CONTENTSコンテンツ

米統計の改善を受けた楽観で総じて高い
  • MRA商品市場レポート

2020年8月7日 第1799号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計の改善を受けた楽観で総じて高い」

【昨日と本日の各セクターショートコメント】

◆エネルギー:上昇。リスクオンモードでドル安→リスク資産買いの流れが続いたが、米ISM非製造業指数の改善を受けたドル高進行で上げ幅を削る展開。

本日の雇用統計は改善が予想され、景気への楽観から上昇余地を試す展開。但しアジア~欧州時間は様子見でむしろ軟調か。200日移動平均線のレジスタンスラインをWTIが上抜けするかがポイントに。

◆非鉄金属:前日の流れを受けて調整売りに押されたが、米国時間に発表された米週間新規失業保険申請件数がコロナ後の最低水準となったことで、景気を楽観した買いが入り取引後半にかけて上昇した。

中国の貿易収支は前年比で減速が見込まれており、非鉄金属が循環物色で上昇していること、米国時間の雇用統計を控えてアジア~欧州時間にかけてはいったん利食い売りで下落か。

◆鉄鋼・鉄鋼原料:洪水からの回復が一部で指摘され、需要面と供給面で先物主導で鉄鉱石は上昇、原料炭は下落、鉄鋼製品は小幅高。

南米の供給懸念は継続しており、中国の建設活動回復見込みで堅調地合い維持。

◆貴金属:実質金利の小幅な低下とトランプ政権のカナダに対するアルミ関税引き上げ報道を受けた、リスクの高まりを意識した安全資産需要で上昇。銀は完全にバブルで大幅な上昇。プラチナも連れ高。パラジウムも株高で上昇(詳しくは本日の貴金属セクターのコラムをご参照ください。やや貴金属セクターがバブルの様相を呈してきています)。

引き続き緩和政策持続とインフレ期待の高まりで貴金属セクター物色の流れ続き、堅調。ややバブル(特に銀)の感は否めず。

◆穀物:引き続き豊作観測を受けて軟調地合いも、トウモロコシは米輸出統計の改善を受けて小幅高。

足元、豊作観測が市場のテーマになっており軟調地合い続く。まだ先になるが、バッタ被害がアフリカ西部に広がる可能性があることは懸念。

※より詳細な説明は以下をご参照ください。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は畜産や穀物、エネルギーなどに売られた銘柄が散見されたが総じて堅調な推移となった。注目の米週間新規失業保険申請件数がコロナ後最低の水準まで改善したことで、景気への楽観が広がったことが背景。

昨日最も上昇したのは欧州天然ガス。気温の上昇と、ウクライナへの輸出増加によって域内需給がタイト化したことによる。一方、気温上昇で価格が上昇していた米国の天然ガスは、米天然ガス統計で在庫が市場予想を上回ったことで水準を切り下げた。

次に上昇が顕著だったのが銀。高い確率で市場参加者は貴金属セクターを選好しており半ばバブルの状態にある。2011年に銀価格が急騰し、ハント兄弟事件以来の50ドルを目指す展開となった。

この時も銀の実需が増加したことによる上昇ではない。この時はまだ金が安全資産として物色される前のタイミングであり、この価格上昇は違和感があった。

現在の銀価格の上昇は、コロナの影響による南米鉱山からの供給減少が影響している可能性はある。しかし現在の供給過剰状態が解消するほどの供給減少になっているわけではなく、材料にされている、という整理が適切だろう。

当面は金が上昇する中で銀価格も上昇しそうだが、下落リスクを常に意識しながらの上昇になるだろう。

※ニュース解説は、不定期ですがFBでも行っていますので、ご興味のある方はフォローをお願いします。https://www.facebook.com/Market.Risk.Advisory/

※レポートのお申込みはこちらから
https://marketrisk.jp/news-contents/news/3592.html

※商品市場分析入門のお求めはこちらから
https://www.amazon.co.jp/dp/447810445X/

【本日の見通し総括】

本日は米雇用統計を控え、アジアから欧州時間にかけては比較的様子見気分が強く、これまで上昇してきた商品にはいったん手仕舞い売りの圧力が強まると考えられる。

現時点の雇用統計の市場予想は前月比+117.6万人(前月+476.7万人)の雇用者数の増加が見込まれており、市場はこれを景気回復への期待を高める材料にするだろう。おそらく景気循環銘柄価格の上昇要因となる。

しかし、より注目すべきは失業率の内訳である。先月の雇用統計では一時解雇者数が1,056.5万人(前月1,534.3万人)と大幅な改善となったが、解雇者数は370.7万人(294.8万人)と増加している。このことは、一連のコロナ対策があっても立ち直ることができず、倒産や恒久解雇に踏み切る企業が増えていることを意味する

ロックダウン解除で経済活動が回復していることはおそらく間違いがないだろうが、構造的な雇用の受け皿の減少を確認した場合、景気循環銘柄価格を下押しすることも十分にあり得る。

【昨日のトピックス】

昨日は米週間新規失業保険申請件数がコロナ以降最低水準に低下した。雇用関連統計は強弱が入り混じっているが、この数値を見るに最悪期は脱したように見える。

しかしおそらく今年の冬はコロナの再拡大が発生する可能性が高く、恐らく再び経済活動は鈍化するというのが基本的なシナリオだ。

しかし、「そうならない」リスクを想定しておく必要もあるだろう。今の日本では新薬が投入されるまでに4年や5年は当たり前であり、場合によると5年かかっても認可されないケースもある。

ところが世界中でコロナのワクチン開発完了が焦眉の急となる中、各国政府も異例の対応を行っており、治験結果は重視するものの市場が想定しているよりも早くワクチンが認可される可能性は十分にあり得る。

この場合、現在行われている超金融緩和の影響で株価は上昇することになり、景気循環系商品であるエネルギーや工業金属などの価格も急騰することが予想される。

同時にリスク回避の必要性が低下することから、現在ブームになっている安全資産セクターである貴金属価格が急落する可能性も想定しておく必要があるだろう。

「多くの市場参加者がそのように考える」ないしは「もうそうなることは想定できない」と考え始めている時こそ、逆に振れるリスクを想定しておくべきである。

【景気循環銘柄共通の価格変動要因整理】

<<マクロ要因>>

・各国のPMI・ISMなどのマインド系指標の改善。

ロックダウン解除の動きが世界的に拡大しており、最悪水準まで低下したPMI・ISM指数には改善圧力が掛かり、景気循環銘柄価格の上昇要因に。ただし、ロックダウンを再開している地域も見られ、完全に元の状態に戻るには、ワクチン・治療薬の開発が必須に。

・世界景気の減速観測。IMFは2020年の経済見通しを大幅に引き下げ(▲3.0%→▲4.9%)ている。2021年に関しても+5.8%→+5.4%と下方修正した。

結局、コロナウイルスの影響が2021年意向も残存することが前提となっている。ただ、この冬場の再ロックダウン時の経済への影響は、2020年初に見られたほどの過激なものにはならず、半分程度にとどまるケースをメインシナリオとしている。

・各国中央銀行、特に先進国の中央銀行はコロナ対策で政策金利をほぼゼロ近傍まで引き下げており量的緩和規模も拡大、これ以上打てる手がなくなった状態。

もちろん、量的緩和規模の拡大や投資対象の拡大などの追加手段は考えられるが、経済への直接的な影響は、先行事例である日本や欧州を見るにそれほど大きくない。

クライシスが再び発生した場合のリスクはより高まっていると考えるべき。

・景気減速を受けた、各国政府・中銀の財政政策・金融緩和は価格の上昇要因(Q319の中国GDPは前年比+6.2%、前期+6.3%と1992年の統計発表以来の低水準となり、減速懸念が再び意識されている)。

※一方、鉱工業生産や固定資産投資などは政府の対策の影響が徐々に顕在化している形。

・2018年からインドが人口ボーナス期入りしており、構造的な需要の増加が見込めることは中長期的な価格の上昇要因。

<<特殊要因>>

・コロナウイルスの感染長期化の可能性。現在でも感染は世界的に拡大しており、北半球の冬場に再度感染拡大→経済活動自粛、という流れになるリスクも無視できず。

・米中の対立激化による新冷戦構造の発現。

米国が中国と共生体制になっていのは経済的なメリットがあったからだが、リーマンショック、コロナショックを通じて中国よりもデメリットが大きい(人民元安誘導など)ことがわかったため、米国が中国からのデカップリングを進める可能性は高い。

・米大統領選挙を巡る混乱。

反中に転じたバイデン氏が今のところ有利に選挙戦を進めているとみられるが、バイデン勝利の場合、より他国と連携して中国包囲網を強めるとみられるため、貿易量の減少を通じて景気循環系商品価格の下落要因に。

また、バイデン勝利の場合増税への懸念が強まるため株価にはマイナスと判断されており、この場合、株下落に伴う逆資産効果で商品価格の下押し要因となる可能性。

・生産拠点を自国に回帰させる動きや、リモートの定着による成長鈍化が、新興国(資源国の多くも新興国)の財政状況を悪化させ、自国を含む域内景気への悪影響を及ぼす懸念(価格の乱高下要因)。

・欧州の政治混乱(伊仏の対立、ポピュリズムの台頭、トルコと欧州の関係悪化、トルコの景気減速など)によるリスク回避の動きの強まり(下落要因)。

・英国のFTA締結なしEU離脱のリスク。EUとFTAで合意できなければ関税引き上げが発生し、合意なき離脱に匹敵する混乱となる可能性(下落要因)。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速(下落要因)。

<<投機・投資要因>>

・ロックダウン解除の動きと量的緩和・信用緩和を受けた株高による、リスク資産の再物色の流れ。

コロナウイルス対策のために大量に投入された資金が、コロナウイルス終息後にリスク資産買いに走り、暴騰するリスク。

・年後半に再度ロックダウンが始まり、投機の買いで上昇したリスク資産価格(特に株)が下落するリスク。

・コロナウイルスのワクチンが年内に開発完了、欧米が集団免疫を獲得しコロナ禍が想定よりも早く収束した場合(多くの景気循環銘柄価格の上昇要因に)。

◆昨日の商品市場(個別)の総括


---≪エネルギー≫---

【原油市場動向総括】

原油価格はまちまちとなった。米週間新規失業保険申請件数がコロナ以降の最低水準になったことで、景気回復への期待が高まる一方、200日移動平均線がテクニカルな抵抗線として意識されていること、OPECプラスの増産が加速するとの見方、米石油統計での製品出荷の頭打ちが上値を重くした。

【原油価格見通し】

原油価格は各国の経済統計が徐々に強弱が入り混じった状態になっており、足元の需要の回復力は強いとは言えない(ないしは中期的に改善持続が可能かどうかは疑問)。また、8月からOPECの増産が始まっていること、世界的なコロナの再拡大懸念を受けてやや軟調な推移になると考える。

但し、各国とも経済対策を行っていること、金融緩和を積極的に実施していることからファイナンシャルな面で価格は下支えされると予想する。

ファイナンシャルな面、という意味では50日移動平均線が200日移動平均線を上抜けするいわゆるゴールデンクロスがこの1~2週間以内に訪れる可能性があり、仮にそうなればテクニカルに価格が上昇するリスクは指摘しておきたい。

チャート的には典型的な三角持ち合いの状態になっている。上下どちらかに抜けた場合、テクニカルに相場が大きく変動する可能性がある。

しかし、米中対立やそれに伴う経済活動への悪影響、実は世界のコロナ感染者数の増加ペースが加速していることを考えると、このタイミングでプレ・コロナの頃の水準に経済活動が戻るとは考え難く、上昇リスクよりは、価格急落への備え(場合によってはプットオプションの活用など)を検討すべきと考える。

なお、DOEは2019年の水準に需要が回復するのは2022年頃になると予想している。

原油価格が低水準で推移した場合、米シェールオイルの生産者のコストは平均で40ドル近辺(27ドル~50ドル程度)、カナダのオイルサンドからの生産者のコストも40ドル程度であることから、時間経過とともに減産が進捗すると予想される。

場合によると経営破綻、という形で減産が進む可能性もあるが、価格下落リスクヘッジをしている生産者もファイナンスが困難になっているため、資金繰りが意識される3、6、9、12月末のリスクは高まるだろう。

生産調整の議論の次に考えるべきは、「コロナ終息後(ワクチン・治療薬の開発完了後)の供給」である。今のところ夏頃から経済活動が再開されるとみられるが、この時の減産規模縮小のタイミングを誤ると、価格が大きく上昇するリスクが出てくる。

現在すべての産油国が追加減産を実施しているが、減産後の稼働再開には時間が掛るため、供給が間に合わない可能性がある。中東の産油国でも1ヵ月程度、米シェール企業の場合は増産を決断してから実施されるまで、6~7ヵ月はかかる。

さらに価格低迷が産油国の体制を揺るがすため、供給が途絶して急騰、というリスクもあり得る。特に中東北アフリカ諸国ではコロナウイルスの感染が拡大した場合、治安の不安定化で政権の維持が困難になり、供給自体に支障をきたす可能性もある。

足元の価格上昇を受けてOPEC諸国が増産に転じれば、逆にその体制崩壊のリスク→価格上昇のリスクを高めることになる。

ただ、今のところ今年の冬に感染拡大の第2ラウンドが来る可能性は高く、むしろメインシナリオになりつつある。この場合、信用リスクにも波及し企業倒産がべースの需要を減じることから、現在の世界各地の減産では不十分となる可能性も充分にあり得る。

ただ、コロナに対する知見が増えたことから、この冬にみられたような大規模なロックダウンは回避されると予想され、影響は懸念したほどにはならないとみられる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところエネルギー価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

原油価格の変動性は今後、需要が低迷するにも関わらず、さらに高まると考えておくべきである。

【石炭市場動向総括】

石炭先物市場は前日比小幅に下落した。固有の材料に乏しい中、過去5年レンジの最低水準を季節性通りフォローする値動きとなっていたが、ここにきて上昇も、下落もしなくなってきている。

【石炭価格見通し】

石炭価格は需給バランスの緩和観測で軟調な推移になると考える。ただし過去5年レンジの最低水準まで下落しており、その観点での割安感からの買いが入り、下落余地は限定されると考える。

6月の中国の石炭輸入は前月から回復したが、前年水準を▲6.7%下回った。中国は国内の石炭産業の強化を目的に国内生産を増加させる方向性に舵を切っており、輸入を抑制する可能性を否定していない。

また、コロナ問題を受けて対中国批判を強める豪州に対し、牛肉や鉄鉱石、石炭輸入を削減ないしは停止すると中国政府が表明しており、実際にその通りとなれば豪州炭価格を押し上げよう(他国産石炭は上昇)。

しかし、水準を切り上げていた中国の港湾在庫は急速に減少し、過去5年レンジを大きく下回っていることから、一定の輸入需要が見込めると考えられさらなる価格下落余地も限定される。

石炭期間構造はコンタンゴで限月交代によるジャンプも起きにくく、価格変動性は10%程度(VaRの概念では、現在の価格を50ドル程度とすれば、7割の確率で1年後の価格が±5ドル程度しか変化しない)と通貨の変動率程度まで変動性が低下している。

結局、燃料炭価格は狭いレンジの中で、低いボラティリティを維持しつつ現状水準での推移を続けると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・OPECプラスの減産と、非OPECプラス諸国の自主減産継続で需給がタイト化する場合(価格上昇要因)。

・産油国の財政悪化による上流投資部門投資の減速は、インドなどの新興国需要顕在化時の価格上昇要因。

・最大消費国である米国の石油製品出荷は前年比▲2割の大幅減少の状態であり、短期的な需要の方向性はマイナス(原油価格の下落要因)。

世界2位の消費国である中国の需要の指標である工業生産は市場予想を上回るマイナス幅の縮小となったが、小売売上高は前月から改善

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国小売売上高 前年比▲11.4%の17兆2,256億元(1-5月期▲13.5%の13兆8,730億元)、6月単月でも▲1.8%の3兆3,526億元(前月▲2.8%の3兆1,973億元)とマイナス幅を縮小している。

しかし、工業セクターや固定資産投資と異なり、最終需要は弱いものと考えられる(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

・EV普及による需要の伸び鈍化を、軽量化目的の樹脂向け需要増加が相殺(世界の需要が減少を始めるのは2050年頃からか)。

・世界的な石炭上流部門への投資規制強化による、供給減速懸念。価格上昇要因(石炭)。

・競合燃料である天然ガス・LNG価格が供給過剰で低迷、石炭価格の下落要因。

<<特殊要因>>

・原油価格下落とコロナウイルス感染拡大による治安悪化、コロナ問題を背景に米・欧軍が中東から撤退、それを受けたISの伸長が域内情勢を不安定化させ、原油生産・供給に悪影響を与える場合(価格の上昇要因)。

また、域内で武力衝突が発生し、難民が欧州に流入した場合欧州域内の政情が混乱するため景気を下押しし、原油価格の下落要因に。

<<投機・投資要因>>・WTI・Brentともロングが減少、ショートが増加した。景気回復ペースの鈍化もあって弱気のポジション取りに方向転換しているようだ。

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

WTIはロングが676,822枚(前週比 ▲11,088枚)ショートが144,253枚(+5,219枚)ネットロングは532,569枚(▲16,307枚)

Brentはロングが267,765枚(前週比▲5,722枚)ショートが76,140枚(+15,177枚)ネットロングは191,625枚(▲20,899枚)

---≪LME非鉄金属≫---

【非鉄金属市場動向総括】

LME非鉄金属は下落後上昇した。予想通り前日の循環物色後の利益確定の動きで軟調推移でスタートしたが、LME指定倉庫在庫の減少がまた確認されたことや、米週間新規失業保険申請件数の改善を受けた景気への楽観が価格を押し上げ、引けにかけは下落幅を削り、金属によっては前日比プラスで引けた。

ロジカルではないが、貴金属セクターの上昇を受けて「相対的に割安」な鉱物セクターである非鉄金属にも循環物色の手が伸びているようだ。

【非鉄金属価格見通し】

非鉄金属価格は高値圏を維持すると見る。北半球の夏場の大規模ロックダウンは回避される見通しであることや、南半球を中心市とした生産側がコロナの影響で減産を余儀なくされる状態が続くと考えられることから。

余りロジカルではないが、金価格の上昇余地が限定され始める中、「割安な鉱物セクター」「非鉄金属の中でも割安な金属」の再物色が起きる可能性は低くない。

今回の米中の公共投資は、5G分野やEVステーションの整備、通常の公共投資が行われる見込みであり、銅、亜鉛、アルミの需要がその恩恵を受けると予想される。また予算を確保して行うため、需要としては「堅い」需要となる。

しかし、今年は北半球の冬場に再びロックダウンとなる懸念が拭えないため、北半球の夏場の非鉄相場は強いものの、大統領選後の冬場は南半球が夏になり、供給制限が緩和される見込みであることを考えると、年後半は需給両面で価格が下落するリスクは小さくないと考えている。

なお、中国南部での大規模洪水の影響であるが、これによって中国の建設活動が大幅に停滞し、需要が減速、価格の下押し要因となる。しかし洪水終息後は復興需要が見込めるため、価格の上昇要因になると整理するべきだろう。

個別商品では割安に推移してきたアルミは、中国の製錬キャパシティの拡大が2020前年比で▲130万トンの減少が見込まれ、アルミナの供給能力も、中国で180万トン程度が停止していることや、割安銘柄の循環物色から大幅な上昇となっている。

なお、米中が通商面で昨年・一昨年に行われたような「大規模な制裁」を実施することは両国にとってデメリットが大きいため、行われないと考えるのが常識的な見方だ。

しかし、コロナウイルスへの中国の対応(情報隠ぺい)を受けて、欧米の中国に対する今までの積年の不満が、香港・新疆ウイグル自治区問題、台湾問題で爆発しており、今後、欧米が協調して中国からのデカップリングを進める可能性は高い。むしろメインシナリオだろう。

反中に転じたバイデン候補が勝利した場合、欧州と連携して中国包囲網を強めると予想される。結果、貿易量の減少を通じて非鉄金属価格には下押し圧力が掛かることになる。

各国政府・中央銀行が財政・金融政策の大盤振る舞いは、市場参加者のセンチメントの改善を通じて今のところ非鉄金属価格の押し上げ要因となっている。

しかし、先進国中央銀行は持てる政策をすべて使ってしまったため、冬場に再ロックダウンがあった場合などの事態の悪化があった場合、打てる手段はほとんどないことは下落リスクと考えるべきだ。

冬場に突入する南半球の感染状況は、今後注意すべき重要指標になるだろう。

長期的には環境面に配慮した「省エネ金属」需要が高まることから非鉄金属価格は上昇すると予想される。

具体例を挙げると、社会インフラとしてのバッテリー向け、電気自動車に使用される金属が対象となる(銅、アルミ、ニッケル、リチウム、コバルトなど)。

再び非鉄金属が持続的な上昇に転じるのは、インドの構造的な需要が顕在化するタイミングになるだろうが、中国が1994年に人口ボーナス期入りし、非鉄金属価格が上昇を始めたのが2000年頃からであることを考えると、2023~2024年頃になるのではないか。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・7月中国製造業PMIは51.1(前月50.9)と改善した。内訳をみると、生産が小幅に回復(53.9→54.0)したが、新規受注の回復が大きかった(51.4→51.7)。輸出向け新規受注の持ち直し(42.6→48.4)と、国内の恐らく公的需要の増加が影響したとみられる。

一方、完成品・原材料在庫水準はやや積み上がり傾向がみられており、原材料・完成品在庫とも水準を切り上げた。これにより、新規受注・在庫レシオは水準を小幅ではあるが切り下げており、需給バランスの若干の緩和を示唆、価格の下押し要因となろう。

・8月中国銅線生産者 99.9%(前月101.6%、過去4年平均 87.1%)

・7月中国銅棒生産者 76.8%(78.7%、74.6%) 銅板生産者 63.2%(65.9%、69.8%) 銅管生産者 87.2%(89.3%、80.9%)

・6月中国銅精錬業者稼働状況 大規模事業者 89.0%(前月90.9%) 中規模事業者 71.9%(73.3%) 小規模事業者 74.3%(73.1%)

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国固定資産投資は前年比▲3.1%の28兆1,603億元(1-5月期▲6.3%の19兆9,194億元)と回復基調を持続。

しかし、公的セクターの回復(▲1.9%→+2.1%)によるところが大きく、規模の大きな民間部門は▲7.3%(▲9.6%)と回復ペースは緩慢。

・1-6月期の中国不動産開発投資は前年比+1.9%の6兆2,780億元(1-5月期▲0.3%の4兆5,920億元)とプラス成長に転じた(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・6月の中国の銅地金輸入は前年比+98.8%の66万トン(前月+20.8%の44万トン)、銅鉱石・精鉱輸入は前年比+8.4%の159万4,000トン(▲8.3%の169万ト)と、地金輸入が大幅な増加、銅鉱石輸入は減少傾向となっている。

銅精鉱のTCは8月6日段階で51.5ドルと2014年以降の最低水準になっており、鉱石市場の需給がタイト化、中国の消費者は精錬品を物色している。

ただ、上昇していた銅の現物プレミアムは再び低下しており、中国の国内需要が減少している可能性が出てきた。恐らく洪水の影響とみられるがこれが続くかどうかは注目する必要。

・環境規制の強化で特殊需要が増加する(軽量化目的のアルミ、EV向けのニッケル・銅(通常25キロ/台の銅が使われるが、EVは80キロ/台)、蓄電池としての鉛、コバルト、リチウムなど)

・中国の環境規制強化に伴うスクラップの調達難による、新塊需要の増加。

・上流部門投資不足並びに鉱石の品位低下による、鉱山供給の制限。

・インドをはじめとする新興国の構造的な需要増加(中長期的な要因)。

<<特殊要因>>

・中国の大規模洪水の影響で中国の兼摂活動が大幅に停滞し、需要が減速する場合(価格下落要因)。しかし洪水終息後は復興需要が見込めるため、価格の上昇要因に。

・環境問題や人権問題(コンフリクト・メタルの問題)を背景とする鉱山供給の減少。

・資源ナショナリズムの高まり。インドネシアのニッケル未処理鉱石禁輸措置再開(銅とボーキサイトは2022年から実施の予定)。

・インドとパキスタンの対立が武力衝突に発展、インドの人種差別問題が反政府行動に繋がり、インドが人口ボーナス期の成長メリットを生かせない場合(下落要因)

<<投機・投資要因>>

・7月31日付のLMEロング・ショートポジションは金属ごとまちまちとなった。鉛とニッケルはロングが減少したが、その他の金属は増加している。公共投資や経済対策の恩恵を受ける金属が物色されていると考えられる。

一方、大きく積み上がっていたアルミはショートの買戻しが顕著。割安感で買戻しが入ったとみられる。

投機筋のLME+CME銅ネット買い越し金額は83.7億ドル(前週77.6億ドル)と、買い越し幅を拡大している。買い越し幅の増加率は+18.0%。

買い越し枚数はトン数換算ベースで1,738千トン(前週1,571千トン)と買い越し幅を拡大した。買い越し枚数の増加率は+10.7%。

---≪鉄鋼原料≫---

【鉄鋼原料市場動向総括】

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは上昇、原料炭スワップ先物は下落、中国鉄鋼製品先物価格は直近限月が変わらず、中心限月が上昇した。

市場では中国東部、洪水の影響があった南部での建設活動の回復が指摘され、供給懸念も根強いことから非常に高い水準での推移となっている。

【鉄鋼原料価格見通し】

鉄鉱石価格は高値圏での推移になると考える。南米の生産がコロナウイルスの影響で計画比下振れする可能性が高いことに加え、中国政府のインフラ投資が今後も継続する見込みであること、中国南部の洪水からの復帰、中国国内の足元の鉄鋼原料需給並びに今後の需給見通しがタイト化しているため。

但し、米中の対立が激しさを増しており最大消費国である中国の景気に悪影響を及ぼす可能性が高いことから、上値も重い。

急落していたバルチック海運指数は再び上昇している。しかし、週次のブラジル・豪州の鉄鉱石輸出実績は減少しており、どちらかといえば石炭輸入が増加したためと考えられる。

減少を続けてきた鉄鉱石・鉄鋼製品在庫は季節性もあり、増加に転じている。中国の公共投資・ブラジルの供給懸念で需給がタイト化していた鉄鉱石市場であるが、徐々に環境に変化がみられることは意識しておきたい。

原料炭は中国の生産活動回復が継続していること、国内の鉄鋼需要が公共投資で底堅いことから、同様に底堅い推移になると考える。但し、中国政府は原料炭を含む石炭の国内生産を増加させる方針であることから上値も重い。

中国の港湾在庫の水準は鉄鋼の最大生産省である河北省の主要港である、京唐港の港湾在庫は過去5年平均程度での推移が続いていたが、この水準を下回り需給はタイト化している。

原料炭の先物期間構造としては、バックワーデーション幅が縮小しているが、期先が上昇する形での幅縮小であり、いわば限界生産コストが上昇している可能性がある。

結果、原料炭価格はしばらくの間、高止まりする公算が強まっている。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・7月の中国鉄鋼業PMIは49.2と前月から小幅に低下した。これを見るに鉄鋼業界自体は比較的安定しているとみられる。

7月の中国南部での洪水によって鉄鋼市場も影響を受け、需要の下押し要因となった。新規受注は公共投資などの影響で回復しているが、まだ50を下回っている。なお、海外市場の再開から輸出向け新規受注は大幅に増加している(31.2→42.8)。

生産は洪水の影響で原材料の確保が難しく、57.5→54.5と減速。在庫水準も原材料・完成品在庫とも低下した(各々、44.2→43.2、44.3→40.2)。

引き続き鉄鋼市場の需給はタイトな状態が続くとみられ、価格は高値圏での推移を維持する公算。

・中国河北省の高炉稼働率は7月31日時点で78.8%(前週79.0%)と小幅に低下した。しかし、過去5年平均を下回った状態が続いており高炉の稼働率は高止まりしている。

・1-6月期の中国工業生産は前年比▲1.3%(1-5月期▲2.8%)、6月+4.8%(前月+4.4%)とマイナス幅を縮小、月次ベースでも回復を継続している(フロー需要の回復=価格の上昇要因)

回復ペースは市場予想を上回っており、企業活動が加速していることをうかがわせる内容。

・1-6月期の中国固定資産投資は前年比▲3.1%の28兆1,603億元(1-5月期▲6.3%の19兆9,194億元)と回復基調を持続。

しかし、公的セクターの回復(▲1.9%→+2.1%)によるところが大きく、規模の大きな民間部門は▲7.3%(▲9.6%)と回復ペースは緩慢。

・1-6月期の中国不動産開発投資は前年比+1.9%の6兆2,780億元(1-5月期▲0.3%の4兆5,920億元)とプラス成長に転じた(ストック需要の回復=価格の上昇要因)。

・中国の鉄鋼製品の輸入は通常、平均で110万トン程度なのだが、6月は188万トンと記録的な水準に。国内生産は5月時点で9,227万トンと記録的な水準。一方で鉄鋼製品の輸出は370万トンと過去5年レンジを下回り、この5年の最低水準。圧倒的に国内需要が旺盛であることを示唆。

中国の鉄鋼製品在庫水準は前週比+15.0万トンの1,544.6万トン(過去5年平均 1,042.5万トン)となった。例年よりも在庫水準は高く在庫は増加している。

・6月の中国の鉄鉱石・精鉱輸入量は過去2番目の水準となり、1億168万トンとなった。中国の港湾在庫の水準は絶対水準が過去5年平均を下回り、在庫日数は過去5年の最低水準で推移しており、やはり国内のインフラ向け需要が旺盛であることを伺わせる内容。

一方で週次の鉄鉱石輸入は6月に入ってから減少を始めており、ブラジルや豪州の鉄鉱石週間輸出も減少を始めている。さらに減速するかどうかはブラジルについてはコロナウイルスの感染拡大状況、豪州はコロナを巡る中国との対立次第であるが、仮にそうなった場合、さらに海上輸送鉄鉱石価格は上昇することに。

鉄鉱石の港湾在庫水準は、絶対水準ベース、在庫日数ベースとも過去5年平均を下回っており一定の在庫積み増し需要があると考えられる。

中国の鉄鉱石港湾在庫は前週比+190万トンの1億1,695万トン(過去5年平均1億2,057.6万トン)、在庫日数は+0.4日の23.6日(過去5年平均 29.3日)と例年と比較して在庫水準が低く、需給ファンダメンタルズはタイト。しかし、徐々にではあるが緩和感が出始めている点は注意か。

・6月の石炭輸入(燃料炭・原料炭の合算)は前年比▲6.7%の2,528万6,000トン(前月▲19.7%の2,205万7,000トン)と前年比マイナスが続いており、減速し、過去5年平均程度まで落ち込んでいる。中国の石炭国内生産が増加しているためとみられる。

原料炭の輸入は5月は前年比▲19.1%の479万トン(前月▲15.4%の628万トン)と急減速した。おそらく国内生産が増加したことによるもの。

・長期的には人口ボーナス期入りしているインドが、インフラ整備のための投資を拡大する方針(5年で約160兆円)であり、鉄鋼製品・鉄鉱石価格を押し上げ。

<<特殊要因>>

・世界的に広がる環境規制強化の流れで、鉄鉱石や原料炭などの生産に一定の影響が起きる場合。

・米国が中国に対する人権問題(香港・新疆ウイグル自治区問題)や、コロナウイルスへの対策に対する中国への不満が高まった場合、再び通商問題が議題に上がる場合(価格の下落要因)。

・コロナウイルスの感染拡大長期化による経済成長の鈍化。

<<投機・投資要因>>

・特になし。

---≪貴金属≫---

【貴金属市場動向総括】

金価格は上昇し、スポットベースの価格は再び最高値を更新した。実質金利が低下したことが材料となったが、米国時間の引けにかけてトランプ政権がカナダに対するアルミ関税復活を決定したことなどで、リスク・プレミアムが上昇した。

銀価格は金価格の上昇もあって前日比+7.4%の暴騰、プラチナも銀につれる形となった。

パラジウムは米雇用関連統計改善を受けた株高と金高を頼りに大幅ン上昇となっている。

【貴金属価格見通し】

金銀は高値圏を維持すると考える。FRBが実質金利をマイナスにする緩和策を容認していることもあり、かつ、2022年までは現状の政策が維持される見込みであること、米中の対立が経済制裁には至らないものの、領事館の閉鎖など、徐々に具体的な行動に移り始めており、安全資産需要が高まると予想されることが背景。

実質金利がさらに下落するには原油価格が高騰するなどの材料が必要であるが、期待インフレ率が原油価格とは乖離して上昇を始めており、実質金利を押し下げている。しかし、やはり原油価格の上昇余地は限定されるとみられることから、さらなる大幅な上昇は実質金利面からの上昇は難しい。

この数週間の価格上昇を見ると、リスク・プレミアムが上昇する形での上昇となっているが、欧州危機や米国債格下げショックといった信用不安が高まる中で安全資産としての金需要が増加した、と考えるにはやや上げすぎ感は否めない。

金価格の実質金利に対する感応度は1bpあたり3.5ドル程度だったが、現在は4.2ドルに上昇している。名目金利に対する感応度に至っては、2ドル程度だったのが直近9.9ドルまで上昇している。金利に対するアップサイドの感応度が高まっていることは、リスクの上昇によるものと整理するのが妥当だが、それ以上に「バブル」になっている可能性はある。

現在の金の実質金利で説明可能な価格からの乖離(リスク・プレミアム)は380ドル(前日比+19ドル)。

一方、現在の実質金利で説明可能な価格水準は長期金利の低下もあって、1,620~1,650ドル程度まで上昇しており、緊急時の換金による下落余地が限定されている。

※毎日回帰分析をアップデートし、リスク・プレミアム自体の水準を見直しているため、前日比の整合性が取れていない場合があります。

銀価格は金価格との比較感で売買されるが、金銀レシオは現在、75.6倍と昨日も低下した。

過去1年を基準にすると95倍程度、5年では80倍、2000年以降では65倍程度が妥当であり、そろそろ銀単体で上昇するのは難しかろう。

但し、コロナの影響で亜鉛や鉛など、銀の主要生産物を生産する鉱山の稼働が低下する恐れがあり、需給面が価格を押し上げる可能性が出てきた。

しかし、市場参加者が実際に供給不足になっているかを判断する材料としては、取引所在庫の水準で判断するしかない。更に銀在庫が減少する、ないしは金在庫が増加する、あるいはその両方が必要になる。

銀が金より割安、ということで物色されてきたがすでに年初来のパフォーマンスが金を上回っているため、割安感解消からの買いは見込めない。

ただ、思い返すと欧州危機・米国債格下げ危機があったとき、銀価格は供給過剰にもかかわらずバブル状態となり、ハント兄弟事件以来の50ドルに迫った。

その後、危機の回避で急落することになるわけだが、過剰流動性が供給される中で、人工知能を使った機械取引が主流となる中、しばらくの間、強気のヘッドラインニュースだけで価格が急騰する可能性は十分にあり得る。

但し危機が去ったのち、金銀とも急落したことを忘れてはならない。

なお、金銀在庫レシオ(銀在庫÷金在庫)はCOMEX金在庫の急増によって低下、金銀レシオに下押し圧力をかけており、徐々に銀価格は対金で水準を切り上げる展開になると予想される。

なお、銀価格=金価格÷金銀レシオ であり、金銀レシオが低下することで金価格が変動した時の弾性値が上昇(ボラティリティは上昇し、足元金の2倍に上昇)している点は留意。

(例)金が2,000ドル、銀が20ドルのとき 金銀レシオが100倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1セント変化 金の変化率は±0.05%、銀は±0.05%

 金銀レシオが1倍→金価格±1ドルの変化で銀価格は±1ドル変化 金の上昇率は±0.05%、銀は±5%

プラチナ価格は銀価格との連動性が高まっている。これは供給過剰で投機的な取引の影響が強まっていることによるが、各国の準備金や市場取引の担保価値が認められている金のほどの安全資産としては認知されていないため、金価格に主導される形で価格が形成されやすい。

しかし、値動きとしては銀価格と連動しやすく、銀価格が割安感から物色されやすい地合いとなっているため、プラチナ価格にも上昇圧力が掛かることになると予想する。

特に、銀の金に対する「出遅れ感」は解消しているため、今度は循環物色でプラチナが上昇する可能性は高いと考えている。

パラジウムは価格は景気の先行きが明確に悪いこと、自動車セクターの回復は緩やかなものにとどまる見通しであることから実需面は価格を下押ししやすい。

その一方で、貴金属のベンチマークである金価格は堅調な推移が予想されるため、結果、パラジウムは神経質にレンジワークでの推移になると考える。

7月の米自動車販売は年率1,452万台(市場予想 1,400万台、前月 1,305万台)と、市場予想を上回る回復となった。ただし、コロナ以前の水準に自動車販売が戻るには相当の時間がかかる見込みであり、PGM価格の押し上げ効果は限定的なものとなろう。

中国の6月の自動車販売は前年比+11.6%の230万台(前月+14.5%の219万台)と前月比プラスとなったが、前年比では伸びが減速した。引き続き年初来の販売累計は▲16.9%の1,026万台となっており、コロナの影響に伴う販売遅れを取り戻せていない状況。

中国の販売は欧米に先行して回復すると見るが、完全に経済活動が元に戻ることは難しく、回復ペースは緩慢なものに留まるだろう。

そして、コロナウイルスの影響が拡大する中で、日米欧も自動車販売が減速する可能性は高く、PGM価格の下押し要因になると予想される。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・各国とも政策金利をゼロ近傍に下げており、量的緩和規模も拡大。あとは更に規模を拡大するか、量的緩和時の投資対象を拡大するぐらいしかなくなってきた。

これで追加の緩和手段はほぼなくなった状態であり、金価格の上昇余地は限定される。

・世界的な自動車販売の減速(米欧中)による、自動車向け排ガス触媒需要の減少(PGM)。

・コロナウイルスの感染拡大による、最大生産国の1つである南アフリカの鉱山稼働が不安定であることによる供給懸念。

・排ガス規制強化に伴うパラジウムへのシフト観測(プラチナがパラジウムを代替するには数年単位で時間を要する)。

・パラジウム需要増加に伴うPGMの増産により、結果的にプラチナが供給過剰となり価格の下落要因に(プラチナ)。

パラジウムはロシアでは銅・ニッケルの、南アフリカ・米国ではプラチナの副産物として生産されるため(副産物としての供給が8割)、急な増産が困難であり供給面の制限が価格を下支えする状況に変わりはない。

<<特殊要因>>

・コロナ対策で過剰な財政出動が行われており、終息後に各国の財政・信用不安が意識される場合(価格の上昇要因)。

・米中の対立激化。米国は今回のウイルス問題で、中国の医療面、人工知能を含むIT面に脅威を感じた可能性は高く、対立が激化する場合(安全資産価格の上昇要因)。

・生産拠点を自国に回帰させる動きやリモートの定着による成長鈍化が、新興国の財政状況を悪化させる場合(価格の上昇要因)。

・原油価格低迷による財政状況の悪化、コロナウイルスの影響拡大に伴う国民の不満爆発、サバクトビバッタの大量発生による食糧危機などで、中東・北アフリカ有事が発生、それに伴う安全資産需要の高まり(上昇要因)。

・英国のブレグジットは、FTA合意なき離脱となるリスクが残存しており、その場合のインパクトは無秩序離脱と同レベルになると考えられ、金価格の上昇要因に。

・中国地方政府・中堅中小企業の財政状況悪化に伴う景気減速による安全資産需要の増加。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは、金はロングが312,588枚(前週比 ▲21,649枚)、ショートが75,787枚(+7,986枚)、ネットロングは236,801枚(▲29,635枚)、銀が74,401枚(▲15,609枚)、ショートが47,093枚(+3,838枚)、ネットロングは27,308枚(▲19,447枚)

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

プラチナはロングが33,342枚(前週比 +2,088枚)ショートが10,930枚(+88枚)、ネットロングは22,412枚(+2,000枚)

パラジウムが5,300枚(+608枚)、ショートが2,184枚(+174枚)ネットロングは3,116枚(+434枚)

---≪農産品≫---

【穀物市場動向総括】

シカゴ穀物市場はまちまち。

トウモロコシは輸出成約高の増加を材料に上昇、大豆は輸出が減少したことや豊作観測が価格を下押し。小麦は黒海周辺国の生産見通し上方修正が価格を押し下げた。

2020年7月30日時点の米穀物輸出成約高は以下の通り。トウモロコシ 2,701.10千トン(前週比+2091.7千トン)大豆 1,750.20千トン(▲1794.9千トン)小麦 610.50千トン(▲66.1千トン)

【穀物価格見通し】

トウモロコシ価格は、米経済活動の回復に一服感が出てきていることに伴う燃料向け需要ののび鈍化観測や、米国と中国の対立激化、生産地の生育環境改善で軟調な推移になると予想。

大豆は中国が米国との通商合意を履行する方針であるものの、場外戦で領事館閉鎖などの具体的なアクションがみられていること、生産地の生育環境の改善価格を下押しすると予想。

小麦は北米の冬小麦の作柄が良好ではなく、そもそも取引所在庫の水準が低いが、ここにきて黒海周辺諸国の生産が増加するとの見方が出始めており上値が重くなってきた。

東アフリカ・中東地域で激増しているサバクトビバッタであるが、現在はインド・パキスタンで猛威を振るっている。

危機的な状況にあったエチオピア・ソマリア・ケニアはやや影響が緩和した。今後、懸念されるのはバッタが、モーリタニア、マリ、ニジェール、チャドにまで拡大している点。

今のところ大規模な被害になるとはみられていないが、夏場の繁殖期をこれらの地域で迎えるため、被害の拡大はリスクとなろう。

また、東南アジアでもトウモロコシやイネの大害虫であるツマジロクサヨトウが繁殖し、深刻な食糧危機をもたらしている

コロナウイルスの影響で播種に必要な人員を確保できない農家があったが、今度は収穫期にコロナウイルスの影響で人員が確保できず、収穫に影響が出る可能性がある。年後半にかけて、穀物価格の見通しは強気。

【価格変動要因の整理】

<<マクロ要因>>

・米穀物作付け意向面積トウモロコシ 9,699万エーカー(市場予想 9,412万エーカー)大豆 8,351万エーカー(8,502万エーカー)小麦 4,466万エーカー(4,495万エーカー)

・米穀物最終作付け面積トウモロコシ 9,201万エーカー(市場予想 9,514万エーカー)大豆 8,383万エーカー(8,483万エーカー)小麦 4,425万エーカー(4,472万エーカー)

・6月米需給報告生産見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 150億Bu(150億4,085万Bu、前月159億9,500万Bu)大豆 41億3,500万Bu(41億5,430万Bu、41億2,500万Bu)小麦 18億2,400万Bu(18億4,372万Bu、18億7,700万Bu)

・6月米需給報告在庫見通し(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 24億4,800万Bu(27億3,052万Bu、33億2,300万Bu)大豆 4億2,500万Bu(4億2,389万Bu、3億9,500万Bu)小麦 9億4,200万Bu(9億5,019万Bu、9億2,500万Bu)

・6月末四半期在庫(実績/市場予想/前月)トウモロコシ 52億2,400万Bu(49億5,862万Bu、79億5,300万Bu)大豆 13億8,600万Bu(13億9,113万Bu、22億5,300万Bu)小麦 10億4,400万Bu(9億8,661万Bu、14億1,200万Bu)

<<特殊要因>>

・新型肺炎の影響拡大による、輸出活動の停滞(シカゴ定期を含む生産地価格の下落要因)。

・米・イランの対立激化により、穀物輸送に影響が出る場合(下落要因)。ただし非景気循環銘柄需要が高まり最終的には上昇要因に。

・夏場以降、北米の穀物生産に影響を与えるラニーニャ現象の発生の可能性があり、価格の上昇リスク要因に。

・中国の豚コレラ被害の拡大により、飼料需要が減少した場合は価格の下落要因(逆に終息すれば上昇要因)。

<<投機・投資要因>>

・直近の投機筋のポジションは以下の通り。

トウモロコシはロングが286,534枚(前週比 +19,913枚)、ショートが388,953枚(+23,478枚)ネットロングは▲102,419枚(▲3,565枚)

大豆はロングが201,291枚(+1,325枚)、ショートが88,248枚(+9,781枚)ネットロングは113,043枚(▲8,456枚)

小麦はロングが121,339枚(▲1,712枚)、ショートが104,681枚(+436枚)ネットロングは16,658枚(▲2,148枚)

◆主要ニュース


・7月東京都心オフィス空室率 2.77%(前月 1.97%)

・6月独製造業受注 前月比+27.9%(前月改定+10.4%)、前年比▲11.3%(▲29.3%)

・7月独建設業PMI 49.7(前月41.3)

・米週間新規失業保険申請件数 1,186千件(前週 1,435千件)
 失業保険継続受給者数 16,107千人(16,951千人)

・インド中銀、レポレートを4.00%で据置 、リバースレポレートを3.35%で据置、預金準備率を3.00%で据置。

・米民主党、ペロシ下院議長、「話し合いは進捗しているがいつ終わるかわからない。」

・トルコリラ、対ドルで史上最安値を更新。

◆エネルギー・メタル関連ニュース


【エネルギー】
・DOE天然ガス稼働在庫 3,275BCF(前週比+34BCF)
 東部 718BCF(+12BCF)
 中西部 830BCF(+15BCF)
 山間部 202BCF(+6BCF)
 太平洋地区311BCF(▲2BCF)
 南中央 1,214BCF(+3BCF)

・米国立海洋大気庁、「今年は大西洋に19~25のトロピカルストーム、そのうち6つが大きなハリケーンになるだろう。」

【メタル】
・ANZ、「銅は弱い経済、供給の増加で過大評価されている。銅需給は2020年の鋼板に56.5万トンの供給過剰に移行する可能性がある。」

・Cochileco、「2020年の銅生産は前年比▲1.2%の571万8,000トンになると予想。銅価格は2020年は5,772ドル、2021年は6,279ドルになる見込み。」

・米トランプ大統領、「カナダのアルミニウムに10%の関税を課す。」

・Alcoa、「スペイン精錬所の労働者との合意に達していない。」

◆主要商品騰落率


【上昇率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
1.ICE欧州天然ガス ( エネルギー )/ +8.32%/ ▲30.45%
2.銀 ( 貴金属 )/ +7.35%/ +62.11%
3.SHF 銀 ( 貴金属 )/ +5.21%/ +43.89%
4.ICE粗糖 ( その他農産品 )/ +3.19%/ ▲3.58%
5.CME木材 ( その他農産品 )/ +3.05%/ +58.30%

【下落率上位5商品】

商品名(カテゴリー)/前日比上昇率/年初来上昇率
65.ICEアラビカ ( その他農産品 )/ ▲3.74%/ ▲9.79%
64.ICEガスオイル ( エネルギー )/ ▲3.41%/ ▲38.97%
63.ニューキャッスル炭 ( エネルギー )/ ▲2.71%/ ▲25.85%
62.原料炭スポット ( 鉄鋼原料 )/ ▲2.32%/ ▲20.56%
61.CBTもみ米 ( 穀物 )/ ▲1.80%/ ▲12.68%

※弊社が重要と考える主要商品の前日比騰落率上位・下位5品目です。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。

◆主要指標


【為替・株・金利・ビットコイン】
NY ダウ :27,386.98(+185.46)
S&P500 :3,349.16(+21.39)
日経平均株価 :22,418.15(▲96.70)
ドル円 :105.54(▲0.06)
ユーロ円 :125.36(+0.09)
米10年債 :0.53(▲0.01)
中国10年債利回り :2.98(+0.01)
日本10年債利回り :0.02(+0.01)
独10年債利回り :▲0.53(▲0.03)
ビットコイン :11,857.9(+165.22)

【MRAコモディティ恐怖指数】
総合 :31.43(▲0.05)
エネルギー :29.19(+0.08)
ベースメタル :19.27(▲0.56)
貴金属 :33.78(+0.54)
穀物 :34.25(▲0.33)
その他農畜産品 :35.88(+0.07)

【主要商品ボラティリティ】
WTI :24.76(▲2.77)
Brent :20.93(▲1.78)
米天然ガス :64.71(▲1.63)
米ガソリン :29.42(▲1.88)
ICEガスオイル :34.43(+2.57)
LME銅 :19.47(▲0.98)
LMEアルミニウム :16.27(▲1.28)
金 :11.95(▲0.12)
プラチナ :31.88(▲0.24)
トウモロコシ :22.03(▲0.49)
大豆 :11.95(▲0.12)

【エネルギー】
WTI :42.07(▲0.12)
Brent :45.19(+0.02)
Oman :44.04(▲0.43)
米ガソリン :123.51(+1.23)
米灯油 :125.45(▲0.86)
ICEガスオイル :374.75(▲13.25)
米天然ガス :2.16(▲0.04)
英天然ガス :21.61(+1.66)

【貴金属】
金 :2063.99(+25.87)
銀 :28.94(+1.98)
プラチナ :998.64(+28.88)
パラジウム :2229.96(+41.82)
※ニューヨーククローズ。

【LME非鉄金属】
(3ヵ月公式セトル)
銅 :6,451(▲73:3B)
亜鉛 :2,390(+9:12.5C)
鉛 :1,932(+25:18.5C)
アルミニウム :1,759(▲20:36.5C)
ニッケル :14,433(+146:52C)
錫 :17,846(▲86:54B)
コバルト :33,096(▲4)

(3ヵ月ロンドンクローズ)
銅 :6486.00(±0.0)
亜鉛 :2404.00(+25.50)
鉛 :1954.00(+37.00)
アルミニウム :1778.00(+17.50)
ニッケル :14455.00(+185.00)
錫 :17860.00(+5.00)
バルチック海運指数 :1,475.00(+12.00)
※C=Cash-3M コンタンゴ、B=Cash-3M バック

【鉄鋼原料】
62%鉄鉱石スポット(CFR中国、1営業日前) :116.58(+0.22)
SGX鉄鉱石 :118.91(+2.91)
NYMEX鉄鉱石 :118.89(+2.62)
NYMEX原料炭スワップ先物 :108(▲2.57)
上海鉄筋直近限月 :3,771(±0.0)
上海鉄筋中心限月 :3,855(+27)
米鉄スクラップ :270(±0.0)

【農産物】
大豆 :880.75(▲1.25)
シカゴ大豆ミール :280.90(▲1.40)
シカゴ大豆油 :31.52(▲0.18)
マレーシア パーム油 :2895.00(+50.00)
シカゴ とうもろこし :311.50(+0.50)
シカゴ小麦 :503.00(▲7.75)
シンガポールゴム :166.90(+2.80)
上海ゴム :10935.00(+60.00)
砂糖 :12.94(+0.40)
アラビカ :117.00(▲4.55)
ロブスタ :1368.00(▲11.00)
綿花 :64.41(+0.05)

【畜産物】
シカゴ豚赤身肉 :49.93(+0.48)
シカゴ生牛 :102.58(+0.28)
シカゴ飼育牛 :143.70(▲1.10)

※全ての価格は注記が無い限り、取引所で取引される通貨建。
※限月交代に伴う価格の不連続性は考慮されていません。予めご容赦ください。