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FRBによる新たな政策枠組み 相場へのインプリケーション
  • MRA外国為替レポート

2020年8月31日号

◆先週の市場総括


先週は、木曜日のジャクソンホールシンポジウム・パウエルFRB議長の発言を前に週前半の為替市場でドル安は一服。ユーロドル相場は1.18台前半を中心に方向感なく上下動。ドル円相場は106円台を回復して106円台前半で上下した。

ユーロ円相場は126円に上昇し堅調。引き続きリスク選好が維持されるなか円は総じて軟調だった。

米国株はハイテク株を中心に堅調。好業績や金融緩和継続期待が支え。

木曜日にはパウエル議長の発言を前にFRBが新たな金融政策の枠組みを発表。長期平均で物価目標2%を達成するため、これまでの低インフレ期間を相殺すべく2%を上回る物価上昇を容認。

予防的引き締めの可能性を排除し、現状の超低金利を継続する姿勢を示した。

これを受けてリスク選好が強まり株価は上昇。米長期金利が上昇してドルは堅調。円は軟調となった。ドル円相場は106円台後半に上昇し107円に迫った。

ユーロ円相場は126円台後半へ上昇。ユーロドル相場はリスク選好を背景に1.18後半へ上昇した。

そうしたなか金曜日に安倍首相が辞意を表明。日本株は大きく下落。リスクポジションを落とす動きから円全面高となり、ドル円相場は海外市場にかけて105円20銭台へ、ユーロ円相場は125円30銭台へ下落した。

ユーロドル相場ではドル安の勢いが勝り1.19近辺にユーロ高ドル安が進んだ。米国株は堅調を維持。S&P500指数は6営業日連騰となった。日経平均は22,900円近辺で引け。

月曜日の東京市場の為替相場は小動き。ドル円相場は105円70銭~90銭で上下。ユーロドル相場は1.1800中心に上下、ユーロ円相場は124円70銭~90銭。

日経平均は22,900円近辺で寄付き22,900円~23,000円で上下。引けは22,985円。夕刻から欧米市場にかけてはユーロ堅調、円が軟調。

米国株は主要3指数がそろって上昇。NYダウは前週末の27,930ドルから28,308ドルへ。ナスダックも11,311ドルから11,380ドルへ続伸。リスク選好が強まるなか米長期金利は小幅上昇し、ドルは堅調。ユーロは上昇の勢いを削がれた。

ユーロドル相場は1.1810から1.1840台へ上昇したが1.1790へ反落。ユーロ円相場は125円ちょうどから30銭へ上昇した後125円割れに反落した。ドル円相場は堅調。105円80銭から106円ちょうどに上昇して引けた。

火曜日の東京市場のドル円相場は106円ちょうど近辺でもみ合い、夕刻にかけて106円30銭台に上昇。ユーロ円相場は125円近辺から125円80銭に上昇した。ユーロドル相場は1.1790から1.1810~20へ小じっかり。

日経平均は23,270円で高寄りし23,400円に上昇。ただ後場は反落して引けは23,300円近辺。

欧米市場に入るとユーロ高、円安は一服。ユーロ円相場は126円ちょうどをつけた後は125円60銭~126円ちょうどの間で上下し引けは125円90銭。

ユーロドル相場は1.1840に上昇した後、1.1810~40で上下、1.1830台で引け。ドル円相場は106円30銭~50銭で上下し106円40銭で引けた。

欧州ではドイツIFO景況感指数(8月)が92.6と前月90.5から改善し予想を上回った。

米国株はまちまち。NYダウは構成銘柄入れ替えが報じられ下落、ナスダックは上昇。S&P500指数は4日続伸で史上最高値を更新した。消費者信頼感指数は弱かったが、米中電話協議が行われ進展が確認されたことはプラス。

消費者信頼感指数(8月)は84.8と前月92.6から低下して6年ぶりの低水準。一方、新築住宅販売(7月)は季節調整済み年率換算で901千戸と前月の776千戸から大幅に増加して13年7か月ぶり高水準。

リッチモンド連銀製造業指数(8月)は前月の10から18に改善。米長期金利10年債利回りは一時0.7%に乗せ、0.69%に上昇。ドルを支えた。

水曜日の東京市場のドル円相場は106円40銭で始まり一時50銭に上昇したがその後はじり安。夕刻には106円20銭。

ユーロ円相場は125円90銭~126円10銭台に乗せたがじり安で125円50銭。ユーロドル相場は1.1830台から1.1810~20でもみ合い。

日経平均は23,300円近辺で始まり200円台前半に下落したが、後場には反発して23,300円近辺に戻して引けた。

欧米市場では欧州株が上昇、米国株も3指数がそろって上昇。ナスダックとS&P500が史上最高値を更新。NYダウは反発した。業績良好なハイテク株の上昇は止まらず。モデルナ社によるワクチン臨床試験の進展が景気敏感株の支えとなった。NYダウは28,332ドル、ナスダックは11,665ドル。

米長期金利は変わらず。ドル円相場は106円40銭台に上昇したが反落して106円ちょうど近辺でもみ合い。

ユーロドル相場は1.1770台に下落したが反発して1.1830~40で推移。ユーロ円相場は125円30銭~60銭で上下して125円40銭。

発表された米国の耐久財受注(7月)は前月比+11.2%と高い伸びだったが、コア資本財受注は+1.9%と低め。

木曜日の東京市場はパウエル議長の発言を前に様子見姿勢が強く小動き。ドル円相場は終始106円ちょうど近辺。ユーロ円相場は125円40銭、ユーロドル相場は1.1830中心にもみ合い横ばい。

日経平均は23,300円台で寄り付いたが軟調。23,200円近辺でもみ合い引けた。

欧米市場ではジャクソンホール年次シンポジウムでのパウエル議長の発言によりドルは上下した。

議長の発言を前にFRBは新たな金融政策の枠組みを発表。長期平均でインフレ率目標である2%を達成することとし、これまでの低インフレ期間を相殺するために一時的に2%を上回ることを容認する、とした。

インフレ率が上昇傾向となっても容易には利上げを実施しない、予防的引き締めを行わないことを示唆。ゼロ金利政策長期化の意思表示を行い、事実上フォワードガイダンスを示した。

パウエル議長の発言もこの発表に沿うもの。超低金利の継続を再確認したが、内容はある程度市場の予想通りだったが、リスク選好を後押し。株価は上昇。またインフレ容認で長期金利は上昇。米10年債利回りは0.76%に。

NYダウは+160ドルの28,492ドル、一方ナスダックは金利上昇を嫌気して小幅安11,625ドル。

ドルは当初下落したが長期金利上昇で反発。ドル円相場は105円70銭割れから106円70銭に急騰して引けは106円60銭。ユーロドル相場は1.19に上昇した後、1.1760台に急反落。引けは1.1820。ユーロ円相場は125円70銭に上昇の後、10銭台に下落、その後持ち直して126円ちょうど近辺。

金曜日の東京市場では円が全面安。ドル円相場は106円60銭で始まりジリ高。昼頃には106円90銭台に上昇。ユーロ円相場は126円ちょうどで始まり126円70銭台に上昇した。ユーロドル相場は1.1820で始まり1.18台半ばへ。

日経平均は23,300円中心に上下。しかし午後になって安倍首相が辞意を表明。日経平均は一時22,600円に大幅安。その後やや持ち直して引けは22,882円。

為替市場ではポジションを手仕舞う動きから円全面高。欧米市場にかけてドル円相場は125円20銭台まで大幅に下落。ユーロ円相場は125円30銭台へ下落した。ユーロドル相場は傍らで1.1920へユーロ高ドル安が進んだ。

米国株は上昇。超低金利の長期継続、景気回復をあらためて織り込んだ。NYダウは+161ドル高の28,654ドル、ナスダックは+70ドルの11,695ドル。S&P500は3,508ドルで6日連続の史上最高値更新。

米10年債利回りは小幅低下し0.72%。株高を支えた。

米国時間にはドル安円高は一服。ドル円相場は105円40銭を中心にもみ合い推移し引け。ユーロドル相場は1.19前後で上下して引け。ユーロ円相場は125円40銭。

発表された米国の個人所得・消費支出(7月)は前月比+0.4%・+1.9%と予想より強い数字。ミシガン大学消費者信頼感(8月・確報)は74.1と速報72.8から改善。一方、シカゴ購買部協会景気指数(8月)は51.2と前月51.9からやや悪化した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標、ISM景気指数、雇用統計

今週は重要な経済指標が相次ぐ。超低金利の継続が明確となるなか、景気回復がさらにリスク選好を強めるかたちとなるか。逆に株高一服となるか。

月曜日 ダラス連銀製造業活動指数(8月)

火曜日 ISM製造業景気指数(8月、予想54.5、前月54.2)

水曜日 ADP雇用報告(8月、雇用者数前月比、予想+900千人、前月+167千人)、製造業新規受注(7月)

木曜日 ISM非製造業景気指数(8月、予想57.0、前月58.1)、週間失業保険申請件数、貿易収支(7月)

金曜日 雇用統計(8月、非農業部門雇用者数・前月比、予想+1,350千人、前月+1,763千人、失業率、予想9.8%、前月10.2%)

2.ベージュブック、当局者発言

9月のFOMCでの政策判断の背景となるベージュブック(地区連銀経済報告)が公表される。

景気判断、とくに雇用情勢について、いかなる見通しが示されるか。製造業・サービス業の動向はどうか。想定よりも回復基調が強いのか、もたついているとの判断か。

また今週は当局者の発言機会も多い。他の理事や地区連銀総裁は、今後の政策についてどのような判断をしているか。超低金利継続・長期化の再確認となるか。

3.中国の経済指標

中国経済はひと足先に回復基調となっていたが、ここにきてややペースダウンの兆しもみえる。回復ペースの鈍化、また洪水などの影響は生じていないか。

月曜日 製造業PMI(8月、予想51.2、前月51.1)サービス業PMI

火曜日 民間調査の財新・製造業PMI(8月、予想52.7、前月52.8)

木曜日 中国財新サービスPMI

◆今週のMRA's Eye


FRBによる新たな政策枠組み 相場へのインプリケーション

先週、FRBは新たな政策枠組み・考え方を発表した。

注目されたジャクソンホール年次シンポジウムにおけるパウエルFRB議長の発言に先立って発表。議長は、そのあらたな考え方に沿って発言。結果的に、超低金利・ゼロ金利の長期化をあらためて示唆した。

今回の決定は9月のFOMCを先取りしたもの。事実上のフォワードガイダンスの強化ともとれる。超低金利据え置き期間を、確定期日ではなく、雇用が危機前の水準を回復すること、に置き換えられた。

一方でイールドカーブコントロール、長期金利上昇の抑制を直接的に行うことには関心はなさそうだ。

注目されたのはインフレ目標の考え方。現状は2%としているが、今後はその目標値の一時的オーバーシュートを容認する。目標は長期平均で2%とし、これまでの低インフレ期間を相殺するため、2%超の期間を一定程度認めるもの。

2%を下回る期間が長かったことから、上回る期間が長くても容認するスタンスとなった。その結果、予防的な引き締め・金融緩和の解除・利上げは、インフレ率が2%を上回るような情勢となってもすぐには実施しないことを意味する。

FRBの責務は、デュアルマンデート、といわれる、物価の安定・インフレ率の安定と雇用の最大化。

これまでは物価安定・インフレ目標の達成に注目が集まっていたが、今回の新たな枠組みの発表に際して、重視されたのはむしろ雇用だ。

インフレ率のオーバーシュート容認は、雇用回復重視の副産物ともいえそうだ。

FRBは、強力な労働市場の回復、最も高い雇用水準からのギャップを注視する、とした。そして中低所得層に配慮して政策運営を行うとしている。雇用者数の動向が最重点ポイントで、インフレ率は目をつぶる・あまり気にしない、ということになる。

となると、雇用統計では物価に影響を与える「平均時給の動向」は当面重要性が低下する。 「雇用者数」と「失業率」が鍵となる。週次の失業保険申請件数・継続受給者数の動向も重要だ。

今回の方針を素直にとれば、FRBが利上げに動く条件は、雇用者数が危機前を回復すること、インフレ率が2%をしばらく上回ること、の2つを満たすこととなる。

危機前に雇用はいわば絶好調で失業率も過去最低水準だったが、どれでもインフレ率は容易に上昇しなかった。

したがって、2つの条件とも満たすとなると相当の時間がかかるとみられ、市場が事実上のフォワードガイダンス強化、超低金利の長期継続コミットメントととらえるのは当然だ。

景気押し上げ、とくに雇用情勢の回復・労働市場重視、インフレ率上昇の容認、そのための超低金利長期化。結果的に生じる資産価格のさらなる上昇は容認・放置、ということになる。

一方、財政拡大・国債の大量発行・債券需給の緩和・景気回復期待・インフレ期待の上昇、などで長期金利の上昇が仮に生じた場合、それを抑制にかかるかは不透明だ。

雇用情勢がさらに好転すれば、イールドカーブにはさらなるスティープ化圧力がかかる可能性がある。

しかし、長期金利の上昇が労働市場の悪化・景気悪化に悪影響が生じなければ、こちらも放置するのではないか。

イールドカーブのスティープ化は景気にポジティブなシグナルと市場は受け止めるだろう。それは歓迎すべき動きでもある。

今回の政策枠組みの変更で、資産価格上昇は容認されたようにみえるが、そのことと実際に株価上昇がさらに加速するか、は別問題だ。現状の超低金利継続は変わらず、さらに低下するわけではない。

むしろ長期金利が底打ち感を強め、幾分でも上昇するなら、株価上昇には抑制要因となる。為替市場では、ドルの実質金利低下がドル安を促している、との見方が多い。

インフレ期待だけが高まり、長期金利が抑制された状態は、実質金利の低下をもたらす。ただその両立は難しく、実質金利の低下には限界もある。

ドルのイールドカーブがスティープ化すれば、ドル下落には歯止めがかかり、他の通貨との相対感で、ドルが持ち直す可能性があろう。

対照的に、円のイールドカーブにはスティープ化の要因はみられない。ドル円相場は底固く推移しそうだ。

◆主要指標


【対円レート】
ドル :105.37(▲1.20)
ユーロ :125.39(▲0.59)
英ポンド :140.684(+0.01)
豪ドル :77.607(+0.25)
カナダドル :80.442(▲0.73)
スイスフラン :116.53(▲0.70)
ブラジルレアル :19.5518(+0.41)
中国人民元 :15.334(▲0.12)
韓国ウォン(日本円=100) :8.924(▲0.05)

【対ドルレート】
ユーロ :1.1903(+0.008)
英ポンド :1.3353(+0.015)
豪ドル :0.7365(+0.011)
カナダドル :1.3099(▲0.003)
スイスフラン :0.9042(▲0.005)
ブラジルレアル :5.3893(▲0.180)
中国人民元 :6.8655(▲0.029)
韓国ウォン :1184.48(▲0.65)

【主要国政策金利】
米国 :0.25
ユーロ :0.00
日本 :0.00

【主要国長期金利】
米10年債 :0.72(▲0.03)
米2年債 :0.13(▲0.03)
日本10年債利回り :0.06(+0.02)
日本2年債利回り :0.06(+0.00)
独10年債利回り :▲0.41(▲0.00)
独2年債利回り :▲0.67(▲0.01)

【主要株価指数・ビットコイン】
NY ダウ :28,653.87(+161.60)
NASDAQ :11,695.63(+70.29)
S&P500 :3,508.01(+23.46)
日経平均株価 :22,882.65(▲326.21)
ドイツ DAX :13,033.20(▲63.16)
インド センセックス :39,467.31(+353.84)
中国上海総合 :3,403.81(+53.69)
ブラジル ボベスパ :102,142.90(+1,519.30)
英国FT250 :17,788.33(+26.30)
ビットコイン :11502.58(+235.53)

【主要商品価格】
WTI :42.97(▲0.07)
Brent :45.05(▲0.04)
米ガソリン :131.55(+3.10)
米灯油 :121.62(+0.55)

金 :1964.83(+35.29)
銀 :27.50(+0.49)
プラチナ :932.83(+6.59)
パラジウム :2209.10(+29.91)
銅 :6702.00(+127:26B)
アルミニウム :1797.50(+21:35.5C)
※貴金属はニューヨーククローズ。ベースメタルは3ヵ月公式セトル価格。
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

シカゴ大豆 :950.50(+13.25)
シカゴ とうもろこし :346.00(+1.75)
シカゴ小麦 :539.25(▲3.25)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。
※ 「休場」となっているものは、取引所が休場ないしはデータ更新時点で最新データを取得できなかった場合を指します。