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欧州コロナ感染拡大と米統計改善で高安まちまち
  • MRA商品市場レポート

2020年10月16日 第1839号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「欧州コロナ感染拡大と米統計改善で高安まちまち」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:下落後上昇。コロナ問題とリビア増産で下落したが、米石油統計を受けて水準を切り上げた。

本日はコロナ・リビア増産・米追加対策見送りが価格を下押しへ。

◆非鉄金属:下落後上昇。欧州でのコロナ感染拡大を受けたドル高進行と、米統計の改善・生産国の供給不安で。

中国に減速がない中で需給ファンダメンタルズはタイトだが、為替がリスク回避のドル高に振れやすいため、週末ということもあって本日は下落か。

◆鉄鋼・鉄鋼原料:下落。港湾在庫の絶対水準の切り上がりと、鉄鉱石価格の高さからいわゆるレーショニングが発生しており、軟調。

在庫の絶対水準の増加が意識されており、本日も軟調推移を予想。

◆貴金属:ドル高や実質金利の上昇はあったが、もみ合った結果前日比小幅高で引けた。リスク・プレミアムが上昇しているため欧州情勢の不透明感を市場が若干織り込んだと見られる。

説明力が上昇している為替動向に左右される展開継続。ただ、米追加経済対策期待後退によるリスクオフ(ドル高)、欧州コロナ拡大によるユーロ安(ドル高)と、ドル高要因が多いため軟調な推移か。

◆穀物:生産下振れ懸念と中国の輸入増加、米石油統計を受けて堅調。

需給タイト化観測が急速に高まっており、高値圏維持

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は高安まちまちとなり、どのセクターが強い・弱いといった明確な傾向は見られなかった。欧州でのコロナウイルスの感染再拡大によるリスクオフ、英国のEU離脱を巡る混乱、米統計の大幅な改善、といった強弱材料が混在する中で、材料をこなしきれなかったためと考えられる。

昨日最も価格が上昇したのは米国の天然ガス。米国の天然ガス在庫の総量は過去5年水準を上回っているが、倉庫への流入量が市夜を下回ったことで、供給への懸念が強まったため。

また、ここにきて米国の在庫水準見通しが引き下げられた穀物に広く買戻しが入る流れとなっている。ラニーニャ現象発生のリスクは昨年後半から継続して主張しているが、徐々に市場もそれを意識し始めている。

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【本日の見通し総括】

本日も政治要因を受けて神経質な推移が継続すると予想する。英国のEU離脱を巡る状況は混迷を極めている。

しかし、何ら進捗がなくこのままだとハードブレグジットとなる。その場合、ただでさえコロナウイルスの感染が拡大していることもあり、欧州地区への景気に深刻な影響を与える可能性は低くない(今までと同様、プロレスのように年末までに何らかの合意に至る、というシナリオもまだ捨てきれないが)。

米国の追加経済対策は必ず実施されるが、恐らく大統領選が終了するまでは実施されないと見ている。さらに、バイデン候補とウクライナの疑惑をトランプ陣営が取り上げており、大統領選は本当に泥仕合の様相を呈している。

政治的な混乱は市場のリスクオン・オフ姿勢を加速させるため、商品相場は方向性が出難く乱高下すると考える。ただ、全体を俯瞰すると足元、それほど景気にプラスな話も多くなく、実際に需給ファンダメンタルズがタイトな鉱物資源を除けば、リスク資産価格には下押し圧力が掛かりやすい地合いにあるといえる。

本日予定されている統計では、米小売売上高に注目している。市場予想は前月比プラスだが、除く自動車ではプラス幅が縮小する見込み。影響は限定されるとみる。

小売売上高 前月比+0.8%(前月+0.6%)除く自動車 +0.4%(+0.7%)除く自動車・ガソリン +0.5%(+0.7%)除く自動車・建材 +0.3%(▲0.1%)

【昨日のトピックス】

昨日発表された統計は、特に米国の製造業関連統計が良好で、先行指標であるISM製造業指数の目安となるフィラデルフィア連銀製造業景況指数は、32.3(市場予想14.8、前月15.0)と大幅な改善となった。

主に新規受注の改善が全体の指数の改善をけん引している。また6ヵ月先の景況観についても62.7(前月56.6)と大幅な改善を見込む内容となった。

しかし、コロナウイルスの感染再拡大が始まっている欧州では、EU離脱で混乱を極める英国が、他の家族との屋内での交流を週末から実施すると発表。フランスは昨日体が非常事態を宣言し、夜間の外出禁止が決定された。

ドイツでは1日あたりの新型コロナウイルスの感染者数が過去最高となる7,173人を記録、イタリアやチェコも感染者数が過去最高となり外出を抑制する動きが強まると予想され、国を問わず欧州では感染者が拡大している状況。事態は想像以上に深刻である。

中国(の数字をそのまま鵜呑みにはできないが)では比較的コロナがコントロールされている状態にあり、シンガポールと香港は相互に行き来する住民を対象に、新型コロナウイルス対策の隔離措置を免除する「トラベルバブル」で基本合意するなど、欧米の状況との乖離が顕著である。

日本も感染者数は管理可能な水準だ(医療関係者が対応ノウハウを得たため、混乱なく対応が可能になったの様子)。

しかし、逆に言えばアジアだけがまだ特殊な状態にあるだけで、これから冬にかけて、大規模ではないにせよ再びロックダウンが始まる可能性が高まっていると考えたほうが良い。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標は回復基調にあるものの、米中以外はまだ低迷した状態。

製造業・サービス業とも経済活動が回復しているが、コロナ以降の生活様式の変化でロックダウン解除や政策を織り込んだ回復はそろそろ限界。今後、感染ピークになる可能性がある冬場に向けて一時的に調整する可能性。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通し引き上げ(▲4.9→▲4.4%)、2021年に関しては+5.4%→+5.2%と下方修正した。

2020年の引き上げは北半球の夏場の立直りが予想を上回ったこと、2021年の引き下げは2020年の発射台が上がったことが背景。

しかし、コロナウイルスの影響は長期化すると予想されており、今後の世界経済の成長ペースが3.5%に戻るには予想以上に時間がかかる公算。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

今後は、財政出動を促す形になるが、意思決定の速度は中国>米国>日本>欧州であり、欧州・日本は減速感が強まる可能性。また、財政拡大が世界に広がれば体力のない新興国でデフォルトが発生する可能性も。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスが冬場に再拡大し、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスク。

同時にワクチン開発が進捗して経済活動の回復が加速することも、景気循環系商品にとってはアップサイドのリスクに。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現(最早顕在化しておりメインシナリオではあるが)。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い(むしろもうメインシナリオと考えるべきか)。

・米大統領選挙を巡る混乱。

反中に転じたバイデン氏が今のところ有利に選挙戦を進めているとみられるが、バイデン勝利の場合、より他国と連携して中国包囲網を強めるとみられるため、貿易量の減少を通じて景気循環系商品価格の下落要因に。

また、バイデン勝利の場合増税への懸念が強まるため株価にはマイナスと判断されており、この場合、株下落に伴う逆資産効果で商品価格の下押し要因となる可能性。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(トルコと欧州の関係悪化、ハードブレグジットなど)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・年末から来年の冬場にかけて再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

・コロナウイルスのワクチンが年内に開発完了、欧米が集団免疫を獲得しコロナ禍が想定よりも早く収束した場合(多くの景気循環銘柄価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格は下落後上昇した。欧州でコロナウイルスの感染拡大が報告されたことや、リビアの生産増加といった材料で下落したが、米石油統計が予想を上回る強気な内容だったことが価格を押し上げた。

OPECプラスの合同技術委員会(JTC)を開催したが、Q420の需給緩和への対応で苦慮している見込み。

昨日発表された米石油統計は、市場予想以上に強気な内容だった。製品出荷も低迷していたディスティレート・ケロシンの出荷が回復した。

原油は生産が▲0.5MBDと減少、輸入も▲0.4MBDとなり、稼働率も▲2.0%の低下となり、在庫は▲3.8MBと市場予想を上回る減少となった。ハリケーン「デルタ」の影響が大きかったと見られる。

しかし、WTI価格に与える影響が大きいクッシング在庫は+2.9MB(前週+0.47MB)と大幅な増加となったため、WTIにはテクニカルに下押し圧力が強まる形となった。

ガソリンは生産が減少(▲0.3MBD)、輸入も減少(▲0.5MBD)、需要は横ばい、輸出が減少(▲0.2MBD)したが在庫は▲1.6MBの減少となった。

ディスティレートは生産がやはり減少(▲0.3MBD)、輸入も減少(▲0.1MBD)、更に出荷(+0.3MBD)、輸出(+0.3MBD)と増加したため、全体では▲7.2MBの在庫減少となった。

製品出荷は増加しているが、ハリケーン接近前の駆け込み的な出荷増加の可能性もあるためこの統計を素直に評価することは難しい。しかし、数字の上では強気な統計だったといえる。

【原油価格見通し】

原油価格はもみ合うものと考える。米国の追加経済対策を巡る不透明感やコロナの欧州での感染再拡大受けた需要への懸念、OPECの定期的な増産見送りの可能性が高いこと、といった強弱材料がせめぎあうため。

しばらくは、チャートを用いたテクニカルな取引が価格動向を左右すると考えられるが、Brent・WTIとも50日移動平均線のレジスタンスラインを上抜けしたため、テクニカルに上値を試しやすい地合いにある。しかし、目先不確定要素が多くリスクとしては下向き。

目先のテーマは大統領選挙の行方と、英国ブレグジットを巡る混乱などの政治要因だが、これらはどのように転ぶかわからないため、明らかになるまでは基本的には「リスクオフ」の材料とされやすい。

供給面では、需要減速、価格下落局面でよく見られることであるが、OPECの抜け駆けが続き、結束が揺らぐリスクである。この場合、原油価格は大きく下落することになる。

15日のOPECプラス合同技術会合では、Q420の需給が想定以上に緩和する見通しであることへの対応が議論された。合同閣僚会合は29日開催。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(32ドル~60ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後(ワクチン・治療薬の開発完了後)の供給」である。ただ、現在のワクチン・治療薬の開発ペースを見るにこれが議論されるのはまだ先のことになる。

この時、減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

主要な石油消費国となった中国の9月の原油輸入は前年比+17.6%の4,848万トン(前月+12.6%の4,748万トン)と大幅な増加が続いている。中国は基本的に価格に敏く、安いと考えると輸入を増やして在庫を積み上げる。恐らく戦略備蓄に回されていると考えられるが詳細は不明。

天然ガス輸入も+5.5%の866万トン(+12.2%の936万トン)と高水準を維持している。国内経済活動の回復はあるが、やはり石炭からガスへのシフトが起きているものと考えられる。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は小幅に下落した。最大輸入国である中国が国内生産にシフトする中、海上輸送炭の需給は緩和した状態が続いている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は再び低水準での推移になると考える。中国の石炭港湾在庫の水準は高くないものの、国内生産にシフトしており、更にコロナや華為技術問題で対立する豪州からの輸入を手控える可能性があること、天然ガスへのシフト、この数年定番となった冬場の石炭輸入の減少の流れを受けて。

しかしそうはいっても冬場のピークシーズン需要は増加するため、底堅い推移になると予想する。

9月の中国の石炭輸入は前月から減少。前年水準を▲38.3%下回る1,867万6,000トン(前月▲37.3%の2,066万トン)と過去5年平均水準も下回った。

中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っているが、国内の需給はタイトと見られ、国内炭と海外炭の値動きには乖離が見られている。

実際、中国向けの大手輸出国であるインドネシアと豪州の輸出は減少しており、バルチック海運指数も低下している。この傾向は今後も続きそうだ。

なお、中国の港湾在庫は再び減少しており、足元、過去5年平均を下回っている。国内の需給はタイト化しているとみられる。

低い水準で安定していた石炭のボラティリティは40%を上回っている。VaRの概念では、現在の価格を60ドル程度とすれば、7割の確率で1年後の価格が±24ドル変動する状態であり、価格の変動リスクは増している。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲15%程度の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-8月の中国工業生産は前年比+0.4%(1-7月期▲0.4%)、月次ベースでは前年比+5.6%(前月+4.8%)と回復が加速した(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-8月の中国小売売上高は前年比▲8.6%の23兆8,029億元(1-7月期▲9.9%の20兆4,459億元)、月次ベースでは前年比+0.5%の3兆3,571億元(前月▲1.1%の3兆2,203億元)とプラスに転じた。

中国の個人消費が回復基調にあるのは事実だが、まだ年初来の累計はマイナスであり、欧州で再度ロックダウンの懸念が強まっているため輸出需要が減速する可能性があることは価格の下落要因となる可能性(フロー需要の回復鈍化=価格の上昇を抑制)

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・UAEとイスラエルが国交正常化に向けて舵を切り、バーレーンもこれに続いた。中東の力学に変化が起きる可能性がある。

今後、オマーンやサウジアラビアなどがこれに追随するかどうかはまた不透明であり、メディアが取り上げる「イラン包囲網」が広がる可能性は高いとは言えない。

しかし、この動きが加速すれば、同地域での親イラン国との対立を強める可能性。地政学的な不安定さは、巡り巡って供給懸念を引き起こし、価格の押し上げ要因に。

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

・原油価格下落を受けてOPECプラスの結束が揺らぐ場合。抜け駆け増産の加速で大幅な下落となるリスクも。

<<投機・投資要因>>・WTIは先週から転じてロングが増加、ショートが減少した。経済対策期待で強気のポジション取りに。

一方、Brentはロングが減少、ショートが増加。コロナウイルスの感染再拡大に伴う景気への懸念に加え、OPECプラスの増産観測(減産未遵守)が意識されたと考えられる。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが657,787枚(前週比 +9,165枚)ショートが186,251枚(▲460枚)ネットロングは471,536枚(+9,625枚)

Brentはロングが216,334枚(前週比▲8,061枚)ショートが133,757枚(+6,584枚)ネットロングは82,577枚(▲14,645枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属は下落後上昇し、前日比プラスで引けた。生産国側のストライキの影響が供給懸念を強めていること、昨晩発表された米国の製造業関連統計が市場予想を上回る改善となったことが材料となった。

最大消費国である中国の経済活動が活性化していること、コロナ禍の影響緩和で増産が期待されていたチリの鉱山でのストライキによる供給途絶観測が強まっており、ベンチマークの銅需給がタイト化する可能性が高いことから、少々のリスクオフでは価格が大きく調整し難くなっているのは事実。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格はもみ合うものと考える。中国の内需は減速への懸念はあるものの統計ではまだ好調を維持していること、生産国の供給不安が価格を押し上げるものの、米欧の政治的な不安定さや、各国のコロナワクチン開発の遅れなどのリスク要因が上値を抑えるため。

また、このような局面だと積み上がっている投機の買いポジションには利益確定の売りが発生しやすい。

Q420は政治的なイベント(並びにリスク)が多く、リスク回避姿勢も根強いこと、南半球も夏場に入って鉱山生産の回復が期待されることから、価格のリスクは下向きとみている。ただ今のところ顕在化するには至っていない。

北半球の夏場の大規模ロックダウンは回避され、中国の公的需要に支えられた需要増加(今回の公共投資は5G分野やEVステーション設置などを予算を確保して行うため、規模はさておき「堅い」需要)が価格を支えるとしてきたが、すでに北半球は秋であり、南半球はコロナの影響が緩和すると期待される初夏だ。

なお、中国南部での大規模洪水は気象庁の異常気象モニターなどでは再び南部で多雨が観測されている。https://www.data.jma.go.jp/gmd/cpd/monitor/weekly/

現地のニュースを確認するとまだ洪水は続いている、とされておりなんとも言えない。洪水は中国の建設活動の停滞を通じて需要を下押しするが、洪水終息後は復興需要が見込めるため、価格の上昇要因になると整理できる。

なお、米中対立は選挙結果によらず、悪化すると予想される。トランプ大統領は米中デカップリングを公言してはばからず、野党民主党も手段の違いはあれどベクトルは同じだ。米中デカップリングは政権が変わろうとも、メインシナリオと考えるべきである。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・9月の中国製造業PMIは51.5(前月51.0)と改善した。生産が回復し、新規受注も国内外ともに回復(新規受注 52.0→52.8、輸出新規受注 49.1→50.8)し、製造業を巡る環境が改善していることを伺わせる内容だった。

また、景況感を規模別に見てみても、悪化が続いていた中小企業の景況感が50を回復しており、想定以上に中国の製造業の状況は改善しているようだ。

ただし、完成品・原材料とも在庫が増加しており、新規受注/在庫レシオは低下しており中国国内の工業品需給は緩和し始めている可能性が高い。

・9月中国銅線生産者 98.7%(前月97.0%、過去4年平均 89.2%) 銅棒生産者 71.6%(72.7%、76.8%) 銅板生産者 69.4%(69.3%、72.5%) 銅管生産者 75.6%(77.9%、75.6%)

・8月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 90.9%(前月85.8%、過去5年平均 91.4%) 中規模事業者 85.2%(72.9%、74.8%) 小規模事業者 75.7%(72.0%、56.4%)

・1-8月の中国工業生産は前年比+0.4%(1-7月期▲0.4%)、月次ベースでは前年比+5.6%(前月+4.8%)と回復が加速した(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-8月の中国固定資産投資には、年初来で前年比▲0.3%の37兆8,834億元(1-7月期▲1.6%の32兆9,214億元)と前年比プラスまでもう少しのところまできた。

すそ野の広い不動産開発も前年比+4.6%の8兆8,454億元(1-7月期+3.4%の7兆5,325億元)と回復基調が加速している(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

やや懸念すべきは、公的セクターの伸びが+3.2%(+3.8%)と伸びが減速、民間部門は回復しているが依然として▲2.8%(▲5.7%)と前年比マイナスである点。中国の需要の回復が公的需要にけん引されたものであることはほぼ間違いがないため、これまでの回復ペースにやや陰りが出た可能性がある。

・9月の中国の銅地金輸入は前年比+62.3%の72万2,450トン、(前月+65.5%の66万8,486トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+35.2%の213万8,000トン(前月▲12.6%の158万7,000トン)と、地金・鉱石ともに輸入が大幅な増加となった。

しばらく停滞していたが、中国は年後半に電線向け投資が増加することもあり輸入が加速したと見られる。

銅精鉱のTCは10月13日段階で51.5ドルと2014年以降の最低水準になっており、鉱石市場の需給はタイト化した状態が続いているが、需要自体が旺盛であり鉱石輸入が再開したものと考えられる。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。また、環境に配慮したメタル使用の義務化などが欧州で進む場合などのコストアップ(グリーン・メタルの義務化)。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドと周辺地区との対立や、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・10月9日付のLME投機筋ポジションは鉛を除いてみな強気なポジション取りとなった。中国の景気への楽観から投機のロングが大きく積み上がり、鉛とニッケル以外のショートポジションが減少している。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は161.3億ドル(前週140.8億ドル)と、買い越し幅をサイド拡大した。買い越し幅の増加率は+14.5%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで3,819千トン(3,437千トン)と買い越し幅を拡大した。買い越し枚数の増加率は+11.1%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向は海上輸送鉄鉱石スワップは下落、原料炭スワップ先物は下落、鉄鋼製品先物価格は下落した。

港湾在庫の絶対水準の上昇や、製造業PMIの悪化による生産活動の減速観測が引き続き価格を下押ししている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏で推移しつつも、水準を切り下げる展開を予想する。

鉄鉱石の在庫日数水準が低いことが価格を高止まりさせるが、貿易統計で確認できるように鉄鉱石輸入は堅調であり、在庫の絶対水準が増加していること、価格上昇でレーショニングがおきており、鉄鋼製品需要がやや鈍化すると見られていることが背景。

一方で、中国政府のインフラ投資が今後も継続する見込みであり、中国国内の鉄鋼原料在庫水準が低いことから在庫積み増し需要も継続する可能性が高く、基本は底堅い推移となる。

中国南部の増水は継続しているようで、鉄鋼製品需要を減じること(終息後は復興需要で価格上昇要因となるが)、急上昇していたバルチック海運指数は減速しており、鉄鉱石の調達が減速する可能性を示唆している。ブラジルは鉱山生産を再開の見通しであるため、中国の需要面の影響による可能性がある。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。但し、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから、海上輸送原料炭価格の上値も重い。

実際、中国政府は政治的な対立もあって豪州炭の輸入を停止するとの報道もあり、今後、海上輸送原料炭価格には下押し圧力が掛かりやすくなってきた。

原料炭の先物期間構造も期近が再びコンタンゴとなっており、需給は緩和し始めている。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は急速に減少しており、過去5年の最低水準で推移している。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・9月の中国鉄鋼業PMIは43.9と前月の47.0から大幅に減速した。ピークシーズンの終了や、原材料価格の高騰がレーショニングを引き起こしたようだ。

しかし、降雨の悪影響が薄らぎ、自動車販売や不動産投資も好調であり、中国政府の公共投資需要などへの期待も強く見通しは強気の企業が多いようだ。

しかし冬場の暖房期に入ると発電向け需要が増加するため環境面から鉄鋼製品の増産には下押し圧力が掛かりやすく、新規受注在庫レシオも低下しており、鉄鋼製品・鉄鋼原料需給は緩和していることから鉄鉱石価格も下押しされよう。

・中国河北省の高炉稼働率は10月9日時点で77.0%(前週77.0%、過去5年平均83.0%)と横ばい。しかし、過去5年平均を下回った状態が続き、高炉の稼働率はやや低水準で安定している。

・1-8月の中国工業生産は前年比+0.4%(1-7月期▲0.4%)、月次ベースでは前年比+5.6%(前月+4.8%)と回復が加速した(フロー需要の回復=価格の上昇要因)。

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-8月の中国固定資産投資には、年初来で前年比▲0.3%の37兆8,834億元(1-7月期▲1.6%の32兆9,214億元)と前年比プラスまでもう少しのところまできた。

すそ野の広い不動産開発も前年比+4.6%の8兆8,454億元(1-7月期+3.4%の7兆5,325億元)と回復基調が加速している(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

やや懸念すべきは、公的セクターの伸びが+3.2%(+3.8%)と伸びが減速、民間部門は回復しているが依然として▲2.8%(▲5.7%)と前年比マイナスである点。中国の需要の回復が公的需要にけん引されたものであることはほぼ間違いがないため、これまでの回復ペースにやや陰りが出た可能性がある。

・中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、9月は288万5,000トン(前月224万トン)と記録的な水準をに加速した。国内生産も8月時点で9,485万トン(前月9,336万トン)と過去最高水準に達した。

このことは、中国の国内需要が引き続き、旺盛であることを示唆している。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲38.6万トンの1,500.3万トン(過去5年平均1,042.5万トン)となった。例年よりも在庫水準は高い。

・9月の中国の鉄鉱石・精鉱輸入量は、1億855万トン(前月1億36万トン)と加速。バルチック海運指数の上昇と平仄を取る形で増加している。中国の国内鉄鉱石在庫の水準が低いことから、引き続き輸入需要は旺盛と見られる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+235万トンの1億2,265万トン(過去5年平均1億1,841万トン)、在庫日数は+1.2日の23.9日(過去5年平均 28.1日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイトな状態が継続している。

9月の中国の石炭輸入は前月から減少。前年水準を▲38.3%下回る1,867万6,000トン(前月▲37.3%の2,066万トン)と過去5年平均水準も下回った。

中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っているが、国内の需給はタイトと見られ、国内炭と海外炭の値動きには乖離が見られている。

実際、中国向けの大手輸出国であるインドネシアと豪州の輸出は減少しておりこの傾向は今後も続きそうだ。

中国の主要な原料炭の輸入港である京唐の港湾在庫の水準は大幅に低下し、過去5年平均を下回っている。そのため輸入が回復したと考えられるが、国内生産の増加もあって前年比ではマイナスとなっているようだ。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は乱高下した結果、前日比プラスで引けた。ドル高進行や実質金利の上昇などのマイナス材料のほうが多かったが、リスク・プレミアムが上昇する形で価格が上昇しているため、欧州情勢不安などの何らかのリスクを織り込んだと見られる。

ただ、値幅としては狭く、もみ合ったものの結果的に前日比プラスで引けた、という程度、と整理するほうが適切かもしれない。

銀・プラチナ・パラジウムも小幅高となった。

【貴金属価格見通し】

金銀はもみ合うものと考える。足元、実質金利動向ではなく、欧州の政局、米国の大統領選挙を睨んだ政治要因を受けた為替動向に貴金属価格左右されているが、その政治の方向性が不透明であるため。

なお、リスクオンはドル安で価格上昇、リスクオフで価格下落となる(詳しくは2020年10月12日付のMRA's Eyeをご参照ください)。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスク・プレミアム)は262ドルと前日から+8ドル上昇している。

なお、金価格を実質金利要因と為替要因に分類した場合、為替要因はリスク・プレミアムのところに内包されると整理している(為替自体は名目金利の影響を受けるので、純粋に為替の要因のみ切り出すのが困難であることから)。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

米国の金融緩和が継続することは間違いがなく、名目金利が低い水準に抑制されることから金の「基準価格」は1,650ドル程度で推移し、金価格の発射台となる基準価格は切り上がっている。

FRBの政策が奏功すれば期待インフレ率の上昇が名目金利の上昇を上回ることになるため、実質金利低下を促し金価格にはプラスとなる。但しそれはまだ先になると考えられる。

金価格の実質金利に対する感応度は1bpあたり3.5ドル程度だったが、現在は6.3ドル。名目金利に対する感応度は9.5ドルまで上昇していたが現在は2.7ドルと低下している。このことは、「期待インフレ率」の価格への影響が増していることを示唆している。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、78.5倍。過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当だが、足元、80倍程度で落ち着いている。

金が高値を維持する可能性が高いため、再びバブル的に銀が物色される可能性は否定できない。しかしその場合でも、常に急落リスクは意識せざるを得ないだろう。

欧州危機・米国債格下げ危機があった2010年~2011年、銀価格は供給過剰にもかかわらずバブル状態となり、ハント兄弟事件以来の50ドルに迫った後、急速に価格を切り下げたときと程度は違うが展開が類似しているためである。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高い。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導されつつも、準通貨の位置付けではない銀と性質が似ていることも無視できない要素の1つである。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、自動車セクターの回復は緩やかなものにとどまる見通しであることから実需面は価格を下押ししやすい。

しかし、ETF残高とパラジウム価格の連動性が高まっており(管理在庫増加→価格上昇)、一時の、ETF管理在庫減少→価格上昇、のメカニズムから変化してきている。

在庫取り崩し→価格上昇は実際に需給がタイトで、現物確保のためにETFを取り崩さなければならなかったからだが、現在はこれと逆のことが発生している訳で、足元、パラジウムの需給は緩和していると見られる。今後はETFの動向に注目する必要があろう。

9月の米自動車販売は年率1,634万台(市場予想 1,570万台、前月 1,519万台)と、市場予想を上回る回復となった。ただし、コロナ以前の水準に自動車販売が戻るには相当の時間がかかる見込みであり、PGM価格の押し上げ効果は限定的なものとなろう。

中国の9月の自動車販売は中国自動車工業協会の速報で前年比+13.0%の256万6,000台(前月+11.7%の218万5,812台)。中国の自動車販売は着実に回復している。

自動車販売が政策のサポートもあって回復トレンドにあることは事実であり、PGM価格の上昇要因になると考える。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが320,922枚(前週比 +4,816枚)、ショートが72,335枚(▲112枚)、ネットロングは248,587枚(+4,928枚)、銀が75,358枚(+727枚)、ショートが34,101枚(+200枚)、ネットロングは41,257枚(+527枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが27,125枚(前週比 +71枚)ショートが18,530枚(+1,300枚)、ネットロングは8,595枚(▲1,229枚)

パラジウムが5,486枚(+582枚)、ショートが2,292枚(+26枚)ネットロングは3,194枚(+556枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は上昇。トウモロコシは中国が台風の影響や北部の干ばつの影響で生産が減少していることや、米石油統計でエタノール生産が増加したことが材料となった。

大豆は在庫水準の低下から買いが継続しており、昨日もトウモロコシの上昇に連れる形で上昇。

小麦はアルゼンチンの2020-2021年の収穫見通しが1,800万トンから1,700万トンにひきさげられたことが材料視されている

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は2020-2021年の在庫見通しが当初よりも低下したことや、中国の生産下振れ見通しを受けて上昇余地を試す展開になると考える。ただし輸送燃料需要の回復は不安定で、エタノール向け需要の先行きは不透明であり、上値も重い。

大豆は米需給報告で米大豆在庫の減少見通しが示されたことや、中国が米国からの輸入を増加させる方針を継続していることから上昇すると予想。

小麦も在庫の水準低下、南米や黒海周辺地区の生産下振れ観測、旺盛な輸出需要を背景に上昇余地を探る動きに。

バッタ被害はLocust Watchでは、エチオピア、イエメン、ケニア、サウジアラビアの一部でで深刻な状態が続いているが影響は低下している。今のところ大きな変化はない。

西部に広がっていたバッタの固体(群棲相を形成していない)はチャド程度で留まっており、今のところは被害が拡大する懸念は低下している。

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。

近年、食品価格に対して影響が大きいラニーニャ現象が発生していることもあり、年末~年明けにかけての穀物価格の見通しは強気。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・10月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 147億2,200万Bu(148億2,261万Bu、149億Bu)大豆 42億6,800万Bu(42億8,789万Bu、43億1,300万Bu)小麦 18億2,600万Bu(前月18億3,800万Bu)

・10月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 21億6,700万Bu(21億2,004万Bu、25億300万Bu)大豆 2億9,000万Bu(3億6,293万Bu、4億6,000万Bu)小麦 8億8,300万Bu(8億9,041万Bu、9億2,500万Bu)

・10月米需給報告単収見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 178.4Bu/エーカー177.86Bu/エーカー、178.5Bu/エーカー)大豆 51.9Bu/エーカー(51.7Bu/エーカー、51.9Bu/エーカー)小麦 49.7Bu/エーカー(前月50.1Bu/エーカー)

・9月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 19億億9,500万Bu(22億6,554万Bu、52億2,400万Bu)大豆 5億2,300万Bu(5億7,838万Bu、13億8,600万Bu)小麦 21億5,900万Bu(22億4,035万Bu、10億4,400万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが394,070枚(前週比 +27,171枚)、ショートが168,396枚(▲16,611枚)ネットロングは225,674枚(+43,782枚)

大豆はロングが310,432枚(+11,984枚)、ショートが53,149枚(▲5,427枚)ネットロングは257,283枚(+17,411枚)

小麦はロングが132,563枚(+10,424枚)、ショートが95,292枚(▲489枚)ネットロングは37,271枚(+10,913枚)

◆主要ニュース


・8月日本第3次産業活動指数 前月比+0.8%(前月+0.1%)

・9月中国消費者物価指数 前年比+1.7%(前月+2.4%)
 生産者物価指数 ▲2.1%(▲2.0%)

・9月インド貿易収支 ▲27憶2,000万ドルの赤字(前月▲67億7,000万ドルの赤字)
 輸出 前年比 +6.0%(▲12.7%)
 輸入 ▲19.6%(▲26.0%)

・10月ニューヨーク連銀製造業景況感指数 10.5 (前月17.0)
 新規受注 12.3(7.1)
 受注残 ▲6.6(▲9.4)
 在庫水準 ▲14.6(▲3.6)
 雇用者数 7.2(2.6)
 6ヵ月先景況指数 32.8(40.3)

・米週間新規失業保険申請件数 898千件(前週845千件)
 失業保険継続受給者数 10,018千人(11,183千人)

・9月米輸出物価指数 前月比+0.6%(+0.5%)、前年比▲1.8%(▲2.7%)
 輸入物価指数 +0.3%(+1.0%)、▲1.1%(▲1.4%)
 除原油 前月比+0.7%(+0.8%)

・10月フィラデルフィア連銀製造業景況感指数 32.3(前月15.0)
 新規受注 42.6(25.5)
 受注残 8.3(0.4)
 在庫水準 ▲2.5(▲10.8)
 雇用者数 12.7(15.7)
 6ヵ月先景況指数 62.7(56.6)

・ECBラガルド総裁、「ECB、すべての措置を必要に応じて調整する用意がある。」

・米政府、トランプ政権が発足して以来空席となっていた、チベット問題担当特別調査官を任命、早速これに対して中国は内政干渉と批判。

・英EU離脱交渉担当デービッド・フロスト氏、EU首脳が英国に対して更なる譲歩を要求したことに対して、「驚き・失望」。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE米石油統計 原油▲3.8MB(クッシング+2.9MB)
 ガソリン▲1.6MB
 ディスティレート▲7.2MB
 稼働率▲2.0

 原油・石油製品輸出 8,018KBD(前週比+129KBD)
 原油輸出 2,832KBD(▲115KBD)
 ガソリン輸出 761KBD(+55KBD)
 ディスティレート輸出 1,187KBD(+19KBD)
 レジデュアル輸出 130KBD(▲11KBD)
 プロパン・プロピレン輸出 1,229KBD(+110KBD)
 その他石油製品輸出 1,824KBD(+73KBD)

・DOE天然ガス稼働在庫 3,876BCF(前週比+45BCF)
 東部 908BCF(+15BCF)
 中西部 1,081BCF(+19BCF)
 山間部 241BCF(+5BCF)
 太平洋地区320BCF(+2BCF)
 南中央 1,326BCF(+4BCF)

・リビア最大のシャララ地区の生産再開で、生産量は50万バレルに達した可能性。

・OPECプラス、9月の減産順守率は102%。季節的に需要の増加が見込まれるQ420の回復が遅れている点についてJTCで協議。コロナの感染拡大があるものの、ワクチンができていないこと、リビアの生産が再開することは需給見通しを弱めている。

【メタル】
・チリ Lundin鉱山の生産は、▲5%減少した状態。

・BHP Billiton Escondida鉱山、ストライキを回避するため労使交渉の期間を延長。

・Citi、「今年の亜鉛の供給減少は100万トンを超え、これは中国の精錬所の生産増加を抑制する。亜鉛の原料需給はタイト。」

・Q320 Alcoa
 ボーキサイト生産 12.0百万トン(前期12.2百万トン、前年12.1百万トン)出荷 10.5百万トン(10.8百万トン、10.6百万トン)

アルミナ生産 3,435千トン(3,371千トン、3,380千トン)
第三者出荷 2,549千トン(2,415千トン、2,381千トン)

アルミニウム生産 559千トン(581千トン、530千トン)
出荷 767千トン(789千トン、708千トン)

CAPEX 74百万ドル(77百万ドル、前年87百万ドル)

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ +5.27%/ +26.77%
2.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ +3.82%/ +24.07%
3.CBT小麦 ( 穀物 )/ +3.60%/ +10.65%
4.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +2.96%/ +28.71%
5.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +1.83%/ +4.13%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ ▲10.90%/ ▲2.17%
65.欧州排出権 ( 排出権 )/ ▲3.07%/ +1.79%
64.インド・センセックス ( 株式 )/ ▲2.61%/ ▲3.70%
63.CME木材 ( その他農産品 )/ ▲2.04%/ +32.67%
62.ICEココア ( その他農産品 )/ ▲2.01%/ ▲7.76%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :28,494.20(▲19.80)
S&P500 :3,483.34(▲5.33)
日経平均株価 :23,507.23(▲119.50)
ドル円 :105.45(+0.28)
ユーロ円 :123.46(▲0.07)
米10年債 :0.73(+0.01)
中国10年債利回り :3.22(+0.01)
日本10年債利回り :0.02(▲0.01)
独10年債利回り :▲0.61(▲0.03)
ビットコイン :11,545.26(+151.90)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :32.38(+0.48)
エネルギー :55.38(▲0.81)
ベースメタル :19.96(▲0.25)
貴金属 :34.83(▲0.8)
穀物 :25.92(+0.39)
その他農畜産品 :28.28(+1.83)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :44.60(▲0.55)
Brent :38.34(▲1.01)
米天然ガス :142.80(▲0.06)
米ガソリン :45.04(▲1.05)
ICEガスオイル :39.42(▲2.93)
LME銅 :20.38(+0.01)
LMEアルミニウム :17.56(▲0.17)
金 :22.17(▲0.62)
プラチナ :36.63(▲1.46)
トウモロコシ :22.32(+0.54)
大豆 :22.17(▲0.62)

【エネルギー】
WTI :40.96(▲0.08)
Brent :43.16(▲0.16)
Oman :42.55(▲0.02)
米ガソリン :118.00(▲1.71)
米灯油 :118.87(▲0.38)
ICEガスオイル :341.50(▲1.50)
米天然ガス :2.78(+0.14)
英天然ガス :39.99(+1.15)

【貴金属】
金 :1908.71(+7.19)
銀 :24.30(+0.04)
プラチナ :866.57(+4.65)
パラジウム :2361.93(+8.95)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,698(▲18:14.5C)
亜鉛 :2,414(▲3:16.5C)
鉛 :1,772(▲18:17.5C)
アルミニウム :1,840(▲14:15.5C)
ニッケル :15,400(+248:47C)
錫 :18,360(+75:17C)
コバルト :33,003(▲5)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6779.00(+64.50)
亜鉛 :2445.00(+24.00)
鉛 :1783.50(▲4.00)
アルミニウム :1854.50(+9.50)
ニッケル :15400.00(▲120.00)
錫 :18375.00(+95.00)
バルチック海運指数 :1,637.00(▲95.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :119.45(▲1.25)
SGX鉄鉱石 :119.67(▲0.56)
NYMEX鉄鉱石 :121.13(▲0.35)
NYMEX原料炭スワップ先物 :129.71(▲0.29)
上海鉄筋直近限月 :3,620(▲1)
上海鉄筋中心限月 :3,604(▲18)
米鉄スクラップ :290(▲6.00)

【農産物】
大豆 :1062.25(+6.00)
シカゴ大豆ミール :372.10(+13.70)
シカゴ大豆油 :33.17(▲0.55)
マレーシア パーム油 :3049.00(±0.0)
シカゴ とうもろこし :403.75(+7.25)
シカゴ小麦 :618.25(+21.50)
シンガポールゴム :212.80(▲1.10)
上海ゴム :12300.00(±0.0)
砂糖 :14.18(▲0.02)
アラビカ :109.50(▲0.10)
ロブスタ :1264.00(+14.00)
綿花 :69.22(+0.29)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :69.88(▲8.55)
シカゴ生牛 :107.78(▲0.60)
シカゴ飼育牛 :138.93(+0.55)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。