パーム油 :3504.00(+25.00)
シカゴ とうもろこし :422.50(+3.50)
シカゴ小麦 :571.75(▲6.25)
シンガポールゴム :258.60(+1.60)
上海ゴム :15350.00(▲135.00)
砂糖 :14.71(+0.11)
アラビカ :117.65(+0.80)
ロブスタ :1346.00(+3.00)
綿花 :69.42(▲0.57)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :66.03(▲0.33)
シカゴ生牛 :109.60(▲1.10)
シカゴ飼育牛 :139.80(▲2.00)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。