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週末を控えた買戻しで堅調
  • MRA商品市場レポート

2020年9月14日 第1818号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「週末を控えた買戻しで堅調」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:下落。米石油統計での原油在庫の大幅増加と、欧州問題を背景としたドル高進行が価格を下押し。

週明けはOPEC月報が発表される。今のところ報道ではOPECプラスの減産枠遵守にほころびが見え始めており、OPECプラスでの減産強化動向が焦点に。結果的に100日移動平均線の攻防ラインを挟み、もみ合うものと予想。

◆非鉄金属:前日の下げからの買い戻しがLME指定倉庫在庫減少で入る中、夜間に発表された中国のファイナンス関連統計の改善で上げ幅を拡大した。

期末を控えた調整売りと、中国の強めのファイナンス関連統計を受けてもみ合いを予想。但し、9月は四半期決算末で投機の売り圧力も強まると思われ、上値も重いと考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料:鉄鉱石は上昇。固有材料に乏しいが10月の大型連休を控えた買い圧力が指摘された。原料炭は横ばい、鉄鋼製品はまちまち。

引き続き需給タイト化から鉄鉱石は堅調で高値圏維持。鉄鋼製品は中国のファイナンス関連統計の改善を受けた経済活動の活性化期待で上昇へ。

◆貴金属:金銀は下落、PGMは上昇。

欧州情勢を材料としたドル指数動向を受けて神経質な展開が継続する見込み。実質金利はおそらく大きく動かず、為替動向が価格を左右する1日に。

◆穀物:シカゴ穀物市場はまちまち。生産見通しが引き下げられたトウモロコシ・大豆は上昇、世界在庫の水準が引き上げられた小麦は軟調な推移となった。

需給報告を受けた供給懸念からトウモロコシ・大豆は堅調、世界在庫の増加見通しが示された小麦は軟調な推移を予想。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はドル建て以外の資産やエネルギーの一画が売られたが、その他は軒並み買戻しが入り上昇する展開となった。特段材料があったというよりも、週末を控えた買戻しの動きが主体だったと考えられる。

経済統計の改善ペースに鈍化が見られる中、市場は金融政策・財政政策といった政治を材料に動く傾向が強まっている。

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【本日の見通し総括】

引き続き市場は、四半期末を控えたポジション調整の動きで総じて軟調な推移になると考える。

現在、特殊な状況になっている商品を除き、総じて景気回復期待や政策期待を材料にした価格の上昇は一服しており、政治動向を受けた為替市場の変動が価格に大きな影響を与えているように見える。

特に市場への影響が大きくなっているのはユーロの動向であり、ユーロ変動のドライバーとなっている投機のユーロ買い越し残や、英国のEU離脱動向に注目が集まる。週明け月曜日はFOMCが予定されており、翌日に政策と経済見通しが発表されるが月曜日は特段材料にはならないだろう。

【昨日のトピックス】

ここにきて英国のEU離脱を巡る混乱が見られ始めている。一旦国際合意したEUからの離脱条項を英政府が一方的に破棄、コロナの影響でほとんど移行期間中の交渉が進まなかったこともあり、このままだと高い確率で無秩序離脱になるとみられている。

今後のスケジュールを見てみると、6月末が移行期間の延長期限だったがこれを見送り12月末の移行期限が確定、10月末がEUが主張する交渉期限となっていたが、英国がEUと合意した離脱条項を破棄する法案を下院に提出したため、EUが9月末に法案撤回を要請、泥仕合となっている。

混乱の要因は、今回のEUとの合意は、実態としてはアイルランド島とグレート・ブリテン島の間に疑似的な国境を設ける案であり、英国が分断されることに関して根強い反発があることによるものである。

米国と中国の対立が強まり、国連を通じて中国が国際支配を強めようとしている状況を打破すべく、トランプ大統領が先陣を切って国際ルールを破ろうとしているが、国際ルールの基準を作った英国が率先して合意を破棄するような動きを強めた場合、世界が無秩序な状態に向かうことを加速させかねない。

話を英国に戻すと、恐らく無秩序離脱になればかねてから懸念されていた通り、英国・ユーロでは多くの失業者が発生すると予想される。コロナの感染再拡大が欧州で発生しているため、このタイミングで別の要因による失業者の増加は域内景気にとって大きなマイナスとなるだろう。

現在、多くの景気循環系商品が景気回復期待とファイナンス要因で上昇しているが、この10月から11月の米欧の政治イベントを契機に、逆回転するリスクは小さくない。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標はまちまち。

製造業・サービス業ともにロックダウン解除後に経済活動を再開させており、同指標は改善しているが欧州のPMIに減速が見られたり、中国の製造業PMIにも頭打ち感が強まっており、今後、感染ピークになる可能性がある冬場に向けて一時的に調整する可能性。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(▲3.0%→▲4.9%)ている。2021年に関しても+5.8%→+5.4%と下方修正した。

結局、コロナウイルスの影響が2021年意向も残存することが前提となっている。ただ、この冬場の再ロックダウン時の経済への影響は、2020年初に見られたほどの過激なものにはならず、半分程度にとどまるケースをメインシナリオとしている。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスが冬場に再拡大し、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスク。

同時にワクチン開発が進捗して経済活動の回復が加速することも、景気循環系商品にとってはアップサイドのリスクに。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い(むしろもうメインシナリオと考えるべきか)。

・米大統領選挙を巡る混乱。

反中に転じたバイデン氏が今のところ有利に選挙戦を進めているとみられるが、バイデン勝利の場合、より他国と連携して中国包囲網を強めるとみられるため、貿易量の減少を通じて景気循環系商品価格の下落要因に。

また、バイデン勝利の場合増税への懸念が強まるため株価にはマイナスと判断されており、この場合、株下落に伴う逆資産効果で商品価格の下押し要因となる可能性。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(トルコと欧州の関係悪化、ハードブレグジットなど)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

・コロナウイルスのワクチンが年内に開発完了、欧米が集団免疫を獲得しコロナ禍が想定よりも早く収束した場合(多くの景気循環銘柄価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格はもみ合い、高安まちまちで引けた。目立った新規手掛かり材料に乏しい中、為替の動きやUAEが減産を遵守していなかったことなどを材料に下落していたが、100日移動平均線のサポートラインを巡る攻防となり、下値も堅かった。

なお、昨晩、バーレーンもイスラエルとの国交正常化で合意したとトランプ大統領が発言。大統領選でバイデン候補が勝利した場合、イラン政策が変更になる可能性を恐れ、対イランの最前線であり、米軍基地も有する2国が米国の要請を受けてこれを応諾したものと見られる。

安全保障と経済的な問題が背景にある。バーレーンのハマド国王は、「パレスチナ国家を樹立して2国家共存に基づく紛争終結が重要」と発言しており、感情的にはパレスチナへの配慮をにじませている。

【原油価格見通し】

原油価格は軟調な推移になると考える。9月の四半期末月であること、ユーロ高が一旦頭打ちとなりユーロ安・ドル高が進行しやすいこと、チャートのテクニカル要因などが背景。

また、そもそも各国の経済統計が徐々に強弱が入り混じった状態になっている上、OPECプラスではイラクが減産見遵守分の追加減産の延期を申し入れていることや、欧州でコロナウイルスが再拡大していることも材料となっている。

但し金融緩和は継続し、大きく下落する局面ではOPECプラスも追加減産をためらわないとみられること、減速しつつも景気は中期的に回復基調にあることから下落余地も限定されると考える。

この場合、チャートのテクニカル要因が価格のめどとなるが、WTIは200日移動平均線のサポートラインを割り込んでおり、次のポイントは100日移動平均となる35ドルがめどとなる。Brentは39ドルがめど。

米中対立やそれに伴う経済活動への悪影響、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、このタイミングでコロナ以前の水準に経済活動が戻るとは考え難く、上昇リスクよりは、価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべきと指摘してきたが、現在このリスクが顕在化した形。

なお、DOEは2019年の水準に需要が回復するのは2022年頃になると予想している。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(32ドル~60ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後(ワクチン・治療薬の開発完了後)の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

現在すべての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場はやや回復し、50ドルを上回った。5年レンジを下回り、50ドルを挟む展開が継続している。

【石炭価格見通し】

石炭価格は海上輸送分に関しては、需給バランスの緩和観測で現状の低水準での推移を継続すると考える。

最大消費国である中国の景況感の回復を受けた需要増加が価格を押し上げるものの、今のところ中国は豪州への制裁もあって国内生産増加で賄おうとしている可能性が高いこと、世界的な天然ガス大幅な供給過剰や、中国の石炭国内生産増加が価格の上昇を強く抑制するため。

8月の中国の石炭輸入は前月から減少。前年水準を▲37.3%の2,066万トン(前月▲20.6%の2,610万トン)と大きく下回った。中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、輸入を抑制する可能性を否定していない。

今のところ豪州炭価格が上昇していないのは、中国の制裁による影響のほうが大きいと考えている。というのも中国の国産炭価格はPMIに連動して上昇しているため。

なお、大きく水準を切り下げていた中国の港湾在庫は急速に増加し、足元、過去5年レンジを上下回っている。国内の需給は徐々に緩和しているとみられる。

石炭期間構造はコンタンゴで限月交代によるジャンプも起きにくく、価格変動性は10%程度(VaRの概念では、現在の価格を50ドル程度とすれば、7割の確率で1年後の価格が±5ドル程度しか変化しない)と通貨の変動率程度まで変動性が低下している。

結局、燃料炭価格は狭いレンジの中で、低いボラティリティを維持しつつ現状水準での推移を続けると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲15%内外の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-7月期の中国工業生産は前年比▲0.4%(1-6月期▲1.3%)、月次ベースでは+4.8%(前月+4.8%)前年比ベースの改善幅が頭打ちとなった(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-7月期の中国小売売上高は、前年比▲9.9%の20兆4,459億元(1-6月期▲11.4%の17兆2,256億元)、月次ベースでは前年比▲1.1%の3兆2,203億元(前月▲1.8%の3兆3,526億元)となった。

回復基調となっているが、以前として前年比マイナスの状態となっており、最終需要は弱いものと考えられる(フロー需要の回復鈍化=価格の上昇を抑制)

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・UAEとイスラエルが国交正常化に向けて舵を切り、バーレーンもこれに続いた。中東の力学に変化が起きる可能性がある。

今後、オマーンやサウジアラビアなどがこれに追随するかどうかはまた不透明であり、メディアが取り上げる「イラン包囲網」が広がる可能性は高いとは言えない。

しかし、この動きが加速すれば、同地域での親イラン国との対立を強める可能性。地政学的な不安定さは、巡り巡って供給懸念を引き起こし、価格の押し上げ要因に。

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTIはロング・ショートとも増加、Brentも同様だった。

WTIはハリケーンの影響による原油生産減少観測による価格上昇、ハリケーンの影響が低下するとの見方からの下落期待でショートの増加が顕著となった。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが637,225枚(前週比 ▲28,235枚)ショートが187,859枚(+13,314枚)ネットロングは449,366枚(▲41,549枚)

Brentはロングが246,065枚(前週比▲36,574枚)ショートが124,898枚(+30,740枚)ネットロングは121,167枚(▲67,314枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属はLME指定倉庫在庫の減少などを材料に、週末を控えた買戻しが入って上昇、その後、中国のファイナンス関連統計で資金調達総額や新規融資が市場予想を上回る大幅な伸びとなったことで、中国の経済活動活性化観測が強まったことが価格の上昇要因となった。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は一旦調整すると予想する。

四半期決算月であること、投機の買いポジションがこの数年の最高水準にあり、手仕舞い売りが入りやすい地合いにあること、英国のEU離脱を巡る混乱でユーロ高も調整する可能性が高いことが背景。

またベンチマークである銅に関して、需給がタイト化していた中国国内の需給が緩和している可能性があることも手仕舞い圧力を強めるだろう(期間構造がコンタンゴに)。実際、中国の貿易統計では輸入需要の鈍化が確認されている。

北半球の夏場の大規模ロックダウンは回避され、中国の公的需要に支えられた需要増加(今回の公共投資は5G分野やEVステーション設置などを予算を確保して行うため、規模はさておき「堅い」需要)が価格を支えるとしてきたが、すでに北半球は秋であり、南半球はコロナの影響が緩和すると期待される春だ。

欧州ではコロナの感染拡大が報じられており、経済活動の再停滞観測が強まりやすい。需給ファンダメンタルズの要件がこの数ヵ月で再び変わる可能性が有ることはリスク要因として意識しておくべきである。

なお、中国南部での大規模洪水の影響であるが、これによって中国の建設活動が大幅に停滞し、需要が減速、価格の下押し要因となる。しかし洪水終息後は復興需要が見込めるため、価格の上昇要因になると整理するべきだろう。

米中通商協議の結果がレビューされたが、中国はこの合意をほとんど遵守できていない。目標は達成していないものの、農産品の輸入を増やしているのは事実であり、通商戦争再開は選挙にマイナスとなるため、中国の合意不履行は厳しく追及されないだろう。

その代わりに、欧州やその他の西側諸国の理解を得られやすい、人権面での圧力は今後も強まると予想され、安全保障面での脅威となり得るIT面での制裁(華為技研への制裁など)が推進されることになるだろう。

トランプ大統領は米中デカップリングを公言してはばからず、野党民主党も手段の違いはあれどベクトルは同じだ。米中デカップリングは政権が変わろうとも、メインシナリオと考えるべきである。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・8月中国製造業PMIは51.0(前月51.1)と小幅に減速した。規模別にみると大企業・中堅企業は回復しているが、中小企業の景況感は大きく悪化しており、体力のないところ(政府支援のないところ)が淘汰される動きが強まっていると見られる。

内訳数値を見ると、政府の公共需要にけん引される形で新規受注は改善(51.7→52.0)。輸出向け新規受注も持ち直している(48.4→49.1)。受注残も増加しており需要面は堅調。

完成品・原材料在庫水準は生産調整によって減少傾向となっており、新規受注・在庫レシオは再び上昇、需給バランスが若干タイト化していることを示しており、価格の上昇要因となる。

ただし、在庫、生産といった数値が減速していることは、企業が産業活動を加速させることを躊躇していることを伺わせるものであり、先行き不透明感が残る内容だったといえる。

・9月中国銅線生産者 98.7%(前月97.0%、過去4年平均 89.2%)

・8月銅棒生産者 75.9%(76.2%、75.4%) 銅板生産者 65.5%(65.0%、71.4%) 銅管生産者 79.1%(85.2%、77.3%)

・7月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 85.8%(前月89.0%、過去5年平均 89.6%) 中規模事業者 72.9%(71.9%、77.9%) 小規模事業者 72.0%(74.3%、53.6%)

・1-7月期の中国工業生産は前年比▲0.4%(1-6月期▲1.3%)、月次ベースでは+4.8%(前月+4.8%)前年比ベースの改善幅が頭打ちとなった(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-7月期の中国固定資産投資は前年比▲1.6%の32兆9,214億元(1-6月期▲3.1%の28兆1,603億元)と伸び率の前年比マイナス幅を縮小した(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

しかし、主に公的需要の回復の影響が大きく(公的 +2.1%→+3.8%、民間 ▲7.3%→▲5.7%)、民間部門は依然として前年比マイナスの状況。

・1-7月期の中国不動産開発投資は前年比+3.4%の7兆5,325億元(1-6月期+1.9%の6兆2,780億元)と伸びが加速(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・8月の中国の銅地金輸入は前年比+65.5%の66万8,486トン(+81.5%の76万2,211トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比▲12.6%の158万7,000トン(▲13.3%の179万5,000トン)と、地金輸入が大幅な増加、銅鉱石輸入は減少傾向を継続している。

銅精鉱のTCは9月4日段階で51.5ドルと2014年以降の最低水準になっており、鉱石市場の需給がタイト化、中国の消費者は精錬品を物色している。

ただ、上昇していた銅の現物プレミアムは再び低下しており、中国の国内需要が減少している可能性が高い。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・中国の大規模洪水の影響で中国の兼摂活動が大幅に停滞し、需要が減速する場合(価格下落要因)。しかし洪水終息後は復興需要が見込めるため、価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・9月4日付のLME投機筋ポジションは、亜鉛とニッケルでポジション解消の動きが強まったが、その他の商品はロング増加、ショート減少の強気の流れが強まっている。

LME指定倉庫在庫の減少傾向に歯止めがかかっておらず、中国の製造業関連統計に目立った弱さが見られていないことが背景。

ショートポジションが軽くなり、ロングが重くなる中、長期金利上昇や米中対立、ロックダウンといったことを材料に、非鉄金属価格が投機主導で下落する可能性はあり得るため、そろそろ下落リスクを警戒すべきである。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は134.4億ドル(前週127.3億ドル)と、買い越し幅を拡大している。買い越し幅の増加率は+5.6%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで3,067千トン(前週2,865千トン)と買い越し幅を拡大した。買い越し枚数の増加率は+7.1%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向は海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は小幅安、鉄鋼製品価格はまちまちとなった。

特段目立った固有の強気材料はなかったが、10月の大型連休を控え、鉄鉱石の在庫水準が日数ベースで低いこともあり在庫積みの動きが見られたとの指摘があった。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。南米の生産見通しが引き続きネガティブであることに加え、中国政府のインフラ投資が今後も継続する見込みであること、中国国内の足元の鉄鋼原料需給並びに今後の需給見通しがタイト化しているため。

しかし、中国南部の洪水の影響はまだ継続しており、鉄鋼製品需要を減じること(終息後は復興需要で価格上昇要因となるが)、上昇していたバルチック海運指数は減速基調を強めており、鉄鉱石の調達が減速する可能性を示唆している。ブラジルは鉱山生産を再開の見通しであるため、中国の需要面の影響による可能性がある。

また、米中の対立が激しさを増しており最大消費国である中国の景気に悪影響を及ぼす可能性が高いことから、上値も重くなると考える。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。但し、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫はハリケーンの影響か、急速に減少しており過去5年平均を大きく下回っている。

原料炭の先物期間構造は期近が若干のバックだが再びコンタンゴに戻っており、原料炭需給は微妙なバランスを維持していることを伺わせている。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・8月の中国鉄鋼業PMIは47.0と前月の49.2から大幅に減速した。新規受注は45.6(47.7)と減速、輸出向けの新規受注も34.7(42.8)となっており、全体的に需要が厳しい状況にあることを示している。ただし、9月以降は洪水の影響緩和から需要が持ち直すと予想される。

需要の弱さや原料価格の高騰などで原材料・完成品とも積み増しの動きは見られず、完成品在庫が37.2(40.2)、原材料在庫が35.2(42.2)と大幅に低下している。いずれにしても在庫水準が低いため、今後は在庫に積み増し圧力が掛かるだろう。

・中国河北省の高炉稼働率は9月4日時点で78.7%(前週79.0%、過去5年平均82.6%)と小幅に低下した。しかし、過去5年平均を下回った状態が続き、高炉の稼働率はやや低水準で安定している。

・1-7月期の中国工業生産は前年比▲0.4%(1-6月期▲1.3%)、月次ベースでは+4.8%(前月+4.8%)前年比ベースの改善幅が頭打ちとなった(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-7月期の中国固定資産投資は前年比▲1.6%の32兆9,214億元(1-6月期▲3.1%の28兆1,603億元)と伸び率の前年比マイナス幅を縮小した(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

しかし、主に公的需要の回復の影響が大きく(公的 +2.1%→+3.8%、民間 ▲7.3%→▲5.7%)、民間部門は依然として前年比マイナスの状況。

・1-7月期の中国不動産開発投資は前年比+3.4%の7兆5,325億元(1-6月期+1.9%の6兆2,780億元)と伸びが加速(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、8月は224万トン(前月261万トン)と記録的な水準を維持している。国内生産も7月時点で9,336万トン(前月9,158万トン)と記録的な水準となっている。

このことは、中国の国内需要が旺盛であることを示唆している。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比▲4.1万トンの1,560.2万トン(過去5年平均 1,041.3万トン)となった。例年よりも在庫水準は高い。

・8月の中国の鉄鉱石・精鉱輸入量は、1億36万トン(前月1億1,265万トン)と減速した。豪州からの輸出が中国の報復措置によって減少したことや、洪水の影響を受けて輸入が停滞したことが影響したためと考えられる。

ただし、中国の港湾在庫の水準は絶対水準が過去5年平均を下回り、在庫日数は過去5年の最低水準で推移しており、やはり国内のインフラ向け需要が旺盛であることを伺わせる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+130万トンの1億1,895万トン(過去5年平均1億1,788万トン)、在庫日数は+0.3日の22.8日(過去5年平均 27.5日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイトな状態が継続している。

・8月の中国の石炭輸入は前月から減少。前年水準を▲37.3%の2,066万トン(前月▲20.6%の2,610万トン)と大きく下回った。中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、輸入を抑制する可能性を否定していない。

原料炭の輸入は7月は前年比▲4.9%の737万トン(前月▲4.5%の626万トン)と前年比マイナスだが過去5年平均程度を上回り、再び輸入が加速した。

中国の主要な原料炭の輸入港である京唐の港湾在庫の水準は大幅に低下し、過去5年平均を下回っている。そのため輸入が回復したと考えられるが、国内生産の増加もあって前年比ではマイナスとなっているようだ。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は下落した。新規の手掛かり材料に乏しいが、株安を背景とした金利低下と、原油価格調整を背景とした期待インフレ率の低下が相殺しあい、結果的に実質金利が上昇したため小幅安に。銀も下落。このような局面だと金よりも変動率は高い。

PGMは株の戻りでプラチナが若干の前日比プラス、パラジウムは上昇して引けた。

【貴金属価格見通し】

金銀はやや軟調な推移になると考える。緩和的な政策が実質金利を低水準に維持するものの、FRBがYCCに否定的な見解であることに伴う長期金利の上昇観測、英国のEU離脱を巡る混乱を背景に、ユーロ高の調整によるドル高進行圧力が強まると考えられることから。

仮にFRBの政策が奏功すれば期待インフレ率の上昇が名目金利の上昇を上回ることになるため、実質金利低下を促し金価格にはプラスとなる。但しそれはまだ先だろう。

なお、ここにきてハードブレグジットが意識されているが、徐々にそのリスクが高まってきているためリスク回避のドル高を、リスク回避の金買いが徐々に上回る公算。今月から来月がピークに。

金価格の実質金利に対する感応度は1bpあたり3.5ドル程度だったが、現在は5.3ドルに上昇している。名目金利に対する感応度は9.5ドルまで上昇していたが、6.5ドルに低下。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスクプレミアム)は284ドルと前日から▲3ドルとなった。

一方、現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,650ドル程度で、緊急時の換金による下落余地は限定されている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスクプレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、72.6倍と昨日は上昇した。

過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当だが、結局70ドルラインは堅い。

銀価格は20ドル台が定着しているが、金価格上昇による割安感からの物色によるもので、更に買い上がるには金価格の上昇が必要。しかし思い返すと欧州危機・米国債格下げ危機があった2010年~2011年、銀価格は供給過剰にもかかわらずバブル状態となり、ハント兄弟事件以来の50ドルに迫った。

その後、危機の回避で急落することになるわけだが、過剰流動性が供給される中で、人工知能を使った機械取引が主流となる中、しばらくの間、強気のヘッドラインニュースだけで価格が急騰する可能性は十分にあり得るが、危機が去ったのち、金銀とも急落している。

一部の鉱山ではコロナの影響で減産も見られるようだが、供給不足に陥るまでの減産にはなっていないと考えられるため、やはり下落リスクを伴いながらの上昇になる。

対応が可能な場合は、プットオプションを活用しながら上昇リスクを回避(といっても、スポットで必要なものを拾っていくしかない)する必要があると考える。

市場参加者が現在、実際に供給不足になっているかを判断する材料としては、取引所在庫の水準で判断するしかない。更に銀在庫が減少する、ないしは金在庫が増加する、あるいはその両方が必要になる。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、自動車セクターの回復は緩やかなものにとどまる見通しであることから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

8月の米自動車販売は年率1,519万台(市場予想 1,482万台、前月 1,452万台)と、市場予想を上回る回復となった。ただし、コロナ以前の水準に自動車販売が戻るには相当の時間がかかる見込みであり、PGM価格の押し上げ効果は限定的なものとなろう。

中国の8月の自動車販売は中国自動車工業協会の速報で前年比+11.3%の218万台になると予想されている。7月は前年比+16.8%の211万台(前月+11.6%の230万台)と前月比マイナスだったが、前年比では伸びが拡大した。

年初来の販売累計は▲12.6%の1,234万台(前月▲16.9%1,023万台)と前年比マイナスの状態は変わらず。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

但し、自動車販売が政策のサポートもあって回復トレンドにあることは事実であり、PGM価格の上昇要因になると考える。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが313,173枚(前週比 +7,055枚)、ショートが76,700枚(+1,378枚)、ネットロングは236,473枚(+5,677枚)、銀が73,019枚(▲3,327枚)、ショートが39,539枚(▲3,335枚)、ネットロングは33,480枚(+8枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが32,560枚(前週比 ▲2,500枚)ショートが17,289枚(+1,684枚)、ネットロングは15,271枚(▲4,184枚)

パラジウムが5,092枚(▲69枚)、ショートが2,254枚(▲129枚)ネットロングは2,838枚(+60枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場は上昇。注目の米需給報告は前月からトウモロコシ・大豆の生産見通しが引き下げられた。但し事前予想は上回ったため影響は比較的限定された。

小麦は世界在庫の水準が3億1,937万トンと前月の3億1,679万トンからひきあげられたことが売り材料視された。

米需給報告の結果は以下の通り。

・9月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億Bu(148億9,064万Bu、152億7,800万Bu)大豆 43億1,300万Bu(42億9,179万Bu、44億2,500万Bu)小麦 18億3,800万Bu(18億3,268万Bu、18億2,400万Bu)

・9月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 25億300万Bu(24億6,136万Bu、27億5,600万Bu)大豆 4億6,000万Bu(4億6,854万Bu、4億4,250万Bu)小麦 9億2,500万Bu(9億2,604万Bu、9億2,500万Bu)

2020年9月3日時点の米主要穀物輸出成約高は以下の通りトウモロコシ 1,823.30千トン(前週▲661.6千トン)大豆 3,161.80千トン(+1380.5千トン)小麦 484.40千トン(▲101千トン)

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は、生産地の干ばつの影響による供給懸念を、輸送需要の伸び停滞に伴うエタノール向け需要の減速が相殺し、もみ合いだが、ユーロ安・ドル高進行が重石となりどちらかと言えば短期的には軟調な推移か。

大豆は中国が米国からの輸入を増加させる方針を継続していることや、生産地の干ばつの影響が懸念されているため堅調な推移を予想。但しドル高で上値重い。

小麦もドル高進行が重石となり、軟調な推移を予想。黒海周辺諸国の生産減少見通しが強まっていたがその他の地区の増産で不足が賄われるため、例年通りではあるが供給が足りる見通しとなってきたことも価格を下押しへ。

バッタ被害はエチオピア、イエメン、ケニアで深刻な状態が続いているが、インド・パキスタンでの拡大はやや沈静化。季節性の問題もありそろそろバッタ問題は収束の可能性が出てきた。

しかし、スーダン、チャド、ニジェール、マリ、モーリタリアにバッタが飛来していることが確認されており今後の被害拡大リスクは無視できない。但し現時点では群棲相を形成しておらず今のところはその懸念は大きくない。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウ、やクルマバッタモドキが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・9月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 149億Bu(148億9,064万Bu、152億7,800万Bu)大豆 43億1,300万Bu(42億9,179万Bu、44億2,500万Bu)小麦 18億3,800万Bu(18億3,268万Bu、18億2,400万Bu)

・9月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 25億300万Bu(24億6,136万Bu、27億5,600万Bu)大豆 4億6,000万Bu(4億6,854万Bu、4億4,250万Bu)小麦 9億2,500万Bu(9億2,604万Bu、9億2,500万Bu)

・6月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 52億2,400万Bu(49億5,862万Bu、79億5,300万Bu)大豆 13億8,600万Bu(13億9,113万Bu、22億5,300万Bu)小麦 10億4,400万Bu(9億8,661万Bu、14億1,200万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが316,691枚(前週比 +7,087枚)、ショートが233,002枚(▲15,351枚)ネットロングは83,689枚(+22,438枚)

大豆はロングが254,418枚(+5,955枚)、ショートが61,989枚(+5,535枚)ネットロングは192,429枚(+420枚)

小麦はロングが131,598枚(▲5,185枚)、ショートが95,786枚(+1,948枚)ネットロングは35,812枚(▲7,133枚)

◆本日のMRA's Eye


「セクター別パフォーマンスレビュー」

コロナウイルスの影響拡大による景気の減速を受け、多くのリスク資産価格が下落したが、各国政府・中央銀行に対策によって大幅な上昇となっている。商品市場もご多分に漏れず上昇しており、特にファンダメンタルズの強い商品が積極的に物色されている。

セクター別にみると、年初来の上昇率(前期末比上昇率)は鉄鉱石が+39.5%(前期末比上昇率+22.3%)と最も高く、次いで貴金属が+24.5%(+21.1%)、ソフトコモディティが+15.7%(+25.2%)、LME非鉄金属が+4.5%(+12.2%)、MSCI世界株が+0.1%(+7.7%)、畜産が▲10.1%(+6.8%)、エネルギーが▲30.6%(+4.7%)となっている。

鉄鉱石の価格上昇が顕著なのは、中国政府の景気刺激を目的とした公共投資に、南米の鉱山生産がコロナの影響で減少したことが影響しており、これは非鉄金属でも同様である。そのほか、実際に供給が足りなくなっている木材や、健康志向(コロナ対策のビタミン需要)で上昇しているオレンジジュースも上昇が顕著だった。

しかし、これ以外に需給と関係なく上昇しているのが貴金属セクター。そもそもこのセクターは、宝飾品や延べ棒などの需要もいってみれば投資需要であるため、工業品向け需要と供給を比較すれば「供給過剰」であり、投機的な需要が価格を左右する市場といえる。

そのため、金融政策とそれに伴う実質金利の変化の影響を最も受けるため、実質的に政策的な対応で上昇しているといえるだろう。

連日過去最高を更新と報じられていた株価は実はそれほど上昇しているわけではなく、年初来でもかろうじて昨年末比プラス、という程度だ。主要国の中で最も上昇しているのが中国株(CSI300)で年初来上昇率は+11.9%となっているが、S&P500は+5.2%であり、実は非鉄金属程度の上昇しかしていない。その観点では、「まだ株価が上昇してもおかしくない」ように見える。

ただ、一見相関性のない株価と米国の景気先行指標であるISM製造業指数は、前年比ベースで比較してみると高い相関があることがわかる。これを見るに、企業景況感の改善が続くのならば株価が前年比で12%~15%程度高くても違和感はない。

従来、株価と原油価格は高い相関性があるとされていた。これは「景気拡大→需要増加・企業業績改善→原油価格上昇・株価上昇(またはこの逆)」のロジックでとらえられていたためだ。

しかし、エネルギー価格は明らかに株価についていっていない。これは現在の市場では特殊な材料が存在する、あるいは実需が存在しない、商品が金融緩和によって物色対象となっていることによるものだ。原油市場は投機筋のシェアは3割程度であり、価格形成は実需の動向が主導しているため、投機的な動きが強まった時に両者の間には乖離が発生しやすい。

商品市場ではBPのディープホライズンの原油流出事故や、ゴールドマン・サックスやその他の投資銀行によるLME倉庫運営会社の買収→在庫ファイナンス取引による非鉄金属価格の高騰、といったあまり評判の良くないイベントが発生したことで、投資銀行が積極的にポジションをとれなくなっている。

ディープホライズンの事故は、「FRBが予測できない天災などのリスク顕在化が、金融システムに影響を及ぼす可能性」を強く意識させ、LME指定倉庫運営ルールを乱用したファイナンス取引が、現物市場の混乱要因となることを金融当局に強く意識させ、結果的に投資銀行の商品市場での取引を制限する契機となった。

ちなみに金などの取引は規制されておらず、投資銀行はメインプレイヤーのままだ。金融緩和が継続する中で金価格が上昇するのはあまり不自然ではないし、投資銀行の見通しが非常に強気であることもある意味納得感がある。ということもあり、原油は上昇せず、金は上昇している訳だ。

今後については実体経済をより反映していると見られる原油動向が、市場を見るうえでの重要な手掛かりとなるだろう。その原油は恐らく年末に向けて、ロックダウン懸念と減産の未遵守を材料に軟調な推移となるだろう。この場合、実体経済(原油価格)から株価が乖離して上昇している場合、ショック発生時の下落リスクが高まるということだ。

直接関係はないものの、株価の調整は多くの市場参加者のセンチメントを悪化させるため、原油や非鉄金属価格にも下押し圧力が掛かることになる。

◆主要ニュース


・日本企業景況判断BSI Q320/Q420/Q121 大企業製造業 0.1/8.5/4.3
 大企業非製造業 2.9/0.2/1.5
 中堅企業全産業 ▲8.1/▲2.6/▲0.9
 中小企業全産業 ▲25.8/▲15.0/▲10.8

・8月日本国内企業物価指数 前月比+0.2%(前月+0.6%)、前年比▲0.5%(▲0.9%)

・8月独卸売物価指数 前月比▲0.4%(前月+0.5%)、前年比▲2.2%(▲2.6%)

・8月独消費者物価指数 前月比▲0.2%(前月▲0.5%)、前年比▲0.1(±0.0%)

・8月中国人民元建て新規融資 前年比+5.9%の12,800億元(前月▲6.0%の9,927億元)

・8月中国マネーサプライ M2 前年比+10.4%の213兆6,800億元(前月+10.7%の212兆5,500億元)
 M1 +8.0%の60兆1,300億元(+6.9%の59兆1,200億元)
 ファイナンス規模 3兆5,800億元(1兆6,940億元)
 国内企業全体の総財務残高 276兆7,000億元(273兆3,000億元)

・1-8月期中国海外直接投資 +2.6%の6,197.8億元(1-7月期+0.5%の5,356.5億元)
 前年比+18.7%の841.3億元(前月+15.8%の634.7億元)

・8月米消費者物価指数 前月比+0.4%(前月+0.6%)、前年比 +1.3%(+1.0%)
 コア 前月比+0.4%(+0.6%)、前年比+1.7%(+1.6%)

・8月米実質平均賃金 前年比+3.3%(前月+3.7%)
 実質平均時給+3.9%(+4.3%)

・日英FTAで合意。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・ベイカー・ヒューズ週間米国石油リグ稼働数180(前週比▲1)
 ガスリグ 71(前週比▲1)。

・米トランプ大統領、「バーレーンがイスラエルとの国交正常化に合意」

【メタル】
・Citi、2021年の金価格予想を2,275ドルに引き上げ。リスクケースは2,500ドルと1,600ドル。

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.CME豚赤身肉 ( 畜産品 )/ +3.42%/ ▲6.79%
2.LME亜鉛 3M ( ベースメタル )/ +3.11%/ +8.66%
3.CBT大豆ミール ( 穀物 )/ +2.35%/ +6.17%
4.CBTトウモロコシ ( 穀物 )/ +2.17%/ ▲5.87%
5.ICEガスオイル ( エネルギー )/ +2.13%/ ▲47.23%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
66.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲2.90%/ ▲7.00%
65.NYM米天然ガス ( エネルギー )/ ▲2.32%/ +3.65%
64.TCMガソリン ( エネルギー )/ ▲1.81%/ ▲35.90%
63.CBTオレンジジュース ( その他農産品 )/ ▲1.48%/ +20.01%
62.SHF 銀 ( 貴金属 )/ ▲1.42%/ +34.02%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,665.64(+131.06)
S&P500 :3,340.97(+1.78)
日経平均株価 :23,406.49(+171.02)
ドル円 :106.16(+0.03)
ユーロ円 :125.76(+0.36)
米10年債 :0.67(▲0.01)
中国10年債利回り :3.14(+0.05)
日本10年債利回り :0.03(▲0.00)
独10年債利回り :▲0.48(▲0.05)
ビットコイン :10,329.82(+22.53)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :26.77(▲0.28)
エネルギー :39.79(+0.47)
ベースメタル :18.64(+0.19)
貴金属 :24.84(▲1.53)
穀物 :18.99(+0.25)
その他農畜産品 :27.62(▲0.73)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :37.33(+0.07)
Brent :29.39(▲0.01)
米天然ガス :71.88(+1.02)
米ガソリン :47.87(+0.02)
ICEガスオイル :40.32(+1.39)
LME銅 :17.95(+0.04)
LMEアルミニウム :14.24(▲0.37)
金 :12.50(+0.31)
プラチナ :25.23(▲0.61)
トウモロコシ :17.87(▲1.84)
大豆 :12.50(+0.31)

【エネルギー】
WTI :37.33(+0.03)
Brent :39.83(▲0.23)
Oman :39.33(+0.01)
米ガソリン :109.49(▲0.28)
米灯油 :108.96(+0.72)
ICEガスオイル :324.00(+6.75)
米天然ガス :2.27(▲0.05)
英天然ガス :27.78(+0.08)

【貴金属】
金 :1940.55(▲5.54)
銀 :26.73(▲0.15)
プラチナ :930.83(+0.13)
パラジウム :2324.35(+23.62)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,729(+45:28.5B)
亜鉛 :2,451(+42:22.5C)
鉛 :1,900(+18:31C)
アルミニウム :1,786(+5:39C)
ニッケル :14,967(+171:32C)
錫 :17,925(▲100:40C)
コバルト :33,001(▲1)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6715.00(+82.00)
亜鉛 :2472.00(+74.50)
鉛 :1891.50(+17.50)
アルミニウム :1775.00(▲3.00)
ニッケル :15110.00(+305.00)
錫 :17990.00(+15.00)
バルチック海運指数 :1,267.00(▲2.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :127.31(+1.44)
SGX鉄鉱石 :127.55(+1.63)
NYMEX鉄鉱石 :127.43(+0.66)
NYMEX原料炭スワップ先物 :113.5(▲0.04)
上海鉄筋直近限月 :3,728(+18)
上海鉄筋中心限月 :3,647(▲13)
米鉄スクラップ :318(+29.00)

【農産物】
大豆 :1005.50(+20.50)
シカゴ大豆ミール :318.40(+7.30)
シカゴ大豆油 :33.74(+0.61)
マレーシア パーム油 :2880.00(▲17.00)
シカゴ とうもろこし :365.00(+7.75)
シカゴ小麦 :533.75(▲6.25)
シンガポールゴム :191.20(+1.70)
上海ゴム :11390.00(+5.00)
砂糖 :11.92(+0.01)
アラビカ :133.35(+0.85)
ロブスタ :1522.00(+10.00)
綿花 :64.06(+0.10)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :66.58(+2.20)
シカゴ生牛 :105.53(+0.43)
シカゴ飼育牛 :140.00(+0.83)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。